説明

イメージスキャナ装置

【課題】キャリブレーションシートを用いることなく、キャリブレーションを行うことができるイメージスキャナ装置を提供する。
【解決手段】外光により照明された読取媒体を撮像するイメージスキャナ装置10は、読取媒体を配置する無彩色であるグレーの台座シート13を含む。台座シート13は、基準位置を示すための台座シート13の色と異なる無彩色の基準マークを有する。キャリブレーションを行う際に、台座シート13は、キャリブレーションシートとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージスキャナ装置に関し、特に、金融機関の窓口等で使用されるスタンド型のイメージスキャナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、銀行等の金融機関の窓口では、例えば、帳票や免許証など、通帳プリンタでは読み取ることのできない媒体も読み取ることができる装置として、スタンド型のイメージスキャナ装置が広く用いられている。このようなスタンド型のイメージスキャナ装置は、例えば、特許文献1、特許文献2、及び、特許文献3で開示されている。
【0003】
スタンド型のイメージスキャナ装置で取得された画像は、文字認識や認証などの用途にも使用される。このため、スタンド型のイメージスキャナ装置には、媒体の明るさが正しく反映された、位置ズレや歪みのない画像の生成が求められている。従って、装置毎に個体差を考慮した適切な調整が行われる必要がある。
【0004】
その一方で、スタンド型のイメージスキャナ装置は、装置内部に設けられた光源から射出される照明光で媒体を照明するフラットベッド型のイメージスキャナ装置と異なり、外光を照明光として使用するため、媒体表面の照度分布は設置環境に強く依存する。例えば、図1に例示されるように、イメージスキャナ装置100の設置位置によって、蛍光灯などの光源105から射出されて台座103に照射される光量や、カメラヘッド部101や支柱102などの影104ができる位置や強さなどがさまざまに変化する。従って、設置環境が特定できない装置出荷前の調整作業では、十分な調整を行うことは困難である。
【0005】
このような理由から、スタンド型のイメージスキャナ装置では、製品出荷後、利用者が装置を設置する際に、キャリブレーションと呼ばれる調整作業が行われる。キャリブレーションは、基準からのズレを補正するための基準調整作業であり、主に、明るさに関する補正(例えば、影などによる不均一な照度分布に対する画素の階調補正)と、ホワイトバランスの補正と、位置に関する補正(例えば、位置ズレ、歪み、倍率の補正)と、が行われる。
【0006】
キャリブレーションを行うことにより、スタンド型イメージスキャナ装置は、設置環境や個体差によらず、媒体の明るさが正しく反映された、位置ズレや歪みのない画像を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−78007号公報
【特許文献2】特開平11−103371号公報
【特許文献3】特開2008−61170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、キャリブレーションは、上述したように、基準からのズレを補正するための基準調整作業である。このため、その実施には、明るさ、色のバランス、位置などの基準が必要であり、従来のスタンド型のイメージスキャナ装置では、明るさ、色のバランス、位置などの基準を特定するために、図1に例示されるように、キャリブレーションシート106と呼ばれる基準媒体が台座103の所定位置に配置される。
【0009】
しかしながら、キャリブレーションシートは、キャリブレーション用途に特化したシートであり、帳票や免許証などをスキャンして画像を生成する場合、つまり、通常使用時には、台座から取り除く必要がある。このため、キャリブレーションを行う際にはキャリブレーションシートを台座に配置し、終了後はそれを取り外すといった作業が必要となる。
【0010】
また、キャリブレーションシートは位置などの基準を定めるものであるため、イメージスキャナ装置の台座に配置する際には、所定位置に正確に配置する必要がある。このため、利用者には、キャリブレーションを行う度毎に正確な作業が求められることになる。
【0011】
また、キャリブレーションシートは、キャリブレーションを行うときのみ台座に配置されるものであるため、イメージスキャナ装置とは別に管理する必要がある。さらに、その管理は、キャリブレーションシートが劣化しないような適切な管理であることが求められる。
【0012】
このように、キャリブレーションシートを利用する場合には、利用者にさまざまな作業の負担を強いることになる。
一方、特許文献3では、キャリブレーションシートを用いることなくキャリブレーションを行うことができるスタンド型のイメージスキャナ装置が開示されている。
【0013】
しかしながら、特許文献3で開示されるイメージスキャナ装置では、キャリブレーションシートの代わりに、反射型液晶ディスプレイなどの表示部が必要である。このため、キャリブレーションシートを用いてキャリブレーションを行う従来のスタンド型のイメージスキャナ装置と比較して装置の構成が複雑になり、装置の大型化や製造コストの増加といった他の技術的な課題が生じてしまう。
【0014】
従って、キャリブレーションシートを用いることなくキャリブレーションを行うことができる、特許文献3に開示される構成とは異なる構成を有するイメージスキャナ装置が求められている。
【0015】
以上のような実情を踏まえ、本発明は、キャリブレーションシートを用いることなく、キャリブレーションを行うことができるイメージスキャナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、外光により照明された媒体を撮像するイメージスキャナ装置であって、前記媒体を配置する無彩色であるグレーの台座シートを含み、前記台座シートは、当該台座シートの基準位置を示すための、前記台座シートの色と異なる無彩色の基準マークを有するイメージスキャナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャリブレーションシートを用いることなく、キャリブレーションを行うことができるイメージスキャナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に係るスタンド型のイメージスキャナ装置の概略構成図である。
【図2】従来技術に係るスタンド型のイメージスキャナ装置とキャリブレーションシートの特徴について説明するための図である。
【図3】従来技術に係るキャリブレーションシートの特徴について説明するための図である。
【図4】従来技術に係るキャリブレーションシートの特徴について説明するための他の図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るスタンド型のイメージスキャナ装置の概略構成図である。
【図6】図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートを例示した図である。
【図7】図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートの変形例を例示した図である。
【図8】従来技術に係るキャリブレーションシートによる影補正を説明するための図である。
【図9】図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートによる影補正を説明するための図である。
【図10】図8で説明する影補正と図9で説明する影補正とを比較する図である。
【図11】図5に示されるイメージスキャナ装置に読取媒体を配置した状態を示した図である。
【図12】図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートからの光量と台座シート上に配置された読取媒体からの光量との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の特徴の理解を容易にするために、図2を参照しながら、従来技術に係るスタンド型のイメージスキャナ装置とキャリブレーションシートの特徴について、説明する。図2は、従来技術に係るスタンド型のイメージスキャナ装置とキャリブレーションシートの特徴について説明するための図である。
【0020】
従来技術に係るイメージスキャナ装置200及びそのキャリブレーションに用いられるキャリブレーションシート(キャリブレーションシート204、キャリブレーションシート205)は、下記の特徴を有する。
【0021】
第1の特徴は、キャリブレーションシートの材料が紙であることである。キャリブレーションシートに特殊な材料を用いずに紙を用いる主な理由は、イメージスキャナ装置200の対象とする読取媒体206が主に紙製の帳票であることである。紙製のキャリブレーションシートの使用は、キャリブレーションによる調整を読取媒体206の画像を取得する際の条件に近い条件下で行うことができる点で、望ましい。
【0022】
一方で、図3(a)に例示されるように、紙製のキャリブレーションシート204では、折れ204aや曲げ、カール204bが生じやすい。折れ204aや曲げ、カール204bが生じたキャリブレーションシート204をイメージスキャナ装置200の所定の構造物に突き当てた場合には、図3(b)に例示されるように、キャリブレーションシート204が所定の位置からずれることになる。このため、キャリブレーションにより基準位置が不正確に設定される。基準位置の設定が不正確であると、図3(c)に例示されるように、文字認識や認証に利用される読取媒体上の認識・認証領域A1と取得された画像上の認識・認証領域A2がずれることになるため、文字認識や認証の精度が劣化してしまう。また、図3(d)に例示されるように、紙製のキャリブレーションシート204では歪みも生じやすいが、キャリブレーションシート204の歪みが非常に大きい場合には、キャリブレーションで歪みを補正しきれず、画像も歪んでしまう。
【0023】
第2の特徴は、キャリブレーションシートの色が白色系であることである。白色系のキャリブレーションシートを用いる主な理由は、読取媒体206の色合いを正確に再現するために行うホワイトバランスの補正の色基本として白色系が好適であること、及び、読取領域内に生じる影情報をより正確に捉えることができることである。
【0024】
一方で、図4(a)に例示されるように、白色系のキャリブレーションシート204では、汚れ204cや色褪せが目立ちやすい。また、紙製のキャリブレーションシート204では、耐磨耗性が低いため、局所的な色の変化も生じやすい。汚れや色褪せなどで局所的な色の変化が生じたキャリブレーションシート204を基準媒体としてキャリブレーションを行うと、図4(b)に例示されるように、汚れ等に対応する領域A3の明るさが正しく補正されず、その結果、明るさを均一にする階調補正やホワイトバランスの補正が正しく行われない。このため、取得される画像の明るさや色の再現性が低下してしまう。
【0025】
第3の特徴は、複数のキャリブレーションシート(キャリブレーションシート204、キャリブレーションシート205)を用いてキャリブレーションが行われることである。例えば、図2に例示されるように、明るさを均一にする階調補正やホワイトバランス補正のためにはキャリブレーションシート204が使用され、位置に関する補正を行うためには基準マーク205aを有するキャリブレーションシート205が使用される。このように複数のキャリブレーションシートで役割を分担することで、各キャリブレーションシートの製造コストを抑制することができる。
【0026】
第4の特徴は、イメージスキャナ装置200の台座シート203の色が黒色系であることである。なお、台座シート203とは、読取媒体206を配置すべき領域を示すために台座部に設けられるシートであり、キャリブレーションシートと異なり、イメージスキャナ装置200に常時設置されているものである。黒色系の台座シート203を用いる主な理由は、読取媒体206の背景色の多くが白色系であるため、読取媒体206との境目(すなわち、読取媒体206の四辺)の検出に好適であることである。また、白色系のものに比べて蛍光灯などの光源からの光に対して反射率が低い点も望ましい。
【0027】
次に、本実施形態に係るスタンド型のイメージスキャナ装置について説明する。図5は、本実施形態に係るスタンド型のイメージスキャナ装置の概略構成図である。図6は、図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートを例示した図である。図7は、図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートの変形例を例示した図である。
【0028】
図5に例示されるイメージスキャナ装置10は、外光により照明された媒体を撮像するスタンド型のイメージスキャナ装置であり、図5に例示されるように、カメラヘッド部11と、カメラヘッド部11を支持する支柱12と、読取媒体を配置する無彩色であるグレーの台座シート13と、を含んでいる。
【0029】
台座シート13は、図6に例示されるように、台座シート13の基準位置を示すための、台座シート13の色と異なる無彩色の基準マークを有している。より具体的には、台座シート13は、矩形形状を呈し、且つ、台座シート13の少なくとも四隅近傍に4つ基準マーク(基準マーク13a、基準マーク13b、基準マーク13c、基準マーク13d)を有し、この4つの基準マークの階調値は、台座シートの階調値よりも低い。
【0030】
また、台座シート13の材料は、表面反射防止処理(型成形による凹凸)を施したポリカーボネイト樹脂シートである。なお、台座シート13の材料は、ポリエステルであってもよい。ただし、台座シート13の材料がポリエステルである場合には、表面の光沢及び凹凸を抑えるためのコーティング剤が台座シート13に塗布されていることが望ましい。
【0031】
本実施形態に係るイメージスキャナ装置10では、読取媒体を配置すべき領域を示す台座シート13がキャリブレーションを行う際にキャリブレーションシートとして機能する。このため、イメージスキャナ装置10は、キャリブレーションシートを用いることなく、キャリブレーションを行うことができる。
【0032】
なお、イメージスキャナ装置10は、図6に例示される台座シート13の代わりに、図7に例示される台座シート14を含んでもよい。台座シート14は、矩形形状を呈し、且つ、台座シート13の少なくとも四隅近傍に4つ基準マーク(基準マーク14a、基準マーク14b、基準マーク14c、基準マーク14d)を有している点は、台座シート13と同様である。ただし、台座シート14は、台座シート14の階調値よりも低い階調値を示す基準マーク(基準マーク14a、基準マーク14b、基準マーク14c)だけではなく、台座シートの階調値よりも高い階調値を示す基準マーク14dを含む点が、台座シート13と異なっている。
【0033】
台座シート14を撮像する場合には、台座シート14が台座シート14の階調値よりも高い階調値を示す基準マーク14dを含むため、カメラヘッド部11で検出される階調値の幅が台座シート13を撮像した場合に比べて広くなる。このため、台座シート14を用いることで、台座シート13を用いる場合に比べて、キャリブレーションによる明るさに関する補正の精度を向上させることができる。
【0034】
以下、本実施形態に係るイメージスキャナ装置10の台座シート13がキャリブレーションシートとして機能すること、及び、台座シート13が従来の台座シートと同様に機能することについて、より具体的に説明する。
【0035】
まず、図8から図10を参照しながら、台座シート13がキャリブレーションシートとして機能することについて説明する。図8は、従来技術に係るキャリブレーションシートによる影補正を説明するための図である。図9は、図5に示されるイメージスキャナ装置の台座シートによる影補正を説明するための図である。図10は、図8で説明する影補正と図9で説明する影補正とを比較する図である。
【0036】
例えば、図8(a)に示されるように、強さ(濃度)が20である影S1と強さ(濃度)が40である影S2とが生じる環境であれば、白色系のキャリブレーションシート204の画像の明るさは、図8(b)に示されるように、影以外の領域については100、影S1の領域については80(=100−20)、影S2の領域については60(=100−40)となる。このため、基準媒体として白色系のキャリブレーションシート204を用いて行われるキャリブレーションでは、図8(c)に示されるように、影S1、影S2の領域の明るさを1.25倍(=100/80)、約1.67倍(≒100/60)の明るさにする階調補正を行うことで、明るさを均一化する。
【0037】
一方、例えば、図9(a)に示されるように、図8(a)に示される環境と同じく、強さ(濃度)が20である影S3と強さ(濃度)が40である影S4とが生じる環境であれば、キャリブレーションシート204に比べて8割の階調を有するグレーの台座シート13の画像の明るさは、図9(b)に示されるように、影以外の領域については80、影S3の領域については60(=80−20)、影S4の領域については40(=80−40)となる。このため、基準媒体としてグレーの台座シート13を用いて行われるキャリブレーションでは、図9(c)に示されるように、影S3、影S4の領域の明るさを約1.33倍(≒80/60)、2倍(=80/40)の明るさにする階調補正を行うことで、明るさを均一化する。
【0038】
即ち、図10に示されるように、基準媒体としてグレーの台座シート13を用いる場合には、白色系のキャリブレーションシート204を用いる場合に比べて、階調補正のために必要となるゲインが増加することになるが、キャリブレーションシート204の場合と同様に、明るさを均一化することができる。
【0039】
なお、台座シート13の明るさが低い(つまり、暗い)ほど、また、影の強さが強いほど、補正する際のゲインが大きくなる。一般に、階調補正ではノイズ等も他の情報と等しく増幅されることになるため、ゲインが大きくなりすぎる場合には、ノイズ等の絶対的な大きさが許容範囲を超えて増大することがある。また、台座シート13の明るさが低いほどダイナミックレンジが低下するため、過度に明るさの低い台座シート13の使用は、階調補正の精度を著しく低下させる原因となり得る。
【0040】
しかしながら、従来から、台座部に強い影が投影される環境下でのイメージスキャナ装置の使用については、生成される画像の精度を保証していない。このため、本実施形態に係るイメージスキャナ装置10が、従来のイメージスキャナ装置と同様の環境で使用されることを想定すると、台座シート13の色として、過度に明るさの低い、極めて濃いグレーを用いない限り、また、グレーの階調値がサチレーション(飽和)の起こらない階調値であれば、適切な階調補正が可能である。従って、グレーの台座シート13は、明るさに関する補正についてキャリブレーションシートとして機能する。
【0041】
また、グレーの台座シート13は無彩色であるので、白色系のキャリブレーションシート204と同様に、ホワイトバランスの補正の色基本として好適である。従って、グレーの台座シート13は、ホワイトバランスの補正についてキャリブレーションシートとして機能する。
【0042】
また、台座シート13は、台座シート13の色(背景色)と異なる無彩色の基準マークを有している。従って、台座シート13は、明るさ及びホワイトバランスの補正に加えて、位置に関する補正についてもキャリブレーションシートとして機能する。台座シート13では、基準マークが台座シート13の四隅近傍に配置されているため、読取領域全体でどのようなズレが生じているのかについての傾向を把握することが容易となる。また、台座シート13では、基準マークの形状が、基準マークの中心に対して上下左右対称な形状である正方形である。このため、ズレ量やズレの傾向をより正確に把握することができる。なお、基準マークの形状は正方形に限られず、基準マークの中心に対して上下左右対称な形状であればよい。
【0043】
また、台座シート13の基準マークが無彩色であるため、基準マークの存在はホワイトバランスの補正に影響を与えない。また、基準マークは台座シート13の四隅近傍など所定位置に配置されているため、予め基準マークの存在を考慮して明るさの補正を行うことができる。従って、明るさに関する補正、ホワイトバランスの補正、位置に関する補正で共通の台座シートを使用することができる。
【0044】
次に、図11及び図12を参照しながら、台座シート13が従来の台座シートと同様に機能することについて説明する。図11は、図5に示されるイメージスキャナ装置に読取媒体を配置した状態を示した図である。図12は、イメージスキャナ装置の台座シートからの光量と台座シート上に配置された読取媒体からの光量との関係を示した図である。
【0045】
図11に示されるように、読取媒体16を配置すべき領域を示す台座シート13は、読取媒体16の輪郭を検出するために用いられる。具体的には、台座シート13は、光源15から射出される光に対して読取媒体16の反射率とは異なる反射率を有していることから、台座シート13を反射してカメラヘッド部11に入射する光量と読取媒体16を反射してカメラヘッド部11に入射する光量とに差を生じさせる。この光量差により、台座シート13と読取媒体16の境界、つまり、読取媒体16の輪郭を検出することができる。
【0046】
一般的に、帳票などの読取媒体の背景色は白色であり、その結果、読取媒体16は高い反射率を有している。このため、台座シート13の反射率が低い場合には、図12(a)に示されるように光量差が大きくなるため、読取媒体16の輪郭を検出しやすい。一方、台座シート13の反射率が高い場合には、図12(b)に示されるように光量差が小さくなるため、読取媒体16の輪郭を検出しにくい。
【0047】
本実施形態に係るイメージスキャナ装置10の台座シート13の色はグレーであり、グレーの台座シートは、一般に、白色の読取媒体に比べて低い反射率を有する。また、台座シート13の材料は、上述したように、表面反射防止処理(型成形による凹凸)を施したポリカーボネイト樹脂シートを材料とする台座シート13は、反射及び光沢を抑えることができる。また、台座シート13の材料がポリエステルである場合には、台座シート13の表面の光沢を抑えるためのコーティング剤が塗布されている。従って、台座シート13は、読取媒体16に比べて低い反射率を有し、読取媒体16の輪郭の検出に必要な十分な光量差を生じさせることができるため、従来の台座シートと同様に機能する。
【0048】
最後に、台座シート13の材料として、前記ポリカーボネイト樹脂シートが最適であるとする理由について説明する。
すでに上述したように、台座シートの反射率が高いと読取媒体16の輪郭を検出しにくいため、輪郭を高精度に検出することが困難となる。このため、台座シートの材料には反射率が低いことが求められるが、前記ポリカーボネイト樹脂シートは、反射及び光沢を抑えて低い反射率を実現することができる。
【0049】
また、台座シートに色ムラが多いと、キャリブレーションの際に正確な明るさを得ることができないため、明るさに関する補正の精度が劣化する。このため、台座シートの材料には、色ムラが少ないことが求められるが、前記ポリカーボネイト樹脂シートは、色ムラが少なく、台座シートに好適である。
【0050】
また、台座シートは基本的にはイメージスキャナ装置に常時設置されるものであるが、台座シートの耐久性が低いと交換頻度が増加してしまう。このため、台座シートの材料には、高い耐久性が求められるが、前記ポリカーボネイト樹脂シートは、高い耐久性を有する。
【0051】
また、台座シートは読取媒体を載せるものである。前記ポリカーボネイト樹脂シートは、滑りの良いため、読取媒体の設置性を良好であり、台座シートに好適である。
このように前記ポリカーボネイト樹脂シートは、台座シートに求められる主な要件である反射率が低いこと、色ムラが少ないこと、耐久性が高いこと、及び、滑りが良いことを満たしているため、台座シートの材料として最適である。
【0052】
なお、ポリエステルの材質自体は、台座シートの材料として必ずしも最適ではないが、表面の光沢及び凹凸を抑えるためのコーティング剤や、透明なコーティング剤(例えば、アクリルコート剤)などを塗布することにより、上述した要件を満たすことができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るイメージスキャナ装置10によれば、キャリブレーションシートを用いることなく、台座シート13を用いて、キャリブレーションを行うことができる。このため、本実施形態に係るイメージスキャナ装置10は、キャリブレーション毎に、キャリブレーションシートを正確に配置する手間を排除することができる。
【0054】
また、台座シート13は、イメージスキャナ装置10に常時設置されるため、台座シート13をイメージスキャナ装置10とは別に管理する必要がなく、管理上の負担を軽減することができる。また、キャリブレーションシートの代わりに、従来から用いられている台座シートを改良してキャリブレーションに使用するため、装置構成に大きな変更を加える必要がない。このため、装置の大型化や製造コストの増加といった課題も生じない。
【0055】
さらに、台座シート13は、キャリブレーションシートと異なり、キャリブレーション毎の取り外しが不要であること、また、材料が紙でないことから、従来のキャリブレーションシートに比べて、折れや曲げ、カールなどが生じにくく、汚れも生じにくい。即ち、キャリブレーションによる補正について精度を劣化させる要因が少ない。このため、本実施形態に係るイメージスキャナ装置10は、安定して高い補正性能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、100、200 イメージスキャナ装置
11、101 カメラヘッド部
12、102 支柱
13、14 台座シート
13a、13b、13c、13d、14a、14b、14c、14d、205a 基準マーク
16、206 読取媒体
15、105 光源
103、203 台座
104、S1、S2、S3、S4 影
106、204、205 キャリブレーションシート
204a 折れ
204b カール
204c 汚れ
A1、A2、A3 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光により照明された媒体を撮像するイメージスキャナ装置であって、
前記媒体を配置する無彩色であるグレーの台座シートを含み、
前記台座シートは、当該台座シートの基準位置を示すための、前記台座シートの色と異なる無彩色の基準マークを有する
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイメージスキャナ装置において、
前記台座シートは、
矩形形状を呈し、且つ、
前記台座シートの少なくとも四隅近傍に4つ前記基準マークを有する
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のイメージスキャナ装置において、
前記基準マークの階調値は、前記台座シートの階調値よりも低い
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のイメージスキャナ装置において、
前記台座シートは、
前記台座シートの階調値よりも低い階調値を示す基準マークと、
前記台座シートの階調値よりも高い階調値を示す基準マークと、を含む
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイメージスキャナ装置において、
前記台座シートの材料は、表面反射防止処理を施したポリカーボネイト樹脂シートである
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイメージスキャナ装置において、
前記台座シートの材料は、ポリエステルであり、
表面の光沢及び凹凸を抑えるためのコーティング剤が、前記台座シートに塗布されている
ことを特徴とするイメージスキャナ装置。

【図3】
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【図10】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−227843(P2012−227843A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95443(P2011−95443)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】