説明

イオン性不純物を含有する単糖混合物を精製する方法

疑似移動床式クロマトグラフィーを用いて、単糖プロセス流からイオン性不純物を分離する方法を本明細書に開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書に参照として援用されている、2009年12月7日出願の米国仮特許出願第61/267,127号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
イオン性物質から極性有機物を分離するための種々の方法が存在している。これらの方法の多くは複数の精製工程を必要とし、しかも完全な分離は達成されない。例えば、米国特許第5,968,362号明細書および米国特許第6,391,204号明細書には、有機物から重金属および酸を除去するために、アニオン性交換樹脂の使用が記載されている。しかし、これらの方法は、完全な酸の除去に適さず、また、無機ならびに有機のカチオンとアニオンを同時に除去することもできない。同様に、米国特許第5,538,637号明細書および米国特許第5,547,817号明細書には、糖分子から酸を分離する方法が記載されている。しかし、これらの方法は、酸の分離に限られており、無機ならびに有機のカチオンとアニオンの全ての形態の同時除去には適用されない。また、米国特許出願公開第2009/00556707号明細書および米国特許出願公開第2008/0041366号明細書では、糖混合物から、先ず硫酸カルシウムを分離し次いで酸を分離するためのイオン交換樹脂の使用が開示されている。しかし、これらの方法は樹脂の再生を必要としているので、連続的方法には適さない。
【0003】
したがって、好ましくは、効率的であり、より好ましくは、連続的な工業的方法に適合性である、有機物から無機イオンならびに有機イオンを含むイオン性物質を分離する改善された方法が必要とされている。これらの必要性および他の必要性は、開示される方法を使用することにより対処される。
【発明の概要】
【0004】
本発明者は、疑似移動床式クロマトグラフィーを用いる連続的方法において、単糖出発物質からイオン性不純物を除去できることを見出した。他の精製技法とは異なり、本法は、樹脂の再生のために停止させる必要はなく、複数の異なる精製工程の実施も必要とされない。本法は、コストを低下させたスピード改善を提供する。
【0005】
本発明は、単糖を含有するプロセス流からイオン性の無機不純物と有機不純物の双方を、連続的かつ同時に分離する方法に関するものである。本発明はまた、糖を含有するプロセス流からイオン性不純物を分離する方法に関するものである。
【0006】
本発明はまた、イオン性(例えば、カチオン性、および/またはアニオン性の有機および/または無機)不純物を実質的に含まない(例えば、不純物を含むL−グルコースの100全重量%を基準にして、5、4、3、2、1、0.5、0.3、0.2、0.1重量%未満を含有する)、または完全に含まないL−グルコースに関する。L−グルコースはまた、実質的に純粋、すなわち、不純物を含むL−グルコースの全重量を基準にして、95、96、97、98、99、99.5、99.7、99.8、または99.9(重量)%純粋であることが好ましい。例えば、L−グルコースは、本発明の疑似移動床式クロマトグラフィー法によって調製できる。一実施形態において、L−グルコースには、以下のイオン性不純物の全て、またはそのうちの1種、2種、3種、または4種以上を含まない、または実質的に含まない:
a.

b.(3S,4S,5S)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキサン−1−アミニウム、
c.CHNH(メタナミニウム)、
d.Na(ナトリウム)、
e.NH(アンモニウム);および
f.SO2−(硫酸塩)。
別の実施形態において、L−グルコースには、以下のイオン性不純物の全て、またはそのうちの1種、2種、3種、または4種以上を含まない、または実質的に含まない:
a.

b.(3S,4S,5S)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキサン−1−アミニウム、
c.CHNH(メタナミニウム)、
d.NaSO
e.(NHSO;および
f.HMo24−4
これら不純物の全ては、L−グルコースバルク材料の調製中に形成され得る。L−グルコースは、約750μシーメンス/cm未満、約500μシーメンス/cm未満、約300μシーメンス/cm未満、約250μシーメンス/cm未満、約200μシーメンス/cm未満、約150μシーメンス/cm未満、約100μシーメンス/cm未満、約50μシーメンス/cm未満、または約10μシーメンス/cm未満の伝導率を有することが好ましい。
【0007】
さらに別の実施形態は、本発明のL−グルコース(例えば、本発明の方法により作製された)および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含んでなる医薬組成物である。
【0008】
さらに別の実施形態は、有効量の本発明のL−グルコース(例えば、本発明の方法により作製された)を、対象(例えば、ヒト)に投与することによる結腸を洗浄する方法である。
【0009】
さらなる利点は、以下の説明に部分的に記載され、その説明から部分的に明瞭となるか、または下記の態様の実践により知ることができるであろう。下記の利点は、添付の請求項に具体的に指摘された要素および組み合わせにより理解され達成されるであろう。当然のことながら、前述の全体的説明と以下の詳細な説明は例示と説明のためのものであって、限定するものではない。
【0010】
本明細書に組み込まれ、その一部をなしている添付の図面は、下記のいくつかの態様を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、疑似移動床式クロマトグラフィーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当該の材料、化合物、組成物、製品、装置、および方法を開示し、説明する前に、下記の態様が、特定の合成法または特定の試薬に限定されることはなく、勿論、変化させ得ることが理解されるべきである。また、本明細書に用いられる用語は、具体的な態様のみを説明するためのものであって、限定の意図はないことも理解されるべきである。
【0013】
また、本明細書を通して、種々の文献が参照されている。これらの文献全体の開示は、開示された件が属する業界の状況をより十分に説明するために、本出願に参照として援用されている。また、文献が依拠する文中に考察されている文献中に含まれる材料に関して、開示された文献が、個々に、かつ具体的に参照として援用されている。
【0014】
定義
本明細書および以下の請求項において、多数の用語が挙げられるが、それらは以下の意味を有することとして定義される:
【0015】
本明細書の説明および請求項を通して、用語「含んでなる(comprise、comprising、comprises)」は、限定はしないが、例えば、他の添加物、成分、整数、または工程などを意味し、それらを排除することを意図しない。
【0016】
本明細書および添付の請求項で用いられる単数形、「a」、「an」、および「the」は、文脈で別に明確に指示されない限り、複数の指示された物を含む。したがって、例えば、「組成物」という語は、開示された化合物の2種以上の混合物、他の薬学的活性化合物と組み合わせた開示化合物、または開示化合物、他の薬学的に許容できる成分を有する本明細書に定義した化合物の溶媒和物、希釈物を含む。
【0017】
「任意選択の」または「任意選択的に」は、引き続いて記述される事象または状況が生じても、生じなくてもよいことを意味し、またこの記述は事象または状況が生じる場合と生じない場合とを含む。
【0018】
範囲は、本明細書において、「約」特定の値から、および/または「約」他の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行の「約」の使用による近似値として表される場合、その特定値は別の態様を形成することは当然である。さらに、範囲の各々の終点は、他の終点に関連して、および他の終点とは独立して、の双方の意味を当然有する。また、本明細書に開示された多数の値があること、そして各値が本明細書において、その値自体に加えて、「約」のその特定の値としても開示されることも当然である。例えば、値「10」が開示されるならば、「約10」もまた開示される。また、当業者に適切に理解される通り、ある値が開示されるならば、当然、当該値「以下」、「当該値以上」、および値の間の可能な範囲もまた開示される。例えば、値「10」が開示されるならば、「10以下」ならびに「10以上」もまた開示される。また、本出願を通して、データは多くの異なる様式で提供されること、このデータは終点ならびに出発点、およびデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも当然である。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されるならば、10ならびに15超、以上、未満、以下、および等しい、が10と15との間と同様に開示されると考えられる。また、2つの特定の単位の間の各単位も当然開示される。例えば、10と15が開示されるならば、11、12、13、および14も当然開示される。
【0019】
成分の重量パーセント(wt.%)は、反対に明記されない限り、成分が含まれる製剤または組成物の全重量を基準にする。
【0020】
「供給流」とは、分離される化学プロセス流を意味する。
【0021】
「収着剤」とは、供給流と相互作用して、供給流中の物質のより遅い、またはより速い動きを可能にする半固定材料などの材料を意味する。
【0022】
「脱着剤」とは、分離をもたらすために添加される液体である。
【0023】
「抽出液」とは、分離される低速移動成分を含有する出口流を意味する。
【0024】
「ラフィネート」とは、分離される高速移動成分を含有する出口流を意味する。
【0025】
「溶出した」または「溶出している」とは、クロマトグラフィー樹脂を通して溶出剤を通過させる(能動的に、または受動的に)工程を意味する。
【0026】
「ジアニオン」とは、本明細書において一般に、−2の形式電荷を有する任意のイオン種のことである。
【0027】
本明細書に用いられている「単糖」には、例えば、マンノース、グルコース(デキストロース)、フルクト−ス(レブロース)、ガラクトース、キシロース、リボースまたは前述のいずれかの任意の組み合わせが含まれる。好ましい一実施形態において、単糖はL−グルコースである。別の好ましい実施形態において、単糖は、L−グルコースとL−マンノースの混合物である。
【0028】
本発明の方法により、疑似移動床式クロマトグラフィー装置の1つまたは複数のカラム上に、単糖含有プロセス流を導入し、引き続き、1つまたは複数のカラムを溶出させて、単糖および1種または複数種のイオン性不純物を含んでなるラフィネート流を含む抽出流を提供することにより、単糖含有プロセス流からイオンを分離することができる。方法が連続的であり、それにより、単糖含有流が装置に連続的に導入される一方、1つまたは複数の下流画分が連続的に取り除かれることが好ましい。また、開示された方法は中断なく操作されるより大きな連続法の一部であり得る。このように、本発明のいくつかの態様において、疑似移動床式クロマトグラフィー装置に用いられるカラム内の樹脂は、処理中に再生されない。したがって、疑似移動床式クロマトグラフィー装置の1つまたは複数のカラムを再生させるために、別の場合では必要な中断なしで、より大きな工業的方法が実施できる。また、開示された方法により、全ての、または実質的に全て(例えば、70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%または99重量%)の有機および/または無機のカチオンおよび/またはアニオンを同時に除去し、したがって上記で検討した必要性に対処することができる。
【0029】
疑似移動床式クロマトグラフィー
本明細書に記載した方法では、糖混合物(例えば、糖を含有するプロセス流)からイオンを除去するために、疑似移動床式(SMB)クロマトグラフィーを用いる。疑似移動床式クロマトグラフィーは、実際に固体相を移動させる必要なしに、連続向流クロマトグラフィーの処理特性を保持する技法である。むしろ、固体相の疑似移動は、クロマトグラフィー処理を通して、クロマトグラフィー装置の種々の入口と出口を中断することなく連続的に移動させることによって達成される。疑似移動床式技法は、文献、例えば、本明細書に参照のため、SMB技法に関する教示が援用されているR.A.Meyers、Handbook of Petroleum Refining Processes、8−85頁から8−87頁、McGraw−Hill Book Company(1986)に記載されている。SMBの方法および装置の図は、図1に示されている。
【0030】
一般に、固体を充填したカラムが、1区画当り1つまたは複数のカラムを有する4つの区画から作製された環形態に配置される(図1を参照)。2つの入口流(供給流および溶出流)ならびに2つの出口流(抽出流およびラフィネート流)を、カラム環へ、およびカラム環からの交互の順序で方向づけられる。カラムは通常、移動できないため、入口と出口の位置は、液流の方向に規則的間隔で交替し、したがって、カラムの向流移動を疑似する。
【0031】
開示された方法は、疑似移動床式クロマトグラフィー装置のいずれか特定のタイプに限定されない。しかしながら、一般的には、疑似移動床式クロマトグラフィー装置は、溶出相サイクルに依って、各カラムがいずれかの方向に溶出できる様式で共に接続された複数のカラムを含んでなる。また、装置は一般的に、溶出液(脱着液)を充填するための1つまたは複数の導管、ならびに分離させる混合物(供給物)をクロマトグラフィー装置内に充填するための1つまたは複数の導管を含んでなる。また、装置は、液体を排出するための1つまたは複数の導管を含んでなる。これらの導管の各々は、自動バルブによって、または導管に対するカラムの回転によって制御することができる。カラムの数とサイズは、カラムの型、混合物の組成、混合物の流速、および混合物の濃度に基づいて決定することができる。
【0032】
疑似移動床式クロマトグラフィーの利点の1つは、この方法が連続的に実施でき、種々の入口流および出口流を、中断させることなく連続的様式で充填される、または取出されることである。同様に、入口流および出口流の位置は、一連のカラムに関して等しい移動で変化させることができる。
【0033】
種々の疑似移動床式装置が市販されている。例えば、本明細書に開示された方法での使用に好適な疑似移動床式装置は、Advanced Separation Technologies Incorporated、Lakeland、Fla.(Models LC1000およびISEP LC2000)、およびIllinois Water Treatment(IWT)、Rockford、Ill.(ADSEPシステム;Morgart and Graaskamp,Paper No.230,Continuous Process Scale Chromatography,The Pittsburgh Conference on Analytical Chemistry and Applied Spectroscopy,New Orleans,1988年2月22日を参照)から市販されている。種々の構成を有する他の好適な装置は、具体的には、例えば、米国特許第4,522,726号明細書および米国特許第4,764,276号明細書に開示されており、双方とも、疑似移動床式クロマトグラフィー装置の教示に関してそれらの全体が参照のため本明細書に援用されている。
【0034】
一実施形態において、先ずイオン抽出樹脂を糖混合物(例えば供給流またはプロセス流)に接触させ、引き続き樹脂を水性溶出液により溶出させる。溶出時、静止相と移動相または溶出液(例えば純水)との間で化学種の一定の交換がある。例示的な一態様において、全体的な方法設計の一部として、分離に選択されたアニオンは、例えば、硫酸塩またはリン酸塩などのジアニオンである。イオン排除クロマトグラフィーにおいて、ある化学種が高濃度に荷電されているほど、それはイオン交換樹脂の内部表面からより効果的に反発される。イオン交換樹脂の内部表面がすでに高濃度の荷電残基を含有しているためである。この方法の初期段階から何らかの塩形態が生成され得るとすれば、開示された方法の利点の1つは、単糖混合物からSMB法による単糖からの分離の容易さという観点から、対イオンとして硫酸塩を選択することであることは理解されるであろう。
【0035】
イオン排除
糖混合物からイオンを分離するために、イオン排除樹脂を用いることができる。一般に、任意のイオン排除樹脂、例えば、アルカリ金属形態における強酸性スルホン化樹脂(スルホン酸残基を有する樹脂)、または中性形態における第四級アミン樹脂(対イオンとして塩化物または硫酸塩)を用いることができる。一般的にイオン排除樹脂は、樹脂に安定性を与える一方で樹脂の膨張する能力を制限するために、架橋ポリマーを含んでなる。イオン排除樹脂は、疑似移動床式クロマトグラフィー装置に用いられる全てのカラムに存在する。イオン排除樹脂は荷電されているので、疑似移動床式クロマトグラフィーから得られるラフィネートはイオンを含有し、それらはカラムを通って速やかに移動する。一方、混合物中の非イオン化学種、その1つである単糖は、カラム上により長く保持され、カラムを通る移動がより遅い。イオン排除樹脂は、具体的な処理によって、酸性形態またはアニオン形態の樹脂を含むことができる。
【0036】
イオン排除システムでは、イオン交換システムに用いられるのと類似した樹脂を使用できるが、樹脂のイオン性官能基が電解質の官能基と同一であり、したがって、正味のイオン交換がほとんどないから全くないという点で異なる。一態様において、イオン排除樹脂は、強酸性樹脂(例えば、スルホン酸残基を有する樹脂)と弱酸性樹脂(例えば、第三級アミン基を有する樹脂)との混合物を含有せず;例えば、一態様において、イオン排除樹脂は、「混合床」を含まない。さらなる一態様において、イオン排除樹脂は、スルホン化ポリマー、例えば、樹脂ポリマーに物理的安定性を付与するジビニルベンゼン(DVB)架橋を有するスルホン化ポリスチレンを含むことができる。樹脂粒子のスルホン酸基は、水性媒体中で膨張を生じさせる。得られた微孔樹脂粒子は水および非イオン性溶質を吸収することができる。DVBによる分子架橋の程度は、吸収の範囲に影響を及ぼし、多孔性樹脂の全体の分解を防ぐ。樹脂の微小構造内部のイオン反発力と高固定酸化学ポテンシャルのため、例えば、酸/単糖混合物中の硫酸などの電解質の化学種は、多孔性樹脂内に進入することが効果的に妨げられる。しかし、非イオン性の糖は樹脂構造内に自由に拡散する。このように、樹脂の微孔構造内に保持されるか、または遅延される非電解質よりも、電解質は、充填樹脂床をより速やかに通過する。酸交換システムに用いられる分離に類似した酸分離を実施するための開示された方法の適用において、用いられる樹脂は、ナトリウム形態に反して水素形態であり得、したがって、システム内にイオン交換は生じない。
【0037】
上記の方法により用いることのできるイオン排除樹脂の具体例としては、DEAEセファデックス(SEPHADEX)、QAEセファデックス、DEAEセファロース、DEAEトリスアクリルプラス、DEAEセファセル、DEAEセルロース、EXPRESS−ION EXCHANGER D、ECTEOLAセルロース、PEIセルロース、QAEセルロース、EXPRESS−ION EXCHANGER Q(これらは、ミズーリ州セントルイス所在のSigma−Aldrich社から入手可能)、バイオラド(BIORAD)AG−1X2、バイオラドAG−1X1、バイオラドAG−1X4、バイオラドAG−21K、バイオラドAG−1X8、バイオラドAG−1X10、バイオラドAG−2X4、バイオラドAG−2X8、バイオラドAG−2X10、BIOREX9、アンバーライト(AMBERLITE)IRA−900、アンバーライトIRA−938−C、アンバーライトA−26、アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−401S、アンバーライトIRA−401、アンバーライトIRA−400C、アンバーライトIRP−67、アンバーライトIRA−67M、アンバーライトIRA−410、アンバーライトIRA−910、ダウエックス(DOWEX)1X2、ダウエックス1X4、ダウエックス21K、ダウエックスMSA−1、ダウエックス1X8、ダウエックスSBR、ダウエックス11、ダウエックスMSA−2、ダウエックスSAR、ダウエックス2X4、デュオライト(DUOLITE)ES−11、デュオライトA 101 D、IONAC A−540、IONAC A−544、IONAC A−548、IONAC A−546、IONAC A−550、IONAC A−5、IONAC A−580、IONAC A−590、IONAC AOOOO、QAEセファデックスA−25、QAEセファデックスA−50、DIAIONタイプIおよびDIAIONタイプII(強塩基アニオン交換体)が挙げられる。強塩基アニオン交換樹脂としては、アンバーライトIRP−67、バイオラドAG−1X10、バイオラドAG−1X8およびダウエックス1X8が挙げられる。別の例は、アンバーライトIRP−67Mである。さらに別の例は、Purolite A600である。使用できるアニオン交換シリカベースクロマトグラフィー材料またはアニオン排除シリカベースクロマトグラフィー材料としては、Absorbosphere SAX、Baker Quaternary Amine、Bakerbond Quaternary Amine、Nucleosil SB、Partisil SAX、Progel−TSK DEAE−3SW、Progel−TSK DEAE−2SW、Sepherisorb S SAX、Supelcosil SAXI、Ultrasil−AX、およびZorbax SAXが特に挙げられる。
【0038】
糖類混合物
上記に検討されたように、開示された方法は、糖類の合成において得られたプロセス流内の糖混合物から1回の同時操作において、無機および有機双方のイオン性副産物を効率的に分離することに関する。単糖混合物は、D−またはL−単糖類を含有し得る。一具体例において、単糖混合物は、1種または複数種のL−単糖類を含有する。さらなる一具体例において、単糖混合物は、L−マンノースならびにL−グルコースを含有する。
【0039】
一般に、開示された方法を用いて、任意のイオンを糖類から分離することができ、したがって本法は、特定のタイプのイオンに限定されない。しかしながら、いくつかの態様において、イオンは、単糖合成から生じるイオン性不純物であり得る。種々の態様において、このような不純物としては、無機酸類、有機酸類ならびに塩基類、および荷電有機分子を挙げることができる。もちろん、イオン性不純物の正確な性質は、特定の糖製造方法に依って変わり得る。このように、開示された方法は、単糖合成から生じるイオン性不純物であり得るイオン類を含有する種々の単糖プロセス流に適用することができる。上記に検討されたように、別の態様において、糖混合物は、硫酸塩またはリン酸塩などの1種または複数種のジアニオン類を含有する。一般に、開示された方法は、多段階精製法、またはさらに多重クロマトグラフィー通過を必要とせず、糖混合物に存在するイオン性不純物の全てまたは殆ど全てを分離するために使用できることが認識されるであろう。一実施形態において、初発の混合物は、約200μシーメンス/cm超、400μシーメンス/cm超、600μシーメンス/cm超、800μシーメンス/cm超、1000μシーメンス/cm超、2000μシーメンス/cm超、または4000μシーメンス/cm超の伝導率を有し、本法によって得られた抽出流は、約750μシーメンス/cm未満、約500μシーメンス/cm未満、約300μシーメンス/cm未満、約250μシーメンス/cm未満、約200μシーメンス/cm未満、約150μシーメンス/cm未満、約100μシーメンス/cm未満、約50μシーメンス/cm未満、または約10μシーメンス/cm未満の伝導率を有する。
【0040】
開示された方法の非限定例の態様において、L−マンノースならびにL−グルコースを含んでなる混合物は、本明細書に開示された疑似移動床式クロマトグラフィーに供することができる。当初、混合物は、L−マンノースならびにL−グルコースおよび以下のイオン性不純物:
a.

b.(3S,4S,5S)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキサン−1−アミニウム、
c.CHNH(メタナミニウム)、
d.Na(ナトリウム)、
e.NH(アンモニウム);および
f.SO2−(硫酸塩)
を含んでいる。
【0041】
1回の連続的操作で、上記に掲げたa−fの全てのイオン性不純物を混合物から分離することができ、それによって低伝導性(<200μシーメンス/cm)を有するL−マンノースならびにL−グルコースの単離された水性フラクションを残すことができる。
【0042】
ある態様において、開示された方法によって得られた抽出流は、約1000μシーメンス/cm未満の伝導性を有し得る。別の態様において、本法によって得られた抽出流は、約750μシーメンス/cm未満、約500μシーメンス/cm未満、約300μシーメンス/cm未満、約250μシーメンス/cm未満、約200μシーメンス/cm未満、約150μシーメンス/cm未満、約100μシーメンス/cm未満、約50μシーメンス/cm未満、または約10μシーメンス/cm未満の伝導率を有する。さらに別の態様において、本法によって得られた抽出流は、約1〜約1000μシーメンス/cm、約25〜約800μシーメンス/cm、約75〜約600μシーメンス/cm、または約100〜約400μシーメンス/cmの伝導率を有する。
【0043】
好ましい一実施形態において、L−マンノースは、SMBクロマトグラフィーを実施した後に混合物から除去または実質的に除去される。
【0044】
SMB装置内のイオン排除樹脂が混合物と連続的に接触し、水で溶出される間に、イオン性副産物を含有する第二流と共に脱イオン単糖類を含有する連続流が生成される。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、通常の当業者に本明細書に請求された化合物、組成物、製品、装置および/または方法がどのように作製され、評価されるかについての完全な開示と説明を提供するために示されるものであり、これらは単に、本発明の例示を意図しており、発明者が発明として見なすものの範囲を限定する意図はない。数字(例えば、量、温度など)に関しては、正確さを保証するように努めたが、いくらかの誤差および偏差を考慮に入れる必要がある。他に指示しない限り、部は重量部であり、温度は℃で表されるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧であるか、またはそれに近い。
【0046】
実施例
L−グルコース合成の教示に関して、参照としてその全体を本明細書に援用した米国特許第4,581,447号明細書に記載されているとおり、76kgのL−アラビノースと、硫酸によりほぼ完全に中和させた50kgのシアン化ナトリウムとを反応させることにより、325Lの水中、L−グルコシアノヒドリンおよびL−マンノシアノヒドリンの溶液を調製した。L−グルコース合成に関して、参照としてその全体を本明細書に援用した米国特許第4,970,302号明細書に記載されているとおり、得られたシアノヒドリンの混合物を追加の硫酸存在下、水素および5%パラジウム−炭素を用いて還元し、得られた中間体のグルコグリコシドおよびアミノグリコシドの溶液を、pH4−5に調整することによって加水分解した。水素化触媒をろ過により除去後、得られた717kgの水溶液は、約30kgのL−グルコース、約55.7kgのL−マンノース、約95.3kg当量の硫酸ナトリウム、および約33.4kg当量の硫酸アンモニウムを含有することが推定された。また、約0.3kgのL−マンノナートイオン、約0.2kgのL−グルコナートイオン(各々、ナトリウム形態およびアンモニウム形態の混合)、マンノシルアミンの過還元から誘導された約2.9kgの第一級アミン副産物、およびグルコシルアミンの過還元から誘導された約1.6kgの第一級アミン副産物も存在した。
【0047】
存在するL−グルコースとL−マンノースの比率を逆転させるために、上記の溶液を、さらに950kgの脱イオン水で希釈し、2.3kgのヘプタモリブデン酸アンモニウムで処理してから、L−グルコース対L−マンノースが、HPLCにより判定して68:32の比率に達するまで、90℃でほぼ10時間加熱した。得られた溶液を、活性炭で処理して色を減少させ、ろ過することにより次の脱イオン精製ステップ用に1,668kgの供給液を得た。
【0048】
供給液を75℃に維持し、各カラムが、4Lのダウエックス99(ナトリウムの形態)イオン交換樹脂で等しくスラリー充填され、65℃に維持された15本のカラムを有する疑似移動床式クロマトグラフィー装置に1分当り0.4Lの速度で通過させた。脱着剤(脱イオン水)もまた、75℃に維持し、1分当り1.9Lの速度で疑似移動床式システム内を通過させた。クロマトグラフィー分離が完了すると、NMRおよび伝導度測定(<200μシーメンス/cm)により判定されたとおり、水中に精製単糖類のみを含んでなる4,452kgの抽出物が得られた。ラフィネート(16,288kg)は、伝導度およびNMR測定により判定されたとおり、無機イオン性および有機イオン性双方の不純物を含有することが確認された。
【0049】
明白で本発明に固有の他の利点は、当業者に明らかになるであろう。一定の特質および副次的組み合わせが、有用であり、他の特質および副次的組み合わせを参照にすることなく使用できることは解されるであろう。このことは、請求項により考慮されており、また請求項の範囲内にある。多くの可能な実施形態が、本発明の範囲から逸脱することなく本発明を構成していることから、当然のことながら、本明細書に説明されているか、または添付の図面に示された全ての内容は、例示的なものであり、限定の意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖含有プロセス流からイオン性不純物を分離する方法であって:
a.疑似移動床式クロマトグラフィー装置内のイオン排除樹脂と、前記単糖含有プロセス流とを接触させること;および
b.前記イオン排除樹脂を水により溶出させて、単糖を含んでなる抽出流および前記イオン性不純物を含んでなるラフィネート流を生じさせること、
を含んでなり、
それによって、前記単糖含有プロセス流から前記イオン性不純物を分離する方法。
【請求項2】
単糖含有プロセス流からイオン性不純物を分離する方法であって:
a.無機ジアニオンをさらに含んでなる前記単糖含有プロセス流を提供すること;
b.疑似移動床式クロマトグラフィー装置内のイオン排除樹脂と、前記単糖含有プロセス流とを接触させること;および
c.前記イオン排除樹脂を水性溶出液により溶出させて、単糖を含んでなる抽出流および前記イオン性不純物を含んでなるラフィネート流を生じさせること、
を含んでなり、
それによって、前記単糖含有プロセス流から前記イオン性不純物を分離する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、連続的である方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、前記単糖または糖類を含んでなる前記抽出スチームを単離することをさらに含んでなる方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法において、ナトリウムおよびアンモニウムの水溶性無機塩類ならびに有機塩類を含んでなる前記ラフィネート流を単離することをさらに含んでなる方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記ナトリウムおよびアンモニウムの水溶性無機塩類が、硫酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムを含んでなる方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記ナトリウムおよびアンモニウムの水溶性有機塩類が、アルドン酸ナトリウムおよびアルドン酸アンモニウムを含んでなる方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の方法において、前記単糖または糖類を含有するプロセス流が、L−単糖を含んでなる方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記L−単糖含有プロセス流が、L−マンノースおよびL−グルコースを含んでなる方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン排除樹脂が、カチオン排除樹脂である方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン排除樹脂が、アニオン排除樹脂である方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン排除樹脂が、架橋結合したスルホン化ポリマーを含んでなる方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン排除樹脂が、架橋結合したスルホン化ポリマーを含んでなり、そのナトリウム塩の形態である方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載の方法において、前記水性溶出液が水である方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン排除樹脂に再生剤を添加することを含まない方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の方法において、前記イオン性不純物が、有機不純物および無機不純物の双方を含んでなる方法。
【請求項17】
請求項2に記載の方法において、前記ジアニオンが、硫酸イオンまたはリン酸イオンである方法。
【請求項18】
請求項1または2に記載の方法において、前記抽出流が、約1000μシーメンス/cm未満の伝導率を有する方法。
【請求項19】
請求項1または2に記載の方法において、前記抽出流が、約200μシーメンス/cm未満の伝導率を有する方法。
【請求項20】
L−単糖含有プロセス流からカチオン性不純物およびアニオン性不純物を分離する連続的な方法であって:
a.擬似移動床式クロマトグラフィー装置内のナトリウム塩の形態におけるスルホン化イオン排除樹脂と、前記L−単糖含有プロセス流とを接触させること;および
b.前記イオン排除樹脂を水により溶出させて、L−単糖を含んでなる抽出流および前記カチオン性不純物およびアニオン性不純物を含んでなるラフィネート流を生じさせること、
を含んでなり、
それによって、前記L−単糖含有プロセス流から前記カチオン性不純物およびアニオン性不純物を分離する連続的な方法。
【請求項21】
少なくとも98%の純度を有するL−グルコースであって、前記L−グルコースが、以下のイオン性不純物:
a.

b.(3S,4S,5S)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキサン−1−アミニウム、
c.CHNH(メタナミニウム)、
d.Na(ナトリウム)、
e.NH(アンモニウム);および
f.SO2−(硫酸塩)
を少なくとも実質的に含まないL−グルコース。
【請求項22】
請求項21に記載のL−グルコースにおいて、少なくとも99.5%の純度を有するL−グルコース。
【請求項23】
請求項21または22に記載のL−グルコースにおいて、約200μシーメンス/cm未満の伝導率を有するL−グルコース。
【請求項24】
少なくとも98%の純度を有するL−グルコースであって、前記L−グルコースが、以下のイオン性不純物:
a.

b.(3S,4S,5S)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキサン−1−アミニウム、
c.CHNH(メタナミニウム)、
d.NaSO
e.(NHSO;および
f.HMo24−4
を少なくとも実質的に含まないL−グルコース。
【請求項25】
請求項24に記載のL−グルコースにおいて、少なくとも99.5%の純度を有するL−グルコース。
【請求項26】
請求項24または25に記載のL−グルコースにおいて、約200μシーメンス/cm未満の伝導率を有するL−グルコース。
【請求項27】
請求項21〜26のいずれか一項に記載の前記L−グルコースおよび薬学的に許容できる担体または希釈剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項28】
請求項21〜26のいずれか一項に記載の前記L−グルコースの有効量を対象に投与することを含んでなる結腸を洗浄する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512931(P2013−512931A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542243(P2012−542243)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059244
【国際公開番号】WO2011/071890
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500287857)アプタリス・ファーマ・カナダ・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Aptalis Pharma Canada Inc.
【Fターム(参考)】