説明

アンテナ装置及び高周波モジュール

【課題】低コストの構造で、放射素子からの電波のビーム幅を変化させることができ、しかも、電波の指向性をも変化させることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、2素子H面アレイアンテナであり、誘電体基板2と2つの放射素子3−1,3−2とグランド電極4−1,4−2と断面矩形状の金属ブロック体5−1,5−2とグランド電極4−3とを備える。グランド電極4−1,4−2は、放射素子3−1,3−2の両側に配設した。金属ブロック体5−1,5−2は、放射素子3−1,3−2をそのE面から挟むようにグランド電極4−1,4−2に接続されている。グランド電極4−3は誘電体基板2の裏面2bに設けられ、スルーホール40を通じてグランド電極4−1,4−2に接続されている。金属ブロック体5−1,5−2の高さを異ならせることで、電波の指向性を変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射素子から放射される電波のビーム幅およびビーム方向を制御可能なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ装置としては、単一の放射素子を基板表面に配置して、接地された円筒又はブロック状の金属部材をこの放射素子を四方から囲むように基板表面に立設し、この金属部材の径や高さを調整することで、放射素子から放射される電波のビーム幅を変化させるものであった(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−42745号公報
【特許文献2】特開平10−135726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のアンテナ装置では、放射素子から放射される電波のビーム幅を変化させることができるが、ビーム方向を変化させることができない。また、放射素子からの電波のビーム幅を絞るために、放射素子を金属部材で四方から囲む必要があるので、多量の金属部材を必要とし、その分、部品コストが高くなるという問題がある。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、低コストの構造で、放射素子からの電波のビーム幅を変化させることができ、しかも、ビーム方向をも変化させることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係るアンテナ装置は、誘電体基板の表面に一列に配列された複数の放射素子と、これら一列に配列された複数の放射素子の両側にそれぞれ配設された第1及び第2のグランド電極と、一列に配列された複数の放射素子を両側から挟むように、第1及び第2のグランド電極上にそれぞれ立設された第1及び第2の導電性壁部材と、誘電体基板の裏面に設けられ且つ第1及び第2のグランド電極とスルーホールを通じて接続された第3のグランド電極とを具備する構成とした。
かかる構成により、電波を複数の放射素子から放射することができる。このとき、複数の素子が一列に配列されているので、放射素子の配列方向のビーム幅は広がらない。一方、放射素子の両側方向では、ビーム幅が広がろうとするが、第1及び第2の導電性壁部材が複数の放射素子を両側から挟むように、第1及び第2のグランド電極上にそれぞれ立設されているので、かかる方向のビーム幅が第1及び第2の導電性壁部材によって押さえ込まれる。これにより、ビーム幅は全方向から絞り込まれることとなる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、2つの放射素子をH面に並べて成る2素子H面アレイアンテナである構成とした。
かかる構成により、2つの放射素子から電波を放射すると、H面のビーム幅は広がらず、E面のビーム幅が広がろうとする。しかし、第1及び第2の導電性壁部材がE面から2つの放射素子を両側で挟んでいるので、E面のビーム幅はこれら第1及び第2の導電性壁部材によって押さえ込まれる。これにより、ビーム幅は全方向から絞り込まれることとなる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のアンテナ装置において、2つの放射素子への給電線路は、給電部から誘電体基板内に放射素子の並び方向に対して垂直に進入した第1の線路と、第1の線路の先端部で分岐し且つそれぞれがスルーホールを通じて2つの放射素子に接続した同長の第2及び第3の線路とで成る線路である構成とした。
かかる構成により、給電部から第1の線路を通じて供給された電力が、第2及び第3の線路に分配され、スルーホールを通じて2つの放射素子にそれぞれ供給される。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、2つの放射素子をE面に並べて成る2素子E面アレイアンテナである構成とした。
かかる構成により、2つの放射素子から電波を放射すると、E面のビーム幅は広がらず、H面のビーム幅が広がろうとする。しかし、第1及び第2の導電性壁部材がH面から2つの放射素子を両側で挟んでいるので、H面のビーム幅はこれら第1及び第2の導電性壁部材によって押さえ込まれる。これにより、ビーム幅は全方向から絞り込まれることとなる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のアンテナ装置において、2つの放射素子への給電線路は、給電部から誘電体基板内に放射素子の並び方向に平行に進入しスルーホールを通じて一方の放射素子に接続した第1の線路と、当該一方の放射素子から延出して他方の放射素子に接続した第2の線路とで成る線路である構成とした。
かかる構成により、給電部から第1の線路を通じて供給された電力が、スルーホールを通じて一方の放射素子に供給される。そして、この放射素子から延出した第2の線路を通じて他方の放射素子にも電力が供給される。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、第1及び第2の導電性壁部材は、それぞれ断面矩形状のブロック体である構成とした。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、第1及び第2の導電性壁部材は、複数の放射素子と向き合う面が下方から上方にかけて当該放射素子から漸次離れるように傾斜した断面略台形状のブロック体である構成とした。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、第1及び第2の導電性壁部材は、その水平部を第1及び第2のグランド電極にそれぞれ接触させ且つ起立部を放射素子にそれぞれ対向させた状態で立設された断面L字状の金属板である構成とした。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置において、第1及び第2の導電性壁部材の高さを等しくした構成とする。
かかる構成により、一列に配列された複数の放射素子からの電波のビームが両側から均等に絞り込まれる。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置において、第1及び第2の導電性壁部材の高さを異ならせた構成とする。
かかる構成により、複数の放射素子からの電波のビームが第1及び第2の導電性壁部材の内の低い方の導電性壁部材側に傾く。
【0016】
また、請求項11の発明に係る高周波モジュールは、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のアンテナ装置を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0017】
以上詳しく説明したように、この発明に係るアンテナ装置によれば、たった2つの第1及び第2の導電性壁部材を用いることで、放射素子から放射されるビーム幅を全方向から絞り込むことができるので、上記従来の技術のように、放射素子を四方から囲む多量の金属部材を必要としない。この結果、その分、部品コストの低減化を図ることができる。すなわち、この発明のアンテナ装置によれば、低コストの構造で、放射素子からの電波のビーム幅を変化させることができるという優れた効果がある。
特に、請求項10の発明に係るアンテナ装置によれば、複数の放射素子からの電波のビームを第1及び第2の導電性壁部材の内の低い方の導電性壁部材側に傾けることができるので、異なる高さの第1及び第2の導電性壁部材の高さを適宜調整することで、電波の指向性を任意に変化させることができるという効果がある。
【0018】
また、請求項11の発明によれば、低コストで、指向性の変化が可能な高周波モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明の第1実施例に係るアンテナ装置の斜視図であり、図2は、図1に示すアンテナ装置の平面図であり、図3は、図2の矢視A−A断面図である。
【0021】
図1に示すように、この実施例のアンテナ装置1は、誘電体基板2と、誘電体基板2の表面2aに一列に配列された2つの放射素子3−1,3−2と、第1及び第2のグランド電極としてのグランド電極4−1,4−2と、第1及び第2の導電性壁部材としての金属ブロック体5−1,5−2と、第3のグランド電極としてのグランド電極4−3とで構成されている。
【0022】
このアンテナ装置1は、2素子H面アレイアンテナであり、放射素子3−1,3−2をH面(図1及び図2の矢印H方向)に一列に並べて構成した。この実施例では、放射素子3−1,3−2として、それぞれ両端(図1及び図2の左右端)開放の1/2波長共振器として機能するパッチ状の放射電極を適用した。
このような放射素子3−1,3−2への給電は、誘電体基板2内に形成されたT分岐の給電線路30を通じて行われる。具体的には、給電線路30は、図示しない給電部から誘電体基板2にH方向に対して垂直に進入した第1の線路31と、この線路31の先端部でT字状に分岐した同長の第2及び第3の線路32,33とを有するトリプレート線路であり、線路32,33の先端部がスルーホール32a,33aを通じて放射素子3−1,3−2素子の給電点にそれぞれ接続している。
これにより、図示しない給電部から所定の電力を給電線路30の線路31に供給すると、この電力が線路32,33で分岐され、放射素子3−1,3−2が同振幅且つ同位相の電力によってそれぞれ励振される。
【0023】
グランド電極4−1,4−2は、放射素子3−1,3−2と同じく誘電体基板2の表面2aに配設されている。具体的には、グランド電極4−1,4−2を、放射素子3−1,3−2の並び方向(矢印H方向)に沿わせて、放射素子3−1,3−2の両側に配設した。
ところで、図2及び図3に示すように、グランド電極4−1の下側には給電線路30の線路32,33が通っている。このため、放射素子3−1,3−2とグランド電極4−1との間隔dが広いと、給電時における線路32,33からの不要な電磁波が間隔dから漏れて、放射素子3−1,3−2から放射されている電波に悪影響を与える。かといって、間隔dが余り狭いと、グランド電極4−1を流れる電流が放射素子3−1,3−2に影響を与え、放射素子3−1,3−2の無負荷Q値を低下させて、放射効率を劣化させるおそれがある。したがって、この実施例では、放射素子3−1,3−2とグランド電極4−1との間隔dを、線路32,33からの不要放射の漏洩を防止可能な狭さで且つ放射素子3−1,3−2の放射効率を劣化させずに広帯域の整合が可能な広さに設定してある。
【0024】
金属ブロック体5−1,5−2は、図1に示すように、断面矩形状の中実棒体であり、グランド電極4−1,4−2に配されている。具体的には、金属ブロック体5−1,5−2を、グランド電極4−1,4−2の縁部に配置して、グランド電極4−1,4−2と電気的に接続し、これら互いに平行な金属ブロック体5−1,5−2によって、2つの放射素子3−1,3−2を両側から挟んだ。すなわち、金属ブロック体5−1,5−2は、放射素子3−1,3−2をそのE面(図1及び図2の矢印E方向)から挟んだ状態になっている。
また、この実施例では、図3に示すように、金属ブロック体5−1,5−2の高さhを、等しく設定している。
【0025】
グランド電極4−3は、図3に示すように、誘電体基板2の裏面2bのほぼ全面に設けられている。そして、このグランド電極4−3とグランド電極4−1,4−2とは、複数のスルーホール40を通じて電気的に接続されている。
【0026】
次に、この実施例のアンテナ装置が示す作用及び効果について説明する。
図4は、放射素子からの電波Sの放射状態を示す斜視図であり、図5は、電波SのH面SHを示す概略図であり、図6は、電波SのE面SEを示す概略図である。
図4において、電力を給電部(図示省略)から給電線路30の線路31に供給すると、線路32,33で分岐された同振幅且つ同位相の電力が放射素子3−1,3−2を励振し、電波Sを放射素子3−1,3−2から誘電体基板2の表面2aに垂直な方向(Z軸方向)に放射する。
このとき、図5の(a)に示すように、放射素子が誘電体基板2上に1つしかない場合には、その単一の放射素子3から放射される電波Sの磁界成分であるH面SHは、矢印H方向に広がった状態になる。しかし、この実施例のアンテナ装置1のように、2つの放射素子3−1,3−2がH方向に配列されていると、放射素子3−1,3−2が互いの電波を引き込み合い、図5の(b)に示すように、そのH面SHが、H方向に広がらず、絞り込まれた状態になる。
また、図6の(a)に示すように、金属ブロック体5−1,5−2が矢印E方向に存在しない場合には、放射素子3−1,3−2から放射される電波Sの電界成分であるE面SEは、矢印E方向に広がった状態になる。しかし、この実施例のアンテナ装置1のように、放射素子3−1,3−2を金属ブロック体5−1,5−2で両側から挟んだ状態にすると、図6の(b)に示すように、金属ブロック体5−1,5−2がE方向に広がろうとするE面SEを反射させ、E方向への広がりを押さえ込み、この結果、E面SEが絞り込まれた状態になる。
このようにして、放射素子3−1,3−2から放射される電波SのH面SHとE面SEとが共に絞り込まれ、電波Sのビーム幅が狭くなる。
【0027】
発明者等は、かかるビーム絞り込み作用を確認すべく、シミュレーションを行った。
図7は、E面SEの広がり状態を示す線図であり、横軸が誘電体基板2の表面2aの垂線からの角度(deg)で、縦軸が相対電力(dB)である。また、図8は、H面SHの広がり状態を示す線図であり、横軸が誘電体基板2の表面2aの垂線からの角度(deg)で、縦軸が相対電力(dB)である。
このシミュレーションでは、図1に示すアンテナ装置1において、金属ブロック体5−1,5−2を発信周波数における波長λの1/5だけ放射素子3−1,3−2から離して、放射素子3−1,3−2の両側に配し、金属ブロック体5−1,5−2の高さh(図3参照)を、λ×0、λ/5、λ/4、λ/2の4通りに設定して、各高さhにおける相対電力と角度との関係を計算した。
【0028】
まず、E面SEの計算を行ったところ、金属ブロック体5−1,5−2の高さhをλ×0、即ち、金属ブロック体5−1,5−2を設けなかった場合は、図7の破線S1で示すように、E面SEの半値幅131°、利得7dBiにおいて、E面SEが最も広がることが判明した。
そして、金属ブロック体5−1,5−2の高さhがλ/5の場合には、一点鎖線S2で示すように広がり、λ/4の場合には、実線S3で示すように広がり、λ/2の場合には二点鎖線S4で示すように広がった。
これらから明らかなように、金属ブロック体5−1,5−2を放射素子3−1,3−2の両側に配することで、E面SEの両側が絞り込まれ、そして、高さhをλ/4に設定した場合に、E面SEの半値幅43°、利得10dBiiにおいて、E面SEが最も鋭くなり、利得も高くなっていることが確認された。
したがって、金属ブロック体5−1,5−2の高さhを変えることで、E面SEの絞り幅を最適値に設定することができることが判明した。
【0029】
次に、上記と同様にして、H面SHの計算を行ったところ、図8の破線S1、一点鎖線S2、実線S3、二点鎖線S4で示すように、H面SHは、金属ブロック体5−1,5−2の存在及びその高さhに拘わらず、鋭く絞り込まれることが確認された。
【0030】
このように、この実施例のアンテナ装置1によれば、図4に示すように、たった2つの金属ブロック体5−1,5−2を用いることで、放射素子3−1,3−2から放射される電波Sのビーム幅を全方向から絞り込むことができるので、多くの金属部材を用いて、放射素子3−1,3−2を四方から囲む必要がない。この結果、部品コストの低減化を図ることができる。
しかも、金属ブロック体5−1,5−2の高さhを変えるだけで、誘電体基板2の厚みや誘電率を変えることなく、電波Sのビーム幅を自由に制御することができるので、設計自由度が高いアンテナ装置1を提供することができる。
また、グランド電極4−1,4−2が誘電体基板2の表面2aにあるので、金属ブロック体5−1,5−2を半田等で容易にグランド電極4−1,4−2に接続することができる。
【0031】
なお、この第1実施例では、第1及び第2の導電性壁部材として、断面矩形状の金属ブロック体5−1,5−2を適用した例を示したが、図9に示すように、断面矩形でなく、断面台形状の金属ブロック体5−1,5−2を適用することもできる。かかる場合には、金属ブロック体5−1,5−2の面の内、放射素子3−1,3−2と向き合う面5a,5aを、下方から上方にかけて放射素子3−1,3−2から漸次離れるように傾斜させる。
また、この第1実施例では、第1及び第2の導電性壁部材として、中実棒体である金属ブロック体5−1,5−2を適用した例を示したが、図10に示すように、全てが金属でなく、金属メッキ5cを矩形状(又は台形状)の樹脂5bの表面に施したものを第1及び第2の導電性壁部材として適用することもできる。かかる場合には、電流の表皮効果を考慮し、金属メッキ5cの厚さtを、所望周波数における表皮深さの3倍から4倍程度に設定することが好ましい。
【実施例2】
【0032】
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図11は、この発明の第2実施例に係るアンテナ装置の斜視図であり、図12は、図11に示すアンテナ装置の断面図である。
この実施例は、第1及び第2の導電性壁部材の形状が上記第1実施例と異なる。
すなわち、図11に示すように、第1及び第2の導電性壁部材として、金属板5′−1,5′−2を適用した。具体的には、各金属板5′−1(5′−2)を水平部5′aと起立部5′bとを有した断面L字状の折曲体で形成し、その水平部5′aをグランド電極4−1(4−2)に当接して、起立部5′bを放射素子3−1,3−2に対向させた。
【0033】
かかる構成により、金属板5′−1,5′−2が、上記第1実施例の金属ブロック体5−1,5−2に比べて容易且つ低コストで製造することができるので、アンテナ装置1の更なる低コスト化を図ることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0034】
ところで、この実施例では、軽い金属板5′−1(5′−2)の水平部5′aを正確に位置決めして、グランド電極4−1(4−2)上に半田付けで接続する必要がある。しかし、金属板5′−1(5′−2)を正確な位置に位置決めすることはなかなか容易でない。そこで、図13に示すように、金属板5′−1(5′−2)の水平部5′aにスリット5′cを設けて、水平部5′aを2分割する。そして、グランド電極4−1(4−2)の表面を覆うレジストに、破線で示すように、2分割された水平部5′aに対応した形状の2つ露出部Cを形成し、2分割された水平部5′aをこの露出部C内に嵌めるようにして、グランド電極4−1(4−2)に半田付けすることで、そのセルフアライメント機能により、金属板5′−1(5′−2)の正確な位置決めを行うことができる。
【実施例3】
【0035】
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図14は、この発明の第3実施例に係るアンテナ装置の断面図である。
この実施例は、電波Sの最大放射方向を変えることができる構造とした点が、上記第1及び第2実施例と異なる。
具体的には、図14に示すように、金属板5′−1の起立部5′bの高さよりも5′−2の起立部5′bの高さを低くした。
これにより、放射素子3−1,3−2から放射される電波SのE面SEのうち、図14の右側に放射される電界の多くが金属板5′−1の起立部5′bによって反射される。これに対して、左側に放射される電界は、金属板5′−2の起立部5′bによってあまり反射されない。この結果、E面SEの中心(即ち一点鎖線で示す最大放射位置)が誘電体基板2の垂線Zから左側にθだけ傾くこととなる。
すなわち、この実施例では、電波Sのビームの指向性を図14の左側にθだけ傾けた状態に変化させることができる。
【0036】
このように、この実施例のアンテナ装置によれば、放射素子3−1,3−2からの電波Sのビームを、起立部5′bが低い金属板5′−2側に傾けることができるので、金属板5′−2の起立部5′bの高さを適宜調整することで、電波Sの指向性を任意に変化させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0037】
なお、この実施例では、金属板5′−1の起立部5′bの高さよりも金属板5′−2の起立部5′bの高さを低くして、電波Sのビームの指向性を図14の左側にθだけ傾ける構成としたが、指向性の変化は、金属板5′−1の起立部5′bと金属板5′−2の起立部5′bとの高さの差によって、調整することができる。したがって、図15に示すように、金属板5′−1の起立部5′bの高さを金属板5′−2の起立部5′bの高さよりも低くして、電波Sのビームの指向性を右側にθだけ傾けるようにすることもできる。
また、金属板5′−1,5′−2の起立部5′b,5′bの一方の高さをゼロ、即ち、金属板5′−1,5′−2の一方のみを誘電体基板2に実装することで、電波Sのビームの傾斜角θを最大にすることができる。
【実施例4】
【0038】
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図16は、この発明の第4実施例に係るアンテナ装置の斜視図であり、図17は、図16の矢視B−B断面図である。
この実施例は、2素子E面アレイアンテナである点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
【0039】
すなわち、図16及び図17に示すように、放射素子3−1,3−2をE面方向に一列に並べた。そして、放射素子3−1,3−2への給電線路30′を、E方向に平行に誘電体基板2内に進入し且つその先端部がスルーホール31aを通じて放射素子3−1の給電点に接続した第1の線路31と、放射素子3−1の左端中央から直状に延出して放射素子3−2の右端中央に連結した第2の線路34とで形成した。この線路34は、放射素子3−1,3−2に供給される電力に位相差が生じない長さに設定してある。
これにより、所定の電力を給電部から給電線路30′の線路31に供給すると、この電力が放射素子3−1に供給された後、この放射素子3−1に供給された電力と同振幅且つ同位相の電力が線路34を通じて放射素子3−2に供給され、放射素子3−1,3−2がこれらの電力によってそれぞれ励振される。
【0040】
グランド電極4−1,4−2は、放射素子3−1,3−2の並び方向(矢印E方向)に沿って、放射素子3−1,3−2の両側に配設され、金属ブロック体5′′−1,5′′−2が、グランド電極4−1,4−2の縁部に配置されている。したがって、この金属ブロック体5′′−1,5′′−2は、上記実施例の金属ブロック体5−1,5−2や金属板5′−1,5′−2と異なり、放射素子3−1,3−2をそのH面から挟んだ状態になっている。
【0041】
次に、この実施例のアンテナ装置が示す作用及び効果について説明する。
電力を給電部から給電線路30′の線路31に供給すると、この電力がスルーホール31a及び線路34を通じて放射素子3−1,3−2にそれぞれ供給され、放射素子3−1,3−2が同振幅且つ同位相の電力によって励振され、電波Sが誘電体基板2の表面2aに垂直な方向に放射される。
このとき、2つの放射素子3−1,3−2がE方向に配列されているので、電波SのE面SEが、E方向に広がらず、絞り込まれた状態になる。また、放射素子3−1,3−2が金属ブロック体5′′−1,5′′−2によってそのH面から挟まれた状態になっているので、電波SのH面SHが絞り込まれた状態になる。
このようにして、電波SのH面SHとE面SEとが共に絞り込まれ、ビーム幅の狭い電波Sが放射素子3−1,3−2から放射されることとなる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【実施例5】
【0042】
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図18は、この発明の第5実施例に係る高周波モジュールの平面図であり、図19は、高周波モジュールを一部破断して示す側面図である。
図18及び図19に示すように、この実施例の高周波モジュール6は、上記第2実施例のアンテナ装置1を備えたアンテナ一体型モジュールである。
具体的には、この高周波モジュール6は、グランド電極4−1,4−2と放射素子3−1,3−2とを表面2aに備え且つグランド電極4−3を裏面2b全面に備えた誘電体基板2上に、金属板5′−1,5′−2と図示しない高周波回路部品とを実装し、高周波回路部品を金属ケース7でシールドした構成になっている。
高周波回路部品は、例えば、RF回路のアンテナスイッチや送信回路及び受信回路に関する部品であり、アンテナスイッチは、放射素子3−1,3−2の給電線路30の線路31に電気的に接続される。
【0043】
かかる構成により、アンテナスイッチを通じて、アンテナ装置1と送信回路とを接続することで、鋭いビームの電波Sを放射素子3−1,3−2から放射することができる。また、アンテナスイッチを通じて、アンテナ装置1と受信回路とを接続することで、放射素子3−1,3−2で受信した電波を受信回路に送り込むことができる。
【0044】
このように、この実施例の高周波モジュール6によれば、低コストで、指向性の変化が可能なアンテナ装置1を備えているので、モジュール自体のコストダウンと操作性の向上を図ることができる。
また、高周波モジュール6の製造時には、放射素子3−1,3−2,グランド電極4−1,4−2,4−3,給電線路30及びスルーホール40を有する誘電体基板2を、パターン印刷やフォトリソグラフィで形成する。そして、この誘電体基板2を部品実装マシンに搬送し、このマシンによって、高周波回路部品や金属ケース7及び金属板5′−1,5′−2を誘電体基板2上にマウントする。この際、誘電体基板2を裏返したりする操作をすることなく、これらの部品を全て誘電体基板2の表面2a側に一括実装することができるので、部品実装作業を短時間で効率的に行うことができる。すなわち、この実施例によれば、部品実装作業を短時間で効率的に行うことが可能な量産性に優れた高周波モジュールを提供することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第4実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0045】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記第実施例では、放射素子の素子数を2つに限定したアンテナ装置を例示したが、放射素子は複数であれば良く、その数に限定はない。
また、上記実施例では、複数の放射素子へそれぞれ給電する電力の位相や振幅を等しく設定したが、それぞれの電力の位相や振幅を異ならして複数の放射素子に供給する構成のアンテナ装置を、この発明範囲から除外する意ではない。
さらに、上記第5実施例では、第2実施例のアンテナ装置1を備えた高周波モジュール6を例示したが、これに限らず、第1実施例ないし第4実施例のいずれかに記載のアンテナ装置を備えた高周波モジュールもこの発明の範囲に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1実施例に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】図1に示すアンテナ装置の平面図である。
【図3】図2の矢視A−A断面図である。
【図4】放射素子からの電波の放射状態を示す斜視図である。
【図5】電波のH面を示す概略図である。
【図6】電波のE面を示す概略図である。
【図7】E面の広がり状態を示す線図である。
【図8】H面の広がり状態を示す線図である。
【図9】第1実施例の第1変形例を示す斜視図である。
【図10】第1実施例の第2変形例の要部を示す断面図である。
【図11】この発明の第2実施例に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図12】図11に示すアンテナ装置の断面図である。
【図13】第2実施例の一変形例を示す斜視図である。
【図14】この発明の第3実施例に係るアンテナ装置の断面図である。
【図15】第3実施例の一変形例を示す断面図である。
【図16】この発明の第4実施例に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図17】図16の矢視B−B断面図である。
【図18】この発明の第5実施例に係る高周波モジュールの平面図である。
【図19】高周波モジュールを一部破断して示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…アンテナ装置、 2…誘電体基板、 2a…表面、 2b…裏面、 3−1,3−2…放射素子、 4−1〜4−3…グランド電極、 5−1,5−2,5′′−1,5′′−2…金属ブロック体、 5′−1,5′−2…金属板、 5a…面、 5′a…水平部、 5b…樹脂、 5′b…起立部、 5c…金属メッキ、 5′c…スリット、 6…高周波モジュール、 7…金属ケース、 30,30′…給電線路、 31〜34…線路、 31a〜33a,40…スルーホール、 S…電波、 SE…E面、 SH…H面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板の表面に一列に配列された複数の放射素子と、
これら一列に配列された複数の放射素子の両側にそれぞれ配設された第1及び第2のグランド電極と、
上記一列に配列された複数の放射素子を両側から挟むように、上記第1及び第2のグランド電極上にそれぞれ立設された第1及び第2の導電性壁部材と、
上記誘電体基板の裏面に設けられ且つ上記第1及び第2のグランド電極とスルーホールを通じて接続された第3のグランド電極と
を具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
2つの上記放射素子をH面に並べて成る2素子H面アレイアンテナである、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置において、
2つの上記放射素子への給電線路は、給電部から誘電体基板内に放射素子の並び方向に対して垂直に進入した第1の線路と、第1の線路の先端部で分岐し且つそれぞれがスルーホールを通じて2つの放射素子に接続した同長の第2及び第3の線路とで成る線路である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
2つの上記放射素子をE面に並べて成る2素子E面アレイアンテナである、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ装置において、
2つの上記放射素子への給電線路は、給電部から誘電体基板内に放射素子の並び方向に平行に進入しスルーホールを通じて一方の放射素子に接続した第1の線路と、当該一方の放射素子から延出して他方の放射素子に接続した第2の線路とで成る線路である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、
上記第1及び第2の導電性壁部材は、それぞれ断面矩形状のブロック体である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、
上記第1及び第2の導電性壁部材は、上記複数の放射素子と向き合う面が下方から上方にかけて当該放射素子から漸次離れるように傾斜した断面略台形状のブロック体である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置において、
上記第1及び第2の導電性壁部材は、その水平部を上記第1及び第2のグランド電極にそれぞれ接触させ且つ起立部を上記放射素子にそれぞれ対向させた状態で立設された断面L字状の金属板である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置において、
上記第1及び第2の導電性壁部材の高さを等しくした、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置において、
上記第1及び第2の導電性壁部材の高さを異ならせた、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のアンテナ装置を備えた、
ことを特徴とする高周波モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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