説明

イオンビーム内の中性粒子を検出する装置及び方法

【課題】ビームラインに沿って伝播する間に中和されたイオンビームの割合をより直接的に測定する中性粒子検出器を提供すること。
【解決手段】負電位にあるディフレクタプレート(78)と、このプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の中性粒子が前記プレート(78)に衝突することによって前記プレート(78)から放出される二次電子を収集する第1集電極(82)と、前記プレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の正荷電イオンが前記プレート(78)に衝突することによって前記プレート(78)から放出される二次電子を収集する第2集電極(84)を備えて、イオンビーム(28)の中性粒子含量を検出する検出器(52)を構成する。前記プレート(78)と集電極(8284) は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置される。中性粒子検出器(52)は、イオンビームが伝播する残留背景ガスの組成または圧力に関係なく、イオンビームの中性粒子の割合を決定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン注入機、特にイオンビーム内の中性粒子を検出することによって注入基板のドーパント濃度を監視して制御する改良形装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イオン注入は、集積回路の大量生産で半導体に不純物を添加するための産業で好まれる技術になっている。イオンエネルギーとイオンドーズ量が、注入段階を規定するために使用される2つの最重要変数である。イオンエネルギーは、半導体素子の接合深さを制御するために使用される。イオンビームを形成するイオンのエネルギーレベルが、注入イオンの深さの度合いを決定する。
【0003】イオンドーズ量は、ある半導体材料に対する注入イオンの濃度と関係がある。一般的に、高ドーズ量の注入には高電流注入機(一般的に10ミリアンペア(mA)以上のイオンビーム電流)が使用されるのに対して、低ドーズ量の用途では中電流注入機(一般的に約1mAまでのイオンビーム電流にすることができる)が使用される。
【0004】一般的なイオン注入機は、3部分またはサブシステム、すなわち、(a) イオンビームを出力するターミナルと、(b) 質量分析と、イオンビームの焦点およびエネルギーレベルを調節するビームラインと、(c) イオンビームを注入しようとする半導体ウェハまたは他の基板を収容しているターゲット室とを含む。このターゲット室は、一般的に、ターゲットウェハに注入されるイオンのドーズ量を正確に測定して制御するためのドーズ量制御、即ち、ドーズ量測定装置を備えている。
【0005】ドーパントのドーズ量は、ビーム電流と直接的な関係があるので、ドーズ量制御装置は、ビーム電流測定装置を含む場合が多い。ビーム電流を測定するために、一般的にファラディケージ等の装置が使用される。ファラディケージは、ファラディケージへの電子の出入りを阻止する一方で、ビーム内の荷電イオンを捕獲して測定することによってビーム電流を測定する。
【0006】荷電粒子は適切に捕らえられるが、ビーム内の中性原子は、ファラディケージで検出されず、従って測定されたビーム電流に影響を与えないため、もっと難しい問題になる。このため、イオンビーム内の中性原子は、ファラディケージ測定値に基づいた全ドーズ量を計算する時には考慮されない。しかし、中性原子はイオンとほぼ同じエネルギーを有すると思われるので、それらはウェハに注入され、全ドーパント濃度に影響を与える。ビームの大幅な中和が発生すれば、ファラディケージは基板の真の注入ドーズ量とは違った測定値を与えるであろう。
【0007】ビームの中和の程度は、ビームライン内の圧力にある程度影響される。ビームラインの真空圧が十分に低い場合、注入イオン種は理想的に質量分析磁石で選択される粒子である単一の荷電された正イオンである。しかし、圧力が十分な低さでなければ、残留背景ガス原子との原子衝突によって、エネルギーの大幅な変化を伴わないでビーム内のイオンが荷電状態を変化させるであろう。
【0008】また、ビームの中和の程度は、イオンビームが伝播する残留背景ガスの組成にも影響される。ガス放出またはスパッタを生じやすく、それによって残留背景ガスの組成を変化させるフォトレジスト等の半導体表面に注入する時に、ビームの中和が特に問題となる。
【0009】いずれの場合も、ファラディケージに衝突するビームは十分に中和されるため、荷電イオンおよび中性粒子の両方を含む全ビーム束の一部として、基板に注入される十分なエネルギーを有するが、ファラディケージによって計数されない相当量の原子を含む。
【0010】ビームの中和傾向を補償して基板に注入中の原子のドーズ量を監視する(すなわちドーズ量測定制御)1つの方法が、ファーレイ(Farley)の米国特許第4,539,217号に示されており、この特許は、本発明の譲受人の所有であって、ここで十分に述べるように参考として含まれる。
【0011】ファーレイ特許は、注入中のウェハまでの飛行路内でガス原子との相互作用によって中和された注入イオンを自動的に補償する。一次陽イオンビームがそれの経路に沿ってガス原子と衝突することによって、科学的に決定することができる確率で単一荷電陽イオンの一部に対する電子の添加または除去が行われることに基づいて補償が行われる。その確率は、イオンの種類、イオン速度(エネルギー)およびイオンビームが通過する残留背景ガスの組成および圧力に影響され、それの関数である。
【0012】これらのパラメータを測定することによって、主に、ファラディケージでのビーム電流測定値に基づいた注入ドーズ量の決定を、中性粒子を評価するように補正することができる。ドーズ量測定値は、ファラディケージでのビーム電流測定値に影響しないが、ドーズ量に影響するイオンビーム中和の程度の決定に基づいて(ドーズ量過剰を防止するために)上方修正される。
【0013】ドーズ量測定値は、ドーズ量には単一荷電イオンと同程度に影響するだけであるが、イオンビーム電流に影響する時にファラディケージで2回数えられる二重荷電イオンの程度の決定に基づいて(ドーズ量不足を防止するために)下方修正される。
【0014】ファーレイ特許では、注入機のビームラインに広範囲に渡る圧力が発生するが、その関数がほぼ一次関数であると仮定している。ビーム内の特定点で1回の圧力測定を行って、ビームに沿った圧力路全体に関して仮定を行う。仮定に基づいて、ビーム内の各場所について部分圧力成分を決定することができる。
【0015】それによって、ファラディケージによるイオンビーム電流の測定値対圧力を注入機制御システムに入力することによって、圧力の変化に伴った検出中性粒子の変化を補償する補正信号を発生することができる。この方法は、圧力補償として当該技術では既知であり、注入ドーズ量を正確に監視して制御することができるようにする。
【0016】しかし、ドーズ量制御装置に使用されている圧力補償技術は、残留背景ガスの圧力および組成の両方に関する仮定が注入処理中に変化する点で不都合である。例えば、真空漏れによって残留背景ガスの組成が変化するであろう。また、ビーム内の特定点で圧力を測定するために使用される圧力計の目盛り調整がふらつくであろう。
【0017】さらに、真空ポンピング速度の変動により、または注入中の基板からのガス放出またはスパッタ率から、ビームに沿った圧力分布が変化するであろう。さらにまた、注入中の基板からのフォトレジストのガス放出によって残留背景ガスに水素および水が与えられるため、残留背景ガスの圧力および組成の測定が困難になる。さらに、圧力補償技術を用いて残留背景ガスの正確な圧力および組成を決定できるとしても、注入中のガス粒子の各種類およびエネルギーについてその処理を繰り返し実施しなければならない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、中性粒子検出器及びドーズ量測定制御装置を提供し、ターゲット基板に衝突する前に、ビームラインに沿って伝播する間に中和されたイオンビームの割合をより直接的に測定することである。
【0019】本発明のさらなる目的は、ビームラインに沿って伝播する間に二重荷電されたイオンビームの割合を直接的に測定することである。
【0020】本発明のさらに別の目的は、ファラディケージ等の既知のビーム電流測定機構を用いてイオン注入機におけるイオンビームの中和および二重荷電の程度を測定することである。
【0021】本発明のさらに別の目的は、イオンビームが伝播する残留背景ガスの直接的な圧力測定または組成分析を必要としないで、イオンビームの中和および二重荷電の程度を測定する装置および方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、各請求項に記載の構成を有する。主に中性粒子と正荷電イオンからなるイオンビームの中性粒子含量を検出するための、イオン注入機用の改良形中性粒子検出器が提供されている。
【0023】中性粒子検出器は、(a) 負電位にあるディフレクタプレートと、(b) ディフレクタプレートよりも高い電位にあって、イオンビーム内の中性粒子がディフレクタプレートに衝突することによってディフレクタプレートから放出される二次電子を収集する第1集電極と、(c) ディフレクタプレートよりも高い電位にあって、イオンビーム内の正荷電イオンがディフレクタプレートに衝突することによってディフレクタプレートから放出される二次電子を収集する第2集電極を備えている。ディフレクタプレートと集電極は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置されている。中性粒子検出器は、イオンビームが伝播する残留背景ガスの組成または圧力に関係なく、イオンビームの中性粒子の割合を決定する。
【0024】
【発明の実施の形態】次に図面を参照すると、図1は、全体を10で示したイオン注入機を開示しており、これはイオン源12と、質量分析磁石14と、ビームラインアセンブリ15と、ターゲットまたは端部ステーション16を備えている。イオン源12および質量分析磁石14は、それぞれの電源と共に、全体的にターミナル17として示されている。
【0025】本発明の1つの用途は、図1に示されているような低エネルギー注入機にあり、これでは、低エネルギービームは伝播中に膨張(すなわちブローアップ)する傾向があるため、ビームラインアセンブリ15が比較的短い。しかし、本発明は、ドーズ量測定制御が利用されるいずれの注入装置にも用いられる。
【0026】イオン源12は、プラズマ室20を形成しているハウジング18と、イオン引出しアセンブリ22を含む。ビームラインアセンブリ15は、(i) 真空ポンプ43によって真空排気され、ターミナル開口21、分析開口23およびフラグファラディー42を含むリゾルバーハウジング19と、(ii)電子シャワー45を含むビーム中和器24を備えているが、これらはいずれも本発明の構成要素ではない。
【0027】ビーム中和器24の下流側に端部ステーション16があり、これは処理すべきウェハを取り付けるディスク形ウェハ支持体25を含む。ここで使用するウェハは、イオンビームで注入することができるあらゆる形式の基板を含むものとする。ウェハ支持体25は、注入ビームの方向に(ほぼ)直交する向きであるターゲット平面上にある。
【0028】イオン源12は、L字形フレーム26に取り付けられている。イオン性ドーパントガスは、直接的に圧縮ガスの形か、間接的に固体から蒸発させて得ることができ、プラズマ室20内へ噴射される。一般的なイオン源元素は、ホウ素(B)、リン(P)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)である。これらのイオン源元素のほとんどは固相で用いられるが、ホウ素だけは一般的に気体の三フッ化ホウ素またはジボランの形で用いられる。
【0029】プラズマ室20内にイオンを発生するために、イオン化可能なドーパントガスにエネルギーが与えられる。一般的に、陽イオンが発生するが、本発明は陰イオンがイオン源で発生する装置にも適用できる。陽イオンは、複数の電極27を有するイオン引出しアセンブリ22によってプラズマ室20のスリットから引出される。従って、イオン引出しアセンブリは、プラズマ室から陽イオンのビーム28を引出して、その引出しイオンを加速してフレーム26で支持された質量分析磁石14へ送り込むことができる。
【0030】質量分析磁石14は、適当な電荷/質量比のイオンだけをビームラインアセンブリ15へ進ませることができる。質量分析磁石14は、アルミニウムのビームガイド30によって定められた湾曲ビーム路29を含み、このビームガイド30の真空排気は真空ポンプ31および43によって行われる。そのビーム路に沿って伝播するイオンビーム28は、質量分析磁石14によって発生する磁界の影響を受ける。
【0031】磁界によってイオンビーム28は湾曲ビーム路29に沿って、イオン源12付近の第1の入口軌道34から、リゾルバーハウジング19付近の第2の出口軌道35へ移動する。ビーム28の、不適当な電荷/質量比のイオンからなる部分28’および28”は湾曲軌道から逸れて、アルミニウムビームガイド30の壁に入る。このように、磁石14はビーム28内の所望の電荷/質量比を有するイオンだけをビームラインアセンブリ15へ進める。
【0032】端部ステーション16のディスク形ウェハ支持体25はモータ46で回転する。このため、イオンビームは、支持体に取り付けられたウェハに、それが円形経路で移動する時に衝突する。端部ステーション16は、2つの軸線、すなわちイオンビームのビーム路に直交する軸線と、公称ビーム−ターゲット交差部分を横切る軸線の回りに回動可能である。このように、イオン注入角度を直角からわずかに変更することができる。
【0033】当該技術では既知のように、ディスク形支持体25はモータ47によって一定の角速度で回転し、支持体25はモータ49と親ねじ(図示せず)によって垂直方向に(図1の紙面の内外方向へ)移動することができる。
【0034】親ねじが支持体を垂直方向に移動させる速度は、(i) ファラディケージ50等のビーム電流測定装置で測定して、(ii)本発明の原理に従って構成された中性粒子検出器52を用いて決定される係数で補正した注入ドーズ量の計算値によって決定される。図示の実施例では、ファラディケージ50と中性粒子検出器52によって測定/検出アセンブリ54が構成されている。
【0035】図2は、本発明の原理に従って構成されて図1の装置10に組み込まれているドーズ量測定制御装置60を示している。ドーズ量測定制御装置60は、(a) ファラディケージ50と、エンクロージャ66で包囲された中性粒子検出器52からなる測定/検出アセンブリ54と、(b) ファラディケージ50および中性粒子検出器52からの入力に基づいて補正モータ制御信号を発生する制御信号発生器62と、(c) 制御信号発生器62の出力に応じてモータ49を、従ってディスク形ウェハ支持体25の垂直位置を制御するモータコントローラ64を含む。
【0036】ファラディケージ50は、入口室68と、磁石72で包囲された出口室70と、ビーム電流検出プレート74とを含んでいる。当該技術では理解されるように、イオンビーム28は、ディスク形ウェハ支持体(図1を参照)のスロットからファラディケージ50に入る。入射イオンビーム28は、イオンビーム粒子が伝播中に残留背景ガスと衝突し、そのために単一荷電陽イオンに対して電子の添加または除去が行われるために、様々な電荷を有する成分で構成されている。
【0037】このため、I0 を1秒当たりの中性粒子の数、I- を負荷電イオン流(1つの電子が余分)、I+ を単一荷電陽イオン流、I+ + を二重荷電陽イオン流(2つの電子が不足)とした時、I+(入射)=I0 +I- +I+ +I+ + ・・等となる。
【0038】入射イオンビームで注入中のウェハのドーズ量を決定する際に、中性粒子および単一荷電イオンが主に重要であり、二重荷電イオンの重要性は低い。従って、IT が問題の注入イオンビーム束のほぼ合計を表すとすると、IT =I0 +I+ +(I+ +
となる(方程式1)。
【0039】イオンビームのこれらの成分の3つはすべて、十分なエネルギーを有していればウェハに注入されるが、ファラディケージによって測定される注入ドーズ量の真の表示は、単一荷電イオンI+ の測定値に対応するだけである。二重荷電イオンは、ドーズ量には単一荷電イオンと同じだけ影響するが、ビーム電流に影響する時にファラディケージによって2回数えられるので、二重荷電イオンのファラディケージ測定は誤りである。
【0040】さらに、中性粒子はファラディケージで測定されないが、それらは単一荷電イオンと同様にドーズ量に影響する。このため、ファラディケージ50から発生するイオンビーム電流信号75は、二重荷電イオンおよび中性粒子を評価できるように補正する必要がある。(ファラディケージ内の磁石72は、電子がファラディケージに対して出入りして測定電流に誤った影響を与えることを防止する抑制機構になっている。)
【0041】中性粒子検出器52は、そのような補償を行う機構である。わかりやすくするために機構52は中性粒子検出器と呼ばれているだけであるが、後述するように、それは単一荷電および二重荷電イオンを測定することもできる。中性粒子検出器54はファラディケージ内に一体化されており、電圧源80に接続された励起ディフレクタプレート78と、ディフレクタプレート78から放出されて、それぞれ中性粒子、単一荷電イオンおよび二重荷電イオンに対応した二次電子を収集する第1,第2,第3集電極82,84,86を含む。
【0042】イオンビームのサンプルが、ファラディケージ出口室70の開口88を通って中性粒子検出器52に入る。このため、イオンビーム28の少量のサンプルが中性粒子検出器52に入る。電圧源80は、イオンビーム加速度ポテンシャルの約20%の範囲で作動し、正端子で接地され、負端子でディフレクタプレート78に接続されている。従って、中性粒子検出器の内部には図2R>2に示されている矢印の方向の(ディフレクタプレート78に向かう)電界Eが形成されている。
【0043】イオンビームのサンプル分は、負にバイアスされているディフレクタプレート78によって発生した電界を横切る。ビームのイオン化成分(単一荷電または二重荷電イオン)はディフレクタプレート78に向かう電界の方向に逸れるため、それらはプレートに衝突する。二重荷電イオンは電界の影響を受けやすいので、それらは最初にディフレクタプレートのほぼ92で示された領域に衝突する。単一荷電イオンが受ける電界の影響は比較的小さいので、それらはディフレクタプレートのほぼ場所94に衝突する。イオンビーム内の中性粒子は電界の影響を受けないので、直接的にそれらの移動線上のほぼ場所96でディフレクタプレートに衝突する。
【0044】ディフレクタプレート78はグラファイト製であって、単一荷電または二重荷電イオンおよび中性粒子と衝突した時に二次電子を放出する。ディフレクタプレートからの二次電子放出率は、残留背景ガスの圧力および組成に関係ない。二次電子は、ディフレクタプレート78の表面の場所92、94および96からそれぞれ集電極86、84および82に向けて加速され、これらの集電極は、当該技術では既知のように、ディフレクタプレート78よりも高い電位にバイアスされている。
【0045】全ビーム束(陽イオンおよび中性粒子)のうちの中性粒子によって与えられる部分と、二重荷電イオンによって与えられる部分を決定することによって、二重荷電イオンおよび中性粒子を評価できるようにファラディケージ50から出力されたイオンビーム電流信号75を補償するために使用される信号100を発生することができる。第1集電極82(I0 )、第2集電極84(I+ )および第3集電極86(I+ + )で集められた二次電子放出電流の(不均一な二次電子放出収量を補正した後の)比を使用して、全ビーム束の単一荷電イオンによって与えられる部分を次式(方程式2):単一荷電ビーム束/全ビーム束=I+ /{I+ +k(I0 )+k2 (I+ + )}
に従って決定される。
【0046】但し、k=荷電イオンからの二次電子収量(補正済み)/中性粒子からの二次電子収量、k2 =I+ についての二次放出収量/I+ + についての二次放出収量である。
【0047】従って、上記(方程式1): IT =I0 +I+ + (I+ + ) に戻って、上記(方程式2)から決定されるI+ 部分がわかれば、ビームの中性粒子(I0 )および二重荷電イオン(I+ + )によって与えられる部分を決定することができる。
【0048】上記計算は、ビーム電流補正係数計算機(ロジック手段)98で行われ、この計算機はそのようにイオンビームの中和の程度を決定して、補正信号100をビーム電流調整器(ロジック手段)102へ送る。計算機98は、ロジックソフトウェアまたはハードウェアによって実行することができる。
【0049】ビーム電流調整器102は、ファラディケージ50から出力される(注入ドーズ量を表す)イオンビーム電流信号75を、(i) ファラディケージのビーム電流測定値に影響しないが、ドーズ量に影響する中性粒子を評価するために上方へ、また(ii)ドーズ量には単一荷電イオンと同程度に影響するだけであるが、イオンビーム電流に影響する時にファラディケージで2回数えられる二重荷電イオンを評価するために下方へ修正して、補正済みイオンビーム電流信号104を出力する。
【0050】モータコントローラ64は、補正済みイオンビーム電流信号104を受け取って、ディスク形ウェハ支持体25(図1を参照)の垂直位置を制御するためにモータ49へ駆動制御信号106を出力する。
【0051】従って、注入された基板のドーパント濃度を監視して制御する装置および方法の好適な実施形態が以上に説明されている。しかし、上記説明は例示にすぎず、本発明は上記の特定の実施形態に制限されることはなく、請求の範囲およびその同等物に記載されている本発明の範囲から逸脱しないで上記説明に対して様々な再配置、変更および代替を行うことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理に従って構成されたドーズ量測定制御装置の1つの実施形態を組み込んだイオン注入機の斜視図である。
【図2】図1の装置のドーズ量測定制御装置の断面図である。
【符号の説明】
10 イオン注入機
28 イオンビーム
52 中性粒子検出器
60 ドーズ量測定制御装置
78 ディフレクタプレート
82 第1集電極
84 第2集電極
86 第3集電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】主に中性粒子と正荷電イオンからなるイオンビーム(28)の中性粒子含量を検出するための、イオン注入機(10)用の中性粒子検出器(52)であって、負電位にあるディフレクタプレート(78)と、該ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の中性粒子が前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第1集電極(82)と、前記ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の正荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第2集電極(84)を備えており、前記ディフレクタプレート(78)と前記集電極(8284) は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置されていることを特徴とする中性粒子検出器。
【請求項2】イオンビーム(28)のサンプル部分だけを受け取るようにしたことを特徴とする請求項1記載の中性粒子検出器。
【請求項3】イオンビーム(28)内の正荷電イオンは、単一荷電イオンと二重荷電イオンを含んでおり、第2集電極(84)は、イオンビーム内の単一荷電イオンがディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集し、さらに、前記ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の二重荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第3集電極(86)を備えており、前記ディフレクタプレート(78)と前記第1,第2,第3集電極(828486)は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置されていることを特徴とする請求項1記載の中性粒子検出器。
【請求項4】さらに、第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流を第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流と比較することによって、ビーム(28)の中性粒子分を表す補正信号(100) を出力するロジック(98)を含むことを特徴とする請求項1記載の中性粒子検出器。
【請求項5】さらに、(i) 第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流、第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流、および第3集電極(86)によって収集された第3の二次電子放出電流を比較して、(ii)その比較に基づいて、ビーム(28)の中性粒子分と二重荷電イオン分とを表す補正信号(100) を出力するロジック(98)を含むことを特徴とする請求項3記載の中性粒子検出器。
【請求項6】ディフレクタプレート(78)はグラファイト製であり、第1,第2集電極(8284) はグラファイト製であることを特徴とする請求項1記載の中性粒子検出器。
【請求項7】ディフレクタプレート(78)はグラファイト製であり、第1,第2,第3集電極(828486)はグラファイト製であることを特徴とする請求項3記載の中性粒子検出器。
【請求項8】主に中性粒子と荷電イオンからなるイオンビーム(28)の中性粒子含量を決定する方法であって、(i) 負電位にあるディフレクタプレート(78)と、(ii)各々が該ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にある第1,第2集電極(8284) との間に形成された電界にイオンビーム(28)を通す段階と、イオンビーム内の中性粒子が前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を前記第1集電極(82)で収集する段階と、イオンビーム内の正荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を前記第2集電極(84)で収集する段階を有することを特徴とする方法。
【請求項9】さらに、イオンビームを前記電界に通す前に、イオンビーム(28) を開口(88)に通す初期段階を有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】さらに、第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流を第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流と比較する段階と、比較に基づいて、ビーム(28)の中性粒子分を表す補正信号(100) を出力する段階を有することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】主に中性粒子と単一または二重の正荷電イオンからなるイオンビーム(28)の中性粒子含量および二重荷電イオン含量を決定する方法であって、(i) 負電位にあるディフレクタプレート(78)と、(ii)各々が該ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にある第1、第2および第3集電極(828486)の間に形成された電界にイオンビーム(28)を通す段階と、イオンビーム内の中性粒子が前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を前記第1集電極(82)で収集する段階と、イオンビーム内の単一荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を前記第2集電極(84)で収集する段階と、イオンビーム内の二重荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を前記第3集電極(86)で収集する段階とを有することを特徴とする方法。
【請求項12】さらに、イオンビームを前記電界に通す前に、イオンビーム(28)を開口(88)に通す初期段階を有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】さらに、第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流、第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流、および第3集電極(86)によって収集された第3の二次電子放出電流を比較する段階と、比較に基づいて、ビーム(28)の中性粒子分と二重荷電イオン分を表す補正信号(100) を出力する段階を有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】主に中性粒子と正荷電イオンからなるイオンビーム(28)を発生するイオン注入機(10)用のドーズ量測定制御装置(60)であって、正荷電イオンによって発生する電流を測定して イオンビーム電流信号(74)を出力するビーム電流測定装置(50)と、イオンビーム(28)の中性粒子含量を検出する中性粒子検出器(52)を有しており、該中性粒子検出器(52)は、負電位にあるディフレクタプレート(78)と、該ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の中性粒子が前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第1集電極(82)と、前記ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の正荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第2集電極(84)を備えており、前記ディフレクタプレート(78)と前記集電極(8284) は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置されていることを特徴とするドーズ量測定制御装置。
【請求項15】さらに、ビーム電流測定装置(50)と中性粒子検出器(52)の中間に配置された開口(88)を有することを特徴とする請求項14記載のドーズ量測定制御装置。
【請求項16】イオンビーム(28)内の正荷電イオンは単一荷電イオンと二重荷電イオンを含んでおり、第2集電極(84)は、イオンビーム内の単一荷電イオンがディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集し、前記中性粒子検出器(52)はさらに、前記ディフレクタプレート(78)よりも高い電位にあって、イオンビーム内の二重荷電イオンが前記ディフレクタプレート(78)に衝突することによって前記ディフレクタプレート(78)から放出される二次電子を収集する第3集電極(86)を備えており、前記ディフレクタプレート(78)と前記第1,第2,第3集電極(828486)は、イオンビームが通過できる距離を置いて離隔配置されていることを特徴とする請求項14記載のドーズ量測定制御装置。
【請求項17】さらに、第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流を第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流と比較することによって、ビーム(28)の中性粒子分を表す補正信号(100) を出力するロジック手段(98)を含むことを特徴とする請求項14記載のドーズ量測定制御装置。
【請求項18】さらに、補正信号(100) とイオンビーム電流信号(74)を受け取って、補正イオンビーム電流信号(104) を出力するロジック手段(102) を含むことを特徴とする請求項17記載のドーズ量測定制御装置。
【請求項19】さらに、(i) 第1集電極(82)によって収集された第1の二次電子放出電流、第2集電極(84)によって収集された第2の二次電子放出電流、および第3集電極(86)によって収集された第3の二次電子放出電流を比較して、(ii)ビーム(28)の中性粒子分および二重荷電イオン分を表す補正信号(100) 出力するロジック手段(98)を含むことを特徴とする請求項14記載のドーズ量測定制御装置。
【請求項20】さらに、補正信号(100) とイオンビーム電流信号(74)を受け取って、補正イオンビーム電流信号(104) を出力するロジック手段(102) を含むことを特徴とする請求項19記載のドーズ量測定制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平11−72570
【公開日】平成11年(1999)3月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−194098
【出願日】平成10年(1998)7月9日
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【住所又は居所原語表記】Eaton Center,Cleveland,Ohio 44114,U.S.A.