説明

イコライズユニットを備えるスポット溶接装置

【課題】スポット溶接装置において、イコライズユニット21を流体圧を用いない構成にするとともに、イコライズユニット21に汎用性をもたせ、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和して、被溶接物の変形を抑制し、溶接品質を向上させる。
【解決手段】イコライズユニット21が、可動電極に連結された作動ロッド17と平行に延びる支持ロッド28に移動可能に支持され、溶接ガン本体3に連結された移動部材31と、移動部材31を支持ロッド28の軸方向の他側へ付勢する第1の圧縮コイルバネ32と、移動部材31を支持ロッド28の軸方向の一側へ付勢する第2の圧縮コイルバネ33と、移動部材31に設けられたイコライズ作動ピン35と、イコライズ作動ピン35により押圧され、可動電極の固定電極の側への移動に伴う作動ロッド17の移動時に、作動ロッド17の傾斜カム部17fに当接しながら回動するリンクレバー部材39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イコライズユニットを備えるスポット溶接装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車生産ラインで用いられるスポット溶接装置は、多関節ロボットアームの先端部に支持される溶接ガン本体と、金属製板材等のワーク(被溶接物)の溶接箇所を挟持して溶接を行う固定電極及び可動電極とを備えている。このようなスポット溶接装置は、自動車車体の複数箇所を溶接するべく、ワークの溶接箇所に、固定電極及び可動電極をワークを挟むように位置させて、溶接ガン本体に設けられたサーボモータ等により可動電極に加圧力を付与することで、ワークを固定電極及び可動電極間に挟持して溶接を行う。このとき、ワークの傾斜状態や組枚数に応じて、溶接ガン本体の姿勢制御、可動電極の加圧力制御、ワーク支持力制御等を行うようになっている。
【0003】
ここで、上記溶接ガン本体は、通常、イコライズ装置を介して多関節ロボットアームの先端部に支持される。このイコライズ装置は、可動電極の加圧時に、固定電極及び可動電極間に位置するワークに無理な加圧力がかからないように、溶接ガン本体の重量バランスをとるとともに、固定電極及び可動電極にかかる力のバランスをとることを目的として設けられる。このイコライズ装置によって、固定電極及び可動電極にかかる力を同等にして、ナゲットを安定して生成することができるとともに、ワークの変形を抑制することが可能になる。
【0004】
ところで、従来のイコライズ装置の多くは、エアシリンダ等のように流体圧を用いて作動するようになされている。この場合、ロボットの制御装置から加圧及び開放信号が、溶接ガン本体に送られると同時にイコライズ用シリンダにも送られ、イコライズ用シリンダの作動により、溶接ガン本体がロボットアームに対してバネ力でイコライズされるようになっている。
【0005】
一方、流体圧を用いないイコライズ装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。このイコライズ装置は、溶接ガン本体に内蔵されたものであって、溶接ガン本体内における加圧駆動部により進退する加圧軸に凹部を形成し、該加圧軸の進出時に、レバーの先端部に設けられたローラ部材が、加圧軸の凹部内に落ち込むことでレバーが回動し、これにより、溶接ガン本体がロボットアームに対してバネ力でイコライズされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−142847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の、流体圧を用いるイコライズ装置では、イコライズ用シリンダが必要になるとともに、流体回路に、切換えバルブ、スピコン(流量調整弁)、レギュレータ等を設ける必要があり、このため、装置が複雑になるとともに、コストがかかるという問題がある。また、バネ力は、溶接ガン本体の重量に打ち勝つ大きさにする必要があるが、溶接ガン本体の姿勢によっては、そのような大きさは必ずしも必要ではなく、このため、溶接ガン本体の姿勢によっては、イコライズ時に、固定電極がワークに対して大きな衝撃力でもって当接する場合がある。この結果、ワークを変形させないようにするためのバネ力の調整が困難であり、溶接品質を安定させることができないという問題がある。
【0008】
しかも、上記流体圧を用いるイコライズ装置は、通常、各溶接ガン本体毎に専用の装置として設けられる構成となっており、このため、イコライズ装置を標準化することが困難であり、この結果、イコライズ装置の量産性が低下して、その製造コストがアップするという問題もある。
【0009】
一方、上記特許文献1のように、流体圧を用いないイコライズ装置では、イコライズ用シリンダ等は不要になるので、流体圧を用いるイコライズ装置よりも簡素化及び小型化することが可能になる。
【0010】
しかしながら、上記流体圧を用いないイコライズ装置では、加圧軸のストロークが異なる溶接ガン本体に設ける場合には、加圧軸に設けられる凹部の位置を変更しなければならず、このような加圧軸の変更は容易ではない。このため、加圧軸は、溶接ガン本体に専用のものとなり、汎用性に乏しいという問題がある。
【0011】
また、上記流体圧を用いないイコライズ装置においても、上記流体圧を用いるイコライズ装置と同様に、ワークを変形させないようにするためのバネ力の調整が困難であり、しかも、レバーに設けられたローラ部材が凹部内に一気に落ち込み、これにより、大きなバネ力が衝撃力としてワークに瞬時に作用することになる。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イコライズユニットを備えるスポット溶接装置において、イコライズユニットを流体圧を用いない構成にするとともに、イコライズユニットに汎用性をもたせ、しかも、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和して、被溶接物の変形を抑制し、溶接品質を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明では、支持体に支持される溶接ガン本体と、該溶接ガン本体に固定アームを介して固定された固定電極と、上記溶接ガン本体と上記固定電極との間で該固定電極に対向するように配設され、駆動手段により該対向方向に駆動される可動電極と、上記溶接ガン本体と上記支持体との間に設けられたイコライズユニットとを備えるスポット溶接装置を対象として、
上記イコライズユニットは、
上記可動電極に連結され、上記対向方向に延びる作動ロッドと、
上記作動ロッドと平行に延びる支持ロッドと、
上記支持体に固定され、上記支持ロッドを支持する支持構造部と、
上記支持ロッドに該支持ロッドの軸方向に移動可能に支持され、上記溶接ガン本体に連結された移動部材と、
上記支持ロッドの軸方向の一側端部に設けられ、上記移動部材を、上記支持ロッドに対して該支持ロッドの軸方向の他側へ付勢する第1の圧縮コイルバネと、
上記支持ロッドの軸方向の他側端部に設けられ、上記移動部材を、上記支持ロッドに対して該支持ロッドの軸方向の上記一側へ付勢する、上記第1の圧縮コイルバネよりも付勢力が弱く設定された第2の圧縮コイルバネと、
上記移動部材に設けられたイコライズ作動ピンと、
上記支持構造部に回動可能に支持されたイコライズ作動用リンクレバー部材と、
を備え、
上記イコライズ作動用リンクレバー部材は、上記移動部材が上記第1の圧縮コイルバネと上記第2の圧縮コイルバネとの付勢力の差により上記支持ロッドの軸方向の上記他側へ付勢されることで、該移動部材の上記イコライズ作動ピンにより押圧される押圧部と、該押圧部の押圧による該イコライズ作動用リンクレバー部材の回動力により、上記作動ロッドの周側面に当接する回転可能なローラ部材とを有し、
上記作動ロッドの周側面における上記ローラ部材の当接部分には、上記駆動手段による上記可動電極の上記固定電極の側への移動に伴う該作動ロッドの移動時に、上記イコライズ作動ピンによる上記押圧部の押圧により上記イコライズ作動用リンクレバー部材を回動させるためのカム部が形成されており、
上記カム部は、第1カム部と、上記作動ロッドの軸方向において該第1カム部に対して上記可動電極とは反対側に設けられ、作動ロッドの径方向において第1カム部よりも作動ロッドの軸心に近い側に位置する第2カム部と、第1カム部と第2カム部とを繋ぐ、可動電極とは反対側に向かって作動ロッドの軸心に近付くように傾斜する傾斜カム部とからなり、
上記駆動手段による上記可動電極の上記固定電極の側への移動に伴う上記作動ロッドの移動時に、上記ローラ部材が上記カム部の第1カム部から傾斜カム部に当接して該当接状態を維持しながら上記イコライズ作動用リンクレバー部材が回動することで、上記移動部材が上記支持ロッドの軸方向の上記他側へ移動することによって、該移動部材に連結された溶接ガン本体と共に上記固定電極が移動して、該固定電極が、該固定電極と上記可動電極との間に位置する被溶接物に当接するように構成されている、
という構成とした。
【0014】
上記の構成により、イコライズユニットを流体圧を用いない構成にしたので、その構成を簡素にすることができるとともに、低コストにすることができる。また、イコライズユニットは、溶接ガン本体と溶接ガン本体支持体との間に設けられるため、溶接ガン本体に対して外付け構成となる。これにより、可動電極のストロークが異なる溶接ガン本体に対しては、作動ロッド(傾斜カム部の傾斜角度や傾斜カム部の作動ロッド軸方向の位置等)を変更すればよく、作動ロッドの交換は容易にできる。そして、溶接ガン本体の重量が変わる場合には、第1及び第2圧縮コイルバネを交換すればよい。この結果、イコライズユニットの主要部は、共通にすることができ、イコライズユニットの汎用性を高めることができる。
【0015】
また、ローラ部材がカム部の第1カム部から傾斜カム部に当接して該当接状態を維持しながらイコライズ作動用リンクレバー部材が回動することで、移動部材が移動することによって、移動部材に連結された溶接ガン本体と共に固定電極が移動して、該固定電極が被溶接物に当接するので、固定電極が被溶接物に急激に当接するようなことはなく、傾斜カム部の角度を適切に設定することによって、緩やかに当接させるようにすることができる。この結果、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。
【0016】
さらに、第1及び第2の圧縮コイルバネにより、溶接ガン本体の姿勢に関係なく、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。すなわち、第1の圧縮コイルバネが移動部材を例えば水平方向に移動させる際には、移動部材が勢い良く押圧されるが、第2の圧縮コイルバネによりそのエネルギーを吸収することができる。これにより、溶接ガン本体の姿勢が変化しても、ローラ部材が傾斜カム部に当接しながらイコライズ作動用リンクレバー部材が回動することと相俟って、上記衝撃力を小さい値のままで大きく変化しないようにすることができる。したがって、被溶接物の変形を抑制することができて、溶接品質を向上させることができる。
【0017】
上記スポット溶接装置において、上記固定電極が上記被溶接物に当接することにより、上記押圧部が上記イコライズ作動ピンから離間可能に構成されている、ことが好ましい。
【0018】
そして、上記押圧部の上記イコライズ作動ピンからの離間可能な距離が、上記固定電極の上記被溶接物への当接後のイコライズ量として設定されている。
【0019】
すなわち、固定電極が被溶接物に当接すると、移動部材及びイコライズ作動ピンが支持ロッドの軸方向の他側へ移動できなくなる一方、イコライズ作動用リンクレバー部材は、第2カム部の位置によって更に回動できるようにしておけば、押圧部がイコライズ作動ピンから離間可能になる。この離間状態では、溶接ガン本体が支持体に対してフローティングされた状態にあり、第1及び第2の圧縮コイルバネの付勢力の大小関係で、固定電極は被溶接物の位置に倣う。このフローティング(つまりイコライズ)により、可動電極の加圧時に、被溶接物が変形しないように固定電極及び可動電極にかかる力を適切にすることができる。
【0020】
上記スポット溶接装置において、上記イコライズ作動用リンクレバー部材は、その回動軸の周囲部から該周囲部の径方向外側に延びる第1及び第2腕部を有していて、上記回動軸方向から見て略L字状をなし、上記第1腕部の先端部に、上記押圧部が設けられ、上記第2腕部の先端部に、上記ローラ部材が設けられている、ことが好ましい。
【0021】
このことにより、押圧部及びローラ部材が設けられたイコライズ作動用リンクレバー部材を容易に構成することができる。
【0022】
上記スポット溶接装置において、上記作動ロッドのカム部は、該作動ロッドにおける上記可動電極とは反対側の端部に設けられている、ことが好ましい。
【0023】
このことで、作動ロッドにおいてカム部を含む部分を他の部分とは異なる部材で構成することで、可動電極のストロークが異なる溶接ガン本体に対して、カム部を含む部分のみを変更すればよく、作動ロッド全体を交換する場合に比べて容易になる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のスポット溶接装置によると、イコライズユニットを流体圧を用いない構成にしたので、その構成を簡素にすることができるとともに、低コストにすることができる。また、イコライズユニットが、溶接ガン本体に対して外付け構成となるので、イコライズユニットの汎用性を高めることができる。さらに、ローラ部材がカム部の傾斜カム部に当接しながらイコライズ作動用リンクレバー部材が回動するので、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。また、第1の圧縮コイルバネに加えて第2の圧縮コイルバネを設けたことにより、溶接ガン本体の姿勢が変化しても、ローラ部材が傾斜カム部に当接しながらイコライズ作動用リンクレバー部材が回動することと相俟って、固定電極が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。よって、被溶接物に対して変形抑制及び可動電極と固定電極の加圧力を均等にする事が可能となり、溶接品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るスポット溶接装置を示す側面図である。
【図2】イコライズユニットを、ユニット取付プレート及びベースプレートの記載を省略して示すとともに、一部の構成要素を破断して示す、図1と同じ方向から見た側面図である。
【図3】図2のIII方向矢示図である。
【図4】図2のIV方向矢示図である。
【図5】可動電極が固定電極の側へ移動している状態を示す図2相当図である。
【図6】スポット溶接装置による溶接時の固定電極及び可動電極の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るスポット溶接装置を示す。このスポット溶接装置1は、支持体としての多関節ロボットアーム2の先端部に支持される溶接ガン本体3を備えている。この溶接ガン本体3のケース4内には、後述の可動電極13を駆動する駆動手段としてのサーボモータ5が収容されている。このサーボモータ5の駆動力により、ケース4内側から外側に突出する加圧軸6がその軸方向に移動するように駆動される。この加圧軸6の軸方向の移動は、サーボモータ5の回転が不図示の送りねじ機構により変換されたものである。尚、加圧軸6は、多関節ロボットアーム2の軸心回りの回動によってあらゆる方向に向くことが可能であるが、本実施形態では、加圧軸6が、上下方向(図1のZ方向)に延びかつケース4の下側に位置する状態(図1の状態)にあるものとして説明する。
【0028】
上記溶接ガン本体3と上記ロボットアーム2との間には、イコライズユニット21が設けられている。尚、本実施形態では、イコライズユニット21とロボットアーム2との間に、溶接用トランス9を支持するトランス支持部10が介在している。このトランス支持部10(溶接用トランス9)と溶接ガン本体3とは略同じ高さ位置に位置する。
【0029】
溶接ガン本体3のケース4の側面には、先端に固定電極12が設けられた固定アーム15が固定されている。この固定アーム15は、ケース4の側面からトランス支持部10の下側位置へ向かって斜めに延びた後、トランス支持部10の下側において鉛直方向下側へ延び、その下端から溶接ガン本体3の下側へ向かって水平に延びている。固定電極12は、溶接ガン本体3の真下側に位置するようになされている。
【0030】
また、溶接ガン本体3と固定電極12との間で該固定電極12に対向するように可動電極13が配設されている。この可動電極13は、溶接ガン本体3のケース4の下面から突出する加圧軸6の先端に設けられていて、上記サーボモータ5により、加圧軸6を介して、固定電極12と可動電極13との対向方向(上下方向)に駆動されて移動する。
【0031】
そして、ロボットアーム2により、固定電極12及び可動電極13を、被溶接物(例えば自動車車体の金属板材等)を挟むように位置させて、可動電極13に加圧力を付与することで、被溶接物を固定電極12及び可動電極13間に挟持して溶接を行う。このとき、後述の如く、イコライズユニット21が作動して溶接ガン本体3がロボットアーム2に対してイコライズされる。
【0032】
上記加圧軸6の軸方向(上下方向)中間部には、水平方向に延びる連結部材16の一端部が、加圧軸6の周囲を囲んだ状態で固定されている。この連結部材16の他端部には、上下方向に延びる作動ロッド17の下端部が固定されている。この作動ロッド17は、可動電極13に連結されているとともに、上記対向方向に延びていることになる。作動ロッド17は、イコライズユニット21の一部を構成している。
【0033】
溶接用トランス9と固定アーム15とは、変形自在なシャント18で接続され、溶接用トランス9と連結部材16の他端部の近傍とは、変形自在なシャント19で接続されて、溶接用電流用の回路を構成している。
【0034】
上記イコライズユニット21は、2つのユニット取付プレート22を有していて、該ユニット取付プレート22によりトランス支持部10に固定されている。2つのユニット取付プレート22は、トランス支持部10(溶接用トランス9)と溶接ガン本体3とが対向する方向(図1〜図3に記載のX方向)とは垂直な水平方向(図1の紙面に垂直な方向であって図3及び図4に記載のY方向)に互いに対向配置されている(図3及び図4参照)。
【0035】
イコライズユニット21は、図2〜図4に詳細に示すように、2つのユニット取付プレートにおけるトランス支持部10とは反対側の端部にそれぞれ固定された2つのベースプレート23を有している。2つのベースプレート23も、2つのユニット取付プレート22と同様に、Y方向に対向配置されている。尚、図2では、ユニット取付プレート22及びベースプレート23の記載を省略している。また、図2の左右方向及び上下方向は、図1の左右方向(X方向)及び上下方向(Z方向)とそれぞれ一致しており、イコライズユニット21に対して図2の左側にトランス支持部10(図2では記載していない)が位置し、図2の右側に溶接ガン本体3が位置する。
【0036】
2つのベースプレート23の上端部同士及び下端部同士は、それぞれ上側支持部材24及び下側支持部材25によって連結されている。2つのベースプレート23並びに上側支持部材24及び下側支持部材25により、後述の支持ロッド28を支持する枠状の支持構造部が構成され、この支持構造部は、ユニット取付プレート22及びトランス支持部10を介してロボットアーム2に固定されることになる。
【0037】
上側支持部材24と下側支持部材25との間におけるY方向の両端部には、作動ロッド17と平行に上下方向(Z方向)に延びる支持ロッド28がそれぞれ設けられて該両支持部材24,25に支持されている。すなわち、各支持ロッド28の上下両端部には、ネジ部28aがそれぞれ形成されており、これらネジ部28aが上側及び下側支持部材24,25をそれぞれ貫通して、ナット29との螺合により上側及び下側支持部材24,25にそれぞれ固定されている。
【0038】
上記支持ロッド28には、移動部材31が支持ロッド28の軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。この移動部材31は、X方向から見て矩形状をなす連結部31aを有している。この連結部31aは、該連結部31aの溶接ガン本体3側の面(図2の右側の面)にて、溶接ガン本体3のケース4の側面に連結固定されている。連結部31aにおけるトランス支持部10側の面(図2の左側の面)の4つの角部近傍には、トランス支持部10側に向かって水平に延びるスライド部31bがそれぞれ設けられている。Y方向一側の上下2つのスライド部31bは、Y方向一側の支持ロッド28に上下方向に移動可能に支持され、Y方向他側の上下2つのスライド部31bは、Y方向他側の支持ロッド28に上下方向に移動可能に支持されている。こうして、溶接ガン本体3(及び固定電極12)は、移動部材31を介して、支持ロッド28に沿って上下方向に移動可能になっている。尚、支持ロッド28は1つであってもよく、この1つの支持ロッド28に移動部材31が該支持ロッド28の軸方向に移動可能に支持されるようにすることも可能である。
【0039】
上記各支持ロッド28の軸方向の一側端部(下側端部)の周囲(下側のスライド部31bと下側支持部材25との間)には、下側のスライド部31bを介して移動部材31を、支持ロッド28に対して該支持ロッド28の軸方向の他側(上側)へ付勢する第1の圧縮コイルバネ32が配設されている。一方、各支持ロッド28の軸方向の他側端部(上側端部)の周囲(上側のスライド部31bと上側支持部材24との間)には、上側のスライド部31bを介して移動部材31を、支持ロッド28に対して該支持ロッド28の軸方向の上記一側(下側)へ付勢する、第1の圧縮コイルバネ32よりも付勢力が弱く設定された第2の圧縮コイルバネ33が配設されている。第1及び第2の圧縮コイルバネ32,33は、各支持ロッド28毎に1つずつ配設されていてもよく、複数ずつ配設されていてもよい(この場合、複数の圧縮コイルバネを同心状に配設する)。
【0040】
第2の圧縮コイルバネ33の付勢力が第1の圧縮コイルバネ33の付勢力よりも弱いので、移動部材31は、第1の圧縮コイルバネ32と第2の圧縮コイルバネ33との付勢力の差により支持ロッド28の軸方向の上記他側(上側)へ付勢されることになる。しかし、後述の如く、イコライズユニット21の作動前(イコライズ前)の状態では、後述のイコライズ作動用リンクレバー部材39により、図2の位置から上側へ移動できないようになっている。
【0041】
第1の圧縮コイルバネ32による移動部材31のトータル付勢力は、溶接ガン本体3の重量(固定電極12、可動電極13、加圧軸、移動部材31等の重量も含む)よりも所定量(移動部材31の上昇に連れて小さくなる)だけ大きい。この所定量は、第2の圧縮コイルバネ33の付勢力を考慮して、移動部材31を押し上げることが可能な値に設定される。
【0042】
上記移動部材31の連結部31aにおけるトランス支持部10側の面のY方向中央部の下側部分には、ピン支持部31cがトランス支持部10側に突出形成されている。このピン支持部31cには、イコライズ作動ピン35が上下方向に貫通している。このイコライズ作動ピン35の外周面には、ピン支持部31cの下面に固定されたナット36と螺合するネジ部35aが形成され、この螺合により、イコライズ作動ピン35が上下方向に移動可能にピン支持部31cに支持されている。イコライズ作動ピン35の下端部には、イコライズ作動ピン35を回動させるための工具と係合する係合凹部35bが形成されており、その工具によりイコライズ作動ピン35を回動させることで、イコライズ作動ピン35のピン支持部31cに対する上下位置を調整可能になっている。
【0043】
上記下側支持部材25の上面におけるY方向中央部には、リンクレバー部材支持部25aが上側に突出形成されている。このリンクレバー部材支持部25aは、上記ピン支持部31cに対してトランス支持部10側に位置している。
【0044】
上記リンクレバー部材支持部25aの上端部には、Y方向に延びる支持ピン38を介してイコライズ作動用リンクレバー部材39(以下、リンクレバー部材39という)が支持されている。このリンクレバー部材39は、支持ピン38の回りに回動可能になされていて、上記支持構造部に回動可能に支持されていることになる。支持ピン38は、リンクレバー部材39の回動軸に相当する。
【0045】
上記リンクレバー部材39は、支持ピン38(回動軸)の周囲部から該周囲部の径方向外側に延びる第1及び第2腕部39a,39bを有していて、支持ピン38の軸方向から見て略L字状をなしている。第1腕部39aは、上記周囲部から溶接ガン本体3側に延びて、その先端部はイコライズ作動ピン35の上側に位置している。第2腕部39bは、上記周囲部から上側に延びて、その先端部は上側支持部材24の近傍に位置している。リンクレバー部材支持部25a、リンクレバー部材39及びイコライズ作動ピン35は、Y方向において同じ位置に位置している。
【0046】
第1腕部39aの先端部の下部には、移動部材31が第1の圧縮コイルバネ32と第2の圧縮コイルバネ33との付勢力の差により支持ロッド28の上側へ付勢されることで、移動部材31のイコライズ作動ピン35により押圧される押圧部39cが設けられている。また、第2腕部39bの先端部には、上記押圧部39cの押圧によるリンクレバー部材39の回動力により、上記作動ロッド17の周側面に当接するローラ部材40が設けられている。このローラ部材40は、Y方向に延びる回転軸41の回りに回転可能になされている。
【0047】
上記作動ロッド17は、リンクレバー部材支持部25a及びリンクレバー部材39に対してトランス支持部10側の近傍でかつY方向においてリンクレバー部材39及びイコライズ作動ピン35と同じ位置を上下方向に延びている。また、作動ロッド17は、上下2部材で構成されていて、作動ロッド17の上端部を構成する第1部材17aと、それ以外の部分を構成する第2部材17bとからなる(図4では、第1部材17aの一部のみ示す)。第1部材17aと第2部材17bとは、上記支持ピン38の近傍で互いに結合されている。第2部材17bの下端部は、上記の如く、一端部が加圧軸6に固定された連結部材16の他端部に固定されている。作動ロッド17の上端部(第1部材17a)は、上側支持部材24のY方向中央部に設けられた作動ロッド支持部24aの挿通孔24b(上下に貫通する孔)に挿通されて、第1部材17aの上端は、作動ロッド支持部24aの上面よりも上側に位置している。
【0048】
上記作動ロッド17の周側面における上記ローラ部材40の当接部分(第1部材17aの溶接ガン本体3側の部分)には、上記サーボモータ5による可動電極13の固定電極12の側への移動に伴う該作動ロッド17の移動時に、上記イコライズ作動ピン35による上記押圧部39cの押圧により上記リンクレバー部材39を回動させるためのカム部17cが形成されている。このカム部17cは、作動ロッド17における可動電極13とは反対側の端部に設けられていることになる。カム部17cは、第1カム部17dと、作動ロッド17の軸方向において第1カム部17dに対して可動電極13とは反対側(上側)に設けられ、作動ロッド17の径方向において第1カム部17dよりも作動ロッド17の軸心に近い側に位置する第2カム部17eと、第1カム部17dと第2カム部17eとを繋ぐ傾斜カム部17fとからなる。第1及び第2カム部17d,17eは、作動ロッド17の軸心に沿った方向(上下方向)に延びていて、平坦状に形成されている。傾斜カム部17fは、可動電極13とは反対側(上側)に向かって作動ロッド17の軸心に近付くように傾斜していることになる。
【0049】
イコライズ前の状態では、上記ローラ部材40が第1カム部17dに当接している。このとき、上記のように上側へ付勢される移動部材31のイコライズ作動ピン35によってリンクレバー部材39の押圧部39cが上側に押圧されることで、リンクレバー部材39には、支持ピン38の回りに図2で反時計回りに回動しようとする力が作用するが、ローラ部材40が第1カム部17dに当接しているため、リンクレバー部材39は、図2の状態からそれ以上回動することはできない。また、移動部材31(イコライズ作動ピン35)は、図2の状態から上側に移動することはできない。このとき、イコライズ作動ピン35のピン支持部31cに対する上下位置を調整することで、イコライズ前の、ロボットアームに対する溶接ガン本体3の高さ位置、つまり固定電極12の高さ位置を調整することができる。
【0050】
尚、作動ロッド17(第1部材17a)は、ローラ部材40によりトランス支持部10側へ押圧されるが、作動ロッド支持部24aの挿通孔24bに挿通されている部分が該挿通孔24bの内周面に当接するため、作動ロッド17の上端部が下端部に対してトランス支持部10側に傾くことはない。
【0051】
上記サーボモータ5により可動電極13が固定電極12の側(下側)へ移動すると、これに伴って作動ロッド17も下側へ移動することになる。これにより、図5に示すように、作動ロッド17のローラ部材40に対応する部分が、カム部17cの第1カム部17dから傾斜カム部17fとなる。リンクレバー部材39は、その押圧部39cがイコライズ作動ピン35によって上側へ押圧されて、図2で反時計回りに回動しようとしているので、ローラ部材40は、カム部17cの第1カム部17dから傾斜カム部17fに当接することになる。傾斜カム部17fの作動ロッド17の軸心に対する傾斜角は、緩やかになっていて、リンクレバー部材39は、ローラ部材40が傾斜カム部17fに当接しながら回動するようになっている。この当接状態を維持しながらリンクレバー部材39が回動することで、移動部材31(イコライズ作動ピン35)が支持ロッド28の軸方向の上記他側(上側)へ移動する。これによって、移動部材31に連結固定された溶接ガン本体3と共に固定電極12が上側へ移動して、固定電極12が、固定電極12と可動電極13との間に位置する被溶接物に当接するようになっている。
【0052】
固定電極12が被溶接物に当接すると、移動部材31(イコライズ作動ピン35)はそれ以上上昇できなくなるので、押圧部39cがイコライズ作動ピン35から離間可能になる。すなわち、可動電極13が被溶接物に当接した状態では、作動ロッド17のローラ部材40に対応する部分がカム部17cの第2カム部17eとなっており、リンクレバー部材39は、ローラ部材40が第2カム部17eに当接するまで更に回動することができる。これにより、リンクレバー部材39は、押圧部39cがイコライズ作動ピン35に当接する回動位置と、ローラ部材40が第2カム部17eに当接する回動位置との間でフリーに回動可能になる。ローラ部材40が第2カム部17eに当接する回動位置にリンクレバー部材39が位置するときの、押圧部39cのイコライズ作動ピン35からの離間距離が、固定電極12の被溶接物への当接後のイコライズ量として設定されている。本実施形態では、そのイコライズ量を5mmとしている(尚、固定電極12の被溶接物に当接するまでのイコライズ量も5mmとしており、トータルイコライズ量は10mmである)。このとき、溶接ガン本体3がロボットアームに対してフローティングされた状態にあり、第1及び第2の圧縮コイルバネ32,33の付勢力の大小関係で、固定電極12は被溶接物の位置に倣う。こうして、溶接ガン本体3がロボットアーム2に対してイコライズされる。
【0053】
次に、上記スポット溶接装置1により被溶接物に溶接する際の動作を、図6により説明する。この説明では、被溶接物を、互いに上下に重ね合わされた、水平方向に延びる上側及び下側金属板材51,52とし、これら両金属板材51,52の所定箇所をスポット溶接するものとする。
【0054】
最初に、図6(a)に示すように、ロボットアーム2を駆動して、両金属板材51,52が固定電極12と可動電極13との間に位置するようにするとともに、固定電極12が、下側金属板材52の溶接すべき箇所の下側に位置するようにする。このとき、固定電極12の上端と下側金属板材52の下面との間の距離は、所定値(本実施形態では、5mm)に設定されている。この所定値は、固定電極12の被溶接物に当接するまでのイコライズ量である。加圧軸6は、上下方向に延びかつ溶接ガン本体3のケース4の下側に位置する状態(図1の状態)にある。
【0055】
続いて、上記サーボモータ5により可動電極13を下側へ移動させる。この可動電極13の移動に伴って作動ロッド17も下側へ移動するため、作動ロッド17のカム部17cの傾斜カム部17fによってリンクレバー部材39が図2で反時計回りに回動し、これにより、移動部材31(イコライズ作動ピン35)が上昇する。この上昇により、溶接ガン本体3と共に固定電極12が上側へ移動して、固定電極12が下側金属板材52に当接する(図6(b)参照)。このとき、リンクレバー部材39は、ローラ部材40が傾斜カム部17fに当接した状態で回動するので、固定電極12が下側金属板材52に急激に当接するようなことはなく、緩やかに当接する。この結果、固定電極12が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。尚、移動部材31及び溶接ガン本体3が、例えば水平方向に移動する場合には、第1の圧縮コイルバネ32により移動部材31が勢い良く押圧されるが、第2の圧縮コイルバネ33によりそのエネルギーを吸収することができる。したがって、溶接ガン本体3の姿勢が変化しても、上記衝撃力を小さい値のままで大きく変化しないようにすることができる。
【0056】
可動電極13は連続的に下側へ移動して、やがて上側金属板材51に当接する(図6(c)参照)。このとき既に、ローラ部材40が第2カム部17eに当接可能な状態になっている。これにより、リンクレバー部材39は、押圧部39cがイコライズ作動ピン35に当接する回動位置と、ローラ部材40が第2カム部17eに当接する回動位置との間でフリーに回動することになり、固定電極12の下側金属板材52への当接後のイコライズ量が5mm確保される。このとき、溶接ガン本体3がフローティングされた状態(つまりイコライズされた状態)にあり、第1及び第2の圧縮コイルバネ32,33の付勢力の大小関係で、固定電極12は下側金属板材52の位置に倣う。このフローティングにより、可動電極13の加圧時に、上側及び下側金属板材51,52が変形しないように固定電極12及び可動電極13にかかる力を適切にすることができる。
【0057】
可動電極13が上側金属板材51に当接した後、固定電極12及び可動電極13間に上側及び下側金属板材51,52を挟持した状態で、上側及び下側金属板材51,52の上記所定箇所にスポット溶接を行う。こうして溶接品質の良好なスポット溶接を行うことができる。
【0058】
溶接後は、可動電極13を上昇させて元の位置に戻す。これにより、作動ロッド17も上側へ移動し、このとき、ローラ部材40が傾斜カム部17fによって押圧されて、リンクレバー部材39が図5で時計回りに回動する。これにより、イコライズ作動ピン35が押圧部39cにより下側へ押されて、移動部材31がイコライズ前の位置へ戻る。この結果、溶接ガン本体3及び固定電極12もイコライズ前の位置へ戻り、図6(a)の状態になる。次いで、ロボットアーム2を駆動して、固定電極12を、次の溶接すべき箇所の下側へ移動させて、上記の動作を繰り返す。
【0059】
したがって、本実施形態では、イコライズユニット21の動作を電気駆動力や流体圧を用いない構成にしたので、その構成を簡素にすることができるとともに、低コストにすることができる。また、イコライズユニット21が、溶接ガン本体3に対して外付け構成となるので、イコライズユニット21の汎用性を高めることができる。すなわち、可動電極13のストロークが異なる溶接ガン本体3に対して、カム部17cにおける傾斜カム部17fの傾斜角度や傾斜カム部17fの作動ロッド17の軸方向の位置等を変更すればよい。特に本実施形態では、作動ロッド17が、カム部17cを含む第1部材17aと、それ以外の第2部材17bとからなるので、第1部材17aを交換するだけでよい。また、溶接ガン本体3の重量が変わる場合には、第1及び第2圧縮コイルバネ32,33を交換すればよい。さらに、ローラ部材40がカム部17cの傾斜カム部17fに当接しながらリンクレバー部材39が回動するので、固定電極12が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。また、第1の圧縮コイルバネ32に加えて第2の圧縮コイルバネ33を設けたことにより、溶接ガン本体3の姿勢が変化しても、ローラ部材40が傾斜カム部17fに当接しながらリンクレバー部材39が回動することと相俟って、固定電極12が被溶接物に対して付与する衝撃力を緩和することができる。よって、被溶接物の変形を抑制することができて、溶接品質を向上させることができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、溶接ガン本体3を、支持体としてのロボットアーム2に支持するようにしたが、支持体はロボットアーム2には限られない。
【0062】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、イコライズユニットを備えるスポット溶接装置に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 スポット溶接装置
2 ロボットアーム(支持体)
3 溶接ガン本体
4 サーボモータ(駆動手段)
12 固定電極
13 可動電極
15 固定アーム
17 作動ロッド
17c カム部
17d 第1カム部
17e 第2カム部
17f 傾斜カム部
21 イコライズユニット
23 ベースプレート(支持構造部)
24 上側支持部材(支持構造部)
25 下側支持部材(支持構造部)
28 支持ロッド
31 移動部材
32 第1の圧縮コイルバネ
33 第2の圧縮コイルバネ
35 イコライズ作動ピン
39 イコライズ作動用リンクレバー部材
39a 第1腕部
39b 第2腕部
39c 押圧部
40 ローラ部材
51 上側金属板材(被溶接物)
52 下側金属板材(被溶接物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に支持される溶接ガン本体と、該溶接ガン本体に固定アームを介して固定された固定電極と、上記溶接ガン本体と上記固定電極との間で該固定電極に対向するように配設され、駆動手段により該対向方向に駆動される可動電極と、上記溶接ガン本体と上記支持体との間に設けられたイコライズユニットとを備えるスポット溶接装置であって、
上記イコライズユニットは、
上記可動電極に連結され、上記対向方向に延びる作動ロッドと、
上記作動ロッドと平行に延びる支持ロッドと、
上記支持体に固定され、上記支持ロッドを支持する支持構造部と、
上記支持ロッドに該支持ロッドの軸方向に移動可能に支持され、上記溶接ガン本体に連結された移動部材と、
上記支持ロッドの軸方向の一側端部に設けられ、上記移動部材を、上記支持ロッドに対して該支持ロッドの軸方向の他側へ付勢する第1の圧縮コイルバネと、
上記支持ロッドの軸方向の他側端部に設けられ、上記移動部材を、上記支持ロッドに対して該支持ロッドの軸方向の上記一側へ付勢する、上記第1の圧縮コイルバネよりも付勢力が弱く設定された第2の圧縮コイルバネと、
上記移動部材に設けられたイコライズ作動ピンと、
上記支持構造部に回動可能に支持されたイコライズ作動用リンクレバー部材と、
を備え、
上記イコライズ作動用リンクレバー部材は、上記移動部材が上記第1の圧縮コイルバネと上記第2の圧縮コイルバネとの付勢力の差により上記支持ロッドの軸方向の上記他側へ付勢されることで、該移動部材の上記イコライズ作動ピンにより押圧される押圧部と、該押圧部の押圧による該イコライズ作動用リンクレバー部材の回動力により、上記作動ロッドの周側面に当接する回転可能なローラ部材とを有し、
上記作動ロッドの周側面における上記ローラ部材の当接部分には、上記駆動手段による上記可動電極の上記固定電極の側への移動に伴う該作動ロッドの移動時に、上記イコライズ作動ピンによる上記押圧部の押圧により上記イコライズ作動用リンクレバー部材を回動させるためのカム部が形成されており、
上記カム部は、第1カム部と、上記作動ロッドの軸方向において該第1カム部に対して上記可動電極とは反対側に設けられ、作動ロッドの径方向において第1カム部よりも作動ロッドの軸心に近い側に位置する第2カム部と、第1カム部と第2カム部とを繋ぐ、可動電極とは反対側に向かって作動ロッドの軸心に近付くように傾斜する傾斜カム部とからなり、
上記駆動手段による上記可動電極の上記固定電極の側への移動に伴う上記作動ロッドの移動時に、上記ローラ部材が上記カム部の第1カム部から傾斜カム部に当接して該当接状態を維持しながら上記イコライズ作動用リンクレバー部材が回動することで、上記移動部材が上記支持ロッドの軸方向の上記他側へ移動することによって、該移動部材に連結された溶接ガン本体と共に上記固定電極が移動して、該固定電極が、該固定電極と上記可動電極との間に位置する被溶接物に当接するように構成されていることを特徴とするイコライズユニットを備えるスポット溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載のスポット溶接装置において、
上記固定電極が上記被溶接物に当接することにより、上記押圧部が上記イコライズ作動ピンから離間可能に構成されていることを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載のスポット溶接装置において、
上記押圧部の上記イコライズ作動ピンからの離間可能な距離が、上記固定電極の上記被溶接物への当接後のイコライズ量として設定されていることを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のスポット溶接装置において、
上記イコライズ作動用リンクレバー部材は、その回動軸の周囲部から該周囲部の径方向外側に延びる第1及び第2腕部を有していて、上記回動軸方向から見て略L字状をなし、
上記第1腕部の先端部に、上記押圧部が設けられ、
上記第2腕部の先端部に、上記ローラ部材が設けられていることを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のスポット溶接装置において、
上記作動ロッドのカム部は、該作動ロッドにおける上記可動電極とは反対側の端部に設けられていることを特徴とするスポット溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254463(P2012−254463A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128117(P2011−128117)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】