説明

イメージスキャナにおける媒体残留検出装置

【課題】 無人端末などでは、イメージスキャナに不必要な媒体が残留放置される場合があり、それを防ぐ為には、ハードウエア装置の改造もしくは人的負荷に頼らざるをえなかった。
【解決手段】 イメージスキャナにおいて予め、何も置かない状態でのイメージ読取りし、当該イメージデータの圧縮データを記憶保存しておき、所定の取引処理を終えた後、媒体の再読取りを行い、さらに当該イメージデータを圧縮し、前記何も置かなかった場合と再読取りの場合のイメージ圧縮ファイルサイズを比較することにより、残留媒体があるかどうかをソフトウエアの制御のみにて検出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イメージスキャナを利用するシステム上の所定の処理において、一度イメージスキャナで読取り済みの媒体を不必要にイメージスキャナ上に残留放置させておくことを防止することに利用される。具体的には、例えば、金融機関で運用されている無人営業店端末(以下RBTと称す)等での身分証明書等の顧客媒体の取り忘れ防止などに有効に利用される。
【0002】
【従来の技術】一般に、従来のイメージスキャナの媒体取り忘れ防止のためには、■イメージスキャナの媒体をセットする部分にハードセンサーを設置して所定の処理が終了した後にセンサにて媒体の有り無しを検出する。
■イメージスキャナの取り付けられている媒体をセットするための装置の蓋等の開け閉めの操作で媒体が除去されたと判断(想定)する。
■残留媒体があるか、再度イメージスキャナで読取り処理を行い、イメージデータを遠隔地の有人端末などに送信して、有人での目視により確認する。などの方法が取られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような下記のような問題点があった。即ち■の場合、各装置にハードセンサーを備えるには、コスト面で負担がかかる。特に多くの装置を含む大規模なシステムにおいてはこれは顕著である。また市販のイメージスキャナ等を使用する場合には、その機器にあったセンサーの開発の為の作業負荷、コスト負荷がかかる。特に一つのシステムの中でも種類の異なる市販イメージスキャナをマルチで使用したりした場合などは、これは膨大となる。
■の場合、蓋の開け閉めの操作で媒体除去を判断したとしても、それはあくまでも想定されるという判断にとどまり、媒体を除去しなくても蓋の開閉自体の操作は可能であり、逆に言えば、実際に蓋の開閉操作はしたものの媒体が残留してしまっているという状況は有り得、絶対の媒体除去の検出は不可能である。即ち、これにての判断はあくまで想定となる。
■の場合確実な方法である分、処理時間、通信負荷がかかり、また目視による確認という人的負荷がかかる。本願発明は、以上のような問題点を完全に解決するものである。即ち、本願発明の目的はコスト負荷を削減し、人的負荷を必要とせず、さらに処理時間を短縮しつつも確実な媒体残留検出を行なう装置若しくは方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するため本発明では、運用上、イメージスキャナでの媒体読取り処理を含むシステムにおいて、イメージスキャナに何の媒体も置かずに読取りを行なった結果のイメージデータに圧縮処理を施した圧縮ファイルのサイズデータを予め記憶保持した第一の記憶手段と、所定の処理を終えた後、再度イメージを読込み、イメージデータを取得する再読取り手段と、前記再読取り手段により得られるイメージデータに圧縮処理を施す再読取りイメージデータ圧縮手段と、前記再読取りイメージデータ圧縮手段により得られる圧縮ファイルのサイズデータを保持する第二の記憶手段と前記第一の記憶手段と前記第二の記憶手段に記憶保持された圧縮ファイルのサイズデータとを比較するサイズ比較手段と、前記比較手段により互いのデータに一定の閾値以上の相違があると判断したときに、イメージスキャナに何かしらの媒体が残留していると判断する媒体残留判定手段とを備えることを構成上の特徴とするものである。また運用上、イメージスキャナでの媒体読取り処理を含むシステムにおいて、所定の処理を終えた後、再度イメージを読取り、当該イメージデータに圧縮処理を施した結果のファイルのデータサイズとイメージスキャナに何の媒体も置かずに読取りを行なった結果のイメージデータに圧縮処理を施したファイルのサイズとを比較し、互いのサイズに一定の閾値以上の相違があると判断したときに、イメージスキャナに何かしらの媒体が残留していると判断することをにより、所定の処理を終えた後、イメージスキャナに媒体が残留放置されていないどうかを判定することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。尚、実施例にあたっては本願発明技術を取り込むことが有効であると考えられる金融機関向けのRBTシステムを例とするが勿論これにより本願発明が限定されるものではない。RBTシステムとは一般に金融機関の顧客が金融機関の窓口に出向かずとも、新規の口座開設、ローンの申し込みなど、従来のATMでは出来なかった取引を行なえる無人営業店端末であるRBTを運用するシステムである。第1図は、RBTシステムのシステム構成図である。構成としては、顧客が取引の操作をするRBT10がINS網などにより遠隔にあるRBT運用管理センタに設置されているオペレータ端末20とに接続されている。
【0006】図2は、RBT10の機器ブロック図である。CPU、メモリ等を備え、またメモリにローディングされているプログラムを実行し、各接続I/O装置の制御を行なう制御部11、証明書等の媒体のイメージデータを取得するイメージスキャナ12、イメージスキャナ12に何も置かずに読込み処理したイメージデータに圧縮処理を施した圧縮ファイルのサイズデータを保存しているハードディスク13、その他、画面制御部14、マイク・スピーカ15、プリンタ16、カードリーダ17、カード発行機18、媒体搬送機構19等から構成されている。オペレータ端末20は制御部、画面表示部、ヘッドセット等から構成されるが、本願発明とは直接関係がないものであるため、図示を割愛する。
【0007】図3は、RBT10の制御部11及びイメージスキャナ12を制御して媒体残留検出を行なうためのソフトウエアのモジュール構造図である。このソフトウエアは本願発明にて最も特徴的な部分であり、通常、制御部12の中のメモリに格納され、上位のアプリケーションの指示によって動作し、媒体残留検出結果を上位アプリケーションに返す機能を持つ。上位のアプリケーションとの間のインタフェースを司る上位I/F部31と上位I/F部31からの依頼でイメージスキャナに対してイメージの読取り指示を行なう読取り部32、読取り部32により読込まれたイメージデータに対して圧縮処理を施す圧縮部33及び圧縮されたファイルのサイズにより媒体が残留放置しているかの検出を行なう残留判別部34から構成される。
【0008】次に上記の構成を備える本願発明の動作について図4および図5にて説明する。図4は取引業務のフローチャートであるが、消費者金融機関のRBTでの新規申込取引を例にしている。新規申込とは小口のカードローンを新規に申込み、審査後にローンカードをその場で発行するという業務である。但し本願発明は特に業務全体に関係するものではなく、顧客の持参物である身分証明書等の媒体の取り忘れによる媒体残留放置の検出機能のみに新規の技術的思想がある。
【0009】図4において、まず顧客は、RBT10のメインメニューから相談業務を選択する。(S41)次に顧客は、RBT10の画面誘導に従い、申し込みに必要である本人の証明を行なうため、身分証明書(免許証・保険証等)をRBT10のイメージスキャナ12にセットする。身分証明書がセットされるとRBT10はイメージスキャナ12により身分証明書のイメージを取得し、RBT運用管理センタのオペレータ端末20にイメージを送信する。オペレータ端末20は受信したイメージデータを印刷若しくは画面表示して所定の処理を実施する。(S42)
【0010】RBT10側はオペレータ端末20にイメージデータが送信できた時点で、顧客に対し、身分証明書である媒体の取り出しを誘導する。(S43)次に顧客は、取引に関する所定の取引情報を入力していく。(S44)ここで、S43の媒体取出し誘導を受けて顧客が間違いなく媒体を取出したかを確認するためS44に並行して、媒体残留確認処理を動作させる。(S45)
【0011】(S45の詳細フロー)図5によりS45の媒体残留確認処理の詳細フローを説明する。S451:S45では上位アプリケーションからの媒体読取り依頼を受ける。S452:依頼を受け、イメージスキャナ12にて図3の読取り部32により再度、指定されたDPI、色数で読取りを行なう。尚、DPIについては、通常業務の中において、一般には必要上150〜240DPI程度で読込むが、本処理ではその性質上、高密度DPIで読込む必要はない。従って、処理時間を最小に抑えるため、極力小さい(粗い)DPIで読込みを行なう。また色数については二値で行なう。
【0012】S453:S452で再度読取ったイメージデータを、図3の圧縮部33にてソフトウエア的に圧縮処理を施し、圧縮されたイメージデータのファイルサイズを導く。
【0013】ここで、何故圧縮処理を必要とするかについて説明する。すなわち、後の処理にて圧縮ファイルのサイズを比較するためだが、圧縮処理を施さない二値のイメージデータのままでは単にビットのオフ/オンで白、黒を表現しているためイメージデータのサイズそのもの比較ができない。つまり二値のイメージデータでは、何も置かないでイメージスキャナで読み取ったデータとのサイズになんら相違は現れない。従って、圧縮アルゴリズムにより、黒が混ざっているパターン(何かしらの媒体を読み取った場合)と全て白のパターン(何も媒体を置かないで読み取った場合)のファイルサイズに差をもたせるようにする。但しここでは、特に圧縮アルゴリズムの種類は限定しないものとする。
【0014】S454:図3の残留判別部34によって、前もって、ハードディスク13に取得保存させてある、イメージスキャナ12に何もおかずに読込んだイメージデータの圧縮ファイルのサイズと、S453にて導き出された圧縮ファイルサイズとを比較し、差異が閾値+−10%以内の範囲にあるかどうかを判定する。もし差が閾値+−10%以内の場合はS445へ、閾値+−10%より大きい場合はS456へ行く。
【0015】S455:媒体の残留可能性が無いと判断し、その旨を上位I/F31を経由して上位アプリケーションに通知して終わる。S456:媒体の残留可能性が有ると判断し、その旨を上位I/F31を経由して上位アプリケーションに通知して終わる。(以上S45の詳細フロー終わり)
【0016】ここで図4の取引業務のフローチャートにもどる。S45にて残留媒体無しと判断されれば、問題無しのため何も行なわないが、残留媒体有りと判断された場合にはS44の取引情報入力ステップに割り込み、S44の処理を一時中断させ、再び媒体取出誘導を行なう。(S46)ここで、顧客は、身分証明書である媒体をイメージスキャナ12から取出していないことに気づき、媒体を取出した後、確認キーを押下する(S47)
【0017】S47の後、再び顧客はS44のステップを続ける。また並行して再度S45の媒体残留確認処理を行なう。(S44、S45)S44の処理がすべて終了し、S45にて残留媒体がないことがか確認されれば、カード発行機18より所定のカードを発行し、契約書のRBT10への取り込み処理にてを終える。(S48、S49)
【0018】本処理は顧客が取引情報入力中に媒体残留を検出する手順を記述したが、顧客操作終了後にS45の媒体残留確認処理を行なってもよい
【0019】ところで、以上の実施例では顧客の持参媒体の取り忘れ残留検出について記述したが、業務取引においては図4の最後の処理であるS49のように顧客との契約書をRBT10内部に取り込むという処理がある。この時、ハードの動作エラー等により重要媒体である顧客との契約書をRBT10内部に取り込むことに失敗、即ちイメージスキャナ上に重要媒体が残留放置されてしまうことになり兼ねない場合がある。契約書などの顧客の重要媒体は、第三者により悪用される事を防ぐ為にも絶対にRBT10のように不特定多数が使用する機器に重要媒体を残してはならない。
【0020】このようなことから本願発明の媒体残留確認処理は、顧客の媒体の取り忘れのみならず、機械的にRBT10内に媒体取り込に失敗する可能性のあるステップ(S49)においても媒体残留を検出するために、並行して適用することができる。
【0021】尚、実施例では金融機関のRBTシステムにて説明をしてきたが、その他、証券契約端末やチケット発券機などイメージスキャナを使用し、媒体の取り忘れが発生しうる無人端末全般で利用が可能である。
【0022】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば以下の効果が期待できる。即ち、イメージスキャナを使用するシステムの読取り対象媒体の残留放置検出確認手段において、コストのかかるハードセンサー設置、及び市販のイメージスキャナのそれぞれにあったセンサーの開発負荷、開発コストも必要とせず。検出の確認の正確性のない、蓋などの装置の開閉操作などによることもなく、さらに再読取り結果を目視により人的に確認する負荷もなく、ソフトウエアによる制御のみで処理時間を短縮しつつ確実な媒体残留の検出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】RBTシステム構成図である。
【図2】RBT機器ブロック図である。
【図3】媒体残留検出ソフトウエアモジュール構造図である。
【図4】取引業務のフローチャートである。
【図5】媒体残留確認処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 運用上、イメージスキャナでの媒体読取り処理を含むシステムにおいて、イメージスキャナに何の媒体も置かずに読取りを行なった結果のイメージデータに圧縮処理を施した圧縮ファイルのサイズデータを予め記憶保持した第一の記憶手段と、所定の処理を終えた後、再度イメージを読込み、イメージデータを取得する再読取り手段と、前記再読取り手段により得られるイメージデータに圧縮処理を施す再読取りイメージデータ圧縮手段と、前記再読取りイメージデータ圧縮手段により得られる圧縮ファイルのサイズデータを保持する第二の記憶手段と前記第一の記憶手段と前記第二の記憶手段に記憶保持された圧縮ファイルのサイズデータとを比較するサイズ比較手段と、前記比較手段により互いのデータに一定の閾値以上の相違があると判断したときに、イメージスキャナに何かしらの媒体が残留していると判断する媒体残留判定手段とを備えることにより所定の処理を終えた後、イメージスキャナに媒体が残留放置されたままになっていないかどうかを判定するイメージスキャナの媒体残留検出装置。
【請求項2】 運用上、イメージスキャナでの媒体読取り処理を含むシステムにおいて、所定の処理を終えた後、再度イメージを読取り、当該イメージデータに圧縮処理を施した結果のファイルのデータサイズとイメージスキャナに何の媒体も置かずに読取りを行なった結果のイメージデータに圧縮処理を施したファイルのサイズとを比較し、互いのサイズに一定の閾値以上の相違があると判断したときに、イメージスキャナに何かしらの媒体が残留していると判断することをにより、所定の処理を終えた後、イメージスキャナに媒体が残留放置されていないどうかを判定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−223840(P2001−223840A)
【公開日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−31950(P2000−31950)
【出願日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】