説明

アンテナ制御システム

【課題】端末機器に十分な電力を供給でき、制御装置と端末機器間の距離を延長することが可能なアンテナ制御システムを提供する。
【解決手段】制御装置12は、必須接続である10〜30Vの電源ラインに電源を供給するように構成され、制御装置12から10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、任意接続である+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力する第1変換器2と、第1変換器2から+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、制御装置12の出力電圧と等しい電圧に戻し、10〜30Vの電源ラインに出力する第2変換器3と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AISG(Antenna Interface Standards Group)規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信用の無線基地局では、一般に、アンテナのチルト制御を遠隔制御により行えるようになっている。当初は、アンテナの制御方式としてメーカーごとに独自の方式を用いていたが、近年のLTE(Long Term Evolution)無線基地局などでは、アンテナの制御をAISG規格で行うことが多くなっている。AISG規格は、アンテナの基本的な相互運用を確実にすべく標準化された規格である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示すように、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行う従来のアンテナ制御システム71は、無線基地局のアンテナ(図示せず)の制御を行うRET(Remote Electrical Tilt)ユニットなどの端末機器(AISG端末機器)11と、端末機器11に制御信号(RS−485規格信号)を送信し、端末機器11を制御してアンテナの制御を行うと共に、端末機器11に電源を供給する制御装置(AISG制御装置)12と、制御装置12と端末機器11とを接続する制御ケーブル(AISG制御ケーブル)13と、を備えている。制御ケーブル13は、図示していないが、制御信号を伝送するための制御信号線と、電源を供給するための電源線とを備えている。
【0004】
AISG規格にて規定されているコネクタのピン端子の番号(Pin Number)、各ピン端子で伝搬する信号(Signal)、必須接続(Mandatory)であるか任意接続(Optional)であるかという要求(Requirement)を表1に示す。
【0005】
【表1】

【0006】
表1に示すように、AISG規格では、1番の+12V、2番の−48V、6番の10〜30Vの3種類の電源ラインが用意されており、+12Vと−48Vの電源ラインは任意接続、10〜30Vの電源ラインは必須接続とされている。現状の既設のアンテナ制御システムでは、必須接続である10〜30Vの電源ラインのみが使用され、任意接続の−48Vや+12Vの電源ラインが使用されていない場合が多い。なお、表1における8番のNCは無接続(No Connection)を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2010−519804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のAISG規格に準拠したアンテナ制御システム71では、制御ケーブル13の電源線に使用できる導体線心の太さに上限があるため、電源線の導体抵抗を下げることには限界があるという問題がある。これは、電源線を太くすると、制御ケーブル13全体の径が太くなり、現在一般に使用されているAISG規格に準拠したコネクタ(AISGコネクタ)への制御ケーブル13の接続が困難になるためである。
【0009】
制御装置12の供給電圧をV0、端末機器11の消費電力をPL、制御ケーブル13の単位長さ当たりの導体抵抗をR0とすると、制御ケーブル13の最大長Lmaxは、下式
max=V02/4PL2R0
で表される。例えば、導体抵抗R0が24Ω/km、端末機器11の消費電力PLが10W、制御装置12の供給電圧V0が24Vであれば、制御ケーブル13の最大長Lmaxは300mに制限されることになる。この場合、制御ケーブル13の長さが300mを超えると、端末機器11における電力が不足してしまう。
【0010】
また、AISG規格に準拠したアンテナ制御システム41では、複数の端末機器11をデイジーチェーン接続することが可能である。しかし、多くの端末機器11をデイジーチェーン接続したり、消費電力の多い端末機器11を用いた場合には、制御ケーブル13の長さが短い場合であっても、端末機器11にて電力が不足してしまうことも考えられる。
【0011】
このように、従来のAISG規格に準拠したアンテナ制御システム71では、制御ケーブル13の最大長が制限され制御装置12と端末機器11間の距離が制限されてしまい、また、多くの端末機器11をデイジーチェーン接続したり消費電力の多い端末機器11を用いた場合に、端末機器11にて電力が不足してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、端末機器に十分な電力を供給でき、制御装置と端末機器間の距離を延長することが可能なアンテナ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、無線基地局のアンテナの制御を行う1台以上の端末機器と、前記端末機器に制御信号を送信し、前記端末機器を制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記端末機器に電源を供給する制御装置と、前記制御装置と前記端末機器、および前記端末機器同士を接続するために用いられる制御ケーブルと、を備え、AISG規格に準拠して前記アンテナの制御を行うアンテナ制御システムにおいて、前記制御装置は、必須接続である10〜30Vの電源ラインに電源を供給するように構成され、前記制御装置から前記10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、任意接続である+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力する第1変換器と、該第1変換器から前記+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、前記制御装置の出力電圧と等しい電圧に戻し、前記10〜30Vの電源ラインに出力する第2変換器と、を備えたアンテナ制御システムである。
【0014】
前記第1変換器は、前記制御装置側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第1変換器用入力コネクタと、前記制御装置と反対側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第1変換器用出力コネクタと、前記第1変換器用入力コネクタと前記第1変換器用出力コネクタが取り付けられると共に、該両コネクタの間で、前記制御信号を伝送する制御信号ラインを電気的に接続し、前記10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、前記第1変換器用出力コネクタの前記+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力するよう構成された第1変換器用本体部と、を備えていてもよい。
【0015】
前記第2変換器は、前記第1変換器の出力側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第2変換器用入力コネクタと、前記第1変換器と反対側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第2変換器用出力コネクタと、前記第2変換器用入力コネクタと前記第2変換器用出力コネクタが取り付けられると共に、該両コネクタの間で、前記制御信号を伝送する制御信号ラインを電気的に接続し、前記+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、前記制御装置の出力電圧と等しい電圧に戻し、前記第2変換器用入力コネクタと前記第2変換器用出力コネクタの少なくとも一方の前記10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成された第2変換器用本体部と、を備えていてもよい。
【0016】
前記第1変換器と前記第2変換器との間に設けられる前記制御ケーブルとしては、前記+12Vまたは−48Vの電源ラインとなる電源線を備えたものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端末機器に十分な電力を供給でき、制御装置と端末機器間の距離を延長することが可能なアンテナ制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、(b)は第1変換器の概略構成図、(c)は第2変換器の概略構成図である。
【図2】図1のアンテナ制御システムに用いる制御ケーブルの一例を示す横断面図である。
【図3】(a),(b)は、第1変換器の一変形例を示す概略構成図である。
【図4】(a)〜(c)は、第2変換器の一変形例を示す概略構成図である。
【図5】図1(b)の第1変換器を分配器と同一の筐体に内蔵したときの概略構成図である。
【図6】図1(c)の第2変換器を分配器と同一の筐体に内蔵したときの概略構成図である。
【図7】従来のアンテナ制御システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0020】
図1(a)は、本実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、図1(b)は第1変換器の概略構成図、図1(c)は第2変換器の概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、アンテナ制御システム1は、無線基地局のアンテナ(図示せず)の制御を行うRETユニットなどの端末機器(AISG端末機器)11と、端末機器11に制御信号(RS−485規格信号)を送信し、端末機器11を制御してアンテナの制御を行うと共に、端末機器11に電源を供給する無線機などの制御装置(AISG制御装置)12と、制御装置12と端末機器11、および端末機器11同士を接続するための制御ケーブル(AISG制御ケーブル)13と、を備えている。アンテナ制御システム1は、AISG規格に準拠してアンテナのチルト角等の制御を行うものである。
【0022】
図1では、1台の端末機器11を用いる場合を示しているが、端末機器11の台数はこれに限定するものではなく、2台以上の端末機器11をデイジーチェーン接続することも可能である。
【0023】
制御装置12には、端末機器11に制御信号と電力を出力するための出力コネクタ(メスコネクタ)12aが設けられている。端末機器11には、制御装置12からの制御信号と電力が入力される入力コネクタ(オスコネクタ)11aと、デイジーチェーン接続用の出力コネクタ(メスコネクタ)11bとが設けられている。また、制御ケーブル13の一端にはオスコネクタ13aが設けられ、制御ケーブル13の他端にはメスコネクタ13bが設けられている。これらコネクタ11a,11b,12a,13a,13bは、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)であり、例えば、第一電子工業社製のAIC−M16R−8SCなどである。
【0024】
制御装置12は、必須接続である10〜30Vの電源ラインにのみ電源を供給するように構成されている。また、ここでは、端末機器11が、10〜30Vの電源ラインのみを使用するものである場合を説明する。
【0025】
制御ケーブル13は、図2に示すように、制御信号を伝送する制御信号ラインとして用いる2本の制御信号線14と、電源を供給するための3本の電源線15とを備えている。2本の制御信号線14には、ドレインワイヤ16が縦添えされており、2本の制御信号線14とドレインワイヤ16の周囲には、これらを一括して取り囲むようにシールドテープ(金属テープ)17が設けられている。
【0026】
3本の電源線15は、異なる電圧が設定された2本の電源線15a,15cと、DCリターン用の電源線15bとからなる。ここでは、−48Vの電源ラインとなる−48V線15aと10〜30Vの電源ラインとなる10〜30V線15cを備える場合を示している。
【0027】
3本の電源線15は、介在18と共に2本の制御信号線14の周囲(シールドテープ17の周囲)に配置され、これらを一括して取り囲むように、シールドテープ19、編組シールド20、シース21が順次設けられている。
【0028】
なお、図2の制御ケーブル13は、あくまで一例として示したものであり、制御ケーブル13は、図2の構成に限定されるものではない。例えば、詳細は後述するが、制御装置12と第1変換器2間、および第2変換器3と端末機器11間に設けられる制御ケーブル13については、−48V線15aを使用しないので、−48V線15aを省略したものを用いることも可能である。
【0029】
制御装置12と端末機器11とは制御ケーブル13を介して接続されるが、両者を直接接続した場合、制御ケーブル13の抵抗成分による電圧降下により、制御ケーブル13にて電力ロスが発生してしまう。そのため、端末機器11に十分な電力を供給しつつ、制御装置12と端末機器11間の距離を延長することは困難である。そこで、本発明では、制御装置12と端末機器11との間に、第1変換器2と第2変換器3とを挿入している。
【0030】
第1変換器2は、制御装置12から10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、任意接続である+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力するものである。ここでは、第1変換器2を、10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧(24V程度)を、48Vに変換(変圧)し、符号を反転させて−48Vの電源ラインに出力するように構成した。
【0031】
他方、第2変換器3は、第1変換器2から+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、制御装置12の出力電圧と等しい電圧に戻し、10〜30Vの電源ラインに出力するものである。ここでは、第2変換器3を、−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を、10〜30V(24V程度)に変換(変圧)し、10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成した。
【0032】
つまり、本発明のアンテナ制御システム1では、第1変換器2で10〜30V電源から−48V電源を生成し、第2変換器3で−48V電源から10〜30V電源に戻しており、両変換器2,3に挟まれた一部の区間において、制御装置12の出力電圧よりも高い−48Vで電力の輸送(供給)を行うように構成している。電圧(絶対値)を大きくすれば小電流でも大電力を供給できることから、両変換器2,3に挟まれた区間の電流を小さくし、制御ケーブル13での電圧降下による電力ロスを抑制することが可能となる。
【0033】
よって、システム全体の電力効率を高めるためには、第1変換器2をなるべく制御装置12の近傍に配置すると共に、第2変換器3をなるべく端末機器11の近傍に配置し、高い電圧で給電を行う区間を長くすることが望ましい。
【0034】
以下、第1変換器2と第2変換器3について詳細に説明する。
【0035】
<第1変換器>
図1(a),(b)に示すように、第1変換器2は、制御装置12側の制御ケーブル13と接続される第1変換器用入力コネクタ(オスコネクタ)4と、制御装置12と反対側の制御ケーブル13と接続される第1変換器用出力コネクタ(メスコネクタ)5と、第1変換器用入力コネクタ4と第1変換器用出力コネクタ5が取り付けられる第1変換器用本体部6と、を備えている。
【0036】
第1変換器用入力コネクタ4と第1変換器用出力コネクタ5は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタである。ここでは、両コネクタ4,5を制御ケーブル13に接続する場合を示しているが、制御装置12(出力コネクタ12a)や端末機器11(入力コネクタ11aまたは出力コネクタ11b)に直接接続することも可能である。
【0037】
図1(a)のアンテナ制御システム1では、制御装置12の出力コネクタ12aには、制御ケーブル13のオスコネクタ13aが接続され、その制御ケーブル13のメスコネクタ13bが第1変換器用入力コネクタ4に接続され、これにより、制御装置12と第1変換器2とが制御ケーブル13を介して接続されている。また、第1変換器用出力コネクタ5には、第2変換器3に延びる制御ケーブル13のオスコネクタ13aが接続される。
【0038】
図1(b)に示すように、第1変換器用本体部6は、両コネクタ4,5の間で、必須接続である10〜30Vの電源ラインと、制御信号を伝送する制御信号ラインをそれぞれ電気的に接続するように構成されている。つまり、第1変換器用本体部6は、両コネクタ4,5の間で、10〜30Vの電源ラインとなる6番のピン端子同士、DCリターンとなる7番のピン端子同士、RS485A,RS485Bの制御信号ラインとなる3番,5番のピン端子同士を、それぞれ内部配線6aにより直接結線するように構成されている。
【0039】
また、第1変換器用本体部6は、10〜30Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、第1変換器用出力コネクタ5の−48Vの電源ラインに出力するように構成される。具体的には、第1変換器用本体部6にDC/DCコンバータ6bを備え、DC/DCコンバータ6bを用いて10〜30V電源から−48V電源を生成し、DC/DCコンバータ6bの出力端子を−48Vの電源ラインへ接続することにより、−48Vの電源ラインに給電するように構成した。DC/DCコンバータ6bとしては、入出力絶縁型のものを用いる。
【0040】
DC/DCコンバータ6bの入力端子の正極(Vin(+))は10〜30Vの電源ライン、すなわち6番のピン端子同士を接続する内部配線6aに電気的に接続され、入力端子の負極(Vin(−))はDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線6aに電気的に接続される。また、DC/DCコンバータ6bの出力端子の正極(Vout(+))はDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線6aに電気的に接続され、出力端子の負極(Vout(−))は第1変換器用出力コネクタ5の−48Vの電源ライン、すなわち2番のピン端子に電気的に接続される。
【0041】
なお、DC/DCコンバータ6bとしては、入力端子の負極(Vin(−))と出力端子の正極(Vout(+))が内部で電気的に接続されているものを用いてもよい。この場合、入力端子の負極(Vin(−))と出力端子の正極(Vout(+))のいずれか一方を、DCリターンに電気的に接続するようにすればよい。
【0042】
本実施の形態では、第1変換器2を、10〜30Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、−48Vの電源ラインに出力するように構成したが、第1変換器2を、10〜30Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、+12Vの電源ラインに出力するように構成することも可能である。この場合、DC/DCコンバータ6bの出力端子の正極(Vout(+))を第1変換器用出力コネクタ5の+12Vの電源ライン、すなわち1番のピン端子に電気的に接続し、出力端子の負極(Vout(−))をDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線6aに電気的に接続するように、第1変換器用本体部6を構成すればよい。
【0043】
また、本実施の形態では、第1変換器用出力コネクタ5の−48Vの電源ラインのみに電源を供給したが、図3(a)に示すように、DC/DCコンバータ6bの出力端子の負極(Vout(−))を、さらに第1変換器用入力コネクタ4の−48Vの電源ライン(2番のピン端子)に電気的に接続するようにしてもよい。つまり、第1変換器用本体部6は、第1変換器用入力コネクタ4と第1変換器用出力コネクタ5の両方の+12Vまたは−48Vの電源ラインに電源を供給するように構成されていてもよい。
【0044】
さらに、本実施の形態では、第1変換器用本体部6を、両コネクタ4,5間で10〜30Vの電源ラインを電気的に接続するように構成したが、第1変換器2と第2変換器3の間に10〜30Vの電源ラインを使用する端末機器11を配置しない場合などは、図3(b)に示すように、両コネクタ4,5間で10〜30Vの電源ラインを電気的に接続しないように第1変換器用本体部6を構成してもよい。この場合、第1変換器用入力コネクタ4の10〜30Vの電源ライン(6番のピン端子)がDC/DCコンバータ6bの入力端子の正極(Vin(+))のみに電気的に接続されるように、内部配線6aが配線されることになる。
【0045】
<第2変換器>
図1(a),(c)に示すように、第2変換器3は、第1変換器2の出力側(つまり制御装置12側)の制御ケーブル13と接続される第2変換器用入力コネクタ(オスコネクタ)7と、第1変換器2と反対側(つまり制御装置12と反対側)の制御ケーブル13と接続される第2変換器用出力コネクタ(メスコネクタ)8と、第2変換器用入力コネクタ7と第2変換器用出力コネクタ8が取り付けられる第2変換器用本体部9と、を備えている。
【0046】
第2変換器用入力コネクタ7と第2変換器用出力コネクタ8は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタである。ここでは、両コネクタ7,8を制御ケーブル13に接続する場合を示しているが、端末機器11(入力コネクタ11aまたは出力コネクタ11b)に直接接続することも可能である。
【0047】
図1(a)のアンテナ制御システム1では、第1変換器2の第1変換器用出力コネクタ5から延びる制御ケーブル13のメスコネクタ13bが第2変換器用入力コネクタ7に接続され、これにより、第1変換器2と第2変換器3とが制御ケーブル13を介して接続されている。なお、第1変換器2と第2変換器3との間に設けられる制御ケーブル13としては、−48Vの電源ライン(または+12Vの電源ライン)となる電源線を備えたものを用いる必要がある。
【0048】
また、第2変換器用出力コネクタ8には、制御ケーブル13のオスコネクタ13aが接続され、その制御ケーブル13のメスコネクタ13bが端末機器11の入力コネクタ11aに接続され、これにより、第2変換器3と端末機器11とが制御ケーブル13を介して接続されている。端末機器11の出力コネクタ11bは、何も接続されず開放された状態となっている。
【0049】
図1(c)に示すように、第2変換器用本体部9は、両コネクタ7,8の間で、必須接続である10〜30Vの電源ラインと、制御信号を伝送する制御信号ラインをそれぞれ電気的に接続するように構成されている。つまり、第2変換器用本体部9は、両コネクタ7,8の間で、10〜30Vの電源ラインとなる6番のピン端子同士、DCリターンとなる7番のピン端子同士、RS485A,RS485Bの制御信号ラインとなる3番,5番のピン端子同士を、それぞれ内部配線9aにより直接結線するように構成されている。
【0050】
また、第2変換器用本体部9は、−48Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、10〜30Vの電源ラインに出力するように構成される。具体的には、第2変換器用本体部9にDC/DCコンバータ9bを備え、DC/DCコンバータ9bを用いて−48V電源から10〜30V電源(24V程度)を生成し、DC/DCコンバータ9bの出力端子を10〜30Vの電源ラインへ接続することにより、10〜30Vの電源ラインに給電するように構成した。DC/DCコンバータ9bとしては、入出力絶縁型のものを用いる。
【0051】
DC/DCコンバータ9bの入力端子の正極(Vin(+))はDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線9aに電気的に接続され、入力端子の負極(Vin(−))は、第2変換器用入力コネクタ7の−48Vの電源ライン、すなわち2番のピン端子に電気的に接続される。また、DC/DCコンバータ9bの出力端子の正極(Vout(+))は10〜30Vの電源ライン、すなわち6番のピン端子同士を接続する内部配線9aに電気的に接続され、出力端子の負極(Vout(−))はDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線9aに電気的に接続される。
【0052】
なお、DC/DCコンバータ9bとしては、入力端子の正極(Vin(+))と出力端子の負極(Vout(−))が内部で電気的に接続されているものを用いてもよい。この場合、入力端子の正極(Vin(+))と出力端子の負極(Vout(−))のいずれか一方を、DCリターンに電気的に接続するようにすればよい。
【0053】
本実施の形態では、第2変換器3を、−48Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、10〜30Vの電源ラインに出力するように構成したが、第1変換器2で変換後の電圧を出力する電源ラインが+12Vの電源ラインである場合は、+12Vの電源ラインから入力された電圧を変換(変圧)して、10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成してもよい。この場合、DC/DCコンバータ9bの入力端子の正極(Vin(+))を第2変換器用入力コネクタ7の+12Vの電源ライン、すなわち1番のピン端子に電気的に接続し、入力端子の負極(Vin(−))をDCリターン、すなわち7番のピン端子同士を接続する内部配線9aに電気的に接続するように、第2変換器用本体部9を構成すればよい。
【0054】
また、本実施の形態では、第2変換器用入力コネクタ7の−48Vの電源ラインをDC/DCコンバータ9bの入力端子の負極(Vin(−))のみに接続する場合を説明したが、例えば第2変換器3の下流側(制御装置12と反対側)に−48V電源を使用する端末機器11が存在する場合などは、図4(a)に示すように、第2変換器用入力コネクタ7の−48Vの電源ラインを、さらに第2変換器用出力コネクタ8の−48Vの電源ラインに接続するようにしてもよい。
【0055】
さらに、本実施の形態では、第2変換器用本体部9を、第2変換器用入力コネクタ7と第2変換器用出力コネクタ8の両方の10〜30Vの電源ラインに電源を出力するように構成したが、図4(b)に示すように、第2変換器用出力コネクタ8のみに出力するように構成してもよいし、図4(c)に示すように、第2変換器用入力コネクタ7のみに出力するように構成してもよい。つまり、第2変換器用本体部9は、+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、制御装置12の出力電圧と等しい電圧に戻し、第2変換器用入力コネクタ7と第2変換器用出力コネクタ8のいずれか一方または両方の10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成されていればよい。
【0056】
図4(b)の第2変換器3は、例えば、第1変換器2と第2変換器3の間に10〜30Vの電源ラインを使用する端末機器11等を配置しない場合等に好適である。また、図4(c)の第2変換器3は、例えば、開放されている末端の端末機器11の出力コネクタ11bに、第2変換器3の第2変換器用入力コネクタ7を直接(あるいは制御ケーブル13を介して)接続する場合等に好適である。
【0057】
本実施の形態の作用を説明する。
【0058】
本実施の形態に係るアンテナ制御システム1では、制御装置12から10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、任意接続である+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力する第1変換器2と、第1変換器2から+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、制御装置12の出力電圧と等しい電圧に戻し、10〜30Vの電源ラインに出力する第2変換器3と、を備えている。
【0059】
換言すれば、本発明では、+12V電源や−48V電源が使用されていないAISG制御系において、制御装置12の近くに第1変換器2を設置し、制御ケーブル13の途中で、第1変換器2により10〜30V電源から+12V電源または−48V電源を生成して、+12Vまたは−48Vの電源ラインへ給電し、さらに、制御ケーブル13を延伸した先に第2変換器3を設置し、第2変換器3により、+12V電源または−48V電源から10〜30V電源(24V程度)を生成して、10〜30Vの電源ラインへ給電するようにしている。
【0060】
これにより、両変換器2,3の間の区間においては、より高い電圧(+12Vまたは−48V)で電源を供給できるようになる。電圧を大きくすれば小電流でも大電力を供給でき、制御ケーブル13等での電圧降下を抑制して電力効率を向上できることから、両変換器2,3の間を流れる電流を小さくして、両変換器2,3間の制御ケーブル13での電圧降下、すなわち電力ロスを抑えることが可能となる。
【0061】
その結果、アンテナ制御システム1全体での電力効率を高めることができ、同じ消費電力の端末機器11を用いる場合には、制御装置12と端末機器11間の距離を延長すること(つまり、両変換器2,3間の距離を延長すること)が可能になる。また、制御装置12と端末機器11間の距離を変化させずに両変換器2,3を挿入する場合には、低電圧・大電流で電源を供給する区間、すなわち電力ロスが大きい区間を短くできるので、制御装置12から端末機器11に供給できる電力をより大きくすることができ、消費電力が大きい端末機器11を用いる場合や複数の端末機器11をデイジーチェーン接続する場合であっても、端末機器11に十分な電力を供給することが可能になる。
【0062】
両変換器2,3間の電力ロスを抑制する観点からは、両変換器2,3間で電源供給に用いる電圧は高い方が好ましい。よって、両変換器2,3間の電源供給には、−48Vの電源ラインを用いることが好ましい。なお、例えば、+12Vの電源ラインに、12V以上の高い電圧(例えば48V)を出力するよう構成することも可能である。ただし、この場合、誤って両変換器2,3間に+12V電源を使用する端末機器11を設置した場合に、端末機器11の故障等の問題が発生する可能性があるので、このような問題を避けるためにも、各電源ラインに規定された電圧を用いることが望ましい。
【0063】
本発明は、AISG規格に準拠したアンテナ制御システムにおいて、何らかの理由で制御ケーブル13の距離(すなわち制御装置12と端末機器11間の距離)を長くしたいとき、あるいは、多くの端末機器11を接続したい場合や大電力の端末機器11を使用したい場合などに、好適に適用することができる。
【0064】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0065】
例えば、第1変換器2や第2変換器3を、分配器(AISG信号分配器)やアレスタに内蔵することも可能である。一例として、図5に、4つの出力コネクタ53を備えた4分配の分配器51と同一筐体52内に図1(b)の第1変換器2を内蔵した場合を示す。また、図6に、4つの出力コネクタ63を備えた4分配の分配器61と同一筐体62内に図1(c)の第1変換器3を内蔵した場合を示す。
【0066】
この場合、第1変換器2の第1変換器用出力コネクタ5および分配器51の入力コネクタを省略して、両者を直接接続するよう構成するとよい。同様に、第2変換器3の第2変換器用出力コネクタ8および分配器61の入力コネクタを省略して、両者を直接接続するよう構成するとよい。なお、RETユニットなどの端末機器11と同一筐体内に第1変換器2や第2変換器3を内蔵することも、もちろん可能である。
【0067】
上記実施の形態では、第2変換器3を、制御装置12の出力電圧と等しい電圧に戻して10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成したが、第2変換器3が出力する電圧は、制御装置12の出力電圧と厳密に等しくされる必要はなく、多少の誤差は許容される。
【0068】
また、上記実施の形態では、両変換器2,3間に端末機器11を設けていない場合を説明したが、両変換器2,3間に端末機器11を設けることも可能である。ただし、両変換器2,3間に設ける端末機器11が10〜30Vの電源ラインを使用するものである場合は、第1変換器2として両コネクタ4,5間で10〜30Vの電源ラインを電気的に接続したものを用いるか、あるいは、第2変換器3として第2変換器用入力コネクタ7側に10〜30Vの電源ラインを供給するものを用いる必要がある。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ制御システム
2 第1変換器
3 第2変換器
4 第1変換器用入力コネクタ
5 第1変換器用出力コネクタ
6 第1変換器用本体部
7 第2変換器用入力コネクタ
8 第2変換器用出力コネクタ
9 第2変換器本体部
11 端末機器
12 制御装置
13 制御ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局のアンテナの制御を行う1台以上の端末機器と、
前記端末機器に制御信号を送信し、前記端末機器を制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記端末機器に電源を供給する制御装置と、
前記制御装置と前記端末機器、および前記端末機器同士を接続するために用いられる制御ケーブルと、を備え、
AISG規格に準拠して前記アンテナの制御を行うアンテナ制御システムにおいて、
前記制御装置は、必須接続である10〜30Vの電源ラインに電源を供給するように構成され、
前記制御装置から前記10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、任意接続である+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力する第1変換器と、
該第1変換器から前記+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、前記制御装置の出力電圧と等しい電圧に戻し、前記10〜30Vの電源ラインに出力する第2変換器と、
を備えたことを特徴とするアンテナ制御システム。
【請求項2】
前記第1変換器は、
前記制御装置側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第1変換器用入力コネクタと、
前記制御装置と反対側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第1変換器用出力コネクタと、
前記第1変換器用入力コネクタと前記第1変換器用出力コネクタが取り付けられると共に、該両コネクタの間で、前記制御信号を伝送する制御信号ラインを電気的に接続し、前記10〜30Vの電源ラインを介して入力された電圧を、より高い電圧に変換して、前記第1変換器用出力コネクタの前記+12Vまたは−48Vの電源ラインに出力するよう構成された第1変換器用本体部と、を備えている
請求項1記載のアンテナ制御システム。
【請求項3】
前記第2変換器は、
前記第1変換器の出力側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第2変換器用入力コネクタと、
前記第1変換器と反対側の前記制御ケーブルまたは前記端末機器と接続される第2変換器用出力コネクタと、
前記第2変換器用入力コネクタと前記第2変換器用出力コネクタが取り付けられると共に、該両コネクタの間で、前記制御信号を伝送する制御信号ラインを電気的に接続し、前記+12Vまたは−48Vの電源ラインを介して入力された電圧を変換して、前記制御装置の出力電圧と等しい電圧に戻し、前記第2変換器用入力コネクタと前記第2変換器用出力コネクタの少なくとも一方の前記10〜30Vの電源ラインに出力するよう構成された第2変換器用本体部と、を備えている
請求項1または2記載のアンテナ制御システム。
【請求項4】
前記第1変換器と前記第2変換器との間に設けられる前記制御ケーブルとしては、前記+12Vまたは−48Vの電源ラインとなる電源線を備えたものを用いる
請求項1〜3いずれかに記載のアンテナ制御システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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