説明

イオン性窒素含有化合物

一般式(I)[式中、添え字nは0または1の数であり、基R1〜R5は、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R1〜R5の少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R1、R2、R3またはR5の少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基R2およびR3を持つ炭素原子はC-C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R1〜R5において、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子は基-OHまたはNH2で置換されていてよく、またはC-C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基-O-、-COO-または-NH-が挿入されていてよい;(5)基R1〜R5において、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子は、任意に、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:任意に、炭素原子に結合した水素原子は基-OHまたはNH2で置換されていてよく、またはC-C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基-O-、-COO-または-NH-が挿入されていてよい。]で示されるイオン性窒素含有化合物。前記化合物は、特に水性エマルションまたは水性分散体を調製するための一時界面活性剤として適している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するイオン性窒素含有化合物、および特に水性エマルションおよび水性分散体を調製するための、一時界面活性剤としての該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
P.G. Jessopらは、Science 2006, 第313巻、第958〜960頁において、水の存在下でアミジンおよびCOを可逆反応させて対応イオン性界面活性剤を得ることを記載している。この反応は、不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)の導入によって逆に進行させることができる。従って、P.G. Jessopらは、この種のイオン性界面活性剤を転換可能界面活性剤と称している。そのような界面活性剤は、必要な場合は、COの除去によって失活させることができる。
【0003】
室温で液体である可逆性イオン液体は、近年、G. Weissらによって、Chemistry of Materials 2007, 第19巻、第967〜969頁に記載されている。この種の物質は、時には、「グリーン溶剤」と称される。しかしながら、アミジンの調製は容易ではない。アミジンは、例えば、対応するジメチルケタールから調製され得る。しかしながら、これらケタールの合成も同様に困難である。
【0004】
融合助剤(被膜形成助剤とも称される)はそれ自体既知である。融合助剤は、水性被覆剤に添加され、分散ポリマー粒子をフィルム化して均一な被膜を形成する。バインダーの被膜形成温度が適用温度より高い場合、融合助剤の添加は必須である。
【0005】
既知の被膜形成助剤は以下である:エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールtert−ブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート。
【0006】
近年、環境上の理由から、水性被覆剤がかなり広まっている。従来から、特に合成ポリマー(例えばポリアクリレート)小粒子に基づいたラテックス被覆剤には、融合助剤を実質的な量で使用してきた。これら融合助剤(被膜形成助剤とも称される)は、被膜形成を改善するために被覆剤に添加される。融合助剤の機能は、融合助剤が有するラテックス粒子に対する可塑化作用に由来し、これら粒子を一緒に流動させて連続被膜を形成することを可能にする。この被膜は、水の蒸発後、最適な特性を有する。被膜形成において重要なのは、被膜形成温度と称される温度である。この温度で(またはこの温度未満で)、ポリマー粒子は一緒に流動して被膜を形成する。常套の融合助剤は、ポリマーの被膜形成温度を低下させる。
【0007】
常套の融合助剤は、ある種のエステルおよびエーテルである。既知の技術標準的なものは、Eastman社製ヒドロキシエステル「Texanol」(しばしばTMBとも称される;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)およびUnion Carbide社製「EGBE」(エチレングリコールモノブチルエーテル)である。
【0008】
多くの界面活性剤用途では、これらの界面活性剤が作用を終えた後に「失活(switched off)」し得ることが望ましい。このことは、界面活性剤の特性が一時的なものでしかなく、界面活性剤を非界面活性状態に随意に転化できることを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】P.G. Jessopら、Science 2006, 第313巻、第958〜960頁
【非特許文献2】G. Weissら、Chemistry of Materials 2007, 第19巻、第967〜969頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、新規な一時界面活性剤を提供することである。そのような界面活性剤は、特に、エマルション重合のための乳化剤および分散剤として適当でなければならない。更に、開発すべき一時界面活性剤は、好ましくは、一時界面活性剤を失活した際に生じる非イオン性化合物が融合助剤として適当であるという特性も有すべきである。
【0011】
本発明の別の目的は、水性エマルションに基づいた塗料および被覆剤の調製に関する。典型的には、例えば、被膜形成ラテックスはエマルション重合によって調製される。重合を界面活性剤と共に開始し、それによって調製エマルションまたは分散体を安定化させるために、エマルション重合中および調製した水性エマルションまたは水性分散体のその使用時までの貯蔵中、適当な界面活性剤が不可欠である一方で、被膜の様々な望ましくない品質特性(例えば低い耐水性)は、被膜中に残留した界面活性剤に起因する。本発明の別の態様は、この状況を改善することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般式(I):
【化1】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
で示されるイオン性窒素含有化合物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
式(I)における1つの態様では、添え字nは1の数である。式(I)における1つの態様では、添え字nは0の数であり、基RおよびRを持つ炭素原子はC=C二重結合を介して結合している。
【0014】
式(I)における1つの好ましい態様では、添え字nは0の数であり、基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合を介して結合している。更に、基Rは水素の定義を有する。それによって特徴付けられる化合物は、相応に、式(I−a):
【化2】

[式中、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(a)基R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(b)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(c)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
で示される。
【0015】
式(I−a)において、基Rは、好ましくは、8〜25個の炭素原子を含有する飽和またはオレフィン性不飽和アルキル基である。
【0016】
式(I−a)における特に好ましい態様では、基Rは8〜25個の炭素原子を含有する飽和またはオレフィン性不飽和アルキル基であり、基RおよびRは各々水素である。
【0017】
化合物(I)および(I−a)は、例えば一般式(II)または(II−a)で示される窒素含有化合物とCOとの水の存在下での反応による方法のような、当業者に既知の方法によって調製され得る。
【化3】

【0018】
これらの式(II)および(II−a)において、それらの基には、式(I)および式(I−a)のために前記した条件および定義が適用される。
【0019】
化合物(II)は、例えば対応する1,2−ジアミンまたは1,3−ジアミンと脂肪酸との反応による方法のような、当業者に既知の方法によって調製され得る。本発明において適当な1,2−ジアミンの例は、エチレンジアミンおよびプロピレンジアミンである。適当な1,3−ジアミンの例は、1,3−ジアミノプロパンである。本発明において適当な脂肪酸の例は以下である:飽和脂肪酸;ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドデカン酸(ベヘン酸)、およびオレフィン性不飽和脂肪酸;10−ウンデセン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセレン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、およびブラシジン酸。天然起源の脂肪酸を使用することが好ましい。
【0020】
特に好ましい化合物(II)は、式(II−b):
【化4】

によって特徴付けられる。
【0021】
この式(II−b)において、基R〜Rは、前記式(I−a)における定義と同じ定義を有する。化合物(II−b)はイミダゾリン誘導体を表す。
【0022】
同様に好ましい化合物(II)は、式(II−c):
【化5】

によって特徴付けられる。
【0023】
この式(II−c)において、基R、R、RおよびRは、前記式(I−a)における定義と同じ定義を有する。これらの化合物は、例えばN−置換1,2−ジアミンから調製され得る。
【0024】
本発明の別の対象は、一時(転換可能)界面活性剤としての、特に水性エマルションおよび水性分散体を調製するための一時界面活性剤としての、非常に好ましくはエマルション重合における一時界面活性剤としての化合物(I)の使用である。本発明において、イオン性界面活性剤(I)と、それからCOを除去して生成される非イオン性化合物(II):
【化6】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
との転換は、不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)によってもたらされる。
【0025】
本発明では、先に定義した化合物(I−a)が特に好ましい。化合物(I−a)からCOを除去すると、先に定義した非イオン性化合物(II−a)が生じる。
【0026】
本発明において、一時界面活性剤として使用するための化合物(I)は、純粋な状態でまたは互いの混合物の状態で使用され得る。所望ならば、化合物(I)は、他の界面活性剤と組み合わせて使用することもできる。
【0027】
本発明は更に、水性ポリマー分散体またはラテックス分散体に基づいた被覆剤の製造方法であって、乳化剤として先に定義した一時界面活性剤(I)を用いて水性ポリマー分散体またはラテックス分散体を調製し、水性ポリマー分散体またはラテックス分散体を適用する際には、COの除去により一時界面活性剤(I)を先に定義した非界面活性化合物(II)に転化し、その後、非界面活性化合物(II)は融合助剤として作用することを特徴とする、方法を提供する。
【0028】
用語「融合助剤」(文献では、フィルム化助剤または被膜形成助剤とも称される)は、先に述べた意味に理解され、当業者によく知られている。
【0029】
水性分散体中に存在するポリマー粒子またはラテックス粒子の性質に関して、特に制限はない。従って、被覆目的で当業者に関連して知られている、ポリマーおよびコポリマーの全てを使用できる。
【0030】
更に、水性分散体は、所望の最終用途および/または被膜特性に従って、当業者に関連して知られている、更なる助剤および添加剤を含んでなることができる。
【0031】
本発明の使用のための一時界面活性剤(I)含有水性分散体は、基本的に、所望の表面(例えば、木材、金属、プラスチック、ガラス、紙、コンクリート、石材および下塗り)に適用され得る。
【実施例1】
【0032】
a)イミダゾリンの調製
撹拌機、滴下漏斗および還流冷却器を備えた4ッ口フラスコで150g(2.5mol)のエチレンジアミンを加熱し、還流しながら、279g(1mol)のオレイン酸(Edenor Ti05, Cognis)を3時間かけて計量添加した。反応水(18g)および過剰エチレンジアミンの蒸留による除去の後に、イミダゾリンを淡黄色固体として得た。黄色の着色は、除去されなかったエチレンジアミンに起因した。
【0033】
b)イオン性界面活性剤の調製
この固体の水性懸濁液にCOを4時間導入し、界面エネルギーが30mJ/mである無色の懸濁液を得た。
【0034】
c)イオン性界面活性剤の失活
窒素を4時間導入する過程で、無色懸濁液に上部を覆われた透明な水性下相を含む2相系が生じた。
【0035】
d)イオン性界面活性剤の再活性化
新たにCOを約5分間導入し、再び前記エマルションを得た。これは、少なくとも3週間安定であった。
【0036】
実施例1に記載したイミダゾリンの合成、および前記イミダゾリンとCOとの水の存在下での更なる反応による非イオン性界面活性剤の生成を、以下の化学式スキームに記載する。
【化7】

【0037】
実施例1で説明したように、COの除去によってイオン性界面活性剤を逆向きにイミダゾリンに転化できる(非イオン性界面活性剤の失活)ので、イオン性界面活性剤は一時的なものであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
で示されるイオン性窒素含有化合物。
【請求項2】
基R〜Rの1つにおいて末端炭素原子にOHまたはNH基が存在する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
基R〜Rが水素であり、基Rが8〜25個の炭素原子を含有するアルキル基であり、基Rがヒドロキシエチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
添え字nが1の数である、請求項1に記載の化合物(I)。
【請求項5】
添え字nが0の数であり、基RおよびRを持つ炭素原子がC=C二重結合を介して結合している、請求項1に記載の化合物(I)。
【請求項6】
添え字nが0の数であり、基RおよびRを持つ炭素原子がC−C単結合を介して結合している、請求項1に記載の化合物(I)。
【請求項7】
基Rが8〜25個の炭素原子を含有する飽和またはオレフィン性不飽和アルキル基である、請求項6に記載の化合物(I)。
【請求項8】
基R、RおよびRが各々水素である、請求項7に記載の化合物(I)。
【請求項9】
化合物(I):
【化2】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
の一時(転換可能)界面活性剤としての使用。
【請求項10】
水性エマルションおよび水性分散体を調製するための一時界面活性剤としての、請求項9に記載の化合物(I)の使用。
【請求項11】
エマルション重合における一時界面活性剤としての、請求項9に記載の化合物(I)の使用。
【請求項12】
イオン性界面活性剤(I)と、それからCOを除去して生成される非イオン性化合物(II):
【化3】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
との転換が、不活性ガスによってもたらされる、請求項9〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
水性ポリマー分散体またはラテックス分散体に基づいた被覆剤の製造方法であって、乳化剤として一時界面活性剤(I):
【化4】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
を用いて水性ポリマー分散体またはラテックス分散体を調製し、水性ポリマー分散体またはラテックス分散体を適用する際には、COの除去により一時界面活性剤(I)を非界面活性化合物(II):
【化5】

[式中、添え字nは0または1の数であり、基R〜Rは、相互に独立に、水素、或いは1〜25個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、該アルキル基は、飽和またはオレフィン性不飽和、直鎖または分枝であり得、該シクロアルキル基は飽和またはオレフィン性不飽和であり得、ただし、以下を条件とする:(1)nが1ならば、基R〜Rの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(2)nが0ならば、基R、R、RまたはRの少なくとも1つは8〜25個の炭素原子を含有しなければならない;(3)基RおよびRを持つ炭素原子はC−C単結合またはC=C二重結合を介して結合している;(4)基R〜Rにおいて、それらがアルキルまたはシクロアルキル基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に基−O−、−COO−または−NH−が挿入されていてよい;(5)基R〜Rにおいて、それらがアリール基であるならば、炭素原子に結合した水素原子のいずれかは、1〜12個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基で置換されていてよく、ただし、このアルキルまたはシクロアルキル基は以下の通りである:所望ならば、炭素原子に結合した水素原子は基−OHまたはNHで置換されていてよく、またはC−C単結合を介して結合する2つの隣接した炭素原子間に挿入された基−O−、−COO−または−NH−が存在していてよい。]
に転化し、その後、非界面活性化合物(II)は融合助剤として作用することを特徴とする、方法。
【請求項14】
一時界面活性剤(I)からのCOの除去が不活性ガスを用いて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
不活性ガスが窒素またはアルゴンである、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−530388(P2010−530388A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512572(P2010−512572)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004700
【国際公開番号】WO2008/155058
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】