説明

アンテナ製造方法

【課題】接地導体の他との短絡を防止し、ボイドの発生も防止してパッチアンテナをアダプタに接着する。
【解決手段】パッチアンテナ10の片面に形成された接地導体14にほぼ対応した大きさおよび形状のハンダシート30をアダプタ20とパッチアンテナ10の接地導体14との間に重ねて、パッチアンテナ10とアダプタ20をオーブン内にセットし、減圧しながら加熱してハンダシート30を溶融させ、アダプタ20にパッチアンテナ10の接地導体14を接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面形のアンテナを機器への取付用の導電性のアダプタに一体化する手法について改良を図ったアンテナ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
裏面側に接地導体が形成された誘電体基板の表面側にパッチ導体を形成したパッチアンテナを、例えばレーダ用として航空機の機体等に搭載する場合、通常ではそのパッチアンテナを直接搭載することはなく、機器への取付用の導電性のアダプタを介在して、接地を取りながら取り付けている。
【0003】
図4はこの場合のアンテナ取付構造を示す断面図である。10はパッチアンテナであり、多層基板を構成する誘電体基板11、12の間にパッチ導体13が挟持され、誘電体基板12の下面には接地導体14が形成され、さらに中央にはポート用のスルーホール15が形成されている。このスルーホール15はパッチ導体13に接続されているが、接地導体14には接続されていない。20はアルミニウム製の機器への取付用のアダプタであり、有底の収納部21の中央底面にコネクタ60用の取付穴22が形成されている。
【0004】
従来では、パッチアンテナ10をアダプタ20に取り付けるには、そのアダプタ20の底面あるいはパッチアンテナ10の接地導体14の部分に導電性接着剤50を塗布してから、その接地導体14の部分をアダプタ20の底面に接着して、接地導体14とアダプタ20を電気的に接続している。そして、そのアダプタ20を航空機の機体等に、ネジ等で取り付けている。コネクタ60はアダプタ20の取付穴22から挿入して心線61をパッチアンテナ10のスルーホール15に挿入しハンダ付けしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、パッチアンテナ10のアダプタ20への接着は、治具を用いてパッチアンテナ10をアダプタ20に対して長時間押し付けることにより行われているので、その間に導電性接着剤50が周囲に滲み出るため、事後的に拭き取り作業が必要となることがある。また、場合によってはパッチアンテナ10とアダプタ20との接着部分にボイドが発生して、温度変化によって接着強度が低下することがある。さらに、導電性接着剤50の滲みによって、パッチアンテナ10の接地導体14とスルーホール15が接触して短絡が発生することもある。以上から歩留まりが良好でないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、アンテナとアダプタとの一体化にハンダシートを使用して、上記した問題をすべて解決したアンテナ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明は、機器への取付用の導電性のアダプタに平面形のアンテナを一体化するアンテナ製造方法において、前記アンテナの片面に形成された接地導体にほぼ対応した大きさおよび形状のハンダシートを前記アダプタと前記アンテナの前記接地導体との間に、前記接地導体に対応させて重ねてオーブン内にセットし、減圧しながら加熱して前記ハンダシートを溶融させ、前記アダプタに前記アンテナの前記接地導体を接着し一体化することを特徴とする。
【0008】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のアンテナ製造方法において、前記アダプタをハンダ非接着性の導電性材質として、前記アダプタの前記ハンダシート接着部に予めハンダ接着前処理を施しておくことを特徴とする。
【0009】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載のアンテナ製造方法において、前記アダプタをハンダ接着性の導電性材質として、前記アダプタの前記ハンダシート接着部以外の箇所で且つ前記ハンダシートのハンダが接着する可能性のある箇所に予めハンダレジストを塗布しておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ製造方法によれば、平面形のアンテナの接地導体と導電性のアダプタとがハンダシートによって接着されるので、ハンダ接着部分とハンダ非接着部分とを正確に分離でき、接地導体が他の信号部分と短絡することを完全に防ぐことができるばかりか、ハンダの滲み出しもなくなり、歩留まりも向上するという利点があり、また減圧しながらハンダ接着を行うので、ハンダ接着部分にボイドが発生することも防止でき、接着強度が劣化することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のアンテナ製造方法の実施例について説明する。図1はパッチアンテナ10とアダプタ20との接着方法の説明用の断面図、図2は分解斜視図である。パッチアンテナ10は、多層基板を構成するガラスエポキシ等の材質からなる誘電体基板11、12の間に銅箔からなる一対のパッチ導体13が挟持された構造であり、誘電体基板12の下面には接地導体14が形成され、その中央には一対のパッチ導体13への給電部として働くポート用のスルーホール15が形成されている。このスルーホール15はパッチ導体13と接続されているが、接地導体14とは接続されていない。アダプタ20は有底の収納部21を有するアルミニウムからなり、底面中央にコネクタ60用の取付穴22が形成されている。
【0012】
本実施例では、このようなパッチアンテナ10をアダプタ20に一体化するために、ハンダシート30を使用する。このハンダシート30は、外形がパッチアンテナ10の接地導体14の外形に対応した形状および大きさであり、中央部分に、接地導体14の中央の開口14aに対応した大きさの開口31が形成されている。また、アダプタ20はアルミニウム製であるため、ハンダ接着が可能なように、収納部21の底部分にはパッチアンテナ10の接地導体14に対応した形状となるように、銅メッキ、ハンダメッキ、無電解ニッケルメッキ等のハンダ接着用前処理が施されている。
【0013】
パッチアンテナ10をアダプタ20に一体化するためには、図3に示すように、パッチアンテナ10をその接地導体14が下面となるようにしてハンダシート30を介在してアダプタ20の収納部21に収納してから、全体を減圧機能付きのオーブン40の内部にセットし、200℃〜300℃の温度で所定時間だけ加熱して、ハンダシート30を溶融させる。
【0014】
これにより、パッチアンテナ10の接地導体14とアダプタ20の底面とがハンダ接着される。このとき、同時に減圧を行うことにより残留エアーが排気されるので、ハンダ接着部分にボイドが発生することを防止できる。また、ハンダはパッチアンテナ10の接地導体14およびアダプタ20のハンダ接着前処理された箇所以外には接着しないので、このハンダによってスルーホール15と接地導体14が短絡することは無い。
【0015】
最後に、コネクタ60をアダプタ20の裏面から挿入して、その心線61をパッチアンテナ10のスルーホール15にハンダ接続する。
【0016】
なお、以上において、アダプタ20はアルミニウム製に限らず、導電性金属であれば銅その他の材質であっても良いが、ハンダが接着する材質の場合は、パッチアンテナ10のスルーホール15と接地導体14とがハンダで短絡しないように、取付穴22の周囲にハンダレジストを塗布することが望ましい。また、アダプタ20と一体化すべきアンテナは、パッチアンテナ10に限られるものではなく、基板を使用する他の形式の平面形のアンテナであっても、ハンダシートを使用することで、同様に接地導体部分をハンダ接着してアダプタ20に一体化することができ、同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例のパッチアンテナとアダプタとの接着の説明用の断面図である。
【図2】同実施例のパッチアンテナとアダプタとの接着の分解斜視図である。
【図3】同実施例のパッチアンテナとアダプタを減圧機能付きオーブンに入れた説明図である。
【図4】従来のパッチアンテナとアダプタとの接着の説明用の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10:パッチアンテナ、11,12:誘電体基板、13:パッチ導体、14:接地導体、14a:開口、15:スルーホール
20:アダプタ、21:収納部、22:取付穴
30:ハンダシート、31:開口
40:減圧機能付きオーブン
50:導電性接着剤
60:コネクタ、61:心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器への取付用の導電性のアダプタに平面形のアンテナを一体化するアンテナ製造方法において、
前記アンテナの片面に形成された接地導体にほぼ対応した大きさおよび形状のハンダシートを前記アダプタと前記アンテナの前記接地導体との間に、前記接地導体に対応させて重ねてオーブン内にセットし、減圧しながら加熱して前記ハンダシートを溶融させ、前記アダプタに前記アンテナの前記接地導体を接着し一体化することを特徴とするアンテナ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ製造方法において、
前記アダプタをハンダ非接着性の導電性材質として、前記アダプタの前記ハンダシート接着部に予めハンダ接着前処理を施しておくことを特徴とするアンテナ製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ製造方法において、
前記アダプタをハンダ接着性の導電性材質として、前記アダプタの前記ハンダシート接着部以外の箇所で且つ前記ハンダシートのハンダが接着する可能性のある箇所に予めハンダレジストを塗布しておくことを特徴とするアンテナ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−60190(P2007−60190A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242042(P2005−242042)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】