説明

イソオキサゾール化合物の製造方法

式(I)のイソオキサゾールを製造する方法であって、式(II)のニトロアリールを、式(III)のアセト酢酸アルキルまたはその塩と、活性化剤および塩基の存在下で接触させてイソオキサゾール化合物を得る、方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の相互参照
本件は、米国仮出願第61/091,528号(2008年8月25日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、イソオキサゾール化合物の製造方法に関する。より特別には、該方法は、ニトロアリールおよびアセト酢酸アルキルを出発物質として用いる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
イソオキサゾール化合物,例えば下記の式(I)で表されるものは、種々の製品(抗生物質および他の医薬化合物、農薬、染料化合物等)の合成における有用な中間体である。
【0004】
イソオキサゾール化合物は、例えば、ヒドロキシモイルハライドから、ニトリルオキサイドの中間体形成を経て得ることができる。この方法は複数のステップを必要とし、そして潜在的に高価な反応物質を必要とする。従って、イソオキサゾールの合成のためのより直接的なルートが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡単な要約
本発明は、従来の公知の方法よりも単純で経済的なイソオキサゾール化合物の製造方法を提供する。該方法は:
式(II):
【0006】
【化1】

【0007】
のニトロアリールを、式(III):
【0008】
【化2】

【0009】
のアセト酢酸アルキルまたはその塩と、
活性化剤および塩基の存在下で、式(I):
【0010】
【化3】

【0011】
のイソオキサゾール化合物を生成するのに十分な条件下で接触させることを含み、
式中、Arはフェニル、ナフチル、またはビフェニルであり、これらの各々は任意に、メチル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換されており;
1は、C1−C8アルキルまたはシクロアルキルであり;そして
2は、C1−C12アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリール−C1−C12−アルキル−であり、これらの各々は任意に、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、式(I)のイソオキサゾール化合物の製造方法を提供する。該方法に従い、式(II)のニトロアリール化合物は、式(III)のアセト酢酸アルキルと、活性化剤および塩基の存在下で、反応させる。反応は溶媒中で実施できる。好ましくは、アリールニトロメタンの、活性化剤に対するモル比は、約1:1である。アリールニトロメタンの、アセト酢酸アルキルに対する好ましいモル比もまた、1:1であるが、過剰または不足のアセト酢酸アルキルもまた使用できる。好ましくは、アセト酢酸アルキルは、アリールニトロメタンと反応させる際に、金属塩(例えば、ナトリウム塩)として用いる。塩を、前形成された材料として添加でき、またはin−situで調製できる。塩形は、アセト酢酸アルキルおよび塩基の両者として機能するため、塩基の別個の添加が必要ない。しかし、アセト酢酸アルキルの塩を用いる場合であっても、追加の塩の使用は望ましい。好ましくは、アリールニトロメタンと活性化剤との混合物をアセト酢酸アルキルおよび塩基の溶媒中の溶液に添加する。代替として、塩基を、溶媒中の全ての他の成分の混合物に添加できる。
【0013】
例として、本発明の方法を実施するための典型的な手順は以下の通りである。式(III)のアセト酢酸アルキルおよび塩基を、不活性雰囲気下の好適な反応容器内の溶媒中に溶解または分散させる。ニトロアリールおよび活性化剤(各々は、好ましくはアセト酢酸アルキルに対して等モルである)の溶液または分散液(溶媒中の)は、アセト酢酸アルキルに、例えばシリンジ、添加漏斗等でゆっくり添加する(繰り返すが不活性雰囲気下で、撹拌しながら)。
【0014】
反応は、雰囲気より低い、雰囲気の、または雰囲気より高い温度で実施できるが、雰囲気または雰囲気より高い温度が好ましい。反応時間は、典型的には、完了または所望量の生成物の形成までのために必要な時間である。一般的に反応時間は、数分から、例えば約24−48時間の間である。適切な反応時間の後、混合物を酸(例えば1N HCl)で中和する。次いで、生成物を、当該分野で周知の方法(例えばろ過、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィ、または蒸留)によって単離する。
【0015】
好適な溶媒(この中で本発明の方法を実施できる)の例としては、アルコール,例えばメタノール、エタノール、ブタノール、tert−ブタノール、イソプロパノール等、極性の非プロトン性の溶媒,例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルリントリアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0016】
該方法のための好適な塩基としては、3級アミン,例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等、金属水酸化物,例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等、または金属アルコキシド,例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等が挙げられる。加えて、上記のように、塩基は、単純にアセト酢酸アルキルの金属塩,例えばアセト酢酸エチルナトリウムであることができる。好ましい塩基は、アセト酢酸アルキル、トリエチルアミン、または2種の組合せの塩である。
【0017】
活性化剤は、一般的にはアシル化剤である。例としては、エチルクロロホルメート、メチルクロロホルメート、無水酢酸、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、およびフェニルイソシアネートが挙げられる。エチルクロロホルメートが好ましい。
【0018】
本発明の方法において用いるアセト酢酸アルキルは、式(III):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R1は、C1−C8アルキルまたはシクロアルキルであり;そしてR2は、C1−C12アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリール−C1−C12−アルキル−であり、これらの各々は任意に、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている)
の化合物である。
【0021】
好ましくは、R1はC1−C6アルキルであり、より好ましくはC1−C4アルキルである。好ましいR1基としてはまた、メチル、エチル、およびプロプルが挙げられ、エチルが特に好ましい。
【0022】
2は、好ましくはC1〜C6アルキルであり、より好ましくはC1−C4アルキルである。好ましいR2基としてはまた、メチル、エチル、およびプロピルが挙げられ、メチルが特に好ましい。
【0023】
先に記載したように、アセト酢酸アルキルは、本発明の方法において塩として使用できる。例としては、化合物のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が挙げられる。
【0024】
好ましいアセト酢酸アルキル化合物としては:アセト酢酸エチルおよびアセト酢酸メチル、更に、このようなアセト酢酸アルキルの金属塩,例えばアセト酢酸エチルナトリウム、アセト酢酸エチルカリウム、アセト酢酸エチルリチウム、アセト酢酸メチルナトリウム、アセト酢酸メチルカリウム、およびアセト酢酸メチルリチウムが挙げられる。
【0025】
本発明のニトロアリール化合物は、一般的には、式(II):
【0026】
【化5】

【0027】
のものである。
【0028】
好ましくは、式(II)におけるArは、任意に1つまたは2つのハロゲン基,例えばクロロ、で置換されているフェニルである。好ましいニトロアリール化合物としては、フェニルニトロメタン、クロロフェニルニトロメタン、またはジクロロフェニルニトロメタンが挙げられる。
【0029】
本発明の方法は、式(I):
【0030】
【化6】

【0031】
の化合物を提供する。
【0032】
好ましい式(I)の化合物としては、R1およびR2が、独立にC1−C6アルキル、より好ましくは独立にC1−C4アルキル、そして更により好ましくはこれらが独立にメチル、エチル、およびプロピルから選択されるものが挙げられる。好ましくは、式(I)におけるArは、任意に1つまたは2つのハロゲン基,例えばクロロ、で置換されているフェニルである。
【0033】
式(I)の化合物は、抗生物質および他の生物学的に活性な化合物,例えば成長ホルモン分泌促進物質受容体拮抗薬、非ステロイドFXR作動薬、アドレナリン拮抗薬、更に農薬、および染料化合物の製造における有用な前駆体である。
【0034】
本明細書で用いる「アルキル」は、単独または別の基(例えばジアルキルアミノにおける)の一部のいずれかにかかわらず、直鎖および分岐鎖の脂肪族基であって示した数の炭素原子を有するものを包含する。数が示されていない場合には、アルキルは、好ましくは1〜14個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、および更に好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。好ましいアルキル基としては、限定しないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびウンデシルが挙げられる。
【0035】
本明細書で用いる用語「シクロアルキル」は、飽和および部分不飽和の、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素を有する環状炭化水素基を包含する。好ましいシクロアルキル基としては、限定しないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0036】
「アリール」基は、1〜3の芳香環を含むC6−C12芳香族部分である。好ましくは、アリール基は、C6−C10アリール基である。好ましいアリール基としては、限定しないが、フェニルおよびナフチルが挙げられる。より好ましくはフェニルである。「アリールアルキル」または「アラルキル」は、アリール基がアルキル基を介して親分子部分に付いているものを意味し、上記した通りである。
【0037】
以下の例は本発明の例示であるがその範囲の限定を意図しない。
【0038】

例1
エチル5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−カルボキシレート
100mLの三口丸底フラスコ(ストッパー、小径チューブ用の窒素パージされた入口、およびミネラルオイルバブラーに接続されたガス出口アダプター、が取付けられている)に、アセト酢酸エチルナトリウム(Aldrich)(2.93g,19.8mmol)、ジメチルスルホキシド(15mL)、およびトリエチルアミン(6mL、47.2mmol)を添加する。ゆっくりの窒素ガス流を、反応器を通じて開始する。固形分が溶解するまで混合物を撹拌する。フェニルニトロメタン(2.7mL,19.8mmol)、エチルクロロホルメート(1.89mL,19.8mmol)およびテトラヒドロフラン(5mL)の溶液を準備し、そして、小径チューブを用いて、反応器に接続したシリンジポンプに取付けられたシリンジに添加する。次いで、この溶液を反応器に7mL/時で、反応器内容物を磁気撹拌しながら添加する。添加が完了した後、サンプルを取出し、過剰の1N HCl(aq.)で中和し、塩化メチレンで抽出し、そしてガスクロマトグラフィで分析する。1つの主要な成分は、エチル5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−カルボキシレート(以下の一連の文献の手順に従って調製される(Journal of Medicinal Chemistry,2000,Vol.43,No.16,p.2971−2974&Supporting Informationは、NCSを用いて塩素化オキシムを調製するための一般的な手順について、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 15(2005)1201−1204は、メタノール中での塩素化オキシムとアセト酢酸エチルナトリウムとの反応(in situ調製)について、そしてJournal of Organic Chemistry p.4305(1962)は、所望の生成物のプロトンNMRデータについて))の真性サンプルと同じ保持時間で観察される。
【0039】
例2
エチル5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−カルボキシレート
例1と同様の反応において、生成物を、過剰の1N HCl(aq.)での中和、次いで塩化メチレンでの抽出および溶媒除去により単離する。得られる物質をカラムクロマトグラフィにてシリカゲル上で塩化メチレンを溶出溶媒として用いて精製する。次いで生成物をNMRによって分析してその帰属を確認する。H−NMR(CDCl3)8.0−7.0(m,5H),4.1(q,2H),2.7(s,3H),1.2(t,3H)。加えて、反応混合物を、高分解能GC−MSによって分析して、形成された生成物の分子式を確認する。主要成分は、式C1313NO3および分子量231.09g/モルを有し、エチル5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−カルボキシレートと一致する。
本発明をその好ましい態様に従って上記してきたが、これは本開示の精神および範囲の中で変更できる。従って本件は、本明細書に開示する一般的な原理を用いた本発明の任意の変形、使用、または適合を意図する。更に、本件は、本発明が属する分野での公知または慣行的な実施の範囲内であるような本開示からの逸脱を網羅することを意図し、そしてこれは特許請求の範囲の限定の範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

のイソオキサゾール化合物を製造する方法であって:
式(II):
【化2】

のニトロアリールを、式(III):
【化3】

のアセト酢酸アルキルまたはその塩と、
活性化剤および塩基の存在下で、イソオキサゾール化合物を生成するのに十分な条件下で接触させることを含み、
式中、Arはフェニル、ナフチル、またはビフェニルであり、これらの各々は任意に、メチル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立に選択される1つ、2つ、または3つの基で置換されており、
1は、C1−C8アルキルまたはシクロアルキルであり、そして
2は、C1−C12アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、これらの各々は任意に、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換されている、方法。
【請求項2】
1がC1−C6アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2がC1−C6アルキルである、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
式(III)のアセト酢酸アルキルが:アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルナトリウム、アセト酢酸エチルカリウム、アセト酢酸エチルリチウム、アセト酢酸メチルナトリウム、アセト酢酸メチルカリウム、またはアセト酢酸メチルリチウムである、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
Arが、1つまたは2つのハロゲン基で任意に置換されている、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
式(II)のニトロアリール化合物が、フェニルニトロメタン、クロロフェニルニトロメタン、またはジクロロフェニルニトロメタンである、請求項1〜5に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500848(P2012−500848A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525076(P2011−525076)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053508
【国際公開番号】WO2010/025035
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【Fターム(参考)】