イオン液体類似構造を有するポルフィセン化合物および光酸化触媒
【課題】 均一系で使用することができ、かつ、再利用の容易なイオン液体類似構造を有するポルフィセン化合物およびこの化合物を含む光酸化触媒を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるポルフィセン化合物、およびこれを含む光酸化触媒。
{式中、R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
【解決手段】式(1)で表されるポルフィセン化合物、およびこれを含む光酸化触媒。
{式中、R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィセン化合物および光酸化触媒に関し、さらに詳述すると、4級窒素原子を有するカチオンとアニオンとからなるイオン液体類似構造をその分子内に有するポルフィセン化合物およびこの化合物を含む光酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィリンの金属錯体は、ヘムタンパク質の構成要素として生体内で重要な作用を担うとともに、ポルフィリン核に種々の置換基を有する誘導体が比較的容易に合成できるので、生化学における反応過程の追及や有機合成化学の触媒などとして広く利用されている。
ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンは、1986年ドイツのE.Vogelらによって合成された人工的な環状テトラピロール化合物であり、この化合物は、ポルフィリン金属錯体と比べて、その中心金属が強いルイス酸性と反応活性種に対する耐久性とを示すことから良好な触媒として期待されている。
【0003】
また、ポルフィセンは、ポルフィリンに比べてより長波長側に強い光吸収帯を持つことから、可視光の有効利用という観点で様々な研究がなされており、例えば、ポルフィセンを光増感剤として使用することで、高い酸化力を有する一重項酸素を発生させ得ることが報告されている(非特許文献1〜2参照)。
【0004】
このように光増感剤として有効なポルフィセンを再利用するために、シリカゲルや高分子に担持させた触媒が報告されている(特許文献1、非特許文献3参照)。
しかし、これらの触媒は、光の散乱が起こり易い不均一状態を有しているため、シリカゲルや高分子上に担持された光増感剤に効果的に光照射をすることができないという問題があった。
また、反応物は、溶液中に溶解した状態で存在するため、上記不均一系触媒との反応性が低いという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/111501号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemistry Letters, 37, 264−265 (2008)
【非特許文献2】Chemical Communication, 2882−2884 (2008)
【非特許文献3】Tetrahedron Letters, 49, 6198−6201 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、均一系で使用することができ、かつ、再利用の容易なイオン液体類似構造を有するポルフィセン化合物およびこの化合物を含む光酸化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポルフィセン化合物に、スルホニルアミド結合を介して4級窒素原子を含むカチオンとアニオンとからなるイオン液体類似構造を導入した化合物が、イオン液体に高い溶解性を示すため、均一系で使用できるのみならず、反応後に反応物から容易に分離・回収でき、かつ、再利用が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン化合物、
【化1】
{式中、R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、フェニル基(このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基〔このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
2. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、またはN−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)を表し、前記R5、R6、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、またはフェニル基である1のポルフィセン化合物、
3. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、N−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)であり、前記R5、R6、R11、およびR12が、水素原子である1のポルフィセン化合物、
4. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)3−AX(Aは、N−メチルイミダゾリウムカチオンを、Xは、PF6-を表す。)である1のポルフィセン化合物、
5. 1〜4のいずれかのポルフィセン化合物を含む光酸化触媒
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、均一系の光酸化触媒として使用可能であるとともに、使用後に容易に反応物から分離・回収することができ、かつ、再利用することができるポルフィセン化合物を提供できる。
すなわち、本発明のポルフィセン化合物は、イオン液体に高い溶解性を示すため、イオン液体を溶媒として用いることで均一系での光酸化反応が可能となるとともに、イオン液体溶液中で安定に溶解担持されているため、そのまま繰り返し使用が可能となる。
このポルフィセン化合物は、可視光領域に強い吸収を持つため、相当するポルフィリン錯体より反応効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンのUV−visスペクトルを示す図である。
【図2】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンのUV−visスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。
【図7】実施例2における一重項酸素トラップ試験時のESR測定結果を示す図である。
【図8】実施例3における1回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図9】実施例3における2回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図10】実施例3における3回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図11】実施例4における光増感酸化反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図12】実施例5における発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図13】実施例6における1,5−ジヒドロキシナフタレン光酸化反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図14】実施例6における5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成の経時変化を示す図である。
【図15】実施例7における5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成の経時変化を示す図である。
【図16】実施例8における蛍光量子収率測定結果を示す図である。
【図17】実施例8における蛍光寿命スペクトルを示す図である。
【図18】実施例8における時間分解過渡吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポルフィセン化合物は、上記式(1)で表され、R1〜R12の少なくとも1つの置換基が、−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)であり、スルホニルアミド結合で連結されたイオン液体類似構造部位を有するものである。
ここで、イオン液体(ionic liquids)とは、有機カチオン種とアニオン種とからなる塩であり、常温・常圧において液体である溶融塩である。特徴としては、(1)蒸気圧がほとんどない、(2)イオン性であるが低粘性、(3)耐熱性であり液体温度範囲が広い、(4)イオン伝導性が高い(5)カチオン部とアニオン部の組み合わせで溶解性を制御できる等が挙げられ、従来用いられている有機溶剤に代わる溶剤として期待されている。
【0013】
本発明において、4級窒素原子を含むカチオンAとしては、特に限定されるものではなく、従来イオン液体を構成するものとして公知である各種カチオンが挙げられる。
その具体例としては、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、N−アルキルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルジメチルプロピルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、エチルジメチル(5−ジイソプロピルアミノ−3−オキサペンチル)アンモニウム、エチルジメチルシアノメチルアンモニウム、N−メチルピロリジニウム、N−ブチルピロリジニウム、N−オクチルピロリジニウム、N−ヘキシルピロリジニウム、N−メチルモルホリニウム等が挙げられる。
【0014】
ピリジニウムカチオンとしては、例えば、ピリジニウム、3−メチルピリジニウム、4−メチルピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジニウム、3−ヒドロキシメチルピリジニウム等が挙げられる。
N−アルキルイミダゾリウムカチオンとしては、N−メチルイミダゾリウム、N−エチルイミダゾリウム、N−n−プロピルイミダゾリウム、N−n−ブチルイミダゾリウム、N−n−ヘキシルイミダゾリウム、N−n−オクチルイミダゾリウム、N−ベンジルイミダゾリウム、N−シアノメチルイミダゾリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、N−アルキルイミダゾリウムカチオンが好ましく、特に、N−メチルイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0015】
一方、カウンターアニオンXとしても特に限定されるものではなく、例えば、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、パーフルオロアルカンスルホナート(CF3SO3-、C4F9SO3-等)、CH3C6H4SO3-、CF3COO-、CH3SO3-、(C2H5)2PO4-、(CH3)2PO4-、B(C2O4)2-、C5H11O2SO4-、HSO4-、CH3SO4-、C2H5SO4-、C4H9SO4-、C6H13SO4-、C8H17SO4-、SCN-、C(CN3)3-、N(CN)2-、N(SO2CF3)2-、(C2F5)3PF3-等が挙げられ、これらの中でも、本発明においては、BF4-、PF6-、パーフルオロアルカンスルホナートが好ましく、特にPF6-が好ましい。
また、上記nは、1〜20の整数であれば特に制限はないが、2〜5が好ましく、特に3が好適である。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記各置換基で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシルメチル基、カルボキシルエチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
本発明において、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基が好ましく、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基がより好ましく、水素原子、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基が、より一層好ましい。
一方、R5、R6、R11、およびR12としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0018】
本発明のポルフィセン化合物は、例えばAngew. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 1600−1604 (1993)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 928−931 (1987)、J. Phys. Chem.,98,11885−11891 (1994)、J. Biomed. Sci., 10, 418−429 (2003)等に記載の方法に準じて合成できる。
例えば、下式(4)および/または式(5)で示される化合物を、無水テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、亜鉛、塩化銅(I)等の金属および/または金属塩、ピリジン等のアミン化合物、四塩化チタンから発生させた低原子価チタンまたは三塩化チタン等のチタン化合物等を必要に応じて用いて反応させることにより、式(3)で示されるポルフィセンが得られる。
次に、式(3)で示されるポルフィセンを、例えば、非プロトン性溶媒中、クロロスルホン酸と反応させることにより、スルホニルクロライド基を有するポルフィセンを得ることができる。このポルフィセンとアミノ基含有ハロゲン化アルキルとを反応させることにより、ポルフィセンを置換基として有するハロゲン化アルキルが得られる。このハロゲン化アルキルを、上述した各種カチオンを与えるような種々のアミンと反応させることにより、本発明のポルフィセン化合物を得ることができる。
【0019】
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に上記と同じ。)
【実施例】
【0020】
以下、参考例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、各物性は下記の装置によりそれぞれ測定した。
[1]NMR
AVANCE 500型 核磁気共鳴装置(ブルカー(株)製)
[2]MALDI−TOF−MS
Bruker Daltonics Auto Flex 質量分析装置(ブルカー・ダルトニクス(株)製)
[3]電子スペクトル(UV−vis)
U−3000型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)
U−3300型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)(実施例6)
[4]ESR
EMX8/2.7型電子スピン共鳴装置(ブルカー(株)製)
[5]FL
HORIBA Fuluolog−3型蛍光光度計(堀場(株)製)
[6]蛍光量子収率
絶対量子収率測定装置C9920(浜松ホトニクス(株)製)
[7]三重項(蛍光)寿命
蛍光寿命測定装置C4780(浜松ホトニクス(株)製)
[8]三重項寿命
時間分解分光測定装置TSP−1000M((株)ユニソク製)
【0021】
[1]β−AlkylHMTTFの合成
[参考例1]スルホンアミドブロモプロピルポルフィセン(2)の合成
【化3】
【0022】
ポルフィセン(1)27mg(4.7×10-5mol)および1−ブロモプロピルアミン臭化水素塩200mg(9.1×10-4mol)を、乾燥テトラヒドロフラン20mL(7.6×10-2mol)に溶解させた後、乾燥トリエチルアミン1mL(7.2×10-3mol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(関東化学(株)製シリカゲル60N、展開溶媒:塩化メチレン)により精製し、スルホンアミドブロモプロピルポルフィセン(2)(25mg、収率79%)を得た。この化合物(2)は、UV−visスペクトル(図1)、1H−NMR(図2および表1)、およびMALDI−MS(図3)により同定した。
なお、ポルフィセン(1)は、文献J. Biomed, Sci. 2003, 10, 418.記載の方法により合成した。
【0023】
【化4】
【0024】
【表1】
【0025】
[実施例1]イミダゾリウムポルフィセン(3)の合成
【化5】
【0026】
参考例1で得られたポルフィセン(2)35mg(5.2×10-5mol)および1−メチルイミダゾール144mg(1.8×10-3mol)を、エタノール30mLに溶解し、48時間加熱還流した。反応終了後、アンモニウムヘキサフルオロホスフェート100mg(6.1×10-3mol)を加え、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(関東化学(株)製シリカゲル60N、展開溶媒:塩化メチレン:メタノール=95:5v/v)により精製し、イミダゾリウムポルフィセン(3)(18mg、収率41%)を得た。この化合物(3)は、UV−visスペクトル(図4)、1H−NMR(図5および表2)およびMALDI−MS(図6)により同定した。
【0027】
【化6】
【0028】
【表2】
【0029】
[実施例2]光増感一重項酸素生成反応
実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(5.2×10-5M)を調製した。その一方で、一重項酸素トラップ剤である2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンの水溶液(3mM)を別途調製した。
調製したイオン液体溶液1mLと水溶液3mLとを混ぜ合わせ、二層に分離した溶液を撹拌しながら可視光照射(500Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター、以下同様)した後、水相を0.1mLサンプリングし、ESR測定を行った。その結果を図7に示す。
図7に示されるように、一重項酸素をトラップしたESRシグナルが得られていることがわかる。
【0030】
[実施例3]光増感反応
実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(5.2×10-5M)を調製した。その一方で、2,4,6−トリクロロフェノールの水溶液(4mM,pH10.6)を別途調製した。
調製したイオン液体溶液1mLと水溶液3mLとを混ぜ合わせ、二層に分離した溶液を撹拌しながら可視光照射した後、水相をサンプリングし、図8に示すUV−visスペクトル変化から、310nm付近に吸収極大波長を有する2,4,6−トリクロロフェノールの消失を確認した。
その後、イオン液体相を回収し、新たに2,4,6−トリクロロフェノールの水溶液(4mM,pH10.6)3mLを回収イオン液体溶液に加え、同様の光反応を行った。本操作を2回繰り返し、計3回のイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液のリサイクル光増感反応を行った。2回目および3回目のUV−visスペクトル変化を図9および図10に示す。
【0031】
[比較例1]ブランク光増感反応
イオン液体相にイミダゾリウムポルフィセン(3)を溶解させない以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。水相をサンプリングし、UV−visスペクトルから、2,4,6−トリクロロフェノールがイミダゾリウムポルフィセン(3)なしでは分解しないことを確認した。
【0032】
[実施例4]光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(2.1×10-6M)を調製し、さらにこの中に1,5−ジヒドロキシナフタレン(3.8×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液を撹拌しながら可視光照射した後、反応溶液をサンプリングし、図11に示すUV−visスペクトル変化から、427nm付近に吸収極大波長を有する5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成を確認した。
【0033】
[実施例5]一重項酸素の検出
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)を、600nmにおける吸光度が0.1になるように調製し、空気下、室温で600nmの波長で励起し、発光スペクトルを測定した。その結果を図12に示す。図12に示す発光スペクトルから、一重項酸素に由来する1270nmの発光が確認できた。
【0034】
[実施例6]繰り返し光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(関東化学(株)製)(1.0×10-6M)5mLを調製し、これに1,5−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク(株)製)(3.1×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液に、撹拌しながら可視光照射(200Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター)し、反応溶液をサンプリングしてMeOHに希釈し、図13に示されるUV−visスペクトル変化から、427nm付近に吸収極大波長を有する、下記式で示される5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(Juglone)の生成を確認した。
反応終了後、トルエン3mLを加えて5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの抽出操作を6回繰り返した。イオン液体相を減圧乾燥後、再び1,5−ジヒドロキシナフタレンを加えて(3.1×10-3M)、撹拌しながら可視光照射して光酸化反応を行った。同様の操作を繰り返し、計3回の光酸化反応を行った。反応の経時変化を図14に示す。
【0035】
【化7】
【0036】
[実施例7]その他のイオン液体を溶媒とする光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)(関東化学(株)製)(1.0×10-6M)5mLを調製し、これに1,5−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク(株)製)(3.3×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液に、撹拌しながら可視光照射(200Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター)し、反応溶液をサンプリングしてMeOHに希釈し、そのUV−visスペクトル変化から、実施例6と同様、427nm付近に吸収極大波長を有する5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(Juglone)の生成を確認した。
反応終了後、酢酸エチル3mLを加えて5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの抽出操作を6回繰り返した。イオン液体相を減圧乾燥後、再び1,5−ジヒドロキシナフタレンを加えて(3.3×10-3M)、撹拌しながら可視光照射し、光酸化反応を行った。同様の操作を繰り返し、計3回の光酸化反応を行った。反応の経時変化を図15に示す。
【0037】
[実施例8]イオン液体タグポルフィセンの光物性値評価
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(関東化学(株)製)溶液5mLおよびアセトニトリル(ナカライテスク社製)溶液5mLをそれぞれ調製した。吸光度は0.2程度であった。
測定セルに乾燥窒素ガスを約15分間吹き込んで脱気した後、蛍光量子収率、蛍光寿命スペクトル、時間分解過渡吸収スペクトルについて、分光測定を行った。蛍光量子収率測定図を図16に、蛍光寿命スペクトルを図17に、時間分解過渡吸収スペクトルを図18に示す。また光物性値を表3に示す。
【0038】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィセン化合物および光酸化触媒に関し、さらに詳述すると、4級窒素原子を有するカチオンとアニオンとからなるイオン液体類似構造をその分子内に有するポルフィセン化合物およびこの化合物を含む光酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィリンの金属錯体は、ヘムタンパク質の構成要素として生体内で重要な作用を担うとともに、ポルフィリン核に種々の置換基を有する誘導体が比較的容易に合成できるので、生化学における反応過程の追及や有機合成化学の触媒などとして広く利用されている。
ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンは、1986年ドイツのE.Vogelらによって合成された人工的な環状テトラピロール化合物であり、この化合物は、ポルフィリン金属錯体と比べて、その中心金属が強いルイス酸性と反応活性種に対する耐久性とを示すことから良好な触媒として期待されている。
【0003】
また、ポルフィセンは、ポルフィリンに比べてより長波長側に強い光吸収帯を持つことから、可視光の有効利用という観点で様々な研究がなされており、例えば、ポルフィセンを光増感剤として使用することで、高い酸化力を有する一重項酸素を発生させ得ることが報告されている(非特許文献1〜2参照)。
【0004】
このように光増感剤として有効なポルフィセンを再利用するために、シリカゲルや高分子に担持させた触媒が報告されている(特許文献1、非特許文献3参照)。
しかし、これらの触媒は、光の散乱が起こり易い不均一状態を有しているため、シリカゲルや高分子上に担持された光増感剤に効果的に光照射をすることができないという問題があった。
また、反応物は、溶液中に溶解した状態で存在するため、上記不均一系触媒との反応性が低いという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/111501号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemistry Letters, 37, 264−265 (2008)
【非特許文献2】Chemical Communication, 2882−2884 (2008)
【非特許文献3】Tetrahedron Letters, 49, 6198−6201 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、均一系で使用することができ、かつ、再利用の容易なイオン液体類似構造を有するポルフィセン化合物およびこの化合物を含む光酸化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポルフィセン化合物に、スルホニルアミド結合を介して4級窒素原子を含むカチオンとアニオンとからなるイオン液体類似構造を導入した化合物が、イオン液体に高い溶解性を示すため、均一系で使用できるのみならず、反応後に反応物から容易に分離・回収でき、かつ、再利用が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン化合物、
【化1】
{式中、R1〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、フェニル基(このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基〔このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
2. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、またはN−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)を表し、前記R5、R6、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、またはフェニル基である1のポルフィセン化合物、
3. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、N−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)であり、前記R5、R6、R11、およびR12が、水素原子である1のポルフィセン化合物、
4. 前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)3−AX(Aは、N−メチルイミダゾリウムカチオンを、Xは、PF6-を表す。)である1のポルフィセン化合物、
5. 1〜4のいずれかのポルフィセン化合物を含む光酸化触媒
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、均一系の光酸化触媒として使用可能であるとともに、使用後に容易に反応物から分離・回収することができ、かつ、再利用することができるポルフィセン化合物を提供できる。
すなわち、本発明のポルフィセン化合物は、イオン液体に高い溶解性を示すため、イオン液体を溶媒として用いることで均一系での光酸化反応が可能となるとともに、イオン液体溶液中で安定に溶解担持されているため、そのまま繰り返し使用が可能となる。
このポルフィセン化合物は、可視光領域に強い吸収を持つため、相当するポルフィリン錯体より反応効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンのUV−visスペクトルを示す図である。
【図2】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】参考例1で得られたスルホンアミドブロモプロピルポルフィセンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンのUV−visスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。
【図7】実施例2における一重項酸素トラップ試験時のESR測定結果を示す図である。
【図8】実施例3における1回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図9】実施例3における2回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図10】実施例3における3回目の光反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図11】実施例4における光増感酸化反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図12】実施例5における発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図13】実施例6における1,5−ジヒドロキシナフタレン光酸化反応時のUV−visスペクトル変化を示す図である。
【図14】実施例6における5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成の経時変化を示す図である。
【図15】実施例7における5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成の経時変化を示す図である。
【図16】実施例8における蛍光量子収率測定結果を示す図である。
【図17】実施例8における蛍光寿命スペクトルを示す図である。
【図18】実施例8における時間分解過渡吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポルフィセン化合物は、上記式(1)で表され、R1〜R12の少なくとも1つの置換基が、−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)であり、スルホニルアミド結合で連結されたイオン液体類似構造部位を有するものである。
ここで、イオン液体(ionic liquids)とは、有機カチオン種とアニオン種とからなる塩であり、常温・常圧において液体である溶融塩である。特徴としては、(1)蒸気圧がほとんどない、(2)イオン性であるが低粘性、(3)耐熱性であり液体温度範囲が広い、(4)イオン伝導性が高い(5)カチオン部とアニオン部の組み合わせで溶解性を制御できる等が挙げられ、従来用いられている有機溶剤に代わる溶剤として期待されている。
【0013】
本発明において、4級窒素原子を含むカチオンAとしては、特に限定されるものではなく、従来イオン液体を構成するものとして公知である各種カチオンが挙げられる。
その具体例としては、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、N−アルキルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルジメチルプロピルアンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、エチルジメチル(5−ジイソプロピルアミノ−3−オキサペンチル)アンモニウム、エチルジメチルシアノメチルアンモニウム、N−メチルピロリジニウム、N−ブチルピロリジニウム、N−オクチルピロリジニウム、N−ヘキシルピロリジニウム、N−メチルモルホリニウム等が挙げられる。
【0014】
ピリジニウムカチオンとしては、例えば、ピリジニウム、3−メチルピリジニウム、4−メチルピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジニウム、3−ヒドロキシメチルピリジニウム等が挙げられる。
N−アルキルイミダゾリウムカチオンとしては、N−メチルイミダゾリウム、N−エチルイミダゾリウム、N−n−プロピルイミダゾリウム、N−n−ブチルイミダゾリウム、N−n−ヘキシルイミダゾリウム、N−n−オクチルイミダゾリウム、N−ベンジルイミダゾリウム、N−シアノメチルイミダゾリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、N−アルキルイミダゾリウムカチオンが好ましく、特に、N−メチルイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0015】
一方、カウンターアニオンXとしても特に限定されるものではなく、例えば、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、パーフルオロアルカンスルホナート(CF3SO3-、C4F9SO3-等)、CH3C6H4SO3-、CF3COO-、CH3SO3-、(C2H5)2PO4-、(CH3)2PO4-、B(C2O4)2-、C5H11O2SO4-、HSO4-、CH3SO4-、C2H5SO4-、C4H9SO4-、C6H13SO4-、C8H17SO4-、SCN-、C(CN3)3-、N(CN)2-、N(SO2CF3)2-、(C2F5)3PF3-等が挙げられ、これらの中でも、本発明においては、BF4-、PF6-、パーフルオロアルカンスルホナートが好ましく、特にPF6-が好ましい。
また、上記nは、1〜20の整数であれば特に制限はないが、2〜5が好ましく、特に3が好適である。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記各置換基で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシルメチル基、カルボキシルエチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
本発明において、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基が好ましく、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基がより好ましく、水素原子、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基が、より一層好ましい。
一方、R5、R6、R11、およびR12としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0018】
本発明のポルフィセン化合物は、例えばAngew. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 1600−1604 (1993)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 928−931 (1987)、J. Phys. Chem.,98,11885−11891 (1994)、J. Biomed. Sci., 10, 418−429 (2003)等に記載の方法に準じて合成できる。
例えば、下式(4)および/または式(5)で示される化合物を、無水テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、亜鉛、塩化銅(I)等の金属および/または金属塩、ピリジン等のアミン化合物、四塩化チタンから発生させた低原子価チタンまたは三塩化チタン等のチタン化合物等を必要に応じて用いて反応させることにより、式(3)で示されるポルフィセンが得られる。
次に、式(3)で示されるポルフィセンを、例えば、非プロトン性溶媒中、クロロスルホン酸と反応させることにより、スルホニルクロライド基を有するポルフィセンを得ることができる。このポルフィセンとアミノ基含有ハロゲン化アルキルとを反応させることにより、ポルフィセンを置換基として有するハロゲン化アルキルが得られる。このハロゲン化アルキルを、上述した各種カチオンを与えるような種々のアミンと反応させることにより、本発明のポルフィセン化合物を得ることができる。
【0019】
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に上記と同じ。)
【実施例】
【0020】
以下、参考例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、各物性は下記の装置によりそれぞれ測定した。
[1]NMR
AVANCE 500型 核磁気共鳴装置(ブルカー(株)製)
[2]MALDI−TOF−MS
Bruker Daltonics Auto Flex 質量分析装置(ブルカー・ダルトニクス(株)製)
[3]電子スペクトル(UV−vis)
U−3000型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)
U−3300型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)(実施例6)
[4]ESR
EMX8/2.7型電子スピン共鳴装置(ブルカー(株)製)
[5]FL
HORIBA Fuluolog−3型蛍光光度計(堀場(株)製)
[6]蛍光量子収率
絶対量子収率測定装置C9920(浜松ホトニクス(株)製)
[7]三重項(蛍光)寿命
蛍光寿命測定装置C4780(浜松ホトニクス(株)製)
[8]三重項寿命
時間分解分光測定装置TSP−1000M((株)ユニソク製)
【0021】
[1]β−AlkylHMTTFの合成
[参考例1]スルホンアミドブロモプロピルポルフィセン(2)の合成
【化3】
【0022】
ポルフィセン(1)27mg(4.7×10-5mol)および1−ブロモプロピルアミン臭化水素塩200mg(9.1×10-4mol)を、乾燥テトラヒドロフラン20mL(7.6×10-2mol)に溶解させた後、乾燥トリエチルアミン1mL(7.2×10-3mol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(関東化学(株)製シリカゲル60N、展開溶媒:塩化メチレン)により精製し、スルホンアミドブロモプロピルポルフィセン(2)(25mg、収率79%)を得た。この化合物(2)は、UV−visスペクトル(図1)、1H−NMR(図2および表1)、およびMALDI−MS(図3)により同定した。
なお、ポルフィセン(1)は、文献J. Biomed, Sci. 2003, 10, 418.記載の方法により合成した。
【0023】
【化4】
【0024】
【表1】
【0025】
[実施例1]イミダゾリウムポルフィセン(3)の合成
【化5】
【0026】
参考例1で得られたポルフィセン(2)35mg(5.2×10-5mol)および1−メチルイミダゾール144mg(1.8×10-3mol)を、エタノール30mLに溶解し、48時間加熱還流した。反応終了後、アンモニウムヘキサフルオロホスフェート100mg(6.1×10-3mol)を加え、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(関東化学(株)製シリカゲル60N、展開溶媒:塩化メチレン:メタノール=95:5v/v)により精製し、イミダゾリウムポルフィセン(3)(18mg、収率41%)を得た。この化合物(3)は、UV−visスペクトル(図4)、1H−NMR(図5および表2)およびMALDI−MS(図6)により同定した。
【0027】
【化6】
【0028】
【表2】
【0029】
[実施例2]光増感一重項酸素生成反応
実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(5.2×10-5M)を調製した。その一方で、一重項酸素トラップ剤である2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンの水溶液(3mM)を別途調製した。
調製したイオン液体溶液1mLと水溶液3mLとを混ぜ合わせ、二層に分離した溶液を撹拌しながら可視光照射(500Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター、以下同様)した後、水相を0.1mLサンプリングし、ESR測定を行った。その結果を図7に示す。
図7に示されるように、一重項酸素をトラップしたESRシグナルが得られていることがわかる。
【0030】
[実施例3]光増感反応
実施例1で得られたイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(5.2×10-5M)を調製した。その一方で、2,4,6−トリクロロフェノールの水溶液(4mM,pH10.6)を別途調製した。
調製したイオン液体溶液1mLと水溶液3mLとを混ぜ合わせ、二層に分離した溶液を撹拌しながら可視光照射した後、水相をサンプリングし、図8に示すUV−visスペクトル変化から、310nm付近に吸収極大波長を有する2,4,6−トリクロロフェノールの消失を確認した。
その後、イオン液体相を回収し、新たに2,4,6−トリクロロフェノールの水溶液(4mM,pH10.6)3mLを回収イオン液体溶液に加え、同様の光反応を行った。本操作を2回繰り返し、計3回のイミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液のリサイクル光増感反応を行った。2回目および3回目のUV−visスペクトル変化を図9および図10に示す。
【0031】
[比較例1]ブランク光増感反応
イオン液体相にイミダゾリウムポルフィセン(3)を溶解させない以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。水相をサンプリングし、UV−visスペクトルから、2,4,6−トリクロロフェノールがイミダゾリウムポルフィセン(3)なしでは分解しないことを確認した。
【0032】
[実施例4]光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(2.1×10-6M)を調製し、さらにこの中に1,5−ジヒドロキシナフタレン(3.8×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液を撹拌しながら可視光照射した後、反応溶液をサンプリングし、図11に示すUV−visスペクトル変化から、427nm付近に吸収極大波長を有する5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの生成を確認した。
【0033】
[実施例5]一重項酸素の検出
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)を、600nmにおける吸光度が0.1になるように調製し、空気下、室温で600nmの波長で励起し、発光スペクトルを測定した。その結果を図12に示す。図12に示す発光スペクトルから、一重項酸素に由来する1270nmの発光が確認できた。
【0034】
[実施例6]繰り返し光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(関東化学(株)製)(1.0×10-6M)5mLを調製し、これに1,5−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク(株)製)(3.1×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液に、撹拌しながら可視光照射(200Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター)し、反応溶液をサンプリングしてMeOHに希釈し、図13に示されるUV−visスペクトル変化から、427nm付近に吸収極大波長を有する、下記式で示される5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(Juglone)の生成を確認した。
反応終了後、トルエン3mLを加えて5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの抽出操作を6回繰り返した。イオン液体相を減圧乾燥後、再び1,5−ジヒドロキシナフタレンを加えて(3.1×10-3M)、撹拌しながら可視光照射して光酸化反応を行った。同様の操作を繰り返し、計3回の光酸化反応を行った。反応の経時変化を図14に示す。
【0035】
【化7】
【0036】
[実施例7]その他のイオン液体を溶媒とする光増感酸化反応
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)(関東化学(株)製)(1.0×10-6M)5mLを調製し、これに1,5−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク(株)製)(3.3×10-3M)を溶解させた。
調製したイオン液体溶液に、撹拌しながら可視光照射(200Wタングステンランプ、カットオフフィルター:TOSHIBA Y−46フィルター)し、反応溶液をサンプリングしてMeOHに希釈し、そのUV−visスペクトル変化から、実施例6と同様、427nm付近に吸収極大波長を有する5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(Juglone)の生成を確認した。
反応終了後、酢酸エチル3mLを加えて5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの抽出操作を6回繰り返した。イオン液体相を減圧乾燥後、再び1,5−ジヒドロキシナフタレンを加えて(3.3×10-3M)、撹拌しながら可視光照射し、光酸化反応を行った。同様の操作を繰り返し、計3回の光酸化反応を行った。反応の経時変化を図15に示す。
【0037】
[実施例8]イオン液体タグポルフィセンの光物性値評価
イミダゾリウムポルフィセン(3)のイオン液体溶液(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)(関東化学(株)製)溶液5mLおよびアセトニトリル(ナカライテスク社製)溶液5mLをそれぞれ調製した。吸光度は0.2程度であった。
測定セルに乾燥窒素ガスを約15分間吹き込んで脱気した後、蛍光量子収率、蛍光寿命スペクトル、時間分解過渡吸収スペクトルについて、分光測定を行った。蛍光量子収率測定図を図16に、蛍光寿命スペクトルを図17に、時間分解過渡吸収スペクトルを図18に示す。また光物性値を表3に示す。
【0038】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン化合物。
【化1】
{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、フェニル基(このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基〔このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
【請求項2】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、またはN−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)を表し、
前記R5、R6、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、またはフェニル基である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、N−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)であり、
前記R5、R6、R11、およびR12が、水素原子である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項4】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)3−AX(Aは、N−メチルイミダゾリウムカチオンを、Xは、PF6-を表す。)である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポルフィセン化合物を含む光酸化触媒。
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とするポルフィセン化合物。
【化1】
{式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基〔このアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、フェニル基(このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〕、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基〔このフェニル基は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、または炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〕、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(nは、1〜20の整数であり、Aは、4級窒素原子を含むカチオンを、Xは、カウンターアニオンを表す。)を表す。ただし、R1〜R12の少なくとも1つは、前記−SO2−NH−(CH2)n−AXである(n、AおよびXは前記と同じ意味を表す)。}
【請求項2】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、アニソール基、トリル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、またはN−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)を表し、
前記R5、R6、R11、およびR12が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、またはフェニル基である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、スルホン基、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、メトキシ基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)n−AX(Aは、N−アルキルイミダゾリウムカチオンを表し、nおよびXは、前記と同じ意味を表す。)であり、
前記R5、R6、R11、およびR12が、水素原子である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項4】
前記R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基、またはペンタフルオロフェニル基、または−SO2−NH−(CH2)3−AX(Aは、N−メチルイミダゾリウムカチオンを、Xは、PF6-を表す。)である請求項1記載のポルフィセン化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポルフィセン化合物を含む光酸化触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【公開番号】特開2010−229127(P2010−229127A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41739(P2010−41739)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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