説明

イオン注入方法及びイオン注入装置

【課題】複数本のリボン状イオンビームを少なくとも部分的に重ね合わせてガラス基板上に所定の注入量分布を実現するイオン注入方法において、各リボン状イオンビームのビーム電流密度分布を効率的に調整する。
【解決手段】複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作を開始させた後、各装置のビーム立上げ操作の完了を個別に検出することで、もっともビーム立上げ操作の完了が遅いとされるイオンビーム供給装置を特定する。その後、各イオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームによってガラス基板上に形成されるイオン注入量分布を重ね合わせた際、この重ね合わせによる注入量分布が予め決められた所定の分布となるように、特定されたイオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームのビーム電流密度分布の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のリボン状イオンビームによる照射領域を重ね合わせて、ガラス基板上に所定の注入量分布を形成させるイオン注入方法と当該イオン注入を実現する為のイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビに代表される液晶製品の大型化が著しい。半導体製造工程においては、1つの処理工程でより多くの液晶パネルを処理する為に、ガラス基板の寸法を大きくし、大型のガラス基板から液晶パネルを多面取りしようという試みがなされている。半導体製造装置の一つであるイオン注入装置についても、このような大型のガラス基板への対応が求められている。このような要望に対応すべく、これまでに特許文献1に記載のイオン注入装置が開発されてきた。
【0003】
特許文献1には、ガラス基板の寸法よりも小さい2本のイオンビームを用いて、ガラス基板の全面にイオン注入処理を施す技術が開示されている。ここでは、一例として、互いに直交する3方向(X、Y、Z方向)のそれぞれを、イオンビームの短辺方向、イオンビームの長辺方向、イオンビームの進行方向として定義している。2本のイオンビームは、X方向において互いに離間しているとともに、Y方向においてガラス基板上での各イオンビームによる照射領域が部分的に重なるように互いの中心位置をずらしてガラス基板へのイオン注入処理が施される処理室内に照射されている。そして、このようなイオンビームを横切るように、X方向に沿ってガラス基板を搬送させることで、ガラス基板全面に渡ってのイオン注入処理を実現させている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ガラス基板の搬送速度を一定にしている。その為、ガラス基板の全面に渡って均一な注入量分布を実現する場合、特許文献1の図6に示されているように、Y方向に沿って2本のイオンビームの電流密度分布を足し合わせた結果が略均一なものになるように調整しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−152002号公報(図1、図3、図6、段落0077〜0088)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、基板上で複数のイオンビームの照射領域が重ね合わされる場合、この領域に照射されるイオンビームのビーム電流密度分布の調整は、1本のイオンビームのビーム電流密度分布を調整する場合と比較して、調整対象とされるパラメーターの数が多く、複雑となる。その為、このような調整を闇雲にしていたのであれば、調整が終了するまでにかなりの時間を要してしまう。また、ビーム電流密度分布の調整に時間がかかってしまうと、イオン注入装置のスループット(処理能力)の低下を招いてしまうといった問題も起こり得る。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、イオンビームの照射領域が重ね合わせされる領域におけるビーム電流密度分布の調整方法については、他の領域(重ね合わせされない領域)でのビーム電流密度分布とほぼ等しくなるように調整するといった程度の記載しかなされておらず、具体的にどのように調整を行うのかについて明らかにされていなかった。
【0008】
本発明では、効率的にビーム電流密度分布の調整を行うことが出来るイオン注入方法及び当該方法を実現する為の装置を提供することを所期の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のイオン注入方法は、個別にリボン状イオンビームを供給し、当該リボン状イオンビームの電流密度分布を調整するビーム電流密度分布調整手段を有する複数のイオンビーム供給装置を用いてガラス基板上に所定のイオン注入量分布を形成するイオン注入方法において、前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作を順次にあるいは同時に開始させるビーム立上げ開始工程と、前記ビーム立上げ開始工程の後、前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作完了を個別に検出するビーム立上げ操作完了検出工程と、前記ビーム立上げ操作完了検出工程の結果に基づいて、もっともビーム立上げ操作の完了が遅いとされるイオンビーム供給装置を特定するイオンビーム供給装置特定工程と、前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームによってガラス基板上に形成されるイオン注入量分布を重ね合わせた際、この重ね合わせによる注入量分布が予め決められた所定の分布となるように、前記イオンビーム供給装置特定工程で特定されたイオンビーム供給装置に備えられた前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて当該イオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームのビーム電流密度分布の調整を行うビーム電流密度分布調整工程とを経てガラス基板へのイオン注入処理がなされることを特徴としている。
【0010】
また、前記ビーム立上げ操作完了検出工程において、各イオンビーム供給装置の運転パラメーターが所定範囲外であり、かつ、所定時間が経過している場合には、前記ビーム立上げ操作完了検出工程を中止するように構成しておくことが望ましい。
【0011】
このような構成を用いることで、ガラス基板へのイオン注入処理がなされる前の段階で、イオン注入装置の異常を検出し、即座に装置のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0012】
さらに、前記イオン注入方法は、前記ビーム立上げ操作時に、前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布が第1の許容範囲内にあるかどうかを確認する工程と、前記ビーム電流密度分布が前記第1の許容範囲内にない場合には、前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて、当該範囲内に入るように前記ビーム電流密度分布の調整を行う工程と、をさらに有しているとともに、前記ビーム電流密度分布調整工程でビーム電流密度分布の調整が行われる際に用いられる許容範囲を第2の許容範囲とすると、前記第1の許容範囲は前記第2の許容範囲よりも広い範囲に設定されていることが望ましい。
【0013】
このような構成を用いることで、より確実に基板上に所定のイオン注入量分布を形成させることが可能となる。
【0014】
一方、本発明のイオン注入装置は、個別にリボン状イオンビームを供給し、当該リボン状イオンビームの電流密度分布を調整するビーム電流密度分布調整手段を有する複数のイオンビーム供給装置を備えたオン注入装置であって、前記イオン注入装置は、(1)前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作を開始させるビーム立上げ開始工程と、(2)前記ビーム立上げ開始工程の後、前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作完了を個別に検出するビーム立上げ操作完了検出工程と、(3)前記ビーム立上げ操作完了検出工程の結果に基づいてもっともビーム立上げ操作の完了が遅いとされるイオンビーム供給装置を特定するイオンビーム供給装置特定工程と、(4)前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームによってガラス基板上に形成されるイオン注入量分布を重ね合わせた際、この重ね合わせによる注入量分布が予め決められた所定の分布となるように、前記イオンビーム供給装置特定工程で特定されたイオンビーム供給装置に備えられた前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて当該イオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームのビーム電流密度分布の調整を行うビーム電流密度分布調整工程とを行う制御装置を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、前記制御装置は、前記ビーム立上げ操作完了検出工程において、各イオンビーム供給装置の運転パラメーターが所定範囲外であり、かつ、所定時間が経過している場合には、前記ビーム立上げ操作完了検出工程の中止を行うように構成しておくことが望ましい。
【0016】
さらに、前記制御装置は、前記ビーム立上げ操作時に、前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布が第1の許容範囲内にあるかどうかを確認する工程と、前記ビーム電流密度分布が前記第1の許容範囲内にない場合には、前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて、当該範囲内に入るように前記ビーム電流密度分布の調整を行う工程と、を行う機能を有しているとともに、前記ビーム電流密度分布調整工程でビーム電流密度分布の調整が行われる際に用いられる許容範囲を第2の許容範囲とすると、前記第1の許容範囲は前記第2の許容範囲よりも広い範囲に設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、複数のイオンビーム供給装置のうち、最後にビーム立上げが完了するイオンビーム供給装置のビーム電流密度分布についてのみ、精度よく調整すれば良い。その為、複数のイオンビーム供給装置より供給される全てのイオンビームのビーム電流密度分布を精度よく調整する場合に比べて、時間がかからない。また、最後にビーム立上げ操作が完了するイオンビーム供給装置のビーム電流密度分布を調整する際、その他のイオンビームの電流密度分布の測定値を考慮しているので、基板上に所定のイオン注入分布を精度の良く形成させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のイオン注入装置に係る一実施例を示す平面図。
【図2】図1の処理室内部をZ方向から見た時の平面図。
【図3】電流密度分布の調整例についての説明図である。
【図4】ビーム立上げの開始からイオン注入処理の開始に至るまでの一連のフローを表す。
【図5】ビーム電流密度分布調整工程で調整されないイオンビームのビーム電流密度分布の一例を表す。
【図6】ビーム電流密度分布調整工程で調整されるイオンビームの調整目標とするビーム電流密度分布の導出方法についての説明図である。
【図7】ビーム立上げ操作完了検出工程で用いられる制御フローの一例を表す。
【図8】図1のイオン注入装置で用いられる制御装置の構成についての別の実施例である。
【図9】図1のイオン注入装置で用いられる制御装置の構成についての他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係るイオン注入装置1の一実施例を示す平面図であり、図2は図1の処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。これらの図面を基に本発明の一実施例に係るイオン注入装置の全体の構成を説明する。
【0020】
この発明において、X方向を基板の搬送方向、Y方向をイオンビームの長辺方向、Z方向を処理室内でガラス基板に照射されるイオンビームの進行方向とし、これらの方向は互いに直交している。また、この発明において、リボン状イオンビームとは、イオンビームの進行方向に直交する平面でイオンビームを切った場合に、その断面が略長方形状であるイオンビームのことを指している。
【0021】
図1に記載のイオン注入装置1は、第1のイオンビーム供給装置2、第2のイオンビーム供給装置12、第3のイオンビーム供給装置32および第4のイオンビーム供給装置42を有している。第1〜第4のイオンビーム供給装置は、それぞれ第1のイオンビーム6、第2のイオンビーム16、第3のイオンビーム36および第4のイオンビーム46を処理室11内に供給する為の装置である。
【0022】
イオンビーム供給装置について簡単に説明する。第1〜第4のイオンビーム供給装置は、それぞれ同じ性能の供給装置であっても構わないし、異なる性能であっても良い。また、供給装置の構成についても同様のことが言える。なお、図1の例では、各供給装置の構成が共通しているので、第1のイオンビーム供給装置2の構成を代表として説明し、他の供給装置についての説明は省略する。
【0023】
第1のイオンビーム供給装置2は、イオン源3を備えており、このイオン源3より第1のイオンビーム6が引出される。イオン源3より引出された第1のイオンビーム6には様々なイオンが混在している。この内、所望のイオンのみをガラス基板10へ照射させる為に、質量分析マグネット4と分析スリット5とを協働させ、所望のイオンとその他のイオンとの分離を行う。この分離は、イオン毎の質量数の違いを利用して、分析スリット5を所望のイオンのみが通過できるように質量分析マグネット4での第1のイオンビームの偏向量を調整することで行われる。
【0024】
第1のイオンビーム供給装置2から供給される第1のイオンビーム6は、処理室11内に設けられたビームプロファイラー7によって、長辺方向(Y方向)におけるビーム電流密度分布が測定される。このビームプロファイラーの例としては、公知のファラデーカップをY方向に沿って複数個配列した多点ファラデー方式や単一のファラデーカップをY方向に沿って移動させるムービングファラデー方式を用いることが考えられる。
【0025】
なお、上記説明ではイオンビーム供給装置として、質量分析マグネットや分析スリットを備える構成の供給装置について説明したが、これらを備えないタイプのイオンビーム供給装置でも良い。
【0026】
このイオン注入装置1におけるガラス基板の搬送例について説明する。まず、第1の真空予備室22の大気側に位置するゲートバルブ20が開けられる。その後、ガラス基板10は大気側に設けられた図示されない搬送ロボットによって第1の真空予備室22内へ搬入される。この際、第1の真空予備室22と処理室11との間に位置するゲートバルブ18は、処理室11側が大気に開放されないように閉められている。
【0027】
ガラス基板10が第1の真空予備室22内に搬入された後、ゲートバルブ20が閉められて、図示されない第1の真空予備室22に連結された真空ポンプにより、第1の真空予備室22内が処理室11と同程度の真空度(圧力)となるまで真空排気される。
【0028】
第1の真空予備室22内の真空度が処理室11と同程度となった後、ゲートバルブ18が開けられる。そして、ガラス基板10は、処理室11内へ搬入されて、X方向に沿って第1のイオンビーム6、第2のイオンビーム16を横切るように処理室内を搬送される。これによってガラス基板10へのイオン注入処理が達成される。
【0029】
その後、ガラス基板10は、ゲートバルブ19を通過し、第2の真空予備室23内に搬入される。ここで、ゲートバルブ19は、処理室11内でのガラス基板10へのイオン注入処理中、もしくは、イオン注入処理後の適当なタイミングで開放されるものとする。
【0030】
第2の真空予備室23内へのガラス基板10の搬入が完了した後、ゲートバルブ19が閉められる。この際、第2の真空予備室23の大気側に位置するゲートバルブ21は閉められている。そして、第2の真空予備室23を密閉した上で、室内の雰囲気が大気圧と同程度となるまで、図示されない第2の真空予備室23に連結された真空ポンプにより第2の真空予備室23の圧力調整がなされる。
【0031】
第2の真空予備室23の室内が大気圧となった後、ゲートバルブ21が開けられて、大気側に設けられた図示されない搬送ロボットによって、ガラス基板10の大気側への搬出が行われる。
【0032】
図2は図1の処理室11内部をZ方向から見た時の平面図である。ガラス基板10の搬送機構の一例としては、図2に示されるようにガラス基板10を保持するホルダー24の下面に車輪を設けておき、この車輪が第1、第2の真空予備室22、23、処理室11内に配置された図示されないレール上を転がることでX方向に沿ってホルダー24を移動させることが可能となる。なお、この場合、モーター等のホルダー24を移動させる為の動力源が設けられているものとする。ガラス基板10の往復搬送を考えた場合、動力源がモーターであれば正逆の回転が可能な構成にしておくことが望ましい。
【0033】
Y方向において、第1〜第4のイオンビームはガラス基板10よりも長い寸法を有している。その為、ガラス基板10が図2に示される矢印Aの方向に沿って、第1の真空予備室22から第2の真空予備室23へ搬送された場合、ガラス基板の全面において、各イオンビームによる照射領域は重ね合わせされることになる。なお、図2中に記載の第1〜第4のイオンビームを取り囲んでいる破線は、各イオンビーム供給装置から処理室11内へイオンビームを供給する為の供給経路(ビームライン)の外形を表している。
【0034】
イオン注入処理において、ガラス基板10上に形成されるイオン注入量の分布とイオンビームの電流密度分布とガラス基板の搬送速度とは、それぞれが密接に関連している。一般に、イオン注入量(ドーズ量とも言う)は、イオンビーム電流密度に比例し、被照射対象物(ここではガラス基板)がイオンビームを横切る際の速度に反比例する。
【0035】
例えば、ガラス基板10の全面に渡って形成されるイオン注入量分布の目標分布が略均一な分布であるとする。ガラス基板10の搬送速度が一定である場合、搬送方向と直交する方向におけるイオンビームのビーム電流密度分布を略均一にすれば、ガラス基板全面に渡ってのイオン注入量の分布も略均一となる。
【0036】
より具体的に説明すると、ガラス基板全面に渡ってイオン注入量分布を略均一にするには、図2でガラス基板10がイオンビームの短辺方向に沿って一定速度で移動する場合、一例として各イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を略均一にしておけば良い。このようにすることで、それぞれのイオンビームによる注入量分布を略均一なものにすることが出来るので、それらの足し合わせによってガラス基板上に形成される注入量分布もおおよそ均一なものにすることが出来る。
【0037】
この場合、イオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度分布は均一でなくても良い。ガラス基板10の搬送方向と略一致しているイオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度分布のムラ(不均一性)は、ガラス基板の搬送に伴って、積分されることになる。その為、たとえムラがあったとしても、イオンビームの短辺方向において、最終的にはある一定量の注入がなされることになるから、イオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度の均一性は考慮する必要はない。
【0038】
また、ガラス基板10を搬送させた際に、ガラス基板上に照射されないイオンビームの両端部におけるビーム電流密度分布は、ガラス基板上での注入量分布に無関係である為、どのような分布であっても構わない。
【0039】
なお、図2の例では、イオンビームの長辺方向と直交するようにガラス基板を搬送させているが、ガラス基板を搬送する方向は必ずしも直交に限られない。例えば、略直交する方向にガラス基板を搬送させた場合であっても、ガラス基板上に形成される所定の注入量分布に対して設定された許容範囲内でのイオン注入処理が実現出来るからである。ガラス基板上に形成される注入量分布の許容範囲との兼ね合いで、イオンビームの長辺方向に対してどの程度傾けた搬送が許容されるのかが決定されることになる。このことを考慮すると、ガラス基板の搬送方向をイオンビームの長辺方向と交差する方向と表現することが出来る。
【0040】
次に、上述したビーム電流密度分布の調整方法について説明する。各イオンビーム供給装置におけるビーム電流密度分布の調整は、例えば、公知技術として知られているようなマルチフィラメントを有するイオン源を用いて、フィラメントに流す電流量を増減させることで行われる。
【0041】
具体的には、図1に示されるイオンビーム供給装置のイオン源をY方向に沿って複数のフィラメントが配列されたマルチフィラメントタイプのイオン源にしておく。その上で、ビームプロファイラーによるY方向におけるイオンビームの測定領域と、各イオン源に設けられたフィラメントとを対応させておく。
【0042】
ここで言う対応とは、例えば、ビームプロファイラーが16個のファラデーカップで構成されているとした場合、ビームプロファイラーをファラデーカップ4個で構成される4つの領域に分けるとともに、各領域に対してフィラメント1本(各イオン源において、フィラメントは全部でY方向に沿って4本ある。)を対応させておくといったことを意味する。
【0043】
図3には、上記対応関係のフィラメントとファラデーカップが示されている。図の縦軸はビーム電流密度を表し、横軸はY方向であって、01と02との間の寸法はガラス基板の寸法と一致しており、原点0はY方向におけるイオンビームの一端部と一致している。縦軸、横軸の項目については、後述する図5、図6においても同様である。
【0044】
ビーム電流密度分布の調整を行うに当たっては、調整目標とする分布(均一な分布の場合は、一定値となる)とその分布を中心にして所定の許容範囲(図3では目標分布を中心に上下にεの許容範囲が設定されている)が設けられているので、その許容範囲内に収まるように各領域に対応するフィラメントに流す電流量を増減させる。
【0045】
図3に示される領域1では許容範囲よりも上側にビーム電流密度の値が逸脱し、反対に領域3では許容範囲よりも下側にビーム電流密度の値が逸脱している。その為、領域1に対応するフィラメントに流す電流量を減らすとともに、領域3に対応するフィラメントに流す電流量の増やす操作を行う。このようにして電流密度分布の調整は行われる。
【0046】
図4には、これまでに説明したイオン注入装置1において、複数のイオンビーム供給装置(2、12、32、42)を立上げて、ガラス基板へのイオン注入処理が実施されるまでの一連の流れが示されている。以下に、この一連の流れを説明する。
【0047】
まず、ビーム立上げ開始工程50では、複数のイオンビーム供給装置(2、12、32、42)を運転状態にして、各装置からイオンビームの供給を開始させる。この時、各イオンビーム供給装置の運転を一斉に行っても良いし、予め決められた順番に従って行うようにしても良い。
【0048】
その後、各イオンビーム供給装置でのビーム立上げ操作が完了したかどうかの検出を行うビーム立上げ操作完了検出工程51が行われる。この工程ではビーム立上げ開始工程50にて、運転を開始させた各イオンビーム供給装置(2、12、32、42)の運転パラメーター(例えば、イオンビーム供給装置から供給されるイオンビームの電流量やその電流密度分布、イオン源のフィラメントに流れる電流量といったイオンビーム供給装置の運転に係わるパラメーターのことを意味しており、イオン注入装置の構成によっては対象とするパラメーターが変更される。)のモニターがなされる。そして、運転パラメーターの値が予め決められた所定範囲内に入ったと判断された時点で、各イオンビーム供給装置のビーム立上げ操作は完了となる。
【0049】
ここで説明した運転パラメーターのモニターやビーム立上げ操作の完了検出は、図1で説明した制御装置25を用いて自動的に行えるようにしてもいい。また、これとは別に、図1のユーザーインターフェース26に運転パラメーターの変動する様子を表示させておき、イオン注入装置1のユーザーがこれを目視して、ビーム立上げ操作の完了を判断出来るようにしておいても良い。
【0050】
このビーム立上げ操作の際に、例えば運転パラメーターの一つであるビーム電流密度分布が所定範囲に入っていない場合には、ビーム電流密度分布の調整が行われる。ただし、ここで行われるビーム電流密度分布の調整は非常に簡単なものであって、図3のところで説明した許容範囲は例えば所望するビーム電流密度分布の値に対して±10%程度であり、その範囲にビーム電流密度分布が入るように簡単な(粗い)調整がなされる。その為、このような調整にはほとんど時間を要しない。これに対して、後述するビーム電流密度分布調整工程では許容範囲が±5%や±3%といったものであり、非常に精度の良い(細かな)調整が要求されている。このような精度の良い調整はビーム立上げ操作時になされるビーム電流密度分布の簡単な調整に比べて時間を要することになる。
【0051】
イオンビーム供給装置特定工程52では、最後にビーム立上げ操作が完了する装置の特定が行われる。この特定は、先に行われたビーム立上げ操作完了検出工程51の結果に基づいて行われる。なお、イオンビーム供給装置2、12、32、42毎に、運転条件や装置特性が異なることから、予め決められた順番でビーム立上げを開始したとしても必ずしもその順番に装置の立上げが終了するとは限らない。
【0052】
次のビーム電流密度分布調整工程53では、イオンビーム供給装置特定工程52で特定された装置に関して、ビーム電流密度分布の調整がなされる。このビーム電流密度分布の調整について、図5及び図6を基に説明する。
【0053】
図5及び図6では、図1のイオン注入装置1と同様に、4台のイオンビーム供給装置を有するイオン注入装置を想定している。そして、各イオンビーム供給装置から供給されるイオンビームの目標とする電流密度分布は、ガラス基板のY方向における一端から他端に至るまで値αで均一な分布とし、各イオンビーム供給装置から供給されるイオンビームが同一のガラス基板上に照射されるものとする。
【0054】
通常、ビーム立上げの開始時に、供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布が所望する分布になるように、ビーム電流密度分布の調整手段(例えば、図3の説明で例示したマルチフィラメント)において予めパラメーター(例えば、マルチフィラメントの場合には、フィラメントに流す電流量)の値が適切なものに設定されている。
【0055】
但し、各イオンビーム供給装置に設定されるビーム立上げ時の運転条件や各イオンビーム供給装置における装置特性の経時変化によって、予め適切なパラメーターの設定が行われたとしても、必ずしも所望するようなビーム電流密度分布になるとは限らない。多くの場合、所望する分布に対して幾らかのズレが生じる。このズレがあまりにも大きい場合には、ビーム電流密度分布調整工程53でなされるビーム電流密度分布の調整を行っても所定のイオン注入量分布を実現することが出来ない恐れがあるので、ビーム立上げ操作時にこのズレがある程度の範囲に収まるように予め簡単にビーム電流密度分布の調整を行っておくことが望まれる。
【0056】
ビーム電流密度分布調整工程53では、最後にビーム立ち上げ操作が完了する供給装置以外ではビーム電流密度分布の調整は行われない。このような装置から供給されるイオンビームの電流密度分布は目標とする値αに対して、ズレが生じていることになる。図5にはこれらの装置から供給されるイオンビームのビーム電流密度分布を測定した様子が描かれている。
【0057】
図6には、図5に示された各ビーム電流密度分布(A)〜(C)を足し合わせた様子が描かれている。図2の説明で述べたように、ガラス基板の搬送速度が一定である場合、各イオンビームによるビーム電流密度分布を足し合わせたものが、ガラス基板へ注入される注入量分布の形状とほぼ一致することになる。
【0058】
その為、4本のイオンビームの目標とするビーム電流密度分布を足し合わせた場合に形成される理想的な電流密度分布(図6中、4αで示される均一な分布)から、イオンビーム供給装置特定工程52で特定されなかった供給装置から供給されるビーム電流密度分布を足し合わせた合計分布(図6中の(A)+(B)+(C)で示される分布)を差し引くことで、ビーム電流密度分布調整工程53で調整目標とする分布(図6中の斜線で示す部分を充足するような電流密度分布)を導き出すことが出来る。そして、ビーム電流密度分布調整工程53では、先のイオンビーム供給装置特定工程で特定された供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布がここで導かれた目標分布とおおよそで一致するように調整が行われる。
【0059】
本発明では、複数のイオンビーム供給装置のうち、最後にビーム立上げが完了するイオンビーム供給装置のビーム電流密度分布についてのみ、精度よく調整すれば良い。その為、複数のイオンビーム供給装置より供給される全てのイオンビームのビーム電流密度分布を精度よく調整する場合に比べて、時間がかからない。また、最後にビーム立上げ操作が完了するイオンビーム供給装置のビーム電流密度分布を調整する際、その他のイオンビームの電流密度分布の測定値を考慮しているので、基板上に所定のイオン注入分布を精度の良く形成させることが出来る。
【0060】
<その他の変形例>
図7には、ビーム立上げ操作完了検出工程で用いられる制御フローの一例が示されている。先の実施例では、各イオンビーム供給装置の着目している運転パラメーターが所定の範囲内の値になった場合に、立上げ操作が完了したことを検出するという構成にしたが、装置の予期せぬ故障に伴って、いつまで経っても運転パラメーターが所定の範囲内に収束しないといったことが考えられる。このような場合、即座に、イオン注入装置を停止させ、装置のメンテナンス作業を行えるように構成しておくことが望まれる。図7には、このような要望に答える為の制御フローの一例が開示されている。
【0061】
まず、処理55にて、着目している運転パラメーターが所定範囲の値になったかどうかの検出がなされる。ここではリアルタイムに運転パラメーターをモニターし、所定範囲の値になっているのかどうかの検出を行う構成としているが、特定間隔(例えば、30秒程度)毎にモニターするように構成しても良い。
【0062】
その後、所定範囲内に運転パラメーターの値が入っている場合には、検出対象としているイオンビーム供給装置に対するビーム立上げ操作完了検出工程が終了する。一方で、所定範囲内に運転パラメーターの値が入っていない場合には、処理56に入る。ここでは、所定時間が経過したかどうかの確認が行われる。なお、ここで言う所定時間の計測を開始するタイミングは、例えば、ビーム立上げの開始としてもいいし、ビーム立上げ操作完了検出工程の開始からとしても良い。
【0063】
処理56で所定時間が経過していない場合には、処理55に戻る。一方、所定時間が経過している場合には、処理57に進み、ビーム立上げ操作完了検出工程が中止される。このような構成とすることで、イオン注入装置に予期せぬ故障が発生していた場合には、直ぐにメンテナンス作業に移行することが可能となる。
【0064】
図1に示すイオン注入装置1には、各イオンビーム供給装置の制御を行う制御装置として、1台の制御装置25が備えられているが、本発明の制御装置はこのような構成に限られない。 図8、図9には、本発明のイオン注入装置1で用いられる制御装置の別の例が開示されている。ここでは、各イオンビーム供給装置に対して個別に制御装置が設けられている。
【0065】
図8の構成について説明する。第1のイオンビーム供給装置2、第2のイオンビーム供給装置12、第3のイオンビーム供給装置32、第4のイオンビーム供給装置42にはそれぞれ第1の制御装置60、第2の制御装置61、第3の制御装置62、第4の制御装置63が対応している。そして、その内の1台の制御装置(この例では、第3の制御装置62)が他の制御装置を統括制御する機能を有している。なお、この統括制御機能は、各制御装置に持たせておいて、必要に応じていずれの制御装置で他の制御装置の統括を行うのかを選択できるようにしておいても良い。
【0066】
一方、図9に示す構成では、統括機能を備えた制御装置として、第5の制御装置64を第1〜第4の制御装置60〜63とは別に設けている。このような構成を採用しても良い。
【0067】
これまでに述べた実施例では、Y方向においてガラス基板10よりも長い寸法を有する4本のイオンビームを用いたイオン注入処理を例に挙げて説明しているが、イオンビームの本数はこれに限られない。イオンビームの本数としては2本以上であれば良い。さらに、本発明の従来技術として挙げた特許文献1の図3に記載されているように、各イオンビームの長辺方向の位置を互いにずらして配置するようにしても良い。このような場合には、重ね合わせを行わないイオンビームの部分に関しては、従来通りビーム電流密度分布の調整を行い、重ね合わせを行うイオンビームの部分に関してのみ先の実施例で示した手法を用いてビーム電流密度の調整を行う。なお、重ね合わせを行わないイオンビームの部分についてのビーム電流密度分布の調整はビーム立上げ操作完了と同時に行われるものとする。また、ここで行われるビーム電流密度分布の調整が、重ね合わせされる領域におけるイオンビームのビーム電流密度分布に影響を与えるかもしれないので、重ね合わせされない領域でのイオンビームのビーム電流密度分布の調整が全て終了した後に、重ね合わせされる領域でのビーム電流密度分布調整工程が開始されるものとする。
【0068】
また、上記した実施例において、ビーム電流密度分布調整部材として、マルチフィラメントを有するイオン源について述べたが、これに代えて、別のものを使用しても良い。
【0069】
具体的には、マルチフィラメントタイプのイオン源の代わりに、イオンビームを供給する為の供給経路(ビームライン)に、Y方向に沿って異なる電位分布や磁場分布を形成させる電界レンズや磁界レンズを配置しておく。なお、この場合、イオン源はマルチフィラメントタイプのものでなくても良い。
【0070】
電界レンズについてはイオンビームをその短辺方向から挟むようにして一組の電極を設けておき、それがY方向に沿って複数組あるような構成のものが考えられる。そして、ビームプロファイラーでのビーム電流密度分布の測定結果に応じて、各組へ印加する電圧を異ならせ、電極組間に電位差を発生させる。そうすると、Y方向に配置された各電極組間を通過するイオンビームは電極組間の電位差に応じてY方向に沿って局所的に移動させられるようになるので、Y方向におけるイオンビームの電流密度分布を所定の目標分布に近づけるように調整することが出来る。
【0071】
また、磁界レンズはイオンビームをその短辺方向から挟むようにして一組の磁極を設けておき、それがY方向に沿って複数組あるような構成のものが考えられる。そして、各磁極組に対して巻回されたコイルに流す電流量およびその向きは、磁極組毎に独立して調整可能にしておく。その上で、ビームプロファイラーでの測定結果に応じて、各磁極組に巻回されたコイルに流す電流を独立に調整する。そうすると、各磁極組を構成する一組の磁極の間を通過するイオンビームは各磁極組で発生される磁界の大きさおよび向きに応じて、Y方向に沿って局所的に移動させられるようになるので、Y方向におけるイオンビームのビーム電流密度分布を所定の目標分布に近づけように調整することが出来る。
【0072】
さらに、これまでの実施例では、ガラス基板の全面に渡って均一なイオン注入量分布を実現する例について述べてきたが、例えば公知技術である特開2005−235682号公報の図9に記載のごとく、ガラス基板の搬送方向に沿って注入量の分布を異ならせておいても良い。そのような注入量分布であったとしても、イオンビームの重ね合わせによって所定の注入量分布を実現する場合には、本発明を適用することが出来る。
【0073】
前述した以外に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0074】
1.イオン注入装置
2.第1のイオンビーム供給装置
6.第1のイオンビーム
10.ガラス基板
12.第2のイオンビーム供給装置
16.第2のイオンビーム
25.制御装置
32.第3のイオンビーム供給装置
36.第3のイオンビーム
42.第4のイオンビーム供給装置
46.第4のイオンビーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別にリボン状イオンビームを供給し、当該リボン状イオンビームの電流密度分布を調整するビーム電流密度分布調整手段を有する複数のイオンビーム供給装置を用いてガラス基板上に所定のイオン注入量分布を形成するイオン注入方法において、
前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作を開始させるビーム立上げ開始工程と、
前記ビーム立上げ開始工程の後、前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作完了を個別に検出するビーム立上げ操作完了検出工程と、
前記ビーム立上げ操作完了検出工程の結果に基づいて、もっともビーム立上げ操作の完了が遅いとされるイオンビーム供給装置を特定するイオンビーム供給装置特定工程と、
前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームによってガラス基板上に形成されるイオン注入量分布を重ね合わせた際、この重ね合わせによる注入量分布が予め決められた所定の分布となるように、前記イオンビーム供給装置特定工程で特定されたイオンビーム供給装置に備えられた前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて当該イオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームのビーム電流密度分布の調整を行うビーム電流密度分布調整工程とを経てガラス基板へのイオン注入処理がなされることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記ビーム立上げ操作完了検出工程において、各イオンビーム供給装置の運転パラメーターが所定範囲外であり、かつ、所定時間が経過している場合には、前記ビーム立上げ操作完了検出工程を中止することを特徴とする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記イオン注入方法は、前記ビーム立上げ操作時に、前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布が第1の許容範囲内にあるかどうかを確認する工程と、
前記ビーム電流密度分布が前記第1の許容範囲内にない場合には、前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて、当該範囲内に入るように前記ビーム電流密度分布の調整を行う工程と、をさらに有しているとともに、
前記ビーム電流密度分布調整工程でビーム電流密度分布の調整が行われる際に用いられる許容範囲を第2の許容範囲とすると、前記第1の許容範囲は前記第2の許容範囲よりも広い範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン注入方法。
【請求項4】
個別にリボン状イオンビームを供給し、当該リボン状イオンビームの電流密度分布を調整するビーム電流密度分布調整手段を有する複数のイオンビーム供給装置を備えたオン注入装置であって、
前記イオン注入装置は、(1)前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作を開始させるビーム立上げ開始工程と、(2)前記ビーム立上げ開始工程の後、前記複数のイオンビーム供給装置のビーム立上げ操作完了を個別に検出するビーム立上げ操作完了検出工程と、(3)前記ビーム立上げ操作完了検出工程の結果に基づいて、もっともビーム立上げ操作の完了が遅いとされるイオンビーム供給装置を特定するイオンビーム供給装置特定工程と、(4)前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームによってガラス基板上に形成されるイオン注入量分布を重ね合わせた際、この重ね合わせによる注入量分布が予め決められた所定の分布となるように、前記イオンビーム供給装置特定工程で特定されたイオンビーム供給装置に備えられた前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて当該イオンビーム供給装置より供給されるリボン状イオンビームのビーム電流密度分布の調整を行うビーム電流密度分布調整工程とを行う制御装置を備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ビーム立上げ操作完了検出工程において、各イオンビーム供給装置の運転パラメーターが所定範囲外であり、かつ、所定時間が経過している場合には、前記ビーム立上げ操作完了検出工程の中止を行うことを特徴とする請求項4記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ビーム立上げ操作時に、前記複数のイオンビーム供給装置より供給されるイオンビームのビーム電流密度分布が第1の許容範囲内にあるかどうかを確認する工程と、
前記ビーム電流密度分布が前記第1の許容範囲内にない場合には、前記ビーム電流密度分布調整手段を用いて、当該範囲内に入るように前記ビーム電流密度分布の調整を行う工程と、を行う機能を有しているとともに、
前記ビーム電流密度分布調整工程でビーム電流密度分布の調整が行われる際に用いられる許容範囲を第2の許容範囲とすると、前記第1の許容範囲は前記第2の許容範囲よりも広い範囲であることを特徴とする請求項4または5に記載のイオン注入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59448(P2012−59448A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199938(P2010−199938)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】