説明

イソソルビド系ポリアミドおよびその製造方法

【課題】熱分解温度およびガラス転移温度が高く、且つ成形加工が可能なイソソルビド系ポリアミドを提供すること。
【解決手段】下記式(1)


(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または2価の芳香族含有基を表す。)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とするイソソルビド系ポリアミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソソルビド系ポリアミドおよびその製造方法に関し、より詳しくは、イソソルビド骨格またはその誘導体骨格を含有する繰り返し単位を有するポリアミドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なポリアミドであるナイロン66は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを重縮合させることによって得られるものであり、融点が高く、耐熱性に優れたポリアミドとして知られている。
【0003】
近年、環境負荷低減の観点から、ナイロン66のような人工的に合成された原料から製造されるポリアミドに代わるものとして、植物由来の原料から製造されたポリアミドが提案されている。例えば、化学工業日報、2009年8月12日発行、第8面(非特許文献1)には、ひまし油を原料としたポリアミド11が開示されている。このポリアミド11は炭素成分が100%植物由来であるという点で注目されているものの、貯蔵弾性率(1.04GPa)や剛性に劣り、さらに、ガラス転移温度(37℃)が低いため、高温での機械的強度に劣るといった問題があった。
【0004】
また、A.Caoutharら(非特許文献2)には、4,4’−ジアシルクロリド−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトールと4,4’−ジアミノジフェニルスルホンとをマイクロ波を照射して合成したイソソルビド系ポリアミドが開示されている。このイソソルビド系ポリアミドは熱分解温度が高く、熱分解されにくいものの、100〜250℃の温度範囲にはガラス転移温度が検出されず、成形加工が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】化学工業日報、2009年8月12日発行、第8面
【非特許文献2】A.Caoutharら、European Polymer Journal、2007年、第43巻、220−230頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、熱分解温度およびガラス転移温度が高く、且つ成形加工が可能なイソソルビド系ポリアミドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するジアミンとイソソルビド系ジカルボン酸とを重合させることによって、熱分解温度およびガラス転移温度が高く、且つ成形加工が可能なイソソルビド系ポリアミドが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のイソソルビド系ポリアミドは、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
(式(2)中、Zは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。)
で表される2価の芳香族含有基を表す。)
で表される繰り返し単位を含有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のイソソルビド系ポリアミドの製造方法は、下記式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるイソソルビド系ジカルボン酸と、
下記式(4):
N−R−NH (4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【0016】
【化4】

【0017】
(式(2)中、Zは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。)
で表される2価の芳香族含有基を表す。)
で表されるジアミンとを亜リン酸トリフェニル類の存在下で反応させることを特徴とするものである。
【0018】
このようなイソソルビド系ポリアミドの製造方法においては、前記イソソルビド系ジカルボン酸と前記ジアミンとを3級アミンおよび無機塩の存在下で反応させることが好ましい。
【0019】
なお、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいて、成形可能な程度にガラス転移温度が高くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のイソソルビド系ポリアミドは、イソソルビド骨格またはその誘導体骨格と2つのテレフタル酸骨格とを備えるとともに、前記式(4)で表されるジアミン由来の骨格を備えている。その結果、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、イソソルビド骨格またはその誘導体骨格および2つのテレフタル酸骨格の剛性によってガラス転移温度は高くなるものの、前記式(4)で表されるジアミン由来の骨格の靭性によってガラス転移温度の上昇が適度に抑制され、成形可能なものとなると推察される。
【0020】
一方、ジアミン骨格がスルホニルジフェニルジアミン骨格になると十分な靭性が発現しないため、イソソルビド骨格またはその誘導体および2つのテレフタル酸骨格の剛性によって高くなったガラス転移温度はそのまま高く維持され、成形可能な程度まで抑制されないと推察される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱分解温度およびガラス転移温度が高く、且つ成形加工が可能なイソソルビド系ポリアミドを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明のイソソルビド系ポリアミドについて説明する。本発明のイソソルビド系ポリアミドは、下記式(1):
【0024】
【化5】

【0025】
で表される繰り返し単位を含有するものである。
【0026】
前記式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基を表す。また、RとR、および/または、RとRは互いに結合してシクロアルキル基を形成していてもよい。このようなシクロアルキル基の炭素数としては3〜12が好ましく、3〜6がより好ましい。
【0027】
また、前記式(1)中のRは炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【0028】
【化6】

【0029】
で表される2価の芳香族含有基を表す。前記式(2)において、Zは炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜6)の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。
【0030】
本発明のイソソルビド系ポリアミドは、イソソルビド骨格またはその誘導体骨格および2つのテレフタル酸骨格を有するため、剛直な構造となり、熱分解温度、ガラス転移温度および貯蔵弾性率が高くなる。しかしながら、本発明のイソソルビド系ポリアミドには、前記式(4)で表されるジアミン由来の骨格も含まれるため、靭性も付与される。その結果、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、剛性と靭性がバランスよく発現するため、ガラス転移温度の上昇が適度に抑制され、成形加工が可能となる。
【0031】
このような繰り返し単位のうち、R〜Rが全て水素原子であるものが好ましい。また、分子量が増大するという観点からはRが炭素数1〜14(より好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状アルキレン基、および炭素数1〜14(より好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状アルケニレン基であることが好ましく、ガラス転移温度がより高くなるという観点からはRが前記式(2)で表される2価の芳香族含有基であることが好ましい。
【0032】
本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、前記式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよいが、熱分解温度、ガラス転移温度および貯蔵弾性率が高く、剛性に優れるという観点から、前記式(1)で表される繰り返し単位の含有率としては、全繰り返し単位100モル%に対して95モル%以上が好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0033】
このようなイソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度としては100〜250℃が好ましく、105〜240℃がより好ましい。ガラス転移温度が前記下限未満になると高温での機械的強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると成形加工性が低下する傾向にある。また、本発明のイソソルビド系ポリアミドは耐熱性に優れており、その熱分解温度としては300℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましい。さらに、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、前記熱分解温度(Td)と前記ガラス転移温度(Tg)との差(Td−Tg)が80〜200℃であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましい。Td−Tgが前記下限未満になると成形時に分解するなど成形加工性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとTgが低すぎるため、耐熱性が低下する傾向にある。
【0034】
また、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量は2500以上であることが好ましい。また、40℃における貯蔵弾性率としては2.5GPa以上であることが好ましい。
【0035】
次に、本発明のイソソルビド系ポリアミドの製造方法について説明する。本発明のイソソルビド系ポリアミドは、下記式(3):
【0036】
【化7】

【0037】
で表されるイソソルビド系ジカルボン酸と、下記式(4):
N−R−NH (4)
で表されるジアミンとを亜リン酸トリフェニル類の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0038】
前記式(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基を表す。このようなイソソルビド系ジカルボン酸を用いることによって、本発明のイソソルビド系ポリアミドはイソソルビド骨格またはその誘導体骨格と2つのテレフタル酸骨格を有する剛直な構造となり、熱分解温度、ガラス転移温度および貯蔵弾性率が高くなる。このようなイソソルビド系ジカルボン酸は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このようなイソソルビド系ジカルボン酸のうち、前記式(3)中のR〜Rが全て水素原子であるもの、すなわち、4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトール、4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−マンニトール、4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−L−ソルビトールなどが好ましい。
【0039】
本発明に用いられるイソソルビド系ジカルボン酸は、例えば、以下の方法により得ることができる。すなわち、先ず、下記式(5):
【0040】
【化8】

【0041】
(前記式(5)中、R〜Rは前記式(3)中のR〜Rと同義である。)
で表されるイソソルビドおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のイソソルビド系化合物とp−ハロゲン化ベンゾニトリルとを反応させて、下記式(6):
【0042】
【化9】

【0043】
(前記式(6)中、R〜Rは前記式(3)中のR〜Rと同義である。)
で表されるイソソルビド系シアン化合物を調製する。この反応は溶媒中、触媒の存在下で実施することが好ましい。
【0044】
前記イソソルビド系化合物としては、前記式(5)中のR〜Rが全て水素原子であるもの、すなわち、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−ソルビトール(イソイディド)が好ましい。また、イソソルビド系化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。さらに、前記p−ハロゲン化ベンゾニトリルとしては、p−フルオロベンゾニトリル、p−クロロベンゾニトリルなどが好ましい。また、ハロゲン化ベンゾニトリルは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記溶媒としては特に制限はないが、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などの極性溶媒が好ましい。また、前記触媒としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩触媒が好ましい。さらに、反応温度としては特に制限はないが、120〜180℃が好ましく、また、反応時間も特に制限はないが、6〜18時間が好ましい。
【0046】
このようにして得られるイソソルビド系シアン化合物としては、前記式(6)中のR〜Rが全て水素原子であるもの、すなわち、1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−ソルビトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−マンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−L−ソルビトールなどが好ましい。
【0047】
次に、前記式(6)で表されるイソソルビド系シアン化合物を強酸の存在下で加水分解することによってシアノ基がカルボキシル基に変換され、前記式(3)で表されるイソソルビド系ジカルボン酸が得られる。このような加水分解の条件としては特に制限はなく、ニトリルからカルボン酸を得る反応条件と同様の条件を適用することができる。また、前記強酸としては特に制限はないが、硫酸、塩酸などが好ましい。
【0048】
また、本発明に用いられるジアミンは、下記式(4):
N−R−NH (4)
で表されるものであって、前記式(4)中のRは、炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【0049】
【化10】

【0050】
で表される2価の芳香族含有基を表す。前記式(2)中、Zは炭素数1〜14(好ましくは炭素数1〜6)の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。
【0051】
このようなジアミンを用いることによってイソソルビド系ポリアミドに靭性が付与される。これにより、本発明のイソソルビド系ポリアミドにおいては、剛性と靭性がバランスよく発現するため、イソソルビド骨格またはその誘導体骨格と2つのテレフタル酸骨格という剛直な構造によるガラス転移温度の上昇が適度に抑制され、成形加工が可能となる。
【0052】
前記式(4)で表されるジアミンは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このようなジアミンのうち、イソソルビド系ポリアミドの分子量が増大するという観点からは前記式(4)中のRが炭素数1〜14(より好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状アルキレン基または炭素数1〜14(より好ましくは炭素数1〜12)の直鎖状アルケニレン基であるジアミンが好ましく、イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度がより高くなるという観点からは前記式(4)中のRが前記式(2)で表される2価の芳香族含有基であるジアミンが好ましい。
【0053】
本発明に用いられる亜リン酸トリフェニル類としては、前記イソソルビド系ジカルボン酸と前記ジアミンとの重縮合反応を進行させるものであれば特に制限はないが、トリフェニルホスファイト、トリ−o−トリルホスファイト、トリ−m−トリルホスファイト、トリ−p−トリルホスファイト、トリ−o−クロロフェニルホスファイト、トリ−m−クロロフェニルホスファイト、トリ−p−クロロフェニルホスファイトなどが好ましい。このような亜リン酸トリフェニル類を用いることによって比較的低温で前記重縮合反応を進行させることが可能となる。また、亜リン酸トリフェニル類は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明のイソソルビド系ポリアミドの製造方法においては、このような亜リン酸トリフェニル類の存在下で前記イソソルビド系ジカルボン酸と前記ジアミンとを重縮合させる。イソソルビド系ジカルボン酸とジアミンとの混合比(モル比)としては、イソソルビド系ジカルボン酸:ジアミン=1:1〜1:4が好ましく、1:1〜1:2がより好ましい。また、前記亜リン酸トリフェニル類の添加量としては、イソソルビド系ジカルボン酸1モルに対して0.5〜4モルが好ましく、1〜2モルがより好ましい。また、前記重縮合反応における反応温度としては80〜140℃が好ましく、反応時間としては3〜8時間が好ましい。
【0055】
このような重縮合反応は溶媒中で実施することが好ましい。前記溶媒としては、前記イソソルビド系ジカルボン酸および前記ジアミンを良好に溶解させ、且つイソソルビド系ポリアミドに対して良溶媒となるものであれば特に制限はないが、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素などのアミド系溶媒、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)およびそれらと前記アミド系溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
【0056】
また、本発明のイソソルビド系ポリアミドの製造方法においては、前記重縮合反応を促進させるために、3級アミンおよび/または無機塩を添加することが好ましい。このような3級アミンとしては、ピリジン、イミダゾール、ピコリン、ルチジンなどが挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、3級アミンの添加量としてはイソソルビド系ジカルボン酸1モルに対して1〜4モルが好ましい。前記無機塩としては、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛などが挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、無機塩の添加量としてはイソソルビド系ジカルボン酸1モルに対して2〜10モルが好ましい。
【0057】
このようにして得られる本発明のイソソルビド系ポリアミドを含有する溶液を、イソソルビド系ポリアミドに対して貧溶媒となるもの(例えば、メタノールなどのアルコール類)に注入することによって沈殿が生成し、この沈殿を回収することによって本発明のイソソルビド系ポリアミドが得られる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られたポリアミドの物性は以下の方法により測定した。
【0059】
H−NMR測定>
核磁気共鳴分析装置(日本電子(株)製「LA−500」)を用いて下記条件でポリアミドのH−NMRスペクトルを測定した。
(測定条件)
周波数:500MHz
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶媒:ジメチルスルホキシド−d(DMSO−d
<FT−IR測定>
フーリエ変換赤外分光光度計(ニコレー社製「Avatar360」)を用いて、全反射法(ATR法)によりFT−IRスペクトルを測定した。
【0060】
<分子量測定>
得られたポリアミドを無水トリフルオロ酢酸(TFA)で処理してポリアミド誘導体を調製し、このポリアミド誘導体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、昭和電工(株)製「Shodex GPC−101」)を用いて下記条件で数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定し、多分散度(Mw/Mn)を求めた。
(測定条件)
カラム:昭和電工(株)製「Shodex GPC KF−80M」2本および昭和電工(株)製「Shodex GPC KF−802」1本の直列接続
溶媒:テトラヒドロフラン(THF、流量:1.0ml/分)
標準物質:標準ポリスチレン
<ガラス転移温度測定>
得られたポリアミド約5.0mgを精秤し、示差走査熱分析装置(TAインスツルメント社製「DSC Q1000」)を用いて25℃から300℃まで昇温速度10℃/分で熱分析を行ない、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0061】
<熱分解温度測定>
得られたポリアミド約7.0mgを精秤し、熱量分析装置(理学電機(株)製「Thermoplus TG8120」)を用いて30℃から500℃昇温速度10℃/分で加熱時の質量変化を測定し、質量が5質量%減少したときの温度を熱分解温度(Td)とした。
【0062】
<貯蔵弾性率測定>
得られたポリアミドを250℃で溶融し、これをプレス成形により厚さ1.0mmの平板に成形した。この平板から約5.0mm×約30mmの試験片(厚さ:1.0mm)を切り出して寸法を正確に測定した。その後、この試験片について、粘弾性スペクトルメーター(アイ・ティー計測制御(株)製「DVA−200」)を用いて昇温速度10℃/分で貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0063】
また、実施例および比較例で使用した4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトールは以下の方法により調製した。
【0064】
(調製例1)
先ず、下記式:
【0065】
【化11】

【0066】
で表される反応により1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−ソルビトール(式(III))を調製した。すなわち、フラスコにイソソルビド(式(I)、21.92g、150.0mmol)、炭酸カリウム(42.85g、310mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、130ml)を入れ、20分攪拌した。次いで、この溶液に、DMF(30ml)に溶解した4−フルオロベンゾニトリル(式(II)、37.58g、310.0mmol)を滴下した後、150℃で12時間還流した。得られた溶液を室温まで冷却した後、メタノール/水(=1/1(質量比))混合溶媒に注いで沈殿を生成させた。この沈殿をろ過により回収した後、エタノール/酢酸エチル(=3/1(質量比))混合溶媒中で再結晶を行ない、得られた結晶を80℃で乾燥させて1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−ソルビトール(式(III)、32.0g、収率:61%)を得た。
【0067】
この1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−ソルビトールの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl,ppm):δ4.03−4.17(m,4H,イソソルビド)、4.63−4.64(m,1H,イソソルビド)、4.85−4.90(m,2H,イソソルビド)、5.04−5.06(m,1H,イソソルビド)、6.99(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.03(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.59−7.62(m,4H,ArH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1250(C−O−C)、1600(C−O−C,イソソルビド)、2221(―C≡N―)。
【0068】
(調製例2)
次に、下記式:
【0069】
【化12】

【0070】
で表される反応により4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトール(式(IV))を調製した。すなわち、フラスコに水(50ml)を入れ、これに硫酸(40ml)を徐々に滴下した後、調製例1で得られた1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−(4−シアノフェニル)−D−ソルビトール(式(III)、8.84g、25.39mmol)を添加して150℃で2時間還流した。得られた溶液を室温まで冷却した後、水に注いで沈殿を生成させた。この沈殿をろ過により回収した後、1NのNaOH水溶液、1NのHCl水溶液、アセトンで順次洗浄した後、得られた固形分を80℃で乾燥させて4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトール(式(IV)、9.0g、収率:92%)を得た。
【0071】
この4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトールの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.80−3.92(m,2H,イソソルビド)、3.99−4.10(m,2H,イソソルビド)、4.57(d,1H,J=3.9Hz,イソソルビド)、5.00−5.02(m,3H,イソソルビド)、7.02−7.08(m,4H,ArH)、7.85−7.88(m,4H,ArH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1252(C−O−C)、1602(C−O−C,イソソルビド)、1673(C=O)。
【0072】
(実施例1)
下記式:
【0073】
【化13】

【0074】
で表される反応により前記式(VI)(R:n−ブチレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミドを調製した。すなわち、調製例2で得られた4,4’−ジカルボキシ−1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジ−O−フェニル−D−ソルビトール(式(IV)、579.33mg、1.5mmol)、1,4−ジアミノブタン(式(V)(R:n−ブチレン基)、和光純薬工業(株)製、133.23mg、1.5mmol)、トリフェニルホスファイト((PhO)P、関東化学(株)製、2mL)、塩化カルシウム(和光純薬工業(株)製、350mg、3.5mmol)、N−メチルピロリドン(NMP、和光純薬工業(株)製、8mL)およびピリジン(和光純薬工業(株)製、2mL)を、冷却装置を備えるガラス容器に入れた。このガラス容器内に窒素ガスを20ml/分の流量で供給しながら、このガラス容器をオイルバスで加熱して100〜110℃で6時間反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、メタノールに注いで沈殿を生成させた。この沈殿をろ過により回収した後、水およびアセトンで順次洗浄した後、得られた固形分を80℃で乾燥させて前記式(VI)(R:n−ブチレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(495mg、収率:75%)を得た。
【0075】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.52−1.54(m,4H,CH)、3.26−3.27(m,4H,NH−CH)、3.89−4.02(m,4H,イソソルビド)、4.57(d,1H,J=4.9Hz,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、7.01(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.79(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.82(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、8.34(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1242(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド)、3314(NH,アミド)。
【0076】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,6−ジアミノヘキサン(式(V)(R:n−ヘキシレン基)、東京化成工業(株)製、174.5mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−ヘキシレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(570mg、収率:81%)を得た。
【0078】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.30−1.32(m,4H,CH)、1.50−1.51(m,4H,CH)、3.22−3.23(m,4H,NH−CH)、3.89−4.03(m,4H,イソソルビド)、4.57(d,1H,J=4.9Hz,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、7.00(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.79(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.81(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.30(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1242(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド),3314(NH,アミド)。
【0079】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,8−ジアミノオクタン(式(V)(R:n−オクチレン基)、和光純薬工業(株)製、220.72mg,1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−オクチレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(610mg、収率:82%)を得た。
【0081】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.28−1.30(m,8H,CH)、1.50−1.51(m,4H,CH)、3.22−3.23(m,4H,NH−CH)、3.89−4.02(m,4H,イソソルビド)、4.58(d,1H,J=4.9Hz,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、7.00(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.79(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.82(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.31(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1239(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド)、3323(NH,アミド)。
【0082】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)、および40℃での貯蔵弾性率(E’)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,8−ジアミノノナン(式(V)(R:n−ノニレン基)、Acros社製、242.2mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−ノニレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(550mg、収率:70%)を得た。
【0084】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.25−1.28(m,10H,CH)、1.48−1.49(m,4H,CH)、3.20−3.22(m,4H,NH−CH)、3.89−4.03(m,4H,イソソルビド)、4.56−4.57(m,1H,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、6.99(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.78(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.81(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.30(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1240(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド)、3323(NH,アミド)。
【0085】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0086】
(実施例5)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,10−ジアミノデカン(式(V)(R:n−デシレン基)、Acros社製、259.28mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−デシレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(690mg、収率:88%)を得た。
【0087】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.25−1.27(m,12H,CH)、1.48−1.49(m,4H,CH)、3.22−3.23(m,4H,NH−CH)、3.89−4.01(m,4H,イソソルビド)、4.57(d,1H,J=4.9Hz,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、7.00(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.78(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.81(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.30(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1242(C−O−C)、1605(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド)、3323(NH,アミド)。
【0088】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)、および40℃での貯蔵弾性率(E’)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0089】
(実施例6)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,11−ジアミノウンデカン(式(V)(R:n−ウンデシレン基)、東京化成工業(株)製、279.5mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−ウンデシレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(520mg、収率:63%)を得た。
【0090】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.24−1.25(m,14H,CH)、1.47−1.49(m,4H,CH)、3.20−3.22(m,4H,NH−CH)、3.89−4.03(m,4H,イソソルビド)、1.47−1.49(m,1H,イソソルビド)、4.98−5.02(m,3H,イソソルビド)、7.00(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.78(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.81(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.30(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1239(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1629(C=O,アミド)、3323(NH,アミド)。
【0091】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0092】
(実施例7)
1,4−ジアミノブタンの代わりに1,12−ジアミノドデカン(式(V)(R:n−ドデシレン基)、和光純薬工業(株)製、306.9mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:n−ドデシレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(720mg、収率:87%)を得た。
【0093】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ1.24−1.26(m,16H,CH)、1.48−1.49(m,4H,CH)、3.22−3.23(m,4H,NH−CH)、3.89−4.02(m,4H,イソソルビド)、4.57(d,1H,J=4.9Hz,イソソルビド)、4.99−5.01(m,3H,イソソルビド)、7.00(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.05(d,2H,J=8.5Hz,ArH)、7.78(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.81(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、8.29(d,1H,J=9.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1241(C−O−C)、1605(C−O−C,イソソルビド)、1630(C=O,アミド)、3321(NH,アミド)。
【0094】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)、および40℃での貯蔵弾性率(E’)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0095】
(実施例8)
1,4−ジアミノブタンの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルメタン(式(V)(R:メチレンビス(p−フェニレン)基)、東京化成工業(株)製、297.4mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:メチレンビス(p−フェニレン)基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(790mg、収率:96%)を得た。
【0096】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.85−4.01(m,6H,CH+イソソルビド)、4.57−4.58(m,1H,イソソルビド)、5.01−5.04(m,3H,イソソルビド)、7.04(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.09(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.15(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.64(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.88(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.92(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、10.03(d,1H,J=6.9Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1237(C−O−C)、1602(C−O−C,イソソルビド)、1630(C=O,アミド)、3306(NH,アミド)。
【0097】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0098】
(実施例9)
1,4−ジアミノブタンの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(式(V)(R:オキシビス(p−フェニレン)基)、東京化成工業(株)製、300.36mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:オキシビス(p−フェニレン)基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(800mg、収率:96%)を得た。
【0099】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.90−4.03(m,4H,イソソルビド)、4.58−4.59(m,1H,イソソルビド)、5.03−5.04(m,3H,イソソルビド)、6.96(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.00(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.11(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.73(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.90(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.93(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、10.10(d,1H,J=7.3Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1217、1229(C−O−C)、1603(C−O−C,イソソルビド)、1630(C=O,アミド)、3305(NH,アミド)。
【0100】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0101】
(実施例10)
1,4−ジアミノブタンの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(式(V)(R:チオビス(p−フェニレン)基)、和光純薬工業(株)製、324.5mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:チオビス(p−フェニレン)基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(810mg、収率:95%)を得た。
【0102】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.91−4.03(m,4H,イソソルビド)、4.58−4.59(m,1H,イソソルビド)、5.03−5.04(m,3H,イソソルビド)、7.06(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.11(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.28(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.76(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.89(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.92(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、10.18(d,1H,J=6.5Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1236(C−O−C)、1603(C−O−C,イソソルビド)、1630(C=O,アミド)、3305(NH,アミド)。
【0103】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0104】
(実施例11)
1,4−ジアミノブタンの代わりにp−フェニレンジアミン(式(V)(R:フェニレン基)、シグマ社製、162.2mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:フェニレン基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(690mg、収率:100%)を得た。
【0105】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.91−4.05(m,4H,イソソルビド)、4.59−4.60(m,1H,イソソルビド)、5.03−5.04(m,3H,イソソルビド)、7.07(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.09(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.70(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.90(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、7.96(d,2H,J=8.4Hz,ArH)、10.07(d,1H,J=7.7Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1240(C−O−C)、1604(C−O−C,イソソルビド)、1642(C=O,アミド)、3325(NH,アミド)。
【0106】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0107】
(比較例1)
1,4−ジアミノブタンの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(式(V)(R:スルホニルビス(p−フェニレン)基)、関東化学(株)製、372.5mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして前記式(VI)(R:スルホニルビス(p−フェニレン)基)で表される繰り返し単位を含有するイソソルビド系ポリアミド(760mg、収率:85%)を得た。
【0108】
このイソソルビド系ポリアミドの構造をH−NMR測定およびFT−IR測定により確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,ppm):δ3.88−3.90(m,4H,イソソルビド)、4.57−4.58(m,1H,イソソルビド)、5.03−5.04(m,3H,イソソルビド)、7.06(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.12(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.87(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.89(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、7.91(d,2H,J=8.8Hz,ArH)、7.97(d,4H,J=8.8Hz,ArH)、10.46(d,1H,J=6.1Hz,NH)。
FT−IR(ATR,cm−1):1237(C−O−C)、1588(C−O−C,イソソルビド)、1665(C=O,アミド)、3344(NH,アミド)。
【0109】
また、前記イソソルビド系ポリアミドのガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示す。なお、前記測定条件においてはこのイソソルビド系ポリアミドのTgは検出されなかった。また、このイソソルビド系ポリアミドから貯蔵弾性率測定用試験片を作製することは困難であった。
【0110】
(比較例2)
1,4−ジアミノブタンの代わりに2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン(和光純薬工業(株)製、187.7mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして合成を試みたが、イソソルビド系ポリアミドは得られなかった。
【0111】
(比較例3)
1,4−ジアミノブタンの代わりにジアミノマレオニトリル(和光純薬工業(株)製、162.15mg、1.5mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして合成を試みたが、イソソルビド系ポリアミドは得られなかった。
【0112】
【表1】

【0113】
表1に示した結果から明らかなように、ジアミンとして、アルキレンジアミンを用いた場合(実施例1〜7)、特定のジフェニルジアミンを用いた場合(実施例8〜11)およびフェニレンジアミンを用いた場合(実施例12)においては、得られたイソソルビド系ポリアミドは、ガラス転移温度が100〜250℃であり、成形しやすいものであり、また、熱分解温度が300℃以上であり、熱分解しにくいものであることがわかった。
【0114】
一方、ジアミンとしてジアミノジフェニルスルホンを用いた場合(比較例1)においては、熱分解温度が380℃であり、熱分解しにくいイソソルビド系ポリアミドが得られたが、100〜250℃の温度範囲にはガラス転移温度が検出されず、成形性に劣るものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明によれば、熱分解温度およびガラス転移温度が高く、且つ成形加工が可能なイソソルビド系ポリアミドを得ることが可能となる。
【0116】
したがって、本発明のイソソルビド系ポリアミドは、耐熱性に優れているため、ラジエータカバー、エンジンカバー、タイミングベルトカバー、樹脂製インテークマンホールドといった高い耐熱性が要求される自動車部品に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【化2】

(式(2)中、Zは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。)
で表される2価の芳香族含有基を表す。)
で表される繰り返し単位を含有することを特徴とするイソソルビド系ポリアミド。
【請求項2】
下記式(3):
【化3】

(式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるイソソルビド系ジカルボン酸と、
下記式(4):
N−R−NH (4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、または下記式(2):
【化4】

(式(2)中、Zは炭素数1〜14の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH基を表し、aは0または1である。)
で表される2価の芳香族含有基を表す。)
で表されるジアミンとを亜リン酸トリフェニル類の存在下で反応させることを特徴とするイソソルビド系ポリアミドの製造方法。
【請求項3】
前記イソソルビド系ジカルボン酸と前記ジアミンとを3級アミンおよび無機塩の存在下で反応させることを特徴とする請求項2に記載のイソソルビド系ポリアミドの製造方法。

【公開番号】特開2011−178974(P2011−178974A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47501(P2010−47501)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】