説明

イオン交換装置

【課題】原水タンクや塩水タンク等の液タンクへの異物の侵入を抑制することができるイオン交換装置を提供する。
【解決手段】有底箱状に形成され、上部に開閉可能な蓋部材を有する筐体本体部10と、前記筐体本体部の内部に配置され、原水を導入することにより処理水を製造するイオン交換樹脂床211が収容される圧力タンク2と、前記筐体本体部10の内部に配置され、前記イオン交換樹脂床211を再生する再生液及び/又は水が貯留される液タンク4(6)と、前記液タンク4(6)に接続され、前記液タンク4(6)の許容液位を超えた再生液及び/又は水を前記筐体本体部10の外部に排出するオーバーフローラインL9(L10)と、を備え、前記オーバーフローラインL9(L10)には、外部から前記液タンク4(6)への異物の侵入を抑制する異物侵入抑制手段51(52)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬水軟化装置等のイオン交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水道水や地下水等の原水に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)や硝酸性窒素(硝酸イオン及び亜硝酸イオン)等をイオン交換樹脂により吸着して除去するイオン交換装置が知られている。これらのイオン交換装置のうち、陽イオン交換樹脂を使用して原水中の硬度成分をナトリウムイオンやカリウムイオンへ置換するものは、通常、硬水軟化装置と呼ばれる。一方、イオン交換装置のうち、陰イオン交換樹脂を使用して原水中の硝酸性窒素を塩化物イオンへ置換するものは、通常、硝酸性窒素除去装置と呼ばれる。
【0003】
硬水軟化装置において、イオン交換樹脂床は、所定の採水量に達すると、イオン交換基が硬度成分でほぼ飽和状態になり、イオン交換能力を失う状態、すなわち破過状態になる。そこで、硬水軟化装置では、イオン交換樹脂床が破過状態になる前に、イオン交換樹脂床が収容される圧力タンクへ再生液として塩水を供給してイオン交換樹脂のイオン交換能力を回復させる再生プロセス及び押出プロセスが行われている。
【0004】
硬水軟化装置においては、塩水タンクに収容された塩水を圧力タンクへ供給すると共に、供給された塩水を圧力タンクから系外へ排出させるための駆動力を得る構成として、水頭圧差を利用した構成がある。水頭圧差を利用した構成を有する硬水軟化装置としては、例えば、圧力タンクよりも上方に原水タンク及び塩水タンクを配置し、再生プロセス時には塩水タンクから塩水を圧力タンク内へ下降流として流入させ、また押出プロセス時には原水タンクから原水を圧力タンク内へ下降流として流入させる硬水軟化装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−294981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した原水タンク及び塩水タンクには、オーバーフローライン(越流管)が設けられている。オーバーフローラインは、水位制御のために設けられたフロートバルブ等の故障などにより流路の遮断不良が発生した場合において、超過した原水や塩水を系外に排出するための設備である。このオーバーフローラインの下流側の端部は、例えば排水口に向けて大気に開放されている。このため、オーバーフローラインの端部から臭気のある気体や虫等が異物として侵入し、上流側の原水タンクや塩水タンクに達するおそれがある。これらの異物は、装置内部の衛生状態を悪化させるだけでなく、仮に処理水中に混入すると、処理水を利用するユーザに不快感を与える。
【0007】
従って、本発明は、原水タンクや塩水タンク等の液タンクへの異物の侵入を抑制することができるイオン交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有底箱状に形成され、上部に開閉可能な蓋部材を有する筐体本体部と、前記筐体本体部の内部に配置され、原水を導入することにより処理水を製造するイオン交換樹脂床が収容される圧力タンクと、前記筐体本体部の内部に配置され、前記イオン交換樹脂床を再生する再生液及び/又は水が貯留される液タンクと、前記液タンクに接続され、前記液タンクの許容液位を超えた再生液及び/又は水を前記筐体本体部の外部に排出するオーバーフローラインと、を備え、前記オーバーフローラインには、外部から前記液タンクへの異物の侵入を抑制する異物侵入抑制手段が設けられているイオン交換装置に関する。
【0009】
また、前記イオン交換装置の前記異物侵入抑制手段は、前記筐体本体部の外部に位置する前記オーバーフローラインの下流側に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記イオン交換装置の前記異物侵入抑制手段は、前記筐体本体部の内部に位置する前記オーバーフローラインに設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記イオン交換装置の前記液タンクは、再生液が貯留される第1液タンクと、水が貯留される第2液タンクとから構成され、前記オーバーフローラインは、前記第1液タンクに接続され、前記第1液タンクの許容液位を超えた再生液を前記筐体本体部の外部に排出する第1オーバーフローラインと、前記第2液タンクに接続され、前記第2液タンクの許容液位を超えた水を前記筐体本体部の外部に排出する第2オーバーフローラインとから構成され、前記第1オーバーフローラインと前記第2オーバーフローラインとは、接続部において合流し、該接続部よりも下流側においてラインを共用し、前記異物侵入抑制手段は、共用する前記ラインに設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記イオン交換装置の前記異物侵入抑制手段は、防虫網及び/又は排水トラップであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原水タンクや塩水タンク等の液タンクへの異物の侵入を抑制することができるイオン交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のイオン交換装置の第1実施形態としての硬水軟化装置1の概略外観図である。
【図2】本発明のイオン交換装置の第1実施形態としての硬水軟化装置1の全体構成図である。
【図3】排水トラップ52の構成図である。
【図4】第1実施形態のプロセス制御バルブ3により実行されるプロセスを示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の各プロセスにおけるプロセス制御バルブ3の開閉状態を示す説明図である。
【図6】本発明のイオン交換装置の第2実施形態としての硬水軟化装置1Aの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明のイオン交換装置の第1実施形態としての硬水軟化装置1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のイオン交換装置の第1実施形態としての硬水軟化装置1の概略外観図である。図2は、本発明のイオン交換装置の第1実施形態としての硬水軟化装置1の全体構成図である。図3は、排水トラップの構成図である。図4は、第1実施形態のプロセス制御バルブ3により実行されるプロセスを示すフローチャートである。図5は、第1実施形態の各プロセスにおけるプロセス制御バルブ3の開閉状態を示す説明図である。
【0016】
本実施形態の硬水軟化装置1は、水道水、地下水、工業用水等の原水中に含まれる硬度成分をナトリウムイオン(又は、カリウムイオン)へ置換して軟水を生成する。硬水軟化装置1は、軟水を各種の用水として需要箇所へ供給する目的で使用される。硬水軟化装置1は、家屋やマンション等の居住建物、ホテルや大衆浴場等の集客施設、ボイラやクーリングタワー等の冷熱機器、食品加工装置や洗浄装置等の水使用機器等に接続される。
【0017】
また、本実施形態の硬水軟化装置1は、原水W1をイオン交換樹脂床211(後述)で軟水化して得られた処理水(軟水)W2を浴室等の需要箇所(不図示)に供給する水処理プロセスST1と、排水ラインL5の内部に滞留しているエアを排出する(エア抜きする)呼び水プロセスST2と、塩水W4を供給してイオン交換樹脂床211を再生させる再生プロセスST3と、イオン交換樹脂床211に供給された塩水W4を押し出す押出プロセスST4と、イオン交換樹脂床211に残留した塩水W4を洗浄するリンス・プロセスST5と、を実行可能な構成を備える。
【0018】
本実施形態の硬水軟化装置1は、図1に示すように、全体が略箱状に形成された筐体本体部10と、この筐体本体部10の内部に設けられた圧力タンク2、塩水タンク4、原水タンク6、並びに不図示のバルブ、ライン等と、を備える。
【0019】
筐体本体部10は、ベース11と、前面カバー12と、背面カバー13と、蓋部材としての上面パネル14と、を備える。
【0020】
ベース11は、硬水軟化装置1の底部に設けられた部材である。ベース11の上部には、圧力タンク2のほか、不図示のバルブ、ライン等が設置されている。
【0021】
前面カバー12及び背面カバー13は、硬水軟化装置1の外周を覆う部材である。背面カバー13は、ベース11に固定されている。一方、前面カバー12は、背面カバー13に対して着脱自在に取り付けられている。このため、前面カバー12を取り外すことにより、内部に設置された圧力タンク2等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0022】
また、圧力タンク2の重力方向における上方には、後述する塩水タンク4及び原水タンク6が配置されている。本実施形態の硬水軟化装置1において、塩水タンク4及び原水タンク6は、横方向に互いに隣接するように一体のタンクとして形成されている。塩水タンク4と原水タンク6とは、内部に設けられた不図示の仕切板により、塩水W4と原水W1とが混じり合わないように構成されている。
【0023】
上面パネル14は、塩水タンク4及び原水タンク6の上部に設けられている。上面パネル14の背面側には、上面パネル14を開閉自在とする不図示のヒンジ機構が設けられている。また、上面パネル14の前面側には、不図示の固定機構が設けられている。ユーザは、固定機構を解除して、上面パネル14を図中の矢印上方向に開くことができる。上面パネル14の内側には、不図示の操作パネル、塩載置部42(後述)等が設けられている。
【0024】
また、背面カバー13の側面には、第1補水ラインL7の取入口15、軟水ラインL2の取出口16、原水ラインL1の取入口17、第1オーバーフローラインL9の取出口18a、第2オーバーフローラインL10の取出口18b、及び排水ラインL5の取出口19が設けられている(各ラインについては後述する)。
【0025】
次に、図2を参照して、本実施形態の硬水軟化装置1の全体構成について説明する。以下の説明において「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。なお、図2においては、背面カバー13(図1)を二点鎖線のラインで示す。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の硬水軟化装置1は、圧力タンク2と、バルブ手段としてのプロセス制御バルブ3と、液タンクとしての塩水タンク4と、バルブ制御手段としての制御部5と、液タンクとしての原水タンク6と、を備える。
【0027】
圧力タンク2は、圧力タンク本体21を主体として構成される。圧力タンク本体21は、上部に開口部を有する有底の筒状体であり、開口部を蓋部材で密閉している。圧力タンク本体21の内部には、陽イオン交換樹脂ビーズからなるイオン交換樹脂床211、及び濾過砂利からなる支持床212が収容されている。
【0028】
イオン交換樹脂床211は、原水W1を軟水化する処理材として機能する。イオン交換樹脂床211は、圧力タンク本体21の内部において、支持床212の上部に積層されている。
【0029】
支持床212は、イオン交換樹脂床211に対する流体の整流部材として機能する。支持床212は、圧力タンク本体21の底部側に収容されている。圧力タンク2の詳細については後述する。
【0030】
プロセス制御バルブ3は、少なくとも、原水W1を圧力タンク2の底部スクリーン(底部配液部)242へ配液しながら、頂部スクリーン(頂部集液部)241で集液することにより原水W1の上昇流を生成して、処理水である軟水W2を製造する水処理プロセスST1の水(原水W1、軟水W2)の流れ;及び、再生液である塩水W4を頂部スクリーン(頂部配液部)241へ配液しながら、底部スクリーン(底部集液部)242で集液することにより塩水W4の下降流を生成して、イオン交換樹脂床211を再生させる再生プロセスST3の塩水W4の流れを切り換え可能なバルブである。プロセス制御バルブ3の詳細については後述する。
【0031】
塩水タンク4は、イオン交換樹脂床211を再生する再生液としての塩水W4を貯留する液タンクである。塩水W4は、陽イオン交換樹脂ビーズを用いる硬水軟化装置においては、塩化ナトリウム、塩化カリウムの各水溶液等を利用することができる。
【0032】
塩水タンク4は、圧力タンク2よりも重力方向における上方に配置されている。塩水タンク4は、重力方向と直交する方向に、原水タンク6と略並列な位置に配置されている。塩水タンク4の液面(後述するタンク領域41の液面)と、排水ラインL5の開放末端部(後述)との高さ関係は、塩水タンク4の液面 > 排水ラインL5の開放末端部の関係となるように設定されている。そして、本実施形態の硬水軟化装置1は、塩水タンク4における液面と排水ラインL5の開放末端部との間の水頭圧差により、塩水タンク4から圧力タンク2へ塩水W4が流下するように構成されている。塩水タンク4の詳細については後述する。
【0033】
制御部5は、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部5は、フロースイッチ321(後述)から入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ3の動作を制御する。メモリには、本実施形態の硬水軟化装置1の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。この制御プログラムは、例えば、硬水軟化装置1における水処理プロセスST1の流路と再生プロセスST3の流路とを切り換えるように、プロセス制御バルブ3を制御するプログラムである。CPUは、制御プログラムに従って、水処理プロセスST1〜リンス・プロセスST5を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ3を制御する。
【0034】
原水タンク6は、原水ラインL1から第1補水ラインL7を経て供給された原水W1を貯留する液タンクである。原水W1としては、水道水、地下水、工業用水等を利用することができる。
【0035】
原水タンク6は、圧力タンク2よりも重力方向における上方に配置されている。原水タンク6の液面と、排水ラインL5の開放末端部との高さ関係は、原水タンク6の液面 > 排水ラインL5の開放末端部の関係となるように設定されている。そして、本実施形態の硬水軟化装置1は、原水タンク6における液面と排水ラインL5の開放末端部との間の水頭圧差により、原水タンク6から圧力タンク2へ原水W1が流下するように構成されている。原水タンク6の詳細については後述する。
【0036】
次に、上述した圧力タンク2、プロセス制御バルブ3、塩水タンク4、及び原水タンク6の構成について詳細に説明する。
【0037】
圧力タンク2において、圧力タンク本体21の底部には、原水ラインL1の他方の端部が配置されている。圧力タンク本体21内に配置される原水ラインL1は、合成樹脂製パイプなどを用いた集配液管231となっており、この集配液管231がイオン交換樹脂床211を貫通して支持床212の下部に到達するように設けられている。水処理プロセスST1において、原水ラインL1を流通する原水W1は、圧力タンク本体21の底部から圧力タンク2の内部に供給される。一方、圧力タンク本体21の頂部には、軟水ラインL2の一方の端部が配置されている。すなわち、水処理プロセスST1において、圧力タンク2の内部でイオン交換樹脂床211により処理されて得られた軟水W2は、圧力タンク2の上部から軟水ラインL2を流通する。
【0038】
圧力タンク2に配置された、原水ラインL1(集配液管231)の他方の端部には、樹脂ビーズの流出を防止する底部スクリーン242が設けられている。底部スクリーン242は、樹脂ビーズよりも小さな多数の開孔を有する(後述する頂部スクリーン241も同様)。底部スクリーン242は、原水ラインL1の他方の端部と連通する。底部スクリーン242による配液位置及び集液位置は、支持床212の下部に設定される。底部スクリーン242は、水処理プロセスST1において、イオン交換樹脂床211の底部から原水W1を配液する底部配液部、及び再生プロセスST3において、イオン交換樹脂床211の底部から塩水W4を集液する底部集液部として機能する。
【0039】
また、圧力タンク2に配置された、軟水ラインL2の一方の端部には、樹脂ビーズの流出を防止する頂部スクリーン241が設けられている。頂部スクリーン241は、軟水ラインL2の一方の端部と連通する。頂部スクリーン241による配液位置及び集液位置は、イオン交換樹脂床211の頂部付近に設定される。頂部スクリーン241は、再生プロセスST3において、イオン交換樹脂床211の頂部から塩水W4を配液する頂部配液部、及び水処理プロセスST1において、イオン交換樹脂床211の頂部から原水W1を集液する頂部集液部として機能する。
【0040】
プロセス制御バルブ3は、その内部に、各種のライン、弁等を備える。具体的には、プロセス制御バルブ3は、ラインとして、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、希釈水ラインL3と、塩水ラインL4と、排水ラインL5と、バイパスラインL6と、第2補水ラインL8と、を備える。後述するように、原水ラインL1の一部は、排水ラインL5としても機能する。
【0041】
また、プロセス制御バルブ3は、弁として、原水通水弁311と、バイパス弁312と、軟水通水弁313と、塩水弁314と、再生排水弁315と、を備える。また、プロセス制御バルブ3は、フロースイッチ321を備える。
【0042】
本実施形態の硬水軟化装置1は、プロセス制御バルブ3の外部に、各種のライン等を備える。
具体的には、原水ラインL1は、プロセス制御バルブ3の外部(原水供給源)から内部に導入され、再度外部に向けて延びている。軟水ラインL2は、プロセス制御バルブ3の外部(圧力タンク2)から内部に導入され、再度外部に向けて延びている。希釈水ラインL3は、プロセス制御バルブ3の外部(原水タンク6)から内部に導入されるように延びている。塩水ラインL4は、プロセス制御バルブ3の外部(塩水タンク4)から内部に導入され、再度外部(圧力タンク2)へ向けて延びている。排水ラインL5は、プロセス制御バルブ3の外部(圧力タンク2)から内部に導入され、再度外部に向けて延びている。第1補水ラインL7は、原水ラインL1の接続部J11(後述)と原水タンク6に設けられた第1フロート弁74(後述)とを接続する。第2補水ラインL8は、原水ラインL1の接続部J14(後述)と塩水タンク4内に配置された第2フロート弁75(後述)とを接続する。
【0043】
原水ラインL1は、上流側において、外部の原水供給源(不図示)に接続され、下流側において、圧力タンク2の底部と連通している。原水ラインL1は、原水W1を圧力タンク本体21及び原水タンク6に供給する供給路を構成する。原水ラインL1には、原水供給源から原水W1が圧送される。例えば、原水W1が水道水であれば、水道圧により圧送される。原水ラインL1には、原水供給源から圧力タンク2に向けて順に、接続部J11、減圧弁73、フロースイッチ321、接続部J12、原水通水弁311、接続部J13、及び接続部J14が設けられている。
【0044】
原水ラインL1の接続部J11には、第1補水ラインL7の上流側が接続されている。原水ラインL1の接続部J12には、バイパスラインL6の上流側の端部が接続されている。原水ラインL1の接続部J13には、排水ラインL5の上流側の端部が接続されている。後述するように、原水ラインL1において、接続部J13よりも下流側は、排水ラインL5としても機能する。原水ラインL1の接続部J14には、第2補水ラインL8の上流側の端部が接続されている。
減圧弁73は、原水W1を所定の水圧まで減圧する弁である。
【0045】
フロースイッチ321は、原水ラインL1における減圧弁73と接続部J12との間に設けられている。フロースイッチ321は、制御部5と電気的に接続されている。フロースイッチ321は、原水ラインL1において所定の水流を検知すると、検出信号を制御部5に出力する。すなわち、フロースイッチ321は、原水ラインL1を所定流量の原水W1が流通したことを検知すると、検出信号を制御部5に出力する。
【0046】
原水通水弁311は、原水ラインL1において、接続部J12と接続部J13との間に設けられている。原水通水弁311は、原水ラインL1における原水W1の流通を制御する。原水通水弁311は、弁体の駆動部が制御部5と電気的に接続されている。原水通水弁311における弁の開閉は、制御部5により制御される。
【0047】
第1補水ラインL7は、上流側において、原水ラインL1の接続部J11に接続され、下流側において原水タンク6に接続されている。第1補水ラインL7は、原水ラインL1を流通する原水W1の一部を原水タンク6に供給する供給路を構成する。
【0048】
軟水ラインL2は、一方の端部において、圧力タンク2の頂部と連通し、他方の端部において、需要箇所(不図示)に接続されている。軟水ラインL2は、イオン交換樹脂床211により処理されて得られた軟水W2を需要箇所に供給するための供給路を主として構成する。軟水ラインL2には、圧力タンク2から需要箇所に向けて順に、接続部J21、軟水通水弁313、接続部J22が設けられている。軟水ラインL2の接続部J21には、塩水ラインL4の下流側の端部が接続されている。軟水ラインL2において、接続部J21よりも圧力タンク2側は、塩水ラインL4としても機能する。また、軟水ラインL2の接続部J22には、バイパスラインL6の下流側の端部が接続されている。
【0049】
軟水通水弁313は、軟水ラインL2において、接続部J21と接続部J22との間に設けられている。軟水通水弁313は、軟水ラインL2における軟水W2の流通を制御する。軟水通水弁313は、弁体の駆動部が制御部5と電気的に接続されている。軟水通水弁313における弁の開閉は、制御部5により制御される。
【0050】
塩水ラインL4は、上流側において、塩水タンク4のタンク領域41(後述)に接続され、下流側において軟水ラインL2の接続部J21に接続されている。塩水ラインL4は、イオン交換樹脂床211を再生させるための塩水W4を圧力タンク2に供給するための供給路を構成する。
【0051】
塩水ラインL4には、塩水タンク4から軟水ラインL2の接続部J21に向けて順に、第2逆止弁72、塩水弁314と、接続部J4と、が設けられている。第2逆止弁72は、塩水W4の流れを、塩水タンク4から圧力タンク本体21へ流下させる方向へのみ規制する。塩水弁314は、塩水ラインL4における塩水W4の流通を制御する。塩水弁314は、弁体の駆動部が制御部5と電気的に接続されている。塩水弁314における弁の開閉は、制御部5により制御される。
【0052】
希釈水ラインL3は、上流側において、原水タンク6の底部に接続され、下流側において、塩水ラインL4の接続部J4に接続されている。希釈水ラインL3は、主として、再生プロセスST3において塩水W4を希釈するための原水Wを塩水ラインL4に供給するため、及び、押出プロセスST4においてイオン交換樹脂床211内の塩水W4を押し出す原水W1を、圧力タンク2に供給するための供給路を構成する。希釈水ラインL3には、第1逆止弁71が設けられている。第1逆止弁71は、原水W1の流れを、原水タンク6から圧力タンク本体21へ流下させる方向へのみ規制する。
【0053】
排水ラインL5の一方の端部は、大気に開放されており、開放末端部を構成する。また、排水ラインL5の他方の端部は、原水ラインL1の接続部J13に接続されている。排水ラインL5は、各種の排水W5を系外に排水するための排水路を構成する。
【0054】
原水ラインL1の下流側は、圧力タンク2の底部と連通している。前述したように、原水ラインL1において、接続部J13よりも下流側は、排水ラインL5としても機能する。従って、排水ラインL5の他方の端部は、原水ラインL1を介して圧力タンク2に接続されており、接続端部を構成する。
【0055】
再生排水弁315は、排水ラインL5における接続部J13よりも下流側に設けられている。再生排水弁315は、排水ラインL5における排水W5又は塩水W4の流通を制御する。再生排水弁315は、弁体の駆動部が制御部5と電気的に接続されている。再生排水弁315における弁の開閉は、制御部5により制御される。
【0056】
バイパスラインL6は、上流側において、原水ラインL1の接続部J12に接続され、下流側において、軟水ラインL2の接続部J22に接続されている。バイパスラインL6は、再生プロセスST3等において、圧力タンク2を介さずに需要箇所に原水W1を供給するための供給路を構成する。
【0057】
バイパス弁312は、バイパスラインL6に設けられている。バイパス弁312は、バイパスラインL6における原水W1の流通を制御する。バイパス弁312は、弁体の駆動部が制御部5と電気的に接続されている。バイパス弁312における弁の開閉は、制御部5により制御される。
【0058】
第2補水ラインL8は、一方の端部において、原水ラインL1の接続部J14に接続され、他方の端部において、塩水タンク4と連通している。第2補水ラインL8は、リンス・プロセスST5において、原水ラインL1の接続部J14から流通する原水W1を、塩水タンク4に供給する供給路を構成する。
【0059】
塩水タンク4は、タンク領域41と、塩載置部42と、ネット43と、を備える。タンク領域41は、塩水タンク4における塩水W4の貯留部を構成する。塩載置部42は、タンク領域41の内部に配置されている。塩載置部42の底部には、透水性を有するネット43が設けられている。塩載置部42には、原水W1に溶解させる塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)が載置されている。第2補水ラインL8の他方の端部は、塩載置部42の上部に配置され、塩載置部42に向けて開放されている。第2補水ラインL8から供給された原水W1は、第2補水ラインL8の他方の端部から塩載置部42に向けて流下する。塩載置部42に載置された塩は、タンク領域41に貯留された原水W1により溶解され、塩水W4が生成される。
【0060】
塩水タンク4の底部には、塩水ラインL4の上流側の端部が接続されている。再生プロセスST3において、タンク領域41の内部に貯留された塩水W4は、塩水タンク4における液面と排水ラインL5の開放末端部との間の水頭圧差により、塩水ラインL4を流下する。この塩水W4は、塩水ラインL4の接続部J4において、希釈水ラインL3を流下した原水W1と混合して希釈される。希釈された塩水W4は、軟水ラインL2の一部を流下して圧力タンク2に供給され、頂部スクリーン241からイオン交換樹脂床211の頂部に配液される。
【0061】
更に、塩水タンク4は、液面制御手段としての第2フロート弁75を備える。第2フロート弁75は、第2補水ラインL8の他方の端部に設けられている。ここで、第2フロート弁75の構成と動作について簡単に説明する。第2フロート弁75は、図示しないフロートと、弁体と、原水パイプと、を備える。
【0062】
フロートは、円筒状の浮力体であり、中心部に原水パイプが貫通している。フロートは、原水パイプに沿って上下方向に移動自在に支持されている。フロートの上部には、磁石が取り付けられている。フロートは、タンク領域41に貯留された塩水W4の液面に浮いており、塩水W4の水位に追従して上下方向に移動する。
【0063】
弁体は、円柱状の部材であり、原水パイプの内部に形成された擦動空間に収容されている。この擦動空間は、下端部が原水W1の流入口となる一方で、上端部が原水W1の流出口となっている。弁体は、擦動空間を上下方向に移動することができ、弁体が流出口に当接することにより、原水W1の流通が遮断されるようになっている。すなわち、原水W1の流出口は、弁体に対して弁座として機能する。また、弁体の内部には、磁性体が組み込まれている。
【0064】
原水パイプは、第2補水ラインL8と連通した管路である。原水パイプは、塩水タンク4(タンク領域41)の内部に略垂直に配置されている。上述したように、原水パイプは、フロートの中心部を貫通している。原水パイプの上部には、逆U字形の出口管が接続されている。また、出口管の端部は、塩水タンク4の塩載置部42に向けて開放されている。原水パイプを流通する原水W1は、塩水タンク4に貯留された塩水W4と混合せずに、出口管の端部へ導かれる。
【0065】
上記構成において、塩水タンク4における塩水W4の液面が所定の水位に達していない場合、第2補水ラインL8から供給された原水W1は、原水パイプから出口管を流通し、塩水タンク4の塩載置部42に供給される。これにより、塩水タンク4における塩水W4の液面が上昇する。塩水W4の液面が上昇すると、液面と共にフロートが上昇する。このとき、フロートの磁石は、弁体の磁性体を吸引するため、原水パイプの擦動空間に収容された弁体も、フロートと共に上昇する。そして、液面が所定の水位まで上昇すると、上昇した弁体が擦動空間の流出口に当接して、管路を閉鎖する。これにより、管路からの原水W1の供給が停止する。
【0066】
一方、塩水タンク4における塩水W4の液面が所定の水位より低くなると、液面と共にフロートが下降する。このとき、フロートの磁石は、弁体の磁性体を吸引するため、原水パイプの擦動空間に収容された弁体も、フロートと共に下降する。そして、液面が所定の水位まで降下すると、下降した弁体が擦動空間の流出口から離反して、管路を開放する。これにより、管路からの原水W1の供給が開始される。
【0067】
本実施形態において、塩水タンク4のタンク領域41に貯留された塩水W4の液面は、第2フロート弁75により所定範囲に維持される。このため、塩水タンク4における液面と排水ラインL5の開放末端部との間の水頭圧差がほぼ一定となる。従って、後述する再生プロセスST3において、イオン交換樹脂床211を流通する塩水W4の線速度を一定に維持することができる。
【0068】
ここで、塩水W4の線速度とは、塩水W4の流量をイオン交換樹脂床211の横断面積で除したものであり、次式で示される。
線速度[m/h]=流量[m/h]÷横断面積[m] ・・・ (1)
【0069】
なお、上述した第2フロート弁75の構成及び動作は、特開平4−108586号公報での開示に基づくが、一例を示したものであり、この例に限定されない。
【0070】
また、塩水タンク4の上部には、第1オーバーフローラインL9が接続されている。この第1オーバーフローラインL9は、第2フロート弁75の故障等により流路の遮断不良が発生した場合に、溢れた塩水W4を系外に排出するための設備である。
【0071】
第1オーバーフローラインL9の下流側は、硬水軟化装置1の背面カバー13から取出口18a(図1参照)を経て外部に引き出されている。そして、第1オーバーフローラインL9の端部は、不図示の排水口に向けて大気に開放されている。
【0072】
第1オーバーフローラインL9の端部には、異物侵入抑制手段としての防虫網51が取り付けられている。防虫網51は、第1オーバーフローラインL9の端部から虫等の異物が侵入するのを抑制するための部材である。防虫網51は、金属網又は樹脂製のネット部材により構成されている。防虫網51は、第1オーバーフローラインL9の端部に対して着脱自在に取り付けられている。
【0073】
原水タンク6は、液面制御手段としての第1フロート弁74を備える。第1フロート弁74は、第1補水ラインL7の下流側の端部に連結されている。第1フロート弁74は、原水タンク6の内部に貯留された原水W1の液面が所定範囲に維持されるように、原水タンク6の貯水量を制御する。
【0074】
第1フロート弁74は、原水タンク6の液面の上下変動に追従した浮玉61の変位に応じて流路を開閉する弁であり、ボールタップと呼ばれるものである。本実施形態において、原水タンク6の内部に貯留された原水W1の液面は、第1フロート弁74により所定範囲に維持される。このため、原水タンク6における液面と排水ラインL5の開放末端部との間の水頭圧差がほぼ一定となる。従って、後述する再生プロセスST3及び押出プロセスST4において、イオン交換樹脂床211を流通する原水W1又は塩水W4の線速度を一定に維持することができる。
【0075】
ここで、原水W1又は塩水W4の線速度とは、原水W1又は塩水W4の流量をイオン交換樹脂床211の横断面積で除したものであり、上述の(1)式で示される。
【0076】
なお、上述した第1フロート弁74の構成及び動作は、一般的なボールタップに基づくが、一例を示したものであり、この例に限定されない。
【0077】
また、原水タンク6の上部には、第2オーバーフローラインL10が取り付けられている。この第2オーバーフローラインL10は、第1フロート弁74の故障等により流路の遮断不良が発生した場合に、溢れた原水W1を系外に排出するための設備である。
【0078】
第2オーバーフローラインL10の下流側は、硬水軟化装置1の背面カバー13から取出口18b(図1参照)を経て外部に引き出されている。そして、第2オーバーフローラインL10の端部は、不図示の排水口に向けて大気に開放されている。
【0079】
第2オーバーフローラインL10の端部にも、上述した異物侵入抑制手段としての防虫網51が取り付けられている。防虫網51は、第2オーバーフローラインL10の端部から虫等の異物が侵入するのを抑制するための部材である。防虫網51は、金属網又は樹脂製のネット部材により構成されている。防虫網51は、第2オーバーフローラインL10の端部に対して着脱自在に取り付けられている。
【0080】
ここで、異物侵入抑制手段の他の構成例について説明する。第1オーバーフローラインL9及び/又は第2オーバーフローラインL10の端部には、図3に示す排水トラップ52を取り付けることができる。排水トラップ52は、第1オーバーフローラインL9及び/又は第2オーバーフローラインL10の端部から臭気を含む気体や虫等の異物が侵入するのを抑制するための部材である。排水トラップ52の下流側は、不図示の排水口に向けて大気に開放されている。
【0081】
排水トラップ52は、略S字状に屈曲されたパイプ材により構成されている。排水トラップ52の屈曲部52aには、第1オーバーフローラインL9から排出された塩水W4又は第2オーバーフローラインL10から排出された原水W1が貯留されている。排水トラップ52を取り付けた場合には、屈曲部52aに貯留された塩水W4又は原水W1により、下流側の端部と上流側との間を実質的に遮断することができる。
【0082】
再び図2を参照して説明する。制御部5は、水処理プロセスST1〜リンス・プロセスST5を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ3を制御する。制御部5は、図示しないメモリと、演算部としてのCPUと、を備える。
【0083】
メモリは、後述する水処理プロセスST1、呼び水プロセスST2、再生プロセスST3、押出プロセスST4、及びリンス・プロセスST5の各プロセスの処理手順に関するデータ等を記憶する。
【0084】
CPUは、フロースイッチ321から出力された検出信号(原水ラインL1を所定量の原水W1が流通したことを検知したときに出力される信号)やタイマ等の情報に基づいて、硬水軟化装置1で実行すべき処理を設定する。そして、CPUは、メモリに記憶された各プロセスの処理手順に関するデータに基づいて、所定の弁開閉信号をプロセス制御バルブ3に出力する。なお、プロセス制御バルブ3を構成する各弁311〜315の開閉は、弁駆動回路(不図示)により制御される。弁駆動回路は、CPUにより出力された弁開閉信号に基づいて、原水通水弁311、軟水通水弁313、バイパス弁312、塩水弁314、及び再生排水弁315における弁の開閉を制御する。以下の説明において、弁を開くことを「開状態」といい、弁を閉じることを「閉状態」という。
【0085】
上記構成のように構成された硬水軟化装置1において、制御部5は、プロセス制御バルブ3の流路を切り換えることにより、図4に示す以下のプロセスST1〜ST5を順次実施する。
(ST1)原水W1をイオン交換樹脂床211に対して下から上へ通過させる水処理プロセス(水軟化プロセス)
(ST2)原水W1を排水ラインL5から強制排水して、排水ラインL5の内部に滞留しているエアを排出する(エア抜きする)と共に、排水ラインL5に溜まったゴミ等を除去することにより、再生不良を防止する呼び水プロセス
(ST3)再生液としての塩水Wをイオン交換樹脂床211に対して上から下へ通過させる再生プロセス
(ST4)押出水としての原水W1をイオン交換樹脂床211に対して上から下へ通過させる押出プロセス
(ST5)濯ぎ水としての原水W1をイオン交換樹脂床211に対して上から下へ通過させるリンス・プロセス
【0086】
プロセス制御バルブ3における各弁311〜315の開閉は、図4に示すように、プロセスST1〜ST5毎に、制御部5により制御される。その結果、圧力タンク2の内部は、プロセスST1〜ST5毎に、流体の流れが生成される状態か、或いは、流体の流れが生成されない状態となる。
【0087】
次に、本実施形態における硬水軟化装置1の運転方法(動作)について詳細に説明する。なお、水処理プロセスST1を除く各プロセスST2〜ST5においては、バイパス弁312が開状態となっている。そのため、原水ラインL1の接続部J11よりも下流側を流通する過剰な原水W1は、接続部J12からバイパスラインL6へ流通し、接続部J22及び軟水ラインL2を介して、軟水W2の需要箇所へ一時的に供給される。
【0088】
〔水処理プロセスST1〕
制御部5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜315は、図5のST1に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1を流れる水道水、地下水、工業用水等の原水W1は、原水ラインL1を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、底部スクリーン242から配水される。底部スクリーン242から配水された原水W1は、イオン交換樹脂床211を上昇流で通過する。その過程において、原水W1の硬度成分は、ナトリウムイオン(又は、カリウムイオン)へ置換され、原水W1は軟水化される。
【0089】
イオン交換樹脂床211を通過した処理水(軟水W2)は、圧力タンク2の頂部で頂部スクリーン241へ集水される。その後、軟水W2は、軟水ラインL2を介して、軟水W2の需要箇所へ供給される。そして、所定量の軟水W2を採取することにより、イオン交換樹脂床211が硬度成分を置換できなくなると、制御部5は、呼び水プロセスST2以降のプロセスを実施する。
【0090】
〔呼び水プロセスST2〕
制御部5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜315は、図5のST2に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1を流れる原水W1は、原水ラインL1から接続部J12及びJ13を経て排水ラインL5を流通し、排水W5として排水ラインL5の開放末端部から系外に排出される。
【0091】
〔再生プロセスST3〕
制御部5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜315は、図5のST3に示す開閉状態に設定される。その結果、塩水タンク4の内部に貯留された塩水W4は、塩水タンク4の液面と排水ラインL5の開放末端部との水頭圧差により、塩水ラインL4を介して流下する。同時に、原水タンク6の内部に貯留された原水W1は、原水タンク6の液面と排水ラインL5の開放末端部との水頭圧差により、希釈水ラインL3を介して流下する。各ラインを流下した塩水W4と原水W1とは、塩水ラインL4の接続部J4で混合され、所定濃度(約10重量%)の塩水W4となる。この塩水W4は、塩水ラインL4を介して、圧力タンク2の頂部に配置された頂部スクリーン241から配液され、圧力タンク本体21の内部に下降流で通過する。その過程において、塩水W4は、イオン交換樹脂床211を再生する。使用済みの塩水W4は、圧力タンク2の底部に配置された底部スクリーン242で集液され、排水ラインL5を介して系外に排水される。この再生プロセスST3は、所定時間実行され、所定量の塩水W4を供給することにより完了する。
【0092】
〔押出プロセスST4〕
制御部5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜315は、図5のST4に示す開閉状態に設定される。その結果、塩水W4が塩水ラインL4を介して流下しなくなり、原水タンク6の内部に貯留された原水W1のみが希釈水ラインL3及び塩水ラインL4を介して流下する。流下した原水W1は、圧力タンク2の頂部に配置された頂部スクリーン241から配水され、圧力タンク本体21の内部を下降流で通過する。その過程において、原水W1は、先行して供給された塩水W4を押し出しながら、引き続き、イオン交換樹脂床211を再生する。使用済みの塩水W4及び原水W1は、圧力タンク2の底部に配置された底部スクリーン242で集水され、排水ラインL5を介して系外に排水される。この押出プロセスST4は、所定時間実行され、所定量の原水W1を供給して塩水W4を押し出すことにより完了する。
【0093】
〔リンス・プロセスST5〕
制御部5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜315は、図5のST5に示す開閉状態に設定される。その結果、軟水通水弁313及びバイパス弁312が開状態になり、原水ラインL1には、原水供給源から原水W1が圧送される。この原水W1は、原水ラインL1、接続部J12、バイパスラインL6、接続部J22、軟水ラインL2を介して、圧力タンク2へ流通する。そして、原水W1は、圧力タンク2の頂部に配置された頂部スクリーン241から配水され、圧力タンク本体21の内部を下降流で通過する。その過程において、原水W1は、イオン交換樹脂床211の内部に残留する塩水W4を洗い流しながら、イオン交換樹脂床211をリンスする。使用済みの原水W1は、圧力タンク2の底部に配置された底部スクリーン242で集水され、排水ラインL5を介して系外に排水される。このリンス・プロセスST5は、フロースイッチ321による水流有りの積算検知時間が所定時間に達するまで実行され、所定量の原水W1を供給することにより完了する。
【0094】
また、リンス・プロセスST5において、原水供給源から圧送された原水W1の一部は、原水ラインL1、接続部J14、及び第2補水ラインL8を介して、塩水タンク4へ供給される。これにより、次回の再生プロセスST3で使用する塩水W4が調製される。
【0095】
このように、リンス・プロセスST5においては、外部の原水供給源から圧送された原水W1が圧力タンク2へ流通する。従って、圧力タンク2への単位時間当たりの原水供給量は、押出プロセスST4の場合よりも大きくなる。このため、イオン交換樹脂床211の内部に残留する塩水W4は、速やかに洗い流される。制御部5は、リンス・プロセスST5が終了すると、プロセス制御バルブ3を水処理プロセスST1の状態に復帰させる。
【0096】
なお、呼び水プロセスST2〜リンス・プロセスST5においては、バイパス弁312が開状態となっている。このため、ユーザが軟水W2の需要箇所で蛇口等を開くと、バイパスラインL6を介して原水W1が供給される。このように、本実施形態の硬水軟化装置1では、一連の再生作動の実行時において、ユーザに原水W1を供給することができる(原水供給状態)。
【0097】
上述した第1実施形態の硬水軟化装置1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の硬水軟化装置1では、第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10のそれぞれの端部に、異物侵入抑制手段としての防虫網51や排水トラップ52が取り付けられている。このため、第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10のそれぞれの端部から、臭気のある気体や虫等が異物として侵入して、上流側の塩水タンク4や原水タンク6に達するのを抑制することができる。従って、硬水軟化装置1の内部において、異物の侵入による衛生状態の悪化を抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態の硬水軟化装置1において、異物侵入抑制手段としての防虫網51や排水トラップ52は、硬水軟化装置1の外部に位置する第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10の下流側に設けられている。このため、ユーザは、硬水軟化装置1の内部に触れることなしに、これらの異物侵入抑制手段の清掃、交換等を行うことができる。また、硬水軟化装置1の設置後において、必要に応じてこれらの異物侵入抑制手段を取り付けたり、取り外したりすることもできる。
【0099】
<第2実施形態>
図6は、本発明のイオン交換装置の第2実施形態としての硬水軟化装置1Aの全体構成図である。第2実施形態の硬水軟化装置1Aは、第1実施形態の硬水軟化装置1に対して、第1オーバーフローラインL9の接続位置が異なる。その他の構成は同じであり、同等部分は第1実施形態と同一符号を付して説明する。
【0100】
本実施形態の硬水軟化装置1Aでは、第2オーバーフローラインL10の接続部J15に、第1オーバーフローラインL9の下流側が接続されている。すなわち、第1オーバーフローラインL9と第2オーバーフローラインL10とは、接続部J15において合流し、この接続部J15よりも下流側においてラインを共用している。
【0101】
そして、第2オーバーフローラインL10の接続部J15よりも下流側には、防虫網51が取り付けられている。本実施形態において、防虫網51は、硬水軟化装置1Aの内部に位置する第2オーバーフローラインL10に取り付けられている。
【0102】
上述した第2実施形態の硬水軟化装置1Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。更に、本実施形態では、第1オーバーフローラインL9と第2オーバーフローラインL10との共有のライン(この例では第2オーバーフローラインL10)に防虫網51を設けている。このため、第1実施形態に比べて、防虫網51の数を減らすことができる。また、第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10における防虫網51の清掃、交換等を一度に実施することができる。
【0103】
また、第2実施形態の硬水軟化装置1Aにおいて、防虫網51は、硬水軟化装置1Aの内部に位置する第2オーバーフローラインL10に設けられている。このため、第2オーバーフローラインL10の下流側において大気に開放されている端部が、ユーザの手が届きにくい箇所にあっても、防虫網51の清掃、交換等を簡単に行うことができる。また、防虫網51における異物の捕集量、汚れ具合等を容易に確認することができる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した第1及び第2実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0105】
第1実施形態において、防虫網51又は排水トラップ52を、第1オーバーフローラインL9又は第2オーバーフローラインL10のいずれか一方の端部に設けた構成としてもよい。また、防虫網51又は排水トラップ52は、各オーバーフローラインの下流側に設けられていればよく、必ずしも端部に取り付ける構成に限定されない。
【0106】
第1実施形態において、第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10の一方の端部に防虫網51を設け、他方の端部に排水トラップ52を設けた構成としてもよい。また、第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10の端部に、それぞれ排水トラップ52(図3参照)を取り付けた構成としてもよい。
【0107】
第1実施形態において、排水トラップ52の下流側に、更に防虫網51を設けた構成としてもよい。また、防虫網51を、硬水軟化装置1の内部に位置する第1オーバーフローラインL9及び第2オーバーフローラインL10に設けた構成としてもよい。
【0108】
第2実施形態において、第1オーバーフローラインL9の接続部(不図示)に、第2オーバーフローラインL10の下流側を接続し、第1オーバーフローラインL9の前記接続部よりも下流側に防虫網51を取り付けた構成としてもよい。
【0109】
第2実施形態において、防虫網51を、硬水軟化装置1Aの外部に位置する第2オーバーフローラインL10の下流側に設けた構成としてもよい。また、第1オーバーフローラインL9と第2オーバーフローラインL10との接続部を、硬水軟化装置1Aの外部に設けた構成としてもよい。
【0110】
第2実施形態において、防虫網51の代わりに、排水トラップ52(図3参照)を取り付けた構成としてもよい。この場合に、排水トラップ52の下流側に、更に防虫網51を設けた構成としてもよい。
【0111】
第1及び第2実施形態において、図1及び図6に示す各ラインやバルブ等の配置や接続は一例を示したものであり、図1及び図6の構成に限定されない。塩水タンク4と原水タンク6との間を不図示のラインで接続し、両タンクを連通した構成としてもよい。この場合には、原水タンク6から塩水タンク4のタンク領域41に原水W1が補水される。
【0112】
第1及び第2実施形態において、塩水タンク4及び原水タンク6は、圧力タンク2の上方に配置されている。この場合において、塩水タンク4及び原水タンク6の液面は、必ずしも同じレベルでなくてもよい。
【0113】
また、第1及び第2実施形態において、塩水タンク4及び原水タンク6は、いずれも圧力タンク2の上方に配置されているが、これに限定されない。塩水タンク4及び原水タンク6の液面と、排水ラインL5の開放末端部との高さ関係が、塩水タンク4及び原水タンク6の液面 > 排水ラインL5の開放末端部の関係となるように設定されていればよく、例えば、塩水タンク4及び/又は原水タンク6を圧力タンク2の側方に配置してもよい。
【0114】
更に、塩水タンク4及び原水タンク6を個別に備えるのではなく、原水タンク6を塩水タンク4と共用するように構成してもよい。この構成では、再生プロセスST3で塩水タンク4内に貯留された塩水W4を消費した後、ネット43よりも下方で液面を制御しながら原水W1を貯留し(すなわち、塩と接触しないように塩水タンク4に原水W1を貯留し)、押出プロセスST4において、この原水W1を押出水として圧力タンク2に供給する。
【0115】
なお、この構成においては、再生プロセスST3の直前に、ネット43よりも上方で液面を制御しながら原水W1を貯留(すなわち、塩と接触するように塩水タンク4に原水W1を貯留)する。そして、イオン交換樹脂床211の再生に適した濃度の塩水W4が調製された時点で、再生プロセスST3を開始するように操作する。
【0116】
第1及び第2実施形態では、水処理プロセスST1において、圧力タンク2の内部に原水の上昇流を生成し、再生プロセスST3において、圧力タンク2の内部に塩水の下降流を生成するように構成されている。他の実施形態として、水処理プロセスST1において、圧力タンク2の内部に原水の下降流を生成し、再生プロセスST3において、圧力タンク2の内部に塩水の上昇流を生成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,1A 硬水軟化装置(イオン交換装置)
2 圧力タンク
4 塩水タンク(液タンク)
6 原水タンク(液タンク)
10 筐体本体部
211 イオン交換樹脂床
51 防虫網(異物侵入抑制手段)
52 排水トラップ(異物侵入抑制手段)
L9 第1オーバーフローライン
L10 第2オーバーフローライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底箱状に形成され、上部に開閉可能な蓋部材を有する筐体本体部と、
前記筐体本体部の内部に配置され、原水を導入することにより処理水を製造するイオン交換樹脂床が収容される圧力タンクと、
前記筐体本体部の内部に配置され、前記イオン交換樹脂床を再生する再生液及び/又は水が貯留される液タンクと、
前記液タンクに接続され、前記液タンクの許容液位を超えた再生液及び/又は水を前記筐体本体部の外部に排出するオーバーフローラインと、
を備え、
前記オーバーフローラインには、外部から前記液タンクへの異物の侵入を抑制する異物侵入抑制手段が設けられているイオン交換装置。
【請求項2】
前記異物侵入抑制手段は、前記筐体本体部の外部に位置する前記オーバーフローラインの下流側に設けられている請求項1に記載のイオン交換装置。
【請求項3】
前記異物侵入抑制手段は、前記筐体本体部の内部に位置する前記オーバーフローラインに設けられている請求項1に記載のイオン交換装置。
【請求項4】
前記液タンクは、再生液が貯留される第1液タンクと、水が貯留される第2液タンクとから構成され、
前記オーバーフローラインは、前記第1液タンクに接続され、前記第1液タンクの許容液位を超えた再生液を前記筐体本体部の外部に排出する第1オーバーフローラインと、前記第2液タンクに接続され、前記第2液タンクの許容液位を超えた水を前記筐体本体部の外部に排出する第2オーバーフローラインとから構成され、
前記第1オーバーフローラインと前記第2オーバーフローラインとは、接続部において合流し、該接続部よりも下流側においてラインを共用し、
前記異物侵入抑制手段は、共用する前記ラインに設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のイオン交換装置。
【請求項5】
前記異物侵入抑制手段は防虫網及び/又は排水トラップである請求項1から4のいずれか一項に記載のイオン交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166135(P2012−166135A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27939(P2011−27939)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】