説明

アンテナ内蔵式電子時計

【課題】配置位置やサイズの制約が少ない位置に副磁部材を配置できるアンテナ内蔵式電子時計を提供すること。
【解決手段】電波修正時計1は、外装ケース20と、外装ケース20内に配置された文字板14と、前記文字板14の表面側に配置されたダイヤルリング25と、前記文字板14の裏面側に配置されたアンテナ100と、副磁部材61とを備える。アンテナ100は、磁性材料で長手状に形成されるアンテナコア110と、アンテナコア110に巻回されるコイル120とを備える。副磁部材61は、アンテナコア110に磁気結合されるとともに、ダイヤルリング25内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から送信される無線電波を受信するアンテナを内蔵するアンテナ内蔵式電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの時刻情報等を含む無線電波をアンテナにて受信して、時刻修正等の処理を実施するアンテナ内蔵式の電子時計が知られている。
このようなアンテナ内蔵式の電子時計では、アンテナの他に、時計機能を実現するためのモーターや輪列などの様々な部品が配置されているため、アンテナはこれらの部品と干渉しないように配置する必要がある。従って、近年の電波時計の小型化や高機能化に伴い、アンテナのコア形状の縮小化、あるいは他のムーブメント部品や外装部品とアンテナが近接するなどにより、アンテナに入る標準電波の磁界強度が減少するおそれがある。
さらに、標準電波を受信してアンテナで共振された磁界の一部が近接したムーブメント部品や外装部品に入り込み渦電流が発生し、受信感度がアンテナ単体での感度より著しく低下するおそれがある。このため、アンテナに入る磁界強度の向上を行う方法や、近接する部品によるアンテナへの影響を少なくする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の時計は、近接する部品によるアンテナへの影響を少なくする方法として、アンテナで共振された磁界を集めて通す副磁部材を用いる。副磁部材は、絶縁性の両面接着テープにて本体ケースの内周面に固定され、内周面にアンテナを両面接着テープにて配置している。これにより、外装部品に入っていた磁界による渦電流損失を低減させて受信感度が確保できる。
ここで、無線電波には、例えば標準電波基地局から送信される長波標準電波等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような副磁部材を用いる構成では、電波時計の小型化に伴って副磁部材の大きさに制約ができてしまい、効果が減少してしまう。また、副磁部材の効果は副磁部材とアンテナコアの位置関係に依存するため、相対的な位置の変動が少ない固定方法が必要である。
【0005】
また、時計の内部スペースには制約があるのが一般的であり、副磁部材をアンテナの近くに固定して配置すると、他の構成部材と干渉してしまうおそれがある。そのため、副磁部材を他の構成部材と干渉しないように配置しなければならず、副磁部材の配置位置やサイズの制約が多くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、配置位置やサイズの制約が少ない位置に副磁部材を配置できるアンテナ内蔵式電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ内蔵式電子時計は、外装ケースと、外装ケース内に配置された文字板と、前記文字板の表面側に配置されたダイヤルリングと、前記文字板の裏面側に配置されたアンテナと、副磁部材とを備え、前記アンテナは、磁性材料で長手状に形成されるアンテナコアと、前記アンテナコアに巻回されるコイルとを備え、前記副磁部材は、前記アンテナコアに磁気結合されるとともに、前記ダイヤルリング内に配置されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記副磁部材がアンテナコアに磁気結合される構成としては、副磁部材がアンテナコアの両端部に磁気結合される構成が例示できる。
前記特許文献1のように、副磁部材をアンテナコア表面に貼付する場合には、他部品との干渉を考慮しなければならず、副磁部材の配置位置やサイズの制約が多くなる。
これに対し、本発明によれば、磁部材をダイヤルリング内に配置しているので、他部品との干渉などが無く、配置位置やサイズの制約が少なくなり、ダイヤルリングの内部スペースを有効に利用できる。また、副磁部材をダイヤルリングに組み込んだり、貼り付けたりすることができるので、副磁部材をアンテナに貼り付ける場合に比べて、時計の組み立て性を向上できる。
【0009】
本発明において、前記ダイヤルリングの裏面には凹部が形成され、前記副磁部材は、前記凹部内に収納されていることが好ましい。
【0010】
前記ダイヤルリングの前記副磁部材側に凹部が形成されていれば、副磁部材の配置位置を正確に設定できる。このため、アンテナのアンテナコイル又は前記アンテナコアに対して、副磁部材を所定の位置に配置することもでき、副磁部材およびアンテナコアを確実に磁気結合することができる。
【0011】
本発明において、前記副磁部材の端部は、前記アンテナのアンテナコイルに対し、時計を表面側から見た平面視において重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
ここで、時計を表面側から見た平面視において重なる位置とは、時計をカバーガラス側から見た際に、副磁部材の端部と、アンテナコア又はアンテナコイルとが重なって見える位置を意味する。すなわち、副磁部材の端部と、アンテナコア又はアンテナコイルの端部とは、時計の厚さ方向に重なる位置に配置されている。
このような構成によれば、副磁部材とアンテナコアとの離間寸法を最小にでき、磁気結合を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記文字板は、透光性の部材で構成され、前記文字板の裏面には、ソーラーパネルが配置され、前記ソーラーパネルは、基板と、前記基板に形成された受光部とを備えており、前記基板における前記受光部の外側に基板外周部を有し、前記ダイヤルリングは、前記ソーラーパネルの前記基板外周部を被覆していることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、文字板が透光性であっても、文字板の裏側に配置されたソーラーパネルの基板外周部は前記ダイヤルリングで被覆できる。従って、本来、外部から視認されることを想定していない基板外周部が視認されることがないため、外観性を向上できる。
【0015】
本発明において、前記副磁部材は、アモルファス箔で形成されていることが好ましい。
【0016】
アモルファス箔としては、コバルト系アモルファス金属、鉄系アモルファス金属磁性材料等の各種アモルファス金属箔が利用できる。副磁部材をアモルファス箔で形成すれば、例えば、フェライト等で形成する場合よりも耐衝撃性や加工性を高めることができる。これは、フェライトは薄いと割れやすい特性があるのに対して、アモルファス箔は割れにくく、容易に曲げることができる特性を有するためである。
【0017】
本発明において、前記副磁部材は、前記ダイヤルリングの凹部内に収納される副磁部材本体と、この副磁部材本体からアンテナコア側に突出する突出部を備え、前記文字板には、前記突出部が挿入される挿入部が形成されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、副磁部材に、アンテナコア側に突出する突出部を設けたので、副磁部材とアンテナコアとの距離を近接させることができ、その距離によって副磁効果も調整できる。
【0019】
本発明において、前記副磁部材は、前記ダイヤルリング内に、少なくとも一部がインサート形成されていることが好ましい。
このような発明においては、文字板から透過して見えるソーラーパネルの外周外観を覆うダイヤルリング内に副磁部材がインサート形成されているので、ムーブメントに保持されているアンテナと副磁部材の距離の変動によりインダクタンス値が変動して同調周波数がずれて受信性能が劣化してしまう不具合や、アンテナで共振された磁界が分散されて渦電流損失の低減効果が薄れてしまう不都合を防止できる。従って、アンテナの同調周波数を設定値に維持でき、この点でも受信性能を向上できる。さらに、副磁部材はダイヤルリングにインサートされているので、時計落下時に外部からの衝撃を低減でき、副磁部材の破損を防止でき、耐衝撃性が向上する。特に衝撃に弱いアモルファス薄膜で副磁部材を構成した場合に、例えば電子時計の落下などで衝撃が加わっても、副磁部材はダイヤルリングに保護されるので副磁部材の破損を防止できる。
また、副磁部材はダイヤルリングにインサートされているので、時計の組み立て時に副磁部材を他のムーブメント部品に組みつける作業が不要となりムーブメントに副磁部材を固定するための部品費用やアッセンブル費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電波修正時計を示す平面図。
【図2】前記実施形態の電波修正時計のアンテナおよび副磁部材を示す断面図。
【図3】前記実施形態のムーブメント、文字板、ダイヤルリングを示す分解斜視図。
【図4】前記実施形態のソーラーパネルを示す平面図。
【図5】本発明の変形例の副磁部材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
アンテナ内蔵式電子時計である電波修正時計1は、図1に示すように、時針11,分針12,秒針13および文字板14を備えた指針式腕時計(アナログ時計)である。この電波修正時計1は、時刻情報を含む無線電波としての長波標準電波を受信し、受信した時刻情報に基づいて時針11,分針12,秒針13の指示位置を補正する。
【0022】
電波修正時計1は、さらに、標準電波を受信するアンテナ100および前記各指針11〜13の駆動を制御する各種構成が組み込まれたモジュール(ムーブメント)10と、前記モジュール10等を内部に収納する外装ケース20と、時刻合わせ等を行うリュウズ2と、受信動作などを行うボタン3,4とを備える。
ここで、文字板14としては、例えば合成樹脂やガラス等の非導電性素材から形成されていることが好ましく、これにより、後述するカバーガラス24側(時計表面側)から進入する標準電波が阻害されず、アンテナ100にて良好に受信させることが可能となる。
【0023】
外装ケース20は、図2にも示すように、略円筒状のケース本体21と、ケース本体21の下面側の開口を閉塞する裏蓋22と、ケース本体21の上面側に嵌合構造により取り付けられるリング状のベゼル23と、ベゼル23の内周面に取り付けられるカバーガラス24とを備える。
【0024】
外装ケース20内には、図3に示すように、前記モジュール10と、モジュール10を保持する保持リング部材30と、保持リング部材30に保持されるソーラーパネル40と、ソーラーパネル40の表側に配置される透光性の文字板14とが配置されている。
なお、モジュール10は、前記アンテナ100の他、地板、回路基板、ステッピングモーター、駆動輪列等が組み込まれた一般的な構成を採用しているため、以下では説明を省略する。
【0025】
ソーラーパネル40は、図3,4に示すように、平面視略円形状の基板41と、基板41の表面側に形成されたソーラーパネルの受光部42とを備えており、受光部42の外側に基板外周部43を有する。また、受光部42は、複数の領域(本実施形態では5つ)に分割され、各領域の出力を直列接続することで発電電圧を向上させている。
各受光部42の外周は、保持リング部材30に沿ってほぼ円周状に形成されている。2つの受光部42の一部分は、内周側に凹んでおり、この部分の基板外周部43の面積は広くされている。そして、この基板外周部43の領域の広い部分に貫通穴を設けて基板41の裏面側にプラスおよびマイナスの各端子44を設け、この端子44に導通部材(図示略)を接続し、この導通部材を介してモジュール10の回路基板(図示略)に電気的に接続される。これにより、ソーラーパネル40は、文字板14を透過した太陽光が受光部42に当たることで発電を行い、受光部42で発電された電力は、導通部材を介して回路基板に設けられた二次電池(図示略)に充電され、この二次電池の出力で回路基板等が駆動される。
【0026】
アンテナ100は、図1,4に示すように、長手状に形成されており、外装ケース20内において時計の9時位置に配置されている。
このアンテナ100は、アンテナコア110と、アンテナコア110に巻回されるコイル120とにより構成されている。
アンテナコア110は、コイル120が巻回されるコイル巻部111と、コイル巻部111の両端側から延出するリード部112とを備え、長手状に形成されている。ここで、コイル巻部111は直線状に、リード部112は円弧状に形成されている。このアンテナコア110は、例えば、磁性箔材としてのコバルト系のアモルファス箔(例;Co50wt%以上のアモルファス箔)を型で打ち抜くか、エッチングで成形したものを10〜30枚程接着して重ね合わせ、焼鈍などの熱処理を行って磁気特性を安定化させたものである。
そして、アンテナコア110は、図2に示すように、平面状のアモルファス箔を、電波修正時計1の厚さ方向(カバーガラス24および裏蓋22を結ぶ方向)に積層して構成されている。なお、アンテナコア110としては、積層アモルファス箔に限定されず、フェライトを用いてもよく、この場合には、型などで成形し、熱処理して製造すればよい。
【0027】
コイル120は、長波標準電波(40〜77.5kHz)を受信する場合、10mH程度のインダクタンス値が必要となる。このため、本実施形態では、コイル120として直径0.1μm程度のウレメット線を数百ターンほど巻いて構成している。
【0028】
ベゼル23の内周側には、図2に示すように、ダイヤルリング25が配置され、このダイヤルリング25の内周部分は、文字板14に向かう傾斜面となっている。
ダイヤルリング25は、図3および図4に示すように、ソーラーパネル40の基板外周部43を被覆している。すなわち、ダイヤルリング25の内周縁251は、前記ソーラーパネル40の基板外周部43よりも内側に配置されている。これにより、透光性の文字板14からソーラーパネル40が透けて見える場合でも、ソーラーパネル40の基板外周部43や、形状の不揃いなソーラーパネル40の受光部の外周などは、ダイヤルリング25によって覆われるため、違和感なく視認されないようにされている。
【0029】
前記ダイヤルリング25の裏面には、図2に示すように、凹部252が形成されている。各凹部252には、副磁部材61が配置されている。副磁部材61は、凹部252に接着剤などによって接合されている。
副磁部材61の一部および全部は、図1,4に示すように、コイル120に平面視において重なる位置に配置されている。すなわち、アンテナ100のコイル120と副磁部材61とは、間に文字板14およびソーラーパネル40を挟んで、電波修正時計1の厚さ方向に離れてかつ重なって配置されている。
【0030】
副磁部材61は、ダイヤルリング25の平面形状に合わせて略円弧状に形成され、リード部112には平面視において重ならないよう配置されている。
【0031】
この副磁部材61は、アモルファス箔を複数層に積層して形成され、このアモルファス箔としては、例えばコバルト系アモルファス(Co−Fe−Ni−B−Si)などが挙げられる。この副磁部材61は、例えばコバルト系アモルファス(Co−Fe−Ni−B−Si)の場合で比透磁率が20000であり、ダイヤルリング25、文字板14およびソーラーパネル40に比べてはるかに高い透磁率を有している。従って、副磁部材61には、アンテナで共振された磁界の一部である磁束線が集められ磁界が強くなり、一方のリード部112から副磁部材61を介して他方のリード部112を通過する磁束線の磁束密度も高くなる。このことによりアンテナで共振された磁界の一部である磁束線が、アンテナコア110からケース本体21やベゼル23に流れ吸収されることを防止できる。従って、ケース本体21やベゼル23で発生していた渦電流損失を低減でき、アンテナの受信感度の低下を防止することができる。また、アンテナコア110からムーブメントの金属部品(輪列等)に入っていた磁界の一部も副磁部材61を通過し、ムーブメント部品に吸収されることを防止できる。このため、ムーブメント部品で発生していた渦電流損失を低減することができる。
【0032】
ここで、副磁部材61とアンテナコア110とは、前述の通り、時計厚さ方向に離れて配置される。副磁部材61およびアンテナコア110は、磁気的に結合すれば良いため、密着している必要は無く、文字板14およびソーラーパネル40が間に介在していても十分に磁気的に結合する。
【0033】
上述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、アンテナコア110に磁気結合する副磁部材61を設けたので、このような副磁部材61が設けられてない場合に比べて受信感度を向上できる。
その上、副磁部材61をダイヤルリング25内に配置しているので、副磁部材61をモジュール10内に配置する場合のように、他の部品と干渉することもない。このため、ダイヤルリング25内であれば配置位置やサイズの制約が無いため、受信特性を向上させるために適した配置位置やサイズおよび形状を自由に設定できる。さらに、ダイヤルリング25の内部スペースに副磁部材61を配置できるので、時計の厚さが増大することもなく、ダイヤルリング25の内部スペースを有効利用できる。
【0034】
(2)ダイヤルリング25の凹部252に副磁部材61が配置されているので、ダイヤルリング25に対する副磁部材61の位置決めを容易にかつ正確にできる。このため、アンテナ100に対する副磁部材61の位置も正確に設定でき、他の金属部品内に発生する渦電流損失の防止効果も最適化できる。
また、副磁部材61の全部および一部を、アンテナ100のコイル120に対して時計厚さ方向で重なる位置に配置しているので、副磁部材61およびアンテナコア110の離間寸法を最小にできる。従って、間に文字板14やソーラーパネル40が介在されていても、磁気結合を高めることができ、この点でも渦電流損失の防止効果を最適化できる。
【0035】
(3)さらに、副磁部材61をダイヤルリング25に組み込んで貼り付けているので、副磁部材61をアンテナのコイル120やケース本体21等に貼り付ける場合に比べて、時計の組み立て性を向上できる。また、電波修正時計1を落下した場合のように衝撃等が加わった場合でも、副磁部材61をダイヤルリング25で保護できて強度をアップでき、耐衝撃性能も向上できる。
【0036】
(4)副磁部材61は、複数枚のアモルファス箔が複数積層されて形成されているので、アンテナで共振された磁界の一部である磁束線の集磁効果を高めることができる。
【0037】
(5)ソーラーパネル40の基板外周部43をダイヤルリング25で被覆しているので、外部から視認されることを想定していない基板外周部43や受光部42の外周縁が文字板14から透過して外部から視認されることがなく、違和感のない文字板表面となり電波修正時計1の外観を向上できる。
【0038】
[実施形態の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、副磁部材61の全部および一部を、アンテナ100のコイル120に対して1個の副磁部材61が設けられる構成にしたが、複数個の副磁部材61により設けられる構成などとしてもよい。
【0039】
前記実施形態では、副磁部材61は、強磁性部材であるアモルファス金属で構成されていたが、副磁部材61は、文字板14、ソーラーパネル40、ケース本体21、ベゼル23の透磁率よりも大きい透磁率を有する材質で構成すればよく、その材質は上記の各部品の材質やソーラーパネル40の有無(ソーラー発電によらない電波時計も含む)などにより適宜選択すればよい。
前記実施形態では、副磁部材61はアモルファス箔材で構成されたが、例えば、フェライト材などにより形成される構成や、フェライトめっきなどによりめっき形成する構成、アモルファス金属などの副磁部材61が設けられた樹脂シートを貼り付けるなどの構成としてもよい。
【0040】
前記実施形態では、ダイヤルリング25に形成された凹部252に副磁部材61を配置していたが、副磁部材61を内部に配置したインサート成形でダイヤルリング25を製造してもよい。
また、副磁部材61の平面位置は、アンテナ100のコイル120に重なる位置に限らず、リード部112に対して平面的にずれた位置に配置してもよく、リード部112と磁気的に結合できる位置に設ければよい。
【0041】
さらに、図5に示すように、副磁部材61は、ダイヤルリング25の凹部252内に収納される副磁部材本体611と、この副磁部材本体611からアンテナコア110側に突出する突出部612とを備えたものでもよい。この突出部612は、副磁部材本体611と別体に形成したアモルファス箔材を積層して柱状に構成し、副磁部材本体611に接着したものである。
また、文字板14は、前記突出部612が挿入される挿入部141となる穴が形成されている。
このような構成によれば、副磁部材61の突出部612を挿入部141に配置することで、前記実施形態に比べて、副磁部材61とリード部112の距離を近接させることができる。従って、副磁部材61およびリード部112の磁気結合の強さを高めることができ、副磁部材61により他の金属部品内に発生する渦電流損失の防止効果も最適化できると共にその効果を調整できる。
【0042】
なお、突出部612は、フェライト材などの他の磁性部材で構成してもよい。また、副磁部材61をフェライト材で構成する場合には、副磁部材本体611および突出部612を一体に成形して構成すればよい。
さらに、ソーラーパネル40に挿入部141に連続する穴を設け、突出部612をソーラーパネル40を通過し突出させて配置してもよい。
【0043】
前記実施形態では、アンテナコア110は、直線状に形成されたコイル巻部111と、コイル巻部111の両端に円弧状に形成されたリード部112とを備える構成としたが、コイル巻部111およびリード部112が直線上に配置された構成としてもよい。
つまり、外装ケース20や文字板14の形状に合わせて、ダイヤルリング25は、その形状をデザインされているので、角型の外装ケースやバケット型の外装ケースの場合にはコイル巻部111およびリード部112が直線上に配置されたアンテナとなるものでもよい。
前記実施形態において、文字板14の裏面にソーラーパネル40が固定される例を示したが、これに限定されず、ソーラーパネル40が設けられない構成などとしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、アンテナを用いて通信する無線情報として、時刻情報を例示したがこれに限らない。例えば、電波修正時計1内にICカード機能を内蔵させ、電車の定期券や各種プリペイドICカードのような情報を送受信するために利用してもよい。例えば、外装ケース20内にICチップとアンテナ等を組み込み、ICカードを用いた改札機や入退室管理機、各種の課金支払機等に腕時計を近接させて情報をやり取りできるようにしてもよい。この場合、別途、ICカードを出し入れする必要がなく、時計1をはめた手を近付けるだけでよいため、操作性を非常に向上することができる。
従って、本発明の外装ケース20に内蔵されるアンテナとしては、標準電波を受信する場合のような受信専用に用いるものでもよいし、非接触ICを用いたタグのように、情報を送受信するために用いてもよいし、さらには送信専用に用いてもよく、これらは本発明を適用するアンテナ内蔵式電子時計の種類に応じて適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0045】
1…電波修正時計、10…モジュール(ムーブメント)、14…文字板、20…外装ケース、25…ダイヤルリング、30…保持リング部材、40…ソーラーパネル、61…副磁部材、100…アンテナ、110…アンテナコア、111…コイル巻部、112…リード部、120…コイル、141…挿入部、252…凹部、611…副磁部材本体、612…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
外装ケース内に配置された文字板と、
前記文字板の表面側に配置されたダイヤルリングと、
前記文字板の裏面側に配置されたアンテナと、
副磁部材とを備え、
前記アンテナは、磁性材料で長手状に形成されるアンテナコアと、前記アンテナコアに巻回されるコイルとを備え、
前記副磁部材は、前記アンテナコアに磁気結合されるとともに、前記ダイヤルリング内に配置されている
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記ダイヤルリングの裏面には凹部が形成され、
前記副磁部材は、前記凹部内に収納されている
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記副磁部材の端部は、前記アンテナコイル又は前記アンテナコアに対し、時計を表面側から見た平面視において重なる位置に配置されている
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記文字板は、透光性の部材で構成され、
前記文字板の裏面には、ソーラーパネルが配置され、
前記ソーラーパネルは、基板と、前記基板に形成された受光部とを備えており、前記基板における前記受光部の外側に基板外周部を有し、
前記ダイヤルリングは、前記ソーラーパネルの前記基板外周部を被覆している
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記副磁部材は、アモルファス箔で形成されている
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記副磁部材は、前記ダイヤルリングの凹部内に収納される副磁部材本体と、この副磁部材本体からアンテナコア側に突出する突出部を備え、
前記文字板には、前記突出部が挿入される挿入部が形成されている
ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項7】
請求項1から請求6のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
前記副磁部材は、前記ダイヤルリング内に、少なくとも一部がインサート形成されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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