説明

アームスタンド

【課題】被装着材の重量変動に対する対応範囲を広く確保し、アームの捻り応力に対する剛性を高めて被装着材のスムーズな位置調整を可能にする支持構造を提供する。
【解決手段】アームスタンド1は、支持体2と、支持体2の上部に回動自在に連結された基端部を備えたアーム3と、アーム3の先端部に回動自在に連結された被装着材Dを取付けるための取付体4とを具備するアームスタンド1であって、支持体23に対して基端が回動自在に連結された弾性支持手段5と、弾性支持手段5の先端に回動自在に連結され、アーム3に対しその長手方向に位置調整可能に連結された連結部材6とを有し、弾性支持手段5によりアーム3が弾性支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームスタンドに係り、特に、ディスプレイパネル等の被装着材を装着する場合に好適な、弾性支持手段を含む支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディスプレイパネルや薄型テレビといった被装着材を支持する支持装置の構造としては、ベースに支持体が設けられ、もしくはデスクに支持体を取り付けられるようにされたものであって、支持体の上部にアーム及びリンクバーが回動自在に設けられているものがある。この場合、アームとリンクバーの先端に被装着材を取付ける部材が回動自在に連結されることでアームとリンクバーがリンク機構を形成した支持装置であって、アームの内部には弾性支持手段が内設され、異なる被装着材の重量に応じて前記弾性支持手段の付勢力を調節することができる機構を備えたものが公知である。この種の指示装置としては、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されたものがある。
【0003】
また、被装着材に連結されたアームと、その左右に設けられた別のアームとによってリンク機構をなすものとして、特許文献4に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−63382号公報
【特許文献2】特許第4489210号公報
【特許文献3】特開2004−309680号公報
【特許文献4】特許3757217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の支持装置においては、支持力を調整する方法として、被装着材の重量に応じ、アーム部に内設される弾性支持手段の付勢力を調節し、被装着材とのバランスをとる方法等が採られている。ここで、従来の支持力調整方法は、弾性支持手段の圧縮量を変えることで弾性力を調整するので、弾性力の調整範囲が狭い。したがって、被装着材の重量変化に対する対応範囲も狭くなるという問題があった。
【0006】
また、被装着材の位置調整をする際に、その左右いずれかの箇所を持って移動させようとすると、被装着材側からアーム部に捻り応力が作用して、アーム部が変形することがある。このような場合、アーム部の変形により、上下方向の操作量に対応するアーム部の角度変化が得られないので被装着材のスムーズな移動ができないという問題もあった。特に、重量が大きなディスプレイパネル等を装着する場合や、さらには、近年急速に普及しつつある画面の縦横比率(アスペクト比)が従来のものよりも横長の比率になったディスプレイパネル等を装着する場合、その左右いずれかの箇所を持って移動させようとするとアーム部への影響も大きくなるので、ディスプレイパネル等のスムーズな移動がより困難になるという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、その課題は、被装着材の重量変化に対する対応範囲を広く確保し、同時に、アームの捻り応力に対する剛性を高めることのできる支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明のアームスタンドは、支持体と、該支持体の上部に回動自在に連結された基端部を備えたアームと、該アームの先端部に回動自在に連結された被装着材を取付けるための取付体とを具備するアームスタンドであって、前記支持体に対して基端が回動自在に連結された弾性支持手段と、前記弾性支持手段の先端に回動自在に連結され、前記アームに対しその長手方向に位置調整可能に連結された連結部材とを有し、前記弾性支持手段により前記アームが弾性支持されることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、連結部材がアームに対しその長手方向に位置調整可能であるので、弾性支持手段によるアームに対する支持位置を変えることができる。これにより、取付体に取付けられる被装着材の重量を支持する構造のレバー比を変えることができるので、被装着材の重量変化に対する対応範囲を広く確保ことが可能になる。さらに、弾性支持手段によるアームの支持位置が支持体との連結位置よりも取付体の側にあり、当該支持位置で連結部材を介した弾性支持手段との連結部分によってアームが補強されるので、前記アームの捻り応力に対する剛性を高めることができる。特に、被装着材の重量が大きい場合には、上記レバー比を小さくするために上記支持位置を取付体の側に移動させれば、捻り応力に対する剛性をさらに高くすることが可能になる。したがって、被装着材をよりスムーズに移動させることができる。
【0010】
また、前記連結部材の前記アームに対する位置調整可能範囲は、前記アームの基端部側の一部領域において設けられていることが好ましい。この発明によれば、連結部材は、アームと支持体との連結点に近い側の範囲で移動することになるので、連結部材のわずかな移動であっても、弾性支持手段のストロークはそれほど大きく変動させることなくアームの角度を大きく変動させることができる。これにより、被装着材の移動範囲を広く確保することができる。そして、被装着材に対して一定の軽い力を加え続けるだけで容易に被装着材を移動させることが可能になる。
【0011】
本発明において、前記弾性支持手段はガススプリングで構成されることが好ましい。この発明によれば、ガススプリングを用いることにより、バネ定数の大きさやその圧縮量に対する変動特性を適宜に設定できるので、アームの角度変化による支持力の変動を抑制することなどにより、被装着材のスムーズな移動を容易に実現できるようになる。
【0012】
また、前記アームは下方に開口し前記長手方向に伸びる溝部を有し、該溝部内に前記連結部材が位置調整可能に嵌合していることが好ましい。この発明によれば、連結部材がアームの上記溝部内に嵌合していることにより、連結部材を介したアームと弾性支持手段の連結構造の前記捻り応力に対する剛性を高めることができる。
【0013】
さらに、前記支持体と前記取付体との間に前記アームの両側に位置する一対のリンクレバーが回動自在に連結され、前記アームと前記リンクレバーとによってリンク機構が形成されることが好ましい。この発明によれば、前記アームの両側にそれぞれ支持体と取付体を連結するリンクレバー7を設けることにより、支持構造の捻り応力に対する剛性をさらに高めることができる。特に、アームの姿勢が急傾斜になる程、被装着材からアームに作用する捻り応力は前記リンクレバーに対しその長手方向に作用するので、支持構造の捻り応力に対する剛性がさらに高まる。
【0014】
さらに、前記連結部材を前記アームの長手方向に送る送りネジを含む位置調整機構を有することが好ましい。この発明によれば、回転操作するだけで連結部材の前記長手方向への位置調整ができるとともに、弾性支持手段の圧縮量を変える場合に比べて小さな力で操作できるので、レバー比を容易に変えることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明によれば、被装着材の重量変化に対する対応範囲を広く確保し、また、アームの捻り応力に対する剛性を高めて被装着材のスムーズな移動を可能にするアームスタンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るアームスタンドの実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバーを外した状態を示す縦断面図。
【図2】同実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す側面図。
【図4】同実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す側面図。
【図5】同実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す斜視図。
【図6】同実施形態の、背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す背面図。
【図7】同実施形態に軽重量の被装着材Dを装着した場合の概略構成図。
【図8】同実施形態に大重量の被装着材Dを装着した場合の概略構成図。
【図9】同実施形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態のアームスタンドについて詳細に説明する。図1はアームスタンド1から背面カバーを取り外した状態を示す縦断面図、図2乃至図6はアームスタンドから背面カバー、アームカバー及び取付カバー並びに支柱本体の一方の側壁を外した状態を示す斜視図、側面図又は背面図である。図7及び図8はアームスタンドの概略構成図、図9はアームスタンドを背面側から見た様子を示す斜視図である。
【0018】
本発明に係るアームスタンド1には、図9に示すように支持体2が設けられ、支持体2の上部にアーム3が回動自在に連結される。アーム3の先端には、被装着材Dを取付けるための取付体4が回動自在に連結される。図1に示すように、支持体2の下部に弾性支持手段5の基端部5bが回動自在に連結される。ただし、本実施例においては、弾性支持手段5の基端部5bは支持体2の下部に連結されているが、この連結位置は、支持体2の下部に限らず、アーム本体31を支持して弾性支持手段5の機能を発揮することが可能な位置であるならば、設計に応じた適宜な位置に設定することもできる。また、弾性支持手段5の先端部5aには連結部材6が回動自在に連結される。連結部材6はアーム3に対しその長手方向に位置調整可能に連結される。以上の構造により、アーム3は、弾性支持手段5により弾性支持されている。また、図2乃至図5に示すように、支持体2と取付体4との間には、一対のリンクレバー7が回動自在に連結される。一対のリンクレバー7は、アーム3の幅方向両側に位置する。そして、これらアーム3とリンクレバー7とによってリンク機構が形成されている。
【0019】
上記支持体2は、本実施例においては、図1乃至図6に示すように、板状のベース部2Aと、このベース部2A上から上方へ伸びる支柱部2Bとによって構成される。ベース部2Aは本発明に係るアームスタンド1の支柱部2Bを安定的に直立させる部分である。ベース部2Aは支持部2Bの下部から幅方向及び前方向に張り出した部分を有する。当該張出した部分によりベース部2Aが広い設置面を備えることで、支持体2は、被装着材Dをその左右いずれかの箇所を持って上下方向に操作した場合でも、アームスタンド1全体のバランスを崩さずに支持可能となるように構成されている。
【0020】
ベース部2Aには底板21が設けられ、底板21の後部分上に上記支柱部2Bが配置される。底板21は上記後部分から前方へ延出し、前部分において幅方向に広がり、全体として平面視でT字状に構成される。底板21の前部分上には前面カバー22が取り付けられている。この前面カバー22は、底板21を覆う下方部22aと、この下方部22aから上方へ湾曲して支柱部2Bの前面を構成する中間部22bと、中間部22bの上部から後方へ湾曲して支柱部2Bの上部を覆う上方部22cとを有する。この前面カバー22の中間部22bから上方部22cにわたる部分には、図1、図2及び図5に示すように、延長形状の間隙22dが形成される。この間隙22dは、支持体2の上部に連結されたアーム3の上下回動を許容する。
【0021】
ベース部2Aの上記底板21上には、支柱部2Bをベース部2Aに固定するための枠状の支柱基台23が立設固定される。支柱基台23は、前面カバー22の中間部22bの後方に配置され、基台前板部23a、基台後板部23b、及び左右の基台側板部23cから構成される。支柱基台23の内部には各板部23a〜23cにより囲まれた空間が設けられている。基台前板部23aは他の板部23b及び23cよりも上方に延び、前面カバー22に沿って延在するとともに上記間隙22dに対応する開口を備えた枠状部を有し、該枠状部はアーム3の下側縁に係合する閉鎖板(図示せず)を上下方向に摺動自在に案内している。この閉鎖板はアーム3の上下方向の回動に追従して摺動し、上記前面カバー22の間隙22dのうちアーム3の下方に開口する部分を内側から閉鎖する。基台後板部23bにはネジやボルトを装着することができる複数の孔23dが設けられている。
【0022】
支柱基台23の内部には支柱本体24の下部が挿入され固定される。支柱本体23の下部は角柱形状であり、上部は上記間隙22dや基台前板部23aの開口に対応して前方が解放されたコ字状の横断面を有し、左右の側壁24b及び後壁により構成されている。なお、支柱本体24は一方(アームスタンド1の後方から前方へ向かって右側)の側壁24bが取り外し可能に構成され、図2乃至図6には当該一方の側壁24bを取り外した様子を示してある。支柱本体24の後壁には、基台後板部23bに設けられた孔23dに対応する位置に複数組の孔24aが設けられている。そして、孔23dと24aにネジやボルト等の締結部材25を適用することにより、支柱本体24の下部が支柱基台23に固定されている。これらの複数組の孔24aは、支柱本体24の上下方向に複数列にわたって設けられているので、使用する孔24aを選択することにより支柱基台23に対する支柱本体24の上下方向の固定位置を変えることができる。
【0023】
支柱基台23及び支柱本体24の後方には、図9に示す背面カバー26が装着される。ここで、背面カバー26は支柱部2Bの背面及び側面を構成する。また、前面カバー22と背面カバー26は左右両側で相互に接続されて底板21とともに支持体2の外装構造を形成している。なお、支持体2は、上記のようなベース部2Aと支柱部2Bとからなる構成以外にも、その下端にベース部2Aの代わりにブラケット等の取付具を設け、該取付具によって他の部材、例えば支持台に固定されるように構成することもできる。
【0024】
支持体2の支柱本体24の上部には、図1乃至図6に示すように、アーム3が回動自在に連結される。具体的には、図2に示すように、支柱本体24の側壁24bの内側にアーム本体31の基部が配置され、側壁24bとアーム本体31が軸部材8を介して回動自在に連結される。アーム本体31は前面カバー22の上記間隙22dを通して前方へ突出し、軸部材8を軸心とする縦方向の回動が可能な状態とされる。また、アーム本体31は、下方に開口するコ字状断面を有することにより、図1に示すように上壁と側壁に囲まれて長手方向に伸びる溝部31aを備えている。また、アーム本体31の左右の側壁31bには、アーム本体31の長手方向に沿って伸びる長孔(長溝でもよい。)等よりなるガイド31cが形成される。ガイド31cは、アーム本体31の基端部側の一部領域において設けられる。そして、図5及び図6に示すように、アーム本体31の上壁上には位置表示板31dが長手方向に移動可能に取り付けられる。上記のアーム本体31は図9に示すように後述するリンクレバー7とともにアームカバー32によって覆われる。アームカバー32には後述する位置表示マーク31eを視認可能とする開口部32aが設けられている。
【0025】
アーム本体31には連結部材6が取り付けられている。この連結部材6は、図1に示すように、アーム本体31の溝部31a内に収納され、アーム本体31の長手方向に摺動可能となるように上記ガイド31cと嵌合している。上記連結部材6の左右の外側面はアーム本体31の左右の側壁31bの内面と広い接触面積が確保される態様で密接し、これによりアーム本体31と連結部材6の間のアーム本体31の捻れ方向に対する剛性が確保される。連結部材6は軸部材9によって弾性支持手段5の先端部5aに対して回動可能に連結される。図示例では、軸部材9の両端部が連結部材6の両外側面から突出して上記ガイド31cに対してアーム本体31の長手方向に摺動自在となるように嵌合している。なお、前述のように、本実施例においてガイド31cは、アーム本体31の基端部側の一部領域において設けられるので、ガイド31cに軸部材9によって連結される連結部材6の摺動可能範囲は、ガイド31cが設けられた範囲に限定される。こうすれば、連結部材6の限定された摺動量であっても、それと連結している弾性支持手段5のストロークはそれほど大きく変動させないままアームの角度を大きく変動させることができる。これにより、被装着材Dの移動範囲を広く確保することができ、また、被装着材Dに対して一定の軽い力を加え続けるだけで容易に被装着材Dを移動させることが可能になる。
【0026】
図5に示すように、アーム本体31の上壁上に配置される位置表示板31dは、長手方向に沿って延長された上壁に形成された間隙を通してアーム内部の連結部材6に接続され、連結部材6とともにアーム本体31の長手方向に移動可能に構成される。位置表示板31dの外面には位置表示マーク31eが形成され、この位置表示マーク31eは上記アームカバー32の開口部32aを通して外部より視認可能とされる。この位置表示マーク31eを視認することで、連結部材6の位置、すなわち、弾性支持手段5の先端部5aのアーム本体31に対する連結位置を確認することができる。
【0027】
アーム3の基部には上記連結部材6の長手方向に沿った位置を調整するための位置調整ネジ11が設けられる。位置調整ネジ11は、図1に示すように頭部11aとネジ部11bを有し、頭部11aがアーム本体31の基端部から突出するとともにネジ部11bがアーム本体31の長手方向に沿って延伸した姿勢でアーム本体31に取り付けられている。頭部11aはアーム本体31の基端部に係合し、当該基端部に対して回転可能に保持されるとともに、外部よりドライバーやレンチなどの回転工具を適用可能とする六角穴などの回転係合構造を備えている。ネジ部11bは長手方向に伸びて上記連結部材6に螺合し、位置調整ネジ11が回転すると連結部材6が長手方向に移動するようになっている。すなわち、位置調整ネジ11は送りネジであり、連結部材6のネジ穴と協働して本発明の位置調整機構を構成している。
【0028】
次に、図1に示すように、弾性支持手段5は、その基端部5bが支柱本体24の下部に、また、先端部5aが連結部材6にそれぞれ回動自在に連結されているので、上記位置調整ネジ11による連結部材6の位置調整と連動して、弾性支持手段5は基端部5bを中心として回動し、その傾斜姿勢が変化する。このように、弾性支持手段5は連結部材6を介してアーム本体31に対して下方より回動可能に連結されるとともに支持体2の下部に回動可能に連結されているので、アーム3が上下に回動するときには追随して傾動し、常にアーム本体31を下方より弾性支持することができる。また、アーム本体31と弾性支持手段5の連結部材6を介した連結構造においては、アーム本体31の長手方向に沿って支持位置が調整可能に構成されているので、後述する理由により、上記支持位置をアーム本体31の基端側に移動させることで重い被装着材Dによる大きな荷重を支持可能に設定できるとともに、上記支持位置をアーム本体31の先端側に移動させることで軽い被装着材Dの小さな荷重に好適な支持力に設定してスムーズな操作性を得ることもできる。さらに、連結部材6を介した上記連結構造は、アーム本体31に作用する捻り応力に対してアーム本体31の基端部よりも先端側の位置で抵抗する働きも有するので、アーム3の捻り応力に対する剛性を高めることができる。
【0029】
弾性支持手段5は、本実施例においては、流体シリンダ構造を備えたガススプリングによって構成される。ガススプリングは、ガスを封入したシリンダと、このシリンダ内に挿入されたロッドとを有し、シリンダ内部やロッドにオリフィスを設けたり、ガスの封入圧力を調節したり、オイル等の他の流体を併用したりする等の方法により、あるいはそれらを組み合わせることにより、広いストローク範囲でほぼ一定のバネ力を得るなど、弾性支持力のストローク特性を任意に設定することができる。また、当該ガススプリングは任意のストローク動作特性(減衰特性も含む。)を設定することもできる。つまり、一般的には圧縮量が増大するほど弾性支持力が増加するコイルスプリング等と比較すると、ガススプリングは弾性支持力の変動特性やストローク動作特性を適宜に設定できる。したがって、本発明に係るアームスタンド1の弾性支持手段5としてガススプリングを採用すれば、アーム3の角度変化による支持力の変動はより抑制され、被装着材Dのスムーズな移動を容易に実現できるようになる。ここで、弾性支持手段5としては、上記ガススプリングの他に、ガス以外の流体とオリフィス構造などを備えた各種の流体シリンダを用いることもできる。
【0030】
なお、本発明に係る弾性支持手段としては、各種の金属スプリングなどといった弾性支持力を与えることのできるものであれば如何なるものでもよく、特に限定されない。ただし、上述のガススプリングその他の流体シリンダを用いることで実現可能な、広いストローク範囲(特にアーム3の傾斜角度の可変範囲)において弾性支持力が一定であるものが好ましいことはもちろんである。
【0031】
また、弾性支持手段5の先端部5aの連結部材6を介した連結位置は、アーム本体31において、その支柱本体24への連結点よりも前方(取付体4・被装着材D側)に限定されない。図7の作用図中、二点鎖線で示すように、アーム3を支持体2の後方(取付体4・被装着材Dとは反対側)に延長した構造にし、その延長された後方部分において、弾性支持手段5を連結部材6を介して連結し、アーム3を弾性支持する構造とすることもできる。ただし、この場合の弾性支持手段5は、図示下方への支持力F´を設定する必要がある。
【0032】
上記の位置調整機構では、位置調整ネジ11を回転操作するだけで上記支持位置をアーム3の長手方向に沿って移動させることができるので、上記支持位置を精密に調整できる。また、送りネジの螺合構造により連結部材6を移動させるので、連結部材6の摺動摩擦等の移動抵抗に抗して調整を行うための操作力を小さくすることができる。さらに、従来構造では圧縮量が増大するほどバネ力が増加する特性を有するコイルスプリング等の弾性部材を用い、その圧縮量を被装着材の重量に応じて変えることで支持力を調整していた。しかし、本実施形態では連結部材6を介して弾性支持手段5の先端部5aをアーム3の長手方向に移動させるだけで済むから、支持位置を変更する際に弾性支持手段5をストローク方向に沿って大きく動作させる必要がなく、主として弾性支持手段5の傾斜姿勢を変えるだけでよいため、連結部材6の移動抵抗をさらに小さくすることができる。したがって、小さな操作力で正確な調整を行うことができる。
【0033】
アーム本体31の先端には取付体4が軸部材8′を介して回動自在に連結される。取付体4は、ネジやボルト等によってディスプレイパネル等の被装着材Dを取付ける構造部分であり、被装着材Dを固定するための取付プレート41と、取付プレート41に対し水平回動軸4aを介して回動可能に連結された取付ブラケット42とを備えている。取付プレート41と取付ブラケット42との間には上記水平回動軸4a周りの回動位置を保持するためのコイルスプリング等からなる弾性部材4cが介在しており、この弾性部材4cは、取付プレート41を取付ブラケット42に対して既定の角度位置(図示の位置)に弾性的に維持する。ここで、この取付体4においてさらに垂直回動軸を設けることにより、左右方向に被装着材Dの向きを変更できるように構成してもよい。なお、図9に示すように、取付体4は上記取付プレート41及び取付ブラケット42を覆う取付カバー43を備えている。また、取付カバー43には上部カバー板43aと下部カバー板43bが設けられ、下部カバー板43bが上部カバー板43aに対してアームカバー32側に付勢されることで、アーム3の角度変化に追随して常時アームカバー32と取付カバー43との間に隙間が生じないように構成できる。
【0034】
以上の構成により、本発明にかかるアームスタンド1においては、図7及び図8に示すように、支持体2とアーム3との回動連結点Aと、アーム3と取付体4との回動連結点Bとの間の距離をアーム長L(AB)とし、また、上記回動連結点Aと、連結部材6を介したアーム3と弾性支持手段5の回動連結点Cとの間の距離を支点長L(AC)とすれば、アーム長L(AB)に対する支点長L(AC)の比が支持構造のレバー比はRL=L(AC)/L(AB)となる。このレバー比RLは、前述の連結部材6の位置調整により弾性支持手段5によるアーム3の支持位置を変化させることで変えることができる。
【0035】
一方、上記被装着材Dの重量等に基づく取付体4へ加わる荷重Gと、この荷重Gを支持するために必要とされる、上記支持位置(回動連結点C)における弾性支持手段5による弾性支持力Fとの関係はF×L(AC)=G×L(AB)となるから、G=F×RLが成立する。したがって、図7と図8を比較すればわかるように、弾性支持手段5自体の弾性支持力Fをそれほど変化させることができない場合であっても、レバー比RLを変えることで支持可能な荷重Gを変化させることができることがわかる。なお、本実施形態において回動連結点Cの位置は原理上回動連結点AとBの間に限られるので、レバー比RLの最大値は1であるが、回動連結点Cを回動連結点AとBの間のアーム長L(AB)の全体にわたって位置調整可能にする必要はなく、図1乃至6に示すように、アーム本体31の連結部材6に対する案内範囲(ガイド31cの形成範囲、或いは、位置調整機構による調整範囲)が長手方向に限定されていて、支持位置(回動連結点C)がアーム3の基端側の一部領域においてのみ調整可能となるように構成してもよい。
【0036】
本実施形態では、弾性支持力F自体を変えなくても、上述のように支持構造のレバー比RLを変えることで支持可能な荷重Gの値を大きく変えることが可能であるので、被装着材Dの重量に対する対応範囲を広く確保することが可能になる。すなわち、被装着材Dの重量が大きい場合には位置調整機構を用いて上記支持位置(回動連結点C)を取付体4の側に移動させて支持構造のレバー比RLを大きくし(1に近づけ)、被装着材Dの重量が小さい場合には位置調整機構を用いて上記支持位置を支持体2の側に移動させてレバー比RLを小さく(0に近づけ)ることで、被装着材Dの重量のより広い範囲において、被装着材Dによる荷重Gと弾性支持手段5による弾性支持力Fとをバランスさせることが可能になる。
【0037】
また、支持体2に連結された部分よりも取付体4の側にある支持位置(上記回動連結点C)においてアーム3が弾性支持されるので、被装着材Dの左右いずれかに偏った箇所を持って上下方向に操作したときに被装着材Dからアーム3へ伝わる捻り応力(アーム3の長手方向周りの捻り応力)は、連結部材6を介したアーム3と弾性支持手段5との間の連結構造によって受け止められ、その分、アーム3自体が負担する応力成分は減殺される。すなわち、弾性支持手段5が連結部材6を介してアーム3の基端と先端の間の中間位置に連結されることで支持構造全体の捻り応力に対する剛性は高められる。特に、上述のように被装着材Dの重量が大きい場合にはレバー比RLを大きくするために連結部材6が取付体4に近い位置に配置されるように調整されるので、被装着材Dから受ける捻り応力は、アーム3のさらに先端に近い上記位置で弾性支持手段5との連結構造により受け止められるから、支持構造全体の上記剛性はさらに高められる。
【0038】
支持体2と取付体4との間には、図2乃至図5に示すように、アーム本体31の幅方向の両側において、一対のリンクレバー7がアーム本体31を中心とした左右均等の位置関係で連結される。これら一対のリンクレバー7の先端はアーム本体31の両側において取付体4の取付ブラケット42に対して軸部材10′を介して回動可能に連結され、また、リンクレバー7の基端は支柱本体24の側壁24bに軸部材10を介して回動可能に連結される。本実施形態では、一対のリンクレバー7はいずれもアーム本体31の支持体2及び取付体4に対する回動連結点(回動軸である軸部材8、8′)よりも下方(詳細には下方斜め前方)に配置された支持体2及び取付体4に対する回動連結点(回動軸である軸部材10、10′)を備えている。ただし、リンクレバー7の回動連結点はアーム本体31の回動連結点より上方に配置されていてもよい。図示例ではリンクレバー7の中間部分が両端部分よりも上方(アーム本体31の軸線側)にシフトされた屈折形状を備えている。これによってアームカバー32内に一対のシフトレバー7をコンパクトに収納することができる。
【0039】
これらの支持体2、アーム3、取付体4、及び、リンクレバー7によってリンク機構が形成される。特に、本実施形態の場合には、アーム本体31とリンクレバー7が平行で、かつ、軸部材8と10を結ぶ線と軸部材8′と10′を結ぶ線とが平行に設定された平行リンク機構が構成されているため、取付体4の角度(姿勢)を一定に保ったままアーム3を上下回動させることが可能になる。これにより、アーム3が上下回動してもディスプレイパネル等の被装着材Dの姿勢は維持される。
【0040】
リンクレバー7はアーム本体31の幅方向の両側に、アーム本体31を中心とした左右均等の位置関係でそれぞれ設けられるので、被装着材Dからの捻り応力がアーム3に対して左右不均等に作用するのを軽減することができ、これにより、支持構造におけるアーム3の長手方向周りの剛性を確保することができる。特に、図4及び図7に示すようにアーム3の姿勢が上方若しくは下方に向いた急傾斜姿勢になっている場合には、被装着材Dからアーム3が受ける捻り応力はリンクレバー7に対してはその長手方向に近い方向に作用するので、当該捻り応力に対して支持構造は高い剛性を有することになる。逆に、図3及び図8に示すようにアーム3の姿勢が水平方向に近い緩傾斜姿勢となっている場合には、一対のリンクレバー7による支持構造の捻り応力に対する剛性の向上効果は必ずしも大きくない。しかし、アーム3が緩傾斜姿勢である場合にはアーム3の姿勢と弾性支持手段5の姿勢の角度差が大きくなるため、弾性支持手段5による支持構造の捻り応力に対する剛性の向上効果が高められる。したがって、本実施形態では、連結部材6を介したアーム3と弾性支持手段5との連結構造と、一対のリンクレバー7を有するリンク機構との相補的な作用によって、アーム姿勢の広い角度範囲にわたって支持構造の捻り応力に対する剛性を高めることができる。
【0041】
尚、本発明のアームスタンド1は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、支持体2とアーム3の連結箇所、アーム3と取付体4の連結箇所、並びに、取付体4における取付プレート41と取付ブラケット42の連結箇所の合計3つの回動連結部を備えたアーム構造を備えているが、本発明はこのような態様に限らず、支持体2、アーム3及び取付体4の間の少なくとも二つの回動連結部を有するアームスタンドに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…アームスタンド、2…支持体、2A…ベース部、2B…支柱部、21…底板、22…前面カバー、22a…下方部、22b…中間部、22c…上方部、22d…間隙、23…支柱基台、23a…基台前板部、23b…基台後板部、23c…基台側板部、23d…孔、24…支柱本体、24a…孔、24b…側壁、25…締結部材、26…背面カバー、3…アーム、31…アーム本体、31a…溝部、31b…側壁、31c…ガイド、31d…位置表示板、31e…位置表示マーク、32…アームカバー、32a…開口部、4…取付体、4a…水平回動軸、41…取付プレート、42…取付ブラケット、4c…弾性部材、43…取付カバー、5…弾性支持手段(ガススプリング)、5a…先端部、5b…基端部、6…連結部材、7…リンクレバー、8〜10、8′、10′…軸部材、11…位置調整ネジ、11a…頭部、11b…ネジ部、A〜C…回動連結点、D…被装着材、L(AB)…アーム長、L(AC)…支点長、RL…レバー比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の上部に回動自在に連結された基端部を備えたアームと、該アームの先端部に回動自在に連結された被装着材を取付けるための取付体とを具備するアームスタンドであって、前記支持体に対して基端が回動自在に連結された弾性支持手段と、前記弾性支持手段の先端に回動自在に連結され、前記アームに対しその長手方向に位置調整可能に連結された連結部材とを有し、前記弾性支持手段により前記アームが弾性支持されることを特徴とするアームスタンド。
【請求項2】
前記連結部材の前記アームに対する位置調整可能範囲は、前記アームの基端部側の一部領域において設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアームスタンド。
【請求項3】
前記弾性支持手段はガススプリングで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアームスタンド。
【請求項4】
前記アームは下方に開口し前記長手方向に伸びる溝部を有し、該溝部内に前記連結部材が位置調整可能に嵌合していること特徴とする請求項1に記載のアームスタンド。
【請求項5】
前記支持体と前記取付体との間に前記アームの両側に位置する一対のリンクレバーが回動自在に連結され、前記アームと前記リンクレバーとによってリンク機構が形成されることを特徴とする請求項1に記載のアームスタンド。
【請求項6】
前記連結部材を前記アームの長手方向に送る送りネジを含む位置調整機構を有すること特徴とする請求項1に記載のアームスタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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