説明

アーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置

【課題】 機器のメンテナンスが容易で、しかも組み付けが容易なアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置を提供する。
【解決手段】 回動自在に連結されたフロントフレームとリアフレームとの間に跨って複数の油圧ホースを配設する、アーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置において、一側油圧ホース群を束ねてリアフレームの一側の壁及びフロントフレームの他側の壁に沿って固定する結束固定部材と、他側油圧ホース群を束ねてリアフレームの他側の壁及びフロントフレームの一側の壁に沿って固定する結束固定部材とを備え、一側の油圧ホース群が他側の油圧ホース群よりも上方を通るように、フロントフレームとリアフレームとの間で交差させることを特徴とするアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1、2に示すように、モータグレーダ等のアーティキュレート式車両において、アーティキュレート中心で油圧ホース群を交差させる技術が知られている。図6は、特許文献1、2に開示された油圧ホース群26L,26Rの配置を示す平面図であり、以下図6に基づいて従来技術を説明する。
【0003】
図6においてモータグレーダは、センタピン14を中心として回動自在のフロントフレーム12及びリアフレーム13を備えている。リアフレーム13に、クランプ28,28によって係止された左右の油圧ホース群26L,26Rは、センタピン14の中心軸線上で交差して、フロントフレーム12の両側に沿う。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−167858号公報
【特許文献2】実公平1−31643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
図7に、センタピン14近傍の、左右の油圧ホース群26L,26Rの斜視図を示す。多くのモータグレーダにおいては、リアフレーム13は箱形形状をしており、前部には開口部29が設けられている。リアフレーム13の内部には、トランスミッション等の機器30が組み込まれており、そのメンテナンスを行なうためには、開口部29に手を入れて機器30にアクセスする必要がある。
【0006】
ところが従来技術においては、図7に示すように、左右の油圧ホース群26L,26Rが開口部29の前で交互に積み重ねられて網の目のようになっている。そのため、開口部29から機器30に手を伸ばそうとしても、油圧ホース群26L,26Rに妨げられて手が届かない場合がある。その結果、機器30のメンテナンスを行なうたびに、油圧ホース群26L,26Rを外すなどの手間が必要となり、作業効率が低くなるという問題がある。
【0007】
また、油圧ホース群26L,26Rを車体に組み付ける際に、油圧ホースを1本ずつ交互に交差させなければならず、組み付けに手間がかかるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、機器のメンテナンスが容易で、しかも組み付けが容易なアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、
回動自在に連結されたフロントフレームとリアフレームとの間に跨って複数の油圧ホースを配設する、アーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置において、
前記複数の油圧ホースを2つの油圧ホース群に分けるとともに、
一方の油圧ホース群を束ねてリアフレームの一側の壁に沿って固定する第1の結束固定部材と、
一方の油圧ホース群を束ねてフロントフレームの他側の壁に沿って固定する第2の結束固定部材と、
他方の油圧ホース群を束ねてリアフレームの他側の壁に沿って固定する第3の結束固定部材と、
他方の油圧ホース群を束ねてフロントフレームの一側の壁に沿って固定する第4の結束固定部材とを備え、
一側の油圧ホース群が他側の油圧ホース群よりも上方を通るように、フロントフレームとリアフレームとの間で交差させている。
また、第1発明を主体とする第2発明は、
前記第1〜第4の結束固定部材は、油圧ホース群を一列状に束ねている。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、一側の油圧ホース群が他側の油圧ホース群よりも上方を通るように交差させているので、油圧ホース群同士が網の目のように絡まり合うということがない。従って、例えば油圧ホース群の背後にあるような機器等のメンテナンスが容易となる。また、油圧ホース群を車体外で結束固定部材で束ねたものを、車体に組み付けるようにすれば、組み付けが容易である。
また第2発明によれば、油圧ホース群を一列状に束ねているので、車体がアーティキュレートしても油圧ホース同士が絡まることが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1に、アーティキュレート式車両の一例として、モータグレーダ11の側面図を示す。尚、以下の説明においては、車体の進行方向を前後方向とする。また左右の向きは、モータグレーダ11の後方から見て定めるものとする。
【0012】
図1においてモータグレーダ11は、前方のフロントフレーム12と、これに上下1対のセンタピン14,14で連結されたリアフレーム13とを備えている。
【0013】
フロントフレーム12の下部前端部には、ドローバ15が揺動自在に取り付けられている。ドローバ15は、左右1対のリフトシリンダ17,17の同期した伸縮によって上下方向に昇降し、リフトシリンダ17,17の異なった伸縮によって上下方向に傾く。またドローバ15は、ドローバシフトシリンダ19の伸縮によって、左右方向に傾く。
【0014】
ドローバ15には、車体の上方から見て環状をしたサークル18が、回転自在に取り付けられている。サークル18には、ブレード16が取り付けられている。サークル18が、図示しない油圧モータによって回転駆動されることにより、ブレード16が車体の上方から見て時計方向/反時計方向に回転する。モータグレーダ11は、このような作業機により、地ならしや除雪等の作業を行なっている。
【0015】
フロントフレーム12の下部には、操舵可能な前輪20が装着されている。また、フロントフレーム12の上部には、運転室23が搭載されている。運転室23の内部には、ブレーキペダルや上記作業機を操作するための操作レバー等の操作手段24が内蔵されている。またリアフレーム13の下部には、中輪21及び後輪22がそれぞれ装着されている。
【0016】
図2に図1のP部詳細図、図3にP部の斜視図、図4にセンタピン14,14近傍の平面図(図2のA−A視図)を、それぞれ示す。尚、運転室23は、省略されている。
【0017】
図2に示すように、フロントフレーム12の後部に側面視で逆コの字型に形成されたブラケット36と、リアフレーム13の前部にコの字型に形成されたブラケット37とは、上下1対のセンタピン14,14によって連結されている。これにより、フロントフレーム12とリアフレーム13とは、センタピン14,14を中心として回動自在となっている。
【0018】
また図3、図4に示すように、フロントフレーム12の後部及びリアフレーム13の前部には、センタピン14,14の近傍にピン孔32,33が設けられている。例えば道路走行時には、ピン孔32,33に固定ピン31を貫通させ、フロントフレーム12とリアフレーム13とが走行中にアーティキュレートしないようにする。
【0019】
リアフレーム13は中空の箱形に形成されており、リアフレーム13の前部には、開口部29が設けられている。リアフレーム13の内部には、エンジン、トランスミッション、油圧ポンプ等の機器30が収納されている。
【0020】
図2〜図4に示すように、フロントフレーム12とリアフレーム13との間には、複数の油圧ホースからなる油圧ホース群26L,26Rが跨っている。これらの油圧ホースは、例えば運転室内のブレーキペダルから中輪21及び後輪22の図示しないブレーキに動作油を送るブレーキ用油圧ホースや、油圧ポンプから運転室内の操作レバーにパイロット油を送るパイロットホース等である。
【0021】
油圧ホース群26L,26Rには、リアフレーム13の左側の内壁39Lに沿って配置された左側油圧ホース群26Lと、リアフレーム13の右側の内壁39Rに沿って配置された右油圧ホース群26Rとがある。
【0022】
左側及び右側の油圧ホース群26L,26Rは、複数又は単数のフロントクランプ34L,34R及びリアクランプ35L,35Rによって、縦に一列に束ねられている。フロントクランプ34L,34R及びリアクランプ35L,35Rは、油圧ホースを結束するとともに壁に固定する結束固定部材となっている。
【0023】
左側油圧ホース群26Lのリアクランプ35Lは、リアフレーム13の左側内壁39Lに固定され、左側油圧ホース群26Lをリアフレーム13の左側内壁39Lに沿わせている。左側油圧ホース群26Lは、リアフレーム13前部の開口部29から、フロントフレーム12に向かって外に出る。そして、左側油圧ホース群26Lのフロントクランプ34Lは、フロントフレーム12の右側外壁38Rに固定され、左側油圧ホース群26Lをフロントフレーム12の右側外壁38Rに沿わせている。
【0024】
また、右側油圧ホース群26Rのリアクランプ35Rは、リアフレーム13の右側内壁39Rに固定され、右側油圧ホース群26Rをリアフレーム13の右側内壁39Rに沿わせている。右側油圧ホース群26Rは、リアフレーム13前部の開口部29から、リアフレーム13の外部に出る。そして、右側油圧ホース群26Rのフロントクランプ34Rは、フロントフレーム12の左側外壁38Lに固定され、右側油圧ホース群26Rをフロントフレーム12の左側外壁38Lに沿わせている。
【0025】
これにより、左側油圧ホース群26L及び右側油圧ホース群26Rは、上下方向においてはセンタピン14,14間で、水平面内においてはセンタピン14,14の中心近傍で交差する。このとき、一側の油圧ホース群(ここでは右側油圧ホース群26R)のすべての油圧ホースが、他側の油圧ホース群(ここでは左側油圧ホース群26L)の上方を通るようにしている。
【0026】
次に、油圧ホース群26L,26Rの、車体への組み付けについて説明する。図5に、左側油圧ホース群26Lを斜視図で示す。図5に示すように、左側油圧ホース群26Lは、車体の外で予めフロント及びリアのクランプ34L,35Lで縦一列に束ねられる。これにより、左側油圧ホース群26Lを、1つの部品として扱うことができる。
【0027】
組み付け時には、フロントクランプ34L及びリアクランプ35Lを、フロントフレーム12及びリアフレーム13に、それぞれボルト止めによって固定する。これにより、油圧ホースを1本ずつ組み付けるのに比べて、組み付けを短時間で行なうことができる。右油圧ホース群26Rに対しても同様である。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、左右の油圧ホース群26L,26Rをクランプ34L,34R,35L,35Rで縦に一列に束ね、このクランプ34L,34R,35L,35Rをフレーム12,13に固定している。
【0029】
ここで図5において、フロントクランプ34Lとリアクランプ35Lとの間に挟まれた範囲(図5にBで示した範囲)の油圧ホースが、フロントフレーム12とリアフレーム13との間に位置して、アーティキュレート時に自由に動く油圧ホースである。この範囲Bにおける各油圧ホースの長さはほぼ等しく、縦に一列に並んでいる。従って、フレーム12,13がアーティキュレートした際に、上記範囲Bにおける各油圧ホースが縦に平行に並んで同じような動きをするため、互いに干渉して破損することが少ない。これは、右側油圧ホース群26Rにおいても同様である。
【0030】
また、左右の油圧ホース群26L,26Rのうち、一方が他方の上方を通るように交差させている。これにより、油圧ホース群26L,26R同士が干渉することが少ない。また図2、図3に示すように、開口部29が油圧ホース群26L,26Rに完全に塞がれるということがなく、リアフレーム13の内部に手を入れて、内部の機器30をメンテナンスすることが容易となる。
【0031】
尚、上記の説明においては、左右の左右の油圧ホース群26L,26Rが、水平面内でセンタピン14,14間で正確に交差するように説明したが、これに限られるものではなく、その近傍で交差するようにすればよい。
【0032】
また、油圧ホース群26L,26Rをリアフレームの内壁39L,39R及びフロントフレームの外壁38L,38Rに沿わせるように説明したが、これに限られるものではなく、リアフレーム及びフロントフレームの壁に沿わせるようにすればよい。また、油圧ホースをクランプで縦一列に束ねるように説明したが、これに限られるものではない。但し、縦一列に束ねることにより、交差する地点で油圧ホース同士が絡み合うことが少なく、実施形態のように縦一列にするのが最適である。
【0033】
また、運転席がフロントフレームに搭載されたモータグレーダについて説明したが、これに限られるものではなく、運転席がリアフレームに搭載されていてもよい。また、モータグレーダのみならず、他のアーティキュレート車両全般について、応用が可能である。
【0034】
また、クランプ34L,34R,35L,35Rにより、油圧ホースを結束するとともに壁に固定するように説明したが、例えばクランプによって油圧ホースを結束し、他の固定部材によって壁に固定するようにしてもよい。このような場合には、クランプと固定部材とを合わせて結束固定部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】モータグレーダの側面図(実施形態)。
【図2】図1のP部詳細図(実施形態)。
【図3】図1のP部斜視図(実施形態)。
【図4】センタピン近傍の平面図(実施形態)。
【図5】油圧ホース群の斜視図(実施形態)。
【図6】油圧ホース群の配置を示す平面図(従来技術)。
【図7】交差位置における油圧ホース群の斜視図(従来技術)。
【符号の説明】
【0036】
11:モータグレーダ、12:フロントフレーム、13:リアフレーム、14:センタピン、15:ドローバ、16:ブレード、17:リフトシリンダ、18:サークル、19:ドローバシフトシリンダ、20:前輪、21:中輪、22:後輪、23:運転室、24:操作手段、26L:左側油圧ホース群、26R:右側油圧ホース群、28:クランプ、29:開口部、30:機器、31:固定ピン、32:ピン孔、33:ピン孔、34L,34R:フロントクランプ、35L,35R:リアクランプ、36:ブラケット、37:ブラケット、38L,38R:フロントフレーム外壁、39L,39R:リアフレーム内壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在に連結されたフロントフレームとリアフレームとの間に跨って複数の油圧ホースを配設する、アーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置において、
前記複数の油圧ホースを2つの油圧ホース群に分けるとともに、
一方の油圧ホース群を束ねてリアフレームの一側の壁に沿って固定する第1の結束固定部材と、
一方の油圧ホース群を束ねてフロントフレームの他側の壁に沿って固定する第2の結束固定部材と、
他方の油圧ホース群を束ねてリアフレームの他側の壁に沿って固定する第3の結束固定部材と、
他方の油圧ホース群を束ねてフロントフレームの一側の壁に沿って固定する第4の結束固定部材とを備え、
一側の油圧ホース群が他側の油圧ホース群よりも上方を通るように、フロントフレームとリアフレームとの間で交差させることを特徴とするアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置。
【請求項2】
請求項1記載のアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置において、
前記第1〜第4の結束固定部材は、油圧ホース群を一列状に束ねることを特徴とするアーティキュレート式車両の油圧ホース保持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−22562(P2006−22562A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201821(P2004−201821)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】