説明

インクジェットインキ、及びカラーフィルタ基板

【課題】
本発明の課題は、高固形分・高顔料濃度において、低粘度、経時安定性良好かつ顔料が微細な分散状態であり、吐出性に非常に優れ、印刷物の耐性の良好なインクジェットインキを提供することにある。又、本発明の課題は、上記インクを用いてインクジェット法により形成されるカラーフィルタ基板を提供することにある。
【解決手段】
前記課題は、分散樹脂(A)、顔料(B)、熱反応性化合物(C)、及び溶剤(D)を含んでなるインクジェットインキであり、分散樹脂(A)が、芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1)と、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)とを含んでなる分散樹脂であるインクジェットインキにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインキ、及びカラーフィルタ基板に関する。本発明のインクジェットインキは、例えば、液晶ディスプレイパネルのカラーフィルタ基板の製造に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷手法は、産業用途のオンデマンド印刷だけでなく、パーソナルユースの印刷機としても定着するほど普及しており、特に近年ではインクジェット印刷を用いて、画像等の描写ではなく、パターン描写を行う用途への展開が求められている。その中でも、インクジェット印刷手法によるカラーフィルタの製造が注目されている。
【0003】
従来、カラーフィルタ基板の製造は、顔料が分散されたフォトレジスト液を透明基板上に塗布してから、乾燥、露光、現像、及び硬化等の工程を繰り返すことによって行われていた。そのため、生産性が低く、コスト低減の要求が高くなっている。特に、液晶ディスプレイパネルの大型化に伴って、フォトレジストに替わる技術が求められてきた。こうした要求に従い、製造方法や製造設備の見直しが行われ、インクジェット法によるカラーフィルタ基板の製造が注目されている。インクジェット法は、特に製造装置の小型化が容易で、生産性の高い点で有利である。更に、近年は、プリンタヘッドやインキに関する技術の進歩により、インクジェット法にも顔料系インキが使用され始め、その結果、耐光性や堅牢性も改良されている。この点からも、カラーフィルタ基板用途にインクジェット法を適用することが有利である、種々の提案が行われている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
カラーフィルタ基板用途等のパターン描写を目的としてインクジェット印刷手法を用いる場合には、生産性等の観点より、使用されるインキには高固形分化・高顔料濃度化が求められる。しかしながら、高固形分化・高顔料濃度化する事は、インク中の溶剤分が少なくなり乾燥しやすくなる事から、インクジェットヘッドのノズル部でインク粘度が上昇し吐出が不安定になったり、ノズル付近に固形物が付着し液滴の飛翔方向が曲がったり、場合によっては、ノズル内部に固形物が析出し不吐出が生じたりし、吐出に悪影響を及ぼす。
【特許文献1】特開平1−217302号公報
【特許文献2】特開平7−174915号公報
【特許文献3】特開平8−75916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高固形分・高顔料濃度において、低粘度、経時安定性良好かつ顔料が微細な分散状態であり、吐出性に非常に優れ、印刷物の耐性の良好なインクジェットインキを提供する事にある。又、本発明の課題は、上記インクを用いてインクジェット法により形成されるカラーフィルタ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、本発明により、分散樹脂(A)、顔料(B)、及び熱反応性化合物(C)、溶剤(D)を含んでなるインクジェットインキであり、
分散樹脂(A)が芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1)と、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)とを含んでなる分散樹脂であるインクジェットインキにより解決することができる。
【0007】
本発明によるインクジェットインキの更に別の好ましい様態においては、芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1)が、水酸基を有する重合体(A−3)と、芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)とを反応させてなる樹脂型分散剤である。好ましくは、水酸基を有する重合体(A−3)が、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)又は側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)である。更に好ましくは、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(A−3c)である。
【0008】
又、本発明によるインクジェットインキの更に別の好ましい様態においては、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)のアミン価が、50〜500mgKOH/gである。
【0009】
本発明によるインクジェットインキの更に別の好ましい様態においては、更に下記一般式(1)で表される顔料誘導体(E)を含み、より好ましくは顔料誘導体(E)が酸性置換基を有する顔料誘導体である。
【0010】
一般式(1)
6−Z6q (1)
(一般式(1)中、
6は、q価の色素原型化合物残基であり、
6は、塩基性置換基、酸性置換基、又は中性置換基であり、
qは、1〜4の整数である。)
【0011】
本発明によるインクジェットインキの好ましい様態においては、熱反応性化合物(C)が、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、アクリレート系モノマー、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上であり、更に好ましい様態においては、少なくともメラミン化合物若しくはベンゾグアナミン化合物を含む。
【0012】
本発明によるインクジェットインキの好ましい様態においては、固形分含有量が、インクジェットインキ全重量に対して、3〜60重量%である。
【0013】
本発明によるインクジェットインキの好ましい様態においては、顔料(B)の含有量が、インクジェットインキに対して、1〜30重量%である。
【0014】
本発明によるインクジェットインキの好ましい様態においては、顔料(B)と樹脂型分散剤(A)との重量比が、100:3〜100:150である。
【0015】
本発明によるインクジェットインキの好ましい様態においては、25℃における粘度が、2〜40mPa・sである。
【0016】
本発明は、インクジェットインキによる印刷層を担持するカラーフィルタ基板にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインクジェットインクは、顔料分散性に優れた前記樹脂型分散剤を含有しており、耐熱、耐薬品性が良好で、更に顔料濃度が高いにもかかわらず、低粘度、経時粘度安定性かつ吐出安定性が良好であり、充分な耐性と印字濃度の印刷層を提供することができる。又、本発明のインクジェット記録用インク組成物を利用してカラーフィルタ基板を製造する場合に、従来の方法と比較してはるかに効率よく高性能なカラーフィルタを生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(1)分散樹脂(A)
(1−1)芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)は、数平均分子量が500〜30,000であることが好ましい。500未満であっても、30,000を越えても顔料分散体の粘度、及び粘度安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
【0019】
又、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)は、酸価が10〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0020】
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)は、その分子内に芳香族カルボキシル基を有するものである。その製造方法には、例えば、水酸基を有する重合体(A−3)に芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)を反応させる製造方法1、芳香族カルボキシル基を有する単量体を用いて重合体を作る製造方法2、水酸基を有する単量体を重合しながら芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)を反応させる製造方法3、のいずれかが挙げられる。この中で、顔料分散性の観点から、複数の重合体部からなる溶媒親和性部ブロックと、複数のカルボキシル基からなる、3級アミノ基を有するビニル系樹脂に対する親和性が高いポリカルボン酸ブロックをバランスよく製造できる製造方法1により作られたものが好ましい。
【0021】
〈水酸基を有する重合体(A−3)〉
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の前駆体として使用する水酸基を有する重合体(A−3)としては、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)と、側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)とに分けられる。更に、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)として、片末端に2つの水酸基を有する重合体(A−3c)が好ましい。
【0022】
〔片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)〕
まず、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)について説明する。本発明に用いる片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)としては、片末端に水酸基を有するポリエステル及び/又はポリエーテル系重合体(A−3a−1)と、片末端に水酸基を有するビニル系重合体(A−3a−2)とが挙げられる。
【0023】
[片末端に水酸基を有するポリエステル及び/又はポリエーテル系重合体(A−3a−1)]
片末端に水酸基を有するポリエステル及び/又はポリエーテル系重合体(A−3a−1)としては、下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0024】
一般式(2):
【0025】
【化1】

〔一般式(2)中、
1は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、及び窒素原子数0〜3の1価の末端基であり、
2は、−O−、−S−、又は−N(Rb)−(但し、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
1は、−OHであり、
1は、−R11O−で示される繰り返し単位であり、
2は、−C(=O)R12O−で示される繰り返し単位であり、
3は、−C(=O)R13C(=O)−OR14O−で示される繰り返し単位であり、
11は、炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
12は、炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
13は、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
14は、−CH(R15)−CH(R16)−であり、
15、及びR16は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部分の炭素原子数1〜20のアルキルオキシメチレン基、アルケニル部分の炭素原子数2〜20のアルケニルオキシメチレン基、アリール部分の炭素原子数6〜20でアリール部分が場合によりハロゲン原子で置換されていることのあるアリールオキシメチレン基、又はN−メチレン−フタルイミド基であって、
17は、前記R11、−C(=O)R12−、又は−C(=O)R13C(=O)−OR14−であり、
m1は、0〜100の整数であり、m2は、0〜60の整数であり、m3は、0〜30の整数であり、但しm1+m2+m3は、1以上100以下の整数であり、
一般式(2)における前記繰り返し単位G1〜G3の配置は、その順序を限定するものではなく、一般式(2)で表される重合体において、基X2と基R17との間に繰り返し単位G1〜G3が任意の順序で含まれていることを示し、更に、それらの繰り返し単位G1〜G3は、それぞれランダム型又はブロック型のどちらでもよい。〕
【0026】
前記一般式(2)は、Y1が炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0027】
又、別の形態として、前記一般式(2)の中でY1がエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。この場合、芳香族カルボキシル基を有する分散剤に活性エネルギー線硬化性を付与することができる。
【0028】
又、前記一般式(2)の中で、m2が3〜15の整数であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0029】
又、前記一般式(2)の中で、m2=0、m3=0の場合、Y1は炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、若しくはエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。
【0030】
前記一般式(2)で示される片末端に水酸基を有するポリエステル及び/又はポリエーテル系重合体(A−3a-1)は、公知の方法で製造することができ、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールの群から選択される化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、及びエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合して容易に得られる。
【0031】
モノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、パラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0032】
モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用してもよい。この場合、生成される芳香族カルボキシル基を有する分散剤に、活性エネルギー線硬化性能を付与することができる。
【0033】
前記のエチレン性不飽和二重結合を有する基の例としては、ビニル基、又は(メタ)アクリロイル基(なおここで、以降「(メタ)アクリロイル」又は「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、それぞれ「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」又は「メタアクリレート及び/又はアクリレート」を示すものとする。)が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これら二重結合を有する基の種類は、一種類でもよいし、複数種類でもよい。
【0034】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールとしては、エチレン性不飽和二重結合を1個、2個、及び3個以上含む化合物を用いることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(なお、「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、アクリレート及び/又はメタクリレートを示すものとする。以下同じ。)、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0035】
このうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、それぞれ、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物として得られるので、生成される分散剤の分子量を制御するためにはHPLC(高速液体クロマトグラフィ)法や水酸基価の測定によりモノアルコール体の比率を決定する必要がある。モノアルコール体の数とG1〜G3を形成する原料の比率により、分散剤の分子量が決まるからである。
【0036】
前記のモノアルコールのうち、エチレン性不飽和二重結合の数が2個以上のものは、硬化性の点で活性エネルギー線硬化型顔料組成物に用いる場合に好ましい。
【0037】
1級モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、3−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、4−メチル−2−ペンチルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−ノニルアミン、イソノニルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ミリスチルアミン、セチルアミン、1−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、2−オクチルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミン等の脂肪族1級モノアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−イソブチロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン等のアルコキシアルキル1級モノアミン、ベンジルアミン等の芳香族1級モノアミンが挙げられる。2級モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−1−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−(4−メチル−2−ペンチル)アミン、ジ−1−ヘプチルアミン、ジ−1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−1−ノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−1−デシルアミン、ジ−1−ドデシルアミン、ジ−1−ミリスチルアミン、ジセチルアミン、ジ−1−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジ−(2−オクチルデシル)アミン、ジ−(2−オクチルドデシル)アミン、ジ−(2−ヘキシルデシル)アミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ピペラジン、アルキル置換ピペラジン等の脂肪族2級モノアミンが挙げられる。
【0038】
モノチオールとしては、例えば、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール、オレイルチオール等の脂肪族モノチオール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル等のチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル等のメルカプトプロピオン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0039】
本発明で言うモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールの群から選択される化合物は、前記例示に限定されることなく、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、又はチオール基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
【0040】
ここで、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、又はモノチオールのそれぞれ水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、又はチオール基を除いた部分が、前記一般式(2)におけるY1を構成する。
【0041】
前記例示したモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールの群から選択される化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選択される環状化合物を開環重合して、前記一般式(2)で示される重合体のうちZ1が−OHのものを製造することができる。但し、ジカルボン酸無水物とエポキシドとは必ず同時に用いられ、交互に重合させる。
【0042】
ここで、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選択される環状化合物の反応順序は、どのようなものでもよく、例えば、一段階目として前記開始剤にアルキレンオキサイドを重合した後、二段階目にラクトンを重合し、更に三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合することもできる。この例では、二段階目にラクトンを重合するときの開始剤は、一段階目に重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体となる。又、三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合するときの開始剤は、二段階目までに重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体とラクトン重合体のブロック共重合体となる。本発明の製造方法では、以降に説明する前記一般式(2)で示される重合体を製造する場合の開始剤として、このような前記一般式(2)で示される重合体のうちZ1が−OHのものや、後述する一般式(4)で示される重合体も開始剤となりうる。
【0043】
前記の環状化合物の反応順序は、一段階目のアルキレンオキサイド、二段階目のラクトン、三段階目のジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せに限定されず、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/又はラクチド)、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの
組合せを任意の順序で、それぞれ1ないし複数回に亘って実施することができる。あるいは、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/又はラクチド)、及びジカルボン酸無水物
とエポキシドとの組合せについて、全ての開環重合を実施せずに、それらの内から、任意の環状化合物を選択して、開環重合を実施することもできる。
【0044】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−、又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。開始剤1モルに対するアルキレンオキサイドの重合モル数は、0〜100が好ましい。
【0045】
アルキレンオキサイドの重合は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で、加圧状態で行うことができる。モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを重合して得られる片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体は市販されており、例えば、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、日本油脂社製ブレンマーシリーズ等があり、前記一般式(2)で示される重合体のうちZ1が−OHでG1〜G3の繰り返し単位のうちG1のみを有するものとして本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料にそのまま使用することもできる。市販品を具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、10APB−500B等がある。
【0046】
ここで、アルキレンオキサイドのアルキレン基が、前記一般式(2)における繰り返し単位G1中のR11を構成する。
【0047】
ラクトンとしては、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、アルキル置換されたε−カプロラクトン、が挙げられ、このうちδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、アルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。
【0048】
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。2種類以上を併用して用いることで結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0049】
ラクチドとしては、下記一般式(3)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
【0050】
一般式(3):
【0051】
【化2】

〔一般式(3)中、
31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
【0052】
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として、特に好適なラクチドはラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。又、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として前記ラクトン又はラクチドのうち、ラクトンが用いられるのが好ましい。
【0053】
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器に、開始剤、ラクトン及び/又はラクチド、及び重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。又、モノアルコールにエチレン性不飽和二重結合を有するものを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
【0054】
開始剤1モルに対するラクトン及び/又はラクチドの重合モル数は、1〜60モルの範囲が好ましく、更には2〜20モルが好ましく、最も好ましくは3〜15モルである。
【0055】
重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩の他、トリフェニルフォスフィン等のリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、及び塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/又はラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
【0056】
ラクトン及び/又はラクチドの重合温度は100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
【0057】
ここで、ラクトン又はラクチドのエステル基以外の部分が、前記一般式(2)における繰り返し単位G2中のR12を構成する。
【0058】
ジカルボン酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、及びクロレンデック酸無水物等が挙げられる。
【0059】
エポキシドとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジブロモフェニルグリシジルエーテル、3−メチル−ジブロモフェニルグリシジルエーテル(ただし、ブロモの置換位置は任意である)、アリルグリシジルエーテル、エトキシフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルフタルイミド、及びスチレンオキシド等が挙げられる。
【0060】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとは開始剤に対して同時に使用され、交互に反応する。このとき、開始剤の水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、又はチオール基に対して、まずジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応してカルボキシル基を生じ、次いでこのカルボキシル基にエポキシドのエポキシ基が反応して水酸基を生じる。更に、この水酸基にジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応するというように、以下、順次、前記と同様の反応を進行させることができる。開始剤1モルに対するジカルボン酸無水物及びエポキシドの重合モル数はそれぞれ0〜30モルが好ましい。又、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの反応比率([Ad]/[Ae])は、
0.8≦[Ad]/[Ae]≦1.0
([Ad]はジカルボン酸無水物のモル数であり、[Ae]はエポキシドのモル数である)
であることが好ましい。0.8未満であるとエポキシドが残り好ましくなく、1.0を超えると、片末端に水酸基を有する重合体が得られず、片末端にカルボキシル基を有する重合体ができるので好ましくない。
【0061】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとの交互重合は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、60℃〜150℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満となる場合や180℃を超える場合では反応速度がきわめて遅い。
【0062】
ここで、ジカルボン酸無水物のジカルボン酸無水物基以外の部分が前記一般式(2)における繰り返し単位G3中のR13を構成し、エポキシドの環状エーテルを形成する酸素原子以外の部分が前記一般式(2)における繰り返し単位G3中のR14を構成する。
【0063】
前記一般式(2)で示される重合体を製造するときに、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコール、ジカルボン酸無水物、又はエポキシドを使用する場合は、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン等が好ましく、これらを単独若しくは併用で0.01%〜6%、好ましくは、0.05%〜1.0%の範囲で用いる。
【0064】
[片末端に水酸基を有するビニル系重合体(A−3a−2)]
片末端に水酸基を有するビニル系重合体(A−3a−2)としては、下記一般式(4)で示される重合体が好ましい。
【0065】
一般式(4):
【0066】
【化3】

〔一般式(4)中、
2は、ビニル重合体の重合停止基であり、
2は、−OH、又は−R28(OH)2であり、R28は、炭素原子数1〜18の3価の炭化水素基であり、
21及びR22は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、
23及びR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、又は−C(=O)−X6−R25(但し、X6は、−O−若しくは−N(R26)−であり、
25及びR26は、水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基で置換基として芳香族基を有していることができるものであり、
4は、直接結合、−O−R27−又は−S−R27−であり、
27は、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
nは、2〜50である。〕
【0067】
前記一般式(4)で示される重合体はエチレン性不飽和単量体を重合せしめたビニル系重合体である。
【0068】
前記一般式(4)で示される重合体の繰り返し単位の部分、すなわち、{−〔C(R21)(R23)−C(R22)(R24)〕n−}は、相互に同一のものからなる(ホモポリマー)であっても、異なるものからなる(コポリマー)でもよい。前記一般式(4)で示される重合体の好ましい形態は、R21及びR22が、いずれか一方が水素原子、他の一方が水素原子又はメチル基であり、R23及びR24は、いずれか一方が水素原子、他の一方が−C(=O)−O−R29(R29は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基で置換基として芳香族基を有していることができるもの)であり、−X4−Z2が、−S−CH2CH2−OH、若しくはS−CH2CH(OH)CH2−OH、の場合である。
【0069】
前記一般式(4)中のY2、すなわち、ビニル重合体の重合停止基は、通常のエチレン性不飽和単量体の重合を通常の方法で実施した場合に導入される任意の公知重合停止基であり、当業者には自明である。具体的には、例えば、重合開始剤由来の基、連鎖移動剤由来の基、溶剤由来の基、又はエチレン性不飽和単量体由来の基であることができる。Y2が、これらのいずれの化学構造を有していても、本発明の分散剤は、重合停止基Y2の影響を受けずに、その効果を発揮することができる。
【0070】
前記一般式(4)で示される重合体のうちZ2が−OHのものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基とチオール基とを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。
【0071】
分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物としては、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプト−3−ブタノール等が挙げられる。
【0072】
前記一般式(4)で示される重合体のうちZ2が−R28(OH)2のものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。この場合に片末端に水酸基を有する重合体(A−3)の中でも、もっとも好ましい態様である片末端に2つの水酸基を有する重合体(A−3c)となる。
【0073】
分子内に水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等が挙げられる。
【0074】
好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の水酸基とチオール基とを有する化合物を用い、塊状重合又は溶液重合を行う。反応温度は好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜110℃、反応時間は好ましくは3〜30時間、より好ましくは5〜20時間である。水酸基とチオール基を有する化合物が、1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の年度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため好ましくない場合がある。
【0075】
チオール基はエチレン性不飽和単量体を重合するためのラジカル発生基となるため、該重合には必ずしも別の重合開始剤は必要ではないが、使用することもできる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0076】
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられる。アクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド(なお、「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを示すものとする。以下同じ。)、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0077】
又、前記アクリル単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類が挙げられる。アクリル単量体以外の前記単量体を、前記アクリル単量体と併用することもできる。
【0078】
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を単独で用いるか、若しくは前記単量体と併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ε−カプラロラクトン付加アクリル酸、ε−カプラロラクトン付加メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等から1種又は2種以上を選択することができる。
【0079】
前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程では、無溶剤又は場合によって溶剤を使用することができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0080】
使用する溶剤量はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、更には0〜100重量部が好ましい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0081】
〔側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)〕
本発明の側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と必要に応じその他のエチレン性不飽和単量体を重合せしめて得ることができる。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート等のアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテルが挙げられる。又、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を2つ有する単量体も挙げられる。更に、エポキシ基等の環状エーテル基を有するエチレン系不飽和単量体に、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を反応させたものや、あるいは(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体に、単官能エポキシ化合物等の単官能環状エーテル化合物を反応させたもの等も挙げられる。
【0082】
又、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルヒドロキシアルキルアリルエーテル、あるいはグリセロールモノ(メタ)アクリレートにアルキレンオキサイド及び/又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−、又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0083】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合比は、重合後の一分子に平均で少なくとも0.3〜177個の水酸基が入るように決められるのが好ましい。
【0084】
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明したアクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられ、任意に使用することができる。
【0085】
重合開始剤としては、例えば、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明したアゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。
重合溶剤としては、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0086】
《OH樹脂と酸無水物の反応》
次に、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)又は側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)とトリカルボン酸無水物(A−4a)「及び/又はテトラカルボン酸二無水物(A−4b)とを反応させる工程について説明する。
【0087】
前記の片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)又は側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)の水酸基と、芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)の無水物基とを反応させることによって、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤を得ることができる。
【0088】
芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物)等)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物等)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0089】
芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカル
ボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、M−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。
【0090】
本発明で使用される芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)は、前記に例示した化合物に限らず、どのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。本発明に使用されるものは、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0091】
重合体(A−3)の水酸基のモル数を<H>、芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)のカルボン酸無水物基のモル数を<N>としたとき、反応比率は0.3≦<H>/<N>≦3が好ましく、更に好ましくは0.5≦<H>/<N>≦2の場合である。特に重合体(A−3a)に重合体(A−3c)を用いる場合は、1<<H>/<N>≦2であることが好ましい。もし、<H>/<N><1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解しても、単官能アルコールでアルコリシスしてもよい。
【0092】
重合体(A−3b)を用いる場合は、一分子に0.3個から3個の芳香族トリカルボン酸及び/又は芳香族テトラカルボン酸が導入せしめるのが好ましい。具体的には重合体(A−3b)の数平均分子量を測定し、その測定値が[X]であった場合、芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.3モル以上3モル以下の芳香族トリカルボン酸無水物を反応させれば良い。一方、芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.15モル以上1.5モル以下の芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させれば良い。これは、芳香族テトラカルボン酸二無水物は酸無水物基を2つ有するため、重合体(A−3b)分子を橋掛けするため芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)を使用する場合の半分の量で良いためである。
【0093】
重合体(A−3)と、トリカルボン酸無水物(A−4a)又はテトラカルボン酸二無水物(A−4b)との反応には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、例えば、3級アミン系化合物が使用でき、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0094】
重合体(A−3)と、トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(A−4b)との反応は無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使
用してもよい。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま分散剤の製品の一部として使用することもできる。使用する溶剤は、特に限定はないが、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0095】
重合体(A−3)と、トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又はテトラカルボン酸二無水物(A−4b)との反応温度は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは60℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、180℃を超えると反応して開環した酸無水物が、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
【0096】
(1−2)3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)
本発明の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)は、アミン価が50〜500mgKOH/gであることが好ましく、更には、100〜400mgKOH/gが好ましく、200〜350mgKOH/gがもっとも好ましい。アミン価が50mgKOH/g未満であっても、400mgKOH/gを超えても顔料分散体の粘度、及び粘度安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
【0097】
本発明の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)の数平均分子量は、500〜30,000が好ましい。500未満であっても、30,000を越えても顔料分散体の粘度、及び粘度安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
【0098】
本発明の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)は、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と必要に応じその他のエチレン性不飽和単量体を重合せしめて得ることができる。3級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。これらのうち、N,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類が好ましく、更には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0099】
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明したアクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられ、任意に使用することができる。
【0100】
重合開始剤としては、例えば、前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程で説明したアゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。
【0101】
前記一般式(4)で示される重合体を製造する工程と同様に、無溶剤又は場合によって溶剤を使用することができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メトキシプロピルアセテート、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではなく、用途、コスト等から任意に選択することができる。重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0102】
使用する溶剤量はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、更には0〜100重量部が好ましい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0103】
(1−3)配合比率
本発明の顔料組成物において、顔料と、芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)と、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)との配合比率は、顔料100重量部に対して、芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)が5〜100重量部、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)が1〜50重量部であることが好ましい。
【0104】
(1−4)分散樹脂の併用
本発明のインクジェットインキでは、芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)及び3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)と一緒に公知の分散樹脂を併用して用いることが出来る。分散樹脂を併用する事により、顔料の分散性が更に向上し、インキの低粘度化、インキの経時粘度安定性の向上、更にはインクジェットインキとしての吐出性の向上に繋がる。
【0105】
芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)及び3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)と併用することの出来る分散樹脂としては特に限定される事はない。市販の分散樹脂としては具体的に以下のものが挙げられる。
【0106】
BYK Chemie社製分散樹脂としては、Anti−Terra−U、U100、203、204、205、Disperbyk−101、102、106、107、110、111、130、140、142、170、171、174、180、2001、BYK−P104、P105、9076等が挙げられる。
【0107】
アビシア社製分散樹脂としては、 ソルスパーズ3000、13940、17000、21000、24000、26000、366000、41000、41090、53095等が挙げられる。
【0108】
Efka CHEMICALS社製分散樹脂としては、 エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766、エフカポリマー100、150、400、401、402、403、450、451、452、453等が挙げられる。
【0109】
共栄社化学社製分散樹脂としては、 フローレン TG−710、フローノンSH−290、SP−1000、ポリフローNo.50E、No.300等が、楠本化成社製分散樹脂としては、ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150、#7004等が、日光ケミカル社製分散樹脂としては、 ニッコールT106、MYS−IEX、Hexagline 4−0等が、味の素ファインテクノ社製分散樹脂としては、アジスパーPB711、811、821等が挙げられる。
【0110】
本発明のインクジェットインキを用いてカラーフィルタを製造する場合には、カラーフィルタに透明性が要求されるため、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において、本発明のインクジェットインキを構成する分散樹脂の透過率が80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0111】
(2)顔料(B)
本発明のインクジェットインキは、顔料を含有している。
【0112】
顔料としては、有機顔料、無機顔料、又はアセチレンブラック、チャンネルブラック、若しくはファーネスブラック等のカーボンブラックを用いることができ、顔料は2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン、若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、又は金属錯体系顔料等を挙げることができる。
【0114】
無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、又はコバルトバイオレット等を挙げることができる。
【0115】
又、以下に、本発明のインクジェットインキに使用可能な顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。
【0116】
赤色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色インクジェットインキには、黄色顔料、及び/又はオレンジ顔料を併用することができる。
【0117】
イエロー色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199等の黄色顔料を用いることができる。
【0118】
オレンジ色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment orange 36、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。
緑色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58等の緑色顔料を用いることができる。緑色インクジェットインキには黄色顔料を併用することができる。
【0119】
青色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができる。青色インクジェットインキには、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を併用することができる。
【0120】
本発明のインクジェットインキは、前記顔料を、1種単独で含有するか、あるいは2種以上を混合して含有することができる。
【0121】
顔料の粒子径は、可視光の吸収係数(スペクトルの適正さ)及び透明性の点から、可視光の波長に対して充分小さいことが好ましい。すなわち、顔料は、平均一次粒子径が0.01μm以上0.3μm以下、特に0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。なお、一次粒子径とは、最小単位の顔料粒子の直径をいい、電子顕微鏡で測定される。顔料の一次粒子径は、サンドミル、ニーダー、又は2本ロール等の既知の分散装置を用いて適正な範囲内に制御することができる。
【0122】
本発明に用いる顔料の表面状態としては、酸性表面を有するものが好ましい。酸性表面を有する顔料を用いると、前記分散樹脂と相互作用し易くなり、インクジェットインキの低粘度化、経時安定性向上、又、吐出安定化に繋がる。
【0123】
顔料表面の酸性度合の指標として、アミン吸着量を用いる事が出来る。本発明で言うアミン吸着量は、色材, 67[9], 547−554 (1994)に記載の方法に則り、被吸着アミン物質としてn−ヘキシルアミンを用いて測定した場合と定義する。本発明で用いる顔料のアミン吸着量の好ましい範囲としては、50〜700μmol/gであり、更に好ましくは100〜600μmol/gである。具体的には、C.I.Pigment Green58(実測値550μmol/g)、C.I.Pigment Yellow150(実測値215μmol/g)等を挙げる事が出来るが、これらに限定されるものではない。
【0124】
(3)熱反応性化合物(C)
本発明のインクジェットインキは、熱反応性化合物を含有している。本発明のインクジェットインキに用いることのできる前記熱反応性化合物は、常温下では非反応性であるが、例えば、100℃以上(好ましくは150℃以上)の温度で、架橋反応、重合反応、重縮合反応、又は重付加反応を示す化合物である。本発明のインクジェットインキに用いることのできる前記熱反応性化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜2000、より好ましくは100〜1000である。
【0125】
熱反応性化合物(C)としては、例えば、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、アクリレート系モノマー、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上を用いることができる。特に好ましくは、少なくともメラミン化合物若しくはベンゾグアナミン化合物を含む熱反応性化合物(C)である。
【0126】
メラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物としては、例えば、イミノ基、メチロール基、アルコキシメチル基を有するものが挙げられる。その中でも、アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物が好ましい。アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物を用いた場合、本発明の着色樹脂組成物を含有する塗料又はインキの保存安定性が著しく向上する。
【0127】
アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブトキシメチロールメラミン、テトラメトキシメチロールベンゾグアナミン、テトラブトキシメチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0128】
メラミン化合物の市販品の具体例としては以下のものが挙げられる。但し、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0129】
三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MS−11、MW−24X、MS−001、MX−002、MX−730、MX750、MX−708、MX−706、MX−042、MX−035、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−417、MX−410、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、370、325、327、703、712、01、285、232、235、236、238、211、254、204、202、207、マイコート506、508、212、715等が挙げられる。
【0130】
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のメラミン化合物である、三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、285、232、235、236、238、マイコート506、508である。
【0131】
ベンゾグアナミン化合物の市販品の具体例としては、例えば、三和ケミカル社製ニカラックBX−4000、SB−401、BX−37、SB−355、SB−303、SB301、BL−60、SB−255、SB−203、SB−201、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123、マイコート105、106、1128等が挙げられる。
【0132】
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のベンゾグアナミン化合物である、三和ケミカル社製ニカラックBX−4000、SB−401、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123である。
【0133】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルo−フタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリオールのグリシジルエーテル、ポリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0134】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒下で反応させたノボラック型フェノール化合物、塩基性触媒下で反応させたレゾール型フェノール化合物どちらも用いることができる。フェノール類としては、例えば、オルトクレゾール、パラクレゾール、パラフェニルフェノール、パラノニルフェノール、2,3−キシレノール、フェノール、メタクレゾール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールH、ビスフェノールS等を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを挙げることができる。フェノール類とアルデヒド類は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
【0135】
ブロック化イソシアネート化合物のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)及びイソシアネート残基を有するウレトジオン等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0136】
ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤としては、例えば、フェノール(解離温度180℃以上)、ε−カプロラクタム(解離温度160〜180℃)、オキシム(解離温度130〜160℃)、又は活性メチレン(100〜120℃)等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。又、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
【0137】
アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0138】
アクリレートモノマーを用いる場合には、更に硬化性を向上させる目的で、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、加熱時に硬化性を向上させる目的で熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等を挙げることができる。
【0139】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等を挙げることができる。
【0140】
これらの熱反応性化合物のうち、メラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、ブロック化イソシアネート化合物、又はアクリレートモノマー類等については本発明のインクジェットインキ中に1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。又、シランカップリング剤は本発明のインクジェットインキ中に0.1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。含有量が不足すると、耐熱性、又は耐薬品性に劣る場合がある。又、含有量が40%より多くなると、粘度の増加、又は保存安定性の低下が生じる場合がある。
【0141】
(4)有機溶剤(D)
本発明のインクジェットインキは、有機溶剤を含有している。
【0142】
本発明では、インクジェットインキにおいて通常使用されている有機溶剤を用いることができる。一般に、インクジェットインキに用いられる有機溶剤は、樹脂に対して高い溶解性を有するとともに、インクジェットプリンターからインクを吐出する際に、インクと接するプリンタ部材に対して膨潤作用が少なく、溶剤の粘度がなるべく低いものが好ましい。有機溶剤は、樹脂に対する溶解性、及びプリンタ部材に対する膨潤作用、粘度、及びノズルにおけるインクの乾燥性の点から選択され、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、及び/又はケトン系溶剤等の1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0143】
アルコール系溶剤としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、又はアミルアルコール等を挙げることができる。
【0144】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリアセチン、1−ブトキシエトキシプロパノール、又は1−メトキシ−2−プロピルアセテート等を挙げることができる。
【0145】
エステル系溶剤としては、例えば、乳酸エチル、乳酸プロパン、又は乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0146】
ケトン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロヘキサノン、又はアセトフェノン等を挙げることができる。
【0147】
(5)顔料誘導体(E)
本発明のインクジェットインキは、顔料表面の表面状態を制御する目的で、顔料誘導体を併用することができる。
【0148】
顔料誘導体としては、例えば、一般式(1):
6−(Z6)q (1)
(式中、G6は、色素原型化合物残基であり、Z6は、塩基性置換基、酸性置換基、又は中
性置換基であり、qは、1〜4の整数である)
で表される化合物を用いることができる。
【0149】
一般式(1)中、Z6の塩基性置換基としては、例えば、下記一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、又は一般式(8)で示される置換基を挙げることができる。
【0150】
一般式(5):
【0151】
【化4】

(一般式(5)中、
61は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、又は直接結合であり、
pは、1〜10の整数であり、
61、及びR62は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR61とR62とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。)
【0152】
一般式(6):
【0153】
【化5】

(一般式(6)中、
63、R64は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR63とR64とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環であり、アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。)
【0154】
一般式(7):
【0155】
【化6】

(一般式(7)中、
62は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、又は直接結合であり、
65は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましく、
66、R67、R68、及びR69は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。)
【0156】
一般式(8):
【0157】
【化7】

(一般式(8)中、
63は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、又は直接結合であり、
63は、−NR70−Z−NR71−、又は直接結合えあり、
70及びR71は、それぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましく、
Zは、置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基であり、前記アルキレン基及びアルケニレン基の炭素数は1〜8が好ましく、
Pは、下記一般式(9)で示される置換基、又は下記一般式(10)で示される置換基であり、
Qは、水酸基、アルコキシル基、前記一般式(6)で示される置換基又は前記一般式(7)で示される置換基である。
【0158】
一般式(9):
【0159】
【化8】

〔一般式(9)中、
rは、1〜10の整数であり、
72、及びR73は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR72とR73とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。〕
【0160】
一般式(10):
【0161】
【化9】

〔一般式(10)中、
74は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好まく、
75、R76、R77、及びR78は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基であり、前記アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。〕)
【0162】
一般式(1)中、Z6の酸性置換基、又は中性置換基としては、例えば、下記一般式(11)、一般式(12)、又は一般式(13)で示される置換基を挙げることができる。
一般式(11):
−SO3M/l (11)
(一般式(11)中、
Mは、水素原子、カルシウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子、マンガン原子、又はアルミニウム原子であり、lは、Mの価数である。)
【0163】
一般式(12):
【0164】
【化10】

(一般式(12)中、
79、R80、R81、及びR82は、水素原子、又は炭素数1〜30のアルキル基である。〔但し全てが水素原子である場合は除く〕)
【0165】
一般式(13):
【0166】
【化11】

(一般式(13)中、
2は、水素原子、ハロゲン原子、−NO2、−NH2、又はSO3Hであり、
1は、1〜4の整数である。)
【0167】
色素原型化合物とは、一般に知られている色素骨格を有する化合物、及び可視光領域にほとんど吸収を有さない、色素骨格に類似の骨格を有する化合物を指す。
【0168】
色素原型化合物残基Gとしては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又は金属錯体系色素、あるいはアントラキノン残基、又はトリアジン残基等を挙げることができる。
【0169】
又、アントラキノン誘導体としては、上記塩基性置換基、酸性置換基、又は中性置換基を有するアントラキノンを用いることができる。又、トリアジン誘導体としては、メチル基、若しくはエチル基等のアルキル基、又はアミノ基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、若しくはジブチルアミノ基等のアルキルアミノ基、又はニトロ基、又は水酸基、又はメトキシ基、エトキシ基、若しくはブトキシ基等のアルコキシ基、又は塩素等のハロゲン、又はメチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、若しくは水酸基等で置換されていてもよいフェニル基、又はメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ニトロ基、若しくは水酸基等で置換されていてもよいフェニルアミノ基等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンに、上記塩基性置換基、酸性置換基又は中性置換基を導入した誘導体を用いることができる。
【0170】
特に顔料(B)表面のアミン吸着量が50μmol/g未満の、表面酸性度合の低い顔料(例えばC.I.Pigment Blue15:6 実測値26μmol/g等)を用いる場合、酸性官能基を有する顔料誘導体を用いることが好ましい。酸性官能基を有する顔料誘導体を用いると、前記分散樹脂と相互作用し易くなり、インクジェットインキの低粘度化、経時安定性向上、又、吐出安定化に繋がる。
【0171】
(6)バインダー樹脂
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1)及び/又は3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)をバインダー樹脂として使用することもできる。
【0172】
又、前記芳香族カルボキシル基を有する分散剤及び前記3級アミノ基を有するビニル系樹脂とは別に、本発明のインクジェットインキに用いることができる樹脂の例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、前記熱反応性化合物の反応温度においても、非反応性の樹脂であり、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0173】
バインダー樹脂の例としては、石油系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、又はブチラール樹脂等を用いることができる。
【0174】
バインダー樹脂として、架橋可能な官能基を有するものを用いることもできる。架橋可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はアルコキシル基等を挙げることができる。
【0175】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは2,000〜30,000である。
【0176】
(7)顔料の被覆処理
顔料の被覆処理は、顔料(B)、分散樹脂(A)、前記分散樹脂、有機溶剤(D)、顔料誘導体(E)、必要に応じて、公知の分散樹脂及びバインダー樹脂が均一になるように予め混合してから、分散機を用いて混練することにより行うことができる。溶剤の配合量は、混合物の機械特性に応じて調節することが好ましい。顔料の被覆処理に用いる分散機としては、ニーダー、ロールミル、ボールミル、バンバリーミキサー、ローラーミル、石臼式ミル等が挙げられるが、2本ロールミルは一つの装置で混合及び混練ができるので好ましい。
【0177】
顔料(B)を被覆処理する際の原料の配合量は、顔料100重量部に対して、顔料誘導体(E)1〜30重量部、分散樹脂(A)、公知の分散樹脂及びバインダー樹脂(以下、樹脂成分と略記する。)20〜200重量部、及び溶剤(D)4〜200重量部の範囲であることが好ましい。顔料誘導体の配合量が1重量部未満の場合は、アンカー効果が少ないためインクを低粘度化させる効果が小さく、30重量部を越える場合は、顔料誘導体が過剰となり未吸着の顔料誘導体同士が凝集するためインクが増粘する。又、樹脂成分の配合量が20重量部未満の場合は、充分に顔料表面を被覆できず、顔料の分散安定性が低くなり、200重量部を越える場合は、顔料に吸着しない遊離の樹脂成分によりインクの粘度が上昇する。又、溶剤の配合量が4重量部未満の場合は、顔料誘導体及び樹脂成分の顔料に対する初期の塗れが不充分で充分に顔料を被覆しないため、インクの粘度が安定しないことがあり、200重量部を越える場合は、顔料の被覆処理が困難となる。
【0178】
顔料の被覆処理は、具体的には、下記の2段階の工程により行われる。
【0179】
第1工程は、顔料、樹脂成分、及び溶剤等を含む組成物を20回程度2本ロールに通すことにより顔料への樹脂成分の濡れと吸着を進行させるチップ化工程である。この工程で、配合した溶剤のうち約80重量%程度が揮発する。
【0180】
第2工程は、チップ化により前記樹脂成分が顔料に吸着した混練物の加熱、混練を続けて顔料粒子表面に被覆層を形成する被覆処理工程である。混練物の粘度が高く、機械上、混練できない場合は、適量の溶剤を追加し、混練を助ける。
【0181】
樹脂成分が架橋可能な官能基を有する場合には、被覆処理工程で樹脂成分の架橋が生じ、一部に樹脂切断も見られる。この反応は、過度な機械的な加圧と磨砕、更には加熱の結果によるものでメカノケミカルな反応であり、顔料と樹脂成分のみでは樹脂成分の架橋反応は生じにくい。顔料と樹脂成分とを混練する際に顔料誘導体を用いることにより、顔料誘導体と樹脂成分とが顔料表面に強固に吸着し、更に加熱と加圧混練を行うことにより樹脂成分の架橋が生じると推定される。加熱温度は80℃〜120℃の範囲であることが好ましい。80℃未満の温度では樹脂成分が十分に架橋しない場合があり、120℃を越える温度では、樹脂成分の劣化が生じる場合がある。
【0182】
顔料表面に吸着しなかった余剰の樹脂成分は、インクの粘度等の物性に影響を及ぼす場合には、洗浄やろ過等により除去することが好ましい。又、被覆処理顔料は、乾燥しても凝集しない場合には、洗浄後に乾燥しても良いが、被覆処理時に用いた溶剤がインクジェットインキの液状媒体として使用可能な溶剤であればあえて乾燥する必要がない。
【0183】
(8)物性等
本発明のインクジェットインキにおいて、固形分含有量は、インク組成物全重量に対して、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは4〜40重量%である。固形分含有量が、3重量%未満になるとインク皮膜の濃度や耐性が不足し、60重量%を超えるとインクの粘度が上昇し、経時安定性が低下することがある。
【0184】
本発明のインクジェットインキの25℃における粘度としては、2mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以上30mPa・s以下、更には4mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。粘度が大きすぎると、連続して吐出する場合に、安定した吐出ができない。
【0185】
本発明のインクジェットインキの平均分散粒子径としては、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましい。平均分散粒子径が大きすぎるとヘッドが目詰まりを起こしやすく、安定した吐出ができない。又、平均分散粒子径が小さすぎると、再凝集を引き起こし易くなり、経時安定性が悪化する。
【0186】
本発明のインクジェットインキの表面張力としては、20mN/m以上40mN/m以下が好ましく、24mN/m以上35mN/m以下がより好ましい。表面張力が高すぎるとヘッドからインクが安定して吐出することができず、逆に表面張力が低すぎるとヘッドから吐出後インクが液滴を形成することができなくなる。
【0187】
本発明のインクジェットインキの製造は、分散樹脂(A)、顔料(B)、熱反応性化合物(C)、溶剤(D)、並びに、必要に応じて、顔料誘導体(E)、公知の分散樹脂、及びバインダー樹脂を通常の分散機に投入し、所望の平均粒子径・粒度分布になるまで分散することにより行うことができる。インクジェットインキの原料は、一括して混合・分散してもよいし、それぞれの原料の特性や経済性を考慮して別々に混合・分散してもよい。インクジェットインキの粘度が高過ぎ、希釈が必要な場合には、インキ原液に希釈用の液状媒体を加えて均一に攪拌し、インクジェットインキを調製することもできる。
【0188】
分散機としては、サンドミル、ビーズミル、アジテータミル、ダイノミル、はコボルミル等が好適である。それぞれの分散機において、顔料分散に適切な粘度領域がある場合には、各種樹脂成分と顔料との比率を変えて粘度を調整することができる。インクジェットインキは、分散機で分散後に、粗大粒子や異物除去を目的にフィルタや遠心法により濾過することが好ましい。
【0189】
本発明のインクジェットインキを製造する際には、更に、界面活性剤型分散剤や、アントラキノン誘導体、及び/又はトリアジン誘導体を用いることができる。界面活性剤型顔料分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、又はステアリルアミンアセテート等を挙げることができる。
【0190】
インクジェットインキには、インクジェットインキの粘度が25℃で3〜50mPa・sとなる範囲で、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、インクジェットインキの基板への濡れ性を制御するために、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤を選択する際には、その他のインク構成成分との相溶性を考慮する必要がある。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性のものがあり、好適なものを選択すればよい。
【0191】
本発明のインクジェットインキは、高い顔料濃度でありながら低粘度であるため吐出安定性に優れ、顔料含有量が通常のインクジェットインキに比べ多いために吐出量を少なくすることができることから、カラーフィルタ基板用をはじめ、高い印字濃度が望まれている印刷物の生産性及び品位を向上させることができる。特に、本発明のインクジェットインキは、高い生産性及び品位が求められるカラーフィルタ基板の製造に好適である。
【0192】
又、本発明のインクジェットインキは、顔料が高濃度に分散されているので、インクジェットインキが深さ方向に浸透する紙や横方向への濡れ広がるプラスティック、ガラス及び金属であっても、印字濃度を高くできる。更に、吐出量を抑えることができるので、受容層のインク受容量を越えるためインクが流出して混色したり、ドット形状が真円とならなかったことも回避することができるので、従来のインクジェット印刷では制限された用途にも用いることができる。
【0193】
(9)カラーフィルタ基板
本発明のインクジェットインキを用いて、インクジェット法により、カラーフィルタ基板を製造することができる。カラーフィルタ基板は、例えば、薄型テレビジョン等に利用されている液晶ディスプレイパネルに利用することができる。
【0194】
カラーフィルタ基板は所望の色相のフィルターセグメントを具備するものであり、フィルターセグメントは、ブラックマトリックスが形成された基板のブラックマトリックスで区分けされた領域内に、インクジェット法によりカラーフィルタ用インクジェットインクを吐出することに形成される。
【0195】
基板としては、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板を用いることができる。ブラックマトリックスは、例えば、ラジカル重合型のブラックレジストを塗布し、露光、そして現像してパターニングするフォトリソグラフィー法、黒色インクを印刷する印刷法、又は金属を蒸着したのちエッチングする蒸着法等により基板上に形成することができる。
【実施例】
【0196】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例及び比較例中、部及び%は、重量部及び重量%を表す。又、樹脂の数平均分子量は、GPCを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた。 実施例及び比較例で用いた顔料、顔料誘導体、溶剤及び樹脂溶液を以下に示す。又、実施例及び比較例における最終的なインク組成を表1に示す。
【0197】
[1]分散樹脂(A)
(1)芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の製造例1(分散剤A−1−a)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、メチルメタクリレート40部、ベンジルメタクリレート28部、ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数3.5個である中間体を得た。該中間体を固形分で100部、トリメリット酸無水物5.1部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた。このようにして、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数が1個、固形分当たりの酸価30mgKOH/g、数平均分子量4,000である芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1−a)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−1−a)溶液を調整した。
【0198】
(2)芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の製造例2(分散剤A−1−b)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート100部、n−ブチルアクリレート100部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3‐メルカプト‐1,2‐プロパンジオール12部を添加した後、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を20回に分けて30分ごとに加え、80℃のまま12時間反応し、固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物30部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを滴定で確認し反応を終了し、固形分当たりの酸価42mgKOH/g、数平均分子量4,100である芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1−b)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−1−b)溶液を調整した。
【0199】
(3)芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の製造例3(分散剤A−1−c)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート80部、エチルアクリレート120部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3‐メルカプト‐1,2‐プロパンジオール4.4部を添加した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部を20回に分けて30分ごとに加え、80℃のまま12時間反応し、固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、トリメリット酸無水物12部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で2時間、80℃で5時間反応させた。90%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを滴定で確認し固形分当たりの酸価44mgKOH/g、数平均分子量5,200である芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A−1−c)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−1−c)溶液を調整した。
【0200】
(4)3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)の製造例4(分散剤A−2−a)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部を仕込み、窒素置換しながら100℃に昇温した。滴下槽にN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート200部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ2時間かけて滴下し、その後同温度で3時間反応を継続した。このようにして、固形分当たりのアミン価が345mgKOH/g、数平均分子量2,500の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2−a)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−2−a)溶液を調整した。
【0201】
(5)3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)の製造例5(分散剤A−2−b)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部を仕込み、窒素置換しながら100℃に昇温した。滴下槽にN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート180部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ2時間かけて滴下し、その後同温度で3時間反応を継続した。このようにして、固形分当たりのアミン価が315mgKOH/g、数平均分子量3,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2−b)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−2−b)溶液を調整した。
【0202】
(6)3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)の製造例6(分散剤A−2−c)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部を仕込み、窒素置換しながら100℃に昇温した。滴下槽にN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート170部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸20部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を6部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ2時間かけて滴下し、その後同温度で3時間反応を継続した。このようにして、固形分当たりのアミン価が303mgKOH/g、酸価が65mgKOH/g、数平均分子量4,000の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2−c)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−2−c)溶液を調整した。
【0203】
(7)3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)の製造例7(分散剤A−2−d)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部を仕込み、窒素置換しながら100℃に昇温した。滴下槽にN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、メチルメタクリレート90部、n−ブチルアクリレート90部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を8部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ2時間かけて滴下し、その後同温度で3時間反応を継続した。このようにして、固形分当たりのアミン価が31mgKOH/g、数平均分子量3,500の3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2−d)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(A−2−d)溶液を調整した。
【0204】
(8)アミノ基を有するウレア樹脂(U−1)の比較製造例1
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、脱水ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部を仕込み、テトラエチレンペンタミン45部を仕込み40℃に昇温した。滴下槽にヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(武田薬品工業株式会社製の「タケネートD−165N−90CX」)155部と、脱水ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート67部を仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ4時間かけて滴下し、その後同温度で3時間反応を継続した。このようにして固形分当たりのアミン価は45mgKOH/gのアミノ基を有するウレア樹脂(U−1)を得た。ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて、固形分濃度50重量%の分散剤(U−1)溶液を調整した。
【0205】
(9)味の素ファインテクノ社製分散樹脂 アジスパーPB821 50%溶液(U−2)
(酸価17mgKOH/g、アミン価8〜11mgKOH/g、溶剤ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)
(10)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製分散樹脂 EFKA−4300 50%溶液(U−3)
(アミン価52〜60mgKOH/g、溶剤ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート/メトキシプロピルアセテート)
【0206】
[2]顔料(B)
(B−1) レッド顔料A :C.I.Pigment Red 254
(B−2) レッド顔料B :C.I.Pigment Red 177
(B−3) マゼンタ顔料 :C.I.Pigment Red 122
(B−4) グリーン顔料A :C.I.Pigment Green 36
(B−5) グリーン顔料B :C.I.Pigment Green 58
(B−6) イエロー顔料A :C.I.Pigment Yellow 138
(B−7) イエロー顔料B :C.I.Pigment Yellow 150
(B−8) ブルー顔料 :C.I.Pigment Blue 15:6
(B−9) シアン顔料 :C.I.Pigment Blue 15:3
(B−10) バイオレット顔料 :C.I.Pigment Violet 23
【0207】
[3]熱反応性化合物(C)
(MX−43):三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有メラミン化合物 ニカラックMX−43
(MX−417):三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有メラミン化合物 ニカラックMX−417
(SB−401):三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックSB−401
(BL−60):三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックBL−60
(M−400):東亞合成社製アクリルモノマー アロニックスM−400
(BL−4265):バイエル社製イソシアネート化合物 デスモジュールBL−4265
(EPPN−201):日本化薬社製 エポキシ化合物EPPN―201
【0208】
[4]溶剤(D)
(CBAc):ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
(BuCBAc):ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
(PGMAc):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(DPMA):ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(13BGDA):1,3−ブチレングリコールジアセテート
(TPM):トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
(TPNB):トリプロピレングリコールモノブチルエーテル
【0209】
[5]顔料誘導体(E)
(E−1)
【0210】
一般式(14):
【0211】
【化12】

【0212】
(E−2)
【0213】
一般式(15):
【0214】
【化13】

【0215】
(E−3)
【0216】
一般式(16):
【0217】
【化14】

【0218】
(E−4)
【0219】
一般式(17):
【0220】
【化15】

【0221】
(E−5)
【0222】
一般式(18):
【0223】
【化16】

【0224】
(E−6)
【0225】
一般式(19):
【0226】
【化17】

【0227】
≪実施例1≫
レッド顔料A 90部、顔料誘導体(E−1)10部、芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1−a)溶液106部、ビニル系樹脂(A−2−a)溶液26部、溶剤(CBAc)242部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、分散体を得た。更にベンゾグアナミン化合物(BL−60)20部、溶剤(CBAc)165部、溶剤(BuCBAc)55部を加えホモディスパにて混合した。ゴミや粗大物をフィルタ濾過し、顔料濃度14%のインクジェットインクを得た。
【0228】
実施例1と同様にして、表1〜7の組成表内の実施例2〜30、比較例1〜18の組成になるように分散、調液を行いインクジェットインキを得た。
【0229】
実施例1〜30及び比較例1〜18で得られたインクジェットインキの粘度及び流動性、保存安定性、ヘイズを下記の方法で評価した。又、4〜10KHzの周波数変化が可能なピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで吐出し、下記の方法で吐出安定性、印字濃度、耐熱性、耐薬品性を評価した。結果を表8〜14に示す。
【0230】
[粘度]
動的粘弾性測定装置により、ずり速度100(1/s)の粘度(η:mPa・s)を測定した。
○: η<20
△: 20≦ηa/η<30
×: η≦30
【0231】
[流動性]
動的粘弾性測定装置により、ずり速度10(1/s)の粘度(ηa:mPa・s)を測定し、先に測定したずり速度100(1/s)の粘度(η:mPa・s)との比ηa/ηを求め、下記の基準で流動性を評価した。
○: 0.9≦ηa/η<1.5
×: 1.5≦ηa/η
【0232】
[保存安定性]
45℃のオーブンで7日間加熱後、粘度を測定した。
○: 加熱前の粘度と比較して 増粘率≦±10%
×: 加熱前の粘度と比較して 増粘率>±10%
【0233】
[ヘイズ]
スピンコーターを用い、1500rpmにてガラスに塗工した基板を、ホットプレートにて100℃3分間乾燥し、塗工面のヘイズをヘイズメーター(日本電色工業株式会社製)にて測定した。
○: T<5
×: T≧5
【0234】
[吐出安定性A]
段ボールに、前記インクジェットプリンターを用いてインクを吐出して乾燥し、室温乾燥を行って塗膜形成し、印字状態を目視で観察し、下記の基準で吐出安定性を評価した。
○: 連続15分後ノズル抜けが5%以下である。
△: 連続15分後ノズル抜けが10%以下である。
×: 連続15分後ノズル抜けが50%以上である。
【0235】
[吐出安定性B]
段ボールに、前記インクジェットプリンターを用いてインクを吐出して乾燥し、室温乾燥を行って塗膜形成し、印字状態を目視で観察し、下記の基準で吐出安定性を評価した。
○:間欠15分後ノズル抜けが10%以下である。
△:間欠15分後ノズル抜けが20%以下である。
×:間欠15分後ノズル抜けが50%以上である。
【0236】
[印字濃度]
段ボールに、前記インクジェットプリンターを用いてインクのベタ印刷を行い、乾燥後OD値を測定した。
○:OD値1.2以上
×:OD値1.2未満
【0237】
[耐薬品性]
ガラス基板の所定の位置に、前記インクジェットプリンターを用いてインクを吐出して乾燥、230℃で20分間の熱硬化を行って塗膜を形成し、ガラス基板をN−メチルピロリドンに浸漬、浸漬前後の塗膜の色変化△Eを測定した。
○:△E≦2.5
△:2.5<△E≦5
×:△E>5
【0238】
[耐熱性]
塗膜を形成したガラス基板を240℃のオーブン中に90分置き、その前後の塗膜の膜厚変化率△t={(耐熱試験前膜厚−耐熱試験後膜厚)/耐熱試験前膜厚}を測定した。
○: △t≦10%
×: △t>10%
【0239】
【表1】

【0240】
【表2】

【0241】
【表3】

【0242】
【表4】

【0243】
【表5】

【0244】
【表6】

【0245】
【表7】

【0246】
【表8】

【0247】
【表9】

【0248】
【表10】

【0249】
【表11】

【0250】
【表12】

【0251】
【表13】

【0252】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明のインクジェットインキは、耐熱性、耐薬品性が良好で、更に顔料濃度が高いにもかかわらず、低粘度、経時粘度安定性かつ低粘度かつ吐出安定性が良好である。又、従来の方法と比較して、はるかに効率よく高性能なカラーフィルター、パッケージ、又は屋外看板等を生産することができる。
【0254】
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散樹脂(A)、顔料(B)、熱反応性化合物(C)、及び溶剤(D)を含んでなるインクジェットインキであり、
分散樹脂(A)が、芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1)と、3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)とを含んでなる分散樹脂であるインクジェットインキ。
【請求項2】
芳香族カルボキシル基を有する樹脂型分散剤(A−1)が、水酸基を有する重合体(A−3)と、芳香族トリカルボン酸無水物(A−4a)及び/又は芳香族テトラカルボン酸二無水物(A−4b)とを反応させてなる樹脂型分散剤である請求項1記載のインクジェットインキ。
【請求項3】
水酸基を有する重合体(A−3)が、片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)又は側鎖に水酸基を有する重合体(A−3b)である請求項2記載のインクジェットインキ。
【請求項4】
片末端に水酸基を有する重合体(A−3a)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(A−3c)である請求項3記載のインクジェットインキ。
【請求項5】
3級アミノ基を有するビニル系樹脂(A−2)のアミン価が、50〜500mgKOH/gである請求項1〜4いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項6】
更に下記一般式(1)で表される顔料誘導体(E)を含んでなる請求項1〜5いずれか記載のインクジェットインキ。
一般式(1):
6−Z6
(一般式(1)中、
6は、q価の色素原型化合物残基であり、
6は、塩基性置換基、酸性置換基、又は中性置換基であり、
qは、1〜4の整数である。)
【請求項7】
顔料誘導体(E)が、酸性置換基を有する顔料誘導体(E)である請求項6項記載のインクジェットインキ。
【請求項8】
熱反応性化合物(C)が、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、アクリレート系モノマー、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上である、請求項1〜7いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項9】
熱反応性化合物(C)が、少なくともメラミン化合物及び/又はベンゾグアナミン化合物を含む、請求項1〜8いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項10】
固形分含有量が、インクジェットインキ全重量に対して3〜60重量%である、請求項1〜9いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項11】
顔料(B)の含有量が、インクジェットインキ全重量に対して1〜30重量%である、請求項1〜10いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項12】
顔料(B)と分散樹脂(A)との重量比が、100:3〜100:150である、請求
項1〜11いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項13】
25℃における粘度が、2〜40mPa・sである、請求項1〜12いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項14】
カラーフィルタ基板用である、請求項1〜13いずれか記載のインクジェットインキ。
【請求項15】
請求項1〜14いずれか記載のインクジェットインキにより形成された印刷層を担持してなるカラーフィルタ基板。

【公開番号】特開2009−191251(P2009−191251A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326280(P2008−326280)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】