説明

イソオレフィンポリマーおよびイソオレフィンポリマーを調製するためのプロセス

本発明は、イソオレフィンポリマーおよびイソオレフィンポリマーを調製するためのプロセスに関する。本発明は、特に、水性反応媒体中におけるイソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーを開示する。1つの実施形態においては、本発明は、水性反応媒体中におけるイソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセスおよび上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。他の実施形態においては、本発明は、イソオレフィンを、共役のまたは非共役の、ジオレフィンおよび/または芳香族ビニル化合物とカチオン共重合させるための、分散した重合プロセス、ならびに上記プロセスによって得られる共重合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、イソオレフィンポリマーおよびイソオレフィンポリマーを調製するためのプロセスに関する。本発明は、特に、水性反応媒体中でのイソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。1つの実施形態においては、本発明は、イソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。他の実施形態においては、本発明は、イソオレフィンを、共役のジオレフィンおよび/または芳香族ビニル化合物とカチオン重合させるための、重合プロセス、ならびに上記プロセスによって得られるイソオレフィン共重合体に関する。
【0002】
[背景技術]
カチオン重合は、ポリマー材料を合成するための重要なプロセスの1つである。イソオレフィンモノマー(例えば、イソブテン)の単独重合体、イソオレフィンとイソプレンとの共重合体(例えば、ブチルゴム)、およびイソオレフィンと芳香族ビニル化合物(例えば、スチレンまたはその誘導体)との共重合体(例えば、イソブテンとp−メチルスチレンとの共重合体)は、カチオン重合による最も基本的な工業製品であり、大きな市場の需要を有する。微小量の不純物は、カチオン重合のプロセスに対して非常に大きな影響を与えるので、カチオン重合は、酸素および水がほとんど存在しない条件下にて、ならびに高い純度の不活性ガスを用いる保護の下にて、そしてスラリー重合および溶液重合といった技術的なプロセスによって行われることを必要とする。例として、スラリー重合のプロセスによるブチルゴムの工業製品を挙げると、カチオン重合は、乾性クロロアルカンの反応媒体の中で、−100℃の低い温度にて行われることが必要である。イソブテン、イソプレンおよびクロロアルカン(例えば、塩化メチル)といった原材料は、厳密に精製されることなしに、および乾燥されることなしには用いられ得ない。重合の後に、塩化メチル、未反応のモノマーのイソブテンおよび未反応のモノマーのイソプレンは、分離されることおよび回収されることが必要であり、そして、次いでさらに厳密に精製されることおよび乾燥されることが必要である。さらに、HClは、後処理の間に塩化メチルから生成され、その結果として装置が明らかに腐食する。カチオン性の溶液重合によるブチルゴムの生成において、重合温度が低下するとともに溶液粘度が顕著に増加するために、熱移動および物質移動は困難である。これによって、モノマーの変換率は、20%〜30%よりも低く制御されなければならない。その結果として、生産効率は低く、そして製品品質は、改善されることおよび制御されることが困難である。多量の溶媒は、回収されることおよび精製されることが必要であり、そして溶媒回収装置、調製する単位、および高い処理能力を有する乾燥系は、同様に構成されることが必要である。一方、重合系における水の含有量および酸素の含有量は、高い分子量を有するブチルゴムを合成するために、数ppm以下にまで必然的にかつ厳密に制御されるべきである。よって、カチオン重合によるイソオレフィンポリマー(例えば、ブチルゴム)を調製するための、このような現在の技術的な手順は、複雑化し、装置および原材料に対して、厳格な要求を有し、そして高い生産コストを有する。現在の類似したカチオン重合系は、有機溶媒を反応媒体として用い、この反応媒体中における含水量は、数ppmよりも低いことが必要とされる。カチオン重合による現在の工業製品において、慣習的なカチオン重合のプロセスおよび類似の連続重合の技術的な手順は、重合系および原材料が、酸素および水のほとんど存在しない厳密な反応条件を達成し得るように、非常に厳密に脱水された手順および脱酸素された手順を必要とし、そして高純度の不活性ガスの保護の下にて行われることが必要である。上記手順は、重合プロセスおよび重合の手順を非常に複雑化し、そして結果的に作業条件に対する厳格な要求、高額な装置への投資、高い生産コスト、大きな技術的困難および多くの化学的なプロセス単位を有する。
【0003】
ブチルゴムを調製する間において、有機溶媒の熱移動の効果は比較的に低い。特に高い粘度を有する溶液重合系のために、非常に多くの瞬間的な反応熱は、エチレンを蒸発させる能力が高くなければ、短期間で効果的に除去され得ない。そして、冷却装置を巨大にかつ複雑化するために、複雑な反応装置および大きなエチレンの冷媒循環を必要とする。CN101423579Aはさらに、ブチルゴムを合成するために、低い温度(0.1〜10MPaの圧力および−162℃〜−150℃の)を有する液化天然ガス(LNG)の冷熱が用いられる系およびプロセスを開示している。しかし、冷却装置は複雑であり、調整されることおよび制御されることが困難である。
【0004】
水が、カチオン重合のための、環境に優しい反応媒体として用いられる場合、この反応媒体は、カチオン重合および生産プロセス(例えば、装置および反応条件)を簡素化し、生産コストを低減し、そして熱移動および物質移動を改善し得る。したがって、カチオン重合のための反応媒体として水性媒体を用いることは、重要な意味がある。
【0005】
カチオン重合において、反応媒体として水を用いることへの関心が、近年、大きくなってきている。しかし、水性反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合の先行技術は、多くの問題(例えば、開始系にかかる高いコスト、複雑な技術的プロセス、低い重合効率、得られたポリマー製品の低い分子量等)に直面している。さらに、高いコストを有するまたは特別に調製されるルイス酸は、共開始剤として必要とされる。先行技術におけるこれらの問題は、WO2004094481A2、WO2004094486A1、JP10130315、JP11080221、“Cationic Polymerization of styrene in Solution and Aqueous Suspension Using B(C6F5)3 as a Water-Tolerant Lewis Acid” (Kostjuk S. V. and Ganachaud F., Macromolecules, vol.39)、“Controlled/living cationic polymerization of styrene with BF3・OEt2as a coinitiator in the presence of water: Improvements and limitations” (Radchenko A. V., Kostjuk S. V. and Vasilenko I. V., et al, European Polymer Journal, Vol.43, 2007)、“Controlled Cationic Polymerization of Cyclopentadiene with B(C6F5)3 as a Coinitiator in the Presence of Water” (Kostjuk S. V., Radchenko A. V. and Ganachaud F., Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, Vol.46, 2008)に関連し得る。このように、高い活性、低コスト、入手容易な市販の原材料、および重合プロセスにて用いるに容易でありかつ都合よい新たな開始系の開発が、先行技術における水性媒体中でのカチオン重合における問題点を解決するために重要な要点であり、技術的なプロセスを簡素化し、重合効率を向上させ、高分子量のポリマー製品を合成し、コストを低減させるなどのための条件を生み出し得る。しかし、水性媒体または完全に水である反応媒体にて、ルイス酸(例えば、AlCl、AlRCl、BF、TiCl、FeCl、SnCl、ZnCl等)によって、直接的に同時に開始される、カチオン重合が可能なモノマーのカチオン重合の技術および手順は、未だ報告されていない。
【0006】
[発明の概要]
本発明の1つの目的は、先行技術における1つまたは複数の欠点を克服するために、ビニルモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られる相当するポリマーを提供することである。特に、本発明の1つの目的は、本発明の開始系を用いることによる、水性反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン単独重合またはカチオン共重合のための重合プロセスを提供することである。本発明の上記の目的および他の目的は、本明細書中にて開示される本発明の実施形態の方法によって果たされる。
【0007】
本発明の技術的な解決策としては以下が挙げられる。
【0008】
実施形態1:カチオン重合のための重合プロセスであって、
(1)開始剤、添加剤、ルイス酸および任意の希釈剤からなる開始系、
水性反応媒体、
イソオレフィンモノマーおよび共重合可能な任意のモノマー、ならびに
任意の分散剤
含む重合系を形成する工程、ならびに
(2)上記工程(1)にて形成した重合系を重合させて、上記イソオレフィンモノマーの単独重合体、またはイソオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーとの共重合体を得る工程
を包含する重合プロセス。
【0009】
実施形態2:上記工程(1)が、
まず開始系を形成し、次いで、得られた開始系を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマー、水性媒体および任意の分散剤と混合すること、あるいは、
開始剤、添加剤、ルイス酸および任意の希釈剤からなる群より選択された1つまたは複数を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマー、水性反応媒体および任意の分散剤と直接的に混合すること
を含む、実施形態1の重合プロセス。
【0010】
実施形態3:上記開始系の形成が、
開始剤、添加剤、ルイス酸および任意の希釈剤と混合すること、あるいは、
まず開始剤とルイス酸とを混合し、次いで、添加剤とを混合すること、あるいは、
まず添加剤とルイス酸とを混合し、次いで、開始剤とを混合すること
を含む、実施形態2の重合プロセス。
【0011】
実施形態4:上記重合プロセスが、
開始剤を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマーおよび水性反応媒体の混合物に直接的に加えること、あるいは、
開始剤の一部を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマーおよび水性反応媒体の混合物に加え、残りの開始剤を、添加剤およびルイス酸と混合し、その後に重合系に加えること
を含む、実施形態2の重合プロセス。
【0012】
実施形態5:上記開始系が、希釈剤(例えば、水性反応媒体中の有機溶媒)とともに混合溶液へ処方されるか、あるいは、希釈剤なしの条件下にて直接的に用いられることを含む、実施形態3の重合プロセス。
【0013】
実施形態6:バッチ式重合法、半連続重合法または連続重合法である、実施形態1〜5のいずれか1つの重合プロセス。
【0014】
実施形態7:上記イソオレフィンモノマーが、下記の構造式
CH=CR
を有する化合物から選択される実施形態1〜6のいずれか1つの重合プロセスであって、
は、HまたはC〜C10アルキル、好ましくはメチルを表しており、Rは、C〜C10アルキルまたはC〜C10シクロアルキルを表しており、および/あるいは
上記共重合可能なモノマーは、共役のまたは非共役のC〜C20ジオレフィン、芳香族ビニル化合物、および共役のまたは非共役のC〜C20ジオレフィンと芳香族ビニル化合物との組合せからなる群より選択される、重合プロセス。
【0015】
実施形態8:上記水性反応媒体は、ハロゲン化した炭化水素を含まない、実施形態1〜7のいずれか1つの重合プロセス。
【0016】
実施形態9:上記重合系は、重合前、重合中および/または重合後において、均質に分散した状態を示し、そしてその粒子サイズが、好ましくは1〜3000μmの範囲である、実施形態1〜8のいずれか1つの重合プロセス。
【0017】
実施形態10:実施形態1〜9のいずれか1つの重合プロセスによって調製された、イソオレフィンモノマーからなる単独重合体、またはイソオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーからなる共重合体。
【0018】
より詳細には、本発明は、イソオレフィンポリマーおよびイソオレフィンポリマーを調製するためのプロセスに関する。本発明は、特に、水性反応媒体中でのイソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。1つの実施形態においては、本発明は、イソオレフィンモノマーのカチオン重合のための重合プロセス、および上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。1つの実施形態においては、本発明は、イソオレフィンを、共役のまたは非共役の、ジオレフィンおよび/または芳香族ビニル化合物とカチオン重合させるための、重合プロセス、ならびに上記プロセスによって得られるイソオレフィンポリマーに関する。
【0019】
[発明の詳細な説明]
本発明は、水性反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合のための開始系を提供する。
【0020】
本発明は、本発明の開始系、ビニルモノマー、水性反応媒体および任意の分散剤を含むカチオン性の重合系を提供する。
【0021】
本発明は、本発明の開始系を用いることによる、水性反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合のための重合プロセスを提供する。
【0022】
本発明は、有機媒体(例えば、ハロゲン化した炭化水素)の非存在下にて、本発明の開始系を用いることによる、水性反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合のための重合プロセスを提供する。
【0023】
本発明は、本発明の開始系を用いることによる、完全に水である反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合のための重合プロセスを提供する。
【0024】
本発明は、本発明の開始系の方法によって、水性反応媒体中にてビニルモノマーを重合することにより調製されたポリマーまたは共重合体を提供する。
【0025】
本発明の以下の特定の開示は、本発明の各局面に好適である。
【0026】
[1.開始系]
本発明の開始系は、水性反応媒体中にてカチオン重合が可能なモノマーのカチオン重合を開始するための開始系である。本発明の開始系は、開始剤、ルイス酸、添加剤および任意の希釈剤を含む。
【0027】
(1)開始剤
開始剤は、陽イオン供給源を供給し得る化合物からなる群、詳細には、プロトンを供給し得る化合物からなる群より選択されるか、あるいは、カチオン生成物として用いられる、官能基を有する、三級アルキルまたは三級アラルキルの有機化合物からなる群より選択されるか、あるいは、ハロゲン化水素とモノマーとの添加剤からなる群より選択されるか、あるいはこれらの物質の混合物であり、好ましくは、プロトンを供給し得る化合物および/またはハロゲン化水素およびモノマーの付加物からなる群より選択される。
【0028】
上記プロトンを供給し得る化合物は、HO、ハロゲン化水素、プロトン酸、カルボン酸、アルコール類およびフェノール類からなる群より少なくとも1つ選択される。より詳細には、上記プロトンを供給し得る化合物は、HO、ハロゲン化水素、プロトン酸、ならびに、C〜C14アルキルもしくはアリールC〜C14アルキルもしくはC〜C14アルキルアリールを含む有機カルボン酸を含む化合物、フェノール、C〜C14アルキルに一置換されたフェノールもしくは複数のC〜C14アルキルに置換されたフェノール、ならびにC〜C14アルキルおよびアリールC〜C14アルキルを含むアルコールからなる群より1つまたは複数選択される。上記アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、例えばフェニルまたはナフチルであってもよい。本発明において、反応媒体中の水は、開始剤として部分的に機能し得る。
【0029】
上記ハロゲン化水素およびモノマーの付加物は、好ましくは、HCl、HBrもしくはHIを有する、イソブテン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンまたはビニルエーテルの付加物からなる群より選択される。
【0030】
上記官能基を有する、三級アルキルまたは三級アラルキルの有機化合物は、エステル、アルコール、エーテル、過酸化物およびハロゲン化物(例えば、塩化物)、ハロゲン化ベンジル(例えば、塩化ベンジル)、ならびに1つまたは複数のC〜C14アルキル基に置換されたハロゲン化ベンジル(例えば、塩化ベンジル)からなる群より1つまたは複数選択される。
【0031】
モノマーに対する上記開始剤のモル比は、(1.0×10−6〜5.0×10−1):1、好ましくは(1.5×10−6〜4.0×10−1):1または(2×10−6〜3.0×10−1):1、より好ましくは(2.2×10−6〜2.0×10−1):1または(2.4×10−6〜1.5×10−1):1である。
【0032】
(2)ルイス酸
本発明に従えば、ルイス酸は、金属ハロゲン化物または金属有機ハロゲン化物である。
【0033】
本発明に従えば、ルイス酸は、一般式MXもしくはYRn−mに当てはまる物質、またはそれらの混合物からなる群より選択される1つであり得る。ここで、Mは、B、Al、Sn、Ti、Fe、SbまたはZnであり、Xは、F、ClまたはBrであり、nは、2、3、4または5であり、mは、1、2または3であり、Yは、Al、Sn、TiまたはZnであり、Rは、必要に応じてハロ置換基によって置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールからなる群より選択され、ここで、アルキルまたは上記アルキルを含む基におけるアルキルは、例えばC〜C20アルキル、特にC〜Cアルキルであってよく、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、例えばフェニルまたはナフチルであってよい。
【0034】
上記MX型の化合物は、好ましくは、BF、BCl、AlCl、AlBr、SnCl、TiCl、TiBr、FeCl、SbClおよびZnClからなる群より1つまたは複数選択される。上記YRn−m型の化合物は、好ましくは、Al(C)Cl、Al(CCl、Al(i−C)Cl、Al(i−CCl、塩化セスキエチルアルミニウム、塩化セスキイソブチル(sesquiisobutyl)アルミニウム、Sn(C)Cl、Sn(CCl、Sn(CClおよびZn(C)Clからなる群より1つまたは複数選択される。
【0035】
モノマーに対する上記ルイス酸のモル比は、(9.0×10−5〜5.0×10−1):1、好ましくは(1.0×10−4〜4.0×10−1):1、より好ましくは(1.5×10−4〜3.5×10−1):1、より好ましくは(2.0×10−4〜3.0×10−1):1、より好ましくは(2.5×10−4〜2.5×10−1):1である。
【0036】
(3)添加剤
本発明に従えば、添加剤は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびリン原子を含む少なくとも1つの有機化合物であり得、好ましくはR−X−Yの一般構造式を有する。
【0037】
上記R部分は、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル基、アリール基、アリールC〜C20アルキル基、C〜C20アルキルアリール基、C〜C20アルコキシ基、アリールオキシ基およびアリールC〜C20アルコキシ基からなる群より選択され、好ましくは、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C12アルキル基、フェニル基、フェニルC〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル基、C〜C12アルコキシ基、アリールオキシ基およびアリールC〜C12アルコキシ基からなる群より選択され、ここで、アリールまたは上記アリールを含む基のアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0038】
上記X部分は、O原子、N原子、S原子またはP原子の少なくとも1つを必要とし、上記Xの構造は、好ましくは、−O−、−N−、−CO−、−COO−、−CON−、−S−、−SO−、−OSO−、−P−、−PO−、−PO−、−PO−および−PS−からなる群より1つ選択され、より好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−CON−、−S−、−SO−、−OSO−、−P−、−PO−、−PO−、−PO−および−PS−からなる群より1つ選択される。
【0039】
上記Y部分は、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルコキシ、アリールオキシ、およびアリールC〜C20アルコキシからなる群より選択され、好ましくはH、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C12アルキル、フェニル、フェニルC〜C12アルキル、C〜C12アルキルフェニル、C〜C12アルコキシ、アリールオキシおよびアリールC〜C12アルコキシからなる群より選択される。RおよびYは互いに独立して、環の分子形状を形成するように化学結合によって連結され得る。上記アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。上記ハロは、好ましくは塩素および臭素からなる群より選択される。
【0040】
より詳細には、公知の構造を有する本発明の(current)化合物において、R−X−Yの構造が当てはまる上記添加剤は、以下に述べる化合物の型を含む。
【0041】
酸素を含む化合物は、好ましくは、一般構造式を有する化合物の少なくとも1つであり、例えば、一般構造式RORを有するエーテル、一般構造式ROHを有するアルコールまたはフェノール、一般構造式RCORを有するケトン、または一般構造式RCOORを有するエステルの少なくとも1つである。ここで、R〜Rは、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリールC〜C20アルキル、アリールおよびC〜C20アルキルアリールからなる群より選択され、好ましくは、C〜C12アルキル、アリールC〜C12アルキル、アリール、およびアリールC〜C12アルキルからなる群より選択される。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0042】
窒素を含む化合物は、好ましくは一般構造式を有する化合物の少なくとも1つであり、例えば、一般構造式R10Nを有するアミン、または一般構造式R11CONR1213を有するアミドの少なくとも1つである。ここで、R13は、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリールC〜C20アルキル、アリールおよびC〜C20アルキルアリールからなる群より選択され、好ましくは、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C12アルキル、アリールC〜C12アルキル、アリールおよびC〜C12アルキルアリールからなる群より選択される。ここで、R〜R12は、H、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリールC〜C20アルキルおよびアリールからなる群より選択され、好ましくは、H、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C12アルキル、アリールC〜C12アルキル、アリールおよびC〜C12アルキルアリールからなる群より選択される。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0043】
硫黄を含む化合物は、好ましくは以下の一般構造式を有する物質の少なくとも1つであり、例えば、チオエステル(R14−S−R15)、スルホン(R1617SO)およびスルホキシド(R1819SO)の化合物、またはそれらの誘導体の少なくとも1つである。ここで、R14〜R19はそれぞれ独立して、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルコキシ、アリールオキシまたはアリールC〜C20アルコキシを表すか、あるいは、R14とR15、R16とR17、またはR18とR19が結合して、C〜C20アルキリデンラジカルまたはC〜C20シクロアルキリデン、好ましくは、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、C〜C12アルキル、アリール、アリールC〜C12アルキル、C〜C12アルキルアリール、C〜C12アルコキシ、アリールオキシ、またはアリールC〜C12アルコキシを形成するか、あるいは、R14とR15、R16とR17、またはR18とR19が結合して、C〜C12アルキリデンラジカルまたはC〜C12シクロアルキリデンを形成し、ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0044】
リンを含む化合物は、好ましくは以下の一般構造式を有する物質の少なくとも1つであり、例えば、ホスフィン(R20PR2122)、ホスフィンオキシド(R232425PO)、ホスフェート(R262728PO)およびホスフィート(R293031PO)の一般構造式を有する物質の少なくとも1つである。ここで、R20、R23、R26およびR29は、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルコキシ、アリールオキシ、あるいは、アリールC〜C20アルコキシを表し得、好ましくは、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、C〜C12アルキル、アリール、アリールC〜C12アルキル、またはC〜C12アルキルアリールを表し得る。R21、R22、R24、R25、R27およびR28はそれぞれ独立して、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリールを表し、好ましくは、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、C〜C12アルキル、アリール、アリールC〜C12アルキル、C〜C12アルキルアリールを表す。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。上記ハロは、好ましくは塩素および臭素からなる群より選択される。
【0045】
硫黄およびリンを含む化合物は、好ましくは一般構造式R30PSR3132を有する化合物およびそれらの誘導体の少なくとも1つである。ここで、R30、R31およびR32はそれぞれ独立して、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルコキシ、アリールオキシ、またはアリールC〜C20アルコキシを表し、好ましくは、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、C〜C12アルキル、アリール、アリールC〜C12アルキル、C〜C12アルキルアリール、C〜C12アルコキシ、アリールオキシ、またはアリールC〜C12アルコキシを表す。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。上記ハロは、好ましくは塩素および臭素からなる群より選択される。
【0046】
1つの実施形態において、上記添加剤は、構造式R−X−Yである化合物またはその誘導体であり得る。ここで、Rは、C〜C20アルキル、アリールC〜C20アルキル、アリール、C〜C20アルキルアリール、ハロ置換したC〜C20アルキル、ハロ置換したアリールC〜C20アルキル、置換したアリールおよびハロ置換したC〜C20アルキルアリールからなる群より選択され、好ましくはC〜Cアルキル、フェニルC〜Cアルキル、フェニル、C〜Cアルキルフェニル、塩素置換したC〜Cアルキル、塩素置換したフェニルC〜Cアルキル、塩素置換したフェニルおよび塩素置換したC〜Cアルキルフェニルからなる群より選択される。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0047】
上記Xの構造は、O原子およびN原子の1つを含み、好ましくは、−O−、−N−、−CO−、−COO−および−CON−の1つを含み、より好ましくは、−O−、−CO−、−COO−および−CON−の1つを少なくとも含む。
【0048】
Yは、H、C〜C20アルキル、アリールC〜C20アルキル、アリール、C〜C20アルキルアリール、ハロ置換したC〜C20アルキル、ハロ置換したアリールC〜C20アルキル、ハロ置換したアリールおよびハロ置換したC〜C20アルキルアリールからなる群より選択され、好ましくはH、C〜Cアルキル、フェニルC〜Cアルキル、フェニルもしくはC〜Cアルキルフェニル、塩素置換したC〜Cアルキル、塩素置換したフェニルC〜Cアルキル、塩素置換したフェニルおよび塩素置換したC〜Cアルキルフェニルからなる群より選択される。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0049】
上記添加剤の中で、アルコール化合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、エナントール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロパノール、フェニルブチルアルコールおよびメチルベンジルアルコールからなる群より選択され得る。エーテル化合物は、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ヘキシルエーテル、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、アニソール、フェニルプロピルエーテル、フェニルブチルエーテル、ジフェニルエーテル、キシレンエーテル(either)、ジベンジルエーテル、ジクロロベンゼンエーテルおよびジクロロメチルベンゼンエーテルからなる群より選択され得る。ケトン化合物は、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、アセトフェノン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、バレロフェノン、フェニルエミルケトンおよびフェニルヘキシルケトンからなる群より選択され得る。エステル化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、モノクロロ酢酸エチル、ジクロロ酢酸エチル、トリクロロ酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、ブチルブチレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸アミル、安息香酸ヘキシル、安息香酸ヘプチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジプロピルテレフタレート、およびジブチルテレフタレートからなる群より選択され得る。
【0050】
上記添加剤の中で、アミン化合物は、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジフェニルアミン、アミルアミン、ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N−メチルブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N−エチルブチルアミン、ヘキシルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−ブチルプロピルアミン、ヘプチルアミン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、N,N−ジプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ベンジルアミン、N−メチルアニリン、フェニルブチルアミン、N−ブチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,6−ジエチルアニリンおよびトリフェニルアミンからなる群より選択され得る。アミド化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミドおよびN,N−ジエチルアセトアミドからなる群より選択され得る。
【0051】
別の実施形態において、上記添加剤は、硫黄を含む有機化合物、リンを含む有機化合物、ならびに硫黄およびリンを含む有機化合物からなる群より選択される1つまたは複数であり得る。
【0052】
より詳細には、硫黄を含む有機化合物は、好ましくはチオエーテルR−S−R、スルホンRSOおよびスルホキシドRSOを有する化合物、ならびにそれらの誘導体からなる群より少なくとも1つ選択される。ここで、R〜Rはそれぞれ独立して、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルコキシ、アリールオキシおよびアリールC〜C20アルコキシを表すか、あるいは、R〜Rは、C〜C20シクロアルキリデンラジカルまたはアリール置換したアルキリデンラジカルを形成するために官能基と結合される。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0053】
好ましくは、チオエーテル化合物は、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジイソプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジアミルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジヘプチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジナフチルスルフィド、ジアントリルスルフィド、ジベンジルスルフィド、キシリルスルフィド、ジクロロベンゼンスルフィド、ジニトロフェニルスルフィド、メチルエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、メチルブチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、プロピルフェニルスルフィド、ブチルフェニルスルフィド、シクロブチルスルフィド、シクロペンチルスルフィド、シクロヘキシルスルフィド、シクロヘプチルスルフィドおよびシクロドデシルスルフィドからなる群より選択され得る。より好ましくは、チオエーテル化合物は、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジナフチルスルフィド、ジアントリルスルフィドおよびジベンジルスルフィドからなる群より選択され得る。
【0054】
好ましくは、スルホキシド化合物は、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジアミルスルホキシド、ジヘキシルスルホキシド、ジヘプチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジナフチルスルホキシド、ジアントリルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、キシリルスルホキシド、ジクロロベンゼンスルホキシド、ジニトロフェニルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、メチルプロピルスルホキシド、メチルブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、エチルフェニルスルホキシド、プロピルフェニルスルホキシド、ブチルフェニルスルホキシド、シクロブチルスルホキシド、シクロペンチルスルホキシド、シクロヘキシルスルホキシド、シクロヘプチルスルホキシドおよびイソブチルドデシルスルホキシドからなる群より選択され得る。より好ましくは、スルホキシド化合物は、ジメチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジナフチルスルホキシド、ジアントリルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、キシリルスルホキシド、およびジクロロベンゼンスルホキシドからなる群より選択され得る。
【0055】
好ましくは、スルホン化合物は、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジアミルスルホン、ジヘキシルスルホン、ジヘプチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン、ジアントリルスルホン、ジベンジルスルホン、キシリルスルホン、ジクロロベンゼンスルホン、ジニトロフェニルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホン、メチルブチルスルホン、メチルフェニルスルホン、エチルフェニルスルホン、プロピルフェニルスルホン、ブチルフェニルスルホン、シクロブチルスルホン、シクロペンチルスルホン、シクロヘキシルスルホン、シクロヘプチルスルホンおよびシクロドデシルスルホンからなる群より選択され得る。より好ましくは、スルホン化合物は、ジメチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン、ジベンジルスルホン、キシリルスルホン、ジクロロベンゼンスルホンおよびシクロブチルスルホンからなる群より選択され得る。
【0056】
上記リンを含む有機化合物は、有機ホスフィンRPR、有機ホスフィンオキシドR101112P=O、有機ホスフェートR131415PO、有機ホスフィート化合物R161718PO、またはそれらの誘導体の少なくとも1つである。ここで、R〜R18の中のR、R10、R13およびR16は、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、またはC〜C20アルキルアリールを表し得、R、R、R11、R12、R14、R15、R17およびR18はそれぞれ独立して、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、またはC〜C20アルキルアリールを表す。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールはフェニルまたはナフチルであってもよい。上記ハロは、好ましくは塩素および臭素からなる群より選択される。
【0057】
好ましくは、ホスフィン化合物は、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリアミルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリアントリルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリメチルフェニルホスフィン、トリクロロフェニルホスフィン、トリニトロフェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジアミルホスフィン、ジヘキシルホスフィン、ジヘプチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、塩化ジフェニルホスフィン、ジナフチルホスフィン、ジアントリルホスフィン、ジベンジルホスフィン、キシリルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、トリブトキシ(butoxyl)ホスフィンおよびトリフェノキシホスフィンからなる群より選択され得る。より好ましくは、ホスフィン化合物は、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリメチルフェニルホスフィンおよびトリクロロフェニルホスフィンからなる群より選択され得る。
【0058】
好ましくは、ホスフィンオキシド化合物は、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリアミルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリヘプチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリナフチルホスフィンオキシド、トリアントリルホスフィンオキシド、トリベンジルホスフィンオキシド、トリメチルフェニルホスフィンオキシド、トリクロロフェニルホスフィンオキシド、トリニトロフェニルホスフィンオキシド、ジメチルホスフィンオキシド、ジメチルクロロホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジプロピルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジアミルホスフィンオキシド、ジヘキシルホスフィンオキシド、ジヘプチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ジナフチルホスフィンオキシド、ジアントリルホスフィンオキシド、ジベンジルホスフィンオキシド、ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ジクロロフェニルホスフィンオキシド、ジニトロフェニルホスフィンオキシド、メチルジフェニルホスフィンオキシド、エチルジフェニルホスフィンオキシド、プロピルジフェニルホスフィンオキシドおよびブチルジフェニルホスフィンオキシドからなる群より選択され得る。より好ましくは、ホスフィンオキシド化合物は、トリメチルホスフィンオキシド、トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリナフチルホスフィンオキシド、トリアントリルホスフィンオキシド、トリベンジルホスフィンオキシド、トリメチルフェニルホスフィンオキシド、トリクロロフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシドおよびジフェニルクロロホスフィンオキシドからなる群より選択され得る。
【0059】
好ましくは、ホスフェート化合物は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリアントリルホスフェート、トリベンジルホスフェート、トリメチルフェニルホスフェート、トリクロロフェニルホスフェート、トリニトロフェニルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジメチルクロロホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジアミルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ジナフチルホスフェート、ジアントリルホスフェート、ジベンジルホスフェート、ジメチルフェニルホスフェート、ジクロロフェニルホスフェート、ジニトロフェニルホスフェート、メチルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、プロピルジフェニルホスフェート、およびブチルジフェニルホスフェートからなる群より選択され得る。より好ましくは、ホスフェート化合物は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェートおよびトリベンジルホスフェートからなる群より選択され得る。
【0060】
好ましくは、ホスフィート化合物は、トリメチルホスフィート、トリエチルホスフィート、トリプロピルホスフィート、トリブチルホスフィート、トリアミルホスフィート、トリヘキシルホスフィート、トリヘプチルホスフィート、トリフェニルホスフィート、トリナフチルホスフィート、トリベンジルホスフィート、トリメチルフェニルホスフィート、トリクロロフェニルホスフィート、トリニトロフェニルホスフィート、ジメチルホスフィート、ジエチルホスフィート、ジプロピルホスフィート、ジブチルホスフィート、ジアミルホスフィート、ジヘキシルホスフィート、ジヘプチルホスフィート、ジフェニルホスフィート、ジベンジルホスフィート、ジメチルフェニルホスフィート、ジクロロフェニルホスフィート、ジニトロフェニルホスフィート、メチルジフェニルホスフィート、エチルジフェニルホスフィート、プロピルジフェニルホスフィートおよびブチルジフェニルホスフィートからなる群より選択され得る。より好ましくは、ホスフィート化合物は、トリメチルホスフィート、トリエチルホスフィート、トリプロピルホスフィート、トリブチルホスフィート、トリフェニルホスフィートおよびトリベンジルホスフィートからなる群より選択され得る。
【0061】
上記硫黄およびリンを含む有機化合物は、一般構造式R19PSR2021を有する物質およびその誘導体の少なくとも1つである。ここで、R19、R20およびR21はそれぞれ独立して、H、ハロ、ならびに、必要に応じてハロ置換基またはニトロ置換基によって置換された、同一のまたは異なる、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20アルキル基、アリール基、アリールC〜C20アルキル基、C〜C20アルキルアリール基、C〜C12アルコキシ基、アリールオキシ基、またはアリールC〜C12アルコキシ基を表す。ここで、アリールまたは上記アリールを含む基におけるアリールは、フェニルまたはナフチルであってもよい。上記ハロは、好ましくは塩素および臭素からなる群より選択される。
【0062】
好ましくは、硫黄およびリンを含む有機化合物は、トリメチルホスホラスサルファイド、トリエチルホスホラスサルファイド、トリエトキシ(ethoxyl)ホスホラスサルファイド、トリプロピルホスホラスサルファイド、トリブチルホスホラスサルファイド、トリブトキシホスホラスサルファイド、トリフェニルホスホラスサルファイド、トリフェノキシ(phenoxyl)ホスホラスサルファイド、メチルジフェニルホスホラスサルファイド、エチルジフェニルホスホラスサルファイド、トリナフチルホスホラスサルファイド、トリアントリルホスホラスサルファイド、トリベンジルホスホラスサルファイド、トリトリルホスホラスサルファイド、トリクロロフェニルホスホラスサルファイド、トリニトロフェニルホスホラスサルファイド、ジメチルホスホラスサルファイド、ジエチルホスホラスサルファイドおよびジメチル塩化チオホスホリルからなる群より選択され得る。より好ましくは、硫黄およびリンを含む有機化合物は、トリメチルホスホラスサルファイド、トリエチルホスホラスサルファイドおよびトリフェニルホスホラスサルファイドからなる群より選択され得る。
【0063】
上記添加剤は、上述した多くの化合物の混合物であってもよい。
【0064】
モノマーに対する上記添加剤のモル比は、(1×10−4〜5.0×10−1):1であり、好ましくは(2.0×10−4〜4.5×10−1):1または(2.5×10−4〜4.0×10−1):1であり、より好ましくは(2.8×10−3〜3.0×10−1):1であり、より好ましくは(3.3×10−3〜2.8×10−1):1である。
【0065】
(4)任意の希釈剤
希釈剤は、本発明の開始系において、溶液または分散液を形成するために他の成分と混合することができる任意の有機溶媒または無機溶媒であり得る。そのような有機溶媒が好ましく、そして上記有機溶媒は、アルカン、シクロアルカン、芳香族化合物およびハロゲン化した炭化水素、ならびにそれらの混合物からなる群より1つ選択される。ハロゲン化した炭化水素は、例えば、ハロゲン化したアルカン、ハロゲン化したシクロアルカン、またはハロゲン化した芳香族化合物である。芳香族化合物は、例えば、フェニルおよび一置換したアルキルベンゼンまたは複数置換したアルキルベンゼンである。
【0066】
1つの実施形態においては、上記希釈剤は、本発明にて規定されているように、水性反応媒体中の有機溶媒であり得る。
【0067】
開始系は、重合系においてインサイチュにて形成され得るか、または重合前に予め調製され得る。上記開始系は、種々の方法によって調製され得、使用することが容易である。例えば、上記開始剤、添加剤およびルイス酸は、異なる供給様式(feeding manner)によって混合され、次いで直接的に使用されるか、または一定期間反応させた後に使用されるか、あるいは、上記開始剤がまずルイス酸と混合され、次いで、上記添加剤と混合され、次いで直接的に使用されるか、または一定期間にわたって混合した後に使用されるか、あるいは、上記添加剤は、ルイス酸と混合され、次いで直接的に使用されるか、または一定期間反応させた後に開始剤と組み合わせて使用される。上記開始剤は、インサイチュにて開始系を形成するために、上記添加剤とルイス酸との混合物に加えられても、モノマーと反応媒体との混合物に加えられてもよく、あるいは、上記開始剤の一部が、モノマーと反応媒体との混合物に加えられ、そして残りの開始剤が上記添加剤およびルイス酸と混合され、次いで直接的に使用されるか、または一定期間にわたって混合した後に使用される。上述した成分の、混合する温度または反応する温度は、−90℃〜50℃の範囲であり得る。開始系は、希釈剤とともに使用されても、希釈剤なしの条件下にて直接的に使用されてもよい。任意の希釈剤が、開始系の他の成分に加えられても、任意の時点でこれらの成分の任意の混合物に加えられてもよい。さらに、上記開始系は、貯蔵安定性という利点を有し、数日間または数カ月間にわたって保管された後であってもその活性を維持する。
【0068】
本発明の重合プロセスにおいて、上記開始剤、ルイス酸または添加剤は、直接的に使用されても、上述した希釈剤とともに上記混合溶液に処方された後に使用されてもよい。
【0069】
[2.モノマー]
本発明の上記イソオレフィンポリマーは、イソオレフィンモノマーの単独重合体およびイソオレフィンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体を含む。
【0070】
[イソオレフィンモノマー]
本明細書中にて使用されるイソオレフィンモノマーは、先行技術にて一般的に使用された種々のイソオレフィンモノマー(例えば、US5668232Aにて開示されたイソオレフィンモノマー)である。そのような特許の全文は、本明細書中に含まれている。
【0071】
下記の一般構造式、
CH=CR
を有するイソオレフィンモノマーは、本発明において好ましく使用されている。ここで、Rは、H、C〜C10アルキル、好ましくはメチルを表しており、Rは、C〜C10アルキルまたはC〜C10シクロアルキルを表す。
【0072】
好ましくは、イソオレフィンは、イソブテン、2−メチルブテン、3−メチルブテン、2−メチル−アミレン、3−メチル−アミレン、4−メチルアミレンおよびβ−ピネン(US4269955およびUS4154916に関する。)からなる群より選択され、より好ましくは、イソブテン、2−メチルブテンおよび2−メチルペンチレンからなる群より選択される。
【0073】
[共重合可能なモノマー]
本発明にて使用されている共重合可能なモノマーは、一価不飽和の有機化合物または多価不飽和の有機化合物を含み、例えば、共役のまたは非共役のC〜C20ジオレフィン(US5668232Aにて開示されている。)、および芳香族ビニル化合物(US200400149A1にて開示されている。)、ならびにC〜C20ジオレフィンと芳香族ビニル化合物との組合せから選択される。
【0074】
上記C〜C20ジオレフィンは、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、ピペリエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,4−ジメチル1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、ジメチルフルベン、リモネンおよびラウレンからなる群より1つまたは複数選択される。より好ましくは、ジオレフィンは、共役のまたは非共役のC〜C10ジオレフィン、特に共役のC〜C10ジオレフィンから選択されるのであって、例えば、イソプレン、ピペリエン、シクロペンタジエンおよび2,3−ジメチルブタジエンから1つまたは複数選択され、より好ましくは、イソプレンである。
【0075】
芳香族ビニル化合物は、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ビニルスチレンおよびインデンからなる群より選択され、より好ましくは、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ビニルスチレンから1つまたは複数選択され、最も好ましくは、p−メチルスチレン、p−ビニルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンから1つまたは複数選択される。
【0076】
本発明の共重体を調製する間に、上述したイソオレフィンと上述した共重合可能なモノマーのいずれの組合せも使用され得る。好ましい組合せは、例えば、イソブテンとイソプレン、イソブテンとピペリエン、イソブテンとシクロペンタジエン、イソブテンとp−メチルスチレン、イソブテンとp−t−ブチルスチレンおよびイソブテンとp−ビニルスチレンからなる群より選択される。より好ましい組合せは、例えば、イソブテンとイソプレン、イソブテンとp−メチルスチレンおよびイソブテンとp−ビニルスチレンからなる群より選択される。
【0077】
上記モノマーは、直接的に使用され得るか、または上記希釈剤とともに溶液へ処方された後に使用され得る。上記希釈剤は、反応媒体中の有機溶媒であり得、そして上記希釈剤は、オレフィン、アルカンおよびシクロアルカン(例えば、エチレン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル)ならびにハロゲン化した炭化水素からなる群より選択された1つまたは複数からなる混合溶媒から選択される。
【0078】
本発明の重合反応は、上記モノマーの単独重合および共重合を含む。重合系において、上記モノマーは、0.4mol/L〜7.0mol/Lの濃度を有する。
【0079】
[3.水性反応媒体]
本発明の水性反応媒体は、有機溶媒および水を含む混合反応媒体であるか、あるいは、水が優勢(prominant)反応媒体であるか、あるいは、完全に水である反応媒体である。水性反応媒体にて、水は、反応媒体の体積に対して、好ましくは3.5%〜100%、より好ましくは5%〜100%である。
【0080】
上記有機溶媒または希釈剤は、オレフィン、アルカン、シクロアルカン、芳香族化合物、またはハロゲン化した炭化水素、あるいはそれらの混合物のいずれか1つである。好ましくは、上記有機溶媒は、直鎖状または分枝状または環状の、C〜C20オレフィン、アルカン、シクロアルカン、芳香族化合物、あるいはハロゲン化した炭化水素、あるいはそれらの混合物の少なくとも1つであり、好ましくは、C〜Cオレフィン、C〜C12アルカン、C〜C12シクロアルカン、芳香族化合物、またはそれらのハロゲン化物である。より詳細には、上記オレフィンは、例えばエチレンであり、上記有機溶媒は、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびそれらの異性体ならびにそれらのハロゲン化物からなる群より選択される。本発明の特定の実施形態においては、水性反応媒体は、ハロゲン化した炭化水素を含み得ない。
【0081】
好ましくは、カチオン重合が可能なモノマー(例えば、ビニルモノマー)に対する水性反応媒体中の水の体積比は、(0.03〜25):1であり、好ましくは(0.04〜23.0):1であり、さらに好ましくは(0.05〜21):1であり、なおさら好ましくは(0.05〜19):1である。
【0082】
本発明の重合系において、モノマーに対する有機溶媒の体積比は、(0〜12):1であり得、好ましくは(0〜10):1であり得る。
【0083】
上記媒体は、さらなる水溶性の化合物を含み得る。上記水溶性の化合物は、イオン化合物(例えば、アルカリ金属塩IP、またはアンモニウム塩)、無機のプロトン酸、有機酸等、ならびにアルコールからなる群より選択される1つまたは複数である。ここで、Iは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのアルキル金属である。Pは、塩素、臭素または酸基である。上記アルカリ金属塩の化合物またはアンモニウム塩の化合物は、好ましくは、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウムおよびアンモニウムトリメチルヘキサデシルブロミドからなる群より選択される1つまたは複数である。上記無機のプロトン酸は、好ましくは、硫酸、塩酸およびフルオロホウ酸より選択される1つまたは複数である。上記有機酸は、好ましくは、C〜Cの飽和酸またはC〜Cの不飽和酸(例えば、ギ酸および酢酸)より選択される1つまたは複数である。上記アルコールは、好ましくは、一価のアルコールまたは多価のアルコールを含む、C〜Cの飽和アルコールまたはC〜Cの不飽和アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリシン)より選択される1つまたは複数である。モノマーに対する上記水溶性の化合物の質量比は、(0〜8.0):1であり、好ましくは(0〜6.5):1である。例えば、カチオン重合が可能なモノマー(例えば、ビニルモノマー)に対する、反応媒体中のアルカリ金属塩の質量比、もしくはアンモニウム塩の質量比、またはプロトン酸の質量比あるいはそれらの混合物質量比は、(0〜6.2):1である。そのような化合物は、反応媒体の凝固点を下げて、上記反応の低温での実施を可能にし得る。
【0084】
[4.分散]
本発明のプロセスは、反応効率および製品品質を向上させるために、モノマーの高い変換率および高い分子量を有するポリマーの生成物を得るために、ならびに現在の技術の難点を解決するために、重合系が、均質に分散した状態における不均質な重合系を提示することを可能にする。
【0085】
本発明のカチオン重合のプロセスにおいて、上記重合系は、反応媒体、モノマー、開始剤、ルイス酸、添加剤、任意の希釈剤および任意の分散剤を含む。ここで、モノマーは、相当する単独重合体または共重合体を得るためにカチオン単独重合されるか、またはカチオン共重合される。
【0086】
上記分散剤は、両親媒性の化合物の少なくとも1つである。
【0087】
本発明の上記分散剤は、一般構造式W−Oを有する両親媒性の化合物である。ここで、Wは、1つまたは複数の、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エステル基、アンモニウムイオン、硫酸イオンおよびベンゼンスルホン酸イオンからなる群より選択された1つまたは複数の親水基である。Oは、必要に応じてハロまたはニトロによって置換される、C〜C20アルキル、アリール、アリールC〜C20アルキル、またはC〜C20アルキルアリールの親油基である。いずれの場合においても、上記分散剤とモノマーとの質量比は、(0〜0.4):1であり、好ましくは、(1.0×10−4〜3.0×10−1):1であり、または好ましくは(2.0×10−4〜2.0×10−1):1である。
【0088】
1つの実施形態において、より好ましい分散剤は、アルコール、酸、アルキルベンゼンスルホナート、脂肪酸エステルスルホナート、硫酸アルキル、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそれらのエポキシエタノール付加物(epoxy ethanol adducts thereof)、ならびにアルキルアンモニウムハライドの中の少なくとも1つである。より好ましい例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルアルコール、オレイン酸、ソルビタンモノステアレート、オレイン酸ソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートから少なくとも1つが挙げられる。
【0089】
実際的な応用において、上記分散剤の量は、上記分散剤の型、上記添加剤の型および量、ルイス酸の型および量、モノマーの型および量、有機溶媒の型および量、ならびに反応媒体中の含水量に依存する。同一の分散剤および決定された重合反応系に関し、上記分散剤の量が少ない場合、重合反応系は、均質に分散する効果を有さず、重合反応系を安定させることが困難であり、上記分散剤の量が多い場合、分散効果はより良くなるが、後処理の手順が増し、および分離する困難さが増し、ならびに生成物を精製することが増すため、費用がかかる。熱移動および物質移動が向上し、同時に、重合系において温度分布の均等性が向上し、特に重合変換率および生成物の分子量が増すという利点があるため、本発明従えば、モノマーのカチオン重合は、上述した分散剤を用いることにより水性媒体中にて行われ得、そして上記重合系は、均質に分散した効果を示す。このような効果は、先行技術によって行われ得ない。
【0090】
[5.重合プロセス]
本発明は、上述した開始系を水性反応媒体中にて用いて誘導されるモノマーのカチオン重合のプロセスを提供する。
【0091】
上記重合プロセスにおいて、上記重合系は、反応媒体、モノマー、開始系、任意の希釈剤および任意の分散剤を含む。本発明に従えば、カチオン重合が可能なモノマーは、対応する単独重合体または共重合体を得るために、上述した開始系を水性反応媒体中にて用いることによる単独重合または共重合される。上記重合プロセスは、バッチ式重合法、半連続重合法または連続重合法によって行われる。
【0092】
本発明のカチオン重合は、−120℃〜50℃の範囲の温度にて、好ましくは−90℃〜35℃の範囲の温度にて、より好ましくは−75℃〜15℃の範囲の温度にて行われる。
【0093】
上記重合の時間は、因子(例えば、モノマーの変換率、重合条件および生成効率等)に関連するものである。本発明に従えば、カチオン重合のプロセスの時間は、0.1分〜120分間である。
【0094】
上記カチオン重合のプロセスおよび手順は、本発明の開始系を用いることによる、水性反応媒体中にてビニルモノマーを重合することに特徴付けられる。ここで、上記重合系は、均質に分散した状態を示す。
【0095】
上記カチオン重合のプロセスおよび手順はさらに、本発明の開始系を用いることによる、水性反応媒体中にてビニルモノマーをカチオン重合することに特徴付けられる。ここで、ハロゲン化した炭化水素の有機媒体は、重合系にて用いられなくてもよく、上記反応系は均質に分散した状態を示す。
【0096】
上記カチオン重合のプロセスおよび手順はまた、本発明の開始系を用いることによる、完全に水である反応媒体中にてビニルモノマーを重合することに特徴付けられる。ここで、反応系は、均質に分散した状態を示す。
【0097】
本発明の重合プロセスは、均質に攪拌および混合した後に、慣習的な反応装置(例えば、攪拌反応装置または乱流(turbulence)反応装置)にて行われ得る。
【0098】
本発明の重合プロセスは、高い純度の不活性ガスを用いることによる、配管系、装置または手順を必要せず、この点が先行文献と異なる。
【0099】
本発明のカチオン重合のプロセスにおいて、反応系におけるポリマー粒子は、均質かつ安定に分散され、凝集させることは容易ではない。モノマーの変換率、得られるポリマーの分子量および分子量分布は、広い範囲(large scope)に調整され得る。重合は、高い反応効率で迅速に進行し、変換率は、1時間以内に80%にまで到達し得る。
【0100】
先行技術とは異なり、分散剤を用いた本発明の重合プロセスは、1μm〜3000μmの範囲の粒子サイズを有する微粒子を有する、均質に分散した重合系を形成し得るだけではなく、重合系における質量および熱量の移動を向上させることが利点であり、またはモノマーの変換率およびポリマー生成物の分子量を向上させる効果、およびポリマー生成物の分子量分布を狭くする効果を獲得し得る。本発明のプロセスは、ポリマー濃度または重合温度の上昇させた条件下でさえも、重合系が均質に分散した状態であることを示すことを可能にし得、そして本発明のプロセスは、生成効率を向上する目的、および同時にエネルギーの消費を低減する目的を成し遂げ得る。本発明のプロセスはまた、装置の生成効率を向上させ得、さらにモノマーの濃度を上げ、重合におけるモノマーの変換率を向上させることによりコストを低減し得る。特に、−100℃の温度での現在の生産の重合技術のプロセスと比較すると、本発明の技術は、−60℃の重合温度にて6×10もしくはそれよりも高い分子量を有するポリイソブテンを生成し得、それによって、エネルキーを節約し、消費を低減する目的を達成する。
【0101】
本発明は、開始剤、一般的なルイス酸および好適な添加剤から、インサイチュにて形成された開始系または予め調製された開始系を用いることによる、水を含む反応媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合を開始することができる、経済的でありかつ実施容易なプロセスを提供する。ここで、上記開始剤は、追加的に加えられ得るか、または(他の構造を有するいずれのさらなる開始剤を加えることなしに)水が開始剤として用いられる。重合条件を制御することによって、低い、中間のもしくは高い分子量を有するポリマー生成物が合成され得る。特に、本発明の技術はまた、ポリマー生成物の分子量を1×10まで増大し得、この技術は、先行技術よりも明らかに優れており、先行文献におけるポリマー生成物の分子量が低いという技術的な困難を克服する。
【0102】
本発明の重合プロセスは、重合のプロセスおよび手順を簡易化し得るだけでなく、コストを削減し得る。環境に優しくあるように、そして明らかに市販の応用の見通しを有するように、水が、反応媒体として用いられる。例としてブチルゴムの生産を挙げると、改善された技術的なプロセスは、本発明の1つの実施形態を用いた図1によって簡単に描かれ得る。現在の相当する重合技術と比較すると、装置の量を顕著に減少させ、生産効率を向上し、および生産コストを低減するために、本発明は、重合プロセスを非常に簡易化し、溶媒、回復系および装置を用いることを最小限にし、ハロゲン化したアルカンを必要とさえせず、有機溶媒を使用することを除く。
【0103】
本発明は、以下の顕著な利点を有する。
1.慣習的なルイス酸は、水性反応媒体中または完全に水である反応媒体中にて行われるカチオン重合のプロセスにて用いられ得る。
2.水性反応媒体は、重合の間に水性媒体のより良い分散効果および高い熱移動効果を成し遂げ得、これによって、重合系における温度分布の均等性が向上させ、製品品質を制御し、エネルギー消費を低減し、エネルギーを節約し、排出を減少させ、そして生産コストを削減するという点で有利である。
3.本発明の技術は、先行技術におけるハロゲン化した炭化水素(例えば、塩化メチル)を使用しないといった効果を果たし得、以下の利点を有する:
(1)原材料のコストを大幅に低減するために、環境に優しくなく、高価なハロ炭化水素と安価でありかつ環境に優しい水とを置き換える;
(2)環境に優しくないハロゲン化した炭化水素を用いることによって結果として起こり得る環境汚染を排除する;
(3)技術的なプロセスを簡易化し、タンクに貯蔵すること、精留すること、塩化メチルを乾燥すること等の化学的なユニットを取り除く。
(4)構成および作業に関連する費用を避け、装置への投資を低減させ、エネルギーを節約し、費用を削減する;
(5)後処理の間に生じる、装置の激しい腐食といった現象および廃ガスによる環境汚染を除去する。
4.生産効率を向上する、および他の局面から生産コストを低減する目的を果たすために、重合系におけるモノマーの仕込み量およびポリマーの量を上昇させることによって、同一の体積を有する装置における生成物はより多く生産される。
5.冷却装置の負荷を低減するため、低熱源の消費を低下させるためおよびエネルギー消費および材料の消費を低減するために、ほどよく上昇した重合温度(例えば、−60℃))にて重合させる。
6.水性反応媒体中の有機溶媒としてアルカンまたはシクロアルカンを用いる条件下にて、均質に分散した不均質性の重合系を得、重合プロセスを変更し、現在の溶液重合のプロセスの欠点および問題を克服し、熱移動および物質移動の効果を向上し、製品品質を改善し、そしてモノマーの重合の変換速度および生産効率を向上する。
7.本発明は、完全に水性である媒体中でのビニルモノマーのカチオン重合を行い、溶媒を貯蔵するタンク、乾燥するおよび精製する系、ならびに分離するおよび回収する系を省略し、同時に相当する装置が行う仕事(land occupation)および構成する投資を節約し、相当する技術的なプロセスを回避し、材料の消費およびエネルギー消費を低減し、生産コストを低減する。
【0104】
[実施例]
本発明は、下記の実施例によって例証されるが、その範囲またはその実行する方法は、その実施例によって限定されない。
【0105】
下記の実施例において、ポリマー生成物の微細構造のパラメーターを、当該分野における一般的な技術的手法によって測定し、すなわち、生成物の数平均分子量、重量平均分子量、ピーク分子量および分子量分布を、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。分子量は、重量平均分子量(M)により表される。分子量分布は、分布指数(M/M)により表される。測定は、25℃の温度にて行った。ここで、テトラヒドロフランを、1mL/分の流速を有する移動相として用いる。Chongqing Optical Instrument Factoryにより製造されたXSZ−HS型の位相差顕微鏡を使用して、重合系の顕微鏡的な形態学を観察するために用いられる。ポリマーの微細構造および構成内容を、H−NMRにて測定する。ここで、CDClを溶媒として用い、テトラメチルシラン(TMS)が、内部標準である。
【0106】
[実施例1]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、0.1gのソルビタンモノオレエートおよびイソブテンを重合装置に加えた。ここで、全量は35mLであった。反応媒体中の水は、100%の体積分率を占めており、および反応系におけるIBは、5mol/Lの濃度であった。重合を開始するために、水、トリフェニルホスホラスサルファイド、ジ−t−ブチル−p−クミルペルオキシドおよびAlCl(水:ジ−t−ブチル−p−クミルペルオキシド:トリフェニルホスホラスサルファイド:AlClのモル比は、6×10−3:3.4×10−4:0.7:1であった。)を含む開始系溶液を加え、IBに対するAlClのモル比が6.4×10−3:1となるようにした。1時間にわたる反応の後に、反応を停止するためにNaOH/エタノール溶液を加えた。ここで、NaOHは5%の質量パーセントを有する。未反応のイソブテンを水を用いて洗浄し、凝固させ、分離した後に、次いで水を含む重合生成物を得た。振動篩を用いることによって空気乾燥し、圧縮することによって脱水した後に、乾燥したポリイソブテン生成物を得た。重合生成物の収率は、65%であり、Mは6.3×10であり、M/Mは5.0であった。
【0107】
[実施例2]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、0.2gのソルビタンモノオレエート、イソプレン(IP)およびイソブテンを重合装置に加えた。ここで、全量は40mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、反応系におけるIBは、5.8mol/Lの濃度であり、IBに対するIPのモル比は、0.006:1であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、4.47×10−2:4:1であった。)を含む開始系溶液を加え、IBに対するAlClのモル比が3.8×10−3:1となるようにした。10分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。共重合体の収率は、70%であり、Mは1.3×10であり、M/Mは3.2であり、IPの含有率は0.9mol%であった。
【0108】
[実施例3]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、イソブテン(IB)、0.1gのソルビタンモノオレエートおよび0.005gのドデシル硫酸ナトリウムを重合装置に加えた。ここで、全量は30mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、[IB]=3.9mol/Lであった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、p−ジクミルアセテート、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:p−ジクミルアセテート:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、7.4×10−3:1×10−4:1:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が3.8×10−4:1となるようにした。重合系は、乳白色の均質に分散した状態を示した。2分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。ポリマーの収率は、24%であり、Mは2.1×10であり、M/Mは3.4であった。
【0109】
[実施例4]
−60℃の温度にて、水、3.8gのLiCl、0.2gのNaCl、0.2gのソルビタンモノオレエート、0.01gのセチルトリメチルアンモニウムブロミドおよびイソブテンを重合装置に加えた。ここで、全量は30mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、[IB]=5.8mol/Lであった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、オルトクレゾール、フタル酸エーテル(phthalic ether)、水およびAlCl(水:オルトクレゾール:フタル酸エーテル:AlClのモル比は、3×10−2:3×10−2:0.8:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が5×10−3:1となるようにした。重合系は、均質に分散した状態を示した。1分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。モノマーの変換率は、48%であり、Mは1.9×10であり、M/Mは3.6であった。
【0110】
[実施例5]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、0.12gのソルビタンモノオレエート、イソブテンおよびイソプレンを重合装置に加えた。ここで、全量は35mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、反応系におけるIBは、5mol/Lの濃度であり、IBに対するIPのモル比は、0.017:1であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、N,N−ジメチルアセトアミドおよびAlCl(水:N,N−ジメチルアセトアミド:AlClのモル比は、2×10−3:0.7:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が6×10−3:1となるようにした。2分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。重合の生成物の収率は、60%であり、Mは8.4×10であり、M/Mは2.5であり、IPは2.1mol%の含有率であった。
【0111】
[実施例6]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、0.1gのソルビタンモノオレエートおよびイソブテンを重合装置に加えた。ここで、全量は35mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、反応系におけるIBは、5mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、3×10−3:4:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が5×10−3:1となるようにした。5分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。重合生成物の収率は、44%であり、Mは1.2×10であり、M/Mは3.3であった。
【0112】
[実施例7]
−60℃の温度にて、5gのLiCl、0.26gのNaCl、水、n−ヘキサン、イソブテンおよびp−メチルスチレン(MSt)を重合装置に加えた。ここで、全量は42mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、反応系におけるIBは、5.8mol/Lの濃度であり、p−メチルスチレンは0.36mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、ジフェニルスルホキシドおよびAlCl(水:ジフェニルスルホキシド:AlClのモル比は、4×10−2:1:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が6.0×10−3:1となるようにした。2分間の反応の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。共重合の生成物の収率は、40%であり、Mは8.5×10であり、M/Mは4.0であり、共重合体におけるp−メチルスチレンは20%の質量パーセントを有していた。
【0113】
[実施例8]
−60℃の温度にて、イソブテン、水、7.6gのLiCl、0.4gのNaClおよび0.5mLのオレイン酸を重合装置に加えた。ここで、全量は36mLであった。反応媒体中の水は、100%の含有量であり、反応系におけるIBは、1.9mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、水、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、5×10−3:8:1であった。)を含む開始系を加え、7日間沈静させた後に重合を開始するために用い、IBに対するAlClのモル比が0.011:1となるようにした。5分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。ポリマーの収率は、34%であり、Mは7.6×10であり、M/Mは3.7であった。
【0114】
[実施例9]
−60℃の温度にて、イソブテン、水、7.6gのLiCl、0.4gのNaClおよび0.4gのソルビタンモノオレエートを重合装置に加えた。ここで、全量は44mLであった。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、反応系におけるIBは、3.7mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、水、ジフェニルエーテル、塩化ベンジルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:塩化ベンジル:AlClのモル比は、5×10−3:8:2.5×10−4:1であった。)を含む開始系を加え、7日間沈静させた後に重合を開始するために用い、IBに対するAlClのモル比が0.005:1となるようにした。3分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。ポリマーの収率は、42%であり、Mは3.8×10であり、M/Mは2.6であった。
【0115】
[実施例10]
−30℃の温度にて、20mLのIBモノマー、20mLの、23%のLiClおよび1.2%のNaClを含む水溶液を重合装置に加えた。反応媒体中の水相は、100%の体積分率を占めており、重合系におけるIBは、5.8mol/Lの濃度であった。均質に混合した後に、重合を開始するために、水、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、3×10−3:4:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が1×10−2:1となるようにした。10分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。ポリマーの収率は、89%であり、Mは7.8×10であり、M/Mは1.8であった。
【0116】
[実施例11]
−60℃の温度にて、5gのLiCl、0.26gのNaCl、水、n−ヘキサン、イソブテンおよびp−メチルスチレン(MSt)を重合装置に加えた。ここで、全量は42mLであった。反応媒体中の水相が、48%の体積分率を占めており、n−ヘキサンが52%の体積分率を占めていた。反応系におけるイソブテンは、1.4mol/Lの濃度であり、p−メチルスチレンは、0.4mol/Lの濃度であった。重合を開始するために、水、トリブチルホスフィート、ジフェニルスルホキシドおよびAlCl(水:トリブチルホスフィート:ジフェニルスルホキシド:AlClのモル比は、0.2:0.02:1:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が1×10−2:1となるようにした。2分間の反応の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。共重合の生成物の収率は、58%であり、Mは1.1×10であり、M/Mは6.3であり、共重合体におけるp−メチルスチレンは、61%の質量パーセントを占めていた。
【0117】
[実施例12]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、n−ヘキサンおよびイソブテン(IB)を重合装置に加えた。ここで、全量は40mLであった。反応媒体中の水相は、57%の体積分率を占めており、n−ヘキサンは、43%の体積分率を占めており、反応系におけるイソブテンは、1.5mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、HCl、トリフェニルホスフィンおよびAlCl(水:HCl:トリフェニルホスフィン:AlClのモル比は、0.02:0.01:0.94:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が1.0×10−2:1となるようにした。2分後に、重合を静止した。重合の生成物の収率は、55%であり、Mは4.8×10であり、M/Mは4.3であった。
【0118】
[実施例13]
−60℃の温度にて、水、5gのLiCl、0.26gのNaCl、イソブテンおよびn−ヘキサンを重合装置に加えた。ここで、全量は40mLであった。反応媒体中の水相が、57%の体積分率を占めており、反応系におけるイソブテンは、1.5mol/Lの濃度であった。重合を開始するために、水、トリフェニルホスフィンオキシドおよびAlCl(水:トリフェニルホスフィンオキシド:AlClのモル比は、0.028:1:1であり、8日間沈静させた後に用いた。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が5×10−3:1となるようにした。0.5分間の反応の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。重合の生成物の収率は、68%であり、Mは4.9×10であり、M/Mは2.8であった。
【0119】
[実施例14]
−60℃の温度にて、n−ヘキサン、イソブテン、7.6gのLiCl、0.4gのNaClおよび水を重合装置に加えた。ここで、全量は50mLであった。反応媒体中の水相は、63%の体積分率を占めており、反応系におけるイソブテンは、0.46mol/Lの濃度であった。重合を開始するために、水、スルホランおよびAlCl(水:スルホラン:AlClのモル比は、0.05:0.79:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が3.8×10−2:1となるようにした。均質に分散した重合系を攪拌することにより形成した。2分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。重合の生成物の収率は、52%であり、Mは5.2×10であり、M/Mは7.7であった。
【0120】
[実施例15]
−40℃の温度にて、68重量%の質量分率であるエチレングリコール、イソブテン、イソオクテンおよび0.2gのソルビタンステアレートを有する水溶液を重合装置に加えた。ここで、全量は57mLであった。反応媒体中の水は、22%の体積分率を占めており、反応系における[IB]は、1.6mol/Lの濃度であった。攪拌条件下にて、重合を開始するために、水、ジフェニルエーテルおよびAlCl(水:ジフェニルエーテル:AlClのモル比は、1.5×10−2:4:1であった。)を含む開始系を加え、IBに対するAlClのモル比が1.0×10−2:1となるようにした。重合系は、均質に分散した状態を示した。10分間の重合の後に、停止するための方法および後処理の方法としては、実施例1と同一の方法を用いた。ポリマーの収率は、62%であり、Mは2.2×10でありM/Mは3.3であった。
【0121】
本発明は、上述した特定の実施例によって詳述されている。しかし、本発明がこれらの特定の実施例に限定されないことは、理解されるべきである。本発明の範囲内において、当業者は、種々の改善を行い得るが、これらの改善は明らかに、本願の開示の範囲の中である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の一実施形態の重合プロセスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合のための重合プロセスであって、
(1)開始剤、添加剤、ルイス酸および任意の希釈剤からなる開始系、
水性反応媒体、
イソオレフィンモノマーおよび共重合可能な任意のモノマー、ならびに
任意の分散剤
を含む重合系を形成する工程、ならびに
(2)上記工程(1)にて形成した重合系を重合させて、上記イソオレフィンモノマーの単独重合体、または、上記イソオレフィンモノマーと上記共重合可能な任意のモノマーとの共重合体を得る工程
を包含する、重合プロセス。
【請求項2】
前記工程(1)が、
まず開始系を形成し、次いで、得られた開始系を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマー、水性反応媒体および任意の分散剤と混合すること、あるいは
開始剤、添加剤、ルイス酸および任意の希釈剤からなる群より選択された1つまたは複数を、イソオレフィンモノマー、共重合可能な任意のモノマー、水性反応媒体および任意の分散剤と直接的に混合すること
を含む、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項3】
バッチ式重合法、半連続重合法または連続重合法である、請求項1または2に記載の重合プロセス。
【請求項4】
前記イソオレフィンモノマーが、下記の構造式
CH=CR
を有する化合物から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合プロセスであって、
は、HまたはC〜C10アルキル、好ましくはメチルを表しており、Rは、C〜C10アルキルまたはC〜C10シクロアルキルを表しており、および/あるいは
前記共重合可能なモノマーは、共役のまたは非共役のC〜C20ジオレフィン、芳香族ビニル化合物、および共役のまたは非共役のC〜C20ジオレフィンと芳香族ビニル化合物との組合せからなる群より選択される、重合プロセス。
【請求項5】
前記水性反応媒体が、ハロゲン化した炭化水素を含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記重合系が、重合前、重合中および/または重合後において、均質に分散した状態を示し、そしてその粒子サイズが、好ましくは1〜3000μmの範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項7】
前記重合が、−100℃〜50℃の範囲の温度にて、好ましくは−85℃〜35℃の範囲の温度にて、より好ましくは−75℃〜15℃の範囲の温度にて行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項8】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の重合プロセスによって調製された、イソオレフィンモノマーの単独重合体、またはイソオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーとの共重合体。

【図1】
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【公表番号】特表2013−506012(P2013−506012A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530100(P2012−530100)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/CN2010/001462
【国際公開番号】WO2011/035544
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(512077859)北京化工大学 (2)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING UNIVERSITY OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】15 Beisanhuan East Road,Chaoyang District,Beijing,100029,P.R.China
【Fターム(参考)】