説明

アース端子

【課題】自動車のボディパネルにボルト等を用いずに取付けが可能で、強い押圧力によって確実な電気的接触を得ることができるアース端子を提供する。
【解決手段】アース端子1は、ソケット体11と、このソケット体11に装着可能な二重ロック体12と、を備える。ソケット体11は、金属製の本体15と、バレル部17と、フランジ部18と、脚部19と、を備える。本体15には、差込孔16が形成される。バレル部17には、アース線93が接続される。フランジ部18は、ボディパネル91に接触可能に構成されている。脚部19には、ボディパネル91に係止可能な爪20が形成される。そして、アース端子1は、ソケット体11を取付孔92に挿入した状態で差込孔16に二重ロック体12を差し込むことで、当該二重ロック体12が脚部19を前記取付孔92の内壁へ向けて押圧するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の金属製のボディパネルにアース線を電気的に接続するためのアース端子の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディにアース線を接続する場合、アース線の先端に固定されたアース端子を、ボディの金属パネルに設けられた透孔にボルトとナットで取り付けたり、タッピングネジによってボディに直接ネジ込んで取り付けたりする方法が一般的に知られている。しかし、このような構成では、自動車の解体時等においてアース端子の取外しのためにボルト等の回転操作が必要になり、作業性の低下を招いてしまう。
【0003】
この点、ボルトを必要としないアース接続端子として、アース端子に可撓片を設けて嵌合穴に弾性的に係止するもの(特許文献1)や、ハーネス取付用のクランプによって押圧するもの(特許文献2)等が提案されている。
【特許文献1】特開2004−207077号公報
【特許文献2】特開2006−261012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成は、端子の金属板の曲げ部分の弾性のみで係止されるため、押圧力が不十分となり易く、電気的接触の確実性の点で改善の余地が残されていた。一方、特許文献2の構成は、樹脂製のクランプによって上下方向に押圧しているためにその方向での押圧力は向上するものの、左右方向は金属板の曲げ部分の係止によるためにズレが生じ易く、特許文献1と同様に電気的接触が不確実になるおそれがあった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、自動車のボディパネルにボルト等を用いずに取付けが可能で、強い押圧力によって確実な電気的接触を得ることができるアース端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成のアース端子が提供される。即ち、このアース端子は、自動車の金属製のボディパネルに形成された取付孔に取り付けることで、アース線を前記ボディパネルに電気的に接続することが可能に構成されている。前記アース端子は、ベース部と、プラグ部と、を備える。前記プラグ部は、前記ベース部に装着可能に構成されている。前記ベース部は、金属製の本体と、バレル部と、突出部と、ロック部と、を備える。前記本体には、差込孔が形成される。前記バレル部には、前記アース線が接続される。前記突出部は、前記ボディパネルに接触可能である。前記ロック部には、前記ボディパネルに係止可能な爪が形成される。そして、前記ベース部を前記取付孔に挿入した状態で前記差込孔に前記プラグ部を差し込むことで、当該プラグ部が前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けて押圧する。
【0008】
この構成により、差込孔にプラグ部を差し込むことでロック部を取付孔の内壁に向けて押圧するので、取付孔の内壁に対する押圧力を増加させることができ、保持力が向上するとともに電気的接触を安定させることができる。
【0009】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記突出部は弾性変形可能であるとともに、先端側へ行くに従って前記アース端子の差込方向の先端側へ近づくように傾斜して設けられている。前記突出部の先端と前記爪との距離が、前記取付孔の部分における前記ボディパネルの板厚よりも小さい。
【0010】
この構成により、ベース部が取付孔に装着されるときに突出部の先端がボディパネルに押されて弾性変形する形となり、当該突出部の復元力によって、突出部と爪との間にボディパネルを板厚方向にクランプする形となる。従って、前記プラグ部によるロック部の押圧ともあいまって、アース端子の保持力が著しく向上するとともに、電気的接触を更に安定させることができる。
【0011】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記本体は、前記取付孔の形状に対応して多角形状に形成される。前記ロック部は、前記本体がなす多角形のそれぞれの辺に対応して備えられる。前記プラグ部は、それぞれの前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けて押圧可能に構成されている。
【0012】
この構成により、多角形状の取付孔において向きが異なるように形成される内壁の壁面に対し、ロック部をそれぞれ押圧させることができる。従って、様々な方向の外力に対してアース端子を良好に保持できるとともに、電気的接触を更に安定させることができる。また、多角形の形状にすることにより、アース端子の回転を防止することができる。
【0013】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ベース部は、折り曲げられた板金により構成される。前記バレル部、前記突出部及び前記ロック部が前記本体に一体的に形成されている。
【0014】
この構成により、製造コストを低減できるとともに、板厚や曲げRの調整等によって、ベース部の各部分に好適な弾性を付与することが容易になる。また、バレル部及びロック部を含めた各部が一体的に形成されているので、電気的接続の信頼性に優れる。
【0015】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記プラグ部は、弾性変形可能な押圧部を備える。前記押圧部は、弾性変形した状態で前記差込孔に挿入されることで、その復元力によって前記ロック部を外側へ押圧する。
【0016】
この構成により、ロック部を常時押圧することができるので、電気的接触の安定性が向上する。また、プラグ部自体が有する弾性によってロック部を取付孔の内壁に押圧することができるので、簡素な構成を実現できる。
【0017】
前記のアース端子においては、前記押圧部には、前記ロック部に係止することで前記プラグ部の抜けを防止可能な規制爪が形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成により、プラグ部のベース部からの抜けを規制できるので、アース端子の意図に反する脱落を確実に防止できる。
【0019】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ベース部は、前記差込孔の内側に配置された抜止め部を備える。前記プラグ部は、前記差込孔に嵌合する位置より抜け側の位置において前記規制爪が前記抜止め部に接触し、これによって当該プラグ部の前記差込孔からの離脱が阻止される。
【0020】
この構成により、ベース部とプラグ部がバラバラになることを防止し、一体的に取り扱うことができる。従って、管理の手間を低減できるとともに作業性を向上することができる。
【0021】
前記のアース端子においては、前記ロック部及び押圧部が平板状に形成されていることが好ましい。
【0022】
この構成により、ロック部と取付孔との接触面積を大きく確保できるとともに、そのロック部が平板状の押圧部によって広い面積で押圧されるので、電気的接触の安定性を更に向上させることができる。
【0023】
前記のアース端子においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ベース部を前記取付孔の位置に合わせた状態で、前記ベース部の前記差込孔に組み付けられている前記プラグ部が押されると、前記ロック部が前記取付孔に挿入されて前記爪が前記ボディパネルに係止される。その後に、前記プラグ部が前記差込孔に押し込まれて、前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けてより強力に押圧する。
【0024】
この構成により、プラグ部を押すという1回の簡単な操作によって、ロック部の爪の係止とプラグ部によるロック部の押圧という2段階の動作が連続的に行われ、アース端子の取付孔への取付けが完了する。これにより、極めて良好な作業性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るアース端子1を自動車のボディパネル91に取り付ける様子を示した斜視図である。図2はアース端子1の分解斜視図である。図3はソケット体11が取付孔92に挿入された状態の斜視図、図4は二重ロック体12を挿入して取付けが完了した状態の斜視図である。図5は、ソケット体11に用いられる板金41の折曲げ加工前の状態を示す平面図である。
【0026】
図1に示す本実施形態のアース端子1は、自動車の金属製のボディパネル91に貫通状に形成された矩形の取付孔92に取り付けることで、アース線93をボディパネル91に電気的に接続できるように構成されている。
【0027】
アース端子1は、ソケット体(ベース部)11と、このソケット体11に装着されている二重ロック体(プラグ部)12と、を備えている。以下、図1及び図2を参照して、各部の構成を詳細に説明する。
【0028】
ソケット体11について説明する。このソケット体11は、前記取付孔92の形状と対応するように矩形状に形成された本体15を備える。この本体15は、導電性及び弾性を有する金属板によって枠状に構成されている。また、この本体15には矩形状の開口部を有する差込孔16が形成されており、この差込孔16に前記二重ロック体12を挿入できるようになっている。
【0029】
この本体15にはバレル部17が一体的に形成されている。このバレル部17は、図2に示すように、本体15がなす矩形の4辺のうち、1辺の中央から外側に突出するように備えられている。また、バレル部17には前記アース線93を圧着により固定できるように構成されている。
【0030】
前記本体15には、当該本体15の外側の縁に沿うようにしてフランジ部(突出部)18が形成されている。このフランジ部18は平板状に形成されるとともに、本体15がなす矩形のそれぞれの辺から外側へ延びるように形成されている。
【0031】
このフランジ部18は、その先端側(外側)に近づくに従って、アース端子1の取付孔92への差込方向(図1の矢印で示す方向。以下、単に差込方向と称する)の先端側へ近づくように、若干傾いた向きに設けられている。従って、ソケット体11を取付孔92に取り付けたときに、フランジ部18の先端部が当該取付孔92の開口の周囲においてボディパネル91に接触できるように構成されている。
【0032】
図2に示すように、前記本体15には、4つの脚部(ロック部)19が一体的に形成されている。それぞれの脚部19は台形平板状に形成されるとともに、前記本体15がなす矩形のそれぞれの辺から、ほぼ差込方向に沿って延出するように設けられている。脚部19のそれぞれは先細状に形成されるとともに、当該脚部19の先端は適宜の幅だけ折り曲げられ、外側に向けて突出する爪20が設けられている。
【0033】
また、前記本体15には、平板状の抜止め爪(抜止め部)21が一体的に形成されている。この抜止め爪21は、本体15がなす矩形の各辺の中央から、差込孔16の開口の中央に向けて突出するように形成されている。この抜止め爪21は、前記二重ロック体12がソケット体11から離脱しないように阻止するためのものである。
【0034】
二重ロック体12について説明する。この二重ロック体12は、合成樹脂で適宜の形状に射出成形することで構成されている。この二重ロック体12は、矩形状に構成された胴部31と、胴部31に一体的に形成された4つの押圧脚部(押圧部)32と、を備えている。
【0035】
胴部31は、前記差込孔16とほぼ同じ形状を有するように構成されている。また、胴部31において前記差込方向と反対側の面には、平坦な操作面33が形成されている。
【0036】
押圧脚部32は平板状に形成され、前記胴部31が有する矩形の輪郭の各辺から、ほぼ差込方向に沿って延びるように設けられている。この押圧脚部32は、前記ソケット体11の脚部19よりも大きい厚みを有するように構成されている。
【0037】
それぞれの押圧脚部32には、貫通状の凹陥部34が形成されている。この凹陥部34は、前記矩形の各辺の中央部に相当する部分に配置されるとともに、前記押圧脚部32の延出方向ほぼ全域にわたって形成されている。この凹陥部34には、前記ソケット体11の抜止め爪21を挿入可能に構成されている。
【0038】
更に、それぞれの押圧脚部32の先端部には規制爪35が形成されている。この規制爪35は外側に向かって突出するように構成されており、前記ソケット体11の脚部19の先端に係止できるようになっている。
【0039】
以上の構成で、前記二重ロック体12をソケット体11の差込孔16に差し込むことで、図1に示すアース端子1が完成する。
【0040】
なお、ボディパネル91の取付孔92に装着する前の段階では、図1に示すように、二重ロック体12は差込孔16の奥まで完全に差し込まれた状態ではなく、若干抜けている状態(半嵌合状態)となっている。
【0041】
また、この半嵌合状態では、二重ロック体12の前記凹陥部34に抜止め爪21が差し込まれた状態となっている。従って、何らかの外力が加わって二重ロック体12が差込孔16から引き抜かれようとした場合でも、抜止め爪21が凹陥部34の縁(具体的には、前記規制爪35)に接触することで、二重ロック体12のソケット体11からの離脱を阻止できるようになっている。これにより、部品がバラバラになることを防止して一体的に取り扱うことができるので、管理の手間を低減できるとともに作業性を向上することができる。
【0042】
また、前記ソケット体11は、二重ロック体12が取り付けられる前の状態(図2)では、前記脚部19の向きが厳密には前記差込方向に平行ではなく、先端が内側に窄まるように若干傾くように構成されている。一方、二重ロック体12においては逆に、押圧脚部32の向きは、その先端が外側に広がるように若干傾いた向きとなっている。
【0043】
従って、図1に示す半嵌合状態では、二重ロック体12が備えるそれぞれの押圧脚部32は、内側に若干曲げられるように弾性変形された状態で、ソケット体11の差込孔16に挿入される。この状態では、押圧脚部32はその復元力によって外側に戻ろうとするので、押圧脚部32の先端部(規制爪35)がソケット体11の脚部19を内側から押圧し、脚部19は外側に若干変形する。この結果、ソケット体11において矩形の対辺に位置する脚部19同士の爪20の間隔が拡げられ、爪20が取付孔92に係止できる状態になる。
【0044】
次に、このアース端子1を取付孔92に取り付ける作業について説明する。即ち、最初に、アース端子1のソケット体11の位置を図1に示すように取付孔92に合わせた上で、当該アース端子1を取付孔92へ図1の矢印の方向に押し込む。
【0045】
この結果、ソケット体11の爪20が取付孔92に差し込まれて、当該爪20は、脚部19を内側に若干弾性変形させるようにしながら取付孔92の内壁を乗り越える。なお、このときも二重ロック体12の押圧脚部32は脚部19を外側へ押圧しているが、脚部19を押圧するのは押圧脚部32の先端部(規制爪35)であるので、その押圧力は比較的弱い。また、爪20を形成するために脚部19の先端は90°を上回る角度で折り曲げられているので、脚部19の先端に外向きの斜面が形成され、この斜面によって爪20は大きな抵抗を生ずることなく取付孔92の内部をスムーズに通過することができる。
【0046】
なお、組立作業者としては、ソケット体11を取付孔92に挿入するためには、二重ロック体12の操作面33を指で押圧するだけで良い。即ち、上述のとおりソケット体11は取付孔92に小さな力で挿入できるので、組立作業者は二重ロック体12を押すだけで、当該二重ロック体12(押圧脚部32)とソケット体11との間の摩擦力によってソケット体11を取付孔92に装着することができる。
【0047】
なお、前記爪20の先端と前記フランジ部18の先端との距離Lは、取付孔92におけるボディパネル91の板厚Tよりも若干小さく構成されている(L<T)。従って、爪20が取付孔92を完全に通過する前の段階で、フランジ部18の先端が取付孔92の開口の周縁部に接触し、その後は、ソケット体11の差込みに伴ってフランジ部18が弾性変形することになる。
【0048】
ソケット体11の爪20が取付孔92の内壁を完全に乗り越えた状態が図3に示される。この状態では、上述のように弾性変形しているフランジ部18の復元力により、ソケット体11には引抜き方向の力が作用するが、この引抜きは、ボディパネル91の反対側における前記爪20の係止によって阻止される。言い換えれば、フランジ部18の弾性力によって、当該フランジ部18と爪20との間でボディパネル91を板厚方向にクランプするような状態となっている。
【0049】
また、図3のようにソケット体11がボディパネル91に係止された状態でも、前記二重ロック体12は差込孔16の奥まで完全に差し込まれた状態ではなく、若干抜けている状態(半嵌合状態)を維持している。
【0050】
この状態で、組立作業者は、操作面33への指での押圧を更に継続する。すると、二重ロック体12がソケット体11に対して相対的に押し込まれて、前記押圧脚部32の先端の規制爪35が前記脚部19の内面を乗り越え、図4の状態になる。
【0051】
この図4の状態(ロック状態)では、二重ロック体12の前記規制爪35がソケット体11の脚部19の先端に係止することで、当該二重ロック体12の離脱が防止される。また、この状態では、押圧脚部32がその復元力によって、平板状の脚部19を外側(即ち、取付孔92の内壁)に向けて押圧する。
【0052】
なお、前記二重ロック体12は、ソケット体11の素材(金属板)よりも変形しにくい素材である樹脂により構成されるとともに、前記押圧脚部32はソケット体11の脚部19よりも大きな厚みを有するように形成されている。更に、このロック状態では前記半嵌合状態と比較して、前記脚部19には押圧脚部32の根元側が対面するので、脚部19は押圧脚部32によって強力に押圧される。従って、前述のフランジ部18と爪20によるクランプ効果と併せ、ソケット体11はボディパネル91に対し3方向に押圧されるとともに、前記脚部19は内壁に向かって強く押し付けられることになる。これにより、アース端子1の保持力と電気的接触の安定性の向上が実現される。
【0053】
また、押圧脚部32は、前記爪20が外れるのを阻止する向きに脚部19を押圧するので、二重ロックが実現され、ソケット体11の抜けを確実に防止することができる。
【0054】
なお、前記ソケット体11は、図5に示すように打ち抜いた板金41を折曲げ加工することにより製造されている。具体的には、図5のように切込みを形成しつつ1枚の金属板を打ち抜いた後、板金41を鎖線で示す箇所で折り曲げることで、本体15にバレル部17、フランジ部18、脚部19、爪20及び抜止め爪21を一体的に形成したソケット体11を得ることができる。
【0055】
このように、金属板の板金加工によってソケット体11を形成することにより、製造コストを安価にできるとともに、各部を一体的に形成することで電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、板金41の板厚や折曲げ時の曲げRの調整等によって、脚部19やフランジ部18として使用するのに好適な弾性を持たせることが容易になる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態のアース端子1は、自動車の金属製のボディパネル91に形成された取付孔92に取り付けることで、アース線93を前記ボディパネル91に電気的に接続することが可能に構成されている。また、このアース端子1は、ソケット体11と、このソケット体11に装着可能な二重ロック体12と、を備える。前記ソケット体11は、金属製の本体15と、バレル部17と、フランジ部18と、脚部19と、を備える。前記本体15には、差込孔16が形成される。前記バレル部17には、前記アース線93が接続される。前記フランジ部18は、前記ボディパネル91に接触可能に構成されている。前記脚部19には、前記ボディパネル91に係止可能な爪20が形成される。そして、アース端子1は、ソケット体11を前記取付孔92に挿入した状態で前記差込孔16に前記二重ロック体12を差し込むことで、当該二重ロック体12が前記脚部19を前記取付孔92の内壁へ向けて押圧するように構成されている。
【0057】
これにより、差込孔16に二重ロック体12を差し込むことで脚部19を取付孔92の内壁に向けて押圧するので、取付孔92の内壁に対する押圧力を増加させることができ、保持力が向上するとともに電気的接触を安定させることができる。
【0058】
また、本実施形態のアース端子1において、前記フランジ部18は弾性変形可能であるとともに、先端側へ行くに従ってアース端子1の差込方向の先端側へ近づくように傾斜して設けられている。そして、前記フランジ部18の先端と前記爪20との間の差込方向での距離Lが、前記取付孔92の部分における前記ボディパネル91の板厚Tよりも小さくなっている(L<T)。
【0059】
これにより、ソケット体11が取付孔92に装着されるときにフランジ部18の先端がボディパネル91に押されて弾性変形し、当該フランジ部18の復元力によって、フランジ部18と爪20との間にボディパネル91を板厚方向にクランプする形となる。従って、前記二重ロック体12による脚部19の押圧ともあいまって、アース端子1の保持力が著しく向上するとともに、電気的接触を更に安定させることができる。
【0060】
また、本実施形態のアース端子1において、前記本体15は、前記取付孔92が矩形状に形成されているのに対応して、矩形状に形成される。前記脚部19は、前記本体15がなす矩形のそれぞれの辺に対応するように、4つ備えられている。前記二重ロック体12は、それぞれの脚部19を前記取付孔92の内壁へ向けて押圧可能に構成されている。
【0061】
これにより、矩形状の取付孔92において向きが異なるように形成される内壁の壁面に対し、脚部19をそれぞれ押圧させることができる。従って、様々な方向の外力に対してアース端子1を良好に保持できるとともに、電気的接触を更に安定させることができる。また、矩形状にすることにより、アース端子1の回転を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態のアース端子1において、前記ソケット体11は、板金41を折り曲げることにより構成される。また、バレル部17、フランジ部18及び脚部19が本体15に一体的に形成されている。
【0063】
これにより、製造コストを低減できるとともに、板厚や曲げRの調整等によって、ソケット体11の各部分に好適な弾性を付与することが容易になる。また、バレル部17及び脚部19を含めた各部が一体的に形成されているので、電気的接続の信頼性に優れる。
【0064】
また、本実施形態のアース端子1において、前記二重ロック体12は、弾性変形可能な押圧脚部32を備える。前記押圧脚部32は、弾性変形した状態で前記差込孔16に挿入されることで、その復元力によって前記脚部19を外側へ押圧する。
【0065】
これにより、脚部19を常時押圧することができるので、電気的接触の安定性が向上する。また、二重ロック体12自体が有する弾性によって脚部19を取付孔92の内壁に押圧することができるので、簡素な構成を実現できる。
【0066】
また、本実施形態のアース端子1において、前記押圧脚部32には、前記脚部19に係止することで前記二重ロック体12の抜けを防止可能な規制爪35が形成されている。
【0067】
これにより、二重ロック体12のソケット体11からの抜けを規制できるので、アース端子の意図に反する脱落を確実に防止できる。
【0068】
また、本実施形態のアース端子1において、前記ソケット体11は、前記差込孔16の内側に配置された抜止め爪21を備える。そして、前記二重ロック体12は、前記ソケット体11に係止する位置より抜け側の位置において前記規制爪35が前記抜止め爪21に接触し、これによって当該二重ロック体12の前記差込孔16からの離脱が阻止される。
【0069】
これにより、ソケット体11と二重ロック体12がバラバラになることを防止し、アース端子1として一体的に取り扱うことができる。従って、管理の手間を低減できるとともに作業性を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態のアース端子1において、前記脚部19及び押圧脚部32は平板状に形成されている。
【0071】
これにより、脚部19と取付孔92との接触面積を大きく確保できるとともに、その脚部19が平板状の押圧脚部32によって広い面積で押圧されるので、電気的接触の安定性を更に向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態において、前記ソケット体11を前記取付孔92の位置に合わせた状態で、前記ソケット体11の前記差込孔16に組み付けられている前記二重ロック体12の操作面33が押されると、以下のようにしてアース端子1の取付けが行われる。即ち、まず、前記脚部19が前記取付孔92に挿入されて前記爪20が前記ボディパネル91に係止される(図3)。そして、その後に、前記二重ロック体12が前記差込孔16に押し込まれて、前記脚部19を前記取付孔92の内壁へ向けてより強力に押圧する(図4)。
【0073】
これにより、二重ロック体12の操作面33を押すという1回の簡単な操作(ワンアクション)によって、脚部19の爪20の係止と二重ロック体12による脚部19の押圧という2段階の動作が連続的に行われ、アース端子1の取付孔92への取付けが完了する。これにより、極めて良好な作業性を実現することができる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
上記実施形態で説明したソケット体11に代えて、図6に示す変形例のソケット体11xに変更することができる。なお、この変形例において上記実施形態と同一の部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
この変形例のソケット体11xにおいては、フランジ部18が非傾斜状に設けられており、また、前記バレル部17はフランジ部18と一体的に形成されている。
【0077】
このソケット体11xは、取付孔92の開口周縁部に対してフランジ部18が面接触することになるので、接触面積を更に広く確保することができる。また、フランジ部18の折曲げ加工を一部省略できるため、製造コストを低減できる点で有利である。
【0078】
取付孔92及びアース端子1(ソケット体11の本体15)は、矩形状に構成されることに代えて、例えば3角形、5角形等の任意の多角形に形成することができる。なお、様々な方向の外力に対して動かないようにアース端子を取付孔に保持する観点から、脚部19及び押圧脚部32は3つ以上備えられることが好ましい。
【0079】
また、ソケット体11の本体15の多角形が有する辺の全てに対応して脚部19及び押圧脚部32を配置することに代えて、例えば、アース端子を6角形状に形成し、1つおきの辺に脚部19及び押圧脚部32を配置する構成に変更することができる。
【0080】
ソケット体(ベース部)の素材としては、金属であれば任意のものを用いることができるが、電気伝導性の高い金属、例えば銅製であることが好ましい。また、小型化や挿入のし易さのために薄肉化し、かつ十分な強度を保つために、リン青銅等の銅合金を用いても良い。
【0081】
二重ロック体(プラグ部)は、樹脂製とすることに代えて、弾性の大きい金属材、例えばバネ鋼製などでも良い。また、樹脂材にバネ鋼材を複合させて、外形の成形を自由にするとともに弾性をより向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係るアース端子をボディパネルに取り付ける様子を示した斜視図。
【図2】アース端子の分解斜視図。
【図3】ソケット体が取付孔に係止された様子を示す斜視図。
【図4】二重ロック体によって二重ロックがされた状態を示す斜視図。
【図5】ソケット体に用いられる板金の折曲げ加工前の状態を示す平面図。
【図6】ソケット体の変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0083】
1 アース端子
11 ソケット体(ベース部)
12 二重ロック体(プラグ部)
15 本体
16 差込孔
17 バレル部
18 フランジ部(突出部)
19 脚部(ロック部)
21 抜止め爪(抜止め部)
32 押圧脚部(押圧部)
35 規制爪
41 板金
91 ボディパネル
92 取付孔
93 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の金属製のボディパネルに形成された取付孔に取り付けることで、アース線を前記ボディパネルに電気的に接続することが可能なアース端子であって、
ベース部と、
このベース部に装着可能なプラグ部と、
を備え、
前記ベース部は、
差込孔が形成された金属製の本体と、
前記アース線が接続されるバレル部と、
前記ボディパネルに接触可能な突出部と、
前記ボディパネルに係止可能な爪が形成されたロック部と、
を備え、
前記ベース部を前記取付孔に挿入した状態で前記差込孔に前記プラグ部を差し込むことで、当該プラグ部が前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けて押圧することを特徴とするアース端子。
【請求項2】
請求項1に記載のアース端子であって、
前記突出部は弾性変形可能であるとともに、先端側へ行くに従って前記アース端子の差込方向の先端側へ近づくように傾斜して設けられており、
前記突出部の先端と前記爪との距離が、前記取付孔の部分における前記ボディパネルの板厚よりも小さいことを特徴とするアース端子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアース端子であって、
前記本体は、前記取付孔の形状に対応して多角形状に形成され、
前記ロック部は、前記本体がなす多角形のそれぞれの辺に対応して備えられ、
前記プラグ部は、それぞれの前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けて押圧可能に構成されていることを特徴とするアース端子。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のアース端子であって、
前記ベース部は、折り曲げられた板金により構成されるとともに、
前記バレル部、前記突出部及び前記ロック部が前記本体に一体的に形成されていることを特徴とするアース端子。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のアース端子であって、
前記プラグ部は、弾性変形可能な押圧部を備え、
前記押圧部は、弾性変形した状態で前記差込孔に挿入されることで、その復元力によって前記ロック部を外側へ押圧することを特徴とするアース端子。
【請求項6】
請求項5に記載のアース端子であって、
前記押圧部には、前記ロック部に係止することで前記プラグ部の抜けを防止可能な規制爪が形成されていることを特徴とするアース端子。
【請求項7】
請求項6に記載のアース端子であって、
前記ベース部は、前記差込孔の内側に配置された抜止め部を備え、
前記プラグ部は、前記差込孔に嵌合する位置より抜け側の位置において前記規制爪が前記抜止め部に接触し、これによって当該プラグ部の前記差込孔からの離脱が阻止されることを特徴とするアース端子。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載のアース端子であって、
前記ロック部及び押圧部が平板状に形成されていることを特徴とするアース端子。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のアース端子であって、
前記ベース部を前記取付孔の位置に合わせた状態で、前記ベース部の前記差込孔に組み付けられている前記プラグ部が押されると、前記ロック部が前記取付孔に挿入されて前記爪が前記ボディパネルに係止された後に、前記プラグ部が前記差込孔に押し込まれて前記ロック部を前記取付孔の内壁へ向けてより強力に押圧することを特徴とするアース端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−238570(P2009−238570A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82924(P2008−82924)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)