説明

アンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器

【課題】精密加工を必要とすることがなく、かつ接地板を介して給電点間で流れる電流を低減して高いアイソレーション効果を実現する。
【解決手段】実施形態に係るアンテナ装置は、アンテナ用接地部の辺に沿って予め定められた距離内で近接配置され、送信又は受信対象とする周波数帯域が略同一に設定された第1及び第2のアンテナユニットとを具備する。これら第1及び第2のアンテナユニットは、上記アンテナ用接地部の上記辺の近傍に互いに離間して配置された第1及び第2の給電点と、一端部が上記第1及び第2の給電点に接続される第1及び第2の給電素子と、一端部が上記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され上記第1及び第2の給電素子に対し電気的に結合して動作する第1及び第2の無給電素子とを備え、これら第1及び第2の無給電素子は相互間でも結合するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、アンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・コンピュータやテレビジョン受信機に、無線LAN(Local Area Network)、WiMAX(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)或いはBluetooth(登録商標)等を利用する無線インタフェースを内蔵させ、この無線インタフェースによりWebサイト等からコンテンツや各種データをダウンロードできるようにした電子機器が種々開発されている。
【0003】
ところで、上記無線インタフェースに使用されるアンテナ装置には、一般にダイバーシチ効果を得るために2個のアンテナが用いられる。このため、電子機器内にアンテナ装置を収容する際には、アンテナが1個の場合に比べ広い収容スペースを確保する必要がある。一方、パーソナル・コンピュータ等の電子機器は、筐体の薄型化や回路部品の高密度実装により筐体内の余剰スペースが限られている。このため、電子機器内にアンテナ装置を収容する場合、2個のアンテナを互いに接近させざるを得ない。しかし、2個のアンテナが接近するとアンテナ間の干渉が大きくなり、希望するアンテナ性能が得られなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、給電部間で伝わる電流をオープンスタブにより打ち消すようにしたアンテナ装置が提案されている(例えば、特許文献1又は2を参照)。また、アンテナ素子間にループ型の無給電素子を配置し、このループ型の無給電素子によりアンテナ素子間の空間結合を低減するようにしたアンテナ装置も提案されている(例えば、特許文献3又は4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−153973号公報
【特許文献2】特開2008−283464号公報
【特許文献3】特開2006−42111号公報
【特許文献4】特開2011−109547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1及び2に記載されたアンテナ装置は接地板に切り欠きを設けなければならず、小型化が進んだ電子機器にあっては精密加工が必要となるため実施が困難になってきており、また実施できたとしても給電ケーブル等により切り欠きがショートしてしまうおそれがある。
【0007】
また、特許文献3及び4に記載されたアンテナ装置は、先に述べたようにアンテナ素子間の空間結合を低減するものであるため、接地板を介して給電点間で流れる電流は低減されずアンテナ素子間のアイソレーション効果が低い。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、精密加工を必要とせず、かつ接地板を介して給電点間を流れる電流を低減して高いアイソレーション効果を実現したアンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、アンテナ装置は、電子機器の接地部に対し略平行に配置され当該接地部に接地素子を介して接続されるアンテナ用接地部と、このアンテナ用接地部の辺に沿って予め定められた距離内で近接配置され、送信又は受信対象とする周波数帯域が略同一に設定された第1及び第2のアンテナユニットとを具備する。
第1のアンテナユニットは、上記アンテナ用接地部の上記辺の近傍に配置された第1の給電点と、中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が上記第1の給電点に接続されると共に他端部が開放された第1の給電素子と、一端部が上記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、上記第1の給電素子に対し電気的に結合して動作する第1の無給電素子とを備える。
また、第2のアンテナユニットは、上記アンテナ用接地部の上記辺の近傍位置に、上記第1の給電点から離間して配置された第2の給電点と、中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が上記第2の給電点に接続されると共に他端部が開放された第2の給電素子と、一端部が上記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、上記第2の給電素子に対し電気的に結合して動作すると共に、上記第1の無給電素子に対しても電気的に結合する第2の無給電素子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図2】図1に示したアンテナ装置の配置例を示す図。
【図3】第2の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図4】第3の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図5】第4の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図6】第5の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図7】第6の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図8】第7の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図9】第8の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図10】第9の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図。
【図11】図10に示したアンテナ装置によるSパラメータの周波数特性を示す図。
【図12】従来のアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す斜視図。
【図13】図12に示したアンテナ装置によるSパラメータの周波数特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。
この電子機器は、無線インタフェースを備えたノート型のパーソナル・コンピュータ、又はテレビジョン受信機からなり、図示しない筐体内にはグランド板1が収容される。グランド板1は、金属筐体の一部を利用したものや銅箔等の金属部材を用いたもの、金属の接地パターンが形成された印刷配線基板や積層基板により構成される。
【0012】
なお、電子機器は、ノート型のパーソナル・コンピュータやテレビジョン受信機以外に、ナビゲーション端末や携帯電話機、スマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)又はタブレット型端末等の携帯型端末であってもよい。
【0013】
ところで、上記グランド板1にはアンテナ装置が装着される。アンテナ装置は、グランド板11と、このグランド板11の一辺に沿って配置される第1及び第2のアンテナユニットとを備える。グランド板1は、例えば接地パターンを形成した印刷配線基板からなり、上記電子機器のグランド板1の面に対し平行に配置された状態で、その1つの角部が接地素子12を介して上記グランド板1の接地面に接続されている。
【0014】
第1及び第2のアンテナユニットは、同一の周波数帯域をカバーしかつ互いに距離を隔てて配置されることで、ダイバーシチ効果を得るように機能する。これら第1及び第2のアンテナユニットはいずれも、上記グランド板11の辺に沿って配置された給電点41,42と、無線通信用アンテナとして動作する給電素子(以後無線通信用アンテナと呼称する)21,22と、無給電素子31,32とを備える。
【0015】
給電点41,42は、グランド板11に実装された図示しない無線ユニットに対し、給電ケーブル(図示せず)又は給電パターンを介して接続される。無線通信用アンテナ21,22はそれぞれ基端部が上記給電点41,42に接続されると共に先端部が開放された、L型をなすモノポール素子からなり、その水平部位が互いに反対方向を向くように配置される。
【0016】
無給電素子31,32は上記無線通信用アンテナ21,22と同様にL型をなす素子からなり、それぞれ基端部が上記グランド板11に対し上記給電点41,42間でかつ上記給電点41,42と近接する位置で接続されると共に、先端部が開放されている。グランド板11に対する無給電素子31,32の接地位置の間隔は、図2に示すように第1の実施形態に係るアンテナ装置がカバーする周波数帯(例えば2GHz帯)に対応する波長の1/20以下の有限長に設定される。また、無給電素子31,32の素子長は、無給電素子31の先端から上記グランド板11を経由して無給電素子32の先端に至る長さが、上記周波数帯(例えば2GHz帯)に対応する波長の1/2となるように設定される。
【0017】
このような構成であるから、無給電素子31,32はそれぞれ無線通信用アンテナ21,22に対し電気的に結合して、当該無線通信用アンテナ21,22の共振帯域幅を拡大するように動作する。またそれと共に、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21,22の送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定したことにより無給電素子31,32同士も電気的に結合することになる。このため、給電点41,42間で互いの給電点42,41に流れ込む高周波電流の電流量が減少し、これにより無線通信用アンテナ21,22間の相互干渉は軽減される。
【0018】
すなわち、第1の実施形態によれば、グランド板に切り欠き等を加工することなく、無線通信用アンテナ21,22間にL型の無給電素子31,32を配置しただけの簡単な構成により、無線通信用アンテナ21,22間のアイソレーション特性を改善することができる。この効果は、携帯型電子機器等の小型電子機器のように第1及び第2のアンテナユニットを近接させて配置せざるを得ない場合でも、十分なアイソレーション特性を得ることができ、特に有効である。またそれと共に、無給電素子31,32をそれぞれ無線通信用アンテナ21,22に対し電気的に結合させることで、無線通信用アンテナ21,22の共振帯域の広帯域化も実現できる。
【0019】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、図2において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0020】
第2の実施形態に係るアンテナ装置は、グランド板11aの辺のサイズ又は当該グランド板11aを電子機器のグランド板1に接続するための接地素子12の位置を、給電点42からグランド板1の2つの辺に沿って当該接地素子12に至る長さが、無線通信用アンテナ22の送受信周波数帯域に対応する波長の1/4となるように設定されている。
【0021】
このような構成であるから、上記給電点42から接地素子12に至るまでのグランド板1の2つの辺(エッジ)が、1/4波長の素子長を有するアンテナ素子として機能することになる。このため、無線通信用アンテナ22の共振帯域を、上記アンテナ素子として機能するグランド板1の2つの辺(エッジ)により拡大することが可能となる。
【0022】
なお、上記接地素子12の設置位置は、グランド板1の第1のアンテナユニット側の角部に設定するようにしてもよい。この場合も、給電点41からグランド板11aの2つの辺に沿って接地素子に至るまでの長さは、無線通信用アンテナ21の送受信周波数帯域に対応する波長の1/4となるように設定される。また、接地素子は必ずしも1個に限らず複数個も受けてもよい。
【0023】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図4においても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0024】
第3の実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信用アンテナ21a,22aをT型の素子により構成して、その垂直部位の下端部を給電点41,42に接続すると共に、この無線通信用アンテナ21a,22aの水平部位に対し無給電素子31,32の水平部位を電気的に結合させるようにしたものである。
【0025】
このような構成においても、第1の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21a,22aと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21a,22aの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21a,22aの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定しておくことで、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになる。この結果、給電点41,42間で互いの給電点42,41に流れ込む高周波電流の電流量が減少し、これにより無線通信用アンテナ21a,22a間の相互干渉を軽減することが可能となる。
【0026】
[第4の実施形態]
図5は、第4の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図5においても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0027】
第4の実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信用アンテナ21,22を挟んで無給電素子31,32に対し反対側となる位置にそれぞれ無給電素子41,42を配置したものである。この無給電素子41,42の配置位置は、各々が無線通信用アンテナ21,22に対し電気的に結合するように設定される。
このような構成であるから、無線通信用アンテナ21,22の共振帯域を上記無給電素子41,42によりさらに拡大することが可能となる。
【0028】
[第5の実施形態]
図6は、第5の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図6においても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0029】
第5の実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信用アンテナ21b,22bを板状のモノポール素子により構成してその一つの角部を給電点41,42に接続している。また、この無線通信用アンテナ21b,22bの垂直方向の一辺と水平方向の一辺に対し無給電素子31,32の垂直部位及び水平部位を電気的に結合させるようにしている。
【0030】
この構成においても、第1の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21b,22bと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21b,22bの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21b,22bの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定しておくことで、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになり、これにより給電点41,42間で互いに流れ込む高周波電流の電流量が減少して、無線通信用アンテナ21b,22b間の相互干渉を軽減することが可能となる。
【0031】
[第6の実施形態]
図7は、第6の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図7においても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0032】
第6の実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信用アンテナ21c,22cを板状のモノポール素子により構成してその下辺中央部位を給電点41,42に接続している。また、この無線通信用アンテナ21c,22cの垂直方向の一辺と水平方向の一辺に対しそれぞれ無給電素子31,32の垂直部位及び水平部位を電気的に結合させるようにしている。
【0033】
この構成においても、第1の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21c,22cと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21c,22cの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21c,22cの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定しておくことで、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになり、これにより給電点41,42間で互いに流れ込む高周波電流の電流量が減少して、無線通信用アンテナ21c,22c間の相互干渉を軽減することが可能となる。
【0034】
[第7の実施形態]
図8は、第7の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図8において前記図4と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0035】
第7の実施形態に係るアンテナ装置は、第3の実施形態を変形したもので、無線通信用アンテナ21d,22dをコ字型に形成して、その下方側水平部位の中間部を垂直片を介して給電点41,42に接続している。また、この無線通信用アンテナ21d,22dの垂直部位と水平部位に対しそれぞれ無給電素子31,32の垂直部位及び水平部位を電気的に結合させるようにしている。
【0036】
この構成においても、第3の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21d,22dと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21d,22dの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21d,22dの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定しておくことで、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになり、これにより給電点41,42間で互いに流れ込む高周波電流の電流量が減少して、無線通信用アンテナ21d,22d間の相互干渉を軽減することが可能となる。
【0037】
[第8の実施形態]
図9は、第8の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図9において前記図8と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0038】
第8の実施形態に係るアンテナ装置は、第7の実施形態をさらに変形したもので、無線通信用アンテナ21e,22eをコ字型に形成すると共にその下方側水平部位の先端部を板状に形成したものである。
この構成においても、第7の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21e,22eと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21e,22eの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔を無線通信用アンテナ21e,22eの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定しておくことで、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになり、これにより給電点41,42間で互いに流れ込む高周波電流の電流量が減少して、無線通信用アンテナ21e,22e間の相互干渉を軽減することが可能となる。
【0039】
[第9の実施形態]
図10は、第9の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の要部構成を示す斜視図である。なお、この図10において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0040】
第9の実施形態に係るアンテナ装置は、無線通信用アンテナ21f,22fをコ字型に形成し、その水平部位の1つを水平面内で直角に折り曲げたのち、さらに垂直下方向に折り曲げてその端部を給電点に接続するようにしている。また、無給電素子31,32をL型に形成し、その一端部を垂直下方に折り曲げてその端部をグランド板11に接続するようにしている。この無給電素子31,32は、そのL型をなす部位が上記無線通信用アンテナ21f,22fのコ字型をなす部位と電気的に結合するように配置される。また無給電素子31,32の接地点間の間隔は、無線通信用アンテナ21f,22fの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定されている。
【0041】
このような構成であるから、第1の実施形態と同様に、無線通信用アンテナ21f,22fと無給電素子31,32との結合により、当該無線通信用アンテナ21f,22fの共振帯域幅を拡大することが可能となる。また、無給電素子31,32の接地点間の間隔が無線通信用アンテナ21f,22fの送受信周波数帯域に対応する波長の1/20以下に設定されているので、無給電素子31,32同士も電気的に結合することになり、これにより給電点間で互いに流れ込む高周波電流の電流量が減少して、無線通信用アンテナ21f,22f間の相互干渉を軽減することが可能となる。さらに、無線通信用アンテナ21f,22f及び無給電素子31,32の基端部位をそれぞれ垂直下方向に折曲してその端部をグランド板11に接地するようにしているので、無線通信用アンテナ21f,22f及び無給電素子31,32の開放端を電子機器のグランド板1から遠ざけることができ、これにより無線通信用アンテナ21f,22f及び無給電素子31,32に対するグランド板1の影響を軽減してアンテナ放射性能を高めることが可能となる。
【0042】
図11は、この第9の実施形態に係るアンテナ装置のSパラメータの周波数特性を示すもので、図中S11,S22はそれぞれ第1及び第2のアンテナユニットの反射係数を示し、またS21は第1のアンテナユニットに対する第2のアンテナユニットの結合係数を示している。この特性から明らかなように、当該アンテナ装置の主たる送受信帯域である2.65〜2.8GHz帯におけるアンテナユニット間の結合係数を−20dB以下に減少させることが可能となり、これによりアンテナユニット間で高いアイソレーション性能を確保することができる。
【0043】
ちなみに、図12に例示した、無給電素子を設けていない従来のアンテナ装置によれば、第1及び第2のアンテナユニット間の結合係数は、図13中のS21に示すように、2GHz帯全域に渡り−20dB以下に減少せず、この結果十分なアイソレーション性能を確保することができない。
【0044】
[その他の実施形態]
前記各実施形態では無線LANの信号を受信する場合を例にとって説明したが、対象システムは、地上ディジタルラジオ放送や、自治体が放送する防災放送等のその他のシステムから送信される信号を受信するものであってもよい。
その他、無線通信用アンテナ、無給電素子、アンテナ装置のグランド板の形状やサイズなどについては、種々変形して実施できる。
【0045】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…電子機器のグランド板、11…アンテナ装置のグランド板、12…グランド間を接続するための素子、21,21a〜21f…第1の無線通信用アンテナ、22,22a〜22f…第2の無線通信用アンテナ、31…第1の無給電素子、32…第2の無給電素子、41…第1の給電点、42…第2の給電点、51…第3の無給電素子、52…第4の無給電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の接地部に対し略平行に配置され、当該接地部に接地素子を介して接続されるアンテナ用接地部と、
前記アンテナ用接地部の辺に沿って予め定められた距離内で近接配置され、送信又は受信対象とする周波数帯域が略同一に設定された第1及び第2のアンテナユニットと
を具備し、
前記第1のアンテナユニットは、
前記アンテナ用接地部の前記辺の近傍に配置された第1の給電点と、
中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が前記第1の給電点に接続されると共に他端部が開放された第1の給電素子と、
一端部が前記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、前記第1の給電素子に対し電気的に結合して動作する第1の無給電素子と
を備え、
前記第2のアンテナユニットは、
前記アンテナ用接地部の前記辺の近傍位置に、前記第1の給電点から離間して配置された第2の給電点と、
中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が前記第2の給電点に接続されると共に他端部が開放された第2の給電素子と、
一端部が前記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、前記第2の給電素子に対し電気的に結合して動作すると共に、前記第1の無給電素子に対しても電気的に結合する第2の無給電素子と
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の無給電素子の接地位置と前記第2の無給電素子の接地位置との間の距離が、前記周波数帯域に対応する波長の略1/20以下となるように設定されてなる請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の無給電素子の先端から前記アンテナ用接地部の辺を経由して前記第2の無給電素子の先端に至る長さが、前記周波数帯域に対応する波長の略1/2となるように設定されてなる請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の給電素子の少なくとも一方は、T型に形成されてなる請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のアンテナユニットの少なくとも一方は、前記第1又は第2の給電素子を挟んで前記第1又は第2の無給電素子に対し反対側となる位置に、前記第1又は第2の給電素子と電流結合して動作する第3又は第4の無給電素子を、さらに備える請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1又は第2の給電点からアンテナ用接地部の辺を経由して前記接地素子に至る長さが、前記周波数帯域に対応する波長の略1/4となるように設定されてなる請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項7】
接地部とアンテナ装置とを備えた電子機器において、
前記アンテナ装置は、
前記電子機器の接地部に対し略平行に配置され、当該接地部に接地素子を介して接続されるアンテナ用接地部と、
前記アンテナ用接地部の辺に沿って予め定められた距離内で近接配置され、送信又は受信対象とする周波数帯域が略同一に設定された第1及び第2のアンテナユニットと
を具備し、
前記第1のアンテナユニットは、
前記アンテナ用接地部の前記辺の近傍に配置された第1の給電点と、
中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が前記第1の給電点に接続されると共に他端部が開放された第1の給電素子と、
一端部が前記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、前記第1の給電素子に対し電気的に結合して動作する第1の無給電素子と
を備え、
前記第2のアンテナユニットは、
前記アンテナ用接地部の前記辺の近傍位置に、前記第1の給電点から離間して配置された第2の給電点と、
中間部が少なくとも1回折曲形成され、一端部が前記第2の給電点に接続されると共に他端部が開放された第2の給電素子と、
一端部が前記アンテナ用接地部に接続されると共に他端部が開放され、前記第2の給電素子に対し電気的に結合して動作すると共に、前記第1の無給電素子に対しても電気的に結合する第2の無給電素子と
を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−90208(P2013−90208A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230009(P2011−230009)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【特許番号】特許第5076019号(P5076019)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】