説明

イカの紐状切断装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイカの胴部をソウメン風の紐状に切断加工する切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】生イカの胴部を切り開き、これを糸状、紐状に細断する装置として特開平2−131896号公報が提案されている。この細断装置は、薄剥ぎされたイカ等の薄肉片を搬送する2台の搬送ベルトの連設間に、表面に硬質樹脂層を有する硬質樹脂ロールを配設し、その硬質樹脂ロールの上方位置に複数枚の円形薄刃を並設したカッタを該円形薄刃の先端を前記ロールの表面に接触させて配置したものである。そして、上記の構成によりイカ等の薄肉片は搬送ベルトによって回転円形薄刃と硬質樹脂ロールの配設位置まで搬送され、イカ等の薄肉片は硬質樹脂ロールに支持された状態で複数の回転円形薄刃によって回転円形薄刃の数に相当する細断が行われ、イカそうめんとなるというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来装置はイカ等の薄肉片を搬送ベルトに載せて回転円形薄刃の位置へそのまま搬送供給し、硬質樹脂ロール上の定位置で回転する円形薄刃によって細断するが、硬質樹脂ロール上の薄肉片は何等押さえられていないため回転円形薄刃による細断箇所で左右幅方向に移動しやすく、そのために薄肉片が一定の幅で直線的に細断されにくく、蛇行して細断されやすいという問題点を有する。又、上記の細断は回転円形薄刃を硬質樹脂ロールに接触させる所謂「押し切りタイプ」であるため、切断刃が薄肉刃の場合は該切断刃が変形しやすく、その変形を防止しようとすれば当然のことながら切断刃の板厚は厚くなり、その結果細いピッチの切断は不可能であるとともに、切断時の抵抗も大きく、従って短時間に大量を切断加工することは出来ず、切断される肉片の食感も損なわれることになる。
【0004】又、イカの肉片を切断した場合「ヌル」が生じるが、この「ヌル」が付着したままでは食感が悪く、商品価値を低下させることになり、従ってこの「ヌル」をいかに効率良く取り除くか、又その「ヌル」が切断においてカッタに付着するため、切断加工条件が変化するといった問題点を有する。
【0005】本発明は上述した従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、平板状の被加工物をカッタ部に送り込むだけで全幅を全長に亘って紐状(細く、且つ長く)に高速で切断することができると共に、薄刃の使用が可能な切断装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した課題を達成するために本発明が講じた切断装置は、紐状切断の間隔でスリットを平行に形成したガイド板の上に、同様のスリットを形成したマスク板を該スリットを上下合致させ、且つ被加工物の厚さよりやや広い間隔をおいて水平に架設固定し、更に、マスク板の上面にはスリットの並設ピッチと同ピッチで円形のカッタを並設固定したロータリーカッタを、該カッタの刃先をマスク板及びガイド板のスリット内に嵌入させて配置すると共に、そのロータリーカッタはモータによって駆動回転自在としたことを特徴とする。
【0007】ロータリーカッタを構成する円形薄刃は厚さが0.1mm 〜0.5mm のステンレス薄板によって形成し、その円形薄刃を例えば1mm〜1.7mm ピッチで軸に並設固定して構成する。尚、円形薄刃の取り付け間隔はイカの食感を損なわないで、しかもそうめん風の感じを表現できるピッチに設定する。例えば、厚さが0.15mmの円形薄刃を1.7mm のピッチで並設固定したロータリーカッタが好適である。又、マスク板上面におけるロータリカッターの回転方向手前側位置には、スリット及びロータリーカッタに向けて水を散水する水供給手段を設ける。
【0008】上記の構成によれば、被加工物をガイド板とマスク板との間に差し込むとその被加工物はガイド板とマスク板とで平板状に保持され、ガイド板とマスク板とに形成したスリットに亘って嵌入する円形薄刃のカッタによって紐状に高速切断加工されると共に、該カッタの回転によって被加工物は自動的にカッタ側に引き込まれ、全長に亘って切断が行われ、切断された紐状の部材はガイド板とマスク板との間から繰り出される。即ち、カッタは被加工物以外には非接触状態で回転するため、薄刃の使用が可能となり、細い紐状の切断が可能となる。そして、上記の切断中は水供給手段によってマスク板上に水を流すことで、ロータリーカッタで被加工物のイカ肉を切断した時に生じる「ヌル」を常時洗い流し、それによってマスク板のスリットに「ヌル」が付着堆積するのを防止し、ロータリーカッタの加工条件を一定に保持できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づき説明する。切断装置は被加工物aを平板状に載承保持する平面形状が矩形状をしたステンレス製のガイド板1と、そのガイド板1上に載せられた被加工物aを平板状のまま切断方向へ案内するマスク板2と、そのガイド板1とマスク板2とで挟着保持された被加工物aを紐状に切断するロータリーカッタ3とで構成され、それらは台板4の上に配置されている。
【0010】ガイド板1及びマスク板2はステンレス製の平板にロータリーカッタ3を構成する円形薄刃の板厚よりも僅かに幅広のスリット101 、スリット201 が所定のピッチで平行に穿設されており、そのガイド板1が台板4に支持脚5で水平に架設固定され、そのガイド板1の上にマスク板2が所定の間隔、即ち被加工物aの厚さより僅かに広い間隔をおいて平行に架設固定されている。そして、そのマスク板2の固定は該マスク板2のスリット201 がガイド板1のスリット101 と上下一直線状に合致させて固定する。
【0011】ロータリーカッタ3は軸 301にステンレス製の薄板で形成された多数枚の円形薄刃 302が所定のピッチで並設固定されて構成されており、そうしたロータリーカッタ3は円形薄刃 302の刃先をマスク板2のスリット 201を貫通し、更にガイド板1のスリット 101に嵌入させて前記したマスク板2の上面に軸受6で水平に支持されると共に、回転駆動機構7で回転されるように構成されている。
【0012】ロータリーカッタ3の回転駆動機構7は、前記したマスク板2の上に載置固定したモータと、そのモータの回転を減速してロータリーカッタ3の軸 301に伝達する伝達機構とで構成され、それによりロータリーカッタ3はガイド板1及びマスク板2のスリットに嵌入した状態で被加工物以外には非接触で駆動回転(毎分1000回転前後)される。又、ロータリーカッタ3を構成する円形薄刃 302の外周の刃先部 303には周方向に一定のピッチで溝 304が形成され、それによって薄刃の反りが防止され、直線の状態が維持されるようになっている。尚、上記したロータリーカッタ3の回転駆動機構7はマスク板2の上に載置固定せずに、台板4又はガイド板1上に載置固定してもよい。
【0013】前記したマスク板2の上面におけるロータリカッター3の回転方向手前側位置には、マスク板2のスリット 201及びロータリーカッタ3に向けて水を散水する水供給手段8が設けられている。その水供給手段8は、該マスク板2に形成されるスリット 201の幅(ロータリーカッタ3の横幅)と略同じ幅を有し、その全長に亘って外周面に散水口 802を開設した散水管 801と、その散水管 801に水道から水を供給するホース(図示省略)とで構成され、散水管 801の散水口 802はマスク板2のスリット側に向けられ、イカ肉の切断によって発生する「ヌル」を洗い流し、しかもその水はロータリーカッタ3の回転によってスリット 201内に引き込まれ、スリット 201を洗い該スリット 201が詰まらないようにしてある。
【0014】上記した切断装置で被加工物を切断する操作は、平板状の被加工物aをガイド板1とマスク板2の間に差し込み、その被加工物aの先端がガイド板とマスク板に形成した所定ピッチのスリットに刃先が嵌入して駆動回転するロータリーカッタに接触すると、該カッタの回転によって被加工物aが紐状に切断されると共に、順次カッタの回転方向に引き込まれてその全長が直線的に紐状に切断されてガイド板1とマスク板2の先端側から排出される。そして、上記の切断処理中マスク板2の表面に水供給手段8の散水管 801によって水を流すことで、イカ肉の切断によって発生する「ヌル」を洗い流し、スリットが詰まるのを防止し、カッタに掛かる負荷を取り除き、切断条件を一定に保持する。
【0015】
【発明の効果】本発明におけるイカの紐状切断装置は請求項1の構成により、被加工物の全幅を全長に亘って紐状に直線的に高速切断することができる。しかも、ロータリーカッターの薄刃の刃先は被加工物以外のものに非接触であるため、カッタの寿命は長く、非常に経済的であると共に、刃の欠けや変形などがないので加工物への混入の危険がなく、安心して使用することができる。そして、上記のロータリーカッタは定位置で駆動回転するため、被加工物は自動的に引き込まれて切断された紐状物は自動的に排出されるので、短時間に大量を加工することができる作業性に富んだ切断装置を提供することができる。又、水供給手段が設けられていることで、切断によって生じる「ヌル」を洗い流し、マスク板のスリットに「ヌル」が詰まるのを防止することができる。それにより、カッタに余分な負荷が掛かるのを防止して切断加工条件を一定に保ち、長期に亘って安定した切断を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る切断装置を示す縦断面図である。
【図2】 図1の平面図である。
【図3】 図1の(3)−(3)線に沿える拡大断面図である。
【図4】 ロータリーカッタによる切断状態を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1…ガイド板 2…マスク板
3…ロータリーカッタ 101, 201…スリット
a…被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 紐状切断の間隔でスリットを平行に形成したガイド板の上に、同様のスリットを形成したマスク板を該スリットを上下合致させ、且つ被加工物の厚さよりやや広い間隔をおいて水平に架設固定し、更に、マスク板の上面にはスリットの並設ピッチと同ピッチで円形のカッタを並設固定したロータリーカッタを、該カッタの刃先をマスク板及びガイド板のスリット内に嵌入させて配置すると共に、そのロータリーカッタはモータによって駆動回転自在とし、更に、前記マスク板の上面におけるロータリーカッタの回転方向手前側位置に、スリット及びロータリーカッタに向けて水を散水する水供給手段を設けたことを特徴とするイカの紐状切断装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【特許番号】第2786613号
【登録日】平成10年(1998)5月29日
【発行日】平成10年(1998)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−290937
【出願日】平成7年(1995)11月9日
【公開番号】特開平9−131171
【公開日】平成9年(1997)5月20日
【審査請求日】平成7年(1995)11月9日
【出願人】(595109889)株式会社アスカ (1)
【参考文献】
【文献】実公 昭55−10077(JP,Y2)