説明

アンテナ内蔵式電子時計

【課題】厚み方向において時刻表示部とアンテナとが重なる構造でありながら、高い受信性能を確保可能で十分に薄型のアンテナ内蔵式電子時計を提供する。
【解決手段】アンテナ内蔵式電子時計100は、上下方向に延在する円筒状のケース80と、表示面11aに時刻を表示する指針13と、指針13が取り付けられる地板38と、表示面11aの下側に配置され、表示面11aに沿って延在し、グランド電極21とグランド電極21上の誘電体22と誘電体22上の放射電極23とを有するパッチアンテナ10と、パッチアンテナ10を用いて衛星信号を受信するGPS受信部26とを備える。ケース80の少なくとも一部は非導電性であり、グランド電極21の大きさは放射電極23の大きさ以上であり、地板38は、グランド電極21と放射電極23との間に配置され、誘電体22は、表示面11aの延在方向において地板38を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを内蔵したアンテナ内蔵式電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には厚みが均一のスロットアンテナを内蔵したアナログ時刻表示のアンテナ内蔵式電子時計が、特許文献2には厚みが均一のパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)を内蔵したアナログ時刻表示のアンテナ内蔵式電子時計が記載されている。また、特許文献3には金属ケースの上に厚みが均一のパッチアンテナを配置したデジタル時刻表示のアンテナ内蔵式電子時計が記載されている。
【0003】
なお、特許文献4には中央部が薄く周縁部が厚いパッチアンテナ(円環パッチアンテナ)が記載されている。しかし、特許文献4に記載の技術は、アンテナ内蔵式電子時計に関する技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-213819号公報
【特許文献2】特開平10-197662号公報
【特許文献3】特許2001-27680号公報
【特許文献4】特開2007-129418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2及び3に記載のアンテナ内蔵式電子時計では、厚み方向においてアンテナと時刻表示部とが重なる構造を採る場合には、アンテナの厚みの分だけ時計が厚くなる。したがって、時計を薄くするためにはアンテナ全体を薄くせねばならない。しかし、アンテナ全体を薄くすると、アンテナの感度(アンテナゲイン)が著しく低下し、受信性能が低下してしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、厚み方向において時刻表示部とアンテナとが重なる構造でありながら、高い受信性能を確保可能で十分に薄型のアンテナ内蔵式電子時計を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明に係るアンテナ内蔵式電子時計は、上下方向に延在する筒状のケースと、前記ケースに収容され、表示面に時刻を表示する時刻表示部と、前記時刻表示部が取り付けられる構造体と、前記表示面の下側に配置され、前記表示面に沿って延在し、グランド電極と前記グランド電極上の誘電体と前記誘電体上の放射電極とを有するパッチアンテナと、前記パッチアンテナを用いて無線信号を受信する無線受信部とを備え、前記ケースの少なくとも一部は非導電性であり、前記グランド電極の大きさは前記放射電極の大きさ以上であり、前記構造体は前記グランド電極と前記放射電極との間に配置され、前記誘電体は前記表示面の延在方向において前記構造体を覆っていることを特徴とする。
【0007】
このアンテナ内蔵式電子時計では、その厚み方向(上下方向)においてパッチアンテナと時刻表示部とが重なり、時刻表示部が取り付けられる構造体がグランド電極と放射電極との間に配置され、構造体の周囲が誘電体で覆われる。つまり、構造体はパッチアンテナ内に収容される。誘電体は構造体と重なる部分で薄くなるが、パッチアンテナの感度は主に周縁部の厚みに依存する。したがって、このアンテナ内蔵式電子時計によれば、時計の薄型化と感度の低下の抑制との両立が可能である。また、パッチアンテナにおいて、構造体は誘電体として機能する。よって、本発明によれば、厚み方向において時刻表示部とアンテナとが重なる構造でありながら、高い受信性能を確保可能で十分に薄型のアンテナ内蔵式電子時計を提供することができる。
なお、「パッチアンテナ」は例えばマイクロストリップアンテナである。また、「面に沿って延在」には、当該面の延在方向に延在することや、当該面に直交しない面の延在方向に延在することが含まれる。また、「前記グランド電極の大きさは前記放射電極の大きさ以上」は、上下方向から見て前記放射電極の外形が前記グランド電極の外形の外側に逸脱しないことを意味する。
【0008】
このアンテナ内蔵式電子時計において、前記グランド電極は前記無線受信部を実装した回路基板の一部であるようにしてもよい。この場合、回路基板とは別にグランド電極を設けずに済むから、薄型化に寄与する。
【0009】
上記の各アンテナ内蔵式電子時計において、前記構造体は前記表示面に沿って延在し、非導電性の部材で構成されているようにしてもよい。この場合、構造体が誘電体として機能し易くなるから、受信性能が向上する。
【0010】
上記の各アンテナ内蔵式電子時計において、上下方向に延在する指針軸を備え、前記時刻表示部は前記指針軸を中心に周回する指針を含み、前記誘電体は薄い中央部と厚い周縁部とを有し、前記指針軸は前記放射電極と前記中央部とを貫通しているようにしてもよい。「中央部」を「貫通」は、薄い中央部が複数の場合には、少なくとも一つの中央部を貫通することを意味する。周縁部のみでは十分な受信性能が得られない場合には中央部を設けるのが好適であり、このアンテナ内蔵式電子時計によれば、誘電体は指針と構造体との間に周縁部よりも薄い中央部を備えるから、パッチアンテナの内部に構造体を収容しつつ、十分な受信性能を得ることができる。なお、放射電極および中央部には、指針軸を通す貫通孔を設ける必要があるが、指針軸は十分に細いから、受信性能はほとんど低下しない。なお、「指針」としては時針や分針、秒針が挙げられる。
【0011】
このアンテナ内蔵式電子時計において、光発電を行う変換板を備え、前記変換板は前記表示面に沿って延在する金属製の変換基板を有し、前記放射電極は前記変換基板であるようにしてもよい。この場合、変換板の変換基板が放射電極として機能するから、変換板とは別に放射電極を設けずに済む。これは、薄型化に寄与する。
【0012】
ところで、パッチアンテナでは、グランド電極を大きくするとアンテナ特性が向上することが知られている。しかし、グランド電極を単純に大きくすると時計が大型化してしまう。そこで、上記の各アンテナ内蔵式電子時計において、導電性の裏蓋を備え、前記グランド電極と前記裏蓋とは電気的に接続されているようにするのが好適である。このアンテナ内蔵式電子時計によれば、グランド電極と導電性の裏蓋とが電気的に接続されているから、グランド電極を大きくしたのと同様の効果(パッチアンテナの性能向上)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(電子時計100)を含むGPSシステムの全体図である。
【図2】電子時計100の平面図である。
【図3】電子時計100の一部断面図である。
【図4】電子時計100の一部の形状例を示す平面図である。
【図5】電子時計100の一部の分解斜視図である。
【図6】アンテナ厚みとアンテナゲインとの関係を示す図である。
【図7】パッチアンテナの動作原理を説明するための図である。
【図8】電子時計100の回路構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計200(電子時計200)の一部断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計300(電子時計300)の平面図である。
【図11】本発明の変形例に係るアンテナ内蔵式電子時計400(電子時計400)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。ただし、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(以下「電子時計100」という)を含むGPSシステムの全体図である。電子時計100は、GPS衛星90からの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正するアナログ時刻表示の腕時計であり、腕に接触する面(以下、「裏面」という)の反対側の面(以下「表面」という)に時刻を表示する。なお、以降の説明では、電子時計100の「表」及び「裏」を「上」及び「下」ともいう。
【0016】
GPS衛星90は、地球の上空の所定の軌道上を周回する位置情報衛星であり、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。以降の説明では、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波を「衛星信号」という。衛星信号は、右旋偏波の円偏波である。
【0017】
現在、約31個のGPS衛星90(図1においては、約31個のうち4個のみを図示)が存在しており、衛星信号がどのGPS衛星90から送信されたかを識別するために、各GPS衛星90はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。したがって、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0018】
GPS衛星90は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報(以下、「GPS時刻情報」という)が含まれている。また、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星90に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれている。電子時計100は、1つのGPS衛星90から送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを使用して内部時刻を正確な時刻に修正する。
【0019】
衛星信号にはGPS衛星90の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。電子時計100は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行うことができる。測位計算は、電子時計100の内部時刻にある程度の誤差が含まれていることを前提として行われる。すなわち、電子時計100の3次元の位置を特定するためのx,y,zパラメータに加えて時刻誤差も未知数になる。そのため、電子時計100は、一般的には4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行う。
【0020】
図2は電子時計100の平面図であり、図3は電子時計100の一部断面図であり、図4は電子時計の一部の形状例を示す平面図であり、図5は電子時計100の一部の分解斜視図である。図2及び図3に示すように、電子時計100は、一部が非導電性の略円筒状のケース80を備える。
【0021】
ケース80は、表面側に位置する略円筒状のベゼル81と、裏面側に位置する略円筒状の本体82とを有する。本体82はステンレス鋼(SUS)やチタン等の金属で形成されている。ベゼル81は、セラミックやプラスチックなどの非導電材料で形成されており、その内周に沿って、プラスチックで形成された環状のダイヤルリング83が取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、ケース80の二つの開口のうち、表面側の開口には表面ガラス84が取り付けられ、裏面側の開口には金属で形成された裏蓋85が取り付けられている。また電子時計100は、ケース80の内部に、リチウムイオン電池などの二次電池27を備える。二次電池27は、後述のソーラーパネル(変換板)40が発電した電力で充電される。すなわち、ソーラー充電が行われる。
【0023】
また電子時計100は、ケース80の内部に、文字板11と、上下方向に延在して文字板11を貫通する指針軸12と、指針軸12を中心に周回して現在時刻を指し示す複数の指針13(秒針13a、分針13b及び時針13c)と、指針軸12を回転させて複数の指針13を駆動する駆動機構30とを備える。
【0024】
文字板11は、指針軸12の横断面に沿って延在する円形の平板であり、プラスチック(例えばポリカーボーネート)などの光透過性かつ非導電性の材料で形成されている。文字板11の上面は、指針軸12の横断面と平行であり、時刻が表示される表示面11aとして機能する。指針13は、文字板11と表面ガラス84との間に配置されている。つまり、指針13は、表示面11aに時刻を表示する時刻表示部として機能する。文字板11の中央部には、上下方向に貫通した貫通孔が形成されており、指針軸12は、この貫通孔を通って文字板11を貫通する。なお、文字板11の周縁は、上から見るとダイヤルリング83に覆われている。
【0025】
駆動機構30は、地板38に取り付けられ、モーターコイル31などからなるステップモーターと歯車などの輪列とを有し、当該ステップモーターが当該輪列を介して指針13を回転させることにより、複数の指針13を駆動する。具体的には、時針13cは12時間、分針13bは60分、秒針13aは60秒で一周する。
【0026】
地板38は、プラスチックなどの非導電性の部材で構成された構造体であり、文字板11と裏蓋85との間に配置され、表示面11aに沿って延在する。地板38には、駆動機構30などの部品が取り付けられている。駆動機構30には指針軸12が取り付けられ、指針軸12には指針13が取り付けられているから、地板38には時刻表示部が取り付けられていることになる。以降の説明では、地板38に直接的に取り付けられた駆動機構30などの部品と地板38とを合わせたものをムーブメント99と称する。なお、指針軸12はムーブメント99から上方へ延在している。
【0027】
また電子時計100は、ケース80の内側に、光発電を行うソーラーパネル40を備える。ソーラーパネル40は、表示面11aに沿って延在する略円形の平板であり、その中央部には、上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。電気的には、ソーラーパネル40は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する複数のソーラーセル(光発電素子)を直列接続して構成されている。
【0028】
構造的には、ソーラーパネル40は、文字板11とムーブメント99との間に配置され、裏面側のパネル基板(変換基板)41と、表面側の透明電極42と、パネル基板41と透明電極42とに挟まれた光電変換層43とを有する。指針軸12は、ソーラーパネル40の貫通孔を通って、透明電極42、光電変換層43及びパネル基板41を貫通している。
【0029】
パネル基板41は、表示面11aに沿って延在する略円形の平板であり、ステンレス鋼などの金属で形成されている。パネル基板41の厚みは0.1mm程度である。光電変換層43は、入射した光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であり、例えば半導体で形成されている。透明電極42は、例えばITO(Indium Tin Oxide)である。なお、ソーラーパネル40は、文字板11の裏面側に一体的に形成されてもよい。
【0030】
また電子時計100は、ケース80の内部に、表示面11aに沿って延在する略円形のパッチアンテナ10を備える。パッチアンテナ10は、円偏波を受信可能なマイクロストリップアンテナであり、裏面側のグランド電極21と、表面側の放射電極(アンテナ電極)23と、グランド電極21と放射電極23とに挟まれた誘電体22とを有する。
【0031】
グランド電極21は、回路基板25の一部であり、金属製の裏蓋導通板39を介して裏蓋85と電気的に接続されている。回路基板25は、FR−4(Flame Retardant Type 4)などのガラスエポキシ樹脂で形成された非導電性の平板に金属材料を印刷して形成される。回路基板25に印刷されたベタパターンがグランド電極21となる。なお、回路基板25には、パッチアンテナ10を用いて衛星信号を受信するGPS受信部(無線受信部)26や二次電池27などの部品が実装されている。本実施形態では、GPS受信部26及び二次電池27は回路基板25の表面側に実装されている。
【0032】
誘電体22は、波長短縮効果によってパッチアンテナを小型化するためのものであり、例えばセラミックに樹脂を混ぜて成形される。パッチアンテナは、その外形形状が方形の場合には一辺を半波長とし、円形の場合には直径を約0.58波長とすることで共振するが、誘電体を用いると、波長短縮効果により、より小型でも共振するのである。
【0033】
また誘電体22は、中心軸が上下方向に延在する円筒の二つの開口のうち表面側の開口を塞いだ形状に成形されている。つまり、上下方向の長さを「厚み」としたとき、誘電体22は、薄い中央部22aと厚い周縁部22bとを有する。換言すれば、中央部22aの厚みをT1とし、周縁部22bの厚みをT2としたとき、T1<T2である。なお、中央部22aには、上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。
【0034】
上下方向から見たとき、誘電体22の形状は点対称であり、中央部22aは円形であり、周縁部22bは円環状である。誘電体22の形状を点対称とするのは、円偏波を受信し易くするためである。また、周縁部22bは放射電極23とグランド電極21とに接している。一方、中央部22aは放射電極23に接しているが、グランド電極21に接していない。つまり、誘電体22は、裏面側に円柱状の凹み10aを有する。
【0035】
凹み10aの内側には、ムーブメント99や、回路基板25の表面側に実装された部品(GPS受信部26や二次電池27など)が配置される。このため、パッチアンテナ10は、凹み10aの深さがムーブメント99の厚みよりも長く、凹み10aの径がムーブメント99の径よりも長くなるように成形されている。なお、表示面11aの延在方向において、グランド電極21と誘電体22とは略同じ大きさであるが、グランド電極21を誘電体22よりも大きくしてもよい。
【0036】
放射電極23はパネル基板41である。つまり、ソーラーパネルのパネル基板がパッチアンテナの放射電極を兼ねている。上下方向から見たときの放射電極23の形状は点対象であり、図4(A)に示す通りであるが、これに限るものではなく、図4(B)に示す形状であってもよい。つまり、1点給電でパッチアンテナを円偏波とするためには、二つの縮退分離部を持つように放射電極を形成すればよい。これにより、パッチアンテナは共振周波数を二つ持つことになる。そして、両者の電流位相差が90度となるような1箇所を選んで給電すれば、円偏波が得られる。なお、放射電極23を点対称とするのは、円偏波を受信し易くするためである。
【0037】
放射電極23はパネル基板41であるから、その中央部には上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。この貫通孔は誘電体22の中央部22aの貫通孔に繋がっており、これらの貫通孔を指針軸12が通っている。つまり、ムーブメント99から上方に延在している指針軸12は、誘電体22の中央部22a、ソーラーパネル40の中央部、及び文字板11の中央部を貫通している。なお、表示面11aの延在方向において、誘電体22と放射電極23とは略同じ大きさであるが、誘電体22を放射電極23よりも大きくしてもよい。いずれにせよ、上下方向から見て、放射電極23の外形はグランド電極21の外形の外側に逸脱しない。
【0038】
また、放射電極23と回路基板25とは導通ピン24で接続されている。導通ピン24は、ムーブメント99と誘電体22とを貫通して放射電極23と回路基板25とに接し、放射電極23とGPS受信部26とを電気的に接続する。なお、導通ピン24によって放射電極23とグランド電極21とが短絡することはない。
【0039】
以上の説明から明らかなように、パッチアンテナ10と文字板11との間には、ソーラーパネル40の透明電極42が配置されている。しかし、パッチアンテナ10による電波の受信に関して、ソーラーパネル40は、容量結合によって一枚の金属板のように働く。したがって、透明電極42は、パッチアンテナ10による受信をほとんど妨げない。
【0040】
またソーラーパネル40と回路基板25とはプラスとマイナスの2本の導通バネで接続されている。図3には、2本の導通バネのうち、透明電極42と回路基板25とを接続する導通バネ91のみが示されているが、この他に、透明電極42と回路基板25とを接続する導通バネが存在する。
【0041】
電子時計100は、図2に示す竜頭16やボタン17、18及び19を手動操作することにより、少なくとも1つのGPS衛星90からの衛星信号を受信して内部時刻情報の修正を行うモード(時刻情報取得モード)と複数のGPS衛星90からの衛星信号を受信して測位計算を行い内部時刻情報の時差を修正するモード(位置情報取得モード)に設定できるように構成されている。また、電子時計100は、時刻情報取得モードや位置情報取得モードを定期的に(自動的に)実行することもできる。
【0042】
図6は、パッチアンテナにおけるアンテナ厚みとアンテナゲイン(特性)との関係を示す図であり、破線は平坦なパッチアンテナ(以降、「通常形状のパッチアンテナ」という)における上記関係を示し、実線は中央が凹んでいるパッチアンテナ(以降、「凹形状のパッチアンテナ」という)における上記関係を示す。いずれのパッチアンテナも円形であり、アンテナ直径は35mmである。アンテナ厚みは、パッチアンテナの最も薄い部分の厚みであり、通常形状のパッチアンテナでは周縁部の厚みと一致する。また、凹形状のパッチアンテナにおいて、凹み(中央部)の直径は20mm程度、周縁部の厚みは4mm程度に固定されている。
【0043】
図6に示すように、アンテナ厚みを4mm程度から薄くすると、アンテナゲインは、通常形状のパッチアンテナでは急に低下し、凹形状のパッチアンテナでは緩やかに低下する。すなわち、アンテナ厚みを薄くすることによる特性劣化は、通常形状のパッチアンテナでは大きく、凹形状のパッチアンテナでは小さい。例えば、2dB以上のアンテナゲインが必要な場合、通常形状のパッチアンテナでは3mm程度のアンテナ厚みを確保せねばならないのに対して、凹形状のパッチアンテナでは1mm程度のアンテナ厚みで足りる。
【0044】
図7は、パッチアンテナの動作原理を説明するための図であり、図中の矢印は電気力線である。この図に示すように、パッチアンテナを送信アンテナとして使用すると、放射電極の周縁に沿った強い電界(電磁波)が、周縁から空間へ向かって放射される。したがって、通常形状のパッチアンテナにおいてアンテナ厚みを薄くすると、パッチアンテナの周縁部において放射電極とグランド電極とが近くなり、周縁から電磁波が放射され難くなるため、アンテナ特性が劣化する。このような特性劣化は、パッチアンテナを受信アンテナとして使用した場合にも同様に発生する。
【0045】
これに対して、凹形状のパッチアンテナでは、周縁部における放射電極とグランド電極との距離を一定に保ちつつアンテナ厚みを薄くすることができるから、上記の特性劣化を抑制することができる。ところで、凹形状のパッチアンテナでも、グランド電極の厚みは均一であり、放射電極の厚みも均一である。つまり、アンテナ厚みを薄くすることは、誘電体の厚みを薄くすることに他ならない。これは、周縁よりも中央が薄い誘電体を平坦なグランド電極と平坦な放射電極とで挟んだ構造のパッチアンテナであっても、上記と同様の効果を得られることを意味する。
【0046】
また、放射電極における電圧分布は図中の一点鎖線で示す通りであり、電気力線の向きは、左右で逆向きとなる。したがって、放射電極とグランド電極との間のインピーダンスは、周縁部では高くなり、中央部では低くなる。このことから、パッチアンテナの中央部に指針軸が貫通する貫通孔を設けてもアンテナ特性はさほど劣化しないことが分かる。
【0047】
以上より、本実施形態では、周縁部22bよりも中央部22aが薄い誘電体22を平坦なグランド電極21と平坦な放射電極23とで挟んだ構造のパッチアンテナ10を採用し、パッチアンテナ10内に確保された空間に非導電性の地板38などを収容して誘電体として利用し、誘電体22及び放射電極23の中央部を指針軸12が貫通するように構成している。
【0048】
これにより、十分に高い受信性能と十分な薄さが達成されている。例えば、薄さに関していえば、誘電体22の中央部22aの厚みを0.5mm程度に抑えることができる。なお、誘電体22の周縁部22bの大きさやムーブメント99の材質などによっては、中央部22aが無くても十分に高い受信性能と十分な薄さを達成できる。この場合には、誘電体22として円筒状の誘電体を採用可能である。
【0049】
前述したように、パッチアンテナは、その周縁から電波を放射(受信)する。したがって、全部が金属で形成された金属ケースを採用する場合には、所望のアンテナ特性を確保するために、アンテナ側面と金属ケースとを十分に離間させる必要がある。例えば、パッチアンテナの周縁部の厚みが4mmの場合、アンテナ側面と金属ケースとの距離を2〜3mm以上とするのが望ましい。しかし、アンテナ側面と金属ケースとを十分に離間させると、時計が大型化してしまう。そこで、本実施形態では、本体82のみが金属で形成されたケース80を採用している。これにより、十分に高いアンテナ特性を確保しつつ放射電極23の周縁とケース80との距離を短くすることができる。
【0050】
図8は、電子時計100の回路構成を示すブロック図である。
電子時計100は、GPS受信部26及び制御表示部36を含んで構成されている。GPS受信部26は、衛星信号の受信、GPS衛星90の捕捉、位置情報の生成、時刻修正情報の生成等の処理を行う。制御表示部36は、内部時刻情報の保持及び内部時刻情報の修正等の処理を行う。
【0051】
ソーラーパネル40は、充電制御回路29を通じて二次電池27に電力を充電する。電子時計100はレギュレータ34及び35を備え、二次電池27は、レギュレータ34を介して制御表示部36に、レギュレータ35を介してGPS受信部26に駆動電力を供給する。また電子時計100は、二次電池27の電圧を検出する電圧検出回路37を備える。
【0052】
なお、レギュレータ35に代えて、例えば、RF部50(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−1と、ベースバンド部60(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−2(ともに図示せず)とに分けて設けてもよい。レギュレータ35−1は、RF部50の内部に設けてもよい。
【0053】
GPS受信部26は、パッチアンテナ10及びSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ32を含む。パッチアンテナ10は、図3で説明したように、複数のGPS衛星90からの衛星信号を受信するアンテナである。ただし、パッチアンテナ10は衛星信号以外の不要な電波も若干受信してしまうため、SAWフィルタ32は、パッチアンテナ10が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ32は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
【0054】
また、GPS受信部26は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50とベースバンド部60を含んで構成されている。以下に説明するように、GPS受信部26は、SAWフィルタ32が抽出した1.5GHz帯の衛星信号から航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する処理を行う。
【0055】
RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51、ミキサ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53、PLL(Phase Locked Loop)回路54、IFアンプ55、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルタ56、ADC(A/D変換器)57等を含んで構成されている。
【0056】
SAWフィルタ32が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅される。LNA51で増幅された衛星信号は、ミキサ52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号を位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。その結果、VCO53は基準クロック信号の周波数精度の安定したクロック信号を出力することができる。なお、中間周波数として、例えば、数MHzを選択することができる。
【0057】
ミキサ52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅される。ここで、ミキサ52でのミキシングにより、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も生成される。そのため、IFアンプ55は、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も増幅する。IFフィルタ56は、中間周波数帯の信号を通過させるとともに、この数GHzの高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルタ56を通過した中間周波数帯の信号はADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。
【0058】
ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61、CPU(Central Processing Unit)62、SRAM(Static Random Access Memory)63、RTC(リアルタイムクロック)64を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリ66等が接続されている。
【0059】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。フラッシュメモリ66には、例えば時差情報が記憶されている。時差情報は、時差データ(座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられたUTCに対する補正量等)が定義された情報である。
【0060】
ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する処理を行う。
【0061】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、後述する衛星検索工程において、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、ベースバンド部60は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星90に同期(すなわち、GPS衛星90を捕捉)したものと判断する。ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星90が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星90を検索することができる。
【0062】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードにおいて、捕捉したGPS衛星90の衛星情報を取得するために、当該GPS衛星90のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星90の衛星情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド部60は、航法メッセージの各サブフレームのTLMワード(プリアンブルデータ)を検出し、各サブフレームに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する(例えばSRAM63に記憶する)処理を行う。ここで、GPS時刻情報は、週番号データ(WN)及びZカウントデータであるが、以前に週番号データが取得されている場合にはZカウントデータのみであってもよい。
【0063】
そして、ベースバンド部60は、衛星情報に基づいて、内部時刻情報を修正するために必要な時刻修正情報を生成する。
【0064】
時刻情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報に基づいて測時計算を行い、時刻修正情報を生成する。時刻情報取得モードにおける時刻修正情報は、例えば、GPS時刻情報そのものであってもよいし、GPS時刻情報と内部時刻情報との時間差の情報であってもよい。
【0065】
一方、位置情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報や軌道情報に基づいて測位計算を行い、位置情報(より具体的には、受信時に電子時計100が位置する場所の緯度及び経度)を取得する。さらに、ベースバンド部60は、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報を参照し、位置情報により特定される電子時計100の座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられた時差データを取得する。このようにして、ベースバンド部60は、時刻修正情報として衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データを生成する。位置情報取得モードにおける時刻修正情報は、上記の通り、GPS時刻情報と時差データそのものであってもよいが、例えば、GPS時刻情報の代わりに内部時刻情報とGPS時刻情報の時間差のデータであってもよい。
【0066】
なお、ベースバンド部60は、1つのGPS衛星90の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよいし、複数のGPS衛星90の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよい。
【0067】
また、ベースバンド部60の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65が出力する基準クロック信号に同期する。RTC64は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC64は、TCXO65から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。
【0068】
制御表示部36は、制御部70、駆動回路74及び水晶振動子73を含んで構成されている。
【0069】
制御部70は、回路基板25に実装され、記憶部71、RTC(Real Time Clock)72を備え、各種制御を行う。制御部70は、例えばCPUで構成することが可能である。
【0070】
制御部70は、制御信号をGPS受信部26に送り、GPS受信部26の受信動作を制御する。また制御部70は、電圧検出回路37の検出結果に基づいて、レギュレータ34及びレギュレータ35の動作を制御する。また制御部70は、駆動回路74を介してすべての指針の駆動を制御する。
【0071】
記憶部71には内部時刻情報が記憶されている。内部時刻情報は、電子時計100の内部で計時される時刻の情報であり、水晶振動子73及びRTC72によって生成される基準クロック信号によって更新される。したがって、GPS受信部26への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針の運針を継続することができるようになっている。
【0072】
制御部70は、時刻情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。より具体的には、内部時刻情報は、取得したGPS時刻情報にUTCオフセットを加算することで求められるUTC(協定世界時)に修正される。また、制御部70は、位置情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。
【0073】
以上説明したように、電子時計100は、上下方向に延在する円筒状のケース80と、ケース80に収容され、表示面11aに時刻を表示する時刻表示部(指針13)と、時刻表示部が取り付けられる構造体(地板38)と、表示面11aの下側に配置され、表示面11aに沿って延在し、グランド電極21と、グランド電極21上の誘電体22と、誘電体22上の放射電極23とを有するパッチアンテナ10と、パッチアンテナ10を用いて無線信号を受信する無線受信部26とを備える。そして、ケース80の少なくとも一部は非導電性であり、グランド電極21の大きさは放射電極23の大きさ以上であり、構造体は、グランド電極21と放射電極23との間に配置され、誘電体22は、表示面11aの延在方向において構造体を覆っている。
【0074】
つまり、電子時計100では、上下方向においてパッチアンテナ10と時刻表示部とが重なり、パッチアンテナ10内に非導電性の構造体が収容される。前述したようにパッチアンテナの感度は主に周縁部の厚みに依存し、構造体は誘電体として機能するから、電子時計100によれば、上下上方において時刻表示部とパッチアンテナ10とが重なる構造でありながら、十分に薄く、十分に高い受信性能を得ることができる。
【0075】
また電子時計100では、誘電体22が薄い中央部22aと厚い周縁部22bとを有するから、周縁部22bのみを有する場合に比較して、受信性能が向上する。また電子時計100は上下方向に延在する指針軸12を備え、時刻表示部は指針軸12を中心に周回する指針13を含み、指針軸12は、厚い周縁部22bではなく薄い中央部22aを貫通している。指針軸12を通す貫通孔の径は十分に短く、前述したようにパッチアンテナの感度は主に周縁部の厚みに依存するから、受信性能はほとんど低下しない。
【0076】
また電子時計100では、回路基板25の一部をグランド電極21として用いるから、回路基板25とは別にグランド電極21を設けずに済む。これは、薄型化に寄与する。
【0077】
また電子時計100では、構造体として、表示面に沿って延在する非導電性の地板38を採用している。つまり、誘電体として機能し易い部材を構造体として採用している。これは、受信性能の向上に寄与する。
【0078】
また、電子時計100は光発電を行うソーラーパネル40を備え、ソーラーパネル40は表示面11aに沿って延在する金属製のパネル基板41を有し、パネル基板41を放射電極23として用いる。したがって、パネル基板41とは別に放射電極を設けずに済む。これは、薄型化に寄与する。
【0079】
ところで、パッチアンテナでは、グランド電極を大きくするとアンテナ特性が向上することが知られている。しかし、グランド電極を単純に大きくすると時計が大型化してしまう。そこで、本実施形態では、導電性の裏蓋85を設け、裏蓋導通板39を介してグランド電極21と裏蓋85とを電気的に接続している。これにより、グランド電極を大きくしたのと同様の効果(パッチアンテナの性能向上)を得ることができる。
【0080】
なお、円偏波を効率よく受信するためには、放射電極の形状のみならず、誘電体の形状も点対称とした方がよい。そこで、本実施形態では、指針軸12を通す貫通孔を誘電体22の中央部22aの中心に形成することにより、上下方向から見たときの誘電体22の形状を点対称に近づけている。したがって、本実施形態によれば、円偏波を効率よく受信することができる。
【0081】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計200(以下「電子時計200」という)の一部断面図である。電子時計200は電子時計100と同様の効果を奏するアナログ時刻表示のアンテナ内蔵式電子時計であり、パッチアンテナ10に代えてパッチアンテナ20を備える点と、ケース80に代えてケース88を備える点で電子時計100と相違する。
【0082】
パッチアンテナ20は、誘電体22に代えて誘電体28を有する。基本的には、誘電体28は誘電体22と同様である。例えば、誘電体22が薄い中央部22aと厚い周縁部22bとを有するように、誘電体28は薄い中央部28aと厚い周縁部28bとを有する。また例えば、中央部22aには上下方向に貫通した貫通孔が形成されているように、中央部28aにも上下方向に貫通した貫通孔が形成されている。
【0083】
ただし、誘電体22が裏面側に円柱状の凹み10aを有するのに対し、誘電体28は表面側に円柱状の凹み20aを有する。また、誘電体28の中央部28aに形成された貫通孔を通るのは、指針軸12ではなく、回路基板25の表面側に配置された二次電池27である。換言すれば、中央部28aは二次電池27を囲むように設けられている。なお、図示を略すが、GPS受信部26は回路基板25の裏面側に配置されている。
【0084】
このように、本実施形態では、周縁部28bよりも中央部28aが薄い誘電体28を平坦なグランド電極21と平坦な放射電極23とで挟んだ構造のパッチアンテナ20を採用し、パッチアンテナ20内に確保された空間に地板38などを収容して誘電体として利用し、誘電体28の開口を指針軸12が通るように構成している。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
また、ケース88は、一部が非導電性のケースであり、プラスチックなどの非導電性の材料で形成された円筒状の本体86の外側に金属で形成された金属カバー87を被せた構造を有する。したがって、本体86とパッチアンテナ20とを近づけても、パッチアンテナ20と金属カバー87との間には十分に長い距離が確保される。よって、本実施形態によれば、受信性能を維持しつつ美観を向上させることができる。
【0086】
ところで、前述したように、円偏波を効率よく受信するためには、放射電極の形状のみならず、誘電体の形状も点対称とした方がよい。そこで、本実施形態では、二次電池27を通す貫通孔を誘電体28の中央部28aの中心に形成することにより、上下方向から見たときの誘電体28の形状を点対称に近づけている。したがって、本実施形態によれば、円偏波を効率よく受信することができる。
【0087】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計300(以下「電子時計300」という)の一部断面図である。電子時計300が電子時計100と大きく異なるのは、アナログ時刻表示ではなくデジタル時刻表示の腕時計である点である。
【0088】
電子時計300は、円筒状のケース96を備える。ケース96は、一部が非導電性のケースであり、プラスチックなどの非導電性の材料で形成された円筒状の本体95の外側かつ表面側に金属で形成された金属カバー94を被せた構造を有する。したがって、第2実施形態と同様に、受信性能を維持しつつ美観を向上させることができる。なお、このようなケースの採用による製造コストの抑制は、アナログ時刻表示の腕時計よりも低コストで製造することが求められることの多いデジタル時刻表示の腕時計において特に有益である。
【0089】
また電子時計300は、本体95の内側に、本体95の中心軸の横断面に沿って延在するEL(Electro Luminescent)シート98と、表面ガラス84とELシート98との間に配置された液晶パネル97と、回路基板25の表面側に実装された表示制御部15とを備える。液晶パネル97は、本体95の中心軸の横断面に沿って延在し、その上面は、時刻が表示される表示面97aとして機能する。ELシート98は液晶パネル97のバックライトとして機能する。
【0090】
液晶パネル97は、導通コネクタ49を介して回路基板25と接続されており、表示制御部15と電気的に接続されている。表示制御部15は、液晶パネル97を制御して時刻を示す画像を表示面97aに表示させる。つまり、電子時計300は透過型の液晶表示装置を備え、液晶パネル97及びELシート98は表示面97aに時刻を表示する時刻表示部として機能する。
【0091】
また電子時計300は、表示面97aに沿って延在するソーラーパネル44を有する。ソーラーパネル44がソーラーパネル40と異なる点は、形状および配置のみである。すなわち、ソーラーパネル44は、その形状が円環状であり、液晶パネル97の周縁を囲むように配置されている。なお、ソーラーパネル44は導通バネ91を介して回路基板25と接続されている。
【0092】
ELシート98と回路基板25との間には、表示面97aに沿って延在するパッチアンテナ48が配置されている。パッチアンテナ48は、円偏波を受信可能なマイクロストリップアンテナであり、裏面側のグランド電極45と、表面側の放射電極(アンテナ電極)47と、グランド電極45と放射電極47とに挟まれた誘電体46とを有する。
【0093】
グランド電極45は、グランド電極21と同様に回路基板25の一部であり、金属製の裏蓋導通板79を介して裏蓋85と電気的に接続されている。なお、回路基板25の裏面側には、GPS受信部26や二次電池27が実装されている。誘電体46は薄い中央部46aと厚い周縁部46bとを有し、裏面側に円柱状の凹み48aを有する。凹み48aの内側には非誘電性の地板58が配置される。放射電極47は、例えば、銀等のペースト材を誘電体46の表面にスクリーン印刷して形成される。
【0094】
地板58は、プラスチックなどの非導電性の部材で構成された構造体であり、誘電体46の中央部46aと回路基板25との間に配置され、表示面97aに沿って延在する。地板58には、直接的または間接的に、液晶パネル97及びELシート98が取り付けられている。つまり、地板58には時刻表示部が取り付けられている。なお、表示制御部15は凹み48aの内側に配置されている。
【0095】
[変形例]
上述した各実施形態を以下に例示するように変形してもよい。なお、本発明の範囲には、上述した各実施形態はもちろん、以下に例示する変形例や、以下に例示する変形例および上述した実施形態を適宜に組み合わせて得られる各種の形態も含まれうる。
【0096】
例えば、時計の形状を略円形以外の形状としてもよい。
図11は、本発明の変形例に係るアンテナ内蔵式電子時計400(電子時計400)の平面図である。電子時計400は、外形形状が略円形ではなく略方形である点で各実施形態に係る電子時計と異なる。電子時計400が備える文字板92及びパッチアンテナ93は、外形形状が略方形の平板である。なお、略方形のパッチアンテナでは、正方形の放射電極から対角線の二箇所の角を切って縮退分離部としている。
【0097】
また例えば、図3において、ベゼル81と本体82とを別体とし、ベゼル81として金属製のベゼルを採用してもよい。金属製のベゼルであっても、本体82と別体であれば、渦電流の影響が低減されるから、アンテナ性能の低下を抑制することができる。
【0098】
また例えば、誘電体の中央部(周縁部よりも薄い部分)を複数としてもよい。例えば、円筒状の周縁部の二つの開口の両方を塞ぐように二つの中央部を設ける。この場合、上方の中央部には指針軸を通す貫通孔が形成され、下方の中央部には二次電池やGPS受信部を配置するための貫通孔が形成される。もちろん、二次電池やGPS受信部を回路基板の下側に配置する場合には、これらを配置するための貫通孔を誘電体に形成する必要はない。
【0099】
また例えば、第1又は第2実施形態において、ソーラーパネルのパネル基板とパッチアンテナの放射電極とを別体としてもよい。その場合には、例えば、銀等のペースト材を誘電体の表面にスクリーン印刷して放射電極を形成する。さらに、各実施形態において、ソーラーパネルを排除してもよい。ソーラーパネルを備えない場合の充電方式としては、例えば非接触充電が挙げられる。非接触充電の場合、裏蓋の一部または全部をガラスなどの非導電性の材料で形成することになる。また、二次電池27に代えてリチウム電池などの一次電池を用いてもよい。
【符号の説明】
【0100】
100,200,300,400…アンテナ内蔵式電子時計、10,20,48,93…パッチアンテナ、10a,20a,48a…凹み、11…文字板、11a,97a…表示面、12…指針軸、13(13a,13b,13c)…指針(時刻表示部)、15…表示制御部、21,47…アンテナ電極、22,28,46…誘電体、22a,28a,46a…中央部、22b,28b,46b…周縁部、23,47…放射電極、25…回路基板、26…GPS受信部(無線受信部)、30…駆動機構、38,58…地板(構造体)、40,44…ソーラーパネル(変換板)、41…パネル基板(変換基板)、80,88,96…ケース、81…ベゼル、82,95…本体、85…裏蓋、94…金属カバー、99…ムーブメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する筒状のケースと、
前記ケースに収容され、表示面に時刻を表示する時刻表示部と、
前記時刻表示部が取り付けられる構造体と、
前記表示面の下側に配置され、前記表示面に沿って延在し、グランド電極と、前記グランド電極上の誘電体と、前記誘電体上の放射電極とを有するパッチアンテナと、
前記パッチアンテナを用いて無線信号を受信する無線受信部とを備え、
前記ケースの少なくとも一部は非導電性であり、
前記グランド電極の大きさは、前記放射電極の大きさ以上であり、
前記構造体は、前記グランド電極と前記放射電極との間に配置され、
前記誘電体は、前記表示面の延在方向において前記構造体を覆っている、
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項2】
前記グランド電極は、前記無線受信部を実装した回路基板の一部である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項3】
前記構造体は、前記表示面に沿って延在し、非導電性の部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項4】
上下方向に延在する指針軸を備え、
前記時刻表示部は、前記指針軸を中心に周回する指針を含み、
前記誘電体は、薄い中央部と厚い周縁部とを有し、
前記指針軸は、前記放射電極と前記中央部とを貫通している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項5】
光発電を行う変換板を備え、
前記変換板は、前記表示面に沿って延在する金属製の変換基板を有し、
前記放射電極は、前記変換基板である、
ことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項6】
導電性の裏蓋を備え、
前記グランド電極と前記裏蓋とは電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−107955(P2012−107955A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256204(P2010−256204)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】