説明

イオン水の製造方法及び製造装置

【課題】強アルカリ性のイオン水を短時間で製造することができる省エネルギー型のイオン水の製造装置、及び、製造方法を提供する。
【解決手段】第1電解セル20Aを第1電解槽10A内に配置し、第2電解セル20Bを第2電解槽10B内に配置し、第1電解セル20Aの注水管27Aに配置された移送ポンプ50により、第1電解セル20Aの電解隔膜21内において生成されたアルカリイオン水が第2電解セル20Bの電解隔膜内へ定量的に、連続的に移送されるように構成したイオン水製造装置1を使用し、第1電解セル20A及び第2電解セル20Bに通電する電流が合計で25〜30アンペアとなる範囲内で、第1電解セル20Aに通電する電流を5〜15アンペア、第2電解セル20Bに通電する電流を15〜20アンペアに設定して通電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料水を電気分解して得られるイオン水、特に中性(pH7)から大きく乖離したpH値を長期にわたって安定的に維持することができるイオン水の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料水を電気分解することによりイオン水を製造する方法として、特開平8−24865号公報に記載されているような方法が知られている。この文献に記載されているイオン水の製造方法について簡単に説明すると、まず、一つの電解槽内に、六つの円筒状の電解セル(それぞれセラミック製の電解隔膜と、その内側に配置された陰極と、電解隔膜の外側に配置された陽極とからなる)を設置し、原料水の供給源(水道管等)を第1電解セルの注水管に接続するとともに、第1電解セルの排水管と、これに隣接する第2電解セルの注水管とを連結し、他の電解セルについても、隣接する電解セルとの間で排水管と注水管とを直列的に接続したイオン水製造装置を用意する。
【0003】
そして、電解槽内に補助電解質(食塩水)を投入し、原料水の供給源から第1電解セルに原料水を連続的に供給しながら、各電解セルの陰極と陽極に通電を行う。第1電解セルに供給された原料水は電気分解され、電解隔膜内においてアルカリ性のイオン水(アルカリイオン水)が生成され、電解隔膜の外側において酸性のイオン水が生成される。電解隔膜内で生成されたアルカリイオン水は、後続の原料水に押し出されて第2電解セルへ移送され、更に、第3〜6の電解セルを順次通過して、最終的に装置外へ排出される。アルカリイオン水が第2電解セルから第6の電解セルを通過する際にも電気分解が行われるため、装置外へ排出されるアルカリイオン水は、pH12.0以上の強アルカリ性を呈することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−24865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の製造方法によれば、強アルカリ性のイオン水を連続的に製造することができるが、製造に時間がかかるほか、電気分解のためにかなりの電力を消費することになるという問題がある。具体的には、容積が1.5Lの電解セル六つを電解槽内に配置したイオン水の製造装置を使用し、電解セルに通電する電流を合計で18アンペア(100V)に設定した場合、pH12.0以上の強アルカリ性のイオン水10Lを製造するための所要時間は60分である。また、この場合の消費電力量は1800Whとなる。このため、より短時間で、より少ないエネルギーで、強アルカリ性のイオン水を製造できるような装置、及び、方法の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決すべく、強アルカリ性のイオン水を短時間で製造することができる省エネルギー型のイオン水の製造装置、及び、製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイオン水の製造方法は、有底円筒状の電解隔膜と、その内側に配置された陰極と、電解隔膜の外側に配置された陽極とによって構成される電解セルを、電解槽の内側に配置し、電解隔膜の外側に補助電解質を投入するとともに、電解隔膜の内側に原料水を導入し、陰極と陽極に通電することによって原料水を電気分解するイオン水製造装置を用いてイオン水を製造する方法において、イオン水製造装置が、電解槽として、相互に独立した第1電解槽、及び、第2電解槽を有するとともに、電解セルとして、第1電解セル、及び、第2電解セルを有し、第1電解セルは第1電解槽内に、第2電解セルは第2電解槽内にそれぞれ配置され、第1電解セル、及び、第2電解セルには、注水管と排水管がそれぞれ取り付けられるとともに、第1電解セルの注水管に配置された移送ポンプにより、第1電解セルの電解隔膜内において生成されたアルカリイオン水が第2電解セルの電解隔膜内へ定量的に、連続的に移送されるように構成され、第1電解セル及び第2電解セルに通電する電流が合計で25〜30アンペアとなる範囲内で、第1電解セルに通電する電流を5〜15アンペアの範囲内の任意の値に設定し、かつ、第2電解セルに通電する電流を15〜20アンペアの範囲内の任意の値に設定して通電を行うことを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係るイオン水の製造装置は、有底円筒状の電解隔膜と、その内側に配置された陰極と、電解隔膜の外側に配置された陽極とによって構成される電解セルを、電解槽の内側に配置し、電解隔膜の外側に補助電解質を投入するとともに、電解隔膜の内側に原料水を導入し、陰極と陽極に通電し、原料水を電気分解することによってイオン水を製造する装置において、電解槽として、相互に独立した第1電解槽、及び、第2電解槽を有するとともに、電解セルとして、第1電解セル、及び、第2電解セルを有し、第1電解セルは第1電解槽内に、第2電解セルは第2電解槽内にそれぞれ配置され、第1電解セル、及び、第2電解セルには、注水管と排水管がそれぞれ取り付けられるとともに、第1電解セルの注水管に配置された移送ポンプにより、第1電解セルの電解隔膜内において生成されたアルカリイオン水が第2電解セルの電解隔膜内へ定量的に、連続的に移送されるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るイオン水の製造方法(製造装置)によれば、従来方法(従来装置)と比べ、製造所要時間を3分の1に短縮することができ、また、消費電力量を2分の1以下に縮減することができる。更に、電解槽の容積を小さくすることができるので、電解槽に投入する補助電解質の使用量を減少することができるほか、装置全体を小型化することができる。また、従来方法による場合、製造所要時間は、環境(電解隔膜の状態、季節による温度変化等)により変動するが、本発明による場合、環境変化の影響を受けることなく、安定して定量的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るイオン水の製造装置1の断面図である。
【図2】図2は、図1に示した第1電解セル20Aの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本発明「イオン水の製造装置」を実施するための形態について説明する。本発明の第1実施形態に係るイオン水の製造装置1は、図1に示すように、基本的には二つのプラスチック製の電解槽10(第1電解槽10A、第2電解槽10B)と、これらの電解槽10内にそれぞれ一つずつ配置された円筒状の電解セル20(第1電解セル20A、第2電解セル20B)と、移送ポンプ50、とによって構成されている。
【0012】
図2は、第1電解セル20Aの分解斜視図である。第1電解セル20Aは、電解隔膜21と、陰極31と、陽極32と、蓋体24とによって構成されている。尚、第2電解セル20Bも、第1電解セル20Aと全く同一の構成となっている。
【0013】
電解隔膜21は、セラミック製で、上面が開放され、底面が閉塞された円筒状(有底円筒状)に形成され、その上縁にはフランジ21aが形成されている。本実施形態においては、電解隔膜21の容積は1.5L、厚さ寸法は7mmに設定されている。
【0014】
電解隔膜21の内側には円筒状の陰極31が、また、外側には円筒状の陽極32が同心状に配置され、電解隔膜21を挟んで、陰極31と陽極32とが一定の間隔を置いて対向した状態となっている。尚、電解隔膜21、陰極31、及び、陽極32の寸法(直径)は、通電抵抗値をできるだけ抑制できるように、相互の離間間隔が小さくなるように設定されている。
【0015】
陰極31は、ステンレス鋼によって構成されたパンチングメタルを円筒状に成形したものであり、上部には、リード線ターミナル31aが設けられており、このリード線ターミナル31aには、図1に示すように、リード線31bが接続されている。
【0016】
陽極32は、Ptクラッド(貼り付け)のTi(チタン)により構成されたパンチングメタルを円筒状に成形したものであり、上部には、リード線ターミナル32aが設けられており、このリード線ターミナル32aには、図示しないリード線が接続される。
【0017】
電解隔膜21の開放された上端面(フランジ21aの上面)には、プラスチック製の蓋体24が装着されている。この蓋体24には、図2に示すように三つの貫通孔24c〜24eが設けられており、これらのうち、貫通孔24c内には、図1に示すようにゴム製の栓体26が取り付けられており、この栓体26の中心軸孔にはリード線31bが挿通されている。
【0018】
第1電解セル20Aの上部には、図1に示すように、注水管27Aと排水管28Aがそれぞれ取り付けられている。注水管27Aは、第1電解セル20の電解隔膜21内へ原料水(水道水、地下水、あるいは、それらの濾過水等)を導入するためのものであり、一方の端部は、原料水の供給源(原料水のタンク、或いは、水道管の蛇口等)に接続され、他方の端部は、蓋体24の貫通孔24dから電解隔膜21内に差し込まれている。尚、注水管27Aの途中には、移送ポンプ50が配置されている。排水管28Aは、第1電解セル20Aの電解隔膜21内において生成されたアルカリイオン水を、外側へ排出するためのものであり、一方の端部は、貫通孔24eから電解隔膜21内に差し込まれており、他方の端部は、第2電解セル20Bの注水管27Bに接続されている。
【0019】
また、第2電解セル20Bの上部にも、注水管27B、及び、排水管28Bが取り付けられている。注水管27Bは、第1電解セル20Aの電解隔膜21内において生成されたアルカリイオン水を、第2電解セル20Bの電解隔膜内へ導入するためのものであり、一方の端部は、第1電解セル20Aの排水管28Aに接続され、他方の端部は、蓋体の貫通孔から電解隔膜内に差し込まれている。排水管28Bは、第2電解セル20Bの電解隔膜内のアルカリイオン水を、装置外へ排出するためのものであり、一方の端部は、貫通孔から電解隔膜内に差し込まれている。
【0020】
このように本実施形態においては、第1電解セル20Aの排水管28Aと、隣接する第2電解セル20Bの注水管27Bとが直列接続された状態になっており、第1電解セル20Aの電解隔膜21内において生成されたアルカリイオン水が、第2電解セル20Bの電解隔膜内へ供給され、第2電解セル20Bの排水管28Bから、pH値の高いアルカリイオン水が排出されるようになっている。
【0021】
尚、第1電解槽10A、及び、第2電解槽10Bには、電解セル20(20A,20B)の外側において生成されたpH値の低い酸性のイオン水を取り出すための排水口(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0022】
本実施形態におけるイオン水の製造装置1において使用される電解セル20は、従来装置(特開平8−24865号公報に記載されているイオン水の製造装置)における電解セルとほぼ同様の構成に係るものであるという点で共通しているが、本実施形態のイオン水の製造装置1と、従来装置とは、次の点において大きく異なっている。
【0023】
まず、第1の相違点は、従来装置においては六つの電解セルが、一つの共通の電解槽の中に配置されている(電解槽と電解セルが「一対多」の関係となっている)のに対し、本実施形態においては、相互に独立した電解槽の中に電解セルがそれぞれ一つずつ配置されている(電解槽と電解セルが「一対一」の関係になっている)という点である。従来装置においては、六つの電解セルに電気エネルギー(一定量の直流電流)が分散してかかっていたが、本実施形態においては、各電解セルに電気エネルギーが集中してかかるようにしたため、各電解セル中の原料水に対して有効に電解処理を行うことができる。
【0024】
第2の相違点は、従来装置においては使用されている電解セルの数が六つであるのに対し、本実施形態においては電解セルの数が二つであるという点である。電解セルを減らして製品製造ができるので電極、電解隔膜などの消耗品の減少を抑えることができ、ランニングコストを縮減でき、さらに、装置全体の小型化、軽量化も期待できる。
【0025】
第3の相違点は、電解セル内において生成されたイオン水の移送方法である。従来装置においては、「水は高所から低所へ流れる」という自然法則を応用した移送方法であるのに対し、本実施形態においては、移送ポンプにより第1電解セルの電解隔膜内において生成されたアルカリイオン水を第2電解セルの電解隔膜内に定量的、連続的に強制移送するようになっている。生成された内部のアルカリイオン水を強制移送させても、集中して電気エネルギーがかけられ、作業環境をコントロールすることで製品ができることがわかった。また、製造量も安定的に確保できるようになる。
【0026】
続いて、本発明の第2実施形態として、第1実施形態のイオン水の製造装置を用いたイオン水の製造方法(図1のイオン水の製造装置1の使用方法)について説明する。まず、第1電解槽10A、及び、第2電解槽10B内(電解隔膜21の外側)に、それぞれ補助電解質(濃度5〜10%の食塩水)を注入し、移送ポンプ50を作動させて、第1電解セル20Aの電解隔膜21内に原料水を定量的(0.5L/分)に、連続的に導入する。尚、補助電解質の注入量は、各電解槽10(10A,10B)内における水位が、電解隔膜21の上縁を超えない程度とする。
【0027】
次に、第1電解セル20Aの陰極31と陽極32の間に電圧を印加し、直流電流を通電する。電圧の印加(通電)は、陰極31のリード線ターミナル31aに接続されたリード線31b(図1参照)、及び、陽極32のリード線ターミナル32a(図2参照)に接続されたリード線(図示せず)を介して行う。
【0028】
第1電解セル20Aの電解隔膜21内に注水された原料水は、陰極31と陽極32との間を流れる直流電流によって電気分解され、電解隔膜21の内側においてアルカリ性のイオン水が生成され、電解隔膜21の外側において酸性のイオン水が生成される。
【0029】
第1電解セル20A内には、上述の通り、原料水が移送ポンプ50により連続的に導入され、また、第1電解セル20Aの電解隔膜21は、蓋体24によって密閉されているため、第1電解セル20A内が満量になると、第1電解セル20Aの電解隔膜21内のアルカリイオン水が、第2電解セル20Bの電解隔膜21へ定量的(0.5L/分)に、連続的に移送されることになる。
【0030】
第2電解セル20Bの電解隔膜21内において、第1電解セル20Aから移送されたアルカリイオン水が溜まってきたら、第2電解セル20Bの陰極31と陽極32の間に電圧を印加し、直流電流の通電を開始する。そうすると、第2電解セル20Bの電解隔膜21内に注水されたアルカリイオン水は、陰極31と陽極32との間の直流電流によって更に電気分解され、より高いpH(強アルカリ性)となる。
【0031】
第2電解セル20Bの電解隔膜21は、蓋体24によって密閉されているため、第2電解セル20Bの電解隔膜21内の水位が満量になると、第2電解セル20Bの電解隔膜21内のアルカリイオン水が、装置外へ定量的(0.5L/分)に、連続的に排出されることになる。
【0032】
以後、第1電解セル20Aへの原料水の供給(0.5L/分)、第1電解セル20Aに対する通電、第1電解セル20Aから第2電解セル20Bへのアルカリイオン水の移送(0.5L/分)、第2電解セル20Bに対する通電、第2電解セル20Bから装置外へのアルカリイオン水の排出(0.5L/分)を継続して実施することにより、高いpHの強アルカリ性のイオン水を連続的に生成することができる。しかも、従来の製造方法による場合と比べ、短時間(従来方法の3分の1の時間)で、かつ、少ないエネルギー量(従来方法の2分の1以下の電力量)で、従来の製造方法によって製造したアルカリイオン水とほぼ同等のpHのアルカリイオン水を生成することができる。
【0033】
以下、本発明「イオン水の製造方法」に関し、本発明の発明者らが行った実験の結果を、本発明の実施例として説明する。
【実施例】
【0034】
まず、第1実施形態として説明したイオン水の製造装置1(図1参照)を用意し、第2実施形態として説明したイオン水の製造方法により、通電条件を変えて合計8回にわたりアルカリイオン水の製造を行った。第1回目(実施例1)から第8回目(実施例8)までの通電条件と、製造されたアルカリイオン水のpH計測値等を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
上記表1において、「第1セル」の欄の数字は、図1に示す第1電解セル20Aに通電した電流の値(単位:アンペア)を示し、「第2セル」の欄の数字は、図1に示す第2電解セル20Bに通電した電流の値を示している。また、「合計」の欄の数字は、それらの合計値を示している。「pH」の欄に示されている値は、製造開始から30分経過後に製造されたアルカリイオン水についてのpH計測値である。
【0037】
ここで実施したイオン水の製造方法においては、第2電解セル20Bの電解隔膜21内のアルカリイオン水が、排出ポンプ50Bにより毎分0.5Lの割合で装置外へ排出されるように設定されているため、理論上は、20分間で10Lのアルカリイオン水を製造できることになる。そして、実施例1〜8のいずれにおいても、実際に20分間で10Lのイオン水を問題なく製造することができた。従来方法(特開平8−24865号公報に記載されているイオン水の製造方法)による場合、アルカリイオン水10Lの製造所要時間は60分であったため、本発明においては、所要時間を「3分の1」に短縮できたことになる。
【0038】
また、上記表1の結果から、本実施例のアルカリイオン水の製造方法における通電条件に関し、次のようなことが確認された。まず、第1電解セルの電流と第2電解セルの電流の合計値が20アンペア以下である場合(実施例1,2)、製造されたアルカリイオン水のpHは「12」に届かず、従来方法によって製造したアルカリイオン水と比べて、機能が若干劣ることになる。一方、第1電解セルの電流と第2電解セルの電流の合計値が25アンペア以上となるように通電条件を設定した場合(実施例3〜8)には、pHは「12」を超え、従来方法による場合と同等、或いは、それ以上の機能を有するアルカリイオン水を製造できることが分かった。従って、本発明のアルカリイオン水の製造方法においては、電流の合計値が25アンペア以上となるように通電条件を設定することが好ましいと考えられる。
【0039】
更に、上述の通り本実施例によるアルカリイオン水10Lの製造所要時間は20分であるところ、この場合の消費電力量(10L製造するために必要な電力量)は、実施例3においては833Whであり、従来方法における消費電力量1800kWhの「2分の1以下」(より正確には「46.2%」)に縮減できることが分かった。
【0040】
尚、実施例7における消費電力量は1167Whであり、実施例3の約1.4倍、また、実施例8における消費電力量は1333Whであり、実施例3の約1.6倍となる。当然のことながら実施例7,8の方が、実施例3よりもpHは高くなったが、その増加量は、消費電力量の増加量と比べると僅かであると言える。そして、pHが「12」以上であれば、アルカリイオン水としての十分な機能を期待できることを考慮すると、通電条件は、実施例3〜6の範囲(第1電解セルの電流:5〜15アンペア、第2電解セルの電流:15〜20アンペア、合計値:25〜30アンペア)が最も好適であると考えられる。
【0041】
また、実施例1〜8のアルカリイオン水のpHは、製造後3ヵ月が経過した時点においても、製造時と殆ど変わらなかった。従って、この方法によって製造したアルカリイオン水は、従来方法によって製造したアルカリイオン水と同様に、長期にわたって安定したpH値を持続できることが確認された。
【符号の説明】
【0042】
1:イオン水の製造装置、
10:電解槽、
10A:第1電解槽、
10B:第2電解槽、
20:電解セル、
20A:第1電解セル、
20B:第2電解セル、
21:電解隔膜、
21a:フランジ、
24:蓋体、
24c〜24e:貫通孔、
26:栓体、
27A,27B:注水管、
28A,27B:排水管、
31:陰極、
32:陽極、
31a:リード線ターミナル、
31b:リード線、
32a:リード線ターミナル、
50:移送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の電解隔膜と、その内側に配置された陰極と、前記電解隔膜の外側に配置された陽極とによって構成される電解セルを、電解槽の内側に配置し、前記電解隔膜の外側に補助電解質を投入するとともに、前記電解隔膜の内側に原料水を導入し、前記陰極と陽極に通電することによって原料水を電気分解するイオン水製造装置を用いてイオン水を製造する方法において、
前記イオン水製造装置が、前記電解槽として、相互に独立した第1電解槽、及び、第2電解槽を有するとともに、前記電解セルとして、第1電解セル、及び、第2電解セルを有し、
前記第1電解セルは前記第1電解槽内に、前記第2電解セルは前記第2電解槽内にそれぞれ配置され、
前記第1電解セル、及び、第2電解セルには、注水管と排水管がそれぞれ取り付けられるとともに、第1電解セルの注水管に配置された移送ポンプにより、第1電解セルの電解隔膜内において生成されたアルカリイオン水が第2電解セルの電解隔膜内へ定量的に、連続的に移送されるように構成され、
前記第1電解セル及び第2電解セルに通電する電流が合計で25〜30アンペアとなる範囲内で、前記第1電解セルに通電する電流を5〜15アンペアの範囲内の任意の値に設定し、かつ、前記第2電解セルに通電する電流を15〜20アンペアの範囲内の任意の値に設定して通電を行うことを特徴とする、イオン水の製造方法。
【請求項2】
有底円筒状の電解隔膜と、その内側に配置された陰極と、前記電解隔膜の外側に配置された陽極とによって構成される電解セルを、電解槽の内側に配置し、前記電解隔膜の外側に補助電解質を投入するとともに、前記電解隔膜の内側に原料水を導入し、前記陰極と陽極に通電し、原料水を電気分解することによってイオン水を製造する装置において、
前記電解槽として、相互に独立した第1電解槽、及び、第2電解槽を有するとともに、前記電解セルとして、第1電解セル、及び、第2電解セルを有し、
前記第1電解セルは前記第1電解槽内に、前記第2電解セルは前記第2電解槽内にそれぞれ配置され、
前記第1電解セル、及び、第2電解セルには、注水管と排水管がそれぞれ取り付けられるとともに、第1電解セルの注水管に配置された移送ポンプにより、第1電解セルの電解隔膜内において生成されたアルカリイオン水が第2電解セルの電解隔膜内へ定量的に、連続的に移送されるように構成されていることを特徴とするイオン水の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106181(P2012−106181A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257000(P2010−257000)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【特許番号】特許第4939645号(P4939645)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(591087703)株式会社アロンワールド (13)
【Fターム(参考)】