説明

アーク防護用および防炎用のモダクリル/アラミド繊維混紡

アーク防護用および防炎用に適切な糸、布帛および衣服は、モダクリル、p−アラミドおよびm−アラミド繊維を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アークからの防護および防炎性を有する布帛の製造に有用な混紡糸に関する。本発明は、さらに、上記の布帛で製造される衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
通電中の電気設備付近で作業する人々や電気設備付近での事故に対応する救急隊員は、アーク事象により生じうる電気アークおよび火災危険のリスクに曝されている。電気アークは、通常数千ボルトおよび数千アンペアの電気を伴う非常に激しい事象である。電気アークは、2つの電極間の電位差(つまり、電圧)が、大気中の原子をイオン化させて、電気を伝導できるようになる場合に、大気中で形成される。
【0003】
特許文献1(イチボリ(Ichibori)ら)は、多量のアンチモン化合物を有するハロゲン含有繊維と天然繊維および化学繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の繊維を含んでなる難熱性複合繊維の混紡を開示する。布帛に織り込まれ、その耐炎性の指標として、その繊維混紡の限界酸素指数が試験される。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,208,105号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高レベルのアークからの防護および防炎性を有する糸(yarn)、布帛および衣服が、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)40〜70重量パーセントのモダクリル繊維、
(b)5〜20重量パーセントのp−アラミド繊維および
10〜40重量パーセントのm−アラミド繊維
含んでなり、前記パーセントが、成分(a)、(b)および(c)を基準とするアークからの防護および防炎性の布帛ならびに衣服用の糸に関する。
【0007】
さらに上記布帛および衣服により、破断開口(breakopen)に対する抵抗および耐摩耗性を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、アークからの防護と耐炎性の両方を提供する布帛および衣服を製造しうる糸を提供することに関する。引張強さが小さい耐炎性繊維を含んでなる布帛および衣服は、電気アークの強い熱応力に暴露される場合に、入射エネルギーが原因で、破断開口して、着用者をさらなる損傷に暴露しうる。電気アークは、通常、数千ボルトおよび数千アンペアの電流を伴う。電気アークは、発火からなどの入射エネルギーよりもかなり強い。着用者を防護するために、衣服または布帛は、着用者へのエネルギーの移動を阻害する必要がある。これは、一部の入射エネルギーを吸収する布帛と破断開口を阻止する布帛との両方により、生じると考えられている。破断開口される間に、布帛に穴が生じ、布帛の表面もしくは着用者を入射エネルギーに直接暴露する。
【0009】
本発明の糸、布帛および衣服は、電気アークの強い熱応力に暴露された場合、エネルギーの移動に抵抗する。本発明は、入射エネルギーの一部を吸収することによりエネルギー移動を低減し、炭化を介して透過エネルギーを減少させると考えられている。
【0010】
本発明の糸は、モダクリル繊維と、メタ−アラミド繊維と、パラ−アラミド繊維との混紡を含んでなる。典型的には、本発明の糸は、40〜70重量パーセントのモダクリル繊維と、5〜20重量パーセントのパラ−アラミド繊維と、10〜40パーセントのメタ−アラミド繊維とを含んでなる。好ましくは、本発明の糸は、55〜65重量パーセントのモダクリル繊維と、5〜15重量パーセントのパラ−アラミド繊維と、20〜30パーセントのメタ−アラミド繊維とを含んでなる。上記のパーセントは、上記3種の指定された成分を基準とする。さらに、向上した耐摩耗性を介して耐久性を改善するために、追加の耐摩耗性繊維を上記糸に加えてもよい。
【0011】
「糸」は、連続したストランドを形成するように、紡績されたまたは一緒に撚った繊維の集まりを意味し、それは、製織、製編、製紐、または組編に使用されることができ、或いは、織編生地もしくは布帛に作製されうる。
【0012】
モダクリル繊維は、主にアクリロニトリルを含んでなるポリマーから作製されるアクリル系合成繊維を意味する。該ポリマーは、30〜70重量パーセントのアクリロニトリルと70〜30重量パーセントのハロゲン含有のビニルモノマーとを含んでなるコポリマーであるのが好ましい。ハロゲン含有のビニルモノマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどから選択される少なくとも1種のモノマーである。共重合性ビニルモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、それらの酸の塩もしくはエステル、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
【0013】
本発明の好適なモダクリル繊維は、アクリロニトリルと塩化ビニリデンを組み合わせたコポリマーであり、該コポリマーは、改善された難熱性のために、さらに1種のまたは数種の酸化アンチモンを有する。上記の有用なモダクリル繊維として、2重量パーセントの三酸化アンチモンを有する米国特許第3,193,602号明細書に開示される繊維、少なくとも2重量パーセント、好ましくは8重量パーセント以下の量で存在する種々の酸化アンチモンで作製される米国特許第3,748,302号明細書に開示される繊維、および8〜40重量パーセントのアンチモン化合物を有する米国特許第5,208,105号明細書および同第5,506,042号明細書に開示される繊維が挙げられるが、それらに限定されない。
【0014】
本発明の糸の範囲内で、モダクリル繊維は、アンチモン誘導体でのドーピングのレベルに応じて、通常少なくとも28のLOI値を有する繊維を形成する耐炎性炭化物を提供する。モダクリル繊維は、炎への暴露が原因となる繊維への損傷の拡がりに抵抗する。モダクリル繊維は、優れた耐炎性であるが、電気アークに暴露された場合、破断開口に対する所望のレベルの抵抗を与えるための、糸またはその糸から作製された布帛に対する適切な引張強さをそれ自体提供しない。
【0015】
本明細書で使用される「アラミド」は、少なくとも85%のアミド結合(−CONH−)が、2個の芳香族環に直接結合するポリアミドを意味する。添加剤が、アラミドと一緒に使用されることが可能であり、実際、ほぼ10重量パーセントまでの他の高分子材料が、アラミドと混紡されることが可能であり、或いは、アラミドのジアミンで置換されたほぼ10パーセントの他のジアミン、またはアラミドの二酸クロリドで置換されたほぼ10パーセントの他の二酸クロリドを有するコポリマーを使用することが可能であることが判明されている。適切なアラミド繊維は、W.ブラックらの「人造繊維−科学と技術」2巻、章題 繊維形成芳香族ポリアミド、297頁(インターサイエンス・パブリッシャー、1968年)(Man−Made Fibers−Science and Technology,Volume 2,Section titled Fiber−Forming Aromatic Polyamides, page 297, W. Black et al.,Interscience Publishers,1968)に記載されている。アラミド繊維は、さらに、米国特許第4,172,938号明細書、同第3,869,429号明細書、同第3,819,587号明細書、同第3,673,143号明細書、同第3,354,127号明細書、および同第3,094,511号明細書に開示されている。M−アラミドは、アミド結合が互いに対してメタ位にあるアラミドであり、p−アラミドは、アミド結合が互いに対してパラ位にあるアラミドである。本発明の実施において、最も多く使用されるアラミドは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)およびポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。
【0016】
本発明の糸の範囲内で、m−アラミド繊維は、約26のLOI値を有する繊維を形成する耐炎性炭化物を提供しうる。M−アラミド繊維は、さらに、炎への暴露が原因となる繊維への損傷の拡がりに抵抗する。M−アラミド繊維は、さらに、本発明の糸を含んでなる繊維で形成される布帛に快適さを加える。
【0017】
M−アラミド繊維は、糸およびその糸で形成される布帛にさらなる引張強さを提供する。モダクリルおよびm−アラミド繊維の組み合わせは、優れた耐炎性であるが、電気アークに暴露された場合には、糸およびその糸で形成される布帛に、所望のレベルの破断開口に対する抵抗を与えるのに適切な引張強さを提供しない。
【0018】
本発明の糸の範囲内で、p−アラミド繊維は、適切な量で加えられた場合、その糸で形成される布帛の破断開口に対する抵抗を改善する、優れた引張強さの繊維を提供する。糸中の多量のp−アラミド繊維は、その糸を含んでなる衣服の着心地を悪くする。
【0019】
用語「引張強さ」は、破断もしくは破壊前に材料に印加される最大量の応力を意味する。引裂き強さは、布帛を引裂くのに必要な力の量である。一般的に、布帛の引張強さは、布帛がいかに容易に裂けるかまたは破れるかに関する。引張強さは、永続した伸張または変形を回避する布帛の能力に関する。布帛の引張強さおよび引裂き強さは、衣服の防護の意図されたレベルをかなり損なうほどの衣服の破れ、裂または永久的な歪を回避するために十分大きいのが望ましい。
【0020】
さらに、耐摩耗性繊維を上記糸に加えて、向上した耐摩耗性を介して耐久性を改善してもよい。耐摩耗性は、表面研削および摩耗に耐性がある繊維または布帛の能力を意味する。耐摩耗性繊維は、ナイロンであるのが好ましい。ナイロンとは、脂肪族ポリアミドポリマーから作られる繊維を意味し、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)は、好適なナイロンポリマーである。他のナイロン(例、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリブチロラクタム(ナイロン4)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリエナントラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)など)は、適切である。
【0021】
耐摩耗性繊維は、通常、上記糸の2〜15重量パーセントを含んでなる。2重量パーセント未満の耐摩耗性繊維を含有する糸は、耐摩耗性において、際立った改善を示さない。15重量パーセントを超過して耐摩耗性繊維を含有する糸は、糸およびその糸で形成される布帛の耐炎性およびアークからの防護性が低下する。
【0022】
さらに、本発明の糸、布帛、または衣服に帯電防止成分を加えてもよい。実例としては、スチール繊維、炭素繊維、または既存の繊維への炭素被覆である。炭素または金属(例、スチールなど)の伝導性は、本発明の糸、布帛、または衣服に組み込まれた場合、静電気の連続的発生の防止を助けるために、電気管路を提供する。静電気放電は、高感度の電気設備で作業する作業者、或いは可燃性蒸気の付近で作業する作業者にとって、危険となりうる。帯電防止成分は、糸全体の1〜5重量パーセントの量で存在してもよい。
【0023】
本発明の糸は、当技術分野で一般的に知られている任意の紡糸技術、例えば、これに限定されないが、リング精紡、芯紡糸、およびエアジェット紡糸またはより高度な空気精紡技術(例、ステープルファイバーを糸に撚るために空気を用いる村田エアジェット精紡機など)により、製造されうる。通常、任意の一般的な技術により製造される単糸は、布帛に変えられる前に、少なくとも2本の単糸を含んでなる諸撚糸を形成するように、一緒に諸撚される。
【0024】
電気アークにより生じる強い熱応力からの防護を提供するために、耐アーク性布帛およびその布帛から成形される衣服は、防護層の下の表面に直接衝突する入射エネルギーを防ぐように、耐炎性に関して大気中の酸素濃度を越えるLOI値、布帛への損傷の拡大が遅いことを示す短い炭化長、良好な破断開口に対する抵抗などの特質を有する。
【0025】
消防士の防火服などの耐熱性衣服は、典型的に、裸火によって生じる対流熱に対する防護を提供する。上記の耐熱性衣服は、電気アークにより生じる強いエネルギーに暴露された場合に、破断開口して(つまり、布帛に開口部が生じる)、エネルギーが衣服に入り込み、着用者に重篤な損傷をもたらす結果となる。本発明の布帛は、好ましいことに、電気アークに暴露された場合に、裸火の対流熱に対する防護と、引裂およびエネルギー移動に対する増強された抵抗の両方を提供する。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される用語「布帛」は、製織された、製編された、または1種もしくはそれ以上の別の種類の本発明の糸を用いて組み立てられた所望の防護層を意味する。本発明の布帛が、織布であるのが好ましい。本発明の布帛が、綾織であるのが最も好ましい。
【0027】
坪量は、単位面積当りの布帛の重量の測定単位である。典型的な単位として、オンス/平方ヤード、およびグラム/平方センチメートルが挙げられる。本明細書に記載される坪量は、オンス/平方ヤード(OPSY)である。単位面積当りの布帛の量が増加するにしたがって、潜在的危険と被保護物体との間の物質の量が増加する。物質の坪量の増加は、防護性能の対応する増加が観察されることを示唆する。本発明の布帛の坪量の増加の結果として、破断開口に対する抵抗、耐熱性要素、および耐アーク性が増強されることになる。本発明の布帛の坪量は、通常約8.0opsyより大きく、好ましくは約8.7opsyより大きく、最も好ましくは約9.5opsyより大きい。約12opsyより大きい坪量を有する本発明の布帛は、増大した剛さを示すので、このような布帛から製造された衣服の快適さを低下させるだろうと考えられている。
【0028】
炭化長は、編織布の耐炎性の指標である。炭化物は、熱分解または不完全燃焼が原因で生成される炭素質残留物と定義される。本明細書に記載されるASTM 6413−99試験の条件下での布帛の炭化長は、炎に直接暴露される布帛端から、規定の引裂力が印加された後の可視できる布帛の損傷の最も遠い点までの距離と定義される。好ましいことに、本発明の布帛は、6インチ未満の炭化長を有する。
【0029】
本発明の布帛は、単層防護用衣服としてまたは多層防護用衣服の部分として使用されうる。本明細書の範囲内で、布帛の防護に関する評価は、その布帛の単層に関して、記載されている。本発明には、さらに、本発明の布帛で作製された衣服も含まれる。
【0030】
本発明の糸は、布帛のたて糸かよこ糸のいずれかに存在しうる。本発明の糸が、結果として形成される布帛のたて糸とよこ糸の両方に存在するのが好ましい。本発明の糸が、布帛のたて糸とよこ糸の両方に専ら存在するのが最も好ましい。
【0031】
試験方法
摩耗試験
ASTM D−3884−01「編織布の耐摩耗性に関する標準指針(Standard Guide for Abrasion Resistance of Textile Fabrics)(ロータリー・プラットホーム、ダブルヘッド法)(Rotary Platform、Double Head Method)」に基づいて、本発明の布帛の耐摩耗性の性能を検定する。
【0032】
耐アーク性試験
ASTM F−1959−99「布用材料のアーク熱性能値を測定するための標準試験法(Standard Test Method for Determining the Arc Thermal Performance Value of Materials for Clothing)」に基づいて、本発明の布帛の耐アーク性を測定する。本発明の布帛は、少なくとも0.8カロリー/平方センチメートル/opsyの耐アーク性を有するのが好ましく、少なくとも1.2カロリー/平方センチメートル/opsyを有するのがさらに好ましい。
【0033】
掴み試験(Grab Test)
ASTM D−5034−95「布帛の破断強度および伸び率に関する標準試験法(Standard Test Method for Breaking Strength and Elongation of Fabrics)(掴み試験)」に基づいて、本発明の布帛の掴み抵抗を測定する。
【0034】
限界酸素指数試験
ASTM G−125−00「気体酸化剤における液体および固体物質の燃焼限界を測定するための標準試験法(Standard Test Method for Measuring Liquid and Solid Material Fire Limits in Gaseous Oxidants)」に基づいて、本発明の布帛の限界酸素指数(LOI値)を測定する。
【0035】
引裂試験
ASTM D−5587−03「トラペゾイド法による布帛の引裂に関する標準試験法(Standard Test Method for Tearing of Fabrics by Trapezoid Procedure)」に基づいて、本発明の布帛の引裂抵抗を測定する。
【0036】
耐熱性能試験
NFPA 2112「引火火災に対する業務職員の保護のための耐炎性衣服に関する基準(Standard on Flame Resistant Garments for Protection of Industrial Personnel Against Flash Fire)」に基づいて、本発明の布帛の耐熱性能を検定する。
【0037】
垂直燃焼試験
ASTM D−6413−99「編織布の耐炎性に関する標準試験法(垂直法)(Standard Test Method for Flame Resistance of Textiles(Vertical Method))に基づいて、本発明の布帛の炭化長を測定する。
【0038】
用語「耐熱性能(もしくはTPP)は、布帛が高温直火もしくは放射熱に暴露される場合、布帛の真下の着用者の皮膚に継続的でかつ確かな防護を提供する布帛の能力に関する。
【0039】
LOI値
ASTM G125/D2863から
酸素の最小濃度は、ASTM D2863の条件下、室温で、材料の燃焼を初期に燃え上がらせるのをまさに支援する酸素と窒素の混合物中における容量パーセントとして、表される。
【0040】
本発明を例証するために、以下の実施例を提供する。特に明記しない限り、全ての部およびパーセントは、重量部および重量パーセントであり、温度は、摂氏である。
【実施例】
【0041】
モダクリル/アラミド/ナイロン布帛
実施例1
ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、モダクリルと、ナイロンとの密接混紡のリング紡績糸のたて糸とよこ糸の両方に有する耐熱性および耐久性布帛を調製した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450は、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)であり、モダクリルは、6.8%のアンチモンを有するACN/ポリ塩化ビニリデンコポリマー(プロテックス(Protex)(登録商標)Cとして周知)であり、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29は、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)であり、および使用されたナイロンは、ポリヘキサメチレンアジパミドであった。
【0042】
30重量%のノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、5重量%のケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、50重量%のモダクリルと、15重量%のナイロンとのピッカー混紡スライバを調製し、リング精紡機を用いて、従来型の綿システムにより、3.7倍の撚りを有する紡績糸に加工した。上記の如く作製した糸は、24.6テックス(24綿番手)単糸であった。次に合糸機上で2本の単糸を撚り合せ、双糸を作製した。同様の方法と同一の撚りおよび混紡率を用いて、よこ糸に使用するために、28.1テックス(21綿番手)糸を作製した。次に、その糸を2本撚り合せて、合糸を作製した。
【0043】
ノーメックス(Nomex)(登録商標)/ケブラー(Kevlar)(登録商標)/モダクリル/ナイロン糸をたて糸とよこ糸として、シャトル織機において3×1の綾織構造で使用した。その綾織物は、1cm当り26エンド×17ピック(1インチ当り66エンド×42ピック)の構造、240.7g/m(7.1oz/yd)の坪量を有した。上記の如く調製した綾織物を温水中で精錬し、低張力下で乾燥させた。次に、塩基性染料を用いて、精錬した布帛をジェット染色した。次に、仕上がった布帛311.9g/m(9.2oz/yd)を、その熱特性および機械的特性により、試験する。
【0044】
実施例2
ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、モダクリルと、ナイロンとの密接混紡のリング紡績糸のたて糸とよこ糸の両方に有する耐熱性および耐久性布帛を調製した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450は、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)であり、モダクリルは、6.8%のアンチモンを有するACN/ポリ塩化ビニリデンコポリマー(プロテックス(Protex)(登録商標)Cとして周知)であり、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29は、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)であり、および使用されたナイロンは、ポリヘキサメチレンアジパミドであった。
【0045】
25重量%のノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、5重量%のケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、60重量%のモダクリルと、10重量%のナイロンとのピッカー混紡スライバを調製し、リング精紡機を用いて、従来型の綿システムにより、3.7倍の撚りを有する紡績糸に加工した。上記の如く作製した糸は、21.1テックス(28綿番手)単糸であった。次に合糸機上で2本の単糸を撚り合せ、双糸を作製した。同様の方法と同一の撚りおよび混紡率を用いて、よこ糸に使用するために、22.7テックス(26綿番手)糸を作製した。次に、その糸を2本撚り合せて、合糸を作製した。
【0046】
ノーメックス(Nomex)(登録商標)/ケブラー(Kevlar)(登録商標)/モダクリル/ナイロン糸をたて糸とよこ糸として、シャトル織機において3×1の綾織構造で使用した。その綾織物は、1cm当り27エンド×21ピック(1インチ当り68エンド×52ピック)の構造、223.7g/m(6.9oz/yd)の坪量を有した。上記の如く調製した綾織物を温水中で精錬し、低張力下で乾燥させた。次に、塩基性染料を用いて、精錬した布帛をジェット染色した。次に、仕上がった布帛294.9g/m(8.7oz/yd)を、その熱特性および機械的特性により、試験する。
【0047】
実施例3
ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプN303と、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、モダクリルと、ナイロンとの密接混紡のリング紡績糸のたて糸とよこ糸の両方に有する耐熱性および耐久性布帛を調製した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプN303は、92%のポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)、5%のケブラー(Kevlar)(登録商標)29および3%のP140(帯電防止のために炭素で被覆したナイロン)であり、モダクリルは、2%のアンチモンを有するACN/ポリ塩化ビニリデンコポリマーであり、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29は、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)であり、および使用されたナイロンは、ポリヘキサメチレンアジパミドであった。
【0048】
20重量%のノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、10重量%のケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、60重量%のモダクリルと、10重量%のナイロンとのピッカー混紡スライバを調製し、リング精紡機を用いて、従来型の綿システムにより、3.7倍の撚りを有する紡績糸に加工した。上記の如く作製した糸は、24.6テックス(24綿番手)単糸であった。次に合糸機上で2本の単糸を撚り合せ、双糸を作製した。同様の方法と同一の撚りおよび混紡率を用いて、よこ糸に使用するために、28.1テックス(21綿番手)糸を作製した。次に、その糸を2本撚り合せて、合糸を作製した。
【0049】
ノーメックス(Nomex)(登録商標)/ケブラー(Kevlar)(登録商標)/モダクリル/綿糸をたて糸として、ノーメックス(Nomex)(登録商標)/モダクリル糸をよこ糸として、シャトル織機において3×1の綾織構造で使用した。その綾織物は、1cm当り27エンド×17ピック(1インチ当り68エンド×42ピック)の構造、244.1g/m(7.2oz/yd)の坪量を有した。上記の如く調製した綾織物を温水中で精錬し、低張力下で乾燥させた。次に、塩基性染料を用いて、精錬した布帛をジェット染色した。次に、仕上がった布帛325.4g/m(9.6oz/yd)を、その熱特性および機械的特性により、試験する。
【0050】
実施例4
ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、モダクリルと、ナイロンとの密接混紡のリング紡績糸のたて糸とよこ糸の両方に有する耐熱性および耐久性布帛を調製した。ノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450は、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)であり、モダクリルは、15%のアンチモンを有するACN/ポリ塩化ビニリデンコポリマー(プロテックス(Protex)(登録商標)Mとして周知)であり、ケブラー(Kevlar)(登録商標)29は、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)であり、および使用されたナイロンは、ポリヘキサメチレンアジパミドであった。
【0051】
25重量%のノーメックス(Nomex)(登録商標)タイプ450と、10重量%のケブラー(Kevlar)(登録商標)29と、60重量%のモダクリルと、5重量%のナイロンとのピッカー混紡スライバを調製し、リング精紡機を用いて、従来型の綿システムにより、3.7倍の撚りを有する紡績糸に加工した。次に合糸機上で2本の単糸を撚り合せ、双糸を作製した。
【0052】
ノーメックス(Nomex)(登録商標)/ケブラー(Kevlar)(登録商標)/モダクリル/ナイロン糸をたて糸とよこ糸として、シャトル織機において3×1の綾織構造で使用した。上記の如く調製した綾織物を温水中で精錬し、低張力下で乾燥させた。次に、塩基性染料を用いて、精錬した布帛をジェット染色した。次に、仕上がった布帛295g/m(8.7oz/yd)を、その熱特性および機械的特性により、試験する。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)40〜70重量パーセントのモダクリル繊維、
(b)5〜20重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)10〜40重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなり、前記パーセントが、成分(a)(b)および(c)を基準とするアーク防護用および防炎用の糸。
【請求項2】
(a)55〜65重量パーセントのモダクリル繊維、
(b)5〜15重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)20〜35重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなる請求項1に記載の糸。
【請求項3】
さらに(d)耐摩耗性繊維を含有する請求項1に記載の糸。
【請求項4】
耐摩耗性繊維が、成分(a)、(b)、(c)および(d)を基準として、2〜15重量パーセントの量で存在する請求項3に記載の糸。
【請求項5】
耐摩耗性繊維が、ナイロンである請求項3に記載の糸。
【請求項6】
さらに帯電防止成分を含有する請求項1に記載の糸。
【請求項7】
帯電防止成分が、糸全体の1〜5重量パーセントの量で存在する請求項6に記載の糸。
【請求項8】
帯電防止成分が、炭素もしくは金属繊維を含んでなる請求項6に記載の糸。
【請求項9】
帯電防止成分が、炭素を含んでなる請求項8に記載の糸。
【請求項10】
糸を含んでなるアーク防護用および防炎用に適切な布帛であって、
糸が、さらに、
(a)40〜70重量パーセントのモダクリル繊維
(b)5〜20重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)10〜40重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなり、前記パーセントが、成分(a)(b)および(c)を基準とする布帛。
【請求項11】
糸が
(a)55〜65重量パーセントのモダクリル繊維
(b)5〜15重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)20〜35重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなる請求項10に記載の布帛。
【請求項12】
さらに(d)耐摩耗性繊維を含んでなる請求項10に記載の布帛。
【請求項13】
耐摩耗性繊維が、成分(a)、(b)、(c)および(d)を基準として、2〜15重量パーセントの量で存在する請求項12に記載の布帛。
【請求項14】
耐摩耗性繊維が、ナイロンである請求項12に記載の布帛。
【請求項15】
さらに帯電防止成分を含有する請求項10に記載の布帛。
【請求項16】
6インチ未満のASTM D−6413−99に基づいた炭化長を有する請求項10に記載の布帛。
【請求項17】
少なくとも0.8カロリー/平方センチメートル/opsyのASTM F−1959−99に基づいた耐アーク性を有する請求項10に記載の布帛。
【請求項18】
耐アーク性が、少なくとも1.2カロリー/平方センチメートル/opsyである請求項17に記載の布帛。
【請求項19】
(a)40〜70重量パーセントのモダクリル繊維
(b)5〜20重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)10〜40重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなり、前記パーセントが、成分(a)(b)および(c)を基準とする、アーク防護用および防炎用に適切な衣服。
【請求項20】
(a)55〜65重量パーセントのモダクリル繊維
(b)5〜15重量パーセントのp−アラミド繊維および
(c)20〜35重量パーセントのm−アラミド繊維
を含んでなる請求項19に記載の衣服。
【請求項21】
さらに耐摩耗性繊維を含有する請求項19に記載の衣服。
【請求項22】
さらに帯電防止成分を含有する請求項19に記載の衣服。


【公表番号】特表2007−529648(P2007−529648A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504100(P2007−504100)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008884
【国際公開番号】WO2005/090661
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】