説明

アンテナ装置及び平面形無線機

【課題】本発明は、無線機の投影面積を小さくすることの可能な平面型のアンテナ装置及び平面型無線機の提供を目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するために、本願発明の平面型無線機は、放射素子11及びグランド板12を有する接地型平面アンテナ10と、グランド板12を負極集電体とし、前記負極集電体と対向する正極集電体21を有する薄膜電池20と、薄膜電池20の負極集電体及び薄膜電池20の正極集電体21から電力供給を受け、接地型平面アンテナ10の放射素子11を駆動して信号を送受信する送受信回路を含み、接地型平面アンテナ10の給電点13に設置されている送受信ICと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面形のアンテナ装置及び平面形無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機の小型化を図るため、平面形の無線機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の無線機は、ダイポールアンテナ及び薄膜電池及びIC(Integrated Circuit)チップが同一フィルム基板上に搭載されている。薄膜電池が電力をICチップに供給し、ICチップがダイポールアンテナを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−135778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面形の無線機に用いるアンテナおよび薄膜電池は、薄いことが望ましい。しかし、特許文献1の無線機は、同一フィルム基板上にダイポールアンテナ及び薄膜電池の両方をそれぞれ独立して配置しているため、無線機の厚さを薄くすることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、厚さを薄くすることの可能な平面型のアンテナ装置及び平面型無線機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明のアンテナ装置は、放射素子及びグランド板を有する接地型平面アンテナと、前記グランド板を負極集電体とし、前記負極集電体と対向する正極集電体を有する薄膜電池と、を備える。
【0007】
本願発明のアンテナ装置は、接地型平面アンテナ及び薄膜電池を搭載している。ここで、接地型平面アンテナのグランド板を薄膜電池の負極集電体として用いているため、接地型平面アンテナと薄膜電池とを備えるアンテナ装置の厚さを薄くすることができる。
【0008】
本願発明のアンテナ装置では、前記グランド板は、前記放射素子の鏡像を面内に含んでいる。
これにより、本願発明のアンテナ装置は、接地型平面アンテナとしての特性を損なうことなく、薄くすることができる。
【0009】
本願発明のアンテナ装置では、前記正極集電体の投影面積は、前記負極集電体の投影面積よりも小さくてもよい。
薄膜電池の正極集電体は、グランド板のように面内の全体に導体を配置しなくてもよい。そこで、正極集電体の投影面積を小さくすることで、正極集電体の重量を減らし、軽量化を図るとともに、正極集電体を形成するための部材のコストを削減することもできる。また、グランド板と対向して配置されている正極集電体の投影面積を小さくすることにより、放射素子とグランド板との間に生じさせる電場を遮ることを抑制して、所望の放射特性の接地型平面アンテナを容易に実現することができる。
【0010】
本願発明のアンテナ装置では、前記正極集電体は、メッシュ構造を有していてもよい。
本発明により、正極集電体の投影面積を負極集電体の投影面積よりも小さくすることができる。ここで、正極集電体へのメッシュ構造の形成は容易であるため、小さい投影面積で所望の放射特性の接地型平面アンテナを容易に実現することができる。
【0011】
本願発明のアンテナ装置では、前記正極集電体は、前記放射素子の鏡像と重ならない位置に配置されていてもよい。
本発明により、正極集電体の投影面積を負極集電体の投影面積よりも小さくすることができる。ここで、正極集電体が放射素子の鏡像と重ならないため、所望の放射特性の接地型平面アンテナを容易に実現することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の平面形無線機は、本願発明のアンテナ装置と、前記薄膜電池の負極集電体及び前記薄膜電池の正極集電体から電力供給を受け、前記接地型平面アンテナの放射素子を駆動して信号を少なくとも送信もしくは受信する回路を備え、前記回路は、前記接地型平面アンテナの給電点に設置されている。
【0013】
本願発明の平面型無線機は、本願発明のアンテナ装置を備えるため、接地型平面アンテナと薄膜電池とを備えるアンテナ装置の厚さを薄くすることができる。これにより、本願発明の平面型無線機は、無線機の厚さを薄くすることができる。
【0014】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚さを薄くすることの可能な平面型のアンテナ装置及び平面型無線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。
【図2】薄膜電池の負極側と正極側とを重ね合わせたときの概略構成図である。
【図3】A−A’断面の一例を示す。
【図4】放射素子11の鏡像の一例を示す。
【図5】正極集電体の第2の形態であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。
【図6】正極集電体の第3形態であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
図1は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。本実施形態に係るアンテナ装置は、接地型平面アンテナ10を備える。接地型平面アンテナ10は、放射素子11と、放射素子11の鏡像を含む平面上に配置されているグランド板12と、を備える。給電点13に給電を行うことで、本実施形態に係るアンテナ装置は、接地型平面アンテナ10としての機能を発揮する。放射素子11の形状は任意である。例えば、接地型平面アンテナ10は、図1に示す逆F型アンテナのほか、任意の接地型平面アンテナに適用できる。
【0019】
また、本実施形態に係るアンテナ装置は、グランド板12と、正極集電体21と、フィルム基板23及び33と、を備える。グランド板12も負極集電体も、金属薄膜などの導電体にて形成される。そこで、グランド板12を薄膜電池20の負極集電体として用いている。
【0020】
図2は、薄膜電池の負極側と正極側とを重ね合わせたときの概略構成図である。図3に、A−A’断面の一例を示す。図3に示すように、フィルム基板23と、正極集電体21と、正極活物質22と、セパレータ40と、負極活物質32と、グランド板12と、フィルム基板33と、が順に重ねられている。薄膜電池20の負極集電体と正極集電体21とを対向させるべく、グランド板12と正極集電体21とが対向する位置に配置される。これにより、正極集電体21とグランド板12との間に電位差が生じ、本実施形態に係るアンテナ装置は、薄膜電池20としての機能を発揮する。
【0021】
上記のように、グランド板12が1部材で2つの機能を有する。これにより、例えば、面積に制限があるカード型の無線機において、薄膜電池と接地型平面アンテナとの機能を低背化して実現することができる。なお、本実施形態において、低背化とは、厚さを薄くすることをいう。また、部材コストの削減、製造工程の簡略化と製造時間の短縮により、製造コストを下げることができる。
【0022】
図2に示す平面形無線機は、本実施形態に係るアンテナ装置と、送受信IC41と、を備える。送受信IC41は、薄膜電池20の負極集電体であるグランド板12及び薄膜電池20の正極集電体21から電力供給を受ける。たとえば、図1に示すように、給電点13とグランド板12とを接続する導体15と、給電点13と接続可能な導体16と、をフィルム基板33上に形成する。そして、図2に示すように、導体16と正極集電体21をかしめる。この状態で、図1に示す接地型平面アンテナ10の給電点13に送受信IC41を設置する。これにより、送受信IC41の負極端子をグランド板12に接続し、送受信IC41の正極端子を正極集電体21に接続することができる。グランド板12と正極集電体21には電位差が生じると、送受信IC41に電力が供給される。
【0023】
送受信IC41は、接地型平面アンテナ10の放射素子11を駆動して信号を送受信する送受信回路を含む。これにより、本実施形態に係る平面型無線機は、接地型平面アンテナ10を用いて信号を送受信することができる。
【0024】
グランド板12は、放射素子11の鏡像を面内に含む。これにより、接地型平面アンテナとしての機能を発揮する。図4に、放射素子11の鏡像の一例を示す。接地面17に対して対称な位置に鏡像14が現れる。グランド板12の面内のうちの少なくとも放射素子11の鏡像の位置にはグランド板12が配置される。
【0025】
図1に示す正極集電体21は、正極集電体の第1の形態である。正極集電体の第1の形態は、グランド板12全体が正極集電体21と重なって対向するような形状となっている。このような形状を採用することで、接地型平面アンテナ10と薄膜電池20とを小さい投影面積で実現することができる。ここで投影面積とは、平面アンテナが広がっている面に占める面積をいう。
【0026】
薄膜電池20の正極集電体21は、薄膜電池20としての機能を発揮できればよい。そのため、正極集電体21の投影面積は、負極集電体であるグランド板12の投影面積よりも小さくてもよい。これにより、正極集電体21の重量を減らし、軽量化を図るとともに、正極集電体21を形成するための部材のコストを削減することもできる。
【0027】
また、グランド板12と正極集電体21とが対向して配置され、正極集電体21が導体であるため、接地型平面アンテナ10は正極集電体21の影響を受ける可能性がある。そこで、正極集電体21は、接地型平面アンテナ10への影響を回避する形状であることが好ましい。
【0028】
図5は、正極集電体の第2の形態であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。正極集電体の第2形態は、正極集電体21は、メッシュ構造を有している。例えば、正極集電体21は、導体の配置されていない空隙部分24を有している。空隙部分24は、1つであってもよいし、複数であってもよい。空隙部分24の形状は、丸又は多角形などの任意の形状とすることができる。空隙部分24の形状を丸形にして、正極集電体21を短冊形状にしてもよい。このように、正極集電体の第2の形態を採用することで、正極集電体21の集電機能を低下させることなく、放射素子11からの電場が正極集電体21で遮られるのを防止して、所望の放射特性のアンテナを容易に実現することができる。
【0029】
図6は、正極集電体の第3形態であり、(a)は薄膜電池の負極側の構成を示し、(b)は薄膜電池の正極側の構成を示す。正極集電体の第3形態は、放射素子11の鏡像と重ならない位置に配置されている。例えば、正極集電体21のうちの放射素子11の鏡像と重なる位置に、導体の配置されていない空隙部分24が形成されている。このように、正極集電体の第3の形態を採用することで、放射素子11からの電場が正極集電体21で遮られるのを大きく防止して、所望の特性のアンテナを容易に実現することができる。
【0030】
なお、正極集電体の第2の形態と正極集電体の第3形態を組み合わせてもよい。例えば、全体がメッシュ構造の正極集電体21を採用し、正極集電体21のうちの放射素子11の鏡像と重なる位置に空隙部分24が形成されていてもよい。
【0031】
また、本実施形態において、接地型平面アンテナ10の放射素子11に接続させる素子として、放射素子11を駆動して信号を送受信する送受信IC41を例に説明したが、放射素子11に接続させる素子は、放射素子11から送信を行うための送信回路のみを備えるICであってもよいし、放射素子11が受けた信号を受信するための受信回路のみを備えるICであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10:接地型平面アンテナ
11:放射素子
12:グランド板
13:給電点
14:鏡像
15、16:導体
17:接地面
20:薄膜電池
21:正極集電体
22:正極活物質
23:フィルム基板
24:空隙部分
32:負極活物質
33:フィルム基板
40:セパレータ
41:送受信IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射素子及びグランド板を有する接地型平面アンテナと、
前記グランド板を負極集電体とし、前記負極集電体と対向する正極集電体を有する薄膜電池と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記グランド板は、前記放射素子の鏡像を面内に含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記正極集電体の投影面積は、前記負極集電体の投影面積よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記正極集電体は、メッシュ構造を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記正極集電体は、前記放射素子の鏡像と重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記薄膜電池の負極集電体及び前記薄膜電池の正極集電体から電力供給を受け、前記接地型平面アンテナの放射素子を駆動して信号を少なくとも送信もしくは受信する回路を備える平面型無線機であって、
前記回路は、前記接地型平面アンテナの給電点に設置されていることを特徴とする平面型無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182727(P2012−182727A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45167(P2011−45167)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】