説明

アーク炉製鋼方法

【課題】 アーク炉で鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解精錬して溶鋼を溶製する際に、従来、大量に発生していた温室効果ガスを大幅に削減する。
【解決手段】 アーク炉1で鉄スクラップなどの冷鉄源9を溶解して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法において、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物であって、無水ベースでのかさ密度が0.50トン/m3 以上で且つ無水ベースでの固定炭素分が75質量%以上である炭化物を、補助燃料または加炭材として使用する。その物性がコークスの物性に近いバイオマス炭化物を補助燃料または加炭材として使用するので、アーク炉の操業に何ら悪影響を及ぼすことなく、冷鉄源の溶解及び精錬が可能となるとともに、コークスなどの化石燃料からなる補助燃料または加炭材の使用量を大幅に減少することができ、温室効果ガス排出量の大幅な削減が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法に関し、詳しくは、ヤシガラを乾溜して得られる炭化物を補助燃料または加炭材として使用して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼用アーク炉は、鉄スクラップ、冷銑、直接還元鉄などの冷鉄源を溶解精錬して、建材などに使われる鋼材を生産している。このアーク炉の主なエネルギー源は電熱(アーク熱)であるが、溶解精錬の促進と高価な電気エネルギー節減とを目的として、酸素ガス(鉄の酸化溶解用)、気体燃料、液体燃料、粉コークスなどの補助熱源が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アーク炉で鉄スクラップを溶解する際に、コークスや石炭などの炭材と酸素ガスとを、炉内及び/または炉内の溶融物中に吹き込み、前記炭材の燃焼熱を70%以上の熱効率で鉄スクラップ及び/または溶融物に伝達させて溶鋼を製造する技術が開示されており、特許文献2には、アーク炉内の電極近傍に鉄粉と炭材とを吹き込み、鉄粉を炭材によって還元するとともに、炭材から発生するCOガスによってスラグを泡立たせ、このスラグによってアークを包み込むことによりアークの着熱効率を向上させる技術が開示されている。また、特許文献3には、生成した酸化物をスラグとして炉外に排出しながら、スラグ層に酸素ガスと同時に炭材を吹き込み、スラグ中の酸化鉄を還元するばかりでなく、スラグを泡立たせてアークの着熱効率を高める電気炉操業方法が開示されている。
【0004】
かくして、近代的な製鋼用アーク炉では、電熱と補助熱源とのエネルギー入力量比は50:50に達している。これらの補助熱源の中でも最も重要なものは、コークスやその代替物としての無煙炭、オイルコークスなどの固定炭素分を多く含む炭材である。この炭材は、熱源としてだけでなく、還元剤としても機能し、精錬プロセスそのものにおいても重要な役割を果たしている。現在、溶鋼1トン当たりの炭材(主に粉コークス)の使用量は、20〜30kgに達している。
【0005】
しかしながら、コークスや無煙炭などの炭材を大量に使用することで、大量の化石燃料由来のCO2 ガス、つまり温室効果ガスが大気中に排出されることになる。例えば、年産百万トンの標準的な規模の製鋼工場で固定炭素分が80質量%の粉コークスを溶鋼1トン当たり26kg使用すると、この製鋼工場1基のみで年間当たり76,267トンのCO2ガスが排出されることになる。
【特許文献1】特開昭63−125611号公報
【特許文献2】特開平2−107712号公報
【特許文献3】特開2003−293024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、アーク炉製鋼プロセスにおいては、化石燃料であるコークス、無煙炭などの炭材が使用され、その結果、地球温暖化ガス(温室効果ガス)であるCO2 ガスが大量に大気に排出されている。この化石燃料からなる炭材に替えて木炭などのバイオマス炭化物を使用すれば、計算上、温室効果ガスの排出はなくなる。しかしながら、従来のバイオマス炭化物は、コークスや無煙炭に比べて固定炭素分が少なく、発熱量が少ない或いは発生するスラグ量が多くなるなどから反応効率が悪くなることや、かさ密度(bulk density)が極めて小さく飛散しやすいことなどの理由から、アーク炉製鋼プロセスにおける補助燃料や加炭材としては使用されていなかった。尚、バイオマス燃料から発生するCO2ガスは、カーボン・ニュートラル(carbon neutral)と呼ばれ、温室効果ガス(地球温暖化ガス)には計上されない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、アーク炉で鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解精錬して溶鋼を製造する際に、その物性がコークスの物性に近いバイオマス炭化物をコークスの代替として使用することで、大量の温室効果ガスの発生を削減することのできるアーク炉製鋼方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明に係るアーク炉製鋼方法は、アーク炉で冷鉄源を溶解して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法において、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物であって、無水ベースでのかさ密度が0.50トン/m3 以上で且つ無水ベースでの固定炭素分が75質量%以上である炭化物を、補助燃料または加炭材として使用することを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明に係るアーク炉製鋼方法は、第1の発明において、前記炭化物を、コークス、オイルコークス、無煙炭などの化石燃料からなる補助燃料または加炭材と置き換え使用し、温室効果ガスの発生量を削減することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アーク炉製鋼方法において、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物であって、無水ベースでのかさ密度が0.50トン/m3 以上で、且つ無水ベースでの固定炭素分が75質量%以上である、その物性がコークスの物性に近いバイオマス炭化物を、補助燃料または加炭材として使用するので、アーク炉の操業に何ら悪影響を及ぼすことなく、従来のコークスなどの化石燃料からなる補助燃料または加炭材を使用した場合と全く変らずに冷鉄源の溶解及び精錬が可能となる。その結果、コークスなどの化石燃料からなる補助燃料または加炭材の使用量を大幅に減少することができ、温室効果ガス排出量の大幅な削減が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
【0012】
本発明者等は、温室効果ガスの排出量を削減するべく、アーク炉製鋼プロセスにおいて、現在、一般的に広く使用されている粉コークスに替わってバイオマス炭化物を使用することを検討した。先ず最初に、木材を原料とする炭化物を検討した。しかしながら、木材を原料とする炭化物は、かさ密度が0.10〜0.20トン/m3 程度と非常に小さく、飛散の問題があることから、アーク炉製鋼プロセスで使用することは困難であることが分った。これに対して、粉コークスのかさ密度は0.55トン/m3程度、粉コークスの固定炭素分は75〜85質量%程度である。尚、本発明において、かさ密度及び固定炭素分の値は、特に表示しない限り、「無水ベース」の値を表示している。ここで、「無水ベース(dry basis)」とは、「水分を含まないと仮定した試料を基準にとった分析値のベース」であり、これに対して、「ロットの受け渡しの状態(即ち、全水分含有の状態)を基準にとった分析値のベース」を「到着ベース(as-received basis)」と称す(「石炭利用技術用語辞典、編者及び発行者:燃焼協会、昭和58年12月26日発行」を参照)。
【0013】
次に、現在、活性炭の原料や土壌改良剤として流通している、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物(以下、「ヤシガラ炭」と記す)について検討した。現状のヤシガラ炭のかさ密度は0.50トン/m3 程度、固定炭素分は70質量%以下であり、かさ密度は粉コークスのかさ密度に近い数値であるが、固定炭素分は粉コークスよりも低い数値である。
【0014】
このヤシガラ炭をアーク炉製鋼プロセスで使用した結果、飛散の問題などのかさ密度の差による影響は認められなかったが、固定炭素分が粉コークスに比較して若干低いことによる影響が認められた。具体的には、使用する炭素純分量を同等にしようとすると、単位時間当たりの吹き込み量を増加させる必要があり、それに伴って酸素ガスとの反応に遅れが生じたりすることである。つまり、ヤシガラ炭をアーク炉製鋼プロセスで補助燃料及び加炭材として使用するには、ヤシガラ炭の固定炭素分をコークスと同等水準の75質量%程度まで高める必要のあることが分った。
【0015】
現状のヤシガラ炭(以下、「現状ヤシガラ炭」と記す)は、炭化温度を500℃、炭化処理時間を2時間程度として乾溜されており、種々試験した結果、炭化温度を高くする、または炭化処理時間を延長することによって、ヤシガラ炭の固定炭素分を75質量%程度まで高めることができるとの知見が得られた。つまり、現状ヤシガラ炭の製造条件は、炭化温度が500℃、炭化処理時間が2時間程度であるが、製造されるヤシガラ炭の物性値を見ながらこの条件を変えることによって、固定炭素分を75質量%程度まで高めたヤシガラ炭を製造できることが分った。
【0016】
また、75質量%程度まで固定炭素分を高めたヤシガラ炭をアーク炉製鋼プロセスで補助燃料及び加炭材として使用した場合には、従来の粉コークスを使用した場合と何ら変わらずに鉄スクラップなどの冷鉄源の溶解精錬が可能であることが確認できた。
【0017】
本発明は、上記検討結果に基づきなされたものであり、アーク炉で冷鉄源を溶解して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法において、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物であって、無水ベースでのかさ密度が0.50トン/m3 以上で且つ無水ベースでの固定炭素分が75質量%以上である炭化物を、補助燃料または加炭材として使用することを特徴とする。
【0018】
表1に、現状ヤシガラ炭、固定炭素分を75質量%程度まで高めたヤシガラ炭(以下、「コークス代替ヤシガラ炭」と記す)及び粉コークスの代表的な組成並びに物性値を示す。尚、表1に示す組成は、水分を含む、所謂「到着ベース」の分析値であり、一方、かさ密度及び高位発熱量は「無水ベース」の値である。表1の現状ヤシガラ炭及びコークス代替ヤシガラ炭の組成の欄のカッコ内の数値が無水ベースに換算した値となる。
【0019】
【表1】

尚、表1に示す水分、灰分、揮発分、固定炭素分は、JIS M 8812によって定義されるものであり、具体的には下記の方法によって測定されるものである。
水分:250μm以下の粒径に粉砕した試料5gを107±2℃で恒量になるまで乾燥したときの減量。
灰分:試料1gを815±10℃で加熱灰化したときの残渣。
揮発分:試料1gを蓋付き白金ルツボにいれ900±20℃で7分間空気を遮断して加熱したときの減量から水分を除いたもの。
固定炭素分:固定炭素分[質量%]=100−(水分[質量%]+灰分[質量%]+揮発分[質量%])。
【0020】
次に、鉄スクラップ、冷銑、直接還元鉄などの冷鉄源を溶解精錬して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法におけるコークス代替ヤシガラ炭の具体的な使用方法について説明する。図1〜図3は、アーク炉において冷鉄源を溶解する際に本発明を実施している様子を示す概略図であり、図1は、冷鉄源の溶解初期の状態を示し、図2は、冷鉄源の溶け落ち直後の状態を示し、図3は、アーク炉製鋼プロセス末期の昇温完了後の溶鋼精錬期を示している。
【0021】
図1〜図3において、外殻を鉄皮として内部を耐火物で施工された炉本体2の周辺上部には、水冷構造で金属製の炉側壁3が配置され、この炉側壁3の上部開口部は、開閉自在で且つ水冷構造の金属製の炉蓋4で覆われている。そして、この炉蓋4を貫通して、炉本体2の内部まで上下移動が可能な3本の黒鉛製の電極5が設けられている。それぞれの電極5は3相交流電源(図示せず)に連結しており、電極5と電極5との間及び電極5と冷鉄源9や溶鋼10などの炉内装入物との間でアーク12を発生させるようになっている。
【0022】
また、炉側壁3を貫通して、炉本体2の内部まで上下移動が可能な、酸素ガス吹き込みランス6及び炭材吹き込みランス7が設けられ、酸素ガス吹き込みランス6からは酸素ガスが炉本体2の内部に吹き込まれ、そして、炭材吹き込みランス7からは空気や窒素ガスなどを搬送用ガスとして上記のコークス代替ヤシガラ炭が炉本体2の内部に吹き込まれるようになっている。炉蓋4にはダクト8が設けられ、炉内で発生する高温の排ガスはダクト8を介して集塵機(図示せず)に吸引され、また、炉本体2には出鋼口(図示せず)が設けられている。
【0023】
このように構成されるアーク炉1における製鋼プロセスのサイクルは、次のようにして行われる。
【0024】
先ず、冷鉄源9を、クレーンなどで吊られた供給バケット(図示せず)などから炉蓋4が開放されたアーク炉1の炉内に装入し(この期間を「原料装入期」と称す)、次いで、炉蓋4を閉じて電極5を炉内に挿入し、電極5と冷鉄源9との間にアーク12を発生させて、発生するアーク熱で冷鉄源9を溶解して溶鋼10を生成させる(この期間を「冷鉄源溶解期」と称す)。通常、溶鋼10が生成したなら、生石灰、蛍石などのフラックスを炉内に装入し、溶融スラグ11を溶鋼10の上に形成させ、溶鋼10の酸化を防止するとともに溶鋼10の保温を図ることが行われる。そして、炉内に装入した冷鉄源9の全量が溶け落ちたなら、生成した溶鋼10をアーク熱によって所定の温度まで昇温し(この期間を「昇温期」と称す)、所定温度までの昇温が完了した後は、溶鋼10の成分調整を行い(この期間を「精錬期」と称す)、その後、溶鋼10を出鋼口から溶鋼保持容器に出鋼し、出鋼後、必要に応じて溶融スラグ11をスラグポットなどに排出する(この期間を「出鋼・排滓期」と称す)。つまり、原料装入期、冷鉄源溶解期、昇温期、精錬期及び出鋼・排滓期を1サイクルとして、冷鉄源9から溶鋼10が製造される。
【0025】
本発明においては、この製鋼プロセスの冷鉄源溶解期、昇温期、精錬期に、コークス代替ヤシガラ炭を補助燃料または加炭材として使用することができる。
【0026】
冷鉄源溶解期には、図1に示すように、冷鉄源9の円滑な溶け落ちのために、炉内に堆積する冷鉄源9に向けて、酸素ガス吹き込みランス6から酸素ガスを吹き込むとともに、炭材吹き込みランス7からコークス代替ヤシガラ炭を吹き込む。冷鉄源9の一部は吹き込まれる酸素ガスにより酸化され、生成する酸化熱で加熱されて溶解する。酸素ガスとともにコークス代替ヤシガラ炭を吹き込むことにより、冷鉄源9の過度の酸化が抑制されるとともに、コークス代替ヤシガラ炭も酸化され、この酸化反応による発熱で冷鉄源9の溶解が促進される。また、コークス代替ヤシガラ炭による浸炭効果により、鋼中の炭素濃度が上昇し冷鉄源9の融点が低下することも冷鉄源9の溶解を促進させる。
【0027】
昇温期には、堆積する冷鉄源9が無くなることから、高温のアーク12が露出して大きな熱損失や炉本体2の側壁耐火物の損傷が懸念される。そこで、本発明では、冷鉄源溶解期において、溶鋼10が生成したなら、生石灰、蛍石などのフラックスを炉内に装入し、溶融スラグ11を形成させ、溶鋼10の酸化を防止するとともに溶鋼10の保温を図る。そして、昇温期には、図2に示すように、酸素ガス吹き込みランス6及び炭材吹き込みランス7の先端を溶融スラグ11に浸漬させ、酸素ガス吹き込みランス6からは酸素ガスを、また、炭材吹き込みランス7からはコークス代替ヤシガラ炭を溶融スラグ11に吹き込む。吹き込まれて溶融スラグ11に懸濁したコークス代替ヤシガラ炭と、吹き込まれる酸素ガスとが反応して燃焼熱を発生し、補助熱源として作用して電力使用量を節約するとともに、反応生成物のCOガスが溶融スラグ11を泡立たせるので、アーク12が泡立ちした溶融スラグ11に包まれてアーク12の着熱効率が上昇する。溶融スラグ11が泡立つ現象を「スラグのフォーミング」と称している。
【0028】
精錬期には、図3に示すように、コークス代替ヤシガラ炭のみを炭材吹き込みランス7から溶融スラグ11に吹き込む。これにより、溶融スラグ中の酸化鉄が還元されて、鉄分として溶鋼10に回収される。また、溶融スラグ中の酸化鉄の還元反応で生成するCOガスによって溶融スラグ11が泡立つので、前述した昇温期と同じようにアーク12が溶融スラグ11に包まれて、アーク12の着熱効率が上昇する。尚、コークス代替ヤシガラ炭を成分調整用の加炭材として使用する場合には、炭材吹き込みランス7の先端を溶鋼10に浸漬させ、コークス代替ヤシガラ炭を溶鋼中に吹き込み添加する。
【0029】
尚、冷鉄源溶解期、昇温期及び精錬期の全ての期間でコークス代替ヤシガラ炭を補助燃料または加炭材として使用する必要はなく、何れかの1つの期間のみで使用しても構わない。しかし、当然ながら、温室効果ガスの排出量を削減するという観点からは、粉コークス、オイルコークス、無煙炭などの化石燃料からなる炭材の全てをコークス代替ヤシガラ炭で代替することが好ましい。
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、アーク炉製鋼方法において、コークス代替ヤシガラ炭を、補助燃料または加炭材として使用するので、アーク炉1の操業に何ら悪影響を及ぼすことなく、従来のコークスなどの化石燃料からなる補助燃料または加炭材を使用した場合と全く変らずに冷鉄源9の溶解及び精錬が可能となる。その結果、コークスなどの化石燃料からなる補助燃料または加炭材の使用量を大幅に減少することができ、温室効果ガス排出量の大幅な削減が達成される。
【0031】
尚、本発明は上記説明の範囲に限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、アーク炉1が3相交流型であるが、炉本体の底部に設けられた下部電極と炉本体の内部を上下移動可能な上部電極とを有する直流型アーク炉であっても、上記説明に沿って本発明を適用することができる。また、酸素ガス吹き込みランス6及び炭材吹き込みランス7がそれぞれ1基のみであるが、それぞれ複数基配置してもよく、また、吹き込みランスを多重管構造として、酸素ガスとコークス代替ヤシガラ炭とを同一の吹き込みランスから吹き込むようにしてもよい。
【実施例1】
【0032】
図1に示すアーク炉において、鉄スクラップを溶解原料として溶鋼を製造する際に、表1に示すコークス代替ヤシガラ炭を用いて本発明を適用した。用いたアーク炉の炉容量は80トンである。
【0033】
アーク炉製鋼プロセスの冷鉄源溶解期及び昇温期に、コークス代替ヤシガラ炭を、炭材吹き込みランスを介して炉内に吹き込んだ。また、コークス代替ヤシガラ炭の吹き込みと同時に、酸素ガス吹き込みランスを介して酸素ガスを炉内に吹き込んだ。この場合、粉コークス、オイルコークス、無煙炭などの化石燃料からなる炭材は全く使用せずにアーク炉操業を実施した。その結果、コークス代替ヤシガラ炭の使用量は溶鋼1トン当たり28kgであったが、精錬上全く問題は無く、コークス代替ヤシガラ炭を化石燃料からなる炭材の代替として使用可能であることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】アーク炉において本発明を実施している様子を示す概略図であり、冷鉄源の溶解初期の状態を示す概略図である。
【図2】アーク炉において本発明を実施している様子を示す概略図であり、冷鉄源の溶け落ち直後の状態を示す概略図である。
【図3】アーク炉において本発明を実施している様子を示す概略図であり、昇温完了後の溶鋼の精錬期を示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 アーク炉
2 炉本体
3 炉側壁
4 炉蓋
5 電極
6 酸素ガス吹き込みランス
7 炭材吹き込みランス
8 ダクト
9 冷鉄源
10 溶鋼
11 溶融スラグ
12 アーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク炉で冷鉄源を溶解して溶鋼を製造するアーク炉製鋼方法において、ココナツヤシまたはアブラヤシのヤシガラを乾溜して得られる炭化物であって、無水ベースでのかさ密度が0.50トン/m3 以上で且つ無水ベースでの固定炭素分が75質量%以上である炭化物を、補助燃料または加炭材として使用することを特徴とするアーク炉製鋼方法。
【請求項2】
前記炭化物を、コークス、オイルコークス、無煙炭などの化石燃料からなる補助燃料または加炭材と置き換え使用し、温室効果ガスの発生量を削減することを特徴とする、請求項1に記載のアーク炉製鋼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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