説明

イオン性液体を使用した繊維材料の改質方法

(a)繊維を含む繊維材料を、少なくとも繊維の表面を改質するのに十分な条件下で、イオン性液体を含む処理組成物と接触させ、それによって、処理した繊維材料の性能を向上させ、(b)所望により、繊維を含む繊維材料を、有益剤を含む組成物と接触させ、そして、(c)少なくとも部分的に、該処理組成物を該繊維材料から除去することの各工程を含んでなる、繊維材料の性能を向上させるためのその改質方法。特定の実施形態では、前記表面改質は、前記繊維の少なくとも一つの外層の部分溶解及び/又は少なくとも繊維の表面の結晶構造変化を含む。前記表面改質が、前記繊維材料に向上を付与することができるか、又は前記繊維内への有益剤の埋め込み若しくは付着を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を含む繊維材料の改質方法を対象とする。更に詳細には、本発明は、イオン性液体含有組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオン性液体は、従来の有機溶媒に対する、環境適合性のある又は「グリーン(地球に優しい)」代替物として、幅広い有機合成的応用のために、広範囲に評価されてきた。イオン性液体は、それらを従来の有機溶媒と区別する幾つかの独特の特性、例えば、蒸気圧がほとんどない、広い液体領域、高い極性及び電荷密度、疎水性又は親水性のいずれでもあり得る、並びに独特の溶媒和特性、などを提供する。
【0003】
広く研究されたイオン性液体の分類の一つには、ヘキサフルオロリン酸ブチルメチルイミダゾリ二ウム(BMIM/PF6としても知られる)のようなイミダゾリ二ウム塩類が挙げられる。他の周知のイオン性液体としては、N−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドアルミニウム(III)クロライド(通常は[emim]Cl−AlCl3と呼ばれる)、及びN−ブチルピリジニウムクロライドアルミニウム(III)クロライド(通常は[Nbupy]Cl−AlCl3と呼ばれる)が挙げられる。イオン性液体についての幅広い調査は、次の参考文献においても行われている。PCT国際公開特許WO03/029329、同WO03/074494、同WO03/022812、同WO2004/016570、米国特許第2004/0035293A1号、及び同第5,827,602号。
【0004】
化学プロセスに加えて、イオン性液体は、フランス特許第2434156号に記載されているように殺微生物剤/植物成長調節剤として、日本国特許出願第10−265674号及び米国特許第3,282,728号に記載されているように静電気防止剤として、並びにPCT国際公開特許WO01/19200に記載されているように果物及び野菜生産処理剤としても使用されてきた。イオン性液体の他の用途は、米国特許第6,048,388号にインク組成物の構成成分として、及びアメリカ化学会雑誌(J. Am. Chem. Soc.)(124号、4974〜4975頁(2002年))にセルロース溶解剤として、開示されている。
【0005】
PCT国際公開特許WO2004/003120は、表面又は空気処理組成物に使用するのに好適な、イオン性液体をベースとする生成物及び3つ以上の異なる、且つ帯電したイオン性液体成分を含有するイオン性液体反応混液を開示している。前記生成物は、各種消費者製品応用、例えば、ホームケア、空気ケア、表面洗浄、洗濯及び布地ケア応用において、特に有用である
イオン性液体の各種特異的性質のため、このような物質を付加的用途にて使用するのに都合がよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、イオン性液体含有組成物を、織物処理方法にて使用することが望ましい。特に、前記処理方法は、繊維を含む繊維材料を改良を提供し、且つイオン性液体含有組成物の使用を通して、このような改良を提供する。これらの方法は、環境適合性として知られている物質を用いつつ、繊維材料に改善された性質を提供できる点で優れている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)繊維を含む繊維材料を、前記繊維の表面の少なくとも一部を改質するのに十分な条件下で、イオン性液体を含む処理組成物と接触させ、それによって、処理した繊維材料の性能を向上させること、(b)所望により、繊維を含む繊維材料を、有益剤を含む組成物と接触させ、そして、(c)少なくとも部分的に、該処理組成物を該繊維材料より除去すること、の各工程を含んでなる、繊維材料の性能向上のための改質方法に関する。特定の実施形態では、前記表面改質は、前記繊維の少なくとも一つの外層の部分溶解及び/又は少なくとも繊維の表面の結晶構造変化を含む。表面改質は、前記繊維材料に向上を付与することができるか、又は前記繊維内への有益剤の埋め込み若しくは付着を可能にする。
【0008】
更なる実施形態及び本方法の利点が、次の発明を実施するための最良の形態にて、更に詳細に説明されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
繊維を含む繊維材料を改質するための本発明の方法は、(a)前記繊維材料を、少なくとも繊維の表面を改質し、且つその性能向上を提供又は促進させるのに十分な条件下で、イオン性液体を含む組成物と、接触させ、そして(b)少なくとも部分的に、前記組成物を前記繊維材料より除去すること、の各工程を含む。本文脈の中で、繊維を含む繊維材料とは、任意の繊維含有繊維材料物質又は生成物のことを言い、目の粗い又は撚っていない(Free)繊維、糸(より糸を含む)、織布、不織布、ニット織物、布地物品、などが挙げられるが、これらに限定されない。布地物品としては、衣類、衣類製造にて使用された構成成分、カーペット、室内装飾材料、などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、前記繊維材料の繊維は、任意の天然(例えば、セルロース)、再生(例えば、レーヨン)、若しくは合成物質、又はそれらの組み合わせによって形成されてもよい。一実施形態では、前記繊維材料の繊維は、セルロース系材料を含む。別の実施形態では、前記繊維は、例えば、ポリエステルを含む合成物質を含む。
【0010】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用する時、イオン性液体とは、約100℃以下の融解温度を有する塩のことを言い、又は、他の実施例では、約60℃以下の融解温度を有する塩のことを言い、更に別の実施形態では、約40℃以下の融解温度を有する塩のことを言う。他の実施形態では、前記イオン性液体は、識別可能な融点を示さず(DSC分析に基づく)、約100℃以下の温度にて「流動性」であり、又、別の実施形態では、約20〜約80℃、即ち典型的な布地又は食器洗浄温度にて、「流動性」である。本明細書で使用する時、用語「流動性」とは、前記イオン性液体が上記温度にて約10,000mPa・s未満の粘度を示すことを意味する。
【0011】
用語「イオン性液体」、「イオン性化合物」、及び「IL」は、イオン性液体、イオン性液体合成物、及びイオン性液体の混合物(又は反応混液)を指していることが理解されよう。前記イオン性液体は、アニオン性IL成分及びカチオン性IL成分を含むことができる。イオン性液体が液体形態にある時、これらの構成成分は互いに自由に交わる(即ち、乱雑な状態になる)ことができる。本明細書で使用する時、用語「イオン性液体の反応混液」とは、2つ以上の、好ましくは少なくとも3つの、異なる、且つ帯電したIL成分の混合物のことを言い、この際、少なくとも一つのIL成分がカチオン性であり、且つ少なくとも一つのIL成分がアニオン性である。このため、3つのカチオン性及びアニオン性IL成分が反応混液内で対になることで、少なくとも2つの異なるイオン性液体が得られる。イオン性液体の反応混液は、異なるIL成分を有する個別のイオン性液体を混合することによって、又はコンビナトリアル・ケミストリーで調合することによって、調製されてもよい。このような組み合わせ及びそれらの調製は、米国特許第2004/0077519A1号及び米国特許第2004/0097755A1号にて更に詳細に論じられている。本明細書で使用する時、用語「イオン性液体合成物」とは、すぐ前の参考文献にて記述されているように、塩(室温では固体であることができる)の、プロトンドナーZ(液体又は固体であることができる)との混合物のことを言う。混合時に、これらの構成成分は約100℃以下で液体になり、前記混合物はイオン性液体のように作用する。
【0012】
イオン性液体が有し、それらを従来の溶剤に対して魅力的な代替物にしている幾つかの性質としては、次のものが挙げられる。(a)イオン性液体は、広い液体領域を有する。幾つかのイオン性液体は、−96℃までの温度にて液体形態であることができ、他のものは200℃までの温度で熱的に安定していることができ、これにより、多くの有機反応及び方法における効果的な速度支配が可能となる。(b)イオン性液体は、実質的に蒸気圧を示さず、従って、取り扱いが容易であり、且つ揮発性が問題となる場合の安全上の懸念を減らす。(c)イオン性液体は、その高極性故に、幅広い有機及び無機の物質に対して効果的な溶媒である。(d)イオン性液体は、効果的なブレンステッド/ルイス酸である。及び(e)イオン性液体は、所望する特定の用途/化学に適応させることができ、例えば、それらを選択的に、親水性から疎水性に及ぶ性質を有するようにできる。それらの高い極性及び高電荷密度故に、イオン性液体は、特有の溶媒特性を有し、各種プロセス環境及び条件において使用することができる。
【0013】
本発明のイオン性液体に使用するのに好適なアニオン類及びカチオン類の非限定例については、以下にて詳細に説明する。
【0014】
アニオン類
本発明のイオン性液体にて使用するのに適したアニオン類としては、次の物質が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0015】
(1)アルキルサルフェート類(AS)、アルコキシサルフェート類及びアルキルアルコキシサルフェート類、この際、前記アルキル又はアルコキシは、直鎖、分岐鎖又はこれらの混合であり、更に、サルフェート基のアルキル鎖への付加は、アルキル鎖(AS)への末端、アルキル鎖(SAS)への内部、又はこれらの混合である。
【0016】
。非限定例としては、次式を有するC10〜C20アルキルサルフェート類が挙げられる。
【化1】

式中、x+yは少なくとも8の整数、好ましくは少なくとも約10であり、Mは、本明細書にて詳細に記述されたイオン性液体のカチオン類から選択されるカチオンであり、又は次式を有する直鎖C10〜C20第二級アルキルサルフェート類である。
【化2】

式中、x+yは少なくとも7の整数、好ましくは少なくとも約9であり、x又はyは0であることができ、Mは、本明細書にて詳細に記述されたイオン性液体のカチオン類から選択されるカチオンであり、次式を有するC10〜C20第二級アルキルエトキシサルフェート類である。
【化3】

式中、x+yは少なくとも7の整数、好ましくは少なくとも約9であり、x又はyは、0であることができ、Mは、本明細書にて詳細に記述されたイオン性液体のカチオン類から選択されるカチオンであり、アルコキシサルフェートの非限定例としては、市販のアルコキシコポリマー類のサルフェート化誘導体、例えば、プルロニックス(Pluronics)(登録商標)(BASF社より)が挙げられる。
【0017】
(2)スルホサクシネート類のモノ−及びジ−エステル類。非限定例としては、飽和及び不飽和C12〜18モノエステルスルホサクシネート類は、例えば、マッカネート(Mackanate)LO−100(登録商標)(マッキンタイア・グループ(McIntyre Group)より)として入手可能なラウリルスルホサクシネートが、飽和及び不飽和C6〜C12ジエステルスルホサクシネート類は、例えば、エアゾール(Aerosol)OT(登録商標)(シーテック社(Cytec)より)として入手可能なジオクチルエステルスルホサクシネートが挙げられる。
【0018】
(3)メチルエステルスルホネート類(MES)。
【0019】
(4)アルキルアリールスルホネート類。非限定例としては、トシレート、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和C〜C14アルキル類を有するアルキルアリールスルホネート類;アルキルベンゼンスルホネート類(LAS)、例えばC11〜C18アルキルベンゼンスルホネート類;ベンゼン、クメン、トルエン、キシレン、t−ブチルベンゼン、ジーイソプロピルベンゼン、又はイソプロピルベンゼンのスルホネート類;ナフタレンスルホネート類及びC14アルキルナフタレンスルホネート類、例えばペトロ(Petro)(登録商標)(アクゾ・ノーベル・界面化学社(Akzo Nobel Surface Chemistry)より);石油のスルホネート類、例えばモナリューベ(Monalube)605(登録商標)(ユニケマ社(Uniqema)より)、が挙げられる。
【0020】
(5)C8〜22個の炭素原子をアルキル部分に有するアルキルグリセロールエーテルスルホネート類。
【0021】
(6)ジフェニルエーテル(ビス−フェニル)誘導体類。非限定例としては、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)及びジクロサン(4,4’−ジクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテル)(両方ともイルガサン(Irgasan)(登録商標)としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)より入手可能)が挙げられる。
【0022】
(7)直鎖又は環式カルボキシレート類。非限定例としては、シトレート、ラクテート、タルタレート、サクシネート、アルキレンサクシネート、マレエート、グルコネート、ホルメート、シンナメート、ベンゾエート、アセテート、サリチレート、フタレート、アスパルテート、アジパート、アセチルサリチレート、3−メチルサリチレート、4−ヒドロキシイソフタレート、ジヒドロキシフマレート、1,2,4−ベンゼントリカルボキシレート、ペンタノアート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
(8)アルキルオキシアルキレンカルボキシレート類。非限定例としては、好ましくは1〜5個のエトキシ単位を含む、C10〜C18アルキルアルコキシカルボキシレート類が挙げられる。
【0024】
(9)アルキルジフェニルオキシドモノスルホネート類。非限定例としては、次の一般式を持つアルキルジフェニルオキシドモノスルホネートが挙げられる。
【化4】

式中、Rは、C10〜C18直鎖又は分岐鎖アルキルであり、R及びRは、独立してSO又はHであり、ここでR又はRのうち少なくとも一つが、水素ではなく、Rは、R又はHであり、好適なアルキルジフェニルオキシドモノスルホネート類は、ダウケミカル社(Dow Chemical)よりダウファックス(DOWFAX)(登録商標)として、及びオーリン社(Olin Corp.)よりポリ−タージェント(POLY-TERGENT)(登録商標)として入手可能である。
【0025】
(10)中鎖分岐状アルキルサルフェート類(HSAS)、中鎖分岐状アルキルアリールスルホネート類(MLAS)及び中鎖分岐状アルキルポリオキシアルキレンサルフェート類。MLASの非限定例は、米国特許第6,596,680号、同第6,593,285号、及び同第6,202,303号に開示されている。
【0026】
(11)アルファオレフィンスルホネート類(AOS)及びパラフィンスルホネート類。非限定例としては、ステパン社(Stepan Company)よりバイオターゲ(Bio Terge)AS−40(登録商標)として入手可能なC10〜22アルファ−オレフィンスルホネート類が挙げられる。
【0027】
(12)アルキルホスフェートエステル類。非限定例としては、アクゾ・ノーベル・界面化学社(Akzo Nobel Surface Chemistry LLC)からエムフォス(Emphos)CS(登録商標)及びエムフォス(Emphos)TS−230(登録商標)として入手可能な、C8〜22アルキルホスフェート類が挙げられる。
【0028】
(13)一般式RCON(CH)CHCOを有するサルコシネート類で、式中、Rは、約C8〜20のアルキル。非限定例としては、アンモニウムラウロイルサルコシネート(ダウケミカル社(Dow Chemical)からハムポシル(Hamposyl)AL−30(登録商標)として入手可能)及びナトリウムオレオイルサルコシネート(ダウケミカル社(Dow Chemical)からハムポシル(Hamposyl)O(登録商標)として入手可能)が挙げられる。
【0029】
(14)タウレート類、例えば、C8〜22アルキルタウレート類。ナトリウムココメチルタウリド又はローディア社(Rhodia, Inc.)からのゲロポン(Geropon)TC(登録商標)として入手可能。
【0030】
(15)サルフェート化及びスルホン化した油類及び脂肪酸類、直鎖又は分岐鎖の、例えば、ノーマン、フォックス社(Norman, Fox & Co.)からノーフォクス(Norfox)1101(登録商標)として、及びシェムロン社(Chemron Corp.)からオレイン酸カリウムとして入手可能な、カリウムココナッツ油石鹸から抽出されるようなサルフェート類又はスルホネート類。
【0031】
(16)アルキルフェノールエトキシサルフェート類及びスルホネート類。例えば、C8〜14アルキルフェノールエトキシサルフェート類及びスルホネート類。非限定例としては、ダウケミカル社(Dow Chemical)からトリトン(Triton)XN−45S(登録商標)として入手可能なサルフェート化ノニルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0032】
(17)次式を有する脂肪酸エステルスルホネート類。
−CH(SO)CO
式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C〜C18アルキル、且つRは、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル。
【0033】
(18)次式(I)を有する、置換サリチルアニリドアニオン類。
【化5】

式中、mは、0〜4の整数;nは、0〜5の整数;m+nの合計は、0より大きい;aは、0又は1;bは、0又は1;gは、0又は1;bが0の場合、a及びgの一つが0でなければならず;Z及びZ’は、独立してO及びSから選択され;X及びX’は、存在する場合、O、S、及びNR1から選択され、式中、Rは独立してH、C1〜16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、及びアリールから成る群から選択され;Tは、存在する場合、C=O、C=S、S=O、及びSO2から選択され;Tが、S=O又はSOである場合、X及びX’は、Sでなくともよく;ラジカルであるR−(X)−(T)−(X’)−において、a、b又はgのいずれが1である場合、そのラジカルのRは、独立してH、C〜C16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、及びアリールから成る群から選択され;ラジカルのa、b及びgが全て0の場合には、そのラジカルのRは、F、Cl、Br、I、CN、RN→O、NOから成る群から更に選択されてもよく;a、b及びbの全てが0の場合、少なくとも一つのRは、H以外でなければならず;更に、前記分子内のハロゲン原子の総数が、R内にあるものを除外して、2を超えないという条件で;Rは、独立して、C〜C16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、アリール、及びこれらの混合物から成る群から選択され;誘導体化された置換サリチルアニリドアニオン類で、この際、一つ又は両方の芳香環が、追加の置換基を有するものが、本明細書で使用するのに更に好適であり;置換サリチルアニリド及びこれらの派生品が、米国特許第2002/0068014A1号及びPCT国際公開特許WO04/026821に開示されている。M+は、本明細書中に記載するイオン性液体のカチオン類から選択されるカチオンである。
【0034】
(19)次式(II)を有する、置換フェノール又はチオフェノールアニオン類。
【化6】

式中、mは、0〜4の整数;aは、0又は1;bは、0又は1;gは、0又は1;bが0の場合、a及びgの一つが0でなければならず;Zは、O及びSから選択され;X及びX’は、存在する場合、O、S、及びNR1から選択され;ラジカルであるR−(X)−(T)−(X’)−において、a、b又はgのいずれが1である場合、そのラジカルのRは、独立してH、C〜C16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、及びアリールから成る群から選択され;ラジカルのa、b及びgが全て0の場合には、そのラジカルのRは、F、Cl、Br、I、CN、RN→O、NOから成る群から更に選択されてもよく;Tは、存在する場合、C=O、C=S、S=O、及びSOから選択され;Tが、S=O又はSOである場合、X及びX’は、Sでなくてもよく;Yは、少なくとも一つで且つ20個以下の炭素原子及び置換基、−X’’−Hを含むラジカルであり、式中、X’’は、O、S、及びN−(T’)b’−(X’’’)a’−Rから選択され、式中、a’は、0又は1、b’は、0又は1であり、及び、X’’’は、存在する場合、O、S、及びNR2から選択され;Rは、独立してH、C〜C16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、及びアリールから成る群から選択され;T’は、存在する場合、C=O、C=S、及びSOから選択され;T’がSOである場合、X’’’はSでなくともよく;Rは、独立して、C1〜16直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキル、及びアリール、及びこれらの混合物から成る群から選択される。前記置換フェノール又はチオフェノールアニオン類は、米国特許第2002/0068014A1号及びPCT国際公開特許WO04/026821に開示されている。Mは、本明細書中に記載するイオン性液体のカチオン類から選択されるカチオンである。
【0035】
(20)ポリアミノポリカルボキシレート類。非限定例としては、エチレンエチレン−ジアミン四酢酸(EDTA)、ジアミンテトラアセテート類、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリアセテート類、ニトリロ−トリ−アセテート類、エチレンジアミンテトラプロプリオネート類、トリエチレンテトラアミンヘキサアセテート類、ジエチレントリアミンペンタアセテート類、及びエタノールジグリシン類、が挙げられる。
【0036】
(21)アミノポリホスホネート類。例えば、エチレンジアミンテトラメチレンホスホネート及びジエチレントリアミンペンタメチレン−ホスホネート。
【0037】
(22)甘味剤由来のアニオン類。サッカリネート及びアセサルファメート。
【化7】

式中、M+は、本明細書中に記載するイオン性液体のカチオン類から選ばれるカチオンである。
【0038】
(23)エトキシル化アミドサルフェート類、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、二水素リン酸塩、フルオロアルキル(fluroalkyl)スルホネート、ビス−(アルキルスルホニル)アミン、ビス−(フルオロアルキルスルホニル)アミド、(フルオロアルキルスルホニル(fluroalkylsulfonyl))(フルオロアルキルカルボニル)アミド、ビス−(アリールスルホニル)アミド、カーボネート;テトラフルオロカーボネート(tetrafluorborate)(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(hexaflurophosphate)(PF)。
【0039】
(24)次の一般式を有するアニオン性漂白活性化剤類。
−CO−O−C−R
式中、Rは、C〜C18アルキル、C〜C18アミノアルキル、又はこれらの混合物であり、且つ、Rは、スルホネート又はカーボネートであり、非限定例は例えば、
【化8】

が、米国特許第5,891,838号、同第6,448,430号、同第5,891,838号、同第6,159,919号、同第6,448,430号、同第5,843,879号、同第6,548,467号に開示されている。
【0040】
カチオン類
本発明のイオン性液体にて使用するのに適したアニオン類としては、次の物質が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0041】
(a)アミンオキシド類、ホスフィンオキシド類、又はスルホキシド類のカチオン類(即ち、プロトン化されたカチオンの形態)。非限定例としては、一つのC8〜18アルキル部分及びC1〜3アルキル基及びC1〜3ヒドロキシアルキル基から成る群から選択される2つの部分を含有するアミンオキシドカチオン類、一つのC10〜18アルキル部分及びC1〜3アルキル基及びC1〜3ヒドロキシアルキル基から成る群から選択される2つの部分を含有するホスフィンオキシドカチオン類、及び一つのC10〜18アルキル部分及びC1〜3アルキル基及びC1〜3ヒドロキシアルキル部分から成る群から選択される一つの部分を含有するスルホキシドカチオン類が挙げられる。幾つかの実施形態では、前記アミンオキシドカチオン類は、次式を有する。
【化9】

式中、Rは、C8〜22アルキル、C8〜22ヒドロキシアルキル、C8〜22アルキルフェニル基、及びこれらの混合物であり;Rは、C2〜3アルキレン又はC2〜3ヒドロキシアルキレン基又はこれらの混合物であり;xは、0〜約3であり;及び各Rは、独立して、C1〜3アルキル又はC1〜3ヒドロキシアルキル基又は平均で約1〜約3個のエチレンオキシド基を含有するポリエチレンオキシド基;前記R基は、例えば酸素原子又は窒素原子を介して互いに結合し、環状構造を形成してもよく;他の代表的なアミンオキシドカチオン類として、C10〜C18、C10、C10〜C12、及びC12〜C14アルキルジメチルアミンオキシドカチオン類、並びにC〜C12アルコキシエチルジヒドロキシエチルアミンオキシドカチオン類が挙げられる。
【0042】
(b)次の一般式を有するベタイン類。
R−N(+)(R−RCOOH
式中、Rは、約10〜22個の炭素原子、好ましくは約12〜約18個の炭素原子を含有するアルキル基、同様の数の炭素原子を含有する(ベンゼン環は、約2個の炭素原子に相当するものとし、アミド又はエステル結合によって阻害された同様の構造を有する)アルキルアリール及びアリールアルキル基、から成る群から選択される。各Rは、1〜約3個の炭素原子を含有するアルキル基であり;且つ、Rは、1〜約6個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;ベタイン類の非限定例としては、ドデシルジメチルベタイン、アセチルジメチルベタイン、ドデシルアミドプロピルジメチルベタイン、テトラデシルジメチルベタイン、テトラデシルアミドプロピルジメチルベタイン、ドデシルジメチルアンモニウムヘキサノエート;及びアミドアルキルベタイン類が、挙げられ、米国特許第3,950,417号、同4,137,191号、及び同4,375,421号、及び英国特許第2,103,236号に開示されている。別の実施形態では、前記カチオンは、米国特許第4,687,602号に開示されているスルホベタイン類であってもよい。
【0043】
(c)アンホジアセテート類。例えば、マッキンタイア社(McIntyre)からのマッカム(Mackam)2C(登録商標)として入手可能な二ナトリウムココジアセテート。
【0044】
(d)次のタイプのジエステル四級アンモニウム(DEQA)カチオン類。
(4−m)−N−[(CH−Y−R
式中、各R置換基は、水素;C1〜C6アルキル又はヒドロキシアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はヒドロキシエチル、より好ましくはメチル;ポリ(C〜Cアルコキシ)、好ましくはポリエトキシ;ベンジル;又はこれらの混合物;mは、2又は3であり;各nは、1〜約4であり;各Yは、−O−(O)C−、−C(O)−O−、−NR−C(O)−、又は−C(O)−NR−であり;Yが、−(O)C−又は−NR−C(O)−の場合には、各R1内の炭素原子の合計に1を加えたものは、C12〜C22、好ましくはC14〜C20であり、各R1はヒドロカルビル、又は置換ヒドロカルビル基である;から選択される。一実施形態では、DEQAカチオンは、米国特許第6,004,922号で議論されているようにアルキルジメチルヒドロキシエチル四級アンモニウム(K1)であり、別の実施形態では、前記DEQAカチオンは、次の一般式を有する。
CHCH(YR)(CHYR
式中、各Y、R、R1は、従来通り同じ意味であり、更に他の実施例では、前記DEQAカチオンは、[CHN(+)[CHCH(CHO(O)CR)O(O)CR]であり、式中、各R1は、C15〜C19の範囲内にある。
【0045】
(e)次式を有するアルキレン四級アンモニウムカチオン類。
(4−m)−N−R
式中、各mは、2又は3であり;各Rは、独立して、アルキル又はヒドロキシアルキルC〜C部分、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はヒドロキシエチル、及びより好ましくはメチル;各Rは、独立して、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和C〜C22アルキル又はアルコキシ部分、好ましくはC14〜C20部分であり、しかし一つを超えないRが、約C12未満であり、その結果他のRが、約C16未満であり;或いは、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル部分、好ましくはC10〜C20アルキル又はアルケニル、最も好ましくはC12〜C18アルキル又はアルケニルであり;一実施形態では、前記カチオンはジアルキレンジメチルアンモニウム、例えば、ウィトコ社(Witco Corporation)より商標名アドゲン(Adogen)(登録商標)472にて入手可能なジオレイルジメチルアンモニウム;別の実施形態では、前記カチオンは、モノアルキニルトリメチルアンモニウム、例えばモノオレイルトリメチルアンモニウム、モノキャノーラトリメチルアンモニウム、及びソーヤトリメチルアンモニウムである。
【0046】
(f)ジ脂肪アミド四級アンモニウムカチオン類。例えば、
[R−C(O)−NR−R−N(R)−R−NR−C(O)−R
式中、R及びRは、上記カチオン(e)に記載した通りであり、R及びRは、C〜Cアルキレン部分であり、例えば、ジ脂肪アミド四級アンモニウム化合物(quats)は、ウィトコ社(Witco)から商標名ヴァリソフト(Varisoft)(登録商標)にて市販されている。
【0047】
(g)C8〜22四級界面活性剤類。例えば、そのエトサルフェート塩の形態で、スケア・ケミカルズ社(Scher Chemicals, Inc.)からシェルコクアットIIS(Schercoquat IIS)(登録商標)として入手可能なイソステアリルエチルイミドニウム、コグニス社(Cognis Corporation)からデヒコートSP(登録商標)として入手可能なクオタニウム−52、及びその塩化物の形態で、アクゾ・ノーベル・界面化学社(Akzo Nobel Surface Chemistry LLC)からアークワッド(Arquad)2C−75(登録商標)として入手可能なジココジメチルアンモニウム。
【0048】
(h)カチオン性エステル類。例えば、米国特許第4,228,042号、同4,239,660号、同4,260,529号及び同6,022,844号にて論じられているようなもの。
【0049】
(i)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン。ローム&ハース社(Rohm & Haas)から、カトン(Kathon)(登録商標)として入手可能。
【0050】
(j)四級アミノポリオキシアルキレン誘導体類(コリン及びコリン誘導体類)。
【0051】
(k)アルキルオキシアルキレンカチオン類。
【0052】
(l)米国特許第6,136,769号で論じられているようなアルコキシレート四級アンモニウム類(AQA)。
【0053】
(m)置換及び非置換のピロリジニウム、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、ピラゾリウム、ベンズピラゾリウム、チアゾリウム、ベンズチアゾリウム、オキサゾリウム、ベンズオキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソチアゾリウム、イミダゾリデニウム、グアニジニウム、インダゾリウム、キヌクリジニウム、トリアゾリウム、イソキヌクリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピリダジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、アゼピニウム、ジアゼピニウム、ピリジニウム、ピペリドニウム、ピリミジニウム、チオフェニウム;ホスホニウム;一実施形態では、前記カチオンは次式を有する置換イミダゾリウムカチオンである。
【化10】

式中、各R及びRは、上記カチオン(e)に記載した通りであり、各Rは、C〜Cアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、且つ、Gは、酸素原子又は−NR−基であり、例えば、前記カチオン、1−メチル−オレイルアミドエチル−2−オレイルイミダゾリニウムは、ウィトコ社(Witco Corporation)より、商標名ヴァリソフト(Varisoft)(登録商標)3690にて市販されている。別の実施形態では、前記カチオンは、次式を有するアルキルピリジニウムカチオンである。
【化11】

式中、Rは、非環式脂肪族C〜C22炭化水素基。別の実施形態では、前記カチオンは次式を有するアルカンアミドアルキレンピリジニウムカチオンである。
【化12】

式中、Rは、直鎖若しくは分岐鎖、飽和若しくは不飽和C〜C22アルキル若しくはアルコキシ部分、又はヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル部分であり、且つ、Rは、C〜Cアルキレン部分である。
【0054】
(n)四級アンモニウム部分を有するカチオン性漂白活性化剤類としては、
【化13】

が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0055】
これら及びイオン性液体のカチオン類として本明細書で使用するのに好適な他のカチオン性漂白活性化剤類は、米国特許第5,599,781号、同第5,686,015号、同第5,686,015号、PCT国際公開特許95/29160、米国特許第5,599,781号、同第5,534,179号、欧州特許第1253190A1号、米国特許第6,183,665号、同第5,106,528号、同第5,281,361号、及びフランス化学学会雑誌(Bulletin de la Societe Chimique de France)(1973年刊)(第3巻、第2分冊、1021〜7頁)に開示されている。
【0056】
(o)カチオン性抗菌剤。例えばセチルピリジニウム、クロロヘキシジン及びドミフェン。
【0057】
(p)アルキル化カフェインカチオン類。例えば、
【化14】

式中、R及びRは、C1〜C12アルキル又はアルキレン基である。
【0058】
(q)アルキルポリアミノカルボキシレート類。例えば、
【化15】

式中、Rは、C〜C22アルキル又はアルキレン基又はココ、タロー又はオレイル、非限定例としては、アクゾ・ノーベル社(Akzo Nobel)からの、アムフォラーク(Ampholak)(登録商標)7CX/C、アムフォラーク(Ampholak)(登録商標)7TX/C、及びアムフォラーク(Ampholak)(登録商標)XO7/Cが挙げられる。
【0059】
このため、本明細書で使用するのに好適なイオン性液体は、各種アニオン性及びカチオン性の組み合わせを有してもよい。前記イオン種は、特定の用途のために特化できるように、前記イオン性液体の性質を調整及び混合することができ、所望の溶媒特性、粘度、融点、及び他の性質を提供する。これらの特化されたイオン性液体は、「デザインされた溶媒(designer solvents)」と呼ばれてきた。
【0060】
前記イオン性液体は、本明細書にて開示される方法で使用するのに好適な各種組成物内に、任意の所望の有効量にて存在することができる。典型的には、前記イオン性液体は、繊維材料処理組成物の約0.1重量%〜約100重量%、及び好ましくは約1重量%〜約85重量%、より好ましくは約5重量%〜約75重量%の範囲の量で存在する。幾つかの実施形態では、前記イオン性液体は、繊維材料処理組成物の少なくとも約50重量%で含まれる。更なる実施形態では、前記イオン性液体は、繊維材料処理組成物の少なくとも約80重量%で含まれ、その上更なる実施形態では、前記イオン性液体は、繊維材料処理組成物の少なくとも約90重量%で含まれる。
【0061】
多くのイオン性液体は、吸湿性であり、このため、イオン性液体の約0.01重量%〜約50重量%未満の範囲の相当量の水を含む(本明細書においては、「固有」又は「結合」水と呼ぶ)ことがある。本発明の処理組成物を調製中に、「遊離水」を加えてもよいことに注目されたい。当業者は、構成成分(例えば、固有水及び遊離水)が組成物中で混合されると、前記構成成分はもはやその由来によって区別することができず、全組成物のパーセンテージとして総量で報告されることを認識するであろう。このため、本発明の繊維材料処理組成物は、組成物の約0.01重量%〜約50重量%、及び好ましくは約1重量%〜約40重量%、より好ましくは約5重量%〜約30重量%の範囲で、その由来に拘わらず、水を含んでもよい。前記処理組成物は、所望により共溶媒を含んでよい。共溶媒の典型例は、直鎖又は分岐鎖C1〜C10アルコール類、ジオール類、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、共溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールが、本発明の幾つかの組成物中で使用される。更なる特定の実施形態では、前記イオン性液体繊維材料処理組成物は、遊離水及び/又は他の有機溶媒を実質的に含まない。これらの組成物は、約10重量%未満、より具体的には、約5重量%未満、更により具体的には、約1重量%未満の遊離水及び/又は他の有機溶媒を含有する。
【0062】
幾つかの実施形態では、イオン性液体又はイオン性液体の反応混液(補助剤、共溶媒又は遊離水により未希釈)を含有する、本明細書で用いた前記繊維材料処理組成物は、20℃にて測定して、約2000mPa・s未満、好ましくは約750mPa・s未満の粘度を有する。他の実施形態では、未希釈のイオン性液体の粘度は、20℃にて、約0.1〜約500mPa・s、好ましくは約0.5〜約400mPa・s、及びより好ましくは約1〜約300mPa・sの範囲内である。更に別の実施形態では、ILを含有する繊維材料処理組成物の粘度は、約40℃〜60℃の範囲の温度まで加熱した場合、約2000mPa・s未満、好ましくは約500mPa・s未満、より好ましくは約300mPa・s未満まで低下する。
【0063】
イオン性流体及びイオン性流体含有組成物の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計型番LVDVII+で、20℃で、スピンドル番号S31を用いて、異なる粘度の物質を測定するのに適した速度で測定できる。典型的には、測定は、約1000mPa・sを超える粘度の製品を測定するには1.3rad/s(12rpm)、約500mPa・s〜約1000mPa・sの粘度の製品を測定するには3.1rad/s(30rpm)、約500mPa・s未満の粘度の製品を測定するには6.3rad/s(60rpm)で実施される。未希釈状態は、粘度測定前に、イオン性液体又は反応混液を、乾燥剤(例えば、塩化カルシウム)を収容したデシケータ内に室温で少なくとも約48時間保管することによって調製される。この平衡化期間は、未希釈試料中の固有水の量を一様にする。
【0064】
本発明の方法によれば、前記繊維含有繊維材料は、イオン性液体(上記の如く、イオン性液体の混合物又は反応混液をを含んでよい)含有する前記組成物と、繊維の表面を改質し、且つその性能向上を提供又は容易化させるのに十分な条件下で接触させられる。性能向上とは、前記イオン性液体処理によって改善されるあらゆる物理的性質である。一実施形態では、前記繊維材料の繊維が、前記イオン性液体含有組成物と十分な時間接触させられ、ILの存在に起因する極性及び/又はイオン電荷が繊維間の水素結合を阻害するようにして、それによって少なくとも前記繊維の表面での結晶構造変化を生じさせる。別の実施形態では、繊維の表面の外層の少なくとも一つが部分溶解するように、前記繊維材料の繊維は、イオン性液体含有組成物と十分な時間接触させられる。
【0065】
表面層の溶解及び/又は結晶構造の変化が、繊維の各種物理的性質の向上を提供することができ、これには繊維材料の防しわ性、滑らかさ、柔軟性、形状保持性、などの一つ以上の改善を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0066】
更に、本発明の方法によって得られる改質には、前記繊維の外層の少なくとも一つの部分溶解及び/又は結晶構造の変化が挙げられるが、これらに限定するものではなく、例えば、更に、イオン性液体含有組成物との接触と同時に、又はその後で、前記繊維材料を有益剤を含む組成物と接触させることにより、少なくとも一つの有益剤を繊維の表面に埋め込み及び/又は付着させることができる。或いは、前記有益剤は、補助剤として又はイオン性液体活性物質として、前記IL含有組成物内に存在してもよい。
【0067】
一実施形態では、埋め込まれた又は付着させられた前記有益剤は、前記繊維から制御された状態で解放される(例えば、時間とともにゆっくりと且つ持続して解放される)。別の実施形態では、前記有益剤が制御された状態で送達されるように(例えば、大量の水、pH変化、熱など、きっかけとなる要因によって)、前記有益剤は前記イオン性液体によって保護され又は安定化されることができる。
【0068】
好適な有益剤としては、香料、染料、色素固定剤、サイズ剤、皮膚コンディショニング活性物質、ビタミン類、酵素類、界面活性剤、耐磨耗剤、しわ防止剤、染み防止剤、防水剤、難燃剤、抗菌剤、金属漂白触媒、漂白剤、布地柔軟剤、けば立ち防止剤、撥水剤、紫外線保護剤、光沢剤類、これらの混合物(即ち、これらの種類の有益剤の2つ以上のものの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有益剤の更なる例は、米国特許第6,488,943号(ビールス(Beerse)ら)、同第6,548,470号(ブッツァカリーニ(Buzzaccarini)ら)、同第6,482,793号(ゴードン(Gordon)ら)、同第6,573,234号(シビック(Sivik)ら)、同第6,525,012号(プリンス(Price)ら)、同第6,566,323号(リティヒ(Littig)ら)、同第6,090,767号(ジャクソン(Jackson)ら)、同第6,420,326号(シェリー(Sherry)ら)、同第6,733,538号(パナンディカー(Panandiker)ら)、米国特許公報第2003/0166495A1号(ワング(Wang)ら)、及び同第2004/0121929A1号(ワング(Wang)ら)に開示されている。
【0069】
前記有益剤は、任意の所望量にて、繊維材料処理組成物内に含まれてよい。典型的な繊維材料処理組成物は、約0.001〜約20重量%の前記有益剤を含有してよい。更に具体的な実施形態では、このような組成物は、約0.01〜約10重量%、より具体的には約0.1〜約5重量%の前記有益剤を含んでもよい。当業者は、前記の観点から、従って、前記改質が繊維材料の繊維内に所望する深さで実施されてもよく、表面改質に限定されないことを理解するであろう。
【0070】
本発明の方法は、連続的、半連続的又はバッチ処理技術のいずれか又はこれらの任意の組み合わせによって実施されてよい。前記接触工程は、当該技術分野において既知の方法で実施されてよく、これには例えば、浸漬技術によること、又は、非浸漬技術、例えば、スプレー、霧吹き、発泡、パディング、などによること、が挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施形態では、前記組成物は液滴の形態で提供され、且つ前記繊維材料の繊維は、非浸漬技術を使用して接触させられる。
【0071】
更に、前記プロセスは、繊維工場の製造又は加工中に、例えば、別個の処理工程にて又は従来の加工工程中にて、例えば、サイジング、糊抜き、漂白、研磨、シルケット加工、染色、印刷、最終加工、コーティング、これらの組み合わせ、などの処置中にて、実施されてもよい。使用してもよい、代表的な繊維工場工程は、例えば、米国特許公報第2003/0226213号、及び「繊維材料の処理と性質:調製、染色、最終加工及び性能」(ヴィーゴ(Vigo)、エルゼビア(Elsevier)共著)(1994年)に開示されている。或いは、前記方法は、消費者により衣類に対し、例えば家庭での洗濯又は乾燥、又は他の家庭内の繊維材料/衣類処理プロセス中に実施されてもよい。前記接触が実施される特定の物理的条件は、処理される個々の繊維材料の繊維、使用される処理組成物及び所望するその物理的性質の向上に基づいて変えてよい。
【0072】
一実施形態では、所望の向上の達成及び/又は耐久性を促進するために、前記イオン性液体含有組成物と接触する前に、同時に、及び/又はそれに引き続いてのいずれかにおいて、エネルギーを繊維材料の繊維に適用してよい。エネルギーは、熱及び/又は放射の形態で適用されてよく、マイクロウェーブ、赤外線、超音波、又はこれらの組み合わせ、などが挙げられるが、これらに限定するものではない。更に、前記接触工程は、増大した圧力下、周囲気圧下、又は減圧真空下にて実施してよい。
【0073】
本発明による改質を得るのに十分な時間は、プロセスの詳細に依存する。一実施形態では、前記接触時間は、少なくとも約1分である。別の実施形態では、前記接触時間は、少なくとも約5分である。繊維の表面の改質及びその性能向上を提供し又は提供を容易化させるのに十分な時間だけの接触工程の実施後、前記組成物は、少なくとも部分的に前記繊維材料から除去される。一実施形態では、前記組成物は実質的に完全に除去されて、前記繊維材料は、前記除去工程後には、約5重量%未満、より具体的には約1重量%未満、及びより具体的には約0.1重量%未満の前記イオン性液体を含む。前記組成物は、当該技術分野において既知の任意の技術によって、前記繊維材料から除去されてよく、これには水によるすすぎ洗い、プレス、圧搾、パディング、遠心分離、真空抽出、これらの組み合わせ、などが挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施形態では、前記組成物は、前記繊維材料から除去後に、例えばプロセス中のリサイクル及び再使用のために集められる。
【0074】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0075】
本発明の特定の実施形態が例示及び説明されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)繊維を含む繊維材料を、前記繊維の表面の少なくとも一部を改質するのに十分な条件下で、イオン性液体を含む処理組成物と接触させ、
(b)所望により、繊維を含む繊維材料を、有益剤を含む組成物と接触させ、そして、
(c)少なくとも部分的に、該処理組成物を該繊維材料より除去すること
を含んでなる、繊維材料の性能向上のための繊維材料の改質方法。
【請求項2】
前記表面改質が、前記繊維の少なくとも一つの外層の部分溶解を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面改質の結果、少なくとも前記繊維の表面での結晶構造変化を生じる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理済繊維材料が、防しわ性、滑らかさ、柔軟性、形状保持、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される改良特性を示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記表面改質が、少なくとも一つの有益剤の前記繊維の表面への埋め込み及び/又は付着を可能にする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有益剤が、香料、染料、染料固着剤、サイズ剤、皮膚コンディショニング活性物質、ビタミン類、酵素類、界面活性剤、耐磨耗剤、しわ防止剤、染み防止剤、防水剤、難燃剤、抗菌剤、金属漂白触媒、漂白剤、布地柔軟仕上げ剤、抗ピリング剤、撥水剤、紫外線保護剤、光沢剤類、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有益剤が、前記繊維の表面からの制御放出に適合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理組成物が、該組成物に対して少なくとも約50重量%の前記イオン性液体を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触工程が、サイジング、糊抜き、漂白、研磨、シルケット加工、染色、印刷、最終加工、コーティング、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される追加処理中に実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン性液体が、アルキルサルフェート類、アルコキシサルフェート類、アルキルアルコキシサルフェート類、スルホサクシネート類のモノエステル、スルホサクシネート類のジエステル、メチルエステルスルホネート類、アルキルアリールスルホネート類、アルキルグリセロールエーテルスルホネート類、ジフェニルエーテル類、直鎖カルボキシレート類、環状カルボキシレート類、アルキルオキシアルキレンカルボキシレート類、ジフェニルオキシドのモノスルホネート類、中鎖分岐状アルキルサルフェート類、中鎖分岐状アルキルアリールスルホネート類、中鎖分岐状アルキルポリオキシアルキレンサルフェート類、アルファ−オレフィンスルホネート類、パラフィンスルホネート類、アルキルホスフェートエステル類、サルコシネート類、タウレート類、サルフェート化した油類及び脂肪酸類、スルホン化した油類及び脂肪酸類、アルキルフェノールエトキシサルフェート類、アルキルフェノールエトキシスルホネート類、脂肪酸エステルスルホネート類、置換サリチルアニリド類、置換フェノールアニオン類、置換チオフェノールアニオン類、ポリアミノポリカルボキシレート類、アミノポリホスフェート類、甘味剤由来のアニオン類、エトキシル化アミドサルフェート類、トリポリリン酸ナトリウム;二水素リン酸塩;フルオロアルキルスルホネート;ビス−(アルキルスルホニル)アミン;ビス−(フルオロアルキルスルホニル)アミド;(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロアルキルカルボニル)アミド;ビス−(アリールスルホニル)アミド;カーボネート;テトラフルオロカーボネート(BF−);ヘキサフルオロホスフェート(PF−);及び次の一般式を有するアニオン性漂白活性化剤類:R−CO−O−C−R、(式中、Rは、C8〜C18アルキル、C8〜C18アミノアルキル、又はこれらの混合物であり、且つ、Rは、スルホネート又はカーボネートである)及びこれらの混合物から成る群から選択される一つ以上のアニオン類を含むアニオン性成分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン性液体が、アミンオキシドカチオン類、ホスフィンオキシドカチオン類、スルホキシドカチオン類、ベタイン類、ジエステル四級アンモニウム(DEQA)カチオン類、アルキレン四級アンモニウムカチオン類、ジ脂肪アミド四級アンモニウムカチオン類、C8〜22四級界面活性剤、カチオン性エステル類、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、四級アミノポリオキシアルキレン類、アルキルオキシアルキレンカチオン類、アルコシキレート四級アンモニウム類、置換及び非置換のピロリジニウム、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、ピラゾリウム、ベンズピラゾリウム、チアゾリウム、ベンズチアゾリウム、オキサゾリウム、ベンズオキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソチアゾリウム、イミダゾリデニウム、グアニジニウム、インダゾリウム、キヌクリジニウム、トリアゾリウム、イソキヌクリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピリダジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、アゼピニウム、ジアゼピニウム、ピリジニウム、ピペリドニウム、ピリミジニウム、チオフェニウム;及びホスホニウム、四級アンモニウム部分を有するカチオン性漂白活性化剤類、カチオン性抗菌剤、アルキル化カフェインカチオン類、アルキルポリアミノカルボキシレート類、及びこれらの混合物から成る群から選択される一つ以上のカチオン類を含むカチオン性成分を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記繊維材料が、目の粗い繊維、糸、織布、不織布、ニット織物、又は布地物品を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程が、スプレー、霧吹き、発泡、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される非浸漬法により実施される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、液滴の形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、水によるすすぎ洗い、プレス、圧搾、パディング、遠心分離、真空抽出、又はこれらの組み合わせによって前記繊維材料から除去される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記繊維材料から除去された前記組成物を収集する工程を更に含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
エネルギーが、前記接触工程に先だって又はその最中に、前記組成物に加えられる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
エネルギーが、熱、マイクロウェーブ、赤外線、超音波、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
圧力が、前記接触工程中に加えられる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−516106(P2008−516106A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537044(P2007−537044)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039346
【国際公開番号】WO2006/050300
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】