説明

アンモニア合成用素ガスの製造方法および製造装置

【課題】軽質炭化水素を原料としてアンモニア合成用素ガスを製造する際に、製造装置を簡便とすることができ、エネルギーコストを抑えることができるアンモニア合成用素ガスの製造方法および製造装置を得る。
【解決手段】管3からの軽質炭化水素と、管6からのスチームと、酸素富化空気供給源7からの酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を加熱して1段改質反応器5に導入し、水蒸気改質反応と空気部分酸化反応を同時に行う。ついで、シフト反応器12、脱炭酸器14、メタン化反応器16に通して、一酸化炭素、二酸化炭素を除去し、水素と窒素とのモル比がほぼ3:1のアンモニア合成に適した素ガスを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天然ガスなどの軽質炭化水素を原料として、水素と窒素とをモル比でほぼ3対1の割合で含むアンモニア合成用素ガスを製造する方法およびそのための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなアンモニア合成用素ガスを製造する方法としては、天然ガスなどの軽質炭化水素にスチームを加えて一次改質反応器に送り込み、ここで水蒸気改質を行って、水素と一酸化炭素を含むガスを得る。ついで、このガスに空気を加えて二次改質反応器に送って空気部分酸化を行って、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水などを含む合成ガスを得る。
【0003】
その後、この合成ガスをシフト反応器に送って、これに含まれる一酸化炭素と水とをシフト反応させて二酸化炭素と水素とし、一酸化炭素の減量と水素の増量を計る。ついで、アルカリ洗浄によって、これに含まれる二酸化炭素を除去し、さらに残余の一酸化炭素と水素を反応させてメタンと水にするメタン化反応を行うことで、水素と窒素とがモル比で3対1の割合で含むアンモニア合成用素ガスを得る方法がある。
【0004】
この2段改質方法では、一次改質反応器での反応が吸熱反応となるため、反応管を外部から高温に加熱する必要がある。このため、余分のエネルギーを必要とし、さらには一次改質反応器が大型化する不都合がある。
【0005】
特開昭59−195502号公報には、一次改質反応、二次改質反応を経て得られた合成ガスにさらにシフト化反応、アルカリ洗浄、メタン化反応を施し、そののち水素と窒素との含有比率を調整するため、圧力スイング吸着工程、窒素添加工程を経る製造方法が開示されている。
【0006】
この方法では、製造設備が複雑化することになり、さらに製品となるアンモニア合成用素ガス中の水素の一部が圧力スイング吸着工程においてロスとなるなどの不都合がある。
また、米国特許第4792441号明細書は、軽質炭化水素の改質方法として、外部加熱型の水蒸気改質反応器と酸素富化空気による部分酸化反応を2段で組み合わせる方法を開示している。
さらに、米国特許第5202057号明細書には、軽質炭化水素の改質方法として、外部加熱型の水蒸気改質法のみとして水素を製造し、一方で窒素は外部加熱用に用いる空気を含む煙道排ガスから分離精製して製造し、最後に水素と窒素を混合してアンモニア合成用素ガス得る方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、主たる改質反応器が外部加熱型であることから、設備の大型化や高圧反応化に対して不利になるとともに設備構成が複雑化する欠点がある。
【特許文献1】米国特許第4792441号明細書
【特許文献2】米国特許第5202057号明細書
【特許文献3】特開昭59−195502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明における課題は、軽質炭化水素を原料としてアンモニア合成用素ガスを製造する際に、製造装置を簡便とすることができ、エネルギーコストを抑えることができるアンモニア合成用素ガスの製造方法および製造装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、軽質炭化水素とスチームと酸素富化空気とを接触部分酸化反応に供して、水素と窒素を含むアンモニア合成用素ガスを得る際、
酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を用いることを特徴とするアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
【0009】
請求項2にかかる発明は、接触部分酸化反応が、周期律表第VIII族金属を担持した触媒を用いることも特徴とする請求項1記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
請求項3にかかる発明は、接触部分酸化反応が、圧力1〜10MPa、温度200〜1200℃で行われることを特徴とする請求項1または2記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
【0010】
請求項4にかかる発明は、酸素富化空気中の酸素と軽質炭化水素中の炭素との比、(O/C)が0.3〜0.8モル/モルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
請求項5にかかる発明は、スチームと軽質炭化水素中の炭素との比が1〜5モル/モルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
請求項6にかかる発明は、接触部分酸化反応が、一段の反応器で行われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法である。
【0011】
請求項7にかかる発明は、酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を発生、供給する酸素富化空気供給源と、この酸素富化空気供給源からの酸素富化空気とスチームと軽質炭化水素を導入して接触部分酸化反応を行う接触改質反応器を備えたことを特徴とするアンモニア合成用素ガスの製造装置である。
【0012】
請求項8にかかる発明は、接触改質反応器が、周期律表第VIII族金属を担持した触媒を充填したものであることも特徴とする請求項7記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置である。
請求項9にかかる発明は、酸素富化空気供給源が、酸素分離膜装置、空気液化分離装置および圧力スイング吸着装置のいずれかを備えたものであることを特徴とする請求項7または8記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置である。
請求項10にかかる発明は、接触改質反応器が、一段の反応器であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を用いることで、1段で水蒸気改質反応と空気部分酸化反応が同時に進行し、反応器を1基にでき、製造設備を簡略化できる。また、反応管を加熱する必要がなく、外部からの加熱が不要であり、反応温度を低く抑えることが出来るため、触媒の劣化が防止される。また、後段での圧力スイング吸着工程などを設けることなく、水素と窒素とのモル比率がほぼ3対1のアンモニア合成用素ガスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明のアンモニア合成用素ガスの製造装置の一例を示すものである。
原料となる天然ガス、ナフサ、石油ガス等の軽質炭化水素は、管1から脱硫反応器2に送られ、軽質炭化水素中に含まれる硫黄分が除去される。ここでの脱硫反応器2には、例えば原料ガス中の硫黄分を水素で還元して硫化水素とする還元反応器と、生成された硫化水素を吸着する吸着器を備えたものなどが用いられる。
【0015】
脱硫処理された軽質炭化水素は、管3から加熱器4を介して1段接触改質反応器5に送られる。この際、スチームが管6から管3に合流され、さらに酸素富化空気が酸素富化空気供給源7から管8を通って管3に合流され、軽質炭化水素とスチームと酸素富化空気とからなる混合ガスが加熱器4に送り込まれ、ここで加熱されたうえ、1段接触改質反応器5に送り込まれる。この際、脱硫された軽質炭化水素、スチーム、酸素富化空気の温度によっては加熱器4を省略することもできる。
【0016】
上記スチームとしては圧力1〜10MPa程度のものが用いられる。また、上記酸素富化空気供給源7としては、酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を発生して供給するものが用いられ、具体的には酸素分離膜装置、空気液化分離装置、圧力スイング吸着装置などを備えたものが用いられる。
【0017】
上記酸素富化空気中の酸素の濃度は、本発明において重量な因子であり、この濃度が40体積%未満では1段接触改質器5で得られる合成ガス中の原料メタンの未反応量が増加して効率が低下し、50体積%を越えると得られる合成ガス中のアンモニア合成用素ガスの収量が大きく低下してやはり効率が低下し、ともに不都合である。
また、酸素富化空気の圧力は1〜10MPa程度とされる。
【0018】
上記加熱器4は、軽質炭化水素とスチームと酸素富化空気との混合ガスを1段接触改質反応器5の入口温度にまで加熱するものであり、酸素を有する可燃性ガスの自発的燃焼を抑えて、かつ反応開始温度まで加熱する指標として、200〜400℃程度とすることが好ましい。
酸素富化空気中の酸素と軽質炭化水素中の炭素との比(O/C)は、合成ガスとして不要なメタン残量が増加して効率が低下するのを防止するためには、0.3〜0.8モル/モルとすることが好適である。
同様の理由により、スチームと軽質炭化水素中の炭素との比(HO/C)を1〜5モル/モルとするのが好適である。
【0019】
加熱器4を出た混合ガスは、温度200〜400℃、圧力1〜10MPaの状態で1段接触改質反応器5に送り込まれる。
この1段接触改質反応器5は、その内部に触媒層を有し、軽質炭化水素の酸素富化空気による酸化反応および軽質炭化水素の水蒸気改質反応を並行させて水素と窒素を含むアンモニア合成用素ガスを生成する。この反応は、外部から熱を供給しない自己熱改質反応であり、反応の進行に伴って触媒層を通過する間に反応熱による温度上昇が起こる。一般的に、生成ガスの温度が800〜1200℃の範囲になるような操作条件を選定する。
【0020】
この1段接触改質反応器5において用いられる触媒としては、周期律表第VIII族の金属、例えばロジウム、パラジウム、白金、金などをアルミナ、マグネシアなどの耐熱性酸化物等からなる担体に担持してなるものが用いられ、なかでもロジウムを担持した触媒が好適である。金属の担持量は0.3〜3重量%程度である。
【0021】
このように、1段接触改質反応器5での触媒層温度としては、触媒層の入口から出口までの間で変化し、かつ全体として200〜1200℃の範囲で操作される。200℃未満では原料ガス中の水分の凝縮による触媒性能の低下が生じ、1200℃を越えると反応器材料の損傷や軽質炭化水素の反応率の限界などが起こるので、プロセス全体効率を考慮して200〜1200℃が好適な条件である。
また、1段接触反応器5の反応圧力としては、下流のアンモニア合成工程への供給に関わる難易度、触媒性能、反応器の耐圧性能などを総合的に勘案した結果、1〜10MPaで実施するのが好適である。
【0022】
以上の1段接触改質反応器5で生成して導出される合成ガスは、水素、窒素、未反応のメタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水、アルゴンなどを含むもので、温度800〜1200℃、圧力1〜10MPaとなっている。そこで、アンモニア合成用素ガスとして最適な組成に仕上げるため、次の後処理工程を必要に応じて付加する。
【0023】
この合成ガスは、管9を通って熱交換器10に送られ、ここで200〜400℃に冷却されたのち、管11からシフト反応器12に送られる。シフト反応器12では、合成ガス中の一酸化炭素と水とを反応させて、二酸化炭素と水素とにし、一酸化炭素の含有量を低減し、かつ水素の含有量を増加するシフト反応が行われる。このシフト反応器12には、従来から用いられてきたものをそのまま使用することができる。
【0024】
シフト反応器12からの合成ガスは、管13から脱炭酸器14に送られ、ここでアミン水溶液などのアルカリ水溶液と気液接触させられ、これに含まれる二酸化炭素が除去される。
脱炭酸器14からの合成ガスは、管15を通ってメタン化反応器16に送られ、微量に残存する一酸化炭素を水素と反応させて、メタンと水とし、一酸化炭素を除去する。メタン化反応器16も従来から用いられているものをそのまま使用することができる。
【0025】
メタン化反応器16から導出された合成ガスは、水素と窒素とをモル比でほぼ3対1の割合で含み、これ以外に少量のメタン、水、アルゴンを含むものとなり、これをアンモニア合成用素ガスとしてそのまま使用することができる。
【0026】
以下、具体例を示す。
(実施例1)
空気液化分離装置で得られた酸素濃度90体積%の酸素を空気で希釈して、酸素濃度45体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム5.9kg/hrと上記酸素富化空気4Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを、触媒充填層径5cmで触媒充填高さ50cmであって、ロジウムをα−アルミナに担持した粒径3mmの触媒が充填されている1段接触改質反応器に導入した。
【0027】
反応を開始して系が安定した後、反応器出口の合成ガスの組成を測定したところ、以下の組成を示した。
反応は2.5MPaの圧力で行った。反応器は、外部からの加熱を行うことがなく、全体として発熱反応であり、出口の合成ガスの温度は900℃であった。また、触媒層の温度は1000℃であったが、触媒の劣化はなかった。
メタン:水素:窒素:一酸化炭素:二酸化炭素:水:アルゴン=0.3:31.0:12.6:7.7:7.6:40.6:0.1(モル%)
【0028】
上記合成ガスを、250℃に冷却して多管冷却式の等温シフト化反応器に導入してシフト化反応を行って一酸化炭素の減量と水素の増量を行って以下の組成のガスを得た。
メタン:水素:窒素:一酸化炭素:二酸化炭素:水:アルゴン=0.3:38.5:12.6:0.2:15.2:33.1:0.1(モル%)
【0029】
さらに、この合成ガスを炭酸ガス吸収塔に通して、二酸化炭素を除去したのち、残存する一酸化炭素をメタン化反応器に送って除去し、以下の組成を有する合成ガスを得た。メタン化反応器での反応条件は、温度約300℃、圧力2.1MPaで、触媒には一般的なニッケル系触媒を使用した。
メタン:水素:窒素:一酸化炭素:二酸化炭素:水:アルゴン=1.0:73.4:24.5:0.0:0.0:0.9:0.2(モル%)
この合成ガスは、アンモニア合成用素ガスに最適な水素:窒素のモル比が3:1の比率で含まれるものである。
【0030】
(実施例2)
窒素透過型の膜分離装置を用いて酸素濃度40体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム4.9kg/hrと上記酸素富化空気4.4Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして1段接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0031】
この得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率がモル比で2.5:1であった。
この比率は、アンモニア合成反応における生産効率を考えると、さらなる濃度調整を必要としない下限値である。すなわち、酸素富化空気の酸素濃度が40体積%未満では、本発明の利点を十分に発揮できないことになる。
【0032】
(実施例3)
圧力スイング吸着装置を用いて酸素濃度50体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム7.3kg/hrと上記酸素富化空気3.8Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして1段接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0033】
この得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率がモル比で3.5:1であった。
この比率は、アンモニア合成反応における生産効率を考えると、さらなる濃度調整を必要としない上限値である。すなわち、酸素富化空気の酸素濃度が50体積%越えると、本発明の利点を十分に発揮できないことになる。
【0034】
(実施例4)
圧力スイング吸着装置を用いて酸素濃度50体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム9.9kg/hrと上記酸素富化空気4.2Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして1段接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0035】
ただし、1段接触改質反応器での反応圧力を5.5MPaとし、メタン化反応器での反応圧力を5.1MPaとし、全体の反応圧力を実施例1のものに比較して3.0MPa高くして反応を行った。
得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率がモル比で3:1で、アンモニア合成に最適な組成であった。
【0036】
(実施例5)
窒素透過型の膜分離装置を用いて酸素濃度43体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム3.8kg/hrと上記酸素富化空気3.5Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして1段接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0037】
ただし、1段接触改質反応器での反応圧力を1.5MPaとし、メタン化反応器での反応圧力を1.1MPaとし、全体の反応圧力を実施例1のものに比較して1.0MPa低くして反応を行った。
得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率がモル比で3:1で、アンモニア合成に最適な組成であった。
【0038】
(比較例1)
窒素透過型の膜分離装置を用いて酸素濃度39体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム3.5kg/hrと上記酸素富化空気4.3Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして1段接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0039】
得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率はモル比で2.5:1であったが、未反応のメタンが2モル%以上含まれていた。
すなわち、アンモニア合成における原料天然ガス使用量の原単位が悪く効率が低いことが判明した。
【0040】
以上のことから、酸素富化空気中の酸素濃度が低いと、混合するスチーム量の調整が限界に達して、結果的に未反応のメタンが増加して効率が低下するため、酸素富化空気中の酸素濃度は、40体積%以上が適切であることがわかる。
【0041】
(比較例2)
空気液化分離装置で得られた濃度90体積%の酸素を空気で希釈して酸素濃度51体積%の酸素富化空気を用意した。
天然ガス(メタン:エタン:プロパン:ブタン=88.56:7.21:3.05:1.18モル%)に水素を加えて水添脱硫した原料天然ガス2.4Nm/hrに対して、スチーム8.2kg/hrと上記酸素富化空気3.8Nm/hrを加えて300℃に加熱した。この混合ガスを実施例1と同様にして接触改質反応器に送り、同様の反応条件にて処理し、さらに実施例1と同様にしてシフト反応、二酸化炭素除去、メタン化反応を行い、合成ガスを得た。
【0042】
得られた合成ガスの組成は、水素と窒素との比率はモル比で3.5:1であったが、未反応のメタンは1モル%以下で実用上問題はなかった。
しかしながら、製造された製品ガス(アンモニア合成用素ガス)量が実施例1のものに比較すると、15%も低く、この場合においても、原料天然ガス使用量の原単位が悪く効率が低いことが判明した。
【0043】
以上のことから、酸素富化空気中の酸素濃度が高すぎると、効率が低下するため、酸素富化空気中の酸素濃度は、50体積%以下が適切であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のアンモニア合成用素ガスの製造装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
5・・接触改質器、7・・酸素富化空気供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽質炭化水素とスチームと酸素富化空気とを接触部分酸化反応に供して、水素と窒素を含むアンモニア合成用素ガスを得る際、
酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を用いることを特徴とするアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項2】
接触部分酸化反応が、周期律表第VIII族金属を担持した触媒を用いることも特徴とする請求項1記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項3】
接触部分酸化反応が、圧力1〜10MPa、温度200〜1200℃で行われることを特徴とする請求項1または2記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項4】
酸素富化空気中の酸素と軽質炭化水素中の炭素との比、(O/C)が0.3〜0.8モル/モルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項5】
スチームと軽質炭化水素中の炭素との比が1〜5モル/モルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項6】
接触部分酸化反応が、一段の反応器で行われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造方法。
【請求項7】
酸素濃度40〜50体積%の酸素富化空気を発生、供給する酸素富化空気供給源と、この酸素富化空気供給源からの酸素富化空気とスチームと軽質炭化水素を導入して接触部分酸化反応を行う接触改質反応器を備えたことを特徴とするアンモニア合成用素ガスの製造装置。
【請求項8】
接触改質反応器が、周期律表第VIII族金属を担持した触媒を充填したものであることも特徴とする請求項7記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置。
【請求項9】
酸素富化空気供給源が、酸素分離膜装置、空気液化分離装置および圧力スイング吸着装置のいずれかを備えたものであることを特徴とする請求項7または8記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置。
【請求項10】
接触改質反応器が、一段の反応器であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載のアンモニア合成用素ガスの製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−320779(P2007−320779A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149523(P2006−149523)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度石油天然ガス・金属鉱物資源機構「天然ガス有効利用技術」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】