説明

インクカートリッジ取引装置、インクカートリッジ取引方法、インクカートリッジ取引プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】インクジェットプリンタの故障原因が、非推奨インクカートリッジの使用にあるとき、ユーザは、インクジェットプリンタの修理を有償で受けなければならなかった。
【解決手段】故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、推奨インクカートリッジであるか否かを識別し、インクジェットプリンタの修理に、無償修理保証契約を適用可能か否かを判定し、インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが推奨インクカートリッジでなく、無償修理保証契約を適用不可能であるとき、推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問し、推奨インクカートリッジを購入する旨の回答を受けたとき、インクジェットプリンタの故障に無償修理保証契約を適用可能であるとみなし、インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのようなプリンタに使用されるインクカートリッジを取引するためのインクカートリッジ取引装置、当該インクカートリッジ取引装置を用いるインクカートリッジ取引方法、前記インクカートリッジ取引装置に用いられるインクカートリッジ取引プログラム、及び、当該インクカートリッジ取引プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタが故障すると、そのユーザは、当該インクジェットプリンタを、インクジェットプリンタ全般の故障を修理するサービスセンターに持ち込む。当該サービスセンターでは、修理員は、前記インクジェットプリンタの故障原因が、例えば、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されているインクカートリッジ(以下、「推奨インクカートリッジ」という。)を使用したことにあるか、又は、推奨されていないインクカートリッジ(以下、「非推奨インクカートリッジ」という。)を使用したことにあるかを検査し、これにより、当該インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障を無償で修理することを保証する契約である「無償修理保証契約」を適用することができるか否かを確認する。前記インクジェットプリンタの故障原因が、前記推奨インクカートリッジを使用していたことにあるときには、前記ユーザは、当該インクジェットプリンタの修理を無償で受けることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記インクジェットプリンタの故障原因が、前記非推奨インクカートリッジを使用していたことにあるときには、前記ユーザは、当該インクジェットプリンタの修理を有償で受けなければならないという問題があった。
【0004】
また、前記インクジェットプリンタの修理を有償で受けたにも拘わらず、その後に、前記ユーザが、悪意で、即ち、非推奨インクカートリッジであることを知って、再び、非推奨インクカートリッジを使用することがあり、これにより、前記サービスセンターでは、当該非推奨インクカートリッジの再使用に起因する、上記したと同様な故障の修理を再び行わなければならないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
《インクカートリッジ取引装置》
上記した課題を解決すべく、本発明に係る第1のインクカートリッジ取引装置は、
(1)故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別部と、
(2)前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定部と、
(3)前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問する質問部と、
(4)前記推奨インクカートリッジを購入するか否かの回答を入力するための入力部と、
(5)前記質問について、前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付部とを含む。
【0006】
本発明に係る第2のインクカートリッジ取引装置は、
(1)故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別部と、
(2)前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定部と、
(3)前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問する質問部と、
(4)前記非推奨インクカートリッジを購入しないか否かの回答を入力するための入力部と、
(5)前記質問について、前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付部とを含む。
【0007】
上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジ取引装置によれば、前記インクジェットプリンタの前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別された結果として、当該インクジェットプリンタに前記契約が適用不可能であると判定された場合に、前記受付部は、前記質問について、前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答の入力を受けると、又は、前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約の入力を受けると、前記判定部による前記契約が適用不可能との判定結果とは対照的に、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなして、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける。これにより、前記インクジェットプリンタのユーザは、前記非推奨インクカートリッジの使用に起因する前記インクジェットプリンタの故障の修理を無償で受けることができ、かつ、当該インクカートリッジ取引装置を使用する修理員は、前記非推奨インクカートリッジの使用に起因する前記インクジェットプリンタの故障を修理した後には、非推奨インクカートリッジの再使用に起因する前記インクジェットプリンタの再故障を修理することを回避することが可能となる。
【0008】
上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジの取引装置は、
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別部は、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行う。
【0009】
上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジの取引装置によれば、前記識別部が、前記インクジェットプリンタの前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクの色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの色材組成物の分離結果とを比較することにより行う。これにより、前記識別を精度高く行うことができ、この結果、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないとき、前記インクジェットプリンタのユーザに、前記推奨インクカートリッジを購入する旨を回答すること、及び、前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約することを、当該ユーザが快諾するように勧めることができる。
【0010】
《インクカートリッジ取引方法》
本発明に係る第1のインクカートリッジ取引方法は、
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引方法であって、
(1)前記識別部が、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
(2)前記判定部が、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定工程と、
(3)前記質問部が、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問する質問工程と、
(4)前記受付部が、前記質問について前記入力部により前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付工程と、を含む。
【0011】
本発明に係る第2のインクカートリッジ取引方法は、
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引方法であって、
(1)前記識別部が、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
(2)前記判定部が、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定工程と、
(3)前記質問部が、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問する質問工程と、
(4)前記受付部が、前記質問について前記入力部により前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付工程と、を含む。
【0012】
上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジ取引方法では、
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程では、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行う。
【0013】
《インクカートリッジ取引プログラム》
本発明に係る第1のインクカートリッジ取引プログラムは、
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置に用いられる、コンピュータにより実行可能なインクカートリッジ取引プログラムであって、
(1)前記識別部に、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
(2)前記判定部に、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定させる判定工程と、
(3)前記質問部に、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問させる質問工程と、
(4)前記受付部に、前記質問について前記入力部により前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付けさせる受付工程と、を含む。
【0014】
本発明に係る第2のインクカートリッジ取引プログラムは、
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引方法であって、
(1)前記識別部に、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
(2)前記判定部に、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定させる判定工程と、
(3)前記質問部に、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問させる質問工程と、
(4)前記受付部に、前記質問について前記入力部により前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付けさせる受付工程と、を含む。
【0015】
上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジ取引プログラムでは、
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程は、前記識別部に、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行わさせる。
《記録媒体》
本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記した本発明に係る第1、第2のインクカートリッジ取引プログラムが記録されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るインクカートリッジ取引装置の実施例について図面を参照して説明する。
【0017】
《構成》
図1に示されるように、実施例のインクカートリッジ取引装置IDは、今回故障したインクジェットプリンタIPxを始めとする、故障したインクジェットプリンタ全般を修理すべく全国各地に存在する複数のサービスセンター(図示せず。)の一つであるサービスセンターSC1に設けられており、入力部1と、識別部2と、判定部3と、質問部4と、受付部5と、処理部6と、出力部7と、記憶部8とを含む。
【0018】
以下では、説明及び理解を容易にすべく、サービスセンターSC1に、故障したインクジェットプリンタIPxのユーザによって、当該インクジェットプリンタIPxが修理のために持ち込まれたことを想定する。
【0019】
入力部1は、例えば、キーボードやマウスからなり、サービスセンターSC1の修理員が、インクジェットプリンタIPxのユーザ名及びシリアル番号、インクジェットプリンタIPxがサービスセンターSC1に持ち込まれた日時、インクジェットプリンタIPxを修理した日時、インクジェットプリンタIPxの故障内容及び修理内容等を入力するために用いられる。
【0020】
識別部2は、分離用基材SBと、推奨インクカートリッジRI(識別用)とを有し、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUI、即ち、インクジェットプリンタIPxが過去に使用したことがあるインクカートリッジ、又は、現在使用しているインクカートリッジが推奨インクカートリッジRIであるか否かを、前記使用インクカートリッジUIのインク(第1の色材組成物CC1を含む。)が、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材SB上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記第1の色材組成物CC1の分離結果と、前記推奨インクカートリッジRIのインク(第2の色材組成物CC2を含む。)が前記分離用基材SB上を移動するクロマトグラフィーにより得られる当該第2の色材組成物CC2の分離結果とを比較することにより行う。
【0021】
判定部3は、例えば、CPUからなり、前記インクジェットプリンタIPxの修理について、前記識別部2による前記インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIの識別の結果に基づき、前記インクジェットプリンタIPxに、推奨インクカートリッジRIの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約である「無償修理保証契約」を適用可能か否かを判定する。
【0022】
質問部4は、例えば、CPUからなり、前記識別部2が、前記インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが前記推奨インクカートリッジRIでないと識別し、その結果として、前記判定部3が、前記インクジェットプリンタIPxの故障に前記推奨インクカートリッジ無償修理契約を適用できないと判定したとき、前記インクジェットプリンタIPxのユーザに、前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入するか否かを、当該旨を出力部7に表示させ又は音声出力させることにより質問する。
【0023】
受付部5は、例えば、CPUからなり、前記質問部4が、前記ユーザに、「推奨インクカートリッジRI(製品)を購入するか否か」を質問し、その回答として、前記ユーザが「前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入する旨」を前記入力部1から入力すると、前記インクジェットプリンタIPxの故障の修理に、前記推奨インクカートリッジ無償修理保証契約を適用することができるとみなし、前記インクジェットプリンタIPxの故障を無償で修理することを受け付ける。
【0024】
処理部6は、例えば、CPUからなり、インクカートリッジ取引装置IDの動作全体を制御し、また、インクカートリッジ取引装置IDの前記動作に必要な処理を行う。
【0025】
出力部7は、例えば、液晶パネル及びCRT、並びに、スピーカー等からなり、前記判定部3による判定の結果として、前記したユーザや修理員に、「インクジェットプリンタIPxの故障の修理に、無償修理保証契約を適用可能な旨、若しくは、適用不可能な旨」を表示し又は音声出力し、また、前記受付部5がユーザから受けた回答の内容の如何により、「インクジェットプリンタIPxの故障の修理を、無償で、又は、有償で受け付ける旨」を表示し又は音声出力する。
【0026】
記憶部8は、例えば、ハードディスク、磁気テープ、CD−RW等からなり、例えば、インクジェットプリンタIPxの故障の内容(例えば、「ドット抜け」)と、当該故障の内容に対応した行うべき修理の内容(例えば、前記「ドット抜け」に対応する「ヘッドクリーニング」)との対応関係を規定するデータベースDB、インクジェットプリンタIPxの故障及び修理の履歴、及び、インクカートリッジ取引装置ID全体の動作を規定する、コンピュータにより実行可能なプログラムPR(図2のフローチャート。)を記憶している。
【0027】
《動作》
実施例のインクカートリッジ取引装置の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。以下では、説明及び理解を容易にすべく、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが、非推奨インクカートリッジであることを想定する。
【0028】
ステップS10:使用していたインクジェットプリンタIPxが故障すると、当該インクジェットプリンタIPxのユーザは、例えば、当該ユーザの居住地の最寄りにあるサービスセンターSC1に、前記故障したインクジェットプリンタIPxを持ち込む。
【0029】
ステップS20:前記インクジェットプリンタIPxが持ち込まれると、サービスセンターSC1では、インクカートリッジ取引装置IDは、より正確には、インクカートリッジ取引装置IDの識別部2は、持ち込まれたインクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが、推奨インクカートリッジRIであるか否かを識別し、その結果として、使用インクカートリッジUIが非推奨インクカートリッジであることを知得する。
【0030】
ステップS30:判定部3は、前記識別部2による「使用インクカートリッジUIが非推奨インクカートリッジである」との識別結果に基づき、前記インクジェットプリンタIPxの修理に前記無償修理保証契約を適用可能か否かを判定し、結果的に、当該インクジェットプリンタIPxに前記無償修理保証契約を適用できないと結論付ける。
【0031】
ステップS40:質問部4は、前記判定部3による「前記インクジェットプリンタIPxの修理に無償修理保証契約を適用できない」との結論に基づき、前記ユーザに、前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入するか否かを、出力部7による表示又は音声出力により質問する。
【0032】
ステップS50:前記ユーザは、前記質問部4による前記質問に対し、入力部1を用いて、前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入する旨又は購入しない旨を入力する。
【0033】
ステップS60:受付部5は、ユーザが前記入力部1の操作により、「前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入する」旨を入力したとき、前記判定部3による「前記無償修理保証契約を適用できない」との判定結果とは対照的に、「前記インクジェットプリンタIPxの故障に、前記無償修理保証契約を適用できる」とみなし、前記インクジェットプリンタIPxの故障を無償で修理することを受け付ける。加えて、受付部5は、出力部7に、当該「インクジェットプリンタIPxの修理に無償修理保証契約を適用する」旨を表示させ又は音声出力させることにより、当該旨をユーザ及び修理員に知らせる。
【0034】
ステップS70:受付部5は、ステップS60と相違して、ユーザが前記入力部1の操作により、「前記推奨インクカートリッジRI(製品)を購入しない」旨を入力したとき、前記判定部3による「前記無償修理保証契約を適用できない」との判定結果を維持し、前記インクジェットプリンタIPxの修理を有償で受け付け、又は、当該修理を無償で受け付けない。加えて、出力部7に、「インクジェットプリンタIPxの修理に無償修理保証契約を適用しない」旨を表示させ又は音声出力させることにより、当該旨をユーザ及び修理員に知らせる。
【0035】
ステップS80:出力部7が、「無償修理保証契約を適用できる」旨を出力した場合、修理員は、インクジェットプリンタIPxを修理した後に、当該修理の費用をユーザに請求しない。
【0036】
ステップS90:出力部7が、「無償修理保証契約を適用できない」旨を出力した場合、修理員は、有償修理についてユーザの了解が得られたとき、インクジェットプリンタIPxを修理した後、当該修理の費用をユーザに請求し、他方で、有償修理についてユーザの了解が得られないとき、インクジェットプリンタIPxを修理しない。
【0037】
《効果》
上記したように、実施例のインクカートリッジ取引装置IDでは、識別部2が、前記インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが非推奨インクカートリッジであると識別した場合、前記判定部3は、インクジェットプリンタIPxに無償修理保証契約を適用できないと判定し、その結果として、質問部4は、ユーザに、「推奨インクカートリッジRI(製品)を購入するか否か」を質問する。その回答として、「推奨インクカートリッジRI(製品)を購入する」旨が入力されたときには、受付部5は、前記インクジェットプリンタIPxに前記無償修理保証契約を適用できるとみなし、インクジェットプリンタIPxの修理を無償で行うことを受け付ける。これにより、前記ユーザは、前記非推奨インクカートリッジの使用に起因する前記インクジェットプリンタIPxの故障の修理を実質的に無償で受けることができる。加えて、当該インクカートリッジ取引装置IDを使用する修理員は、前記非推奨インクカートリッジの使用に起因する前記インクジェットプリンタIPxの故障を修理した後に、当該インクジェットプリンタIPxが他の非推奨インクカートリッジの使用に起因して再び故障し、当該再び故障したインクジェットプリンタIPxを再び修理しなければならない事態に至ることを回避することが可能となる。
【0038】
〈変形例〉
上記した実施例のインクカートリッジ取引装置IDでは、上記したステップS40での質問、ステップS50での入力、ステップS60での受付に代えて、ステップS40で、前記判定部3による「前記無償修理保証契約を適用できない」との結論に基づき、前記ユーザに、前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問し、ステップS50で、前記ユーザが、前記質問部4による質問に対し、入力部1を用いて、「非推奨インクカートリッジを購入しない」旨を入力し、ステップS60で、前記ユーザによる入力部1の操作によって、「非推奨インクカートリッジを購入しない」旨を入力したとき、受付部5が、前記インクジェットプリンタIPxの故障に、「無償修理保証契約を適用できる」とみなし、前記インクジェットプリンタIPxの故障を無償で修理することを受け付ける。加えて、受付部5は、出力部7に、「無償修理保証契約を適用する」旨を表示させ又は音声出力させることにより、ユーザ及び修理員に知らせ、その後で、修理員は、上記したステップS80と同様な処理を行う。これによっても、前記ユーザ及び前記修理員は、上記したと同様な効果を享受することができる。
【0039】
《識別部の概要》
識別部2について詳しく説明する。
【0040】
識別部2は、上述したように、故障したインクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが推奨インクカートリッジRIであるか、非推奨インクカートリッジであるかを、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIのインク、及び、識別部2が予め備えている推奨インクカートリッジRIのインクを、それぞれ、分離用基材SB上で移動させるクロマトグラフィーにより行う。ここで、例えば、推奨インクカートリッジRIのインクに含まれる第2の色材組成物CC2が、図3(A)に示されるように、分離用基材SB上で円状に広がっていることとは対照的に、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIのインクに含まれる第1の色材組成物CC1が、図3(B)に示されるように、分離用基材SB上で楕円状に広がっているときには、識別部2は、インクジェットプリンタIPxの使用インクカートリッジUIが推奨インクカートリッジRIでない、即ち、非推奨インクカートリッジであると判断する。
【0041】
《識別部の詳細》
使用インクカートリッジUIのインク及び推奨インクカートリッジRIのインク、第1の色材組成物CC1及び第2の色材組成物CC2、並びに、分離用基材SBの詳細は、以下の通りである。
【0042】
〈使用インク、推奨インク〉
使用インクカートリッジUIのインク及び推奨インクカートリッジRIのインクは、水及び水に可溶な有機溶媒のうちの少なくとも一つを媒体とする水性インクである。
【0043】
使用インクカートリッジUIのインクは、インクジェットプリンタIPx自体から、例えば、インクカートリッジ、プリンタヘッド、ヘッドキャップ、廃液パッド、廃液タンク等、又は、インクジェットプリンタIPxにより印刷された紙媒体から採取される。採取量は、例えば、綿棒の先端に付着させる程度である。推奨インクカートリッジRIのインクは、インクカートリッジ取引装置IDに、例えば、インクジェットプリンタIPxを製造販売する会社から予め供給されている。
【0044】
〈第1、第2の色材組成物〉
第1の色材組成物CC1、第2の色材組成物CC2は、色材として、染料及び顔料のうちの少なくとも一つを含有する。染料としては、直接染料、酸性染料、反応染料、塩基性染料などがある。顔料としては、各種の無機顔料、捺染系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料などがある。有機顔料としては、レーキ顔料でもトナー顔料でも問わない。但し、レーキ顔料の方が、より好適である。
【0045】
〈分離用基材〉
分離用基材SBは、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含有する。セルロース系材料としては、リグノセルロース系材料から分離される天然セルロース、人工セルロース、セルロースの水酸基にアセチル基やアルキル基などの官能基を導入した誘導体がある。セルロース系材料は、シート状等の層状、粒状、繊維状、粉状等いずれかの形態で金属酸化物系材料と複合化されていることが好ましい。
【0046】
金属酸化物系材料としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al23)などのメタロキサン結合を有する化合物があり、当該メタロキサン結合を構成する金属種は、SiとAlなど2種類以上であってもよい。
【0047】
金属酸化物系材料としては、また、メタロキサン骨格の主鎖や側鎖に有機基を導入したものなどがある。当該有機基としては、アルキル基等の炭素水素基の他、アミノ基、シアノ基及びカルボキシル基などであってもよい。金属酸化物系材料としては、シリカを含有していることが好ましい。金属酸化物系材料は、層状や粒子状の態様でセルロース系材料と複合化されていることが好ましい。
【0048】
セルロース系材料の表面の少なくとも一部に金属酸化物系材料層を備えていてもよく、対照的に、金属酸化物系材料の表面の少なくとも一部にセルロース系材料を有していてもよい。セルロース系材料と金属酸化物系材料とは、マトリックス状であってもよい。セルロース系材料と金属酸化物系材料は、いずれも多孔質であることが好ましい。
【0049】
分離用基材SBは、色材をよく吸着してその拡散を有効に防止すべく、使用インクカートリッジUIのインクや推奨インクカートリッジRIのインクと接触する表層側に、シリカなどの金属酸化物系材料を備えることが好ましい。
【0050】
分離用基材SBは、セルロース系材料と金属酸化物系材料との複合化のためにバインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶化アクリル樹脂、酢酸ビニル−エチレンエマルジョンなど水溶性又は水分散性樹脂がある。蛍光剤を含んでいてもよい。
【0051】
分離用基材SBは、色材の分離能を調整すべく、色材に応じてアミンやポリアミンなどの塩基性化合物や多価金属塩を含有していてもよい。
【0052】
分離用基材SBは、液体クロマトグラフィーの充填材や薄層クロマトグラフィーにおける薄層の一般的な製法により得られ、また、金属酸化物系材料は、ゾルゲル法やアルコキシシラン等の有機金属化合物の加水分解及び重縮合等により得られる。
【0053】
分離用基材SBは、粉末状、粒子状等に充填保持させ(カラムクロマトグラフィー)、又は、薄層状にする(薄層クロマトグラフィー)。
【0054】
〈移動相〉
「移動相」は、分離用基材SBによる色材の分離を良好又は迅速にすべく、及び、移動相の揮発性を抑制すべく、水と相溶する有機溶媒(以下、「高極性溶媒」という。)を含有することが好ましい。高極性溶媒は、1種類の単独でも2種類以上の組み合わせでも構わない。以下で、「混合比率」とは、複数の種類の高極性溶媒の体積の割合をいう。
【0055】
高極性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの炭素数1〜5の直鎖状あるいは分岐状のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の炭素数2〜4のアルキレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜4のポリエチレングリコール類などのグリコール類、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等の1,2−ジオール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)等の含酸素飽和炭化水素環化合物、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類がある。
【0056】
アルコール類としては、メタノール、エタノール及び2−プロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0057】
エタノールは、単独で優れており、また、メタノール、アセトン、THF、1,2−ヘキサンジオール、2−プロパノール、ヘキサンから選択される1種又は2種以上との組み合わせでも優れている。特に、エタノールと溶解度パラメータが近接するメタノール及び/又はアセトンを併用することが望ましい。
【0058】
メタノールは、単独で優れており、また、アセトン、THF、1,2−ヘキサンジオール及びクロロホルムから選択される1種又は2種以上と組み合わせでも優れている。特に、アセトン及び/又は1,2−ヘキサンジオールを併用することが望ましい。
【0059】
2−プロパノールは、アセトン及び/又は1,2−ヘキサンジオールを併用することが望ましい。
【0060】
ポリアルキレングリコール類としては、トリエチレングリコールが好ましく、ケトン類としてはアセトンが好ましく、含酸素飽和炭化水素環化合物としては、テトラヒドロフランが好ましい。1,2−ジオール類としては、1,2−へキサンジオール及び1,2−ペンタンジオールが好ましく、1,2−ペンタンジオールがより好ましい。
【0061】
トリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、1,2−ヘキサンジオールなどの1,2−ジオール類は、移動相の極性の制御を少量で効率的に行うべく、移動相において10v/v%以下の混合比率で含有されていることが好ましく、5v/v%以下がより好ましい。
【0062】
移動相は、移動相の揮発性を抑制すべく、また、移動相の極性を向上させるべく、水を含むことが望ましい。例えば、エタノールと水とから移動相を構成する場合、水はエタノールに対して20v/v%以下の混合比率であることが好ましく、10v/v%以下がより好ましく、5v/v%以下がさらに好ましい。
【0063】
移動相は、水とは相溶しない非極性溶媒を含んでもよい。非極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、キシレン、ヘキサンなどがある。なお、非極性溶媒のみを移動相として用いると、良好な分離を得られ難い。
【0064】
移動相には、例えば、湿潤剤、浸透剤等として使用可能な水溶性有機溶媒を用いてもよい。
【0065】
第1、第2の色材組成物CC1、CC2の種類に応じて、色材の分離に適した移動相のための移動相の溶解度パラメータ(δ)を、以下の式(1)に基づき設定することにより、色材を効果的に分離することができる。推奨インクカートリッジRIのインクの色材(染料など)の分離には、9.5以上16以下が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。他方で、15以下が好ましく、14以下がさらに好ましい。したがって、11以上15以下が好ましく、12以上14以下であることがさらに好ましい。典型的溶媒の溶解度パラメータ(δ)を表1に例示する。
【0066】
【数1】

【0067】
溶解度パラメータは、「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版(1991)森定雄著)の記載に基づく。
【0068】
【表1】

【0069】
また、好ましい移動相は、表2に例示する通りである。
【0070】
【表2】

【0071】
〈クロマトグラフィー〉
クロマトグラフィーとしては、薄層クロマトグラフィー、及び、カラムクロマトグラフィーがある。但し、カラムクロマトグラフィーよりも、薄層クロマトグラフィーを用いることが好ましい。薄層クロマトグラフィーでは、展開用チャンバー(図示せず。)内を移動相(展開溶媒)で満たして飽和した後、使用インクカートリッジUIのインクを負荷した分離用基材SBをチャンバー内にセットして適当な部位まで移動相を展開させて色材を分離した上、チャンバーから分離用基材SBを取り出し乾燥する。展開温度は、38℃以上42℃以下の程度で好ましい分離が得られる傾向がある。例えば、エタノールを単独で展開溶媒として用いた場合、25℃近傍よりも40℃近傍において好ましい分離が得られる。展開溶媒は、水分や金属イオンについてより純度の高い等級の溶媒を用いることが好ましい。
【0072】
他方で、カラムクロマトグラフィーでは、移動相を流して、カラム(図示せず。)内で色材を分離させる。色材は、カラムから最終的に溶出させ適当な検出器によってピークとして検出してもよいし、カラム内に分離した状態で保持させてもよい。色材はそれ自体の色を有しているので透明性のあるカラムに白色〜淡色の分離用基材SBを充填した場合には、カラム内に色材を分離して保持させておくことで色材の分離形態をクロマトグラムとして外部から視認することができる。カラムクロマトグラフィーにおいては、分離の正確性や精度を担保するために、標準物質を使用インクカートリッジUIのインクと同時にカラムに負荷して標準物質の保持時間(RT)を確認することが好ましい。
【0073】
〈識別〉
クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムから使用インクカートリッジUIのインク中の1種又は2種以上の色材の分離データ、すなわち、クロマトグラム及びクロマトグラムにおけるスポットやバンドの色調(カラムクロマトグラフィーの場合はピークの吸収スペクトルによる場合もある)及びRf値又はRTに基づいて、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1を識別する。より詳しくは、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1が推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2に一致するか否かを識別する。識別では、具体的には、使用インクカートリッジUIのインクのクロマトグラム(分離データを含む。以下、同様。)と推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2中の色材の既知のクロマトグラム又は推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2を同時に分離して得たクロマトグラムとを対比して、各クロマトグラムの全体から両者が同一の色材組成物と認められるか否か、又は、各クロマトグラム上の分離された個々のスポット又はバンド等の分離データから両者が同一の色材組成物と認められるか否かを判定する。同時に推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2のクロマトグラフィーを実施しないで既知の分離データと対比するときには、標準物質の分離データによって使用インクカートリッジUIのインクの分離データを補正してもよい。
【0074】
識別では、クロマトグラフィーによって色材が良好に分離されているため、クロマトグラム自体でもクロマトグラムから得た分離データによっても簡易にかつ明瞭に、推奨インクカートリッジRIのインクの色材を含むか否かを識別することができる。従って、操作者の識別能力に拘わらず、簡易にかつ短時間に第1の色材組成物CC1を識別可能である。本識別では、使用インクカートリッジUIのインクが、推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2に含まれない色材を1種でも含有しているか、又は、推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2に含まれるべき色材を含有していないのであれば、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1と推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2とは一致しないと判定できる。前者の場合には、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1は、推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2とは異なるか、又は、推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2を含有していても追加の色材を含有していると判定できる。また、後者の場合には、使用インクカートリッジUIのインク中の第1の色材組成物CC1は、推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2を含有していないと判定できる。
【0075】
また、本識別では、クロマトグラフィーにおいて2種類以上の色材が良好に分離できるため、2種類以上の色材を含有する色材組成物の識別を容易に行うことができる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックなどカラー印刷用のインク又はトナーを含有する色材組成物を使用インクカートリッジUIのインクとした場合であっても、容易に識別ができる。必要に応じてクロマトグラムからスポット等の色材を回収して更なる分析を行うこともできる。
【0076】
特に、薄層クロマトグラフィーの場合には、色調及びRf値はクロマトグラムから特別な検出手段を用いることなく目視によって容易に把握でき、クロマトグラムを視認するだけであっても推奨インクカートリッジRIのインク中の第2の色材組成物CC2との識別ができることが多い。また、薄層クロマトグラフィーによれば、簡易な構成でクロマトグラフィーを実施できるため、使用インクカートリッジUIのインクを採取したその場において、クロマトグラフィーを実施しその場で識別することもできる。特に、本クロマトグラフィーによれば、良好な分離性を有するため、短い展開時間で早期に識別を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例のインクカートリッジ取引装置の構成を示す図。
【図2】実施例のインクカートリッジ取引装置の動作を示すフローチャート。
【図3】実施例の推奨インク及び使用インクの分離結果を示す図。
【符号の説明】
【0078】
ID…インクカートリッジ取引装置、1…入力部、2…識別部、3…判定部、4…質問部、5…受付部、6…処理部、7…出力部、8…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別部と、
(2)前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定部と、
(3)前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問する質問部と、
(4)前記推奨インクカートリッジを購入するか否かの回答を入力するための入力部と、
(5)前記質問について、前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付部とを含むことを特徴とするインクカートリッジ取引装置。
【請求項2】
(1)故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別部と、
(2)前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定部と、
(3)前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問する質問部と、
(4)前記非推奨インクカートリッジを購入しないか否かの回答を入力するための入力部と、
(5)前記質問について、前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付部とを含むことを特徴とするインクカートリッジ取引装置。
【請求項3】
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別部は、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする請求項1、2記載のインクカートリッジ取引装置。
【請求項4】
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引方法であって、
(1)前記識別部が、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
(2)前記判定部が、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定工程と、
(3)前記質問部が、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問する質問工程と、
(4)前記受付部が、前記質問について前記入力部により前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付工程と、を含むことを特徴とするインクカートリッジ取引方法。
【請求項5】
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引方法であって、
(1)前記識別部が、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別する識別工程と、
(2)前記判定部が、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定する判定工程と、
(3)前記質問部が、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問する質問工程と、
(4)前記受付部が、前記質問について前記入力部により前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付ける受付工程と、を含むことを特徴とするインクカートリッジ取引方法。
【請求項6】
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程では、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行うことを特徴とする請求項4、5記載のインクカートリッジ取引方法。
【請求項7】
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置に用いられる、コンピュータにより実行可能なインクカートリッジ取引プログラムであって、
(1)前記識別部に、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
(2)前記判定部に、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定させる判定工程と、
(3)前記質問部に、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、前記推奨インクカートリッジを購入するか否かを質問させる質問工程と、
(4)前記受付部に、前記質問について前記入力部により前記推奨インクカートリッジを購入する旨の回答が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付けさせる受付工程と、を含むことを特徴とするインクカートリッジ取引プログラム。
【請求項8】
識別部、判定部、質問部、入力部、及び受付部を有するインクカートリッジ取引装置を用いたインクカートリッジ取引プログラムであって、
(1)前記識別部に、故障したインクジェットプリンタの使用インクカートリッジが、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されている推奨インクカートリッジであるか否かを識別させる識別工程と、
(2)前記判定部に、前記インクジェットプリンタの修理に、前記推奨インクカートリッジの使用に起因する故障の無償修理を保証する契約が適用可能か否かを判定させる判定工程と、
(3)前記質問部に、前記インクジェットプリンタの使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジでないと識別されたことにより、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用不可能であると判定されたとき、当該インクジェットプリンタに使用することが推奨されていない非推奨インクカートリッジを購入しない旨を誓約するか否かを質問させる質問工程と、
(4)前記受付部に、前記質問について前記入力部により前記非推奨インクカートリッジを購入しない旨の誓約が入力されたとき、前記インクジェットプリンタの故障に前記契約が適用可能であるとみなし、前記インクジェットプリンタの故障を無償で修理することを受け付けさせる受付工程と、を含むことを特徴とするインクカートリッジ取引プログラム。
【請求項9】
前記使用インクカートリッジのインク及び前記推奨インクカートリッジのインクは、それぞれ、色材組成物を含有し、
前記識別工程は、前記識別部に、前記使用インクカートリッジが前記推奨インクカートリッジであるか否かの識別を、前記使用インクカートリッジのインクが、セルロース系材料と金属酸化物系材料とを含む分離用基材上を移動するクロマトグラフィーにより得られる前記色材組成物の分離結果と、前記推奨インクカートリッジのインクの前記色材組成物の分離結果と比較することにより行わさせることを特徴とする請求項7、8記載のインクカートリッジ取引プログラム。
【請求項10】
請求項7、8に記載のインクカートリッジ取引プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−12746(P2008−12746A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185216(P2006−185216)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】