説明

アンモニアセンサ素子及びプロトン導電性固体電解質体の製造方法

【課題】ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができるアンモニアセンサ素子及びこれに用いられるプロトン導電性固体電解質体の製造方法を提供すること。
【解決手段】プロトン導電性固体電解質体63と、その対向する一対の表面に設けられた被測定ガス側電極64及び基準ガス側電極65と、被測定ガスGを導入する被測定ガス室640と、基準ガスを導入する基準ガス室650とを備えたアンモニアセンサ素子6である。プロトン導電性固体電解質体63は、被測定ガス側電極64を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる。プロトン導電性固体電解質体63は、一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材の少なくとも一方の表面をリン酸水溶液中に浸漬した後、基材を加熱することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ素子及び該アンモニアセンサ素子に用いられるプロトン導電性固体電解質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の内燃機関(特にディーゼルエンジン)において、排ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化する尿素添加SCRシステムの開発が進められている。
尿素添加SCRシステムは、排気管に設けられた選択還元型のNOx浄化触媒(SCR触媒)の上流側において、還元剤としての尿素を添加する。そして、NOx浄化触媒において、添加した尿素が分解して生じたアンモニアにより、NOxを選択的に還元して排ガスを浄化する。
【0003】
上記尿素添加SCRシステムでは、排ガス中のアンモニア濃度をガスセンサ等により測定している。そして、測定したアンモニア濃度に応じて尿素の添加量を調整している。排ガスの浄化を効率良く行うためには、排ガス中のアンモニア濃度を正確に測定し、尿素の添加量を精度良く調整することが必要となる。
ここで、被測定ガス(例えば、排ガス)中のアンモニア濃度を検出する方法としては、従来から様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、プロトン伝導体を用いて、基準となる参照電極と測定電極との間に発生する電位を測定する混成電位方式によってアンモニア濃度を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−518619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、混成電位方式を用いてアンモニア濃度を測定しているが、この方式では、ガス濃度と発生電位との関係がリニアとならない。そのため、特に低ガス濃度での測定精度が低くなるという問題がある。また、ガス中にアンモニア以外の水素含有ガス成分(例えば、炭化水素等)や水素等が存在する場合、プロトン伝導体はこれらにも感度があるため、アンモニア濃度を選択的に検出することが困難である。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができるアンモニアセンサ素子、及び該アンモニアセンサ素子に用いられるプロトン導電性固体電解質体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、プロトン導電性固体電解質体と、該プロトン導電性固体電解質体の対向する一対の表面にそれぞれ設けられた被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、上記被測定ガス側電極に面して被測定ガスを導入する被測定ガス室と、上記基準ガス側電極に面して基準ガスを導入する基準ガス室とを備えたアンモニアセンサ素子において、
上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなることを特徴とするアンモニアセンサ素子にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、アンモニアセンサ素子に用いられるプロトン導電性固体電解質体の製造方法において、
一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材を準備し、該基材の少なくとも一方の表面をリン酸水溶液中に浸漬した後、上記基材を加熱することを特徴とするプロトン導電性固体電解質体の製造方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明のアンモニアセンサ素子は、少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる上記プロトン導電性固体電解質体を有している。そのため、上記プロトン導電性固体電解質体は、少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面において強酸性を示し、アンモニアに対する選択的な吸着性に優れる。
そのため、上記アンモニアセンサ素子においては、上記被測定ガス側電極と上記基準ガス側電極の間に電圧を印加することにより、上記被測定ガス室内に導入された上記被測定ガス中からアンモニアを選択的に吸着し、アンモニアからプロトンを遊離させることができる。そして、そのプロトンの量に応じた電流を上記プロトン導電性固体電解質体中に流すことができる。
【0011】
即ち、上記プロトン導電性固体電解質体の表面に形成された上記被測定ガス側電極上では、次の電極反応(1)及び(2)が進行する。
2NH3 → 6H+ + 6e- ・・・(1)
3/2O2 + 6H+ + 6e-→ 3H2O ・・・(2)
上記電池反応(1)及び(2)が進行し、上記プロトン導電性固体電解質体の表面において電池反応(局部電池反応)が成立する。その結果、上記被測定ガス側電極と上記基準ガス側電極との間で非平衡電位が発生する。この非平衡電位は、上記被測定ガス中のアンモニア濃度に依存する。よって、この電流の大きさを測定することにより、上記被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することができる。
したがって、上記アンモニアセンサ素子においては、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができる。
【0012】
上記第2の発明の製造方法においては、一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材を準備し、該基材の少なくとも一方の表面をリン酸水溶液中に浸漬した後、上記基材を加熱する。
これにより、上記基材における少なくともリン酸水溶液中に浸漬した側の表面に、Zr1-xx27(0.03≦x≦0.3)を主成分とする強酸性層を形成させることができる。その結果、上記基材と、該基材の表面上に形成された上記強酸性層とを有する上記プロトン導電性固体電解質体を得ることができる。
【0013】
上記強酸性層は、上記第1の発明におけるハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料に相当し、強酸性を示してアンモニアに対する吸着性に優れる。また、上記強酸性層は、プロトン導電性を示し、固体電解質でもある。また、上記一般式(2)で表される物質自体も固体電解質であり、上記強酸性層以外の部分も固体電解質として機能する。
そのため、本発明の製造方法によって得られるプロトン導電性固体電解質体を用いると、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができるアンモニアセンサ素子を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体の斜視図。
【図2】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体の断面図。
【図3】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)のX線回折パターンを示す説明図(上段)、安定化ジルコニア基板(固体試料C)のX線回折パターンを示す説明図(下段)。
【図4】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)のEPMA分析結果(P元素分布)を示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)のEPMA分析結果(Zr元素分布)を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる、一対の電極層を形成したプロトン導電性固体電解質体を示す説明図。
【図8】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)のプロトン導電性を評価するための装置構成を示す説明図。
【図9】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)及び安定化ジルコニア基板(固体試料C)に水蒸気を導入しつつ電圧を印加したときの水蒸気濃度と導電率との関係を示す説明図。
【図10】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)及び安定化ジルコニア基板(固体試料C)の1H MAS NMRの分析結果を示す説明図。
【図11】実施例1にかかる、アンモニアを吸着させたプロトン導電性固体電解質体(粉末試料E)及び安定化ジルコニア(粉末試料C)について、各試料から発生するアンモニアを質量分析計にて測定した結果を示す説明図。
【図12】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)及び安定化ジルコニア基板(固体試料C)のアンモニアセンサとしての特性を評価するための装置構成を示す説明図。
【図13】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)及び安定化ジルコニア基板(固体試料C)に、濃度の異なるアンモニアガスを含有するサンプルガスを導入したときの出力電圧の経時変化を示す説明図。
【図14】実施例1にかかる、プロトン導電性固体電解質体(固体試料E)及び安定化ジルコニア基板(固体試料C)に、濃度の異なるアンモニアガスを含有するサンプルガスを導入したときのアンモニア濃度と出力電圧差との関係を示す説明図。
【図15】実施例1にかかる、Pt電極を形成したプロトン導電性固体電解質体(固体試料E)に各種ガスを導入したときの出力電圧を示す説明図。
【図16】実施例1にかかる、Ni電極を形成したプロトン導電性固体電解質体(固体試料E)に各種ガスを導入したときの出力電圧を示す説明図。
【図17】実施例2にかかる、アンモニアセンサ素子の長手方向の断面図。
【図18】図17のA−A線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面がハメット(Hammett)の酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる。
即ち、上記被測定ガス側電極を形成する側の表面だけを、酸度関数(H0)−12以下の上記プロトン導電性材料によって形成することもできるし、上記被測定ガス側電極を形成する側の表面だけでなくその他の表面又は表面全体を酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料により形成することもできる。また、表面だけでなく、上記プロトン導電性固体電解質体の全体を酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料により形成することもできる。
【0016】
上記プロトン導電性固体電解質体の上記被測定ガス側電極を形成する側の表面が酸度関数(H0)−12を超える材料により形成される場合には、上記プロトン導電性固体電解質体のアンモニアに対する選択的な吸着性が低下するおそれがある。より好ましくは酸度関数は−13以下が好ましくは、さらに好ましくは−14以下がよい。
【0017】
水溶液の酸・塩基の強さがpHで表されるように、ハメットの酸度関数H0は、固体表面の酸・塩基の強度を示す指標になり、あるハメット塩基[B]に溶媒がプロトンを与える能力の尺度となるものである。酸度関数H0は、下記式(a)に対して、下記式(b)のように定義される。
【化1】

【0018】
ハメットの酸度関数H0は、ハメットの指示薬を用いて、「アドバンスィズ・イン・キャタラシス(ADVANCES IN CATALYSIS)、第37巻(VOLUME37)のp.186−187に記載の方法に準じて測定することができる。
また、指示薬の変色からの評価が困難な場合には、アンモニア昇温脱理法(TPD法)を用いて測定することもできる。これは評価対象となる固体試料にアンモニアガスを吸着させて固体試料を昇温させることにより、脱離するアンモニアの脱離量と脱離温度を検出し、解析する方法である。
【0019】
上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面が一般式(1)M11-xM2x27(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料からなることが好ましい(請求項2)。
上記一般式(1)で表される化合物は、酸度関数−12以下の強酸性を示し、アンモニアに対して選択的な吸着性を示すことができると共に、プロトン導電性を示す。そのためこの場合には、上記プロトン導電性固体電解質体のアンモニアに対する選択的な吸着性をより確実なものにすることができる。
【0020】
上記一般式(1)においてxの範囲は0.03≦x≦0.3である。
xが0.03未満の場合には、安定化剤としての添加効果が小さくなり、焼結性が悪化し、強度が低下するおそれがある。一方、0.3を超える場合には、固体電解質体としての特性が劣化し、導電率が低下するおそれがある。
M1は4価金属元素であり、例えばZr、Sn、Ti、Si、及びGe等を採用することができる。また、M2は3価金属元素であり、例えばY、In、Yb、及びGa等を採用することができる。
【0021】
また、上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面のみを上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料で構成することができる。また、上記被測定ガス側電極を形成する側の表面だけでなく、その他の表面又は表面全体を上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料で構成することもできる。さらに、表面だけでなく、上記プロトン導電性固体電解質体全体を上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料で構成することもできる。
【0022】
上記一般式(1)で表される化合物を主成分とするプロトン導電性材料の中には、例えばZr1-xx27のように、難焼結性のものがある。そのため、上記プロトン導電性固体電解質体の全体を上記プロトン導電性材料によって構成することが困難な場合がある。
したがって、上記プロトン導電性固体電解質体は、一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)で表される化合物を主成分とする基材と、該基材の表面に形成された上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料からなる強酸性層とからなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、難焼結性の上記プロトン導電性材料であっても、例えば上記第2の発明のように上記基材上に上記プロトン導電性材料を上記強酸性層として形成することができる。そして、上記強酸性層上に、上記被測定ガス側電極を形成することにより、少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面が酸度関数−12以下のプロトン導電性材料からなる上記プロトン導電性固体電解質体を簡単に製造することができる。
【0023】
上記一般式(2)におけるxが0.03未満の場合には、安定化剤としての添加効果が小さくなり、焼結性が悪化し、強度が低下するおそれがある。一方、0.3を超える場合には、固体電解質体としての特性が劣化し、導電率が低下するおそれがある。
【0024】
また、上記一般式(1)及び一般式(2)においては、M1がZrであり、M2がYであることが好ましい。即ち、上記一般式(1)で表される化合物は、Zr1-xx27(0.03≦x≦0.3)であることが好ましく、上記一般式(2)で表される化合物は、Zr1-xx2であることが好ましい。
この場合には、上記プロトン導電性固体電解質体のプロトン導電性を向上させることができると共に、アンモニアに対する選択的な吸着性を向上させることができる。
【0025】
また、上記アンモニアセンサ素子において、上記プロトン導電性固体電解質体の対向する一対の表面には、上記被測定ガス側電極と上記基準ガス側電極が形成されている。
上記被測定ガス側電極及び上記基準ガス側電極は、例えばPt、Ag、Ni、Al、Cu、Au、及びW等の導電性の金属により形成することができる。
【0026】
上記被測定ガス側電極はPtを主成分とすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記アンモニアセンサ素子のアンモニアに対する選択的な検出感度を向上させることができる。
即ち、上記被測定ガス側電極がPtにより形成されている場合には、上記被測定ガス側電極上で上記被測定ガス中に含まれるH2等の還元性ガスを燃焼させることができる。そのため、被測定ガス中に含まれるアンモニアに対する選択的感度をより向上させることができる。
【0027】
また、上記アンモニアセンサ素子は、通電により発熱する発熱体を有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記被測定ガス室内の温度調整を上記発熱体によって迅速かつ容易に行うことができる。そしてこの場合には、上記被測定ガス中におけるアンモニア以外の水素等の還元ガスを十分かつ確実に燃焼させることができる。これにより、アンモニアに対する選択的感度を向上させることができる。
【0028】
上記アンモニアセンサ素子は、少なくともアンモニアを含有する上記被測定ガスに対して適用することができる。上記アンモニア以外に、H2、NOx、CO、炭化水素等のその他のガスを含有する被測定ガスに対しても適用することができる。
【0029】
上記被測定ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスであることが好ましい(請求項6)。
この場合には、被測定ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができるという本発明の作用効果を有効に利用することができる。
すなわち、上記アンモニアセンサ素子を用いれば、排ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができる。例えば、ディーゼルエンジンの排ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化するためのものであり、排ガス中のアンモニア濃度を正確に測定する必要がある尿素添加SCRシステム等に、本発明のアンモニア濃度検出方法を適用することができる。
【0030】
また、上記プロトン導電性固体電解質体は、例えば一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材を準備し、該基材の少なくとも一方の表面をリン酸水溶液中に浸漬した後、上記基材を加熱することにより製造することができる。これにより、上記基材と、該基材の表面上に形成され、上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記強酸性層とを有する上記プロトン導電性固体電解質体を得ることができる。
リン酸水溶液中への浸漬は、上記基材の少なくとも一方の表面を浸漬すればよい。この場合には、浸漬した側の表面に上記強酸性層が形成され、該強酸性層に上記被測定ガス側電極を形成することによりアンモニアセンサ素子を構成することができる。
また、上記基材全体をリン酸水溶液中に浸漬して上記基材の表面全体に上記強酸性層を形成することもできる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
本例は、プロトン導電性固体電解質体を作製し、そのアンモニアに対する特性を調べる例である。
図1及び図2に示すごとく、本例のプロトン導電性固体電解質体1は、安定化ジルコニアを主成分とする基材2と、その表面に形成されたハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる強酸性層3とからなる。本例において強酸性層3は、円板状の基材の一方の表面に形成されている。
【0032】
本例のプロトン導電性固体電解質体は、次のようにして作製した。
まず、基材として、直径12mm、厚さ1mmの円盤状で、Zr1-xx2を主成分とするYSZ基板(8mol%Y23、東ソー(株)製)を準備した。
次いで、この基材の片面を濃度80重量%のリン酸水溶液に浸した後、基材を大気雰囲気下で4時間加熱した(リン酸熱処理)。次いで、基材を水で洗浄したあと、さらにエタノールで洗浄し、温度130℃で乾燥した。
このようにして、基材の表面をリン酸熱処理してなるプロトン導電性固体電解質体を得た。これを固体試料Eとする。
【0033】
また、プロトン導電性固体電解質体の成分及び特性分析用として、粉末状のプロトン導電性固体電解質体を作製した。
具体的には、まず、上述のYSZ基板と同成分の粉末(YSZ粉末;粉末試料C)を準備した。次いで、YSZ粉末を濃度80重量%のリン酸に浸した後、粉末を大気雰囲気下で4時間加熱した(リン酸熱処理)。次いで、粉末を水で洗浄したあと、さらにエタノールで洗浄し、温度130℃で乾燥した。
このようにして、YSZ粉末をリン酸熱処理してなるプロトン導電性固体電解質体を得た。これを粉末試料Eとする。
【0034】
次に、固体試料Eのリン酸熱処理した表面の成分を調べた。
具体的には、まず、固体試料Eのリン酸熱処理した表面についてX線回折分析(XRD)を行った。XRDは、CuKα線、λ:0.15418nm、filter:Niという条件で行った。また、比較用として、リン酸熱処理を行っていないYSZ基板(固体試料C)の表面についても固体試料Eと同条件でX線回折を行った。その結果を図3に示す。同図においては、上段が固体試料EのXRDの結果を示し、下段が固体試料CのXRDの結果を示す
【0035】
図3より知られるごとく、固体試料Cにおいては、安定化ジルコニア(YSZ)のピークのみが観察されたのに対し、固体試料Eの表面においては安定化ジルコニア(YSZ)のピークとは別にZrP27のピーク(図中△で示す)が観察された。
したがって、固体試料Eにおけるリン酸熱処理した表面には、ZrP27構造を有する層(強酸性層)が形成されていることが推定された。
【0036】
次に、固体試料Eの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線マイクロアナライザ(EPMA)により分析した。SEM写真を図4に示し、EPMAによるP元素分布の結果を図5に示し、EPMAによるZr元素分布の結果を図6に示す。
図4より知られるごとく、固体試料Eのリン酸熱処理を行った表面においては、反射電子像の表面から深さ約5〜10μmまでの領域にコントラストの低い層が存在していた。また、図5より知られるごとく、反射電子像でコントラストが低かった層にはリンが存在していた。また、図6より知られるごとく、反射電子像でコントラストが低かった層は、Zr濃度が低くなっていた。
上述のXRDとEPMAの結果から、固体試料Eのリン酸熱処理を行った表面には、厚さ5〜10μmのZr1-xx27からなる層(強酸性層)が存在することがわかった。
Zr1-xx27は、安定化ジルコニア(Zr1-xx2)とリン酸(H3PO4)との次のような反応により生成したと考えられる。
2H3PO4 + Zr1-xx2 →Zr1-xx27 + 3H2
【0037】
次に、固体試料Eに形成されたZr1-xx27からなる層について、ハメットの酸度関数H0を測定した。
0の測定は、上述のごとく、「アドバンスィズ・イン・キャタラシス(ADVANCES IN CATALYSIS)、第37巻(VOLUME37)のp.186−187に記載の方法に準じて測定した。その結果、固体試料EのZr1-xx27からなる層(強酸性層)は、H0=−14.5を示した。
このように、本例の固体試料Eにおいては、安定ジルコニアからなる基材2上に、Zr1-xx27からなるH0≦−12の強酸性層3が形成されていることがわかった(図1及び図2参照)。
【0038】
次に、固体試料Eの強酸性層のプロトン導電性を検討した。
まず、図7に示すごとく、円盤状の固体試料Eの対向する一対の表面、即ち強酸性層3側の表面と、この強酸性層3と対向する側の表面にPt金属からなる電極層41、42を形成した。このようにして、一対の電極層41、42を形成した固体試料Eを得た。
次いで、図8に示すごとく、固体試料Eをその表面に形成した一対の電極層41、42側からアルミナ管51、52(外形12mm、内径8mm)で挟んで密封した。このとき、アルミナ管51、52と固体試料Eの電極層41、42との間には、導線53、54、55、56を接続した導電性金属メッシュ57、58をそれぞれ配置した。各導電性金属メッシュ57(58)には、導線53、54(55、56)がそれぞれ2つずつ電気的に接続してある。また、固体試料E上に形成した電極41、42層は、アルミナ管51、52の内径よりも小さな径の円形状で形成されており、アルミナ管51、52で挟んだ後、電極層41、42はアルミナ管51、52内に配置される。
なお、図8は、図面説明の便宜のため、固体試料Eをアルミナ管で挟む前の状態を示してある。
【0039】
次に、固体試料Eの電極層41、42間に電圧を印加し、アルミナ管51、52内に温度500〜600℃の水蒸気を導入した。そして、振幅電圧10mV、周波数106〜0.1Hzという条件での交流インピーダンス法(四端子法)により、抵抗を測定した。アルミナ管51、52に導入した水蒸気の濃度と抵抗の逆数(導電率)との関係を図9に示す。
また、比較用として、固体試料Cの両表面にも一対のPt電極(電極層)を形成し、上述の固体試料Eと同様にして水蒸気の濃度と抵抗の逆数(導電率)との関係を調べた。その結果を図9に示した。
【0040】
図9より知られるごとく、固体試料Cにおいては、温度600℃の水蒸気を用いた際に、若干の変化が認められたものの、水蒸気濃度に対する導電率の変化はほとんど認められなかった。これに対し、固体試料Eにおいては、温度500℃〜600℃のいずれの温度でも水蒸気濃度に対する導電率の変化が認められた。
このことから、固体試料Eはプロトン導電性を有しており、基材に強酸性層を形成することによりプロトン導電性が得られたことがわかる。
【0041】
次に、粉末試料E及び粉末試料Cについて水素マス核磁気共鳴(1H MAS NMR)を行った。その結果を図10に示す。
同図に示すごとく、粉末試料Eにおいては、水素結合に由来する位置にピークが観察された。このことは、粉末試料Eにはプロトンが存在し、粉末試料Eはプロトン導電性を有することを示す。これに対し、粉末試料Cにおいては、吸着水に由来する位置にピークが観察されたが、水素結合に由来する位置にピークは観察されなかった。
このことからも、安定化ジルコニアをリン酸熱処理することにより、プロトン導電性が得られることがわかる。
【0042】
次に、粉末試料E及び粉末試料Cについてアンモニア昇温脱離法(TPD法)を行って、アンモニアに対する吸着性を調べた。
具体的には、各試料に対して、温度100℃の条件下でアンモニアを1体積%含む窒素を30分間流通させた(アンモニア吸着処理)。その後、各試料に対して温度100℃の条件下で乾燥アルゴン(Ar)を30分間流通させた(洗浄処理)。
次に、各試料を温度100℃から徐々に昇温させて、各試料から発生する気体を質量分析計(GS−MAS)により測定した。このときGS−MASのMASナンバーはアンモニアの分子量である17に設定した。測定結果を図11に示す。
【0043】
図11より知られるごとく、粉末試料Eは、温度400℃前後にアンモニアの脱離ピークが観察された。このことは、安定化ジルコニアをリン酸熱処理した試料(粉末試料E)は、アンモニアに対する吸着性能を示す。これに対し、リン酸熱処理を行っていない粉末試料Cは、アンモニアの脱離ピークは観察されなかった。
【0044】
次に、固体試料E及び固体試料Cについて、アンモニアセンサとしての特性を評価した。
まず、上述のプロトン導電性の評価の場合と同様に、円盤状の固体試料Eの対向する一対の表面、即ち強酸性層3側の表面と、この強酸性層3と対向する側の表面にPt金属からなる電極層41、42を形成し、一対の電極層41、42を形成した固体試料Eを得た(図7参照)。
次いで、図12に示すごとく、固体試料Eをその表面に形成した一対の電極層41、42側からアルミナ管51、52(外形12mm、内径8mm)で挟んで密封した。このとき、アルミナ管51、52と固体試料Eの電極層41、42との間には、導線50、59をそれぞれ接続した導電性金属メッシュ57、58をそれぞれ配置した。各導電性金属メッシュ57(58)には、導線50、59をそれぞれ1つずつ電気的に接続してある。また、固体試料E上に形成した電極41、42層は、アルミナ管51、52の内径よりも小さな経で形成されており、アルミナ管51、52で挟んだ後、電極層41、42はアルミナ管51、52内に配置される。
なお、図12は、上述の図8と同様に、図面説明の便宜のため、固体試料Eをアルミナ管で挟む前の状態を示してある。
【0045】
次に、固体試料Eの電極層41、42間に電圧を印加し、固体試料Eの強酸性層3が形成された側のアルミナ管51からサンプルガス(NH3:0−200ppm、H2O:3vol%、O2:10vol%、窒素:残部)を流速100ml/分で導入し、もう一方のアルミナ管52からは空気を流速100ml/分で導入した。このときの作動温度条件は550〜750℃とした。そして、このときの出力電圧を測定し、出力電圧(EMF)の経時変化を図13に示し、サンプルガスのアンモニア濃度と出力電圧差(ΔEMF)との関係を図14に示す。
また、固体試料Cについても同様にして、対向する一対の表面にPt金属からなる電極層を形成し、固体試料Eと同様にしてサンプルガス導入時の出力電圧を測定した。出力電圧(EMF)の経時変化を図13に示し、サンプルガスのアンモニア濃度と出力電圧差(ΔEMF)との関係を図14に示す。
なお、図14における出力電圧差は、固体試料Cをゼロとして補正してある。
【0046】
図13より知られるごとく、固体試料Cは、アンモニアに対する感度はないが、強酸性層を有する固体試料Eは、アンモニアに対して感度があることがわかる。
また、図14より知られるごとく、固体試料Cにおいては、アンモニア濃度が変化しても電位はほとんど変わらなかったが、固体試料Eにおいては、アンモニア濃度が大きくなるにつれて、電位がマイナス方向に大きく変化することがわかる。
したがって、安定化ジルコニアからなる基材上に強酸性層を形成したプロトン導電性固体電解質体(固体試料E)は、アンモニア濃度に依存して電位が変化し、アンモニアに対して感度があることがわかる。
【0047】
次に、固体試料Eのその他のガスに対する感度を測定した。具体的には、CO、NO2、NO、C26、C24、C38、C36、H2の各ガスをアンモニアの代わりに濃度100ppmで含有するサンプルガスを用いて、上述のアンモニアの場合と同様にしてサンプルガス導入時の出力電圧を測定した。作動温度条件は600℃とした。各ガスを導入したときにおける出力電圧を図15に示す。
また、電極層による影響を調べるために、Pt金属の代わりにNi金属からなる一対の電極層を形成した固体試料Eを作製し、CO、NO2、NO、C26、C24、C38、C36、H2の各ガスを導入したときにおける出力電圧を測定した(作動温度条件600℃)。その結果を図16に示す。
【0048】
図15より知られるごとく、固体試料Eは、アンモニ以外の各ガスに対しては、ほとんど電位の変化を示さず、アンモニアに対して高い選択性を有していることがわかる。
また、図16より知られるごとく、電極層としてNi金属を用いてもアンモニアに対して感度あるが、CO、C26、C36等のその他のガスに対しても若干の感度があることがわかった。したがってアンモニアに対する選択性的な感度を向上させるめには、Pt金属からなる電極層が好ましいことがわかる。
【0049】
このように本例においては、安定化ジルコニア等のように一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材(固体電解質体)をリン酸水溶液中に浸漬し、加熱することにより、基材の表面に一般式(1)M11-xM2x27(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料からなる強酸性層を形成した。かかる強酸性層は、ハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる。
そして、本例によれば強酸性層はプロトン導電性を示し、基材上に強酸性層を形成したプロトン導電性固体電解質体は、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出できることがわかる。
【0050】
(実施例2)
本例は、実施例1と同様のプロトン導電性固体電解質体を用いたアンモニアセンサ素子の例である。
図17及び図18に示すごとく、本例のアンモニアセンサ素子6は、プロトン導電性固体電解質体63と、その対向する一対の表面にそれぞれ設けられた被測定ガス側電極64及び基準ガス側電極65と、被測定ガス側電極64に面して被測定ガスGを導入する被測定ガス室640と、基準ガス側電極65に面して基準ガスを導入する基準ガス室650とを備える。プロトン導電性固体電解質体63は、その少なくとも被測定ガス側電極64を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなる。
【0051】
以下、本例のアンモニアセンサ素子6について詳細に説明する。
図17及び図18に示すごとく、本例のアンモニアセンサ素子6は、ディーゼルエンジンの排気管等に取り付けられ、排ガス中のアンモニア濃度を検出するアンモニアセンサに内蔵される。また、アンモニアセンサは、排ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化する尿素添加SCRシステムに適用されるものである。尿素添加SCRシステムは、アンモニアセンサにおいて検出した排ガス中のアンモニア濃度に応じて、排ガスに対する尿素の添加量を調整する。
【0052】
図17及び図18に示すごとく、アンモニアセンサ素子6において、プロトン導電性固体電解質体63は、Zr1-xx2を主成分とする基材631と、その一方の表面に形成された酸度関数H0=−14.5の強酸性層632とを有する。このプロトン導電性固体電解質体63は、実施例1と同様にYSZ基板(8mol%Y23、東ソー(株)製)からなる基材631をリン酸熱処理したものを採用してあり、強酸性層632はZr1-xx27からなる。
【0053】
プロトン導電性固体電解質体63における強酸性層632が形成された側の表面には、白金(Pt)よりなる被測定ガス側電極64が設けられている。また、プロトン導電性固体電解質体63における強酸性層632が形成されていない側の表面には、白金(Pt)よりなる基準ガス側電極65が設けられている。
【0054】
また、プロトン導電性固体電解質体63の基準ガス側電極65側には、電気的絶縁性を有し、かつ緻密でガスを透過させないアルミナセラミックスよりなる基準ガス室形成層66が積層されている。基準ガス室形成層66には、基準ガス室650を形成する溝部660が設けられている。基準ガス室650は、基準ガスを導入することができるよう構成されている。本例において、基準ガスは大気である。
【0055】
また、基準ガス室形成層66におけるプロトン伝導性固体電解質体63とは反対側の面には、ヒータ基板67が積層されている。ヒータ基板67には、白金(Pt)よりなるヒータ(発熱体)68が基準ガス室形成層66と対面するよう設けられている。ヒータ68は、通電により発熱させることができ、アンモニアセンサ素子6が活性温度となるようにこれを加熱する役割を果たす。
【0056】
また、プロトン伝導性固体電解質体63の被測定ガス側電極64側には、開口部320を有する被測定ガス室形成層62が積層されている。被測定ガス室形成層62の長手方向の一方の端部には、気孔率の高いガス透過性のアルミナセラミックスよりなる拡散抵抗層621が設けられている。
また、被測定ガス室形成層62におけるプロトン伝導性固体電解質体63とは反対側の面には、電気的絶縁性を有し、かつ緻密でガスを透過させないアルミナセラミックスよりなる遮蔽層61が積層されている。
【0057】
また、遮蔽層61と被測定ガス室形成層62の開口部620とプロトン伝導性固体電解質体63とによって覆われた場所には、被測定ガス室640が形成されている。被測定ガス室640は、所定の拡散抵抗の下に拡散抵抗層621を透過した被測定ガスGを導入することができるよう構成されている。本例の被測定ガスGは、ディーゼルエンジンの排ガスである。
また、被測定ガス側電極64及び基準ガス側電極65には、それぞれ導線(図示略)が電気的に接続されており、両電極64、65間の出力が検出できるように構成されている。
【0058】
本例のアンモニアセンサ素子6の作用効果について説明する。
アンモニアセンサ素子6は、少なくとも被測定ガス側電極64を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなるプロトン導電性固体電解質体63を有している。そのため、プロトン導電性固体電解質体63は、少なくとも被測定ガス側電極64を形成する側の表面において強酸性を示し、アンモニアに対する選択的な吸着性に優れる。
そのため、アンモニアセンサ素子6においては、被測定ガス側電極64と基準ガス側電極65の間に電圧を印加することにより、被測定ガス室640内に導入された被測定ガスG中からアンモニアを選択的に吸着し、アンモニアからプロトンを遊離させることができる。そして、そのプロトンの量に応じた電流をプロトン導電性固体電解質体63中に流すことができる。この電流の大きさを測定することにより、上記被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することができる。
したがって、アンモニアセンサ素子6においては、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができる。
【0059】
また、本例においては、安定化ジルコニアからなる基材631上にZr1-xx27からなる強酸性層632が形成されたプロトン導電性固体電解質体63を用いている。かかるプロトン導電性固体電解質体63は、実施例1にも示すように、アンモニアに対する優れた選択性を有し、アンモニアの濃度を感度良く検出することができる。
【0060】
また、被測定ガス側電極64がPtにより形成されている。そのため、被測定ガス側電極64上で被測定ガスG中に含まれるH2等の還元性ガスを燃焼させることができる。そのため、被測定ガスG中に含まれるアンモニアに対する選択的感度が向上する。
【0061】
また、アンモニアセンサ素子6は、通電により発熱する発熱体68を有する。そのため、被測定ガス室640内の温度調整を発熱体68によって迅速かつ容易に行うことができる。そしてこの場合には、被測定ガスG中におけるアンモニア以外の水素等の還元ガスを十分かつ確実に燃焼させることができる。これにより、アンモニアに対する選択的感度を向上させることができる。
【0062】
このように、実施例1と同様の構成のプロトン導電性固体電解質体63を用いた本例のアンモニアセンサ素6子は、ガス中のアンモニア濃度を選択的かつ精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 プロトン導電性固体電解質体
2 基材
3 強酸性層
6 アンモニアセンサ素子
63 プロトン導電性固体電解質体
64 被測定ガス側電極
65 基準ガス側電極
640 被測定ガス室
650 基準ガス室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン導電性固体電解質体と、該プロトン導電性固体電解質体の対向する一対の表面にそれぞれ設けられた被測定ガス側電極及び基準ガス側電極と、上記被測定ガス側電極に面して被測定ガスを導入する被測定ガス室と、上記基準ガス側電極に面して基準ガスを導入する基準ガス室とを備えたアンモニアセンサ素子において、
上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面がハメットの酸度関数(H0)−12以下のプロトン導電性材料からなることを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニアセンサ素子において、上記プロトン導電性固体電解質体は、その少なくとも上記被測定ガス側電極を形成する側の表面が一般式(1)M11-xM2x27(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料からなることを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンモニアセンサ素子において、上記プロトン導電性固体電解質体は、一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)で表される化合物を主成分とする基材と、該基材の表面に形成された上記一般式(1)で表される化合物を主成分とする上記プロトン導電性材料からなる強酸性層とからなることを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンモニアセンサ素子において、上記被測定ガス側電極はPtを主成分とすることを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンモニアセンサ素子において、通電により発熱する発熱体を有することを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンモニアセンサ素子において、上記被測定ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスであることを特徴とするアンモニアセンサ素子。
【請求項7】
アンモニアセンサ素子に用いられるプロトン導電性固体電解質体の製造方法において、
一般式(2)M11-xM2x2(M1:4価金属、M2:3価金属、0.03≦x≦0.3)を主成分とする基材を準備し、該基材の少なくとも一方の表面をリン酸水溶液中に浸漬した後、上記基材を加熱することを特徴とするプロトン導電性固体電解質体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−69705(P2011−69705A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220563(P2009−220563)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「電気化学会第76回大会 講演要旨集」、財団法人電気化学会、平成21年3月29日発行 〔刊行物等〕 「ケミカル・センサーズ(Chemical Sensors)第25巻(Vol.25)サプルメントA(2009)(Supplement A(2009))」、電気化学会 化学センサ研究会、平成21年3月29日発行
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】