イオン放出機構及びイオン付着質量分析装置
【課題】 イオン放出体と基準電圧印加部の間の電位差の変動の発生を抑制し、イオン放出量を安定化させ、精度の高い質量分析を行えるイオン付着質量分析装置を提供する。
【解決手段】 放出体12と、この放出体にバイアス電圧を印加する電圧印加部11とを有し、放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、金属イオンを被検出ガスに付着させて被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置である。放出体12の材質を変えることにより、放出体のイオン放出点と電圧印加部の基準電圧印加部11aとの間の電気抵抗を低減する。基準電圧印加部とイオン放出点との間の距離を短くすることにより、放出体のイオン放出点と電圧印加部の基準電圧印加部との間の電気抵抗値を1010Ω以下に低減する。また基準電圧印加部の表面に薄膜状放出体を形成することもできる。
【解決手段】 放出体12と、この放出体にバイアス電圧を印加する電圧印加部11とを有し、放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、金属イオンを被検出ガスに付着させて被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置である。放出体12の材質を変えることにより、放出体のイオン放出点と電圧印加部の基準電圧印加部11aとの間の電気抵抗を低減する。基準電圧印加部とイオン放出点との間の距離を短くすることにより、放出体のイオン放出点と電圧印加部の基準電圧印加部との間の電気抵抗値を1010Ω以下に低減する。また基準電圧印加部の表面に薄膜状放出体を形成することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出体から放出される金属イオンを被検出ガスに付着させてイオン化し、この被検出ガスを質量分析するイオン付着質量分析装置及びイオン付着質量分析装置に用いられるイオン放出機構に関し、特に、放出体からのイオン放出量を安定化させたイオン源を備えたイオン放出機構及びイオン付着質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分子の質量の分析では、電磁場内での荷電粒子の運動が電荷と質量の比によって異なることを利用するため、ガス分子に正または負の電荷を帯びさせイオン化する必要がある。ガス分子をイオン化させる方法としては、電子衝撃イオン化法、化学イオン化法、大気圧イオン化法、イオン付着イオン化法などがあるが、中でもイオン付着イオン化法は被検出ガスをイオン化する過程において生ずる余剰エネルギが非常に小さいために、弱い結合部を含むガス分子を解離(分裂)せずにイオン化することができる。従って質量分析装置において、イオン付着イオン化法によれば分子イオンピークから被検出ガスの正しい分子量を計測することができ、解離しやすい有機試料の質量分析には有効である。
【0003】
イオン付着イオン化法では、金属酸化物(絶縁物)を加熱し、含有された金属をイオンとして放出させ、この金属イオンがガス分子の電荷の偏った場所に穏やかに付着する現象を利用している。特にアルカリ金属を含有する酸化物を加熱すると、表面から正電荷の金属イオンが容易に放出されることは知られている。アルカリ金属イオンを他のガス分子に付着させてイオン化することは、ホッジ(Hodges)の方式(非特許文献1参照)ボムビック(Bombick )の方式(非特許文献2参照)、藤井の方式(非特許文献3参照)として、それぞれの文献で報告されている。
【0004】
次に図10〜図12を参照してイオン付着イオン化法による質量分析装置で利用される従来のイオン源を説明する。図10はイオン源の概略構成図、図11は放出体の拡大縦断面図、図12は放出体の等価回路図である。
【0005】
図10に示すごとく、イオン付着イオン化法によるイオン源は、内部にイオン付着領域を形成しかつ一端面が全面的に開口された導電性のケーシング(容器)101と、ケーシング101の右側開口端面に取り付けられたアパーチャ102と、ケーシング101の一部の壁部を電気的に絶縁されて貫通する電圧印加部103と、電圧印加部103の適宜な位置に取り付けられた金属酸化物からなる球状の放出体104と、被検出ガスおよび他のガスをイオン付着領域に導入するガス導入部105とから構成される。アパーチャ102はイオン化された被検出ガスを通過させる開口106を有し、ケーシング101の開口端部との間に絶縁部107を設けることにより、ケーシング101から電気的に絶縁されている。また電圧印加部103は加熱電源108とバイアス電源109とに接続されている。
【0006】
球状の放出体104は、図11に示すごとく、ワイヤ(線)状の電圧印加部103に例えば燒結によって固定されている。放出体104の直径は例えば2〜3mm程度のものである。放出体104と接触する電圧印加部103の部分を、特に、基準電圧印加部103aと呼ぶことにする。放出体104は、例えば放出体から放出される金属イオンがLi+ の場合、Al2 O3 やSiO2 等からなるアルミナシリケイトと、Liを含有した酸化物(化合物)であるLi2 O等との混合物である。これらはすべて酸化物であるため、全体としては絶縁体となっており、その比抵抗は1012Ω・m以上もある。少なくとも基準電圧印加部はIr(イリジウム)やW(タングステン)等の高融点金属のワイヤ形構造であり、ここに電流が流れることによりジュール熱が発生するようになっている。
【0007】
上記のイオン源では、アパーチャ102は接地電位に保持され、ガス導入部105を介して被検出ガスとその他のガスの混合ガスが、真空状態にされたイオン付着領域に導入され、内部は100Pa程度の減圧雰囲気とされる。その他のガスは、金属イオンが付着しにくい例えばN2 などのガスであり、金属イオンが被検出ガスに付着する際に生ずる余剰エネルギを奪い去るために導入される。電圧印加部103には、バイアス電源109によって、基準電圧印加部103aが例えば10Vとなるようにバイアス電圧が印加される。さらに放出体104は、加熱電源108によって基準電圧印加部103aに電流を流すことにより600℃程度に加熱されている。以上により放出体104の表面に金属イオン(Li+ )が生成され、この金属イオンは、接地電位であるアパーチャ102との間の空間110に形成された電界に引かれて放出体表面から離脱し(放出され)、アパーチャ102の方向へ移送される。その後、金属イオンはイオン源内に導入された被検出ガスに付着して、被検出ガスをイオン化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Analytical Chemistry vol.48 No.6 P825 (1976))
【非特許文献2】Analytical Chemistry vol.56 No.3 P396 (1984)
【非特許文献3】Journal of Applied Physics vol.82 No.5 P2056 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した従来のイオン源では、放出体は絶縁物である金属酸化物で作られているため、基準電圧印加部103aと、放出体104の表面のイオン放出点との間の電位差が周期的に変化するという問題があった。これは、放出体が絶縁物であることから基準電圧印加部とイオン放出点との間には大きな電気抵抗体が介在していることになるため、そこでの電圧降下の発生が原因となっている。
【0010】
図12は基準電圧印加部とイオン放出点の間を等価回路で示したものである。図12では基準電圧印加部103aは点とみなされている。基準電圧印加部103aとイオン放出点111の間には電気抵抗体112が介在している。図12において、放出体104から矢印113のごとくイオンが放出されると、大きな抵抗値を有する電気抵抗体112には電流が流れ、ここに電圧降下が発生し、イオン放出点111における電位は低下する。この電圧降下の関係式は、基準電圧印加部103aの電位をVa、放出体104の抵抗をR、放出体104を流れる電流をI、イオン放出点111の電位をVbとするとき、Vb=Va−I・R …(1)で表される。この関係式に基づけば、イオン放出点111における電位Vbが低下すると、イオン放出点111とアパーチャ102との間に形成される電界が弱まり、イオンの放出量が減少し、放出体104を流れる電流Iも減少する。電流Iが減少すると、電圧降下が少なくなってVbの電位が上昇するので、再びイオンの放出量が増加する。このようにして「Vb低下→I減少→Vb上昇→I増加→Vb低下」の過程が繰り返し発生し、イオン放出量と電界の不安定な周期的変化が続くことになる。イオン付着の質量分析装置では、イオン化された被検出ガスの分子数を電気信号として正確に検出するためには、すなわち質量分析を正しく行うためには、イオン放出量が安定していなければならないので、上記のような周期的な変化状態が生じれば、被検出ガスの質量分析を正しく行うことができない。
【0011】
上記の問題の解決策として、単にイオン放出点111における電位変化の割合を少なくするのであれば、基準電圧印加部103aに印加されるバイアス電圧を高くすることが考えられる。しかし、バイアス電圧を高くすると放出体表面から放出されるイオンのエネルギも高くなる。その結果、放出されたイオンが被検出ガスに衝突するエネルギが高くなり被検出ガスを解離させるという他の問題が起きる。イオン付着イオン化法では、金属イオンを低エネルギで穏やかに被検出ガスに付着させなくてはならないため、基準電圧印加部103aに印加されるバイアス電圧を高くすることはできない。
【0012】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、イオン放出体と基準電圧印加部の間の電位差の変動の発生を抑制し、イオン放出量を安定化させ、精度の高い質量分析を行えるようにしたイオン付着質量分析装置及び該イオン付着質量分析装置に用いられるイオン放出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るイオン放出機構は、金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、金属イオンを被検出ガスに付着させて被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置において、放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るイオン放出機構は、金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置において、電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状としたことを特徴とする。また、本発明に係るイオン付着質量分析装置は上述したイオン放出機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン放出機構及びイオン付着質量分析装置によれば、放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたイオン源を備え、若しくは、電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状とすることで、イオン付着領域に安定して金属イオンを供給することができる。その結果、イオン付着イオン化法によって被検出ガスをイオン化し、被検出ガスの質量分析を正しく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第1実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第2実施形態を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第3実施形態を示す要部縦断面図である。
【図4】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第4実施形態を示す要部斜視図である。
【図5】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第5実施形態を示す要部側面図である。
【図6】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第6実施形態を示す要部側面図である。
【図7】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第7実施形態を示し、(A)は要部縦断面図、(B)は部分拡大正面図である。
【図8】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第8実施形態を示し、(A)は要部縦断面図、(B)は部分拡大正面図である。
【図9】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の加熱機構に関する実施形態を示す概略構成図である。
【図10】従来のイオン付着質量分析装置のイオン放出機構を示す概略構成図である。
【図11】従来のイオン放出機構の要部を示す縦断面図である。
【図12】従来のイオン放出機構を等価回路で示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明によるイオン付着質量分析装置のイオン源では放出体と電圧印加部(基準電圧印加部を含む)からなるイオン放出機構のみに特徴があり、その他の構成は従来と同じ構造である。従って、以下の実施形態の説明では、イオン放出機構のみを主に説明する。イオン放出機構との関連でイオン源のその他の構成の説明が必要なときには、前述した図10に示した構成を参照して説明する。
【0019】
本発明の実施形態を説明するにあたり、放出体表面のイオン放出点と基準電圧印加部との間の電位差の変動と、放出体が持つ電気抵抗との定量的な関係について述べる。イオン放出点の電位Vb における電位差の変化は、前述の(1)式より電流Iと電気抵抗Rによって決まる。また質量分析を正しく行うためには放出体表面からのイオン放出量(イオン電流)が少なくとも10-10 A程度必要である。さらに、イオン化された被検出ガスをイオン源からその外部の質量分析機構へ移送するために形成された電界を安定に保つために、基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変化を1V以下とする必要がある。従ってこのとき、上記の電気抵抗Rを(1)式に基づいて1010Ω以下とすれば、イオン放出量に関する上記の要求を満足することができる。それ故に以下の実施形態においては、上記の電気抵抗Rを1010Ω以下にする構成が説明される。
【0020】
図1を参照して本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態は、基準電圧印加部とイオン放出点間の電気抵抗を低下するために放出体の材質を複合材料とし、その比抵抗を低減するものである。図1では、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11aに、複合材料で作られた球状の放出体12を取り付けたイオン放出機構を示す。
【0021】
放出体12は、例えばLi2 O、Al2 O3 、SiO2 などからなる金属酸化物(絶縁物)と、例えばAu(金)、CB(カーボンブラック)などの導電体とを複合または充填することにより、電気伝導度が高められた複合材料で作られている。放出体12における導電体の含有量は、放出体の電気抵抗が上述したように1010Ω以下となるような量、または少なくとも臨界複合量以上となるような量である。臨界複合量、およびこれと1010Ω以下の電気抵抗との関連性については後で詳細に説明される。
【0022】
基準電圧印加部11aに対しては、その電位が10Vとなるように電圧印加部11を介してバイアス電源109からバイアス電圧を印加し、さらに加熱用電源108を介して電流を流す。基準電圧印加部11aに取り付けられた放出体12は、ジュール熱により600℃程度に加熱され、その表面に金属イオンを生成する。この金属イオンは、接地電位であるアパーチャ102と放出体表面との電位差によって形成された電界によって、アパーチャ方向のイオン付着領域110へと移送される。基準電圧印加部11aと放出体12の表面のイオン放出点との間には、放出したイオン量と同等な電流が流れ、放出体12の有する電気抵抗により電圧降下が発生し、基準電圧印加部12と放出体表面のイオン放出点との電位差が発生する。しかし、放出体12は、上記の金属酸化物よりも比抵抗値が小さく電気伝導度が向上された複合材料で作られているため、イオン放出点における電位の変化量は、従来の放出体と比べて小さくなる。
【0023】
イオン化された被検出ガスの分子数を電気信号として正確に検出するために必要なイオンの放出量は少なくとも10-10 A程度であり、また放出体12は基準電圧印加部12とイオン放出点の間の電気抵抗が1010Ω以下になるように設定されているので、前述の(1)式よりイオン放出点における電位の変化量を1V以下とすることができる。従って、アパーチャ102と放出体12の表面のイオン放出点との電位差によって形成された電界は、イオン放出開始時の90%以上を維持することができ、周期的変動を抑制して、イオン放出点から放出される金属イオンをイオン付着領域110に安定的に供給することができる。その結果、イオン付着質量分析装置において被検出ガスの質量分析を正しく行うことができる。
【0024】
次に放出体12について上記複合材料の作り方について詳述する。複合材料の作り方としては、前述した金属酸化物を母材とし、そこに上記のAu等の導電体を複合(または充填)したものと、例えばC(炭素)やW(タングステン)などの導電体を母材とし、そこに金属酸化物を複合(または充填)したものがある。しかし、前者の導電体はAuやCBに限定されず、後者の導電体はCやWに限定されない。電気伝導度が高く、高融点および耐腐食性に優れた物質であれば何でもよい。ここで、CBとは、天然ガスや石油、クレオソート油などの炭化水素の熱分解と不完全燃焼の組合せによって得られる微粉炭素のことである。
【0025】
一般的に絶縁体に導電性を持たせる方法として例えばナイロン6やSBR(スチレンブタジエンゴム)などの合成樹脂にCBを複合等させる方法が知られている。合成樹脂などの母材にCBを複合等して得られる電気伝導度は、母材の粒子の大きさや母材の表面張力によって多少異なるが、CBの複合量(充填量)によってほぼ決められる。含有されるCBの増加量と電気伝導度との関係は、次のようになる。
【0026】
絶縁体にCBの複合等を開始すると、電気伝導度は非常に僅かに増加していくが、或る臨界複合量(臨界充填量)に達すると、複合材料の電気伝導度は転移的(急激)に増大し、その後再び穏やかな増加に戻る。この臨界複合量は、体積分率で表すと、例えばナイロン6で0.3%以下、SBRで0.2%以下の少量である。
【0027】
以上のごとく本実施形態による放出体12の材質は金属酸化物に臨界複合量以上の導電体を含有した複合材料であれば好ましい。このようにして比抵抗値が1012Ω・m程度ある金属酸化物に導電体を複合することにより、相対的に放出体の比抵抗値を低いものにし、イオン放出量を安定化させる。ただし、導電体を複合等する量が臨界複合量以下で、かつ基準電圧印加部とイオン放出点の間の電気抵抗が1010Ω以下となる場合には、導電体の複合量は臨界複合量以下であってもよい。
【0028】
次に図2を参照して本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部の一部を複合材料とすることによって放出体と基準電圧印加部の機能を共有するイオン放出機構を形成している。すなわち、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部11bを、前述のLi2 O等の金属酸化物と臨界複合量以上のW等の導電体からなる複合材料として形成することによって、前述の放出体12と基準電圧印加部11aの両方の機能を有する放出部を電圧印加部に形成するものである。かかる放出部の作り方は、例えばLiやLiを含有する化合物などを燃焼し、その炎の中に電圧印加部11の一部(11bの部分)を入れて付着および拡散させ、その内部にLi等を含有させる。その結果、このように形成した電圧印加部11の一部11bをバイアス電圧を印加した状態で加熱すると、電圧印加部11の一部11bからイオン付着領域に対して金属イオンを安定的に供給することが可能となる。
【0029】
さらに電圧印加部(11)と同一の形状を有する放出部(11b)の他の作り方として波、例えば線形構造の金属酸化物に臨界複合量以上の導電体を複合させたものであって、かつその両端がそれぞれ異なる電圧印加部の先端に着脱可能のものを作り、イオン付着質量分析計のイオン源の動作時には、これを電気的に接続させてバイアス印加回路を形成するように構成することも可能である。
【0030】
第2実施形態によるイオン源のイオン放出機構によれば、電圧印加部11の一部に上記のごとくドーピング処理を行うことによって前述の放出体に相当する放出部11bを作るようにしたため、イオン放出量の周期的変動の原因になった電気的抵抗を望ましい状態に小さくすることができ、イオン放出量を安定化させることができる。
【0031】
次に図3を参照して本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11aの周りに金属酸化物からなる薄膜13を堆積させてイオン放出機構を形成している。具体的には、WやIr等で作られた基準電圧印加部11aの周囲表面に前述のLi2 O等の金属酸化物の薄膜13をコーティングして形成する。薄膜13は放出体として機能する。本実施形態によるイオン放出機構では、放出体を薄膜13として形成したため、基準電圧印加部11aとイオン放出点の間の距離を短くすることができ、その間の電気抵抗値を小さくすることができる。これにより放出体である薄膜13から放出されるイオン放出量を安定化させることができる。
【0032】
本実施形態によるイオン放出機構でも、前述のように一般に放出体の電気抵抗は1010Ω程度に設定される。上記の金属酸化物では比抵抗値は一般的に1012Ω・m程度であるので、基準電圧印加部11aの周囲表面に堆積させる薄膜13を一様な厚さ0.5μmの金属酸化物であるとすると、R=σ・L/S(R:電気抵抗、σ:比抵抗、L:長さ、S:断面積)…(2)の式から、薄膜13において電流の流れに対して垂直な方向の断面積は5×10-5m2 程度必要となる。電流の流れに垂直な方向の薄膜13の断面積は基準電圧印加部11aの表面積とほぼ同等と考えることができるので、基準電圧印加部11aを直径0.25mmの線形構造とすると、基準電圧印加部11a上に堆積される薄膜14の領域の長さは約6.37cmとなる。
【0033】
本実施形態では、放出体を形成する薄膜13をLi2 O等の金属酸化物で形成したが、この比抵抗は、それぞれの混合比や不純物濃度によって決まるので、特定することはできない。薄膜13の堆積に使用される金属酸化物の比抵抗が上記の1012Ω・mを大きく上回るものである場合には、薄膜13は基準電圧印加部11a上に上記の厚みよりも薄く、かつ広い領域に堆積させられる。
【0034】
次に図4を参照して本発明の第4実施形態を説明する。この第4実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部の基準電圧印加部を平板形状とし、この平板形状の基準
電圧印加部14の表面に放出体となる金属酸化物の薄膜15を堆積させてイオン放出機構を形成している。図4において、基準電圧印加部14は、例えば長さ16cm、幅5cm、厚さ2.5cmの平板として形成される。基準電圧印加部14では電流の流れに対し直角な方向の断面積は80cm2 となり、薄膜15の厚みが一様で、厚さ0.1μmの場合で、1015Ω・m程度の比抵抗をもつ金属酸化物を薄膜15の形成に用いることができる。また1015Ω・m以下の比抵抗を有する金属酸化物を用いる場合には、放出体である薄膜15からのイオン放出量を高くし、より高い感度を得たとしても、基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変動を1V以下と少なくすることができる。
【0035】
次に図5と図6を参照して第5および第6の実施形態を説明する。図5に示した第5実施形態では、例えばIr線からなる基準電圧印加部16をヘアピン状の形状とすることにイオン源内に多くの基準電圧印加部を存在させる。これにより金属酸化物の堆積可能領域を増やし、その上に一様に金属酸化物を堆積させて、放出体における電流の流れと直角な方向の断面積を増大することができる。さらに図6に示した第6実施形態では、同じくIr線からなる基準電圧印加部の形状を螺旋状(コイル形状)とすることによって、イオン源内にさらに多くの基準電圧印加部17を存在させる。基準電圧印加部17の表面には一様に放出体になる薄膜が堆積させられる。このように金属酸化物の堆積可能領域を増やし、その上に一様に金属酸化物を堆積させれば、放出体における電流の流れと直角な方向の断面積を増大することができる。以上のヘアピン形状および螺旋形状の場合には放出体である薄膜の表面からのイオン放出をアパーチャの開口を通る中心軸上付近に集中することができるので、検出感度を高くすることができる。
【0036】
なお準電圧印加部の形状および寸法は、上述に限らず、イオン源内の放出体(金属酸化物)が堆積可能な領域を増大させるものであればよく、さらに、その上に堆積される金属酸化物は電気抵抗を1010Ω以下としたときに上記の(2)式を満たす寸法であれよい。
【0037】
図7の(A),(B)を参照して本発明の第7実施形態を説明する。この実施形態では、電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11a上に設けた金属酸化物の放出体21に、網状導電体からなる第2の基準電圧印加部22を形成してイオン放出機構を形成している。
【0038】
第2基準電圧印加部22では放出体21の表面上に導電体を網状(メッシュ状)に密着して形成している。この網状導電体は、例えば直径10μmのIr線やW線などであり、これらの導電体に囲まれた放出体21の表面の露出面は、図(B)に示すごとく25mm×25mmの領域あたりに400個程度以上の細かさ、すなわち400メッシュとなっている。以上の構成によれば、上記露出面内のイオン放出点と第2基準電圧印加部22との距離が短くなり電圧降下の影響を低減することができる。
【0039】
図8の(A),(B)を参照して本発明の第8実施形態を説明する。この実施形態では、電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11a上に設けた金属酸化物の放出体21において、その表面に導電体からなる第2基準電圧印加部23を皮膜してイオン放出機構を形成している。
【0040】
第2基準電圧印加部23は、放出体21の表面において導電体を薄膜状に被膜させたものである。しかし、放出体21の表面を完全に覆うように形成すると、放出体表面から放出されるイオンの飛行空間を遮断してしまい、イオン付着領域にイオンが供給されなくなる。そこで第2基準電圧印加部23には図8(B)に示されるごとくその表面に第2基準電圧印加部23を貫通した微細な孔24を多数設けるようにし、これにより放出体21の表面から放出されるイオンの飛行空間を確保している。
【0041】
第2基準電圧印加部23に形成された孔24の開口面積の合計は、放出体21の表面積の10%以上であることが好ましい。これは、放出体21の表面から放出するイオンが被検出ガスをイオン化して質量分析する際に、その分子数を電気信号として正確に検出するために必要な量を確保するためである。
【0042】
以上の本発明の実施形態の説明では、各構成および構造は本発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎず、さらに各寸法および物質の成分などは例示にすぎない。また本発明による放出体の加熱方法は、電圧印加部に接続された加熱用電源によって電圧印加部および基準電圧印加部に電流を流してジュール熱を発生させ、このジュール熱を利用して放出体を加熱する従来の方法に限定されない。
【0043】
例えば図9に示すごとく、イオン源31内の電圧印加部32の一部の基準電圧印加部に取付けられた放出体33の近傍であって、放出体33および基準電圧印加部からみて、イオン付着領域の反対側の領域に電気抵抗がやや高い導電体からなるヒータ34を配置したものであってもよい。このヒータ34に加熱用電源35によって電流を流して発熱させ、その際の輻射熱により放出体33を加熱する手段であってもよい。なお図9において、図10で説明した要素と実質的に同じ要素には同じ符号を付している。
【0044】
さらに前述の各実施形態はそれぞれ単独での実施に限定されず、それらの組合せによって基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変動を発生させないように構成することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
11 電圧印加部11a 基準電圧印加部12 放出体13 薄膜14 平板形状の基準電圧印加部15 薄膜16,17 基準電圧印加部21 放出体22,23 第2基準電圧印加部24 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出体から放出される金属イオンを被検出ガスに付着させてイオン化し、この被検出ガスを質量分析するイオン付着質量分析装置及びイオン付着質量分析装置に用いられるイオン放出機構に関し、特に、放出体からのイオン放出量を安定化させたイオン源を備えたイオン放出機構及びイオン付着質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分子の質量の分析では、電磁場内での荷電粒子の運動が電荷と質量の比によって異なることを利用するため、ガス分子に正または負の電荷を帯びさせイオン化する必要がある。ガス分子をイオン化させる方法としては、電子衝撃イオン化法、化学イオン化法、大気圧イオン化法、イオン付着イオン化法などがあるが、中でもイオン付着イオン化法は被検出ガスをイオン化する過程において生ずる余剰エネルギが非常に小さいために、弱い結合部を含むガス分子を解離(分裂)せずにイオン化することができる。従って質量分析装置において、イオン付着イオン化法によれば分子イオンピークから被検出ガスの正しい分子量を計測することができ、解離しやすい有機試料の質量分析には有効である。
【0003】
イオン付着イオン化法では、金属酸化物(絶縁物)を加熱し、含有された金属をイオンとして放出させ、この金属イオンがガス分子の電荷の偏った場所に穏やかに付着する現象を利用している。特にアルカリ金属を含有する酸化物を加熱すると、表面から正電荷の金属イオンが容易に放出されることは知られている。アルカリ金属イオンを他のガス分子に付着させてイオン化することは、ホッジ(Hodges)の方式(非特許文献1参照)ボムビック(Bombick )の方式(非特許文献2参照)、藤井の方式(非特許文献3参照)として、それぞれの文献で報告されている。
【0004】
次に図10〜図12を参照してイオン付着イオン化法による質量分析装置で利用される従来のイオン源を説明する。図10はイオン源の概略構成図、図11は放出体の拡大縦断面図、図12は放出体の等価回路図である。
【0005】
図10に示すごとく、イオン付着イオン化法によるイオン源は、内部にイオン付着領域を形成しかつ一端面が全面的に開口された導電性のケーシング(容器)101と、ケーシング101の右側開口端面に取り付けられたアパーチャ102と、ケーシング101の一部の壁部を電気的に絶縁されて貫通する電圧印加部103と、電圧印加部103の適宜な位置に取り付けられた金属酸化物からなる球状の放出体104と、被検出ガスおよび他のガスをイオン付着領域に導入するガス導入部105とから構成される。アパーチャ102はイオン化された被検出ガスを通過させる開口106を有し、ケーシング101の開口端部との間に絶縁部107を設けることにより、ケーシング101から電気的に絶縁されている。また電圧印加部103は加熱電源108とバイアス電源109とに接続されている。
【0006】
球状の放出体104は、図11に示すごとく、ワイヤ(線)状の電圧印加部103に例えば燒結によって固定されている。放出体104の直径は例えば2〜3mm程度のものである。放出体104と接触する電圧印加部103の部分を、特に、基準電圧印加部103aと呼ぶことにする。放出体104は、例えば放出体から放出される金属イオンがLi+ の場合、Al2 O3 やSiO2 等からなるアルミナシリケイトと、Liを含有した酸化物(化合物)であるLi2 O等との混合物である。これらはすべて酸化物であるため、全体としては絶縁体となっており、その比抵抗は1012Ω・m以上もある。少なくとも基準電圧印加部はIr(イリジウム)やW(タングステン)等の高融点金属のワイヤ形構造であり、ここに電流が流れることによりジュール熱が発生するようになっている。
【0007】
上記のイオン源では、アパーチャ102は接地電位に保持され、ガス導入部105を介して被検出ガスとその他のガスの混合ガスが、真空状態にされたイオン付着領域に導入され、内部は100Pa程度の減圧雰囲気とされる。その他のガスは、金属イオンが付着しにくい例えばN2 などのガスであり、金属イオンが被検出ガスに付着する際に生ずる余剰エネルギを奪い去るために導入される。電圧印加部103には、バイアス電源109によって、基準電圧印加部103aが例えば10Vとなるようにバイアス電圧が印加される。さらに放出体104は、加熱電源108によって基準電圧印加部103aに電流を流すことにより600℃程度に加熱されている。以上により放出体104の表面に金属イオン(Li+ )が生成され、この金属イオンは、接地電位であるアパーチャ102との間の空間110に形成された電界に引かれて放出体表面から離脱し(放出され)、アパーチャ102の方向へ移送される。その後、金属イオンはイオン源内に導入された被検出ガスに付着して、被検出ガスをイオン化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Analytical Chemistry vol.48 No.6 P825 (1976))
【非特許文献2】Analytical Chemistry vol.56 No.3 P396 (1984)
【非特許文献3】Journal of Applied Physics vol.82 No.5 P2056 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した従来のイオン源では、放出体は絶縁物である金属酸化物で作られているため、基準電圧印加部103aと、放出体104の表面のイオン放出点との間の電位差が周期的に変化するという問題があった。これは、放出体が絶縁物であることから基準電圧印加部とイオン放出点との間には大きな電気抵抗体が介在していることになるため、そこでの電圧降下の発生が原因となっている。
【0010】
図12は基準電圧印加部とイオン放出点の間を等価回路で示したものである。図12では基準電圧印加部103aは点とみなされている。基準電圧印加部103aとイオン放出点111の間には電気抵抗体112が介在している。図12において、放出体104から矢印113のごとくイオンが放出されると、大きな抵抗値を有する電気抵抗体112には電流が流れ、ここに電圧降下が発生し、イオン放出点111における電位は低下する。この電圧降下の関係式は、基準電圧印加部103aの電位をVa、放出体104の抵抗をR、放出体104を流れる電流をI、イオン放出点111の電位をVbとするとき、Vb=Va−I・R …(1)で表される。この関係式に基づけば、イオン放出点111における電位Vbが低下すると、イオン放出点111とアパーチャ102との間に形成される電界が弱まり、イオンの放出量が減少し、放出体104を流れる電流Iも減少する。電流Iが減少すると、電圧降下が少なくなってVbの電位が上昇するので、再びイオンの放出量が増加する。このようにして「Vb低下→I減少→Vb上昇→I増加→Vb低下」の過程が繰り返し発生し、イオン放出量と電界の不安定な周期的変化が続くことになる。イオン付着の質量分析装置では、イオン化された被検出ガスの分子数を電気信号として正確に検出するためには、すなわち質量分析を正しく行うためには、イオン放出量が安定していなければならないので、上記のような周期的な変化状態が生じれば、被検出ガスの質量分析を正しく行うことができない。
【0011】
上記の問題の解決策として、単にイオン放出点111における電位変化の割合を少なくするのであれば、基準電圧印加部103aに印加されるバイアス電圧を高くすることが考えられる。しかし、バイアス電圧を高くすると放出体表面から放出されるイオンのエネルギも高くなる。その結果、放出されたイオンが被検出ガスに衝突するエネルギが高くなり被検出ガスを解離させるという他の問題が起きる。イオン付着イオン化法では、金属イオンを低エネルギで穏やかに被検出ガスに付着させなくてはならないため、基準電圧印加部103aに印加されるバイアス電圧を高くすることはできない。
【0012】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、イオン放出体と基準電圧印加部の間の電位差の変動の発生を抑制し、イオン放出量を安定化させ、精度の高い質量分析を行えるようにしたイオン付着質量分析装置及び該イオン付着質量分析装置に用いられるイオン放出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るイオン放出機構は、金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、金属イオンを被検出ガスに付着させて被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置において、放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るイオン放出機構は、金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン付着質量分析装置において、電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状としたことを特徴とする。また、本発明に係るイオン付着質量分析装置は上述したイオン放出機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン放出機構及びイオン付着質量分析装置によれば、放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたイオン源を備え、若しくは、電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状とすることで、イオン付着領域に安定して金属イオンを供給することができる。その結果、イオン付着イオン化法によって被検出ガスをイオン化し、被検出ガスの質量分析を正しく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第1実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第2実施形態を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第3実施形態を示す要部縦断面図である。
【図4】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第4実施形態を示す要部斜視図である。
【図5】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第5実施形態を示す要部側面図である。
【図6】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第6実施形態を示す要部側面図である。
【図7】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第7実施形態を示し、(A)は要部縦断面図、(B)は部分拡大正面図である。
【図8】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の第8実施形態を示し、(A)は要部縦断面図、(B)は部分拡大正面図である。
【図9】本発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン放出機構の加熱機構に関する実施形態を示す概略構成図である。
【図10】従来のイオン付着質量分析装置のイオン放出機構を示す概略構成図である。
【図11】従来のイオン放出機構の要部を示す縦断面図である。
【図12】従来のイオン放出機構を等価回路で示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明によるイオン付着質量分析装置のイオン源では放出体と電圧印加部(基準電圧印加部を含む)からなるイオン放出機構のみに特徴があり、その他の構成は従来と同じ構造である。従って、以下の実施形態の説明では、イオン放出機構のみを主に説明する。イオン放出機構との関連でイオン源のその他の構成の説明が必要なときには、前述した図10に示した構成を参照して説明する。
【0019】
本発明の実施形態を説明するにあたり、放出体表面のイオン放出点と基準電圧印加部との間の電位差の変動と、放出体が持つ電気抵抗との定量的な関係について述べる。イオン放出点の電位Vb における電位差の変化は、前述の(1)式より電流Iと電気抵抗Rによって決まる。また質量分析を正しく行うためには放出体表面からのイオン放出量(イオン電流)が少なくとも10-10 A程度必要である。さらに、イオン化された被検出ガスをイオン源からその外部の質量分析機構へ移送するために形成された電界を安定に保つために、基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変化を1V以下とする必要がある。従ってこのとき、上記の電気抵抗Rを(1)式に基づいて1010Ω以下とすれば、イオン放出量に関する上記の要求を満足することができる。それ故に以下の実施形態においては、上記の電気抵抗Rを1010Ω以下にする構成が説明される。
【0020】
図1を参照して本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態は、基準電圧印加部とイオン放出点間の電気抵抗を低下するために放出体の材質を複合材料とし、その比抵抗を低減するものである。図1では、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11aに、複合材料で作られた球状の放出体12を取り付けたイオン放出機構を示す。
【0021】
放出体12は、例えばLi2 O、Al2 O3 、SiO2 などからなる金属酸化物(絶縁物)と、例えばAu(金)、CB(カーボンブラック)などの導電体とを複合または充填することにより、電気伝導度が高められた複合材料で作られている。放出体12における導電体の含有量は、放出体の電気抵抗が上述したように1010Ω以下となるような量、または少なくとも臨界複合量以上となるような量である。臨界複合量、およびこれと1010Ω以下の電気抵抗との関連性については後で詳細に説明される。
【0022】
基準電圧印加部11aに対しては、その電位が10Vとなるように電圧印加部11を介してバイアス電源109からバイアス電圧を印加し、さらに加熱用電源108を介して電流を流す。基準電圧印加部11aに取り付けられた放出体12は、ジュール熱により600℃程度に加熱され、その表面に金属イオンを生成する。この金属イオンは、接地電位であるアパーチャ102と放出体表面との電位差によって形成された電界によって、アパーチャ方向のイオン付着領域110へと移送される。基準電圧印加部11aと放出体12の表面のイオン放出点との間には、放出したイオン量と同等な電流が流れ、放出体12の有する電気抵抗により電圧降下が発生し、基準電圧印加部12と放出体表面のイオン放出点との電位差が発生する。しかし、放出体12は、上記の金属酸化物よりも比抵抗値が小さく電気伝導度が向上された複合材料で作られているため、イオン放出点における電位の変化量は、従来の放出体と比べて小さくなる。
【0023】
イオン化された被検出ガスの分子数を電気信号として正確に検出するために必要なイオンの放出量は少なくとも10-10 A程度であり、また放出体12は基準電圧印加部12とイオン放出点の間の電気抵抗が1010Ω以下になるように設定されているので、前述の(1)式よりイオン放出点における電位の変化量を1V以下とすることができる。従って、アパーチャ102と放出体12の表面のイオン放出点との電位差によって形成された電界は、イオン放出開始時の90%以上を維持することができ、周期的変動を抑制して、イオン放出点から放出される金属イオンをイオン付着領域110に安定的に供給することができる。その結果、イオン付着質量分析装置において被検出ガスの質量分析を正しく行うことができる。
【0024】
次に放出体12について上記複合材料の作り方について詳述する。複合材料の作り方としては、前述した金属酸化物を母材とし、そこに上記のAu等の導電体を複合(または充填)したものと、例えばC(炭素)やW(タングステン)などの導電体を母材とし、そこに金属酸化物を複合(または充填)したものがある。しかし、前者の導電体はAuやCBに限定されず、後者の導電体はCやWに限定されない。電気伝導度が高く、高融点および耐腐食性に優れた物質であれば何でもよい。ここで、CBとは、天然ガスや石油、クレオソート油などの炭化水素の熱分解と不完全燃焼の組合せによって得られる微粉炭素のことである。
【0025】
一般的に絶縁体に導電性を持たせる方法として例えばナイロン6やSBR(スチレンブタジエンゴム)などの合成樹脂にCBを複合等させる方法が知られている。合成樹脂などの母材にCBを複合等して得られる電気伝導度は、母材の粒子の大きさや母材の表面張力によって多少異なるが、CBの複合量(充填量)によってほぼ決められる。含有されるCBの増加量と電気伝導度との関係は、次のようになる。
【0026】
絶縁体にCBの複合等を開始すると、電気伝導度は非常に僅かに増加していくが、或る臨界複合量(臨界充填量)に達すると、複合材料の電気伝導度は転移的(急激)に増大し、その後再び穏やかな増加に戻る。この臨界複合量は、体積分率で表すと、例えばナイロン6で0.3%以下、SBRで0.2%以下の少量である。
【0027】
以上のごとく本実施形態による放出体12の材質は金属酸化物に臨界複合量以上の導電体を含有した複合材料であれば好ましい。このようにして比抵抗値が1012Ω・m程度ある金属酸化物に導電体を複合することにより、相対的に放出体の比抵抗値を低いものにし、イオン放出量を安定化させる。ただし、導電体を複合等する量が臨界複合量以下で、かつ基準電圧印加部とイオン放出点の間の電気抵抗が1010Ω以下となる場合には、導電体の複合量は臨界複合量以下であってもよい。
【0028】
次に図2を参照して本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部の一部を複合材料とすることによって放出体と基準電圧印加部の機能を共有するイオン放出機構を形成している。すなわち、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部11bを、前述のLi2 O等の金属酸化物と臨界複合量以上のW等の導電体からなる複合材料として形成することによって、前述の放出体12と基準電圧印加部11aの両方の機能を有する放出部を電圧印加部に形成するものである。かかる放出部の作り方は、例えばLiやLiを含有する化合物などを燃焼し、その炎の中に電圧印加部11の一部(11bの部分)を入れて付着および拡散させ、その内部にLi等を含有させる。その結果、このように形成した電圧印加部11の一部11bをバイアス電圧を印加した状態で加熱すると、電圧印加部11の一部11bからイオン付着領域に対して金属イオンを安定的に供給することが可能となる。
【0029】
さらに電圧印加部(11)と同一の形状を有する放出部(11b)の他の作り方として波、例えば線形構造の金属酸化物に臨界複合量以上の導電体を複合させたものであって、かつその両端がそれぞれ異なる電圧印加部の先端に着脱可能のものを作り、イオン付着質量分析計のイオン源の動作時には、これを電気的に接続させてバイアス印加回路を形成するように構成することも可能である。
【0030】
第2実施形態によるイオン源のイオン放出機構によれば、電圧印加部11の一部に上記のごとくドーピング処理を行うことによって前述の放出体に相当する放出部11bを作るようにしたため、イオン放出量の周期的変動の原因になった電気的抵抗を望ましい状態に小さくすることができ、イオン放出量を安定化させることができる。
【0031】
次に図3を参照して本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11aの周りに金属酸化物からなる薄膜13を堆積させてイオン放出機構を形成している。具体的には、WやIr等で作られた基準電圧印加部11aの周囲表面に前述のLi2 O等の金属酸化物の薄膜13をコーティングして形成する。薄膜13は放出体として機能する。本実施形態によるイオン放出機構では、放出体を薄膜13として形成したため、基準電圧印加部11aとイオン放出点の間の距離を短くすることができ、その間の電気抵抗値を小さくすることができる。これにより放出体である薄膜13から放出されるイオン放出量を安定化させることができる。
【0032】
本実施形態によるイオン放出機構でも、前述のように一般に放出体の電気抵抗は1010Ω程度に設定される。上記の金属酸化物では比抵抗値は一般的に1012Ω・m程度であるので、基準電圧印加部11aの周囲表面に堆積させる薄膜13を一様な厚さ0.5μmの金属酸化物であるとすると、R=σ・L/S(R:電気抵抗、σ:比抵抗、L:長さ、S:断面積)…(2)の式から、薄膜13において電流の流れに対して垂直な方向の断面積は5×10-5m2 程度必要となる。電流の流れに垂直な方向の薄膜13の断面積は基準電圧印加部11aの表面積とほぼ同等と考えることができるので、基準電圧印加部11aを直径0.25mmの線形構造とすると、基準電圧印加部11a上に堆積される薄膜14の領域の長さは約6.37cmとなる。
【0033】
本実施形態では、放出体を形成する薄膜13をLi2 O等の金属酸化物で形成したが、この比抵抗は、それぞれの混合比や不純物濃度によって決まるので、特定することはできない。薄膜13の堆積に使用される金属酸化物の比抵抗が上記の1012Ω・mを大きく上回るものである場合には、薄膜13は基準電圧印加部11a上に上記の厚みよりも薄く、かつ広い領域に堆積させられる。
【0034】
次に図4を参照して本発明の第4実施形態を説明する。この第4実施形態では、イオン源内に存在する電圧印加部の基準電圧印加部を平板形状とし、この平板形状の基準
電圧印加部14の表面に放出体となる金属酸化物の薄膜15を堆積させてイオン放出機構を形成している。図4において、基準電圧印加部14は、例えば長さ16cm、幅5cm、厚さ2.5cmの平板として形成される。基準電圧印加部14では電流の流れに対し直角な方向の断面積は80cm2 となり、薄膜15の厚みが一様で、厚さ0.1μmの場合で、1015Ω・m程度の比抵抗をもつ金属酸化物を薄膜15の形成に用いることができる。また1015Ω・m以下の比抵抗を有する金属酸化物を用いる場合には、放出体である薄膜15からのイオン放出量を高くし、より高い感度を得たとしても、基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変動を1V以下と少なくすることができる。
【0035】
次に図5と図6を参照して第5および第6の実施形態を説明する。図5に示した第5実施形態では、例えばIr線からなる基準電圧印加部16をヘアピン状の形状とすることにイオン源内に多くの基準電圧印加部を存在させる。これにより金属酸化物の堆積可能領域を増やし、その上に一様に金属酸化物を堆積させて、放出体における電流の流れと直角な方向の断面積を増大することができる。さらに図6に示した第6実施形態では、同じくIr線からなる基準電圧印加部の形状を螺旋状(コイル形状)とすることによって、イオン源内にさらに多くの基準電圧印加部17を存在させる。基準電圧印加部17の表面には一様に放出体になる薄膜が堆積させられる。このように金属酸化物の堆積可能領域を増やし、その上に一様に金属酸化物を堆積させれば、放出体における電流の流れと直角な方向の断面積を増大することができる。以上のヘアピン形状および螺旋形状の場合には放出体である薄膜の表面からのイオン放出をアパーチャの開口を通る中心軸上付近に集中することができるので、検出感度を高くすることができる。
【0036】
なお準電圧印加部の形状および寸法は、上述に限らず、イオン源内の放出体(金属酸化物)が堆積可能な領域を増大させるものであればよく、さらに、その上に堆積される金属酸化物は電気抵抗を1010Ω以下としたときに上記の(2)式を満たす寸法であれよい。
【0037】
図7の(A),(B)を参照して本発明の第7実施形態を説明する。この実施形態では、電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11a上に設けた金属酸化物の放出体21に、網状導電体からなる第2の基準電圧印加部22を形成してイオン放出機構を形成している。
【0038】
第2基準電圧印加部22では放出体21の表面上に導電体を網状(メッシュ状)に密着して形成している。この網状導電体は、例えば直径10μmのIr線やW線などであり、これらの導電体に囲まれた放出体21の表面の露出面は、図(B)に示すごとく25mm×25mmの領域あたりに400個程度以上の細かさ、すなわち400メッシュとなっている。以上の構成によれば、上記露出面内のイオン放出点と第2基準電圧印加部22との距離が短くなり電圧降下の影響を低減することができる。
【0039】
図8の(A),(B)を参照して本発明の第8実施形態を説明する。この実施形態では、電圧印加部11の一部である基準電圧印加部11a上に設けた金属酸化物の放出体21において、その表面に導電体からなる第2基準電圧印加部23を皮膜してイオン放出機構を形成している。
【0040】
第2基準電圧印加部23は、放出体21の表面において導電体を薄膜状に被膜させたものである。しかし、放出体21の表面を完全に覆うように形成すると、放出体表面から放出されるイオンの飛行空間を遮断してしまい、イオン付着領域にイオンが供給されなくなる。そこで第2基準電圧印加部23には図8(B)に示されるごとくその表面に第2基準電圧印加部23を貫通した微細な孔24を多数設けるようにし、これにより放出体21の表面から放出されるイオンの飛行空間を確保している。
【0041】
第2基準電圧印加部23に形成された孔24の開口面積の合計は、放出体21の表面積の10%以上であることが好ましい。これは、放出体21の表面から放出するイオンが被検出ガスをイオン化して質量分析する際に、その分子数を電気信号として正確に検出するために必要な量を確保するためである。
【0042】
以上の本発明の実施形態の説明では、各構成および構造は本発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎず、さらに各寸法および物質の成分などは例示にすぎない。また本発明による放出体の加熱方法は、電圧印加部に接続された加熱用電源によって電圧印加部および基準電圧印加部に電流を流してジュール熱を発生させ、このジュール熱を利用して放出体を加熱する従来の方法に限定されない。
【0043】
例えば図9に示すごとく、イオン源31内の電圧印加部32の一部の基準電圧印加部に取付けられた放出体33の近傍であって、放出体33および基準電圧印加部からみて、イオン付着領域の反対側の領域に電気抵抗がやや高い導電体からなるヒータ34を配置したものであってもよい。このヒータ34に加熱用電源35によって電流を流して発熱させ、その際の輻射熱により放出体33を加熱する手段であってもよい。なお図9において、図10で説明した要素と実質的に同じ要素には同じ符号を付している。
【0044】
さらに前述の各実施形態はそれぞれ単独での実施に限定されず、それらの組合せによって基準電圧印加部とイオン放出点の電位差の変動を発生させないように構成することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
11 電圧印加部11a 基準電圧印加部12 放出体13 薄膜14 平板形状の基準電圧印加部15 薄膜16,17 基準電圧印加部21 放出体22,23 第2基準電圧印加部24 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン放出機構において、
前記放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたことを特徴とするイオン放出機構。
【請求項2】
前記複合材料は、前記化合物と前記導電体のうちのいずれか一方を母材とし、これに他方を複合させて形成される複合物であることを特徴とする請求項1記載のイオン放出機構。
【請求項3】
前記電圧印加部の一部の材質を変え、この一部を前記放出体として形成したことを特徴とする請求項1記載のイオン放出機構。
【請求項4】
前記導電体は、金、炭素、イリジウム、白金、タンタル、レニウム、モリブデン、およびこれらの複合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項5】
前記複合材料を前記電圧印加部の表面に薄膜状に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項6】
前記電圧印加部を平板形状としたことを特徴とする請求項5記載のイオン放出機構。
【請求項7】
金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン放出機構において、
前記電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状としたことを特徴とするイオン放出機構。
【請求項8】
前記放出体の表面を、前記電圧印加部と電気的に導通した網状金属線で接触状態で覆ったことを特徴とする請求項1〜7記載のイオン放出機構。
【請求項9】
前記放出体の表面の一部または全部を、前記電圧印加部と電気的に導通した微細孔を有する導電性薄膜で被膜したことを特徴とする請求項1〜7記載のイオン放出機構。
【請求項10】
前記金属イオンは、Li+ 、K+ 、Na+ 、Rb+ 、Cs+ 、Al+ 、Ga+
、In+ のうちいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のイオン放出機構を備えたことを特徴とするイオン付着質量分析装置。
【請求項1】
金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン放出機構において、
前記放出体の材質を、金属を含有した化合物と導電体の複合材料としたことを特徴とするイオン放出機構。
【請求項2】
前記複合材料は、前記化合物と前記導電体のうちのいずれか一方を母材とし、これに他方を複合させて形成される複合物であることを特徴とする請求項1記載のイオン放出機構。
【請求項3】
前記電圧印加部の一部の材質を変え、この一部を前記放出体として形成したことを特徴とする請求項1記載のイオン放出機構。
【請求項4】
前記導電体は、金、炭素、イリジウム、白金、タンタル、レニウム、モリブデン、およびこれらの複合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項5】
前記複合材料を前記電圧印加部の表面に薄膜状に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項6】
前記電圧印加部を平板形状としたことを特徴とする請求項5記載のイオン放出機構。
【請求項7】
金属を含有する放出体と、この放出体に電圧を印加する電圧印加部とを有し、前記放出体を加熱して正電荷の金属イオンを放出させ、前記金属イオンを被検出ガスに付着させて前記被検出ガスをイオン化するイオン源を備えたイオン放出機構において、
前記電圧印加部をコイル形状またはヘアピン形状としたことを特徴とするイオン放出機構。
【請求項8】
前記放出体の表面を、前記電圧印加部と電気的に導通した網状金属線で接触状態で覆ったことを特徴とする請求項1〜7記載のイオン放出機構。
【請求項9】
前記放出体の表面の一部または全部を、前記電圧印加部と電気的に導通した微細孔を有する導電性薄膜で被膜したことを特徴とする請求項1〜7記載のイオン放出機構。
【請求項10】
前記金属イオンは、Li+ 、K+ 、Na+ 、Rb+ 、Cs+ 、Al+ 、Ga+
、In+ のうちいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のイオン放出機構。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のイオン放出機構を備えたことを特徴とするイオン付着質量分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−259845(P2009−259845A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181289(P2009−181289)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2000−85393(P2000−85393)の分割
【原出願日】平成12年3月24日(2000.3.24)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2000−85393(P2000−85393)の分割
【原出願日】平成12年3月24日(2000.3.24)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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