説明

イムノアッセイまたは酵素アッセイにおいて分析物を定量するためのシステムおよび方法

本発明は、試料中の分析物の存在を決定および/または定量するためのアッセイを行うための装置および方法を提供する。分析物と好ましくは粒子上に固定される標識とが混合されて、均一溶液が提供される。均一溶液は、任意にフィルタを通して流されうる。均一溶液または濾過液が、制御された流速で読み取りゾーンを通して測定され、標識の存在または粒子の存在が検出されうる。本発明の方法および装置は、捕捉ゾーンの使用を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
Emmanuel MpockおよびWilma Mangan
本発明は、流体試料中の一つ以上の分析物の存在を質的または量的に決定するための試験キットおよびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、イムノアッセイ法は、特異的な結合対メンバーの複合体において結合されたシグナル標識と結合していないシグナル標識との間のシグナル標識の分配を生じる。結合シグナル標識と結合していないシグナル標識の間の区別は、結合シグナル標識の結合していないシグナル標識からの物理的分離、または結合シグナル標識と結合していないシグナル標識の間の検出可能シグナルの変化の結果でありうる。一つ以上の捕捉ゾーンに蓄積する標識のパターンを観察し、そのパターンを試料中の分析物の量に相関させることにより、定量が行われる。電磁的手段、特に試験ストリップを通した光の透過により、アッセイ結果が決定される。
【0003】
同様に、典型的なサンドイッチアッセイフォーマットでは、試料が、分析物に特異的な標識された結合対メンバーと混合され、ラテラルフローマトリックスを、マトリックス上に設置された一つ以上の捕捉ゾーンを通過して横断させられる。試料中に分析物が存在する場合には、標識された特異的結合対メンバーが分析物に結合し、その結果生じた分析物−標識複合体が、捕捉ゾーンへ輸送され、これを通過する。分析物と標識された特異的結合対メンバーとの間の複合体形成の程度は、試料中に存在する分析物の量に正比例する。分析物−標識複合体に結合可能な第二特異的結合対メンバーが、各捕捉ゾーンに固定される。この第二特異的結合対メンバーは、分析物に結合されていない限り、標識された特異的結合対メンバーに結合できない。したがって、捕捉ゾーンに蓄積する標識された特異的結合対メンバーの量は、試料中に存在する分析物の量に正比例する。
【0004】
典型的なラテラルフローデバイスは、ニトロセルロースストリップである。試料が適用ゾーンに適用され、そこから毛管作用により、分析物に特異的な可視的に標識された抗体を含むゾーンを通って流れる。遊離標識および結合標識は捕捉ゾーンに移動し続け、そこで分析物に特異的な固定された抗体が分析物−標識複合体に結合する。遊離標識(結合していない抗体)は移動し続け、捕捉ゾーンに分析物特異的シグナルが残る。分析物−標識複合体の捕捉は、固定試薬により媒介されるが、これは典型的には、分析物に特異的な抗体である。
【0005】
例えば、特許文献1は、粒状標識の結合の程度がアッセイリーダーを用いて光学的に決定される、ラテラルフローアッセイ試験ストリップを開示する。特許文献2は、ラテラルフローアッセイスティックの検出ゾーンに固定された特異的結合試薬に対する標識された分析物/試薬複合体の結合を検出するためのリーダーであり、検出ゾーンに蓄積する標識のシグナルを検出する、リーダーを開示する。
【0006】
特許文献3は、標識が分析物に結合しうる標識ゾーンを含み、これが捕捉ゾーンと連通し、捕捉ゾーンの孔径が、分析物に結合されない標識は通過できるが、分析物に結合された標識は通過できないようなものである、分析物をアッセイするためのデバイスを開示する。したがって、標識ゾーンから捕捉ゾーンへの移動の間には、結合していない標識は捕捉ゾーンを通過できるが、結合標識は標識ゾーンと捕捉ゾーンの接合部で捕捉される。したがって、同刊行物は、従来の免疫−捕捉技術を用いるかわりに、ストリップ上の固定のための減少した孔径の使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0653625号明細書
【特許文献2】米国特許第7,239,394号明細書
【特許文献3】国際公開第00/20866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの方法は、検出される標識が検出ゾーンに固定されることを必要とする。これは必ずしも好都合とは限らず、アッセイシステムの複雑度を高める。したがって、固定ゾーンを用いずに標識された複合体を検出する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、捕捉ゾーンを必要とせずにアッセイを行うための装置および方法を提供する。本発明の方法および装置は、従来の方法よりも堅固かつ信頼性が高く;アッセイ時間を短縮し;データの精度を改善し;微量の分析物濃度を用いた定量アッセイにより大きなコントロール(control)を提供し;最小限のバッチ間変動で製造可能性を改善する。
【0010】
本発明の方法および装置は、均一溶液を提供するための、分析物に特異的な標識された結合対メンバーとの分析物の混合を提供する。こうして得られた均一溶液が、読み取りポイントを通して一定の流速で流されうる。結合した分析物/標識複合体が、比色法、電気的手段、または当該分野で公知の他の方法を用いて検出されうる。
【0011】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な記載を参照すれば明らかになる。さらに、一定の手順または組成物をより詳細に説明し、したがって参照により全体として本明細書に組み込まれる、様々な参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の処分可能ストリップの斜視図を示す。
【図2】図2は、捕捉ゾーンを用いない微小粒子の検出を示す。図2Aは、Avie A1c meter X7を検出器として用いた、時間の関数としてのシグナルのグラフを示す。図2Bは、Avie A1c meter X8を検出器として用いた、時間の関数としてのシグナルのグラフを示す。図2Cは、Avie A1c meter X9を検出器として用いた、時間の関数としてのシグナルのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書にあげられる上記または下記の全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれるものとする。
【0014】
特に明記しない限り、明細書および請求項を含めて本出願において使用される以下の用語は、以下の定義を有する。明細書および添付の請求の範囲において用いられるところの、単数形「1つの(a)(an)」および「前記(the)」には、文脈により別の意味が明示されない限り、複数の指示物が含まれることに注意しなければならない。
【0015】
本明細書で使用されるところの、「対象」という用語は、哺乳類および非哺乳類を含む。哺乳類の例には、哺乳類綱の任意のメンバー:ヒト、ヒト以外の霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;牛、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜;ウサギ、イヌ、およびネコ等の家庭動物;ラット、マウスおよびモルモット等の齧歯類を含む実験動物などが含まれるがこれに限られない。非哺乳類の例には、鳥、魚などが含まれるがこれに限られない。用語は、特定の年齢または性別を意味しない。
【0016】
本明細書で使用されるところの、「抗体」という用語は、分析物(抗原)を特異的に結合および認識する、免疫グロブリン遺伝子(単数または複数)により実質的にコードされるポリペプチド、またはそのフラグメントを含むがこれに限られない。「抗体」は、トリコモナス抗原(単数または複数)への曝露に応答して宿主により産生される抗体の抗原−特異的結合領域(イディオタイプ)を特異的に結合および認識する、免疫グロブリン遺伝子(単数または複数)により実質的にコードされるポリペプチド、またはそのフラグメントも含むがこれに限られない。例には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および単鎖抗体などが含まれる。免疫グロブリンのフラグメントは、Fabフラグメントおよびファージディスプレイを含む発現ライブラリにより産出されるフラグメントを含む。抗体の構造および用語については、例えばPaul,Fundamental Immunology,3rdEd.,1993,Raven Press,New Yorkを参照。
【0017】
「特異的に結合する」または「特異的に免疫反応性」という用語は、タンパク質および他の生物学的物質(biologics)の不均一な集団の存在下における、標的分析物の存在を決定するような結合反応をさす。したがって、指定のアッセイ条件下で、特異的結合部分は、特定の標的分析物に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の構成成分に有意な量で結合しない。そのような条件下での標的分析物に対する特異的結合は、特定の標的分析物に対するその特異性により選択される結合部分を必要としうる。様々なイムノアッセイフォーマットを用いて、特定の抗原と特異的に免疫反応性の抗体を選択しうる。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、分析物に特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するために、ルーチン的に使用される。特異的免疫反応性を決定するために用いることができるイムノアッセイフォーマットおよび条件の記述について、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照。典型的には、特異的または選択的反応により、バックグラウンドの少なくとも二倍、より典型的には、バックグラウンドの10〜100倍のSN比が提供される。
【0018】
本明細書において使用されるところの、「標識」および「検出可能な標識」という用語は、放射性同位元素、蛍光剤(fluorescer)、化学発光剤(chemiluminescer)、発色団、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、発色団、染料、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン(strepavidin)またはハプテン)などを含むがこれに限られない、検出が可能な分子をさす。
【0019】
本明細書において使用されるところの、「固体担体」とは、プラスチックプレート、磁気ビーズ、ラテックスビーズ、マイクロタイタープレートウェル、ガラスプレート、ナイロン、アガロース、アクリルアミドなどの固体表面をさす。
【0020】
二つの分子または分子と分子の複合体の結合に関する「特異的」とは、他の分子の実質的により低い認識およびそのような他の分子との安定複合体の形成の欠如と比較した、一方の他方に対する特異的認識、および安定複合体の形成をさす。特異的結合の例は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションおよび/または二重鎖の形成、細胞レセプタ−リガンド相互作用等である。
【0021】
II.概要
本発明は、分析物をアッセイするための方法および装置を提供する。方法には、分析物のための標識を含むレセプタクルが含まれる。分析物と標識が混合されて、均一溶液が提供される。均一溶液は任意にフィルタを通して流され、不要な物質が部分的または完全に除去されうる。均一溶液または濾過液が、制御された流速で読み取りゾーンを通して測定され、粒子が検出されうる。
【0022】
本発明の方法および装置は、捕捉ゾーンの使用を必要としない。したがって、本発明の方法および装置は、従来の方法より堅固で信頼性が高く;アッセイ時間を短縮し;データの精度を改善し;微量の分析物濃度を用いた定量アッセイにより大きなコントロールを提供し;最小限のバッチ間変動で製造可能性を改善するという、利点を有する。本発明の方法は、イオンカラムまたは共有結合カラムを用いた液体クロマトグラフィとともに用い、磁性粒子とともに用い、孔径に基づいて粒子を除外する膜とともに用い、またはフィルタを横断する電気的に分極された場などとともに用いることもできる。
【0023】
III.微小機械システム
本発明の方法は、微小機械システムを用いて示されるが、分析物を検出するための他のいずれの分析法も本発明の実行において使用されうる。例えば、同時係属および共同所有の“Micro Mechanical Methods and Systems for Performing Assays”と題する米国特許出願第10/976,651号に開示される微小機械システム、または“Methods And Apparatus For Measuring Blood Coagulation”と題する同時係属および共同所有の米国特許仮出願第60/945,290号に開示されるものが、本発明の方法の実行に使用されうる。例示的な微小機械システムが、図1に示される。微小機械システムは、二つ以上の固体担体を、担体の少なくとも一つに存在する溝により組み合わせることにより作製されうる。固体担体は、長方形、円形、楕円形、または任意の形でありうる。担体は、熱伝導性の良さ、光学的透過に対する透明度(clarity)、簡単な溶接のための機械的性質、均一のコーティングおよび試薬の安定を可能にする表面特性、アッセイに対する干渉を防ぐための液体媒質に対する中立性等の特性に基づいて選択される適切な材料から作製されうる。この目的において、適切なプラスチックには、PETG、ポリエステル(Mylar(登録商標))、ポリカーボネート(Lexan(登録商標))、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、SAN、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、特にBorg Warnerにより商品名Cycolacの下で供給されるABSなどを含む、高い表面自由エネルギーおよび低い水分収着を有するものが含まれる。固体担体が疎水性プラスチックである場合には、例えばプラズマエッチングおよびコロナ処理など、技術公知の方法により表面を親水性にするために処理されうる。代替的および等価的に、購入可能な成形された固体担体が、本発明の実行において使用されうる。
【0024】
例示の目的で、本発明の本実施形態は、二つの固体担体を組み合わせることにより形成される微小機械システム10を参照して説明される。固体担体の少なくとも一つは、試料チャンバ20、反応チャンバ30、および毛管チャネル40および50として役立つ溝または空洞を有する。溝は、任意の幾何学的形状であればよく、円形または長方形であるのが好ましい。溝は、試料を維持し反応を生じさせるために十分な体積の寸法を有する。したがって、円形溝は担体材料の長さおよび幅に応じて約0.01mm〜約100mmの間の直径を有し、担体材料の厚みに応じて約0.001mm〜約4mmの高さを有しうる。溝の直径および高さは、当業者により容易に決定されうる。本発明の一態様では、一つ以上の穴が一つまたは担体上に配置され、試料が配置されうる試料チャンバ20へのアクセスを可能にしうる。二つのピースを組み合わせる前に、可動部材60が、所望の反応チャンバ30内に配置されうる。
【0025】
可動部材60は、ステンレス鋼またはステンレス鋼と任意の他の所望の材料との組み合わせを用いて、外部の磁気可動デバイスにより引きつけ、動かすことが可能なように、作製されうる。材料は、腐食を防止するステンレスカバーを伴うか、特定の分子の結合のために特別にコートされた、任意の形の磁化可能合金でありうる。可動部材の厚みは、反応チャンバの高さに基づく。それは、反応チャンバ内に適合し、自由に移動するのに十分に小さくなければならない。0.010インチの高さの反応チャンバ空洞では、可動部材の厚みが、約0.007〜約0.008インチの間でありうる。
【0026】
本発明の一態様においては、内部または付近に埋め込まれるがシグナルが検出ゾーン70を通過するように配置されたセンサ(エミッタおよびまたは検出器)を収容しうるヒータアセンブリの上に、微小機械システム10が配置されうる。当然のことながら、使用される検出機構に応じて、反射ビーム配置、検出器およびエミッタがストリップの同じ側にありうる。検出機構は光学検査法に限られないが、電気的方法、放射性方法、およびその他の方法など、他の方法が用いられてもよい。
【0027】
本装置および関連の方法とともに用いる自動検出のための検出システムの例には、励起源、モノクロメータ(または光成分をスペクトル的に分解可能な任意のデバイス、または一連の狭帯域フィルタ)および検出器アレイが含まれる。励起源は、赤外線、青色またはUV波長を含むことができ、励起波長は、検出される発光波長(単数または複数)より短いものでありうる。検出システムは、前にフィルタを伴う重水素ランプ等の広帯域UV光源;所望の波長を抽出するためにモノクロメータを通過後の、キセノンランプまたは重水素ランプ等の白色光源出力;または、アルゴンイオンレーザ線(457、488、514nm等)またはHeCdレーザのいずれかを含むがこれに限られない任意の多数の持続波(cw)ガスレーザのいずれか;GaNおよびGaAs(二重)ベースのレーザまたは二重または三重出力のYAGまたはYLFベースのレーザ等の青色の固体ダイオードレーザ;または、青色の出力を有するパルスレーザのいずれかでありうる。
【0028】
試料または反応ウェル中の反応物から放出された光は、例えば回折格子分光計、プリズム分光計、画像分光計などの基質のスペクトル情報を提供するデバイスにより、または干渉(帯域)フィルタを用いて検出されうる。CCDカメラ等の二次元領域イメージャーを用いて、多数の目的物が同時に撮像されうる。異なる帯域通過、ロングパスまたはショートパスフィルタ(干渉フィルタ、または電子的に調整可能なフィルタが適切である)により、二つ以上の画像を収集することにより、スペクトル情報が生成されうる。二つ以上のイメージャーを用いて、専用フィルタにより同時にデータを集め得るか、または一つのイメージャーの前でフィルタが変えられうる。Biometric Imagingシステムのような撮像ベースのシステムは、表面を走査して蛍光シグナルを見つける。
【0029】
したがって、本発明の方法は、反応チャンバ30において試料を試薬と混合する工程を含む。混合は、可動部材60および外部の磁気源を用いて行われうる。試薬は、例えば、粒子上に固定された抗体または凝固薬剤(clotting agent)でありうる。抗体との結合に好適な粒子には、ラテックスビーズ、ラテックスでコートされたロッド形状の本体、染料を含む粒子、コロイド粒子、金属粒子、微小粒子およびナノ粒子、蛍光化合物、化学発光化合物、および磁気ビーズが例として含まれる。本発明の一態様においては、粒子はラテックスビーズである。ラテックスビーズは、約50〜約500ナノメートル、好ましくは約100〜約350ナノメートルの平均直径を典型的に有する。磁気ビーズは、約50〜約350ナノメートル、好ましくは約100〜約300ナノメートルの平均直径を有する。混合は、均一溶液が得られるまで続けられるのが好ましい。したがって混合は、約5秒〜約5分、好ましくは約10秒〜約4分、より好ましくは約20秒〜約150秒でありうる。当業者には当然のことながら、混合時間は、目的の分析物および試薬により、時間は容易に決定されうる。
【0030】
均一混合溶液は、任意に濾過されうる。したがって、本発明の代替的な態様においては、微小機械システムは、反応チャンバ30および検出ゾーン70と流体連通するフィルタ80を含む。均一に混合された試料が、フィルタ80に流し通され、または他の方法で適用されうる。フィルタ80は、流体試料を受け取ることができ、それを検出ゾーン70に流入させうる。フィルタ80は、アッセイを妨げうるより大きめの粒子を除去するように機能することもできる。フィルタ80は、例えばガーゼ、セルロース、セルロースアセテート、他のポリエステル類、および他の多孔性膜等の任意の適切な材料を含みうる。さらに、フィルタは、結合していない抗体、凝固薬剤などを捕捉しうる。
【0031】
微小機械デバイス10は、結合した分析物の量が検出されうる検出領域70(図1)を有しうる。任意に濾過された均一溶液が、検出領域70を通って一定流速で流され、抗原に結合された反応物が検出されうる。
【0032】
典型的には、粒子上に固定された標識への分析物の結合は、溶液中に粒子を提供する。したがって、本発明の一態様においては、検出領域70における検出は、粒子計数器を用いる。本明細書で用いられるところの、「粒子計数器」という用語は、センサを含み、液体中の粒子を計数し、任意に粒径を決定するために用いることができる装置を意味する。センサは光源であればよく、粒子により反映される光を集めるために必要でありうる鏡(単数または複数)、レンズ、光検出器などを含みうる。
【0033】
本発明の一態様においては、全試料中の粒子の数が計数されうる。したがって、例えば、均一に混合された溶液の全体積が、検出領域を通って流され、粒子が計数されうる。別の態様においては、検出領域を通って流れる均一に混合された溶液の一部だけを用いて粒子が計数され、そして試料中の粒子の数が周知の手段により推定されうる。粒子の数を推定するための手段には、例えば、メーター読み取りに対する粒子の濃度の標準曲線、統計的方法などが含まれる。したがって、検出ゾーンデバイスを通って輸送される試料の5%以下、好ましくは検出ゾーンを通って輸送される試料の約90%以上、または、検出ゾーンを通って輸送される試料の約10%、20%、30%、50%、または他の割合を用いて、測定が行われうる。
【0034】
本発明の一態様においては、血液凝固時間を測定する方法およびマイクロ流体装置が提供される。静脈穿刺または指尖採血等の従来の手段により、患者から血液試料が得られる。試料は、試料チャンバ20に配置されうる。本発明の一態様においては、患者から得られた血液の試料が、追加的な操作を伴わずに本発明の方法および装置において使用されうる。あるいは、患者から得られた血液の試料は、完全または部分的に赤血球を除去するために処理されうる。赤血球は、例えば遠心分離、赤血球凝集素との試料の反応など、公知の方法のいずれかにより、または赤血球フィルタの使用により除去されうる。方法を行う際の血漿の使用により、例えば、画像化システムがフィブリノーゲンのフィブリンへの物理的重合等、血液中に生じる物理的変化をよりよくモニタすることを可能にするなどにより、より良好な確度および精度を提供しうる。
【0035】
図1に示される微小流体装置においては、反応チャンバ30は、組織因子または他の凝固薬剤等の一つ以上の凝固薬剤でコートされたラテックスビーズを有しうる。血液の滴または等価物が、試料チャンバ20に配置される。任意に、希釈剤が貯蔵部90に配置され、これにより、血液試料と希釈剤の混合から任意に希釈血液試料が提供されうる。希釈剤は単に水性の溶液または非水性の溶液であり得、例えば塩類、タンパク質類、糖類、サッカライド類、カルシウム、マグネシウム、ランタニド等の金属イオン類等の様々な添加物を任意に含みうる。ある希釈剤の調製は、ゼラチンを含む組成物およびエマルションを含みうる。典型的に、希釈剤は、クエン酸塩バッファー等のバッファー溶液である。
【0036】
それから血液試料は、反応チャンバ30中で凝固薬剤と接触させられ、凝固薬剤および血液が可動部材60を用いて混合されて、均一溶液が提供されうる。本発明の凝固アッセイには、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノーゲン、ヘパリン管理試験(heparin management test)(HMT)、プロタミン応答時間(PRT)、ヘパリン応答時間(HRT)、低分子量ヘパリン(LMWH)、低域ヘパリン管理試験(low range heparin management test)(LHMT)、およびエカリン凝固時間(ecarin clotting time)(ECT)を含み、これらの各テストの試薬は従来技術で説明されるとおりである。凝固薬剤がラテックスビーズに固定されるのが好ましい反応チャンバ30内に、一つ以上のアッセイのための試薬が配置されうる。
【0037】
血液および凝固薬剤を混合することによって得られた均一溶液が濾過され、こうして得られた溶液が、検出ゾーン70を通して一定の速度で測定されうる。血液凝固の量が、血液凝固試薬との接触後に変化する液体試料の物理的変化の程度を検出することにより測定されうる。物理的変化は、任意の変化、例えば濁度(吸光度を含む)、粘度、誘電率などでありうる。波動を測定光学的に検出することにより、または濁度(または吸光度)により、物理的変化が検出されるのが好ましい。
【0038】
光学以外の他の方法を、凝固血液試料を検出するために用いてもよい。例えば、液体試料の濁度(または吸光度)は、容易に光学的にモニタされ、濁度変化の検出は、STAT IMUNO SYSTEM Quick TurboII(A&T Corp.製造)、自動分析器Multiple Chemistry Unit 502X(A&T Corp.製造)、自動分析器Automatic Analyzer 7070(Hitachi Ltd.製造)等、市販のデバイスを使用して容易に行われうる。
【0039】
例えば、自動分析器Multiple Chemistry Unit 502Xを使用して濁度測定が行われ、340〜795nmの間の二つの波長が測定のための波長として選択されうる。選択された二つの波長は、数秒で行われる間欠的測定により同時に測定されうる。
【実施例】
【0040】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、説明のみを目的として提供され、本発明の範囲をいかなる形でも制限することを意図しない。使用される数値(例えば量、温度等)に関する精度を確保するように努めているが、一定の実験誤差および逸脱は当然に認められるはずである。
【0041】
(実施例1)
以下の実施例は、検出ゾーンの前に捕捉ゾーンを欠くラテラルフローイムノストリップを用いた標準曲線の構築を示す。標準曲線を構築するために、微小粒子(MP)上に固定されたA1c抗原特異的抗体を、均一混合物が得られるまで希釈剤と混合した。
【0042】
それからこの混合物を、ラテラルフローイムノストリップに取り込ませ(wick up)、フィルタゾーンに通す。フィルタゾーンは、試料を濾過するために作用する膜であり、これにより試料混合物がストリップに取り込まれる際に捕捉されていないMP結合体が検出された。MEC Dynamics(Sunnyvale,CA)から利用可能なAvie Meters X7を使用して粒子の検出を行い、既知の濃度の微小粒子上に固定されたA1c抗原特異的抗体を使用した結果が、表1に示される。
【0043】
【表1】

粒子の既知の濃度を用いて標準曲線をつくった。粒子の濃度ごとに、いずれもMEC Dynamicsから入手可能なMeter X7、X8、またはX9を使用して三通りの読み取りを行った。得られたデータは、それぞれ表2、3、および4に示される。
【0044】
【表2】

上の方法およびAvie Meter X7、X8、およびX9を用いた標準曲線が、図2に示される。
【0045】
(実施例2)
実施例1の手順を、患者の血液試料と均一混合物が得られるまで混合される微小粒子(MP)上に固定されたA1c抗原特異的抗体を用いて繰り返す。この混合物をその後、ラテラルフローイムノストリップに取り込ませ、フィルタゾーンに通す。フィルタゾーンは、試料を濾過するために作用する膜であり、これにより試料混合物がストリップに取り込まれる際に捕捉されていないMP結合体が検出された。Avie Meter X7を使用して粒子の検出を行った。それからメーターからの読み取りを図2に示される標準曲線において用いて、血液試料中のA1cの濃度を推定した。
【0046】
本発明が好ましい実施形態および様々な代替的実施形態に関して特に図示および記載されるが、関連技術の当業者には当然のことながら、本発明の精神と範囲から逸脱することなく形および詳細の様々な変更がなされうる。本出願において言及される全ての出版された特許および刊行物は、この参照により全体として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物を検出するための方法であり、
該分析物を含む該試料を、反応物と混合する工程であって、ここで均一溶液が得られる、工程と;
該均一溶液を、検出ゾーンを通して流し、該溶液中の粒子を検出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
反応物が粒子に結合体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が、ラテックスビーズ、ラテックスでコートされたロッド形状の本体、コロイド粒子、金属粒子、微小粒子、ナノ粒子、蛍光化合物、化学発光化合物、または磁気ビーズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応物が、抗体または凝固薬剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、HbA1cに特異的な抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記凝固薬剤が、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノーゲン、ヘパリン管理試験(HMT)、プロタミン応答時間(PRT)、ヘパリン応答時間(HRT)、低分子量ヘパリン(LMWH)、低域ヘパリン管理試験(LHMT)、およびエカリン凝固時間(ECT)、およびその組み合わせからなる群より選択されるアッセイのためのものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイが、PTである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記アッセイが、APTTである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記均一溶液を、検出の前にフィルタを通して流す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタが、前記分析物に結合されない反応物を除去することが可能な、ガーゼ、セルロース、セルロースアセテート、多孔性膜または固定された部分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出が、粒子計数器を用いることによる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検出が、UV、IRまたはその組み合わせによる、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−503580(P2011−503580A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533301(P2010−533301)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082900
【国際公開番号】WO2009/062110
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510125176)エムイーシー ダイナミクス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】