説明

イオントフォレーシスデバイス

【課題】 乳頭部表面と的確に接触する薬物層が装着されたドナーを備えるイオントフォレーシス装置を提供する。
【解決手段】 ドナー1の周辺部に絶縁部を介してレセプター6を備えるイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナー1は、略中央部に製剤を保持する薬物貯留部2Cと、この薬物貯留部2Cの周囲にこの薬物貯留部2Cを乳頭部の高さに応じて上下動させるための同心円状のヒダが形成された伸縮部2B及び皮膚接触部2Aからなるドナー支持体2と、電極3と、薬物層4と、粘着剤とからなり、前記レセプター6はレセプター支持体7と電極8と電解質含有粘着剤とからなり、前記ドナー1の周縁部に絶縁部を介して前記レセプター6を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシスデバイスに係り、特に乳癌及び/又は乳腺炎の治療に用いる、同心円状の凹凸が形成されたドナーとそのドナー周辺部に絶縁部を介して形成されたレセプターからなり、そのドナー及びレセプターに接続されるように導電部が配置されるイオントフォレーシスデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなイオントフォレーシスデバイスとしては、経皮吸収用パッチやイオントフォレーシスデバイスにおいて、これらを皮膚又は粘膜に貼り付けたままの状態で、薬物あるいは薬物イオンの投与を任意に断続できるような構成としたもの(下記特許文献1参照)、薬物イオンの投与効率の低下や皮膚界面におけるpH値の急激な変動を解消できるようにしたもの(下記特許文献2参照)、電極構造体が皮膚又は粘膜に正常に装着されたかどうか判断できるようにしたもの(下記特許文献3参照)が開示されている。更に、乳癌及び/又は乳腺炎治療用イオントフォレーシス製剤として、非ステロイド系消炎鎮痛剤及び/又は抗癌剤を、通電により乳頭部から乳腺内へ局所投与する製剤(下記特許文献4参照)が開示されている。
【0003】
また、乳頭に装着する器具として、硬質の外側部材と外側部材より柔軟な変形し易い材料でなる内側部材とを備え内側に内部空間を形成する乳頭保護具(下記特許文献5参照)が提案されている。
更に、乳頭の大きさは一般に個人差があるが、200名(400乳房)の乳頭を計測し、直径1.3cm±0.3cm(平均±標準偏差)、高さ0.9cm±0.3cm(平均±標準偏差)であることが報告(下記非特許文献1参照)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−194091号公報
【特許文献2】特開2008−086538号公報
【特許文献3】特開2008−036010号公報
【特許文献4】特許第4000185号公報
【特許文献5】特開2009−299225号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】臨床解剖研究会記録,No.7,pp.16−17,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したイオントフォレーシス装置及び製剤においては、乳癌及び/又は乳腺炎の治療のため、乳頭から薬物を投与することに適したイオントフォレーシスデバイスは実現されていないのが現状である。
乳頭部を含む乳房に適用できるイオントフォレーシス装置は、例えばブラジャーのパッド型のような立体的な形状が挙げられるが、製造することが困難であったり、保存時にかさばる等の問題がある。
【0007】
また、乳頭部を保護する乳頭保護具は、乳頭部に対して非接触を保つように保護して使用者の乳頭部に痛みや不快な刺激を与えないものであり、乳頭に製剤を接触させて投与することができないものである。
本発明は、上記状況に鑑みて、乳頭部表面と的確に接触する薬物層が充填されたドナーを備えるイオントフォレーシス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕ドナーの周辺部に絶縁部を介してレセプターを備えるイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーは、略中央部に製剤を保持する薬物貯留部と、この薬物貯留部の周囲にこの薬物貯留部を乳頭部の高さに応じて上下動させるための同心円状のヒダが形成された伸縮部からなるドナー支持体と、電極と、薬物層と粘着剤とからなり、前記レセプターはレセプター支持体と電極と電解質含有粘着剤からなり、前記ドナーの周縁部に絶縁部を介して前記レセプターを配置することを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーおよび前記レセプターは、導電部に接続され、該導電部は、電力を供給する電気回路部を備え、前記レセプターを前記ドナーから絶縁部を介して乳房及びその周辺皮膚に配置し、前記ドナーと前記レセプターとをそれぞれ前記電気回路部にケーブルで接続することを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーと前記レセプターは、別々に構成若しくは同一の支持部材で一体的に構成することを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの高さが2.5〜13mmであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
〔5〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が1つであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【0011】
〔6〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が2つであることを特徴とする。
〔7〕上記〔1〕記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が3つであることを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕の何れか一項記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナー支持体の材質をシリコンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乳頭部へのドナーの接触を的確に行い、様々な高さの乳頭に追従して製剤を接触させることができる。
また、嵩張らないので、包装・保管が容易である。さらに、装着も容易であり、使用感が良好である。
ドナーとレセプターを別部品とする場合には、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のイオントフォレーシスデバイスの一例を示す全体概略構成図である。
【図2】本発明のイオントフォレーシスデバイスの一例を示す全体分解斜視図である。
【図3】本発明のイオントフォレーシスデバイスの利用者への装着状態を示す図面代用写真である。
【図4】本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その1)を示す断面図である。
【図5】本発明のイオントフォレーシスデバイスのレセプターの構造を示す断面図である。
【図6】本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その2)を示す断面図である。
【図7】本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その3)を示す断面図である。
【図8】本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その4)を示す断面図である。
【図9】イオントフォレーシスデバイスのドナーの使用感の評価試験の様子を示す図面代用写真である。
【図10】本発明のドナー・レセプター一体型イオントフォレーシスデバイスを示す平面図である。
【図11】図10のC−C線断面図である。
【図12】本発明のドナー・レセプター一体型イオントフォレーシスデバイスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のドナーの周辺部に絶縁部を介してレセプターを備え、ドナー及びレセプターに接続されるように電気回路部とケーブルで構成される導電部が配置されるイオントフォレーシスデバイスは、前記ドナーは略中央部に製剤を保持する薬物貯留部と、この薬物貯留部の周囲にこの薬物貯留部を乳頭部の高さに応じて上下動させるための同心円状のヒダが形成された伸縮部並びに皮膚接触部からなるドナー支持体と、電極と、薬物層と、粘着剤とからなり、前記レセプターはレセプター支持体と電極と電解質含有粘着剤からなり、前記ドナーの周縁部に絶縁部を介して前記レセプターを配置する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、ドナーの構造について説明する。
図1は本発明のイオントフォレーシスデバイスの一例を示す全体概略構成図、図2はそのイオントフォレーシスデバイスの一例を示す全体分解斜視図、図3はそのイオントフォレーシスデバイスの装着状態を示す図面代用写真であり、図3(a)はその斜視図、図3(b)はその上面図である。図4は本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その1)を示す断面図、図5はそのレセプターの構造を示す断面図である。
【0016】
これらの図において、1はドナーであり、皮膚接触部2Aと伸縮部2Bと薬物貯留部2Cとからなるドナー支持体2と、電極3と、薬物層4と、皮膚接触部2Aに積層される粘着剤5とから構成されている。電極3にはドナーのリード部1bを介してドナーの接続端子1aが配置されている。6はレセプターであり、レセプター支持体7と、電極8と、電解質含有粘着剤9と、絶縁部10とから構成される。レセプター支持体7にはレセプターの接続端子6aが形成されている。また、11,11A,11Bはケーブル、12a,12b,12cはケーブル11,11A,11Bの接続部、13は電気回路部、13Aはスイッチ、13BはLED表示灯である。
【0017】
図1及び図2に示すように、ドナー1の電極3にはリード1bと接続端子1aを介してケーブル11Aの接続部12bが、レセプター6の電極8には接続端子6aを介してケーブル11Bの接続部12cが接続され、それらのケーブル11A,11Bはケーブル11の接続部12aを介して電気回路部13に接続されている。なお、電気回路部13には電源(図示なし)、スイッチ13A,LED表示灯13Bが配置されている。
【0018】
ドナー支持体2は、図4に示すように、その中央部に形成される薬物貯留部2Cの周りには同心円状の2つのヒダ2B−1からなる伸縮部2Bが形成されている。例えば、ドナー支持体2の材質はシリコンゴムであり、ヒダ2B−1の厚さは0.3mm、その高さは5.6mmである。このドナー支持体2の薬物貯留部2Cに電極3および薬物層4が配置されている。
【0019】
このような構成のドナー1の薬物層4を乳頭に装着すると、薬物層4が乳頭上部表面に接触するとともに、伸縮部2Bの同心円状のヒダ2B−1によって高さが任意に変化し、薬物層4が乳頭上部表面に密着する。このドナー1の乳頭への密着性、立体への変形の円滑性、使用感は極めて良好である。
一方、レセプター6はドナー1とは絶縁部10を介して、電解質含有粘着剤9により乳房に貼り付ける。
【0020】
ドナー1とレセプター6は上記したようにそれぞれケーブル11,11A,11Bで電気回路部13に接続されているので、この電気回路部13からドナー1とレセプター6に電力を供給すると、イオン浸透効果によって薬物層4中の薬物が乳頭から乳管を介して乳腺組織内の患部に移行する。
図6は本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その2)を示す断面図であり、図6(a)は保管時の形状を示す図、図6(b)は装着時(伸ばした時)の形状を示す図である。
【0021】
図6に示すドナー21のドナー支持体22は、その中央部に形成される薬物貯留部22Cの周りには同心円状の3つのヒダ22B−1からなる伸縮部22Bが形成されている。例えば、ドナー支持体22のヒダ22B−1の厚さは0.3mm、その高さは4.0mmである。
なお、22Aは皮膚接触部、23は電極、24は薬物層であり、ヒダの数以外の構成は図4に示すものと同様である。
【0022】
図7は本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その3)を示す断面図である。
図7に示すドナー31のドナー支持体32は、その中央部に形成される薬物貯留部32Cの周りには同心円状の4つのヒダ32B−1からなる伸縮部32Bが形成されている。例えば、ドナー支持体32のヒダ32B−1の厚さは0.3mm、その高さは3.5mmである。
【0023】
なお、32Aは皮膚接触部、33は電極、34は薬物層であり、ヒダの数以外の構成は図4に示すものと同様である。
図8は本発明のイオントフォレーシスデバイスのドナー支持体の形状(その4)を示す断面図である。
図8に示すドナー41のドナー支持体42は、その中央部に形成される薬物貯留部42Cの周りに同心円状の1つのヒダ42B−1からなる伸縮部42Bが形成されている。例えば、ドナー支持体42のヒダ42B−1の厚さは0.3mm、その高さは10.9mmである。
【0024】
なお、42Aは皮膚接触部、43は電極、44は薬物層であり、ヒダの数以外の構成は図4に示すものと同様である。
次に、イオントフォレーシスデバイスのドナーの使用感の評価(密着強度の数値化)について説明する。
図9はイオントフォレーシスデバイスのドナーの使用感の評価試験の様子を示す図面代用写真であり、図9(a)はテクスチャーアナライザー〔英弘精機(株)TA−XT2i〕と押し出し治具(5mmφステンレス板)を示す図面代用写真、図9(b)は測定開始前の状態を示す図面代用写真、図9(c)は測定中の状態を示す図面代用写真である。
【0025】
これらの図に示すように、イオントフォレーシスデバイスのドナー51をテクスチャーアナライザー52にセットして、ドナー51の薬物貯留部53に押し出し治具54を配置する。その状態でテクスチャーアナライザー52を定速1mm/secで20mm稼働した際の押し出し治具54に掛かる負荷gを測定する。すなわち、図9(c)に示すように、押し出し治具54を押し込む力Aとドナー51のヒダの戻り力Bとがバランスして押し出し治具54に掛かる負荷時の荷重(g)を得ることができる。なお、ここでは、押し出し治具54を5mm又は10mm押した時の力積(荷重−時間面積)を算出した(上記非特許文献1より、乳頭の直径を1.3cm、乳頭の高さを、5mm又は10mmと想定)。
【0026】
その結果、イオントフォレーシスデバイスのドナーの使用感の評価を表1に示すように得ることができた。
【0027】
【表1】

これによれば、シリコンゴム製のドナー支持体の形状(その1〜4)の各ドナー(シリコンゴム硬度30〜60度)では、力積が少なく良好な使用感を得ることができた。これに対して、アクリル樹脂からなる比較例は、力積が大きいため使用感が悪く、装着時に乳頭が曲がるといった問題があった。
【0028】
なお、上記したドナー支持体の材質としてはシリコンゴムを示したが、これに限定されるものではなく、柔軟性があり、絶縁物で、加工しやすく、有害性がなく、劣化しにくいものであればよく、例えば、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材、ポリウレタン、PC(ポリカーボネート)樹脂などを用いるようにしてもよい。
【0029】
また、電極の材質としては、導電性があり、抵抗値が低く、加工しやすく、耐久性・耐腐食性に優れたものが望ましく、例えば、カーボンペースト、銀ペーストが好ましいが、このほかにも、導電性シリコーン(カーボン入りシリコーン)、導電性不織布、カーボンペーストインク、銀ペーストインク、銅箔、金メッキ、金属線類を用いるようにしてもよい。
【0030】
また、薬物層として用いるドナー用製剤としては、含水系の液剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。ここで、液剤及びゲル剤は、有効成分、溶剤、基剤、可溶化剤、粘稠化剤、安定剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、電解質で構成され、貼付剤は、液剤及びゲル剤の構成成分に加え、充填剤、架橋剤(硬化剤)、粘着剤、粘着増強剤で構成される。
粘着剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N−ビニルアセトアミド−アクリル酸共重合体等の水溶性粘着性基剤等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
有効成分である非ステロイド系消炎沈痛剤としては、インドメタシン、アセメタシン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナックナトリウム、アンフェナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルフェナム酸、イブフェナック、フェンブフェン、アルクロフェナック、フェニルブタゾン、メフェナム酸、ベンザダック、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ペンタゾシン、塩酸ブプレノフィン、酒石酸ブトルファノール、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブNa、エトドラク、NS−398、メロキシカム等が挙げられる。このうち、インドメタシン、セレコキシブが、乳頭部から乳腺内への吸収効率の点で好ましく、特にインドメタシンが好ましい。
【0032】
別の有効成分である抗癌剤としては、イホスファミド、シクロフォスファミド等のアルキル化剤;カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン等の白金化合物;塩酸イリノテカン、エトポシド、ドセキタクセル水和物、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、パクリタキセル、酒石酸ビノレルビン等の植物性抗癌剤;リン酸ミプロキシフェン、クエン酸タモキシフェン、塩酸ファドロゾール水和物、フルタミド、酢酸メドロキシプロゲステロン等のホルモン類;塩酸ドキソルビシン、塩酸イダルビシン、ジノスタチンスチマラマー、塩酸ダウノルビシン、塩酸プレオマイシン、塩酸エピルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸ピラルビシン、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質;カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、メルカプトプリン、塩酸ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタピン等の代謝拮抗剤;ラクトン型シクロヘプタペプチド構造の直鎖状サーファクチン、トラスツズマム等のモノクローナル抗体等が挙げられる。このうち、リン酸ミプロキシフェン等のホルモン類、フルオロウラシル等の代謝拮抗剤が、乳頭部から乳腺内への吸収効率の点で好ましく、特にリン酸ミプロキシフェン、フルオロウラシル(特に、5−フルオロウラシル)が好ましい。
【0033】
溶剤としては、水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールポリエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール2000、ポリプロピレングリコール、(濃)グリセリン、バチルアルコール、ペンタエリトリトール、D−ソルビトール液等の多価アルコール;エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール等のアルコール;アジピン酸ジイソプロピル、トリアセチン、セバシン酸ジイソプロピル、トリイソオクタン酸、炭素数が6〜12の中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル類;クロタミトン等のケトン類等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
基剤としては、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カラギーナン、カルメロースナトリウム、カンテン、キサンタンガム、ゼラチン、カオリン、ベントナイト、モンモリナイト、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸、D−ソルビトール、タルク、テルペン樹脂、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0035】
可溶化剤としては、塩酸、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、乳酸、N−メチル−2−ピロリドン、ラウロマクロゴール等が挙げられる。
粘稠化剤としては、カルボキシビニルポリマー、尿素、ポリビニルアルコール、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
安定剤としては、ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール等の抗酸化剤、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、レシチン、EDTA等の相乗化剤等が挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の陽イオン性界面活性剤、モノステアリン酸グリセリル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩酸、グリシン、コハク酸、酢酸、ジイソプロパノールアミン、酒石酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、乳酸、ホウ酸、リンゴ酸、燐酸等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、フェノール、クレゾール等のフェノール性物質、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール等の中性物質、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸、安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酸、サリチル酸等の酸性物質が挙げられる。
【0038】
電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム等が挙げられる。
充填剤としては、カオリン、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化チタン、二酸化ケイ素等が挙げられる。
架橋剤(硬化剤)としては、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロサルタイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げられる。
【0039】
粘着剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N−ビニルアセトアミド−アクリル酸共重合体等の水溶性粘着性基剤等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘着増強剤としては、エステルガム、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ポリブテン、ロジン等の疎水性粘着性基剤が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
皮膚接触部に積層される粘着剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N−ビニルアセトアミド−アクリル酸共重合体等の水溶性粘着性基剤等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、エステルガム、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ポリブテン、ロジン等の疎水性粘着性基剤が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
レセプターに用いる電解質含有粘着剤としては、テクノゲル(積水化成品工業)、ゲルロード(タキロン製)、ニトフロン半導電性粘着テープ(日東電工製)、金属箔/銅メッキ繊維テープ(3M製)等が挙げられ、粘着性及び皮膚への安全性の観点からテクノゲルが好ましい。
また、本発明では、ドナーとレセプターとを分離した方式のものについて述べたが、ドナーとレセプターとは同一の保持体により一体的に構成するようにしてもよい。
【0042】
図10は本発明のドナー・レセプター一体型イオントフォレーシスデバイスを示す平面図、図11はそのイオントフォレーシスデバイスのC−C線断面図、図12はそのイオントフォレーシスデバイスの斜視図である。
これらの図において、61はドナーであり、皮膚接触部62Aと伸縮部62Bと薬物貯留部62Cからなるドナー支持体62と、電極63と、薬物層64と、皮膚接触部62Aに積層される粘着剤65とからなる。電極63にはドナーのリード部61bを介してドナーの接続端子が配置されている。66はドナー61と一体に形成されるレセプターであり、レセプター支持体67と、電極68と、電解質含有粘着剤69とからなり、レセプター支持体67にはレセプターの接続端子66Aが形成されている。
【0043】
このように、ドナー支持体62とレセプター支持体67からなる同一の保持体により一体的に構成し、ドナー61とレセプター66とを一体化させることができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のイオントフォレーシスデバイスは、乳がん及び/又は乳腺炎の治療に好適なイオントフォレーシスデバイスとして利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,21,31,41,51,61 ドナー
1a ドナーの接続端子
1b,61b ドナーのリード部
2,22,32,42,62 ドナー支持体
2A,22A,32A,42A,62A 皮膚接触部
2B,22B,32B,42B,62B 伸縮部
2B−1,22B−1,32B−1,42B−1 同心円状のヒダ
2C,22C,32C,42C,53,62C 薬物貯留部
3,8,23,33,43,63,68 電極
4,24,34,44,64 薬物層
5,65 粘着剤
6,66 レセプター
6a,66a レセプターの接続端子
7,67 レセプター支持体
9,69 電解質含有粘着剤
10 絶縁部
11,11A,11B ケーブル
12a,12b,12c ケーブルの接続部
13 電気回路部
13A スイッチ
13B LED表示灯
52 テクスチャーアナライザー
54 押し出し治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーの周辺部に絶縁部を介してレセプターを備えるイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーは、略中央部に製剤を保持する薬物貯留部と、該薬物貯留部の周囲に該薬物貯留部を乳頭部の高さに応じて上下動させるための同心円状のヒダが形成された伸縮部及び皮膚接触部からなるドナー支持体と、電極と、薬物層と、粘着剤とからなり、前記レセプターはレセプター支持体と電極と電解質含有粘着剤とからなり、前記ドナーの周縁部に絶縁部を介して前記レセプターを配置することを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーおよび前記レセプターは、電気回路部及びケーブルから構成される導電部と接続され、前記レセプターを前記ドナーから絶縁部を介して乳房及びその周辺皮膚に配置し、前記ドナーと前記レセプターとをそれぞれ前記電気回路部にケーブルで接続することを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項3】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナーと前記レセプターとを同一の支持部材で一体的に構成することを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項4】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの高さが2.5〜13mmであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項5】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が1つであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項6】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が2つであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項7】
請求項1記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ヒダの数が3つであることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載のイオントフォレーシスデバイスにおいて、前記ドナー支持体の材質をシリコンとすることを特徴とするイオントフォレーシスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−135360(P2012−135360A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288170(P2010−288170)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業委託開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000207827)大鵬薬品工業株式会社 (52)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000230722)日本開閉器工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】