アンテナ装置の調整方法
【課題】誘電体基材22の配設位置をずらして共振周波数を調整するアンテナ装置の調整方法を提供する。
【解決手段】導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けて上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状で間隔を設けて誘電体基材22を配設し、その上面に略矩形の放射電極14を辺が略平行に配設して放射電極14の周辺部を略環状に支持する。放射電極14の対向する2つの隅を面取り状に切り落とし、対角線方向が電流の励振方向となるように放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16を設ける。放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向の放射電極14の2つの辺を支持するように略コ字状の誘電体基材22を配設する。誘電体基材22の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にずらして、共振周波数を調整する。
【解決手段】導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けて上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状で間隔を設けて誘電体基材22を配設し、その上面に略矩形の放射電極14を辺が略平行に配設して放射電極14の周辺部を略環状に支持する。放射電極14の対向する2つの隅を面取り状に切り落とし、対角線方向が電流の励振方向となるように放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16を設ける。放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向の放射電極14の2つの辺を支持するように略コ字状の誘電体基材22を配設する。誘電体基材22の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にずらして、共振周波数を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体ベースの上に偏平な誘電体基材を配設し、その誘電体基材の上面に放射電極を配設した平面型のアンテナ装置において、共振周波数の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型のアンテナ装置にあっては、図47に示すごとく、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が矩形で、その中央部に空きスペースを設けた環状の誘電体基材12が配設され、その誘電体基材12の上面で支持するようにして略矩形の放射電極14が配設され、給電端子16が放射電極14の適宜な位置に配設されて構成されている。かかる技術が、特開2005−51576号公報等に示されている。
【特許文献1】特開2005−51576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1等で提案された図47に示す従来の技術にあっては、誘電体基材12は環状であり、その中央部に空きスペースが設けられているので、その分だけ誘電体の素材の量が少なくて足りる。ところで、誘電体基材12は、製造ロット毎にその誘電率にバラツキを生じて共振周波数が変化する虞がある。そこで、従来にあっては、誘電体基材12の誘電率のバラツキによる共振周波数の変化に対して、放射電極14に切り欠きを設けたり削ったりするなどして調整がなされている。この共振周波数の調整作業が繁雑であるとともに、放射電極14に切り欠きを設けまたは削ることで生ずる削りかすを確実に除去する作業も繁雑であった。
【0004】
そこで、本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、誘電体基材の誘電率のバラツキによる共振周波数の変化に対して、誘電体基材を配設する位置をずらして簡単に調整できるアンテナ装置の調整方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明のアンテナ装置の調整方法は、GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向にずらして、共振周波数を調整する。
【0006】
また、GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向にずらして、共振周波数を調整しても良い。
【発明の効果】
【0007】
請求項1および2記載のアンテナ装置の調整方法にあっては、誘電体基材の誘電率のバラツキにより共振周波数が低い方にずれれば、誘電体基材の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を外側に拡大することで、共振周波数を高くして所定の周波数に調整できる。また、共振周波数が高い方にずれれば、誘電体基材の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を内側に狭めることで、共振周波数を低くして所定の周波数に調整できる。誘電体基材の配設位置をずらすだけで共振周波数を所定の周波数に調整できるので、従来のごとく、放射電極を切り欠きまたは削る作業を必要とせず、さらには放射電極を切り欠きまたは削ることで生ずる削りかすが生じない。当然に、この削りかすを除去する手間も省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明のアンテナ装置の調整方法の第1実施例で用いるアンテナ装置につき、図1を参照して説明する。図1は、第1実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【0009】
図1に示す第1実施例で用いるアンテナ装置は、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が全体として略矩形でその中央部に空きスペースが設けられた環状で、しかも上から見て2つに分割されて2つの対向する略コ字状とされて対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材22、22が配設される。そして、略矩形の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされ、放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16が設けられて、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されている。この放射電極14が、その辺が誘電体基材22、22の全体で略矩形の辺と略平行となるようにして、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の上面で放射電極14の周辺部を略環状に支持するように配設される。しかも、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向の放射電極14の2つの辺を支持するように誘電体基材22、22の略コ字状の部材が配設されている。なお、誘電体基材22、22の略コ字状の部材の寸法は、一例として、略コ字状の中央部材が30.0mmで両側部材が12.5mmで、対向する略コ字状の端部の間の間隔が5.0mmである。
【0010】
かかる構造のアンテナ装置を用いて、第1実施例の調整方法について説明する。図2は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図2に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられたのとは反対側の1つの略コ字状の部材(図2において、上側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。図3は、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。そして、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図4に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図5に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図6に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図7に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図8であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図8をグラフにしたものが図9である。図9から明らかなように、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0011】
また、第1実施例の別の調整方法について説明する。図10は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図10に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられた側の1つの略コ字状の部材(図10において、下側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図3に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図11に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図12に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図13に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図14に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図15であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図15をグラフにしたものが図16である。図16から明らかなように、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0012】
さらに、第1実施例の他の調整方法について説明する。図17は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図17に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられた側とその反対側の双方の2つの略コ字状の部材(図17において、上側と下側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にそれぞれΔ/2だけずらす。基準となる合計のずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図3に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.1mmずつでΔが0.2mmとなるように外側に拡大するようにずらすと、図18に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.3mmずつでΔが0.6mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図19に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にそれぞれに−0.1mmずつでΔが−0.2mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図20に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに−0.3mmずつでΔが−0.6mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図21に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図22であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図22をグラフにしたものが図23である。図23から明らかなように、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、それぞれに外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、それぞれに内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0013】
次に、本発明のアンテナ装置の調整方法の第2実施例で用いるアンテナ装置につき、図24を参照して説明する。図24は、第2実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【0014】
図24に示す第2実施例で用いるアンテナ装置は、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が全体として略矩形でその中央部に空きスペースが設けられた環状で、しかも上から見て2つに分割されて2つの対向する略コ字状とされて対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材22、22が配設される。そして、略矩形の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされ、放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16が設けられて、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されている。この放射電極14が、その辺が誘電体基材22、22の全体で略矩形の辺と略平行となるようにして、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の上面で放射電極14の周辺部を略環状に支持するように配設される。そして、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向の放射電極14の2つの辺を支持するように誘電体基材22、22の略コ字状の部材が配設されている、点で第1実施例で用いる構造と相違する。なお、誘電体基材22、22の略コ字状の部材の寸法は、一例として、略コ字状の中央部材が30.0mmで両側部材が12.5mmで、対向する略コ字状の端部の間の間隔が5.0mmで、第1実施例で用いる構造と同じである。
【0015】
かかる構造のアンテナ装置を用いて、第2実施例の調整方法について説明する。図25は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図25に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の1つの略コ字状の部材(図25において、左側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向にΔだけずらす。図26は、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。そして、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図27に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図28に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にずらす寸法のΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図29に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図30に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図31であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図31をグラフにしたものが図32である。図32から明らかなように、第1実施例と同様に、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。しかし、インピーダンスの変化は、第1実施例とは反対の方向に変化する。もって、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0016】
また、第2実施例の別の調整方法について説明する。図33は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図33に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の1つの略コ字状の部材(図33において、右側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図26に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図34に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図35に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図36に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図37に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図38であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図38をグラフにしたものが図39である。図39から明らかなように、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0017】
さらに、第2実施例の他の調整方法について説明する。図40は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図40に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の部材(図40において、左側と右側の双方の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向にそれぞれΔ/2だけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図26に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.1mmずつでΔが0.2mmとなるように外側に拡大するようにずらすと、図41に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.3mmずつでΔが0.6mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図42に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にそれぞれに−0.1mmずつでΔが−0.2mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図43に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに−0.3mmずつでΔが−0.6mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図44に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図45であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図45をグラフにしたものが図46である。図46から明らかなように、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、それぞれに外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、それぞれに内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0018】
なお、上記実施例に用いるアンテナ装置の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされているが、これに限られず、略矩形の1つの対角線の1つの隅が面取り状に僅かに切り落とされていても良く、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す。
【図3】図2の調整で、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図4】図2の調整で、Δが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図5】図2の調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図6】図2の調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図7】図2の調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図8】図2の調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図9】図8の表をグラフにした図である。
【図10】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図11】図10の別の方法による調整で、ずらす寸法のΔが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図12】図10の別の方法による調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図13】図10の別の方法による調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図14】図10の別の方法による調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図15】図10の別の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図16】図15の表をグラフにした図である。
【図17】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図18】図17の他の方法による調整で、全体でずらす寸法のΔが0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図19】図17の他の方法による調整で、Δが0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図20】図17の他の方法による調整で、Δが−0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図21】図17の他の方法による調整で、Δが−0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図22】図17の他の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図23】図22の表をグラフにした図である。
【図24】第2実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【図25】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図26】図25の調整で、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図27】図25の調整で、Δが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図28】図25の調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図29】図25の調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図30】図25の調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図31】図25の調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図32】図31の表をグラフにした図である。
【図33】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図34】図33の別の方法による調整で、ずらす寸法のΔが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図35】図33の別の方法による調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図36】図33の別の方法による調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図37】図33の別の方法による調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図38】図33の別の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図39】図38の表をグラフにした図である。
【図40】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図41】図40の他の方法による調整で、全体でずらす寸法のΔが0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図42】図40の他の方法による調整で、Δが0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図43】図40の他の方法による調整で、Δが−0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図44】図40の他の方法による調整で、Δが−0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図45】図40の他の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図46】図45の表をグラフにした図である。
【図47】従来の平面型のアンテナ装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
10 導電体ベース
12、22 誘電体基材
14 放射電極
16 給電端子
p 中央位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体ベースの上に偏平な誘電体基材を配設し、その誘電体基材の上面に放射電極を配設した平面型のアンテナ装置において、共振周波数の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型のアンテナ装置にあっては、図47に示すごとく、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が矩形で、その中央部に空きスペースを設けた環状の誘電体基材12が配設され、その誘電体基材12の上面で支持するようにして略矩形の放射電極14が配設され、給電端子16が放射電極14の適宜な位置に配設されて構成されている。かかる技術が、特開2005−51576号公報等に示されている。
【特許文献1】特開2005−51576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1等で提案された図47に示す従来の技術にあっては、誘電体基材12は環状であり、その中央部に空きスペースが設けられているので、その分だけ誘電体の素材の量が少なくて足りる。ところで、誘電体基材12は、製造ロット毎にその誘電率にバラツキを生じて共振周波数が変化する虞がある。そこで、従来にあっては、誘電体基材12の誘電率のバラツキによる共振周波数の変化に対して、放射電極14に切り欠きを設けたり削ったりするなどして調整がなされている。この共振周波数の調整作業が繁雑であるとともに、放射電極14に切り欠きを設けまたは削ることで生ずる削りかすを確実に除去する作業も繁雑であった。
【0004】
そこで、本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、誘電体基材の誘電率のバラツキによる共振周波数の変化に対して、誘電体基材を配設する位置をずらして簡単に調整できるアンテナ装置の調整方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明のアンテナ装置の調整方法は、GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向にずらして、共振周波数を調整する。
【0006】
また、GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向にずらして、共振周波数を調整しても良い。
【発明の効果】
【0007】
請求項1および2記載のアンテナ装置の調整方法にあっては、誘電体基材の誘電率のバラツキにより共振周波数が低い方にずれれば、誘電体基材の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を外側に拡大することで、共振周波数を高くして所定の周波数に調整できる。また、共振周波数が高い方にずれれば、誘電体基材の略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を内側に狭めることで、共振周波数を低くして所定の周波数に調整できる。誘電体基材の配設位置をずらすだけで共振周波数を所定の周波数に調整できるので、従来のごとく、放射電極を切り欠きまたは削る作業を必要とせず、さらには放射電極を切り欠きまたは削ることで生ずる削りかすが生じない。当然に、この削りかすを除去する手間も省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明のアンテナ装置の調整方法の第1実施例で用いるアンテナ装置につき、図1を参照して説明する。図1は、第1実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【0009】
図1に示す第1実施例で用いるアンテナ装置は、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が全体として略矩形でその中央部に空きスペースが設けられた環状で、しかも上から見て2つに分割されて2つの対向する略コ字状とされて対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材22、22が配設される。そして、略矩形の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされ、放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16が設けられて、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されている。この放射電極14が、その辺が誘電体基材22、22の全体で略矩形の辺と略平行となるようにして、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の上面で放射電極14の周辺部を略環状に支持するように配設される。しかも、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向の放射電極14の2つの辺を支持するように誘電体基材22、22の略コ字状の部材が配設されている。なお、誘電体基材22、22の略コ字状の部材の寸法は、一例として、略コ字状の中央部材が30.0mmで両側部材が12.5mmで、対向する略コ字状の端部の間の間隔が5.0mmである。
【0010】
かかる構造のアンテナ装置を用いて、第1実施例の調整方法について説明する。図2は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図2に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられたのとは反対側の1つの略コ字状の部材(図2において、上側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。図3は、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。そして、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図4に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図5に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図6に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図7に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図8であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図8をグラフにしたものが図9である。図9から明らかなように、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の上側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0011】
また、第1実施例の別の調整方法について説明する。図10は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図10に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられた側の1つの略コ字状の部材(図10において、下側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図3に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図11に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図12に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図13に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図14に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図15であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図15をグラフにしたものが図16である。図16から明らかなように、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の下側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0012】
さらに、第1実施例の他の調整方法について説明する。図17は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図17に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、誘電体基材22、22の給電端子16が設けられた側とその反対側の双方の2つの略コ字状の部材(図17において、上側と下側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にそれぞれΔ/2だけずらす。基準となる合計のずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図3に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.1mmずつでΔが0.2mmとなるように外側に拡大するようにずらすと、図18に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.3mmずつでΔが0.6mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図19に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向で、逆方向にそれぞれに−0.1mmずつでΔが−0.2mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図20に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図3に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに−0.3mmずつでΔが−0.6mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図21に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図22であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図22をグラフにしたものが図23である。図23から明らかなように、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、それぞれに外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、それぞれに内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。
【0013】
次に、本発明のアンテナ装置の調整方法の第2実施例で用いるアンテナ装置につき、図24を参照して説明する。図24は、第2実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【0014】
図24に示す第2実施例で用いるアンテナ装置は、GND電極としての導電体ベース10の上に、偏平で上から見て外形が全体として略矩形でその中央部に空きスペースが設けられた環状で、しかも上から見て2つに分割されて2つの対向する略コ字状とされて対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材22、22が配設される。そして、略矩形の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされ、放射電極14の中央位置pより1つの辺側にずらして給電端子16が設けられて、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されている。この放射電極14が、その辺が誘電体基材22、22の全体で略矩形の辺と略平行となるようにして、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の上面で放射電極14の周辺部を略環状に支持するように配設される。そして、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向の放射電極14の2つの辺を支持するように誘電体基材22、22の略コ字状の部材が配設されている、点で第1実施例で用いる構造と相違する。なお、誘電体基材22、22の略コ字状の部材の寸法は、一例として、略コ字状の中央部材が30.0mmで両側部材が12.5mmで、対向する略コ字状の端部の間の間隔が5.0mmで、第1実施例で用いる構造と同じである。
【0015】
かかる構造のアンテナ装置を用いて、第2実施例の調整方法について説明する。図25は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図25に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の1つの略コ字状の部材(図25において、左側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向にΔだけずらす。図26は、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。そして、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図27に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図28に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にずらす寸法のΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図29に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図30に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図31であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図31をグラフにしたものが図32である。図32から明らかなように、第1実施例と同様に、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。しかし、インピーダンスの変化は、第1実施例とは反対の方向に変化する。もって、誘電体基材22、22の左側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0016】
また、第2実施例の別の調整方法について説明する。図33は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図33に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の1つの略コ字状の部材(図33において、右側の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向にΔだけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図26に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが0.1mmだけ外側に拡大するようにずらすと、図34に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが0.3mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図35に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にΔが−0.1mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図36に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材をΔが−0.3mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図37に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図38であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図38をグラフにしたものが図39である。図39から明らかなように、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の右側の1つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0017】
さらに、第2実施例の他の調整方法について説明する。図40は、放射電極14と誘電体基材22、22を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材22、22の略コ字状の部材を示す。図40に示すごとく、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、誘電体基材22、22の2つの略コ字状の部材(図40において、左側と右側の双方の略コ字状の部材)を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向にそれぞれΔ/2だけずらす。基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性は、図26に示すものと同じである。そして、誘電体基材22、22の上側と下側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.1mmずつでΔが0.2mmとなるように外側に拡大するようにずらすと、図41に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数が少し高い方にずれるとともにインピーダンスが右回りの時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに0.3mmずつでΔが0.6mmとなるように外側に大きく拡大するようにずらすと、図42に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに高い方にずれるとともにインピーダンスがさらに右回りの時計回りに大きく変化する。また、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向で、逆方向にそれぞれに−0.1mmずつでΔが−0.2mmだけ内側に狭めるようにずらすと、図43に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、図26に示す基準よりも、共振周波数が少し低い方にずれるとともにインピーダンスが左回りの反時計回りに変化する。さらに、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材をそれぞれに−0.3mmずつでΔが−0.6mmとなるように内側に大きく狭めるようにずらすと、図44に示す(a)のVSWR特性図および(b)のスミスチャートのごとく、共振周波数がさらに低い方にずれるとともにインピーダンスがさらに左回りの反時計回りに大きく変化する。これらの共振周波数の変化を示した表が図45であり、fLはアンテナ装置の2つの共振周波数のうちの低い方の共振周波数であり、fHは2つの共振周波数のうちの高い方の共振周波数であり、f0は2つの共振周波数の平均周波数である。この図45をグラフにしたものが図46である。図46から明らかなように、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、それぞれに外側に拡大するようにずらすほど共振周波数は高くなり、それぞれに内側に狭めるようにずらすほど共振周波数は低いものとなる。もって、誘電体基材22、22の左側と右側の2つの略コ字状の部材を、放射電極14の中央位置pと給電端子16を通る方向と直交する方向に適宜にずらすことで、共振周波数を簡単に調整することができる。しかも、インピーダンスの変化は、第1実施例と反対方向に変化する。
【0018】
なお、上記実施例に用いるアンテナ装置の放射電極14は、略矩形の1つの対角線の対向する2つの隅が面取り状に僅かに切り落とされているが、これに限られず、略矩形の1つの対角線の1つの隅が面取り状に僅かに切り落とされていても良く、放射電極14の対角線方向が電流の励振方向となるように構成されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す。
【図3】図2の調整で、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図4】図2の調整で、Δが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図5】図2の調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図6】図2の調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図7】図2の調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図8】図2の調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図9】図8の表をグラフにした図である。
【図10】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図11】図10の別の方法による調整で、ずらす寸法のΔが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図12】図10の別の方法による調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図13】図10の別の方法による調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図14】図10の別の方法による調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図15】図10の別の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図16】図15の表をグラフにした図である。
【図17】第1実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図18】図17の他の方法による調整で、全体でずらす寸法のΔが0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図19】図17の他の方法による調整で、Δが0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図20】図17の他の方法による調整で、Δが−0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図21】図17の他の方法による調整で、Δが−0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図22】図17の他の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図23】図22の表をグラフにした図である。
【図24】第2実施例で用いるアンテナ装置の外観斜視図である。
【図25】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図26】図25の調整で、基準となるずらす寸法のΔが0.0mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図27】図25の調整で、Δが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図28】図25の調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図29】図25の調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図30】図25の調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図31】図25の調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図32】図31の表をグラフにした図である。
【図33】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を別の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図34】図33の別の方法による調整で、ずらす寸法のΔが0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図35】図33の別の方法による調整で、Δが0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図36】図33の別の方法による調整で、Δが−0.1mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図37】図33の別の方法による調整で、Δが−0.3mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図38】図33の別の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図39】図38の表をグラフにした図である。
【図40】第2実施例で、放射電極と誘電体基材を上から見た図であり、共振周波数を他の方法で調整するために位置をずらす誘電体基材の略コ字状の部材を示す
【図41】図40の他の方法による調整で、全体でずらす寸法のΔが0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図42】図40の他の方法による調整で、Δが0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図43】図40の他の方法による調整で、Δが−0.2mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図44】図40の他の方法による調整で、Δが−0.6mmの場合のアンテナ特性を示し、(a)はVSWR特性図であり、(b)はスミスチャートである。
【図45】図40の他の方法による調整で、共振周波数の変化を示した表である。
【図46】図45の表をグラフにした図である。
【図47】従来の平面型のアンテナ装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
10 導電体ベース
12、22 誘電体基材
14 放射電極
16 給電端子
p 中央位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向にずらして、共振周波数を調整することを特徴としたアンテナ装置の調整方法。
【請求項2】
GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向にずらして、共振周波数を調整することを特徴といたアンテナ装置の調整方法。
【請求項1】
GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向にずらして、共振周波数を調整することを特徴としたアンテナ装置の調整方法。
【請求項2】
GND電極としての導電体ベースの上に、偏平で全体の外形が略矩形で中央部に空きスペースを設けるとともに上から見て2つに分割して2つの対向する略コ字状として対向する端部の間に間隔を設けて誘電体基材を配設し、この誘電体基材の上面に略矩形の放射電極をその辺が前記誘電体基材の辺と略平行となるように配設して前記誘電体基材で前記放射電極の周辺部を略環状に支持するようにし、前記放射電極の1つの隅または対向する2つの隅を面取り状に僅かに切り落とし、前記放射電極の対角線方向が電流の励振方向となるように前記放射電極の中央位置より1つの辺側にずらして給電端子を設け、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向の前記放射電極の2つの辺を支持するように略コ字状の前記誘電体基材を配設したアンテナ装置において、前記放射電極に対して前記誘電体基材の前記略コ字状の1つまたは2つの部材の配設位置を、前記放射電極の中央位置と前記給電端子を通る方向に対して直交する方向にずらして、共振周波数を調整することを特徴といたアンテナ装置の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公開番号】特開2010−148054(P2010−148054A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326305(P2008−326305)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]