説明

アンテナ装置

【課題】アース部と車体との接続を電気的に安定させて、ガラスアンテナのアンテナ利得を向上させることができる、アンテナ装置の提供。
【解決手段】車体フレーム50のフランジ51に取り付けられた窓ガラス12と、アンテナ導体1〜4と、無給電導体5,6と、給電部16と、アース部17とを窓ガラス12に備えるガラスアンテナ300とを有する車両用アンテナ装置であって、アース部17は、窓ガラス12の法線方向から見ると、フランジ51に重ならない領域を含むアース部位17Aと、フランジ51に重なる領域を含むアース部位17Bとを含むものであり、アース部17は、アース部位17Bに設置されたアース部材31によってフランジ51に電気的に接続されたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスアンテナを有するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の窓枠に取り付けられる窓ガラスに、アンテナとして機能するガラスアンテナを設けることが知られている。図1は、特許文献1に開示されたガラスアンテナの平面図である。図1に示されるように、窓ガラス12に設けられるガラスアンテナ100は、アンテナエレメント1〜4によって構成されたアンテナ導体と、該アンテナ導体に接続された給電部16と、無給電エレメント5,6によって構成された無給電導体と、該無給電エレメントに接続されたアース部17とを備えている。給電部16は、信号処理回路にアンテナ導体を電気的に接続するための部位であり、アース部17は、車両のボディ(車体)に無給電導体を電気的に接続するための部位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/119856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、弾性接続部材がアース部17に取り付けられ、弾性接続部材によってアース部と窓枠を形成している車体とを接続させることが記載されている。一方、受信信号を伝送するケーブルで受信信号の減衰が生じる前に受信信号を増幅させることが考えられており、アンプ等が実装された信号処理回路を備えたコネクタをガラスアンテナに直接取り付けることが行われている。このようなコネクタは、アンプの信号線側と接地側とが、給電部16とアース部17とそれぞれに接続されるように取り付けられる。特許文献1の形態にこのコネクタを採用する場合、アース部17に、コネクタと接続する部分と弾性接続部材と接続する部分とを設けるとともに、図1に示されるように、窓枠とコネクタとが干渉しないようアース部17の弾性接続部材と接続する部分を覆う、窓枠の端部56よりも窓ガラス12の面内側(図上、下側)に突出させた突起部56aを設ける必要がある。この突起部56aに弾性接続部材が接触することでアース部17と車体とが接続される。
【0005】
しかしながら、このような突起部56aを設けることは、窓枠の形状を変更する必要があり、特別に設計することになるため汎用性がなく好ましくない。また、突起部56aとの接続によってアース部17を車体パネルに接続した場合、突起部56aの面積が狭いため、車体の一部であっても突起部56aのグランドプレーンとしての機能が弱く、ガラスアンテナのアンテナ利得が充分に得られない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、アース部と車体との接続を電気的に安定させて、ガラスアンテナのアンテナ利得を向上させることができる、アンテナ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
車体の窓枠に取り付けられた窓ガラスと、
アンテナ導体と、該アンテナ導体に接続された給電部と、無給電導体と、該無給電導体に接続されたアース部とを前記窓ガラスに備えるガラスアンテナとを有するアンテナ装置であって、
前記アース部は、前記窓ガラスの法線方向から見ると、前記窓枠に重ならない領域を含む第1のアース部位と、前記窓枠に重なる領域を含む第2のアース部位とを含むものであり、
前記車体と前記第2のアース部位とを電気的に接続するアース部材を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アース部と車体との接続を電気的に安定させて、ガラスアンテナのアンテナ利得を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アース部17を備える従来のガラスアンテナ100の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるアンテナ装置のガラスアンテナ200の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態であるアンテナ装置のガラスアンテナ300の平面図である。
【図4】アース部位17Bがアース部材31Aを介して車体と電気的に接続する構造の一例を示した断面図である。
【図5】アース部位17Bがアース部材31Bを介して車体と電気的に接続する構造の一例を示した断面図である。
【図6】アース部材31Bの斜視図である。
【図7】給電構造の斜視図である。
【図8】ガラスアンテナ300のアンテナ利得の実測データである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の向きは、記号、数字の方向に対応する。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。また、それらの図面は、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視の図であるが、車外視の図として参照してもよい。例えば、窓ガラスが車両の前部に取り付けられるフロントガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。また、本発明では給電部とアース部とが基準方向に沿って並んで配置されるとするが、基準方向はガラスアンテナの設置領域によって自由に設定でき、特に車両用の窓ガラスであれば、窓ガラスの縁部に平行な方向、水平方向または鉛直方向に設定されることが好ましい。以下に説明する形態では、車両用窓ガラスが車両に搭載された際の水平面が基準方向となる。なお、本発明は、フロントガラスに限定されず、車両の後部に取り付けられるリヤガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってよい。
【0011】
図2は、本発明の第1の実施形態であるアンテナ装置のガラスアンテナ200の平面図である。図3は、本発明の第2の実施形態であるアンテナ装置のガラスアンテナ300の平面図である。ガラスアンテナ200,300は、アンテナ導体及びそのアンテナ導体の近傍に配置された無給電導体、並びに互いに所定の基準方向(例えば、水平又は略水平な方向)に離間する給電部16及びアース部17(17A,17B)が窓ガラス12に平面的に設けられたアンテナである。
【0012】
ガラスアンテナ200,300は、アンテナ導体パターンとして、例えば、第1のエレメントであるアンテナエレメント1と、第2のエレメントであるアンテナエレメント2と、第3のエレメントであるアンテナエレメント3と、第4のエレメントであるアンテナエレメント4とを備える。ガラスアンテナ300は、更に、アンテナエレメント8を備える。また、ガラスアンテナ200,300は、無給電導体のパターンとして、例えば、第1の無給電エレメントである無給電エレメント5と、第2の無給電エレメントである無給電エレメント6とを備える。
【0013】
給電部16は、不図示の信号処理回路にアンテナ導体を接続するための部位であり、アース部17は、金属からなる車体に無給電導体を電気的に接続するための部位である。「電気的に接続」とは、導体同士が直接接触して直流的に導通することと、導体同士が所定間隔離れてコンデンサを形成し、高周波的に導通することとを含んでいる。車体開口縁56は、窓ガラス12が取り付けられる窓開口部を形成しているフランジ51の端部である。フランジ51は、車体フレーム50に形成された窓枠に相当する。給電部16とアース部17は、窓ガラス12の縁の近傍又は車体開口縁56の近傍に位置しているとよい。
【0014】
なお、図2,3には、窓ガラス12がフランジ51に取り付けられた状態での車体開口縁56の位置が、点線で示されている。
【0015】
アース部17は、窓ガラス12の法線方向から車外視で見ると、フランジ51に重ならない領域を含む第1のアース部位として、アース部位17Aを含み、フランジ51に重なる領域を含む第2のアース部位として、アース部位17Bを含む、導体領域である。アース部位17Bは、アース部位17Aに対して、窓ガラス12の外周辺のうち給電部16に最も近い上辺側に位置している。アース部位17Aとアース部位17Bとは、一本又は二本以上の線状エレメントで接続されてもよい。
【0016】
図2,3には、アース部位17Aとして、a,b,c,dを頂点とする長方形の導体領域が例示されている。図2,3のアース部位17Aは、窓ガラス12の法線方向からアース部位17Aを車外側から投影すると、その投影がフランジ51に重ならない領域を含む形状である。また、図2には、アース部位17Bとして、d,e,f,aを頂点とする長方形の導体領域が例示され、図3には、アース部位17Bとして、e,f,g,aを頂点とする長方形の導体領域が例示されている。図2,3のアース部位17Bは、窓ガラス12の法線方向からアース部位17Bを車外側から投影すると、その投影がフランジ51に重なる領域を含む形状である。
【0017】
アース部位17Aは、窓ガラス12の法線方向から車外視で見ると、フランジ51に重なる領域を含んでもよいし、フランジ51に全て重ならない領域であってもよい。アース部位17Aがフランジ51に重なる領域を含む場合、フランジ51に重なる領域の面積は、フランジ51に重ならない領域の面積よりも小さい。
【0018】
アース部位17Bは、窓ガラス12の法線方向から車外視で見ると、フランジ51に重ならない領域を含んでもよいし、フランジ51に全て重なる領域であってもよい。アース部位17Bがフランジ51に重ならない領域を含む場合、フランジ51に重なる領域の面積は、フランジ51に重ならない領域の面積よりも大きい。
【0019】
また、フランジ51とアース部位17Bとを電気的に接続するアース部材31が設けられる。アース部材31は、アース部位17Bに設置された導体であってもよいし、フランジ51に設置された導体であってもよい。
【0020】
したがって、図2,3に例示されたガラスアンテナ200,300を有するアンテナ装置によれば、アース部17をフランジ51に電気的に接続するために突起部のような特別な形状を、端部56が直線的に形成されたフランジ51に形成する必要がない。そのため、アース部17と車体との接続をアース部材31によって電気的に安定させることができる。また、アース部17が電気的に接続されるグランド部位の面積を十分に確保できるため、大きなグランドプレーンとして機能する車体を十分に活用でき、図1のガラスアンテナ100に比べて、ガラスアンテナ200,300のアンテナ利得を向上させることができる。
【0021】
なお、同軸ケーブルの内部導体が給電部16に電気的に接続され、同軸ケーブルの外部導体がアース部位17Aに電気的に接続されるような場合、アンテナ導体と無給電導体とは、給電部とアース部とに給電するような双極アンテナを構成しているとも言える。
【0022】
次に、図2,3の構成について更に詳細に説明する。
【0023】
図2,3において、アンテナエレメント1は、給電部16を起点に、基準方向に平行且つアース部17の反対側に向かう方向である第1の方向(図面上では、右方向)に延伸する。アンテナエレメント2は、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終端である第1の終端部1g(すなわち、給電部16と反対側の終端)に接続され、アンテナエレメント1に直交且つ窓ガラス12の外周に対して内側へ向かう方向である第2の方向(図面上では、下方向)に延伸する。アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に、第2の方向に向けて直線的に延伸してもよいし、第2の方向に向けて湾曲して延伸してもよい。アンテナエレメント3は、アンテナエレメント2の延伸の終端である第2の終端部2gを起点に、第1の方向に対して逆向きの方向である第3の方向(図面上では、左方向)に延伸する。そして、アンテナエレメント3の第3の方向への延伸の終端である第3の終端部3gが、後述の無給電エレメント5に対して第1の方向側に位置する(すなわち、無給電エレメント5に対して右側の領域上に位置する)。アンテナエレメント4は、アンテナエレメント2上の点を起点に、第1の方向に延伸する。図2,3のアンテナエレメント4の起点は、終端部2gを起点に終端部4gを終点として第1の方向に延伸する。
【0024】
なお、アンテナエレメント4は無くてもよいが、アンテナエレメント4が設けられたガラスアンテナは、アンテナエレメント4が設けられていない場合に比べて、ガラスアンテナの平均感度が向上する。
【0025】
また、図3のアンテナエレメント8は、アンテナエレメント1に対してアンテナエレメント3が延在する側とは反対側の領域において、アンテナエレメント1に並走するように、給電部16を起点に第1の方向に延伸する。アンテナエレメント8が設けられたガラスアンテナは、アンテナエレメント8が設けられていない場合に比べて、ガラスアンテナの平均感度が向上する。
【0026】
また、図2の無給電エレメント5は、アース部17の一部の領域であるアース部位17Aを起点に、少なくとも一部が第2の方向に延伸するエレメントである。図3の無給電エレメント5は、アース部17の一部の領域であるアース部位17Bを起点に、少なくとも一部が第2の方向に延伸するエレメントである。図2,3の無給電エレメント6は、上述の基準方向に平行且つ無給電エレメント5上の点を起点に延伸するものである。無給電エレメント6は、アンテナ利得向上の点で、終端部5gを通って水平方向に延伸するとよく、図2,3の場合、終端部5gを起点に第3の方向(図面上では、左方向)に終端部6gを終点として延伸する。
【0027】
なお、無給電エレメント6は、第3の方向ではなく第1の方向に延伸させてもよく、さらにアンテナエレメント3と近接させてもよい。車体のグランドプレーンはチューニングの余地がないが、無給電エレメント6の長さ、延伸方向は適宜調整することが可能であるため、無給電エレメント6を設けることによりチューニングが容易となる。
【0028】
ここで、「終端部」は、無給電エレメント又はアンテナエレメントの延伸の終点であってもよいし、その終点手前の導体部分である終点近傍であってもよい。
【0029】
給電部16及びアース部17が、車体開口縁56に沿うように配置されることによって、ガラスアンテナ200,300全体の低背化をしつつ、アース部材31の設置スペースを容易に確保できる。
【0030】
給電部16及び給電部16に接続されたアンテナ導体、並びにアース部17及びアース部17を起点に接続された無給電導体は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを窓ガラス板の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラスの車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により貼付してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。
【0031】
アンテナエレメント及び無給電エレメント、並びにアース部位17Aと17Bを結ぶ線状エレメントの各線幅(各導体幅)の最小値は、プリントされたエレメントの断線を防止する点で、0.4mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。また、各線幅の最大値は、ガラスの曲げ成形時に発生する歪みを抑える点で、3.0mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましい。
【0032】
次に、アース部材31の具体例について図4,5,6を参照して説明する。
【0033】
図4は、アース部位17Bがアース部材31Aを介して車体と電気的に接続する構造の一例を示した断面図である。アンテナ導体によって受信された電波の受信信号が、図2,3に示した給電部16とアース部位17Aとに電気的に接続された後述するアンテナ側コネクタに伝達される。一方、アース部位17Bを車体に電気的に接続するため、アース部材31Aがアース部位17Bに半田付けなどで取り付けられ、互いに電気的に接続される。または、アース部材31Aが、アース部位17Bに両面接着テープや接着剤などで接着され、アース部位17Bと高周波的に接続させてもよい。このような接続構造にすることによって、アース部17及びアース部17に接続された無給電導体を、アース部材31Aを介して、車体に確実にアースすることができる。
【0034】
図4に示されるように、車体フレーム50の端部は窓ガラス12を車体に設置するためにL字状にフランジ51が形成されている。参照符号13はフランジ51と窓ガラス12とを接着する接着剤(又は、パッキン)である。
【0035】
アース部材31Aは、接着剤13が固まるまで窓ガラス12をフランジ51に仮止めするための留め具として使用する仮止めクリップの形状を有しており、アース部位17Bに半田付けや接着剤などによって電気的に接続される台座と、フランジ51に引っ掛けて固定する弾性のクリップとを有している。この弾性のクリップは、フランジ51の取り付け穴52を突き抜けたアース部材31Aの先端部に設けられる。アース部材31Aとして使用される仮止めクリップは導電性の材料で作成された導電体である。または、導電体ではなく誘電体であってもよいが、その場合は表面に導電性のコーティングが施される。アース部材31Aとして利用される仮止めクリップは、フランジ51に形成された取り付け穴52に挿入されることにより、フランジ51に接触する。このように、アース部材31Aが、窓ガラス12をフランジ51に取り付ける留め具であると、取り付け機能とアース接続機能を一つの部品で兼用でき好ましい。
【0036】
図5は、アース部位17Bがアース部材31Bを介して車体と電気的に接続する構造の一例を示した断面図である。アンテナ導体によって受信された電波の受信信号が、図2,3に示した給電部16とアース部17Aとに電気的に接続された後述するアンテナ側コネクタに伝達される。一方、アース部位17Bを車体に接続するため、アース部材31Bがアース部位17Bに取り付けられている。このような接続構造にすることによって、アース部位17及びアース部17に接続された無給電導体を、アース部材31Bを介して、車体に確実にアースすることができる。
【0037】
図6は、アース部材31Bの斜視図である。アース部材31Bは、弾性の接続部材であって、アース部位17Bに半田付けなどによって電気的に接続される接続部34を有する金属板35と、金属板35にアーチ状に湾曲させて設置された弾性板33とからなる。アース部材31Bは、金属板35をアース部位17Bに両面接着テープや接着剤などで接着し、アース部位17Bと高周波的に接続させてもよい。アース部位17Bに設置されたアース部材31Bは、図5に示されるように、窓ガラス12がフランジ51に接着剤13を介して接着されると、弾性板33が弾性変形して車体パネル11と面接触する。これにより、車体側に特別な構成が無くともアース部位17Bを車体フレーム50にアース接続することが可能である。
【0038】
一方、車体フレーム50の車外側表面は、通常塗料などで塗装されて絶縁性の塗料膜32が形成されており、アース部材31Bが接触するだけでは直流的な接続は確保されない。しかし、弾性板33が弾性変形し塗料膜32と接触する面積が充分に大きくなることで、アース部材31Bは高周波的に車体フレーム50と接続されるため、アース部位17Bを車体にアースすることができる。
【0039】
また、窓ガラスが車体に取り付けられた時に、アース部位17Bと接触する弾性の接続部材を車体の窓枠に設けてもよい。例えば、図6に示すアース部材31Bを、ネジなどの機械的な締結手段または半田付けなどによってフランジ51に電気的に接続された状態で固定する。窓ガラス12がフランジ51に接着剤13を介して接着されると、弾性板33が弾性変形してアース部位17Bと面接触する。これにより、アース部位17Bを車体フレーム50にアース接続することが可能である。
【0040】
本発明のガラスアンテナは、信号処理回路との接続に端子部材が用いられる。端子部材は、同軸ケーブルの内部導体と給電部16とを電気的に接続すると共に同軸ケーブルの外部導体とアース部位17Aとを電気的に接続するためのコネクタを、給電部16及びアース部位17Aに実装する構成である。このようなコネクタによって、同軸ケーブルの内部導体を給電部16に取り付けることが容易になり、外部導体をアース部位17Aに取り付けることが容易になる。
【0041】
例えば、図7に示す端子部材では、同軸ケーブル側コネクタ40が雄型となって、雌型であるアンテナ側コネクタ41に矢印の方向に嵌合させることによって、同軸ケーブルを給電部16とアース部位17Aとに接続させる構造を示している。同軸ケーブル側コネクタ40とアンテナ側コネクタ41とが勘合して接続されることによって、同軸ケーブル44の内部導体が金属製脚部42を介して給電部16に接続し、同軸ケーブル44の外部導体が金属製脚部43を介してアース部位17Aに接続される。アンテナ側コネクタ41は、給電部16とアース部位17Aとを跨ぐように取り付けられる。アンテナ側コネクタ41の第1の端子である金属製脚部42が給電部16に取り付けられ、アンテナ側コネクタ41の第2の端子である金属製脚部43がアース部位17Aに取り付けられる。また、同軸ケーブル44は、同軸ケーブル側コネクタ40に接続されている。
【0042】
また、アンプ等が実装された信号処理回路20が、アンテナ側コネクタ41に内蔵されていてもよい。アンプの入力部は、金属製脚部42に電気的に接続され、アンプの出力部は、同軸ケーブル44の内部導体に電気的に接続され、アンプのアース部(信号処理回路20のアース部と同電位)は、同軸ケーブル44の外部導体と金属製脚部43とに電気的に接続されている。この場合、同軸ケーブル44の他端側は車体側に搭載されるチューナーなどに接続される。このような構成にすることにより、同軸ケーブルを介して信号処理回路に接続させる場合と比較して、同軸ケーブルによって受信信号を伝送する途中で受信信号の減衰が生じる前に、アンテナ側コネクタで受信信号を増幅できるので好ましい。
【0043】
なお、アンテナ側コネクタ41を用いなくてもよい。例えば、車体側に設けられた信号処理回路との接続に車体側から配索された信号線として同軸ケーブルを用い、同軸ケーブルの一端側において、同軸ケーブルの内部導体が給電部16に電気的に接続され、同軸ケーブルの外部導体がアース部位17Aに電気的に接続される。同軸ケーブルと、給電部16とアース部位17Aとは半田付けなどで電気的に接続される。同軸ケーブルの外部導体は、アース部位17Aに電気的に接続されることにより、アース部位17Bに接続されたアース部材によって車体側アースに接続される。同軸ケーブルの他端側は、車体側に搭載されるアンプなどの信号処理回路に接続される。この場合、同軸ケーブル他端側において、内部導体がアンプの入力部に電気的に接続され、外部導体がアンプのアース部に電気的に接続されるとよい。そして、アンプの出力部はチューナーなどの入力部に電気的に接続される。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0045】
例えば、本発明は、アンテナ導体、無給電導体、給電部、アース部は、所望のアンテナ利得を有する限り、図2,3の形態に限られない。具体的にはアンテナ導体及び無給電導体のエレメントの形状は、車種毎に所望の受信周波数に合わせて適宜設定されてよい。図2,3の形態であれば、地上波デジタルテレビ放送帯のアンテナ利得を向上させることができる。
【0046】
また、アース部材は、アース部位17Bを車体側アースに接続するための機能を有している限り、図4,5,6の形態に限られない。例えば、アース部材は、アース部位17Bとアース部位17Bに車両取り付け状態で対向する車体側部位との間で伸縮可能な突起状の導電性部材であってもよい。または窓ガラスを車体に取り付けられた際に、車体側のアース部位17Bと対向する部分が突起状に形成されていてアース部位17Bと接触して導通する、もしくは直接接触せずに高周波的に接続されてもよい。
【実施例】
【0047】
本発明に係る車両用アンテナ装置を、実際の車両のフロントガラスに適用した例を説明する。図3に示すガラスアンテナの形態を実際の車両のフロントガラスに取り付けることにより作製された自動車用ガラスアンテナのアンテナ利得の実測結果について説明する。
【0048】
アンテナ利得は、ガラスアンテナが形成された自動車用窓ガラスを、ターンテーブル上の自動車の窓枠に水平面に対して約25°傾けた状態で組みつけて実測した。給電部にはコネクタが取り付けられていて、フィーダ線を介してネットワークアナライザに接続される。水平方向から窓ガラスに対して全方向から電波が照射されるように、ターンテーブルが回転する。
【0049】
アンテナ利得の測定は、ターンテーブルの中心に、ガラスアンテナのガラスを組みつけた自動車の車両中心をセットして、自動車を360°回転させて行われる。アンテナ利得のデータは、回転角度3°毎に、地上波デジタルテレビ放送帯の周波数範囲において6MHz毎に測定される。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は略水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナを基準とし、半波長ダイポールアンテナのアンテナ利得が0dBとなるように標準化した。
【0050】
図8は、ガラスアンテナ300(図3)のアンテナ利得の実測データである。図8の縦軸は、自動車を360°回転させて取得したアンテナ利得の平均値を示している。
【0051】
図8のアンテナ利得を測定したときの図3の各部の寸法は、単位をmmとすると、
a1:80
a2:15
a3:105
a4:50
a5:20
a6:75
a8:50
b1:42
b2:0
b3:5
である。各エレメントの導体幅は、0.8mmである。給電部16は、縦11mm×横12mmである。a,b,c,dを頂点とする長方形のアース部位17Aは、縦11mm×横12mmである。e,f,g,aを頂点とする長方形のアース部位17Bは、縦14mm×横54mmである。
【0052】
図8の実測データによれば、キー局が集中している優先帯域473〜575MHzのアンテナ利得の平均値が+0.4dBdと十分に高い値を示している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、地上波デジタルテレビ放送、UHF帯のアナログテレビ放送及び米国のデジタルテレビ放送、欧州連合地域のデジタルテレビ放送又は中華人民共和国のデジタルテレビ放送を受信する自動車用のアンテナとして利用されると好適である。その他、日本のFM放送帯(76〜90MHz)、米国のFM放送帯(88〜108MHz)、テレビVHF帯(90〜108MHz、170〜222MHz)、車両用キーレスエントリーシステム(300〜450MHz)にも利用できる。
【0054】
また、自動車電話用の800MHz帯(810〜960MHz)、自動車電話用の1.5GHz帯(1.429〜1.501GHz)、人工衛星のGPS信号(Global Positioning System:1575.42MHz)、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System:2.5GHz)にも利用できる。
【0055】
さらに、ETC通信(Electronic Toll Collection System(ノンストップ自動料金収受システム)、路側無線装置の送信周波数:5.795GHz又は5.805GHz、路側無線装置の受信周波数:5.835GHz又は5.845GHz)、専用狭域通信(DSRC)(Dedicated Short Range Communication:915MHz帯、5.8GHz帯、60GHz帯)及びSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:2.34GHz、2.6GHz)にも利用できる。また、マイクロ波(1GHz〜3THz)及びミリ波(30〜300GHz)の通信に利用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1〜4,8 アンテナエレメント
5,6 無給電エレメント
12 窓ガラス
13 接着剤(パッキン)
16 給電部
17 アース部
17A 第1のアース部
17B 第2のアース部
20 信号処理回路
30 接着部材
31,31A,31B アース部材
32 塗装膜
33 弾性板
34 接続部
35 金属板
40 同軸ケーブル側コネクタ
41 アンテナ側コネクタ
42,43 金属製脚部
44 同軸ケーブル
50 車体フレーム
51 フランジ
52 取り付け穴
56 車体開口縁(窓枠の端部)
56a 突起部
100,200,300 ガラスアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の窓枠に取り付けられた窓ガラスと、
アンテナ導体と、該アンテナ導体に接続された給電部と、無給電導体と、該無給電導体に接続されたアース部とを前記窓ガラスに備えるガラスアンテナとを有するアンテナ装置であって、
前記アース部は、前記窓ガラスの法線方向から見ると、前記窓枠に重ならない領域を含む第1のアース部位と、前記窓枠に重なる領域を含む第2のアース部位とを含むものであり、
前記車体と前記第2のアース部位とを電気的に接続するアース部材を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アース部材は、前記第2のアース部位に設置され、前記窓ガラスを前記車体に仮止めするために、前記窓枠に形成された穴に挿入し留め具として使用される仮止めクリップである、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アース部材は、前記第2のアース部位に設置された弾性部材であり、前記窓ガラスが前記車体に取り付けられた時に弾性変形して前記車体と接続される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アース部材は、前記第2のアース部位に対向する前記窓枠に設置された弾性部材であり、前記窓ガラスが前記車体に取り付けられた時に弾性変形して前記第2のアース部位と接続される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
同軸ケーブルの内部導体が前記給電部に電気的に接続され、該同軸ケーブルの外部導体が前記第1のアース部位に電気的に接続された、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記給電部と前記第1のアース部位には、前記同軸ケーブルの内部導体と前記給電部とを電気的に接続すると共に前記同軸ケーブルの外部導体と前記第1のアース部とを電気的に接続するためのコネクタが実装された、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記コネクタが、前記同軸ケーブルに電気的に接続される信号処理回路を備える、請求項6に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26800(P2013−26800A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159318(P2011−159318)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】