説明

イネ水耕溶液栽培装置および方法

【課題】慣行の水稲栽培技術は自然環境要因に大きく左右され、正確な収量予測が不可能であるばかりでなく、近年の地球規模の環境問題による耕地の減少、世界的な人口増加に対応した食糧増産技術とはなっていない。また、有限な資源としての水を大量に使用し、化学肥料、化学農薬の大量使用のために水・土壌汚染の原因をつくっている。また、従来のイネ水耕溶液栽培技術では出穂・稔実を見ることが少なく、種子を食糧とするイネ植物工場栽培化のための大きな課題となっていた。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するために溶液の調製に使用する水に着目し、イネ水耕溶液栽培装置に適した水を作出して出穂・稔実の問題解決を行った。また、大量培養のためのシステム化によって労働力の省力化を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイネの水耕溶液栽培技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のイネ水耕溶液栽培技術では培養液の調製に水道水を使用し、慣行の水稲栽培技術をベースとしているために、植物の根および茎の生育などの栄養成長に重点が置かれており、出穂・稔実を見ることが少なかった。そのため、完全な肥料と水による養液栽培で種子形成に至る技術は確立されていない。種子を食糧とする以上、出穂・稔実しないならば意味をなさず、イネ植物工場栽培の大きなネックとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、イネの生育促進、工場栽培の具体化のために環境要因としての人工光源などの研究はなされているが、出穂・稔実促進には至っていない。そこで、本発明では出穂・稔実できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載のイネ水耕溶液栽培装置および方法は溶液の調製に使用する水に着目し、出穂・稔実の問題解決を図った。
【発明の効果】
【0005】
本発明は次のような効果を奏する。
請求項1に記載されている発明は水耕溶液栽培に使用する水に着目した装置および方法であり、簡便な方法で、出穂・稔実を可能にする。また、定植板に植えつけるために、除草を必要としない。人工施設で栽培するため病気や害虫の影響をほとんど受けない。
【発明を実施するための裁量形態】
【0006】
イネの品種としてはOryza sativa L.を使用する。
【0007】
種子は表面殺菌して浸種する。処理を終えた種子を播種して発芽させる。
【0008】
10Lの養液の入る容器に機能水と肥料で調整した培養液を入れ、定植板をセットし、苗を植える。
【0009】
定植を終えた容器は随時輸送手段によって、立体状に配置された培養室に搬入する。光源としては自然光を主体とし補助的に人工光を併用する。出穂後2週間後より水のみにより育てる。培養期間は90日とする。
【0010】
稔実して十分な種子を形成した容器は運搬装置により、培養室より搬出して脱穀する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 イネ水耕溶液栽培装置の立体図である。
【図2】 イネ水耕溶液栽培装置の正面実図
【符号の説明】
【0012】
1 培養液
2 定植穴
3 定植板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水稲栽培は従来屋外において、自然環境のもとで行われてきた。慣行の栽培技術は気温・水温・大気・土壌等の環境要因に大きく左右されその年々の環境要因によって収量が大きく変動し、正確な収量予測が不可能である。また、近年の地球環境問題のための耕地の減少および砂漠化、世界的な人口増加に対応した食糧増産技術とはなっていない。さらに、有限な資源としての水を大量に使用するだけでなく、化学肥料および化学農薬の大量使用のために水・土壌環境汚染の原因となっている。
そこで、本特許は従来の水稲栽培技術とは異なり、人工的に制御された環境で水稲を栽培し、環境負荷の少ない技術およびシステム化に伴う省力化により、イネ植物工場栽培の実用化を具体化するための技術開発および装置である。
本発明の特徴は一定の容器に機能水および肥料を使用して培養液を作成し植物体を定植する方法である。定植を終えた容器は随時輸送手段によって立体構造化され、人工的にコントロールされた培養室に移動して出穂・稔実するまで栽培する。稔実を終えて種子を形成した容器は随時、輸送手段により培養室より搬出して脱穀手段により脱粒する。このシステムにより、水稲栽培で大変な労力を要する除草や農薬散布の問題は解消され、少人数で栽培管理が可能となる。また、慣行では年に1回しか栽培できない水稲が年3回栽培可能となり、自然環境の変化の影響を受けることもなくなる。収量予測も可能となり、資源としての水の有効利用にもつながり、環境への悪影響も回避できる。また、今まで水稲栽培が不可能であった砂漠地帯や環境が劣化した地域でのイネの栽培が可能となり、エネルギー源としての食糧の供給を十分に行える技術となる。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−94844(P2006−94844A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313119(P2004−313119)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(504400399)
【Fターム(参考)】