説明

アンテナ及び該アンテナを備えた無線端末

【課題】アンテナの湾曲によるアンテナの特性変化が小さいアンテナ及び該アンテナを備えた無線端末を提供すること。
【解決手段】アンテナ素子52と、前記アンテナ素子の一部に配置され、正磁歪特性を有する第1の磁性体54及び負磁歪特性を有する第2の磁性体56の少なくとも一方と、を具備することを特徴とする。そして、アンテナ50を折り曲げることによって無線機器の湾曲部或いは折れ曲がり部に沿って実装する場合には、第1の磁性体には圧縮応力が印加され、第2の磁性体には引っ張り応力が印加されるように、前記アンテナを実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ及び該アンテナを備えた無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯情報端末などの無線端末の小型化が進んでいる。また、それに伴い、折りたたみ式の筐体を有する無線端末なども提案され、実用化されている。
ここで、小型化によるアンテナの感度の低下を防ぐために、磁性体の小片を平板逆Fアンテナの筐体側給電部付近に配置して共振周波数を低くする試みが提案されている(非特許文献1参照)。これにより、アンテナ長を見かけ上長くできるので、小型化に寄与することになる。また、磁性材料を用いた他の試みとして、効果的に不要電流を抑制する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記の構成では、アンテナが平面状(或いは棒状)のみを想定しており、アンテナを無線端末の筐体の角部などの湾曲部に実装したり、折りたたみ式の無線端末の可動部に実装したりした場合には、アンテナの特性が変化して、共振周波数が所望の共振周波数より高くなってしまう等の特性劣化の恐れがある。特に、折りたたみ式の場合においては、アンテナ自体が折り曲げられることになるので、折り曲げたアンテナ同士が容量結合することにより、見かけ上のアンテナ長が短くなるという問題が生じる。なお、筐体の湾曲部にアンテナを実装した場合にも、同様の問題が生じる。
【特許文献1】特開2002−264255号公報
【非特許文献1】河野他「磁性材料を用いた平行Fアンテナの小型化の一検討(3)」2004年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B−1−25
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、無線端末の筐体の湾曲部等にアンテナを実装する場合、アンテナが湾曲することで共振周波数が所望より高くなってしまうなど、アンテナを湾曲することによる特性劣化が発生する問題がある。この特性劣化はアンテナ素子52間の結合が主要因であり、このようなアンテナの湾曲によるアンテナの特性変化を小さくすることが望まれる。
【0005】
本発明は、アンテナの湾曲によるアンテナの特性変化が小さいアンテナ及び該アンテナを備えた無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の局面に係るアンテナは、アンテナ素子と、前記アンテナ素子の一部に配置され、正磁歪特性を有する第1の磁性体及び負磁歪特性を有する第2の磁性体の少なくとも一方と、を具備することを特徴とする。そして、アンテナを折り曲げることによって無線機器の湾曲部或いは折れ曲がり部に沿って実装する場合には、第1の磁性体には圧縮応力が印加され、第2の磁性体には引っ張り応力が印加されるように、前記アンテナを実装する。
【0007】
正磁歪特性を持つ磁性体は応力がかかると透磁率が上昇する。また、負磁歪特性を持つ磁性体は負の応力がかかると透磁率が上昇する。この透磁率の上昇を利用することにより、アンテナを湾曲し等価的にアンテナ長が短く見えても、これをキャンセルしてアンテナの湾曲による特性変化を小さくしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンテナの湾曲によるアンテナの特性変化を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のアンテナが適用される無線端末の一例を示す図である。図1において、無線端末は折りたたみ可能に構成されており、(a)は無線端末を開いた場合の図、(b)は無線端末を折りたたんだ場合において正面から見た場合の図、(c)は無線端末を折りたたんだ場合において側面から見た場合の図である。なお、図1の(d)は無線端末を広げた場合において斜め横から見た図である。
【0010】
図1において、無線端末は、第1の筐体10と、第2の筐体20と、第1と第2の筐体10及び20を折り曲げ可能に支持する折り曲げ部30とを備えている。
第1の筐体の前面には、液晶表示部(LCD:Liquid Crystal Display)12が配設され、背面には無線機器に内蔵されたカメラ用のレンズ部16とフラッシュ18とが配設されている。第2の筐体20には、キー入力デバイス22等と共に図示しない主印刷配線基板が収容されている。折り曲げ部30は、液晶表示部12とキー入力デバイス22が内側になるように第1と第2の筐体10及び20を、例えば蛇腹構造により、折り曲げ可能に支持している。なお、第1の筐体10の上部の湾曲部付近に図示しないスピーカが配設され、第2の筐体20の下部付近に図示しないマイクロフォンが配設されて、通話が可能になっている。なお、破断面の部分に示す符号50−1から50−6は、詳細は後述する本発明の一実施形態に係るアンテナが実装される部分である。このように、本発明に係るアンテナは、図1に示すように、基本的に、無線端末の筐体に沿って実装されるものとする。なお、アンテナは、破線で示した部分50−1から50−6のみに実装するのではなく、破線で示した部分50−1から50−6はアンテナの一部であっても良い。その場合には、破線で示した部分50−1から50−6に実装されるアンテナが少なくとも後述する構成を有していれば良い。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態に係るアンテナの構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るアンテナ50は、アンテナ素子52を挟むように正磁歪特性を有する第1の磁性体54と負磁歪特性を有する第2の磁性体56とを備えている。ここで、第1の磁性体54は正の磁歪特性を有するので、圧縮応力が加わると透磁率が上昇し、引っ張り応力が加わると逆に透磁率が減少するという性質を有している。第2の磁性体56は負磁歪特性を有するので、第1の磁性体54とは逆に、圧縮応力が加わると透磁率が減少し、引っ張り応力が加わると透磁率が増加するという性質を有している。従って、アンテナが折り曲げられた場合における磁性体の透磁率の変化(増加)を利用して、アンテナ素子52の湾曲による特性変化が小さくなるようにしている。
【0012】
具体的には、図2の(a)のような構成を有するアンテナ50が、図2の(b)に示すように折り曲げられた場合には、第1の磁性体54には圧縮応力が加わり、第2の磁性体56には引っ張り応力が加わる。これにより、第1及び第2の磁性体54及び56の両者の透磁率が上昇するので、アンテナ素子52からの磁束の漏洩が少なくなるため、アンテナ素子52間の容量結合などを防ぎ、アンテナ素子52を折り曲げた場合における特性変化を少なくすることができる。なお、本発明においては、圧縮応力が加わる面に正磁歪特性を有する磁性体を配置し、引っ張り応力が加わる面に負磁歪特性を有する磁性体を配置する必要がある。
【0013】
具体的な構成例を図3及び図4に示す。図3及び図4は、それぞれ筐体の湾曲部の内側と外側に本発明に係るアンテナを実装した例を示す図である。図3及び図4は、例えば、図1(a)の湾曲部14や折り曲げ部30にアンテナ50を実装した場合の断面図を示したものである。アンテナ50は、湾曲部14のみならず、第2の筐体の湾曲部24やその他の角部などの様々な場所に適用可能である。具体的には、図3に係る構成のアンテナは、図1において、符号50−1から50−5で示した部分に実装されるものに適用され、図4に係る構成のアンテナは、図1において、符号50−6で示した部分に実装されるものに適用される。このように、本発明に係るアンテナは、図1の無線機器において、例えば、固定された湾曲部14、24や、可動部である折り曲げ部30に装着した場合でも、性能劣化がないようにしたものである。なお、以下の説明においては、単に「湾曲部」と称し、湾曲部14にアンテナ50を配設した場合を説明する。
図3は、湾曲部14の内側にアンテナ50を配設した場合であって、このように、第1の筐体10(第2の筐体20であってももちろん良いので、以下単に「筐体」と称する)の湾曲部14の内側にアンテナ50を配設する場合には、筐体10側から負磁歪特性を有する第2の磁性体56、アンテナ素子52、正磁歪特性を有する第1の磁性体54の順に配置される。これにより、各磁性体の透磁率が上昇するので、アンテナ素子52を折り曲げた場合の問題点を解消できる。
【0014】
また、図4は、折り曲げ部30の内側(符号50−6で示す部分)にアンテナ50を配設した場合であって、このように、折り曲げ部30の内側にアンテナ50を配置する場合には、折り曲げ部30の内側の部分から正磁歪特性を有する第1の磁性体54、アンテナ素子52、負磁歪特性を有する第2の磁性体56の順に配置される。これにより、図3の場合と同様に、各磁性体の透磁率が上昇するので、アンテナ素子52を折り曲げた場合の問題点を解消できる。なお、上記の実施形態では、アンテナ素子を筐体の湾曲部や折り曲げ部に実装した場合の例を示したが、例えば、LCDホルダ等の内部部品に、本発明にかかるアンテナを折り曲げて実装した場合でも同様の効果が得られる。
【0015】
なお、図3及び図4の構成において、アンテナ50の筐体10への実装は、例えば、接着により行っても良いし、筐体10に固定用つめ等の装着部を設けておき、この装着部へアンテナ50をはめ込んだり、その他の方法で固定したりすることにより行われるが、アンテナを無線機器に実装可能であれば、どのような方法を用いて実装しても良い。
【0016】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
上記の実施形態では、アンテナ素子52の両面にそれぞれ正磁歪特性を有する磁性体と負磁歪特性を有する磁性体とを配置したが、アンテナ素子52の全面を、磁性体で覆う必要はなく、アンテナとして機能する導体の部分のみを覆うようにすれば良い。また、アンテナとして機能する部分全てを覆うのではなく、その一部のみを覆うようにしても良い。
また、磁性体も、必ずしもアンテナ素子52の両面に配置する必要はなく、少なくとも正磁歪特性を有する磁性体をアンテナ素子52に配置すればよい。
上記の実施形態では、アンテナ素子52の構成について具体的には述べなかったが、アンテナ素子52は、折り曲げ可能であればどのような形状のものであってもよく、例えば、ロッド状、ループ状、メアンダ状、ヘリカル状など、様々な形状のアンテナ素子52に適用できる。
さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0017】
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のアンテナが適用される無線端末の一例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るアンテナの構成を示す図。
【図3】筐体の湾曲部の内側に本発明に係るアンテナを実装した例を示す図。
【図4】筐体の湾曲部の外側に本発明に係るアンテナを実装した例を示す図。
【符号の説明】
【0019】
10…第1の筐体
12…液晶表示部
14…湾曲部
16…レンズ部
18…フラッシュ
20…第2の筐体
22…キー入力デバイス
50…アンテナ
52…アンテナ素子
54…第1の磁性体
56…第2の磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子の一部に配置され、正磁歪特性を有する第1の磁性体と、を具備することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、負磁歪特性を有する第2の磁性体を更に具備し、
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体とで、前記アンテナ素子の少なくとも一部を挟むように構成することを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子の一部に配置され、負磁歪特性を有する磁性体と、を具備することを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
湾曲部或いは折れ曲がり部を有する筐体と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナと、を備え、
前記アンテナを折り曲げることによって前記湾曲部或いは折れ曲がり部に沿って実装する場合に、前記第1の磁性体には圧縮応力が印加され、前記第2の磁性体には引っ張り応力が印加されるように、前記アンテナを実装することを特徴とする無線機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−352564(P2006−352564A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176589(P2005−176589)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】