説明

イメージングプローブ

【課題】プローブ内の光ファイバ先端部分を容易に組み立てることができるイメージングプローブを提供すること。
【解決手段】光ファイバ17の先端を光ファイバ保持部21によって保持する。保持された光ファイバ17の出射端から所定間隔を隔てた位置にトロイダルミラー22を配置する。トロイダルミラー22の第1焦点を光ファイバ17の出射端とし、トロイダルミラーの第2焦点を光軸からの側方に設定する。こうすればトロイダルミラー22の回転によって集束位置を環状に変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光を偏向させて測定対象を走査するイメージングプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を偏向させて対象物を走査し、その反射光を用いて測定対象の状態を観測する装置が用いられている。特に医療の分野においては、光診断は原理的に非侵襲で患者に痛み等の負担を与えず、早急な治療を要する診断を円滑にしたり、又は治療中の経過観察をすることができると考えられ、医療に多大な貢献が期待される。このような光診断では生体内に光プローブや内視鏡を挿入し、光ファイバを通じて信号光を生体部位にあてて後方に戻る光を同じ光ファイバを用いて伝播させ、その光の強度や周波数成分等を解析することによって部位の状態を診断する。
【0003】
例えば非特許文献1では、物体あるいは生体内部からの信号光を干渉計で干渉させ、その干渉信号の周波数分析から、極めて高分解能な断層情報を得る光コヒーレントトモグラフィ(OCT)が提案されている。非特許文献1では、光ファイバの先端にレンズ、例えばGRINレンズを固定し、GRINレンズの出射端に三角柱状のプリズムを配置し、光ファイバからの光をその光軸と垂直方向に投光する。ここでGRINレンズのパラメータは血管の内壁で光ビームが集光するように調整される。光ファイバ、GRINレンズ、プリズムから成るアセンブリをシースと呼ばれる細径のチューブ内で360°連続的に回転させながら散乱反射光を同じ光ファイバに結合させることによって血管内壁の断層を放射状に得ることが可能となる。
【0004】
又特許文献1には光源からの光を光ファイバを介してトロイダルミラーに入射し検出体に導くと共に、その反射光を他のトロイダルミラーを介して受光部に導き画像処理すると共に、これらの光学ユニットを移動させることによって、1次元及び2次元の画像を得るようにした装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6,075,612
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zahid Yaqoob et al., "Methods and application areas of endoscopic optical coherence tomography", Journal of Biomedical Optics 11(6), 063001(November/December 2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1のアセンブリはシースの内側で、例えばUV硬化材等の光部品用の接着剤により光ファイバ端部とGRINレンズ、プリズムを接着している。しかしプローブの内径は0.55mm程度、GRINレンズは0.5mmとクリアランスや公差が厳しく、アセンブリの精度や接着剤のはみ出し量等の製造上の精度管理が難しいという欠点があった。又50〜100Hz程度の高速でアセンブリを回転させるため、シース内で部品の接着箇所が折れるなどの事故が生じる可能性があった。更にシース内を潤滑油で満たす場合には、プリズムに反射コーティングが必要となる。又シース内を空気とする場合には、プリズムの出射面に無反射コーティングが必要となるという欠点があった。
【0008】
又特許文献1では光学ユニットを平行移動させる必要がありスキャニングが複雑になるという欠点があった。又生体等に挿入するにはプローブ部分が大きくなりすぎ、診断が難しくなるという欠点があった。
【0009】
本発明はこのような従来の課題に着目してなされたものであって、プローブ内のファイバ先端部分の組み立てを容易にするイメージングプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明のイメージングプローブは、光ファイバの出射端を保持する光ファイバ保持部と、前記光ファイバ保持部で保持されている光ファイバの出射面から所定間隔離れた位置に配置され、光ファイバの出射端からの光を光軸の側方に集光すると共に、集光点からの反射光を前記光ファイバの出射端に入射するトロイダルミラーと、を具備し、前記トロイダルミラーは、前記光ファイバの光軸と中心として回転自在に保持されているものである。
【0011】
ここで前記イメージングプローブは、開口部を有する筒状部材であって、その内部に光ファイバを保持する前記光ファイバ保持部と、前記開口部の一端に前記光ファイバからの光を側方に集光するトロイダルミラーとを形成するようにしてもよい。
【0012】
ここで前記トロイダルミラーは、回転自在の筒形のチューブの内壁に固定されており、前記光ファイバ保持部は、前記チューブの内壁とは間隔を隔てて配置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、イメージングプローブの光ファイバを伝送路として用いたイメージングプローブであって、光ファイバの端部を光ファイバ保持部によって保持すると共に、保持された光の出射端から所定の間隔を隔てた位置にトロイダルミラーを配置して第2焦点を光軸の側方としている。このためトロイダルミラーを回転させるだけで第2焦点の位置を環状に走査することができる。又光ファイバ保持部は円筒状であるため、光ファイバを固定しても接着剤等が外部に漏れることはなく、接着を確実にすることができるという効果が得られる。又本発明では、光を反射及び集束させるためトロイダルミラーを用いているため、空気中及び液中を問わず同じ構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは本発明の第1の実施の形態によるイメージングプローブを用いたOCTによる画像表示システムのブロック図である。
【図1B】図1Bは本実施の形態のイメージングプローブを回転させる回転機構を示す概略図である。
【図2】図2は本実施の形態によるイメージングプローブの外観を示す平面図及び正面図である。
【図3】図3は本実施の形態によるイメージングプローブの斜視図である。
【図4】図4は本実施の形態に用いられるトロイダルミラーを示す斜視図及び平面図である。
【図5】図5は本実施の形態によるイメージングプローブの構成を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施の形態によるイメージングプローブの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
次に本発明の第1の実施の形態について説明する。図1Aはこの第1の実施の形態によるイメージングプローブを用いる診断装置の構成を示すブロック図である。本図においてチューナブルレーザ11は駆動部12によって駆動され、所定範囲の波長の波長の信号光を出力するものである。駆動部12はこの波長を例えば100nmの範囲で周期的に変化させるものとする。このチューナブルレーザ11の出力は光ファイバ13を介して光サーキュレータ14に与えられる。光サーキュレータ14は端子14a,14b,14cを有し、端子14aに加わった光は端子14bより、端子14bに加わった光は端子14cより出射するものである。光サーキュレータ14の端子14b側には光ファイバ15が設けられている。光ファイバ15は信号光と励起光とをイメージングプローブ20側に伝送すると共に、イメージングプローブ20からの反射光を測定装置側に伝送するものである。又光ファイバとプローブ20との間にはプローブを回転させるための回転機構16が設けられ、その先端にはプローブ20に連結されるファイバ17が設けられている。
【0016】
第1の実施の形態のイメージングプローブでは光ファイバとプローブとを一体に回転させる。図1Bはこの回転機構16を示している。図1Bにおいて、回転機構16はモータ16a、モータ16aに連結されたギア16b、及びギア16bに連動するギア16cが設けられる。ギア16cの回転軸には光ファイバ17を保持するスリーブ16dが固定されており、ギア16cの回転によってスリーブ16dを介して光ファイバ17を回転させるものである。光ファイバ17の他端は前述したイメージングプローブ20が接続される。光ファイバ17は光を入出射すると共に回転力を伝えるため、その外周部分をコイル状の金属部材で覆って機械的強度を増すようにしてもよい。
【0017】
次に図1Aにおいて、光サーキュレータ14の端子14cには光ファイバ31が接続され、その一端にレンズ32及びフォトダイオード33が設けられる。フォトダイオード33は光信号を電気信号に変換するもので、その出力は増幅器34を介して分析装置35に加えられる。分析装置35はこの反射光の強度又は周波数変化に基づいて画像情報を生成して、モニタ36上に表示する。
【0018】
次に本発明の第1の実施の形態によるイメージングプローブ20の構成について説明する。図2はイメージングプローブ20の平面図及び正面図であり、図3はその斜視図である。本実施の形態では、イメージングプローブ20は光ファイバ17の端部を保持するファイバ保持部21としての機能と、光ファイバ17の端部から一定間隔を隔てた位置に形成されたトロイダルミラー22の機能を合わせ持つ円筒形の部材である。図2(a)においてプローブ20の中心から左側部分にプローブの軸に沿った開口部23が形成されている。又中心から右側の円筒形部分は内径がほぼ一定であり、この内径は光ファイバ17の外径に等しくする。又この円筒形部分の右端では外側に向かうにつれて徐々に内径を大きくしたテーパ24が形成され、光ファイバ17を容易に挿入できるようにしている。そして右側のテーパ部24から光ファイバ17を挿入し、開口部23が始まる円筒形部分の端部で光ファイバ17を固定して接着剤等で固定するものとする。又光ファイバ保持部21は円筒状であるため、光ファイバ17を固定しても接着剤等が外部に漏れることはなく、接着を確実にすることができるという効果が得られる。
【0019】
この開口部23の左端の壁面には前述したトロイダルミラー22が形成されている。トロイダルミラー22は光ファイバ17からの出射光をプローブ20の側方に出射し、集光すると共に、その部分からの反射光を光ファイバ17に戻すものである。
【0020】
次にトロイダルミラーについて説明する。トロイダルミラーは直交する2軸の曲率が異なる非球面ミラーであり、第1焦点に点光源を配置したときに所定の位置(第2焦点)で非点収差の発生を抑えてほぼ1点に集光させることができる。図4(a)はトロイダルミラー40の斜視図、図4(b)は平面図である。ここで点Aを第1焦点、点Bを第2焦点とする。ここで図4(a),(b)に示すように第1焦点からトロイダルミラー40の中心までの距離をaとし、ここから第2焦点までの距離をb、相異なる2軸の曲率をRh,Rvとすると、次式(1),(2)が成り立つ。
1/a+1/b=2/Rhcosθ ・・・(1)
1/a+1/b=2cosθ/Rv ・・・(2)
【0021】
本実施の形態では図2に示すようにイメージングプローブ20の開口部23の左端面に曲面のトロイダルミラー22を形成している。そして第1焦点Aを光ファイバ17より光が出射する位置に設定しておき、イメージングプローブ20の中心軸の側方に第2焦点Bが位置するように配置しておく。図5はイメージングプローブ20の断面図を示しており、例えばaを1.3mm、bを5mm、θを40°とすると、式(1),(2)よりRhは2.76mm、Rvは1.6mmとなる。このような曲率半径Rh,Rvを有するトロイダルミラー22を用いることによって、イメージングプローブ20の側方を第2焦点位置に設定することができる。尚ここで示す数値は一例であって、これに限定されるべきものでないことはいうまでもない。
【0022】
次にこの実施の形態の動作について説明する。図1に示すようにチューナブルレーザ11を駆動部12によって駆動し、光ファイバ13、光サーキュレータ14、光ファイバ15及び光ファイバ17を介してイメージングプローブにレーザ光を導く。このときモータ16aを回転させることによってギア16b,16cを介して回転力がプローブ17の周囲のスリーブ16dに加えられ、光ファイバ17を回転させることができる。光ファイバ17の先端にはイメージングプローブ20が接続されているため、光ファイバ17の回転により図3に示すようにイメージングプローブ20を回転させることができる。そして光ファイバ15からのレーザ光を光ファイバ17を介してトロイダルミラー22に導き、イメージングプローブ20の側方の第2焦点に照射する。この点からの反射光はそのままトロイダルミラー22を介して光ファイバ17に加わり、更に光ファイバ15、光サーキュレータ14を介して分析装置35側に戻る。このため分析装置での解析によって第2焦点部分からの反射光に基づいた断面画像を生成することができる。
【0023】
尚この実施の形態では、図2に示すイメージングプローブをそのまま生体など被測定領域に挿入して画像を得るようにしているが、円筒形のシース内にイメージングプローブを収納してシースは回転させず、イメージングプローブのみを回転させるようにしてもよい。この場合にはシースの少なくとも光を入出射する部分を透明としておく必要がある。
【0024】
次に本発明の第2の実施の形態によるイメージングプローブについて説明する。前述した第1の実施の形態では、光ファイバ固定部とトロイダルミラーとをイメージングプローブに設けて一体に回転させるようにしているが、光ファイバ固定部自体は回転させずに固定しておき、トロイダルミラーのみを回転させるようにしてもよい。図6はこの第2の実施の形態の構成を示すイメージングプローブ50の断面図である。このプローブは一部が透明の窓51aから成る円筒状のチューブ51を有しており、このチューブ51の内部には内壁と間隔を隔てて光ファイバ固定部52が設けられる。光ファイバ固定部52は第1の実施の形態と同様に、光ファイバ17の一端を保持するものであるが、光ファイバ固定部52自体は回転せずに、内部で静止している。チューブ51内部の一端にトロイダルミラー53を固定する。
【0025】
さて第2の実施の形態では、光ファイバ17からの光をトロイダルミラー53を介してプローブ50の側方に光を出射する。そしてチューブ51に外部より回転力を加え、プローブ自体を回転させることによって環状に光を出射し、その位置からの反射光の情報を得ることができる。この場合はチューブ51を図1(b)と同様の回転機構で回転させることができる。従って光ファイバ17からの光をチューブ51の側方に導き、その位置からの光を光ファイバ17に戻すことができる。この場合にもプローブ50を走査することによって2次元画像とすることができる。
【0026】
尚この実施の形態ではイメージングプローブをOCTのプローブとして用いているが、本発明によるイメージングプローブは他の装置、例えば共焦点顕微鏡や、分光イメージング装置のプローブとして用いることができる。共焦点顕微鏡では、光ファイバからの出射位置である第1焦点が点光源に相当し、トロイダルミラーの第2焦点が結像点となる。従って本発明のイメージングプローブを用いて結像点のみに光源からの光を入射し、その反射光のみを第1焦点に集め、同一の光ファイバによって受光素子に導くことによって共焦点顕微鏡を構成することができる。この場合にプローブを適宜走査することによって2次元又は3次元の画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
11 チューナブルレーザ
12 駆動部
13,15,17,31 光ファイバ
14 サーキュレータ
16 回転機構
20,50 イメージングプローブ
21,52 光ファイバ固定部
22,40,53 トロイダルミラー
23 開口部
24 テーパ部
51 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの出射端を保持する光ファイバ保持部と、
前記光ファイバ保持部で保持されている光ファイバの出射面から所定間隔離れた位置に配置され、光ファイバの出射端からの光を光軸の側方に集光すると共に、集光点からの反射光を前記光ファイバの出射端に入射するトロイダルミラーと、を具備し、
前記トロイダルミラーは、前記光ファイバの光軸と中心として回転自在に保持されているイメージングプローブ。
【請求項2】
前記イメージングプローブは、開口部を有する筒状部材であって、その内部に光ファイバを保持する前記光ファイバ保持部と、前記開口部の一端に前記光ファイバからの光を側方に集光するトロイダルミラーとを形成した請求項1記載のイメージングプローブ。
【請求項3】
前記トロイダルミラーは、回転自在の筒形のチューブの内壁に固定されており、
前記光ファイバ保持部は、前記チューブの内壁とは間隔を隔てて配置されている請求項1記載のイメージングプローブ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−127924(P2011−127924A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284311(P2009−284311)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(591102693)サンテック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】