説明

アンテナ

【課題】車載機器等に用いられる例えばUHF帯の幅広い周波数帯のアンテナとして、小型の簡易な構成で、高いアンテナゲインを実現する。
【解決手段】 隣接する同軸線CL1〜CL3の一端の内部導体7が他方の外部導体5に、一端の外部導体5が他端の内部導体7に交互に接続し、かつ、最終段から一つ手前の同軸線CL3の一方の内部導体7が最終段の同軸線CL4の他方の外部導体5に接続する。それにより、複数個の同軸線CL1〜CL4を縦列に配置する。各々の同軸線CL1〜CL4の長さL2は実質的に使用波長λの1/4である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関し、詳しくは、車載機器等に用いられる例えばUHF帯の幅広い周波数帯に対応できるアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯のデジタル放送の受信においては、車内や屋内で利用できる、感度のいい簡易な構成のアンテナが求められている。特に、自動車の分野においては、携帯電話機との差異化、かつディスプレイの大型化のために、従来のいわゆるワンセグ(主に携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)から、HDTV(High Definition Television)のフルセグ(ワンセグを含む地上デジタルテレビ放送)への移行が進んでいる。
【0003】
ワンセグの場合、所要チャンネルに対する受信機の受信感度は7〜8dB程度でよいとされる。一方、フルセグの場合は、19dB以上の受信感度が必要とされ、合成ダイバーシティ技術を利用するのが主流である。このため、現在、車載機器においては、アンプ付きの2つのフィルムアンテナを用いて地上デジタルテレビ放送を受信している。しかし、フィルムアンテナは、一般の人では自動車の窓に綺麗に装着するのが難しい。さらに、アンプに電源を印加する必要があり、ホット側とグラウンド側に分離された極性を持つ電源用の高価なコネクタを使用する必要があった。このようにフィルムアンテナは、部品点数が多く、取り付けが不便又は組み立てが必要であり、さらに高価であった。
【0004】
ところで、高利得なアンテナの一例として、同軸ケーブルを縦列接続して構成した、コーリニアアンテナが知られている。各々の同軸ケーブルの長さは使用波長の1/2である。コーリニアアンテナは、携帯電話網などの無線通信の基地局等に用いられるが、固定であるため、指向性を鋭くしてゲインを稼ぐことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CQ出版社、「ダイナミック・ハムシリーズ アンテナ・ハンドブック」、2004年8月発行、第26版、p.231−232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車載機器のアンテナに使用する場合、従来のコーリニアアンテナのように指向性が鋭くては実用できない。また、従来のコーリニアアンテナの場合、各々の同軸ケーブルの長さは使用波長の1/2であり、アンテナ全体が大型になっていた。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、車載機器等に用いられる例えばUHF帯の幅広い周波数帯のアンテナとして、小型の簡易な構成で、高いアンテナゲインを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面のアンテナでは、隣接する同軸線の一端の内部導体が他方の外部導体に、一端の外部導体が他端の内部導体に交互に接続し、かつ、最終段から一つ手前の同軸線の一方の内部導体が最終段の同軸線の他方の外部導体に接続する。それにより、複数個の同軸線が縦列に配置する。各々の同軸線の長さは実質的に使用波長の1/4である。
なお、上記同軸線は3個以上接続されていることが好適である。
【0009】
本発明の一側面によれば、1/4波長の長さの同軸線を縦列接続した簡単な構造で一つのアンテナが形成される。そのアンテナには、最終段の同軸線とその一つ手前の同軸線の接続部分を始めとして、隣接する同軸線の接続部分に複数の給電点が存在する。そして、該給電点に対し隣接する1/4波長の長さの同軸線から位相給電が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1/4波長の長さの同軸線を縦列接続した簡単な構造で小型なアンテナを構成することができる。また、このアンテナの同軸線間の接続部分に存在する給電点に位相給電することにより、広帯域かつ高ゲインを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアンテナの構成例を示す概略図である。
【図2】図1に示すアンテナの動作原理の説明図である。
【図3】図1に示すアンテナの一態様例を示す外観図である。
【図4】アンテナ特性の検証に用いられた多段アンテナの構成例を示す概略図である。
【図5】1段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図6】1段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図7】2段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図8】2段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図9】3段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図10】3段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図11】4段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図12】4段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図13】5段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図14】5段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図15】6段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。
【図16】6段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図17】4段構成のアンテナのUHF帯における指向性パターン図である。
【図18】4段構成のアンテナによるUHF帯におけるピークゲイン及び平均ゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図19】同軸線インピーダンス50ΩのアンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図20】同軸線インピーダンス75ΩのアンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図21】同軸線インピーダンス97ΩのアンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。
【図22】本発明の一実施の形態に係るアンテナの取り付け例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
[多段アンテナの構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係るアンテナの構成例を示したものである。
本発明に係るアンテナ(ケーブルアンテナ)は、通信機器9と接続されるコネクタ2と接続された、複数個の同軸線(同軸ケーブル等の同軸構造導体)のみで構成される。コネクタ2としては、高周波信号の損失が少ないものを選択することが望ましい。図1に示すケーブルアンテナ1は、4個の同軸線CL1〜CL4を縦列に接続した例である。以下では、複数の同軸線を縦列接続したケーブルアンテナを多段アンテナといい、4つの同軸線を用いた場合は4段アンテナと言うことにする。
【0014】
ケーブルアンテナ1は、コネクタ2と接続された同軸線CL1の一方が中継部R1を介して同軸線CL2の他方と接続している。同様にして同軸線CL2の一方が中継部R2を介して同軸線CL3の他方と接続し、同軸線CL3の一方が中継部R3を介して同軸線CL4の他方と接続している。アンテナエレメントである各同軸線の実質的な長さL1は、使用電波の波長λの1/4である。
【0015】
初段の同軸線CL1には、高周波遮断部材として高磁性材料からなるフェライトコア10が設けられている。このフェライトコア10を、中継部R1(給電点Fp2)からコネクタ2の方向に向かって、受信したい電波の波長λの1/4の長さの位置に配置する。それにより、フェライトコア10からコネクタ2までの導体部分が高周波的に高いインピーダンスとなり、高周波帯においてアンテナ部から切り離される。つまりフェライトコア10からコネクタ2までの間の同軸線CL1は、その前のアンテナ部から、高周波的に分離されるので、その部分に高周波電流が流れても、アンテナ部への影響が少なくなる。これにより、同軸線CL1についてフェライトコア10から中継部R1までの距離を実質的に波長λの1/4の長さとすることができる。また、同軸線CL1のフェライトコア10からコネクタ2までの長さを任意に決定できる。
【0016】
各中継部は、エラストマー等の樹脂によりモールド成形されてなる。その内部においては、各同軸線の保護被覆4及び中空円筒のシールド線5(外部導体)を取り除いてあり、コア材6(誘導体)と芯線7(内部導体)とが露出されている。
【0017】
中継部R1においては、同軸線CL1の一方の芯線7の先端部分を、基板8上ではんだ付け等によって同軸線CL2の他方のシールド線5に接続する。また、同軸線CL1の一方のシールド線5を、基板8上ではんだ付け等によって同軸線CL2の他方の芯線7の先端部分に接続する。同様にして、中継部R2において、同軸線CL2と同軸線CL3を中継すべく接続する。そして、最終段の同軸線CL4から一つ手前の同軸線CL3と該最終段の同軸線CL4を中継する中継部R3において、同軸線CL3の一方の芯線7の先端部分を同軸線CL4の他方のシールド線5に接続する。同軸線CL3の一方のシールド線5は同軸線CL4の他方の芯線7の先端部分と接続しない。
【0018】
[多段アンテナの動作原理]
図2を参照して、図1に示すケーブルアンテナ1の動作原理を説明する。
図2Aはある瞬間の電波により各同軸線の内部に誘起される電圧の電圧分布を、図2Bは同じ瞬間の図2Aと反転した電波により誘起される電圧の電圧分布を示している。このとき、ケーブルアンテナ1においては、図1に示すように、給電点Fp1を中心として同軸線CL1と同軸線CL2に1/2λの電流分布が、また給電点Fp2を中心として同軸線CL3と同軸線CL4に1/2λの電流分布が発生する。
【0019】
ケーブルアンテナ1の場合、4つの同軸線CL1〜CL4のうち最終段の同軸線CL4とその一つ手前の同軸線CL3との接続部分(中継部R3)が給電点Fp1となる。また、給電点Fp1から波長の1/2の距離にある、初段の同軸線CL1とその次の同軸線CL2の接続部分(中継部R1)が給電点Fp2となる。すなわち、同軸線CL1と同軸線CL2からなる半波長ダイポールアンテナが構成され、同様に同軸線CL3と同軸線CL4からなる半波長ダイポールアンテナが構成される。ケーブルアンテナ1は、この2つの半波長ダイポールアンテナが縦列接続されたアンテナとして機能する。
【0020】
図2Aの電圧分布においては、区間11Aでは同軸線CL1の芯線7に、区間11Bでは同軸線CL2のシールド線5に、区間11Cでは同軸線CL3の芯線7に、区間11Dでは同軸線CL4のシールド線5に、それぞれ電圧が誘起されている。まず、図2Bの電圧分布においては、区間12Aでは同軸線CL1のシールド線5に、区間12Bでは同軸線CL2の芯線7に、区間12Cでは同軸線CL3のシールド線5に、区間12Dでは同軸線CL4の芯線7に、それぞれ電圧が誘起されている。
【0021】
一例としてシールド線5に誘起された電圧に注目すると、給電点Fp2は、ある電波の区間11Bで同軸線CL2のシールド線5に誘起された電圧(+)に応じた電流を取り込んでいる(図2A)。その一方で、例えば位相が反転した他の電波の区間11Aで同軸線CL1のシールド線5に誘起された同位相の電圧(+)に応じた電流を取り込んでいる。給電点Fp1においても同様にしてシールド線5に誘起された電圧(−)に応じた同位相の電流を取り込んでいる。このように、各給電点において誘起された電圧による同位相の電流を取り込むことにより、取り入れる高周波信号の電力を増幅している。そして、給電点Fp1で取り込んだ電流は、給電点Fp2で取り込んだ電流と同位相となって加算される。それゆえ、コネクタ2(図1参照)には給電点の個数に応じて高周波信号が増幅される。
【0022】
図3は、図1に示すケーブルアンテナ1の一態様を示す外観図である。
この例では、同軸線CL1〜CL4が中継部R1〜R3の各々を介して縦列に接続されている。各同軸線の長さL1は、500MHzの電波の波長の1/4である約15cmにしてある。同軸線CL1にはフェライトコア10を設けず、受信したい電波の波長の1/4の長さの同軸線CL1にコネクタ2を直接接続してある。最終段の同軸線CL4の、中継部R3と反対側の先端部20は、各中継部と同様にエラストマー等の樹脂によりモールド成形されてなる。
【0023】
[アンテナ特性の検証]
発明者らは、本発明に係るアンテナの特性を検証するため、図4に示す多段構成のケーブルアンテナの段数を変えて電波を受信する実験を実施した。検証に用いるケーブルアンテナは、n個の同軸線CL1〜CLnが中継部R1〜Rn−1の各々を介して縦列に接続されており、この段数を1段ずつ変えていく。各同軸線の長さL1は10cm(周波数750MHzの約1/4λに相当)、各同軸線の特性インピーダンスは100Ωである。ここで特性インピーダンスは、シールド線5と芯線7との間のインピーダンスである。n個の同軸線CL1〜CLnから構成されるケーブルアンテナの場合、最終段の同軸線CLnとその一つ手前の同軸線CLn−1との接続部分(中継部Rn−1)が給電点となる。この給電点をはじめとして、最終段の同軸線CLnから初段の同軸線CL1にかけて同軸線の個数に応じた複数の接続部分(中継部)が給電点として機能する。なお、測定は、実際の使用を想定してアンテナを水平偏波を強く受けることのできる状態に設置(横に平置き)して実施した。
【0024】
(1段アンテナの特性)
図5は、1段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図6は、1段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図6Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。測定対象の周波数帯は、UHF帯(470MHz〜870MHz)とした。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図6B及び図6Cに、図6Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図6Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図6Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。なお、図6B及び図6Cには、図6Aのグラフ中にはない906MHzにおける測定値も示している。
【0025】
1段構成のケーブルアンテナは、同軸線CL1のみから構成され、片側のアンテナエレメントが存在しないため、アンテナとしてまったく機能しない。図6A〜図6Cに示すように垂直偏波及び水平偏波ともに各周波数におけるピークゲインは低い。
【0026】
(2段アンテナの特性)
図7は、2段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図8は、2段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図8Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図8B及び図8Cに、図8Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図8Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図8Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。
【0027】
2段構成のケーブルアンテナは、同軸線CL1と同軸線CL2の2つのアンテナエレメントから構成され、半波長ダイポールアンテナに近い構成である。図8A〜図8Cに示すように、720〜750MHz付近では、垂直偏波、水平偏波ともにピークゲインの値が−10dB以上であり、アンテナゲインが取れていることが分かる。すなわち、UHF帯において、垂直偏波と水平偏波の両方を受信できていると言える。
【0028】
(3段アンテナの特性)
図9は、3段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図10は、3段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図10Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図10B及び図10Cに、図10Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図10Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図10Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。
【0029】
3段構成のケーブルアンテナでは、中継部R1と中継部R2を有しており、電波によって給電点Fp1(中継部R2)を含む複数の給電箇所が存在していると考えられる。図10A〜図10Cに示すように、720〜750MHz付近では、垂直偏波、水平偏波ともにピークゲインの値が−10dB以上であり、アンテナゲインが取れていることが分かる。ただし、同軸線の内部に逆相の電圧が誘起されてアンテナ特性が安定していないと考えられる。
【0030】
(4段アンテナの特性)
図11は、4段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図12は、4段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図12Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図12B及び図12Cに、図12Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図12Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図12Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。
【0031】
4段構成のケーブルアンテナでは、中継部R1〜R3を有しており、給電点Fp1(中継部R3)と給電点Fp2(中継部R1)が存在する。図7の2段構成のケーブルアンテナ(半波長ダイポールアンテナ構成)に比べ同相分電流が取り込まれ、アンテナゲインが改善されている。また、3段構成のケーブルアンテナと比べて500MHz以下の周波数におけるピークゲインが改善されている。図12A〜図12Cに示すように、特に水平偏波では全周波数帯でピークゲインの値が−10dB以上であり、アンテナゲインが取れていることが分かる。すなわち、4段構成のケーブルアンテナは、UHF帯において水平偏波を良好に受信できていると言える。
【0032】
(5段アンテナの特性)
さらに、4段構成以上のケーブルアンテナについても受信状態の測定を実施したので参考までに説明する。
図13は、5段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図14は、5段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図14Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図14B及び図14Cに、図14Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図14Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図14Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。
【0033】
5段構成のケーブルアンテナでは、図14A〜図14Cに示すように、水平偏波は測定対象の全周波数帯でピークゲインの値が−10dB以上であり、UHF帯において水平偏波を概ね高ゲインで良好に受信できている。ただし、500MHz以下の周波数について、垂直偏波及び水平偏波ともにピークゲインの値が−10dB付近又はそれ以下であり、アンテナゲインが取れていない。3段構成の測定結果と同様、アンテナ特性が安定しない箇所が見受けられ、同軸線の内部に逆相の電圧が誘起されている可能性がある。
【0034】
(6段アンテナの特性)
図15は、6段構成のアンテナの構成例を示す概略図である。図16は、6段構成のアンテナによる垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図16Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。また図16B及び図16Cに、図16Aに示したグラフ中の各測定点における値を示した。すなわち図16Bは垂直偏波でのピークゲインの値を示し、図16Cは水平偏波でのピークゲインの値を示す。
【0035】
6段構成のアンテナでは、アンテナ全長が大きく、実験を行った測定環境で対応できる測定サイズを超えるため掲載したデータは参考データである。図16A〜図16Cに示すように、水平偏波は5段構成の場合と比較して、さらに高ゲインのデータが得られている。垂直偏波及び水平偏波の一部の周波数帯にピークゲインの値が安定しない箇所が見られるものの、測定対象の全周波数帯を概ね良好に受信できている。
【0036】
本実施の形態によれば、縦列接続した複数の同軸構造状のアンテナエレメントを用いた簡単な構造で1本の線状アンテナを構成し、位相給電を行うことにより、該1本の線状アンテナで広帯域かつ高ゲインを実現できる。また、構成要素及び構造が簡単であるから安価であり、取り付け性も良いので利便性が向上する。
【0037】
なお、上記複数種類のケーブルアンテナの測定結果によれば、多段アンテナの段数が増加するにつれ、すなわち縦列に接続する同軸線(アンテナエレメント)の個数が多くなるにつれてアンテナゲインが向上する傾向にある。また、多段アンテナは、理論上、2段の構成も対象となり得るが、従来技術との差別化という点から狭義には3段以上の構成からとする。また、奇数段のケーブルアンテナは、同軸線の内部に逆相の電圧が誘起されアンテナ特性が安定しない可能性があると推測されるので、望ましくは同軸線の個数は偶数個がよいと言えよう。
【0038】
(4段アンテナの指向性パターン)
なお、図3に示す4段アンテナについて指向性パターンを測定した。測定に使用した各同軸線の長さL1は10cm(周波数500MHzの約1/4λに相当)、各同軸線の特性インピーダンスは97Ωである。図17に、4段構成のアンテナの指向性パターンの一例を示す。図17A〜図17Hはそれぞれ、受信電波の周波数が470MHz、520MHz、570MHz、620MHz、670MHz、720MHz、770MHz、906MHzの場合の指向性特性を示している。垂直偏波は破線で示し、水平偏波は実線で示してある。図18は、放射パターンを測定したときの垂直偏波及び水平偏波のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表である。図18Aのグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)を示し、縦軸はピークゲイン(dBd)を示す。また図18Bに、図17A〜図17Hに示した垂直偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示す。また図18Cに、同水平偏波でのピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示す。さらに、図18Dに、垂直偏波及び水平偏波の測定値から算出したピークゲイン(dBd)及び平均ゲイン(dBd)の値を示す。
【0039】
4段アンテナの指向性パターンは、図17A〜図17Hに示すように、垂直面においてはおおよそ円に近く、水平面においてはおおよそ8の字に近い曲線を描いていることが分かる。特に、570Hz、620Hzにおける水平面は、ダイポールアンテナの指向性である8の字に近い指向性になっている。また図17A〜図17Hにおいて、水平偏波のゲインが少ない角度においては垂直偏波のゲインが高くなっている。これにより、水平偏波を拾えない角度において垂直偏波を拾うことができる。なお、測定は、実際の使用を想定して水平偏波を強く受けることのできる設置状況(横に平置き)で実施しているが、アンテナの設置状況によってはこのような傾向が大きくなる。例えば、水平偏波及び垂直偏波を均等に受信できるようなアンテナ設置状況であれば、水平偏波と垂直偏波が相互に補完し合う指向性パターンになる。
【0040】
[同軸線の特性インピーダンスを変化させたときの測定結果]
次に、多段アンテナを構成する同軸線の特性インピーダンスを変化させたときの測定結果を説明する。
図19に、特性インピーダンスが50Ωの同軸線を用いた4段アンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表を示す。また図20に、特性インピーダンスが75Ωの同軸線を用いた4段アンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表を示す。また図21に、特性インピーダンスが97Ωの同軸線を用いた4段アンテナによるUHF帯のピークゲインの測定結果を示すグラフ及び表を示す。各同軸線の長さは15cm(周波数500MHzの約1/4λ)である。
【0041】
図19〜図21に示すように、同軸線の特性インピーダンスが50Ω、75Ω、97Ωと大きくなるにつれて高ゲインが得られ、かつ対象周波数帯においてゲイン値にばらつきが少なく安定している。以上のことから、多段アンテナにおいて、給電部に接続されている同軸線の所望周波数における特性インピーダンスが高いほうがよく、少なくとも50Ω以上あることが望ましい。
【0042】
[多段アンテナの取り付け例]
次に、多段アンテナの取り付け例を説明する。
図22は、本発明に係る多段アンテナを自動車へ搭載する例を示している。この例では、図1に示した4段構成のケーブルアンテナ1を使用している。ナビゲーション装置等の通信機器9と接続したコネクタ2から延びる同軸線CL1〜CL4を、ダッシュボード上を左ウィンドウに向かって這わせ、さらにダッシュボード左端にあるフレーム上を上方向に這わせる。そして、該フレーム上部からフロントガラス上部をバックミラーへ向かってほぼ水平に這わせるようにして、取り付ける。これにより、ケーブルアンテナ1は中継部R2を基点にV字アンテナが構成されたことになる。
【0043】
このようにケーブルアンテナ1は、フィルムアンテナのように窓に慎重に貼り付ける必要がなく、またフィルムアンテナに内蔵されていたアンプなどの部品も必要ない。すなわち、ケーブルアンテナ1は、線状のアンテナを引き回して自動車内に簡単に取り付けることができるため、利便性がよい。
【0044】
以上、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【0045】
上述した実施の形態では、多段アンテナの初段の同軸線CL1に設ける高周波遮断部として高磁性材料のフェライトコア10を用いたが、高周波信号を電気的に切り離すことができればこの例に限られない。例えば、所望周波数の約λ/4の長さで同軸線のシールド線が折り曲げられたスタブ構造を採用してもよい。またシールド線を加工してシュペルトップと呼ばれるバランを形成する等が考えられる。
【0046】
上述した実施の形態では、複数個の同軸線を用いて多段構成のケーブルアンテナを構成したが、例えば、フィーダー線等の2つの導線(導体)がほぼ平行に配置された他の線材を使用しても、多段アンテナを作成することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…アンテナ、 2…コネクタ、 3A〜3E…中継部、 4…保護被服、 5…シールド線(外部導体)、 6…コア材(誘電体)、 7…芯線(内部導体)、 8…基板、 10…フェライトコア、 11A〜11D,12A〜12C…電圧分布、 20…先端部、 CL1〜CLn…同軸線、 Fp1,Fp2…給電点、 R1〜Rn−1…中継部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従属接続された複数個の同軸線を有し、
前記複数個の同軸線は、隣接する同軸線の一端の内部導体が他方の外部導体に、一端の外部導体が他端の内部導体に交互に接続され、かつ、最終段から一つ手前の同軸線の一方の内部導体が最終段の同軸線の他方の外部導体に接続され、各々の同軸線の長さが実質的に使用波長の1/4である
アンテナ。
【請求項2】
前記同軸線が3個以上接続されている
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記同軸線が偶数個である
請求項2に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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