インクジェットプリンタおよび吐出タイミング修正方法
【課題】吐出タイミングの修正を容易に行う。
【解決手段】ヘッド31は移動方向に並ぶ第1および第2吐出口列311,312を有し、基材上の複数のチェック領域に均一画像を記録する。各チェック領域の均一画像では、第1吐出口列により形成される第1ドット列と、第1ドット列から移動方向にずれて第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが移動方向に繰返しピッチにて繰り返され、各チェック領域に均一画像が記録される際に、第1ドット列と第2ドット列との間の距離として、繰返しピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、複数のチェック領域に対し設定シフト量が漸次変更される。複数のチェック領域のうち均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域が特定され、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングが修正される。
【解決手段】ヘッド31は移動方向に並ぶ第1および第2吐出口列311,312を有し、基材上の複数のチェック領域に均一画像を記録する。各チェック領域の均一画像では、第1吐出口列により形成される第1ドット列と、第1ドット列から移動方向にずれて第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが移動方向に繰返しピッチにて繰り返され、各チェック領域に均一画像が記録される際に、第1ドット列と第2ドット列との間の距離として、繰返しピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、複数のチェック領域に対し設定シフト量が漸次変更される。複数のチェック領域のうち均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域が特定され、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングが修正される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、および、インクジェットプリンタにおけるインクの吐出タイミングを修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材をヘッドに対して相対的に移動しつつ、ヘッドの複数の吐出口からインクの微小液滴を基材に向けて吐出することにより画像を記録するインクジェットプリンタが用いられている。特許文献1では、ノズルの加工誤差等に起因して、あるノズルから吐出されたインクの着弾位置がノズルの配列方向(記録用紙の送り方向と直交する方向)にずれてしまう場合でも、インクジェットヘッドをノズルの配列方向に平行な方向へ移動させながら、吐出タイミングの異なる5種類の駆動信号の何れか1つをアクチュエータに供給することにより、着弾位置がずれているノズルからのインクの吐出タイミングを他のノズルと異ならせて、その着弾位置のずれを補正する手法が開示されている。
【0003】
また、所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタも実用されており、各吐出口列では複数の吐出口が移動方向に垂直な幅方向に一定の吐出口ピッチにて並ぶとともに、幅方向に関して、第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間の中央に、第2吐出口列における1つの吐出口が配置される。このようなインクジェットプリンタでは、各吐出口列における吐出口の間隔が比較的大きく保たれるが、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングを調整することにより、移動方向の各位置において幅方向に一列に並ぶ複数のドットを、第1吐出口列および第2吐出口列により微小なピッチにて(すなわち、高い記録解像度にて)形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングは、理想的には第1吐出口列と第2吐出口列との移動方向の間隔、および、ヘッドと基材との相対移動速度により決定される。しかしながら、実際には、吐出口列毎のインクの吐出特性(例えば、インクの吐出方向や吐出速度)のばらつきがあるため、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングを個別に調整する必要がある。吐出タイミングが適切に調整されない場合、第1吐出口列により形成されるドットと、第2吐出口列により形成されるドットとが移動方向にずれてしまい、記録される画像の質が低下してしまう。基材上に所定のテストパターンを記録し、当該テストパターンをルーペや顕微鏡により観察することにより、吐出タイミングを修正することが可能となるが、煩雑な作業を要してしまい、吐出タイミングの修正に長時間を要してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出タイミングの修正を容易に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、所定の移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、前記ヘッドからのインクの吐出を制御する制御部とを備え、前記ヘッドが、第1吐出口列および第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、前記制御部の制御により、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に均一画像が記録され、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記制御部において、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、前記制御部が、前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付ける入力受付部と、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記複数のチェック領域の濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記最大濃度チェック領域を特定する領域特定部とをさらに備え、前記入力受付部が、前記最大濃度チェック領域を示す信号を前記領域特定部から前記入力信号として受け付ける。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、前記制御部が、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像を前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録し、前記入力受付部が、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付け、前記吐出タイミング修正部が、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングを修正する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、前記入力受付部が、各ヘッドに関する前記入力信号を受け付け、前記吐出タイミング修正部が、前記各ヘッドに関して前記吐出タイミングを修正する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正方法であって、前記インクジェットプリンタが、インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構とを備え、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、前記吐出タイミング修正方法が、a)前記移動機構により前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する工程と、b)前記a)工程に並行して、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に、前記ヘッドにより所定の規則にて均一画像を記録する工程と、c)前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定する工程と、d)前記最大濃度チェック領域に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する工程とを備え、前記所定の規則により、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、前記d)工程において、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記吐出タイミングが修正される。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の吐出タイミング修正方法であって、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、前記b)工程において、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像が前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録され、前記c)工程において、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定され、前記d)工程においてが、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングが修正される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の吐出タイミング修正方法であって、前記インクジェットプリンタが、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、前記d)工程において、各ヘッドに関して前記吐出タイミングが修正される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出タイミングの修正を容易に行うことができる。
【0015】
また、請求項2の発明では、吐出タイミングの修正を自動的に行うことができ、請求項3および6の発明では、幅方向において第1吐出口列の吐出口と第3吐出口列の吐出口とが大きく離れている場合でも、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングの修正を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】ヘッドユニットを示す平面図である。
【図3】ヘッドを示す平面図である。
【図4】基材上のドットを示す図である。
【図5】基材上のドットを示す図である。
【図6】吐出タイミング修正処理の流れを示す図である。
【図7】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図8】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図9】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図10】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図11】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図12】ヘッドの他の例を示す平面図である。
【図13】チェック領域を示す図である。
【図14】チェック領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図であり、インクジェットプリンタ1は帯状の基材9に画像を印刷(記録)する。基材9の材料として、例えば、紙、樹脂フィルム、金属薄板が利用される。
【0018】
インクジェットプリンタ1は、印刷前の基材9をロール状に収容する収容部11、収容部11から基材9を引き出す第1モータ部21、基材9に接するローラ231の回転により基材9の移動速度を検出するエンコーダ23、基材9の一方の主面に向けてインクの微小液滴と吐出するヘッドユニット3、ヘッドユニット3の下方(図1中の(−Z)側)に位置する基材9を引き出す第2モータ部22、印刷後の基材9をロール状に回収する回収部12、並びに、インクジェットプリンタ1の全体動作を制御する制御部4を備える。制御部4は、図示省略の入力部を介して操作者により入力される入力信号を受け付ける入力受付部41、および、後述の吐出口列における吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部42を有する。なお、図1中にて破線にて示す濃度測定部5および領域特定部43は後述の動作例にて用いられる。
【0019】
第1モータ部21は、補助ローラ211により外周面に巻き付けられた基材9を送るメインローラ212、および、メインローラ212を回転するモータ213を備える。同様に、第2モータ部22は、補助ローラ221により外周面に巻き付けられた基材9を送るメインローラ222、および、メインローラ222を回転するモータ223を備える。
【0020】
インクジェットプリンタ1では、エンコーダ23にて取得された基材9の移動速度や、図示省略の張力検出機構にて検出された基材9の張力に基づいて、制御部4により第1モータ部21および第2モータ部22の回転速度が調整され、基材9の張力や移動速度がおよそ一定に保たれる。以下の説明では、ヘッドユニット3の下方に位置する基材9の移動方向である図1中のY方向を単に移動方向という。
【0021】
図2はヘッドユニット3の一部を示す平面図であり、図2では図1の移動方向を上下方向としてヘッドユニット3を図示している。図1に示すように、ヘッドユニット3の下方((−Z)側)では基材9の主面の法線方向がZ方向に平行であり、図2のヘッドユニット3では、移動方向および主面の法線方向に垂直なX方向(基材9の幅に対応する方向であり、以下、「幅方向」という。)に沿って、同様の構成の複数のヘッド31が千鳥状に配列される。実際には、複数のヘッド31は、幅方向に関して基材9の幅全体に亘って配列され、基材9がヘッドユニット3の下方を一回通過するのみで印刷が完了する、いわゆるワンパス(シングルパス)印刷が実現される。
【0022】
図3は、1つのヘッド31を示す平面図である。図3に示すように、各ヘッド31は第1および第2吐出口列311,312を有し、各吐出口列311,312は、幅方向(X方向)に関して一定のピッチx(以下、「吐出口ピッチx」という。)にて並ぶ複数の吐出口300の集合である。第1および第2吐出口列311,312は移動方向(Y方向)に並び、幅方向に関して、(−Y)側の第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に、(+Y)側の第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置される。すなわち、ヘッド31の全体では、複数の吐出口300が幅方向に吐出口ピッチxの1/2倍のピッチにて並んでいる。ヘッド31における複数の吐出口300は、ヘッドユニット3の下方における基材9の主面に平行な(すなわち、XY平面に平行な)同一面上に配置される。
【0023】
図1のインクジェットプリンタ1における画像記録動作では、基材9の移動方向への連続的な移動に並行して、制御部4により各ヘッド31に対するインクの吐出制御が行われる。具体的には、基材9が一定距離だけ移動する毎に、制御部4において、エンコーダ23からの信号に基づいて吐出パルス信号が生成され、吐出パルス信号の生成から個別のディレイ量だけ遅延して各吐出口列311,312からインクが吐出される。
【0024】
このとき、理想的な画像記録では、図4に示すように、ヘッド31の第1吐出口列311が形成するドット910(図4中にて細線の円にて示す。後述の図5、並びに、図7ないし図11において同様。)と第2吐出口列312が形成するドット910(図4中にて太線の円にて示す。後述の図5、並びに、図7ないし図11において同様。)とが移動方向の同じ位置に配置される。換言すると、第1吐出口列311によるドット910と第2吐出口列312によるドット910とを移動方向の同じ位置に形成するためのディレイ量が、第1吐出口列311および第2吐出口列312に対して設定される。既述のように、幅方向に関して、第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に、第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置されるため、理想的な画像記録では、第1吐出口列311の吐出口300により形成されるドット910と、第2吐出口列312の吐出口300により形成されるドット910とが、幅方向に伸びる直線上にて交互に配列される。
【0025】
一方、第1吐出口列311および第2吐出口列312に対して適切なディレイ量が設定されない場合には、図5に示すように、第1吐出口列311が形成するドット910と、第2吐出口列312が形成するドット910とが、移動方向において僅かにずれてしまい、画像のエッジがギザギザになってしまう。
【0026】
以下、第1吐出口列311および第2吐出口列312がドットを移動方向の同じ位置に形成するためのディレイ量を求める、すなわち、ヘッド31の基材9に対する相対移動方向に関して前側の第1吐出口列311に対し、後側の第2吐出口列312の吐出タイミングを修正する処理(以下、「吐出タイミング修正処理」という。)について図6を参照して説明する。なお、吐出タイミング修正処理は、インクジェットプリンタ1の組み立て直後や、故障したヘッドの取り替え直後等に行われる。
【0027】
吐出タイミング修正処理では、まず、図1の第1モータ部21および第2モータ部22がONとされ、基材9の移動方向への連続的な移動が開始される(ステップS11)。制御部4では、基材9の移動に並行してヘッド31からのインクの吐出が所定の規則に従って制御され、それぞれが基材9上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に画像が記録される(ステップS12)。後述するように、各チェック領域の全体において均一な濃度の画像が記録されるため、以下、チェック領域に記録される画像を「均一画像」という。
【0028】
図7ないし図11は、複数のチェック領域への均一画像の記録を説明するための図であり、図7ないし図11の左側は、均一画像の記録前における基材9上のチェック領域91の一部を示し、右側は均一画像の記録後におけるチェック領域91の一部を示している。また、図7ないし図11の左側および右側では、ディレイ量の最小可変単位に相当する要素ピッチPにて、幅方向(X方向)および移動方向(Y方向)に配列される複数の正方形領域90を細線にて示している。
【0029】
複数のチェック領域91に均一画像を記録する際には、幅方向に吐出口ピッチx、移動方向に所定の繰返しピッチy(図7参照)にて配列される複数の位置が、第1吐出口列311によりドットを形成すべき位置(図7ないし図11の左側において内部に平行斜線を付す矩形にて示す位置であり、以下、「第1指定位置」という。)921として指定される。また、複数の第1指定位置921を幅方向にdx、移動方向に(y/2+dy)(図7参照)だけ平行移動させた複数の位置が、第2吐出口列312がドットを形成すべき位置(図7ないし図11の左側において太線の矩形にて示す位置であり、以下、「第2指定位置」という。)922として指定される。
【0030】
本実施の形態では、図7ないし図11の左側に示すように、吐出口ピッチxは要素ピッチPの8倍に等しく、繰返しピッチyは要素ピッチPの6倍に等しい。また、幅方向に関して第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置されるため、dxは吐出口ピッチxの半分(要素ピッチPの4倍)である。
【0031】
既述のように、移動方向に関して、第2指定位置922は第1指定位置921に対して(y/2+dy)だけ離れるため、第2指定位置922の第1指定位置921に対する移動方向のずれ量は、繰返しピッチyの半分である基準距離を設定シフト量dy(図7の左側のみにおいて太線の矢印にて示す。)だけ変更した距離として指定される。設定シフト量dyは複数のチェック領域91において漸次変更され、図7ないし図11の左側における設定シフト量dyは、(−Y)側から(+Y)側に向かう方向を正として、それぞれ要素ピッチPの(+2)倍、(+1)倍、0倍、(−1)倍、(−2)倍である。
【0032】
図9の左側に示すように、設定シフト量dyが要素ピッチPの0倍である場合に、移動方向に関して各第2指定位置922が、隣接する2つの第1指定位置921の中央に配置され、第2指定位置922と第1指定位置921との間の最短距離が最大となる。なお、繰返しピッチyおよび設定シフト量dyは適宜変更されてよい。
【0033】
制御部4では、各ヘッド31において第1吐出口列311および第2吐出口列312のそれぞれに対して予め設定されるディレイ量の初期値を用いつつ、各チェック領域91における複数の第1指定位置921に第1吐出口列311によりドットを形成し、複数の第2指定位置922に第2吐出口列312によりドットを形成するためのインクの吐出制御が行われる。
【0034】
図7ないし図11の左側に示す規則により、チェック領域91では、図7ないし図11の右側に示すように、幅方向に並ぶ複数のドット910をドット列として、第1吐出口列311により形成される第1ドット列911と、第1ドット列911から移動方向にずれて第2吐出口列312により形成される第2ドット列912との組合せが移動方向に一定の繰返しピッチyにて繰り返され、チェック領域91の全体において均一なパターンの画像(すなわち、均一画像)が記録される。また、複数のチェック領域91に対し漸次変更した設定シフト量dyが用いられる。複数のチェック領域91に均一画像が記録されると、第1モータ部21および第2モータ部22がOFFとされ、基材9の移動方向への移動が停止される(ステップS13)。
【0035】
図7ないし図11の右側では、第1ドット列911に含まれるドット910の中心(すなわち、液滴の着弾位置であり、以下、「第1着弾位置」という。)931を内部に平行斜線を付す矩形にて示し、第2ドット列912に含まれるドット910の中心(すなわち、液滴の着弾位置であり、以下、「第2着弾位置」という。)932を太線の矩形にて示す。
【0036】
図7ないし図11のそれぞれでは、複数の第1着弾位置931の配列に対する複数の第2着弾位置932の配列の相対位置が、複数の第1指定位置921の配列に対する複数の第2指定位置922の配列の相対位置よりも要素ピッチPだけ(−Y)側にずれている(すなわち、第2着弾位置932のずれ量が要素ピッチPの(−1)倍である。)。したがって、複数のチェック領域91のうち、指定される設定シフト量dyが要素ピッチPの(+1)倍である図8の右側のチェック領域91では、移動方向に関して各第2着弾位置932が隣接する2つの第1着弾位置931の中央に配置され、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離が繰返しピッチyの半分(すなわち、基準距離)となる。
【0037】
一方、他の複数のチェック領域91では、設定シフト量dyが要素ピッチPの(+1)倍から離れるに従って、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離の基準距離からのずれ量が増大し(すなわち、第1ドット列911と第2ドット列912との間の最短距離が小さくなり)、第1ドット列911と第2ドット列912とが重なる領域の面積(以下、「重なり面積」という。)が増大する。このように、複数のチェック領域91では、第1ドット列911と第2ドット列912との重なり面積が、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化する。なお、図7ないし図11の右側では、チェック領域91の一部のみを図示しており、実際のチェック領域91には、多数のドット910が配列される。
【0038】
また、各チェック領域91に対して幅方向に隣接した領域には、当該チェック領域91を識別するための番号、文字あるいは記号等(以下、「識別コード」という。)が記録されており(各吐出口列の一部の吐出口が識別コードの記録に割り当てられる。)、本実施の形態では、設定シフト量dyがそれぞれ要素ピッチPの(+2)倍、(+1)倍、0倍、(−1)倍、(−2)倍である図7ないし図11の右側のチェック領域91に対して、「+2」、「+1」、「0」、「−1」、「−2」が識別コードとして記録される。
【0039】
続いて、基材9上の複数のチェック領域91が操作者により観察される。図7ないし図11の右側に示す複数のチェック領域91では、第1ドット列911と第2ドット列912との重なり面積が最小となる図8の右側のチェック領域91が、濃度が最大である最大濃度チェック領域として操作者により特定される(ステップS14)。最大濃度チェック領域91では、複数のチェック領域91のうち均一画像におけるドットの面積率(すなわち、チェック領域91においてドットが占める面積の割合)が最大である。なお、基材9上では、設定シフト量dyの昇順または降順にて複数のチェック領域91が移動方向に連続的に配列され、操作者において濃度が漸次変化する均一画像が観察されるため、最大濃度チェック領域91は容易に特定可能である。図7ないし図11の例では、図11の右側のチェック領域91における濃度が最小となる。
【0040】
最大濃度チェック領域91が特定されると、最大濃度チェック領域91に対応する識別コード「+1」が入力部を介して操作者により入力され、制御部4の入力受付部41において、入力信号として受け付けられる。このとき、制御部4の表示部(図示省略)では、操作者による入力を補助するために、ヘッドユニット3における全てのヘッド31に関して、最大濃度チェック領域91に対応する識別コードを入力するための入力欄が設けられており、各ヘッド31に対する識別コードの入力が操作者により行われる。
【0041】
吐出タイミング修正部42では、入力信号に基づいて最大濃度チェック領域91が特定される。図7ないし図11の右側の均一画像を記録するヘッド31に関しては、識別コード「+1」の入力信号に基づいて、設定シフト量が要素ピッチPの(+1)倍であるチェック領域91が最大濃度チェック領域として特定される。このように、入力信号は、吐出タイミング修正部42において複数のチェック領域91から最大濃度チェック領域を特定するための信号である。
【0042】
吐出タイミング修正部42では、さらに、最大濃度チェック領域91に対応する設定シフト量に基づいて当該ヘッド31における第2吐出口列312に対するディレイ量が初期値から変更される。具体的には、図8の右側のチェック領域91が最大濃度チェック領域として特定されたヘッド31では、最大濃度チェック領域91に対応する設定シフト量である要素ピッチPの(+1)倍(に相当する値)が、第2吐出口列312に対するディレイ量の初期値に加算され、ディレイ量の値が変更される。これにより、第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。
【0043】
変更後のディレイ量を用いた画像記録動作では、第2吐出口列312により形成される第2ドット列の位置が、ディレイ量の初期値を用いる場合における位置から(+Y)側に要素ピッチPの1倍だけシフトする。したがって、図4に示すように、第1吐出口列311が形成するドット910と第2吐出口列312が形成するドット910とが移動方向の同じ位置に配置される。
【0044】
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1では、各チェック領域91に均一画像が記録される際に、制御部4において、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離として、繰返しピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、複数のチェック領域91に対して設定シフト量を漸次変更しつつ均一画像が記録される。このような複数のチェック領域91では、操作者がルーペや顕微鏡を用いることなく、最大濃度チェック領域を目視にて容易に特定することができる。最大濃度チェック領域が特定されると、操作者により最大濃度チェック領域の識別コードが入力されて、入力信号として入力受付部41にて受け付けられる。吐出タイミング修正部42では、識別コードから最大濃度チェック領域が特定され、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される。これにより、インクジェットプリンタ1では、高精度な吐出タイミングの修正を容易にかつ短時間にて行うことができる。
【0045】
また、インクジェットプリンタ1では、幅方向に関して基材9の全体に亘って配列される複数のヘッド31が設けられ、入力受付部41において、各ヘッド31に関する入力信号が受け付けられるとともに、吐出タイミング修正部42により、各ヘッド31に関して第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される。これにより、微細なピッチにてドットが配列されるワンパス印刷用のインクジェットプリンタにおいて、吐出タイミングの修正を精度よくかつ容易に行うことができる。また、インクジェットプリンタ1において多数のヘッド31が配列される場合であっても、多数のヘッド31の吐出タイミングの修正を短時間にて行うことができる。
【0046】
次に、インクジェットプリンタ1の他の動作例について説明する。本動作例では、図1中にて破線にて示す濃度測定部5および領域特定部43が利用される。ヘッドユニット3の近傍に設けられる濃度測定部5は、2次元配列された撮像素子を有するカメラ、または、撮像素子が幅方向に1次元配列されたスキャナである。
【0047】
インクジェットプリンタ1では、上記動作例と同様の処理による複数のチェック領域への均一画像の記録に並行して(図6:ステップS11〜S13)、ヘッドユニット3の(+)側に配置される濃度測定部5により複数のチェック領域の濃度(画像濃度)が測定される。濃度測定部5による測定結果は制御部4へと入力され、領域特定部43において、測定結果に基づいて最大濃度チェック領域が特定される(ステップS14)。入力受付部41では、最大濃度チェック領域を示す信号が領域特定部43から入力されて入力信号として受け付けられ、吐出タイミング修正部42において、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。
【0048】
以上のように、濃度測定部5を有するインクジェットプリンタ1では、濃度測定部5による測定結果に基づいて最大濃度チェック領域が特定されるため、第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングの修正を自動的に行うことが可能となる。
【0049】
なお、濃度測定部5によりチェック領域の濃度を測定する場合には、複数のチェック領域が互いに離れて形成される場合であっても、最大濃度チェック領域を精度よく特定することが可能となる。また、濃度測定部5ではチェック領域の濃度が特定可能であればよいため、読み取り解像度の低い安価なものが利用可能である。さらに、濃度測定部5は、インクジェットプリンタ1の組み立て時や、故障したヘッドの取り替え時のみにインクジェットプリンタ1に設けられてもよい。換言すると、濃度測定部5がインクジェットプリンタ1から取り外し可能とされ、吐出タイミング修正処理を行う際のみにインクジェットプリンタ1に取り付けられてもよい。また、印刷結果を独立したスキャナで読み込み、該スキャナに接続されたコンピュータで調整データを作成し、インクジェットプリンタに送信してもよい。
【0050】
図12は、ヘッドの他の例を示す平面図である。図12のヘッド31aは、移動方向(Y方向)に配列される複数の(図12では、8個の)吐出口列311〜318を有する。8個の吐出口列311〜318のそれぞれでは一定の吐出口ピッチxにて複数の吐出口300が幅方向(X方向)に一列に配列され、幅方向に関して、各吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口300の間に、他の7個の吐出口列にそれぞれ含まれる7個の吐出口300が吐出口ピッチxの1/8倍の間隔にて順に配置される。
【0051】
図12のヘッド31aを有するインクジェットプリンタ1において、吐出タイミング修正処理を行う際には、上記実施の形態と同様にして、最も(−Y)側の吐出口列311(以下、「基準吐出口列311」という。)に対して、残りの吐出口列311〜318のそれぞれの吐出タイミングが修正される。
【0052】
具体的には、基準吐出口列311と、他の各吐出口列312〜318とにより複数のチェック領域に均一画像が記録される(図6:ステップS11〜S13)。すなわち、2つの吐出口列により形成される複数のチェック領域をチェック領域群として、7個のチェック領域群が形成される。なお、上記動作例と同様に、各チェック領域に隣接して当該チェック領域を識別するための識別コードが記録されるとともに、各チェック領域群に対応する吐出口列の組合せを示す情報も当該チェック領域群の近傍に記録される。
【0053】
続いて、基準吐出口列311と他の各吐出口列312〜318とにより記録された複数のチェック領域から、操作者により最大濃度チェック領域が特定され(ステップS14)、最大濃度チェック領域に基づいて(正確には、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて)基準吐出口列311に対する吐出口列312〜318の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。なお、最大濃度チェック領域は、濃度測定部5の測定結果に基づいて領域特定部43により特定されてもよい。
【0054】
ところで、幅方向に関して吐出口列315の各吐出口300と基準吐出口列311の吐出口300との間の最短距離が、およそドットの平均直径以上である場合、複数のチェック領域の均一画像において、基準吐出口列311により形成されるドット列と吐出口列315により形成されるドット列とがほとんど重ならなくなる。この場合、図13に示すように、基準吐出口列311によるドット列911と吐出口列315によるドット列915との間の移動方向の距離が基準距離(y/2)(すなわち、繰返しピッチyの半分)でないにもかかわらず、ドット列911とドット列915との重なり面積がほぼ0となる。よって、ドット列911とドット列915との重なり面積が、ドット列911とドット列915との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化せず、1つの最大濃度チェック領域を特定することができなくなる。
【0055】
このような場合には、吐出口列315(以下、「対象吐出口列315」という。)の吐出口300よりも、基準吐出口列311の吐出口300との間における幅方向の最短距離が小さくなる吐出口300を有する吐出口列が中間吐出口列として決定される。本実施の形態では、例えば、吐出口列313が中間吐出口列として決定される。そして、中間吐出口列313と対象吐出口列315とにより複数のチェック領域に均一画像が記録される(ステップS11〜S13)。
【0056】
幅方向に関して中間吐出口列313の各吐出口300と対象吐出口列315の吐出口300との間の最短距離はドットの平均直径未満となり、図14に示すように、中間吐出口列313により形成されるドット列913と、対象吐出口列315により形成されるドット列915との間の移動方向の距離が基準距離(y/2)でない場合において、ドット列913とドット列915とが部分的に重なる。これにより、ドット列913とドット列915との重なり面積が、ドット列913とドット列915との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化し、1つの最大濃度チェック領域を特定することが可能となる(ステップS14)。
【0057】
そして、中間吐出口列313および対象吐出口列315における最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量、および、基準吐出口列311および中間吐出口列313における最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量の和が、対象吐出口列315に対するディレイ量の初期値に加算され、ディレイ量の値が変更される。このように、基準吐出口列311に対する中間吐出口列313の吐出タイミングのずれ、および、中間吐出口列313に対する対象吐出口列315の吐出タイミングのずれに基づいて、基準吐出口列311に対する対象吐出口列315の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。変更後のディレイ量を用いた画像記録動作では、基準吐出口列311が形成するドットと対象吐出口列315が形成するドットとを移動方向の同じ位置に配置することが可能となる。
【0058】
基準吐出口列311を第1吐出口列、中間吐出口列313を第2吐出口列、対象吐出口列315を第3吐出口列と呼ぶと、第1ないし第3吐出口列が移動方向に並ぶ図12のヘッド31aでは、幅方向に関して、第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、第2吐出口列および第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置される。また、第3吐出口列の吐出口と第1吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離が第2吐出口列の吐出口と第1吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離よりも大きくなる。
【0059】
そして、吐出タイミング修正処理では、第1吐出口列および第2吐出口列により記録される複数のチェック領域と同様にして、第2吐出口列および第3吐出口列により他の複数のチェック領域に均一画像が記録され、当該複数のチェック領域から最大濃度チェック領域が特定されるとともに、当該他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定される。入力受付部41では、当該最大濃度チェック領域を特定するための識別コード、および、当該他の最大濃度チェック領域を特定するための識別コードのそれぞれが入力信号として受け付けられ、吐出タイミング修正部42により、当該最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および当該他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングが修正される。これにより、3以上の吐出口列が設けられたインクジェットプリンタ1において、幅方向に関して第1吐出口列の吐出口と第3吐出口列の吐出口とが大きく離れている場合でも、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングの修正を精度よく行うことができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
図7ないし図11の左側では、繰返しピッチyは要素ピッチPの6倍に等しいため、繰返しピッチyの半分である基準距離が要素ピッチPの3倍となるが、繰返しピッチyが要素ピッチPの奇数倍、例えば、7倍である場合に、基準距離が要素ピッチPの3倍または4倍として取り扱われてもよい。
【0062】
図12のヘッド31aでは、対象吐出口列の吐出口と基準吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離が中間吐出口列の吐出口と基準吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離よりも大きくなるのであるならば、対象吐出口列は吐出口列315以外であってよく、中間吐出口列も吐出口列313以外であってよい。
【0063】
ヘッド31,31aでは、移動方向に垂直なX方向に一列に配列された複数の吐出口が1つの吐出口列とされるが、Z方向に垂直かつX方向に対して僅かに傾斜した方向に並ぶ複数の吐出口が1つの吐出口列とされてもよい。この場合、各吐出口列に含まれる複数の吐出口に対するディレイ量を相違させることにより、幅方向に一列に並ぶ複数のドット(ドット列)を形成することが可能となる。なお、吐出タイミング修正処理では、各吐出口に対するディレイ量に、最大濃度チェック領域から導かれる同一の設定シフト量が加算される。以上のように、各吐出口列では、移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて複数の吐出口が配列されていればよい。
【0064】
ヘッドユニットにおける複数のヘッドは、必ずしも幅方向に沿って千鳥状に配置される必要はなく、インクジェットプリンタの設計によっては、例えば、(−X)方向に向かうに従って(+Y)方向に順にずれるように、複数のヘッドが配列されてもよい。
【0065】
インクジェットプリンタ1では、移動方向へと基材9をヘッドユニット3に対して相対的に移動する移動機構が第1モータ部21および第2モータ部22により実現されるが、インクジェットプリンタの設計によっては、ヘッドユニットをY方向に移動する移動機構が設けられてもよい。
【0066】
また、ヘッドユニットにおいて1つのヘッドのみが設けられ、ヘッドユニットがX方向およびY方向に基材に対して相対的に移動することにより、当該基材の全体に画像が記録されてもよい。ただし、基材の全体に画像を高速に記録するには、ヘッドユニットにおいて、基材の幅の全体に亘って複数のヘッドが配列され、基材がヘッドユニットの下方を一回通過するのみで印刷が完了する、いわゆるワンパス印刷が実現されることが好ましい。
【0067】
インクジェットプリンタ1において画像が記録される基材は帯状のものには限定されず、例えば、カット紙、あるいは、ガラス板や金属板等の板状のものであってもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェットプリンタ
4 制御部
5 濃度測定部
9 基材
21,22 モータ部
31,31a ヘッド
41 入力受付部
42 吐出タイミング修正部
43 領域特定部
91 チェック領域
300 吐出口
311〜318 吐出口列
910 ドット
911〜913,915 ドット列
S11〜S15 ステップ
dy 設定シフト量
x 吐出口ピッチ
y 繰返しピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、および、インクジェットプリンタにおけるインクの吐出タイミングを修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材をヘッドに対して相対的に移動しつつ、ヘッドの複数の吐出口からインクの微小液滴を基材に向けて吐出することにより画像を記録するインクジェットプリンタが用いられている。特許文献1では、ノズルの加工誤差等に起因して、あるノズルから吐出されたインクの着弾位置がノズルの配列方向(記録用紙の送り方向と直交する方向)にずれてしまう場合でも、インクジェットヘッドをノズルの配列方向に平行な方向へ移動させながら、吐出タイミングの異なる5種類の駆動信号の何れか1つをアクチュエータに供給することにより、着弾位置がずれているノズルからのインクの吐出タイミングを他のノズルと異ならせて、その着弾位置のずれを補正する手法が開示されている。
【0003】
また、所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタも実用されており、各吐出口列では複数の吐出口が移動方向に垂直な幅方向に一定の吐出口ピッチにて並ぶとともに、幅方向に関して、第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間の中央に、第2吐出口列における1つの吐出口が配置される。このようなインクジェットプリンタでは、各吐出口列における吐出口の間隔が比較的大きく保たれるが、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングを調整することにより、移動方向の各位置において幅方向に一列に並ぶ複数のドットを、第1吐出口列および第2吐出口列により微小なピッチにて(すなわち、高い記録解像度にて)形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングは、理想的には第1吐出口列と第2吐出口列との移動方向の間隔、および、ヘッドと基材との相対移動速度により決定される。しかしながら、実際には、吐出口列毎のインクの吐出特性(例えば、インクの吐出方向や吐出速度)のばらつきがあるため、第1吐出口列に対する第2吐出口列の吐出タイミングを個別に調整する必要がある。吐出タイミングが適切に調整されない場合、第1吐出口列により形成されるドットと、第2吐出口列により形成されるドットとが移動方向にずれてしまい、記録される画像の質が低下してしまう。基材上に所定のテストパターンを記録し、当該テストパターンをルーペや顕微鏡により観察することにより、吐出タイミングを修正することが可能となるが、煩雑な作業を要してしまい、吐出タイミングの修正に長時間を要してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出タイミングの修正を容易に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、所定の移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、前記ヘッドからのインクの吐出を制御する制御部とを備え、前記ヘッドが、第1吐出口列および第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、前記制御部の制御により、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に均一画像が記録され、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記制御部において、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、前記制御部が、前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付ける入力受付部と、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記複数のチェック領域の濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記最大濃度チェック領域を特定する領域特定部とをさらに備え、前記入力受付部が、前記最大濃度チェック領域を示す信号を前記領域特定部から前記入力信号として受け付ける。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、前記制御部が、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像を前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録し、前記入力受付部が、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付け、前記吐出タイミング修正部が、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングを修正する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、前記入力受付部が、各ヘッドに関する前記入力信号を受け付け、前記吐出タイミング修正部が、前記各ヘッドに関して前記吐出タイミングを修正する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正方法であって、前記インクジェットプリンタが、インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構とを備え、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、前記吐出タイミング修正方法が、a)前記移動機構により前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する工程と、b)前記a)工程に並行して、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に、前記ヘッドにより所定の規則にて均一画像を記録する工程と、c)前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定する工程と、d)前記最大濃度チェック領域に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する工程とを備え、前記所定の規則により、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、前記d)工程において、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記吐出タイミングが修正される。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の吐出タイミング修正方法であって、前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、前記b)工程において、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像が前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録され、前記c)工程において、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定され、前記d)工程においてが、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングが修正される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の吐出タイミング修正方法であって、前記インクジェットプリンタが、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、前記d)工程において、各ヘッドに関して前記吐出タイミングが修正される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出タイミングの修正を容易に行うことができる。
【0015】
また、請求項2の発明では、吐出タイミングの修正を自動的に行うことができ、請求項3および6の発明では、幅方向において第1吐出口列の吐出口と第3吐出口列の吐出口とが大きく離れている場合でも、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングの修正を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェットプリンタの構成を示す図である。
【図2】ヘッドユニットを示す平面図である。
【図3】ヘッドを示す平面図である。
【図4】基材上のドットを示す図である。
【図5】基材上のドットを示す図である。
【図6】吐出タイミング修正処理の流れを示す図である。
【図7】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図8】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図9】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図10】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図11】チェック領域への均一画像の記録を説明するための図である。
【図12】ヘッドの他の例を示す平面図である。
【図13】チェック領域を示す図である。
【図14】チェック領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図であり、インクジェットプリンタ1は帯状の基材9に画像を印刷(記録)する。基材9の材料として、例えば、紙、樹脂フィルム、金属薄板が利用される。
【0018】
インクジェットプリンタ1は、印刷前の基材9をロール状に収容する収容部11、収容部11から基材9を引き出す第1モータ部21、基材9に接するローラ231の回転により基材9の移動速度を検出するエンコーダ23、基材9の一方の主面に向けてインクの微小液滴と吐出するヘッドユニット3、ヘッドユニット3の下方(図1中の(−Z)側)に位置する基材9を引き出す第2モータ部22、印刷後の基材9をロール状に回収する回収部12、並びに、インクジェットプリンタ1の全体動作を制御する制御部4を備える。制御部4は、図示省略の入力部を介して操作者により入力される入力信号を受け付ける入力受付部41、および、後述の吐出口列における吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部42を有する。なお、図1中にて破線にて示す濃度測定部5および領域特定部43は後述の動作例にて用いられる。
【0019】
第1モータ部21は、補助ローラ211により外周面に巻き付けられた基材9を送るメインローラ212、および、メインローラ212を回転するモータ213を備える。同様に、第2モータ部22は、補助ローラ221により外周面に巻き付けられた基材9を送るメインローラ222、および、メインローラ222を回転するモータ223を備える。
【0020】
インクジェットプリンタ1では、エンコーダ23にて取得された基材9の移動速度や、図示省略の張力検出機構にて検出された基材9の張力に基づいて、制御部4により第1モータ部21および第2モータ部22の回転速度が調整され、基材9の張力や移動速度がおよそ一定に保たれる。以下の説明では、ヘッドユニット3の下方に位置する基材9の移動方向である図1中のY方向を単に移動方向という。
【0021】
図2はヘッドユニット3の一部を示す平面図であり、図2では図1の移動方向を上下方向としてヘッドユニット3を図示している。図1に示すように、ヘッドユニット3の下方((−Z)側)では基材9の主面の法線方向がZ方向に平行であり、図2のヘッドユニット3では、移動方向および主面の法線方向に垂直なX方向(基材9の幅に対応する方向であり、以下、「幅方向」という。)に沿って、同様の構成の複数のヘッド31が千鳥状に配列される。実際には、複数のヘッド31は、幅方向に関して基材9の幅全体に亘って配列され、基材9がヘッドユニット3の下方を一回通過するのみで印刷が完了する、いわゆるワンパス(シングルパス)印刷が実現される。
【0022】
図3は、1つのヘッド31を示す平面図である。図3に示すように、各ヘッド31は第1および第2吐出口列311,312を有し、各吐出口列311,312は、幅方向(X方向)に関して一定のピッチx(以下、「吐出口ピッチx」という。)にて並ぶ複数の吐出口300の集合である。第1および第2吐出口列311,312は移動方向(Y方向)に並び、幅方向に関して、(−Y)側の第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に、(+Y)側の第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置される。すなわち、ヘッド31の全体では、複数の吐出口300が幅方向に吐出口ピッチxの1/2倍のピッチにて並んでいる。ヘッド31における複数の吐出口300は、ヘッドユニット3の下方における基材9の主面に平行な(すなわち、XY平面に平行な)同一面上に配置される。
【0023】
図1のインクジェットプリンタ1における画像記録動作では、基材9の移動方向への連続的な移動に並行して、制御部4により各ヘッド31に対するインクの吐出制御が行われる。具体的には、基材9が一定距離だけ移動する毎に、制御部4において、エンコーダ23からの信号に基づいて吐出パルス信号が生成され、吐出パルス信号の生成から個別のディレイ量だけ遅延して各吐出口列311,312からインクが吐出される。
【0024】
このとき、理想的な画像記録では、図4に示すように、ヘッド31の第1吐出口列311が形成するドット910(図4中にて細線の円にて示す。後述の図5、並びに、図7ないし図11において同様。)と第2吐出口列312が形成するドット910(図4中にて太線の円にて示す。後述の図5、並びに、図7ないし図11において同様。)とが移動方向の同じ位置に配置される。換言すると、第1吐出口列311によるドット910と第2吐出口列312によるドット910とを移動方向の同じ位置に形成するためのディレイ量が、第1吐出口列311および第2吐出口列312に対して設定される。既述のように、幅方向に関して、第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に、第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置されるため、理想的な画像記録では、第1吐出口列311の吐出口300により形成されるドット910と、第2吐出口列312の吐出口300により形成されるドット910とが、幅方向に伸びる直線上にて交互に配列される。
【0025】
一方、第1吐出口列311および第2吐出口列312に対して適切なディレイ量が設定されない場合には、図5に示すように、第1吐出口列311が形成するドット910と、第2吐出口列312が形成するドット910とが、移動方向において僅かにずれてしまい、画像のエッジがギザギザになってしまう。
【0026】
以下、第1吐出口列311および第2吐出口列312がドットを移動方向の同じ位置に形成するためのディレイ量を求める、すなわち、ヘッド31の基材9に対する相対移動方向に関して前側の第1吐出口列311に対し、後側の第2吐出口列312の吐出タイミングを修正する処理(以下、「吐出タイミング修正処理」という。)について図6を参照して説明する。なお、吐出タイミング修正処理は、インクジェットプリンタ1の組み立て直後や、故障したヘッドの取り替え直後等に行われる。
【0027】
吐出タイミング修正処理では、まず、図1の第1モータ部21および第2モータ部22がONとされ、基材9の移動方向への連続的な移動が開始される(ステップS11)。制御部4では、基材9の移動に並行してヘッド31からのインクの吐出が所定の規則に従って制御され、それぞれが基材9上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に画像が記録される(ステップS12)。後述するように、各チェック領域の全体において均一な濃度の画像が記録されるため、以下、チェック領域に記録される画像を「均一画像」という。
【0028】
図7ないし図11は、複数のチェック領域への均一画像の記録を説明するための図であり、図7ないし図11の左側は、均一画像の記録前における基材9上のチェック領域91の一部を示し、右側は均一画像の記録後におけるチェック領域91の一部を示している。また、図7ないし図11の左側および右側では、ディレイ量の最小可変単位に相当する要素ピッチPにて、幅方向(X方向)および移動方向(Y方向)に配列される複数の正方形領域90を細線にて示している。
【0029】
複数のチェック領域91に均一画像を記録する際には、幅方向に吐出口ピッチx、移動方向に所定の繰返しピッチy(図7参照)にて配列される複数の位置が、第1吐出口列311によりドットを形成すべき位置(図7ないし図11の左側において内部に平行斜線を付す矩形にて示す位置であり、以下、「第1指定位置」という。)921として指定される。また、複数の第1指定位置921を幅方向にdx、移動方向に(y/2+dy)(図7参照)だけ平行移動させた複数の位置が、第2吐出口列312がドットを形成すべき位置(図7ないし図11の左側において太線の矩形にて示す位置であり、以下、「第2指定位置」という。)922として指定される。
【0030】
本実施の形態では、図7ないし図11の左側に示すように、吐出口ピッチxは要素ピッチPの8倍に等しく、繰返しピッチyは要素ピッチPの6倍に等しい。また、幅方向に関して第1吐出口列311において互いに隣接する2つの吐出口300の間の中央に第2吐出口列312の1つの吐出口300が配置されるため、dxは吐出口ピッチxの半分(要素ピッチPの4倍)である。
【0031】
既述のように、移動方向に関して、第2指定位置922は第1指定位置921に対して(y/2+dy)だけ離れるため、第2指定位置922の第1指定位置921に対する移動方向のずれ量は、繰返しピッチyの半分である基準距離を設定シフト量dy(図7の左側のみにおいて太線の矢印にて示す。)だけ変更した距離として指定される。設定シフト量dyは複数のチェック領域91において漸次変更され、図7ないし図11の左側における設定シフト量dyは、(−Y)側から(+Y)側に向かう方向を正として、それぞれ要素ピッチPの(+2)倍、(+1)倍、0倍、(−1)倍、(−2)倍である。
【0032】
図9の左側に示すように、設定シフト量dyが要素ピッチPの0倍である場合に、移動方向に関して各第2指定位置922が、隣接する2つの第1指定位置921の中央に配置され、第2指定位置922と第1指定位置921との間の最短距離が最大となる。なお、繰返しピッチyおよび設定シフト量dyは適宜変更されてよい。
【0033】
制御部4では、各ヘッド31において第1吐出口列311および第2吐出口列312のそれぞれに対して予め設定されるディレイ量の初期値を用いつつ、各チェック領域91における複数の第1指定位置921に第1吐出口列311によりドットを形成し、複数の第2指定位置922に第2吐出口列312によりドットを形成するためのインクの吐出制御が行われる。
【0034】
図7ないし図11の左側に示す規則により、チェック領域91では、図7ないし図11の右側に示すように、幅方向に並ぶ複数のドット910をドット列として、第1吐出口列311により形成される第1ドット列911と、第1ドット列911から移動方向にずれて第2吐出口列312により形成される第2ドット列912との組合せが移動方向に一定の繰返しピッチyにて繰り返され、チェック領域91の全体において均一なパターンの画像(すなわち、均一画像)が記録される。また、複数のチェック領域91に対し漸次変更した設定シフト量dyが用いられる。複数のチェック領域91に均一画像が記録されると、第1モータ部21および第2モータ部22がOFFとされ、基材9の移動方向への移動が停止される(ステップS13)。
【0035】
図7ないし図11の右側では、第1ドット列911に含まれるドット910の中心(すなわち、液滴の着弾位置であり、以下、「第1着弾位置」という。)931を内部に平行斜線を付す矩形にて示し、第2ドット列912に含まれるドット910の中心(すなわち、液滴の着弾位置であり、以下、「第2着弾位置」という。)932を太線の矩形にて示す。
【0036】
図7ないし図11のそれぞれでは、複数の第1着弾位置931の配列に対する複数の第2着弾位置932の配列の相対位置が、複数の第1指定位置921の配列に対する複数の第2指定位置922の配列の相対位置よりも要素ピッチPだけ(−Y)側にずれている(すなわち、第2着弾位置932のずれ量が要素ピッチPの(−1)倍である。)。したがって、複数のチェック領域91のうち、指定される設定シフト量dyが要素ピッチPの(+1)倍である図8の右側のチェック領域91では、移動方向に関して各第2着弾位置932が隣接する2つの第1着弾位置931の中央に配置され、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離が繰返しピッチyの半分(すなわち、基準距離)となる。
【0037】
一方、他の複数のチェック領域91では、設定シフト量dyが要素ピッチPの(+1)倍から離れるに従って、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離の基準距離からのずれ量が増大し(すなわち、第1ドット列911と第2ドット列912との間の最短距離が小さくなり)、第1ドット列911と第2ドット列912とが重なる領域の面積(以下、「重なり面積」という。)が増大する。このように、複数のチェック領域91では、第1ドット列911と第2ドット列912との重なり面積が、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化する。なお、図7ないし図11の右側では、チェック領域91の一部のみを図示しており、実際のチェック領域91には、多数のドット910が配列される。
【0038】
また、各チェック領域91に対して幅方向に隣接した領域には、当該チェック領域91を識別するための番号、文字あるいは記号等(以下、「識別コード」という。)が記録されており(各吐出口列の一部の吐出口が識別コードの記録に割り当てられる。)、本実施の形態では、設定シフト量dyがそれぞれ要素ピッチPの(+2)倍、(+1)倍、0倍、(−1)倍、(−2)倍である図7ないし図11の右側のチェック領域91に対して、「+2」、「+1」、「0」、「−1」、「−2」が識別コードとして記録される。
【0039】
続いて、基材9上の複数のチェック領域91が操作者により観察される。図7ないし図11の右側に示す複数のチェック領域91では、第1ドット列911と第2ドット列912との重なり面積が最小となる図8の右側のチェック領域91が、濃度が最大である最大濃度チェック領域として操作者により特定される(ステップS14)。最大濃度チェック領域91では、複数のチェック領域91のうち均一画像におけるドットの面積率(すなわち、チェック領域91においてドットが占める面積の割合)が最大である。なお、基材9上では、設定シフト量dyの昇順または降順にて複数のチェック領域91が移動方向に連続的に配列され、操作者において濃度が漸次変化する均一画像が観察されるため、最大濃度チェック領域91は容易に特定可能である。図7ないし図11の例では、図11の右側のチェック領域91における濃度が最小となる。
【0040】
最大濃度チェック領域91が特定されると、最大濃度チェック領域91に対応する識別コード「+1」が入力部を介して操作者により入力され、制御部4の入力受付部41において、入力信号として受け付けられる。このとき、制御部4の表示部(図示省略)では、操作者による入力を補助するために、ヘッドユニット3における全てのヘッド31に関して、最大濃度チェック領域91に対応する識別コードを入力するための入力欄が設けられており、各ヘッド31に対する識別コードの入力が操作者により行われる。
【0041】
吐出タイミング修正部42では、入力信号に基づいて最大濃度チェック領域91が特定される。図7ないし図11の右側の均一画像を記録するヘッド31に関しては、識別コード「+1」の入力信号に基づいて、設定シフト量が要素ピッチPの(+1)倍であるチェック領域91が最大濃度チェック領域として特定される。このように、入力信号は、吐出タイミング修正部42において複数のチェック領域91から最大濃度チェック領域を特定するための信号である。
【0042】
吐出タイミング修正部42では、さらに、最大濃度チェック領域91に対応する設定シフト量に基づいて当該ヘッド31における第2吐出口列312に対するディレイ量が初期値から変更される。具体的には、図8の右側のチェック領域91が最大濃度チェック領域として特定されたヘッド31では、最大濃度チェック領域91に対応する設定シフト量である要素ピッチPの(+1)倍(に相当する値)が、第2吐出口列312に対するディレイ量の初期値に加算され、ディレイ量の値が変更される。これにより、第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。
【0043】
変更後のディレイ量を用いた画像記録動作では、第2吐出口列312により形成される第2ドット列の位置が、ディレイ量の初期値を用いる場合における位置から(+Y)側に要素ピッチPの1倍だけシフトする。したがって、図4に示すように、第1吐出口列311が形成するドット910と第2吐出口列312が形成するドット910とが移動方向の同じ位置に配置される。
【0044】
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1では、各チェック領域91に均一画像が記録される際に、制御部4において、第1ドット列911と第2ドット列912との間の距離として、繰返しピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、複数のチェック領域91に対して設定シフト量を漸次変更しつつ均一画像が記録される。このような複数のチェック領域91では、操作者がルーペや顕微鏡を用いることなく、最大濃度チェック領域を目視にて容易に特定することができる。最大濃度チェック領域が特定されると、操作者により最大濃度チェック領域の識別コードが入力されて、入力信号として入力受付部41にて受け付けられる。吐出タイミング修正部42では、識別コードから最大濃度チェック領域が特定され、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される。これにより、インクジェットプリンタ1では、高精度な吐出タイミングの修正を容易にかつ短時間にて行うことができる。
【0045】
また、インクジェットプリンタ1では、幅方向に関して基材9の全体に亘って配列される複数のヘッド31が設けられ、入力受付部41において、各ヘッド31に関する入力信号が受け付けられるとともに、吐出タイミング修正部42により、各ヘッド31に関して第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される。これにより、微細なピッチにてドットが配列されるワンパス印刷用のインクジェットプリンタにおいて、吐出タイミングの修正を精度よくかつ容易に行うことができる。また、インクジェットプリンタ1において多数のヘッド31が配列される場合であっても、多数のヘッド31の吐出タイミングの修正を短時間にて行うことができる。
【0046】
次に、インクジェットプリンタ1の他の動作例について説明する。本動作例では、図1中にて破線にて示す濃度測定部5および領域特定部43が利用される。ヘッドユニット3の近傍に設けられる濃度測定部5は、2次元配列された撮像素子を有するカメラ、または、撮像素子が幅方向に1次元配列されたスキャナである。
【0047】
インクジェットプリンタ1では、上記動作例と同様の処理による複数のチェック領域への均一画像の記録に並行して(図6:ステップS11〜S13)、ヘッドユニット3の(+)側に配置される濃度測定部5により複数のチェック領域の濃度(画像濃度)が測定される。濃度測定部5による測定結果は制御部4へと入力され、領域特定部43において、測定結果に基づいて最大濃度チェック領域が特定される(ステップS14)。入力受付部41では、最大濃度チェック領域を示す信号が領域特定部43から入力されて入力信号として受け付けられ、吐出タイミング修正部42において、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。
【0048】
以上のように、濃度測定部5を有するインクジェットプリンタ1では、濃度測定部5による測定結果に基づいて最大濃度チェック領域が特定されるため、第1吐出口列311に対する第2吐出口列312の吐出タイミングの修正を自動的に行うことが可能となる。
【0049】
なお、濃度測定部5によりチェック領域の濃度を測定する場合には、複数のチェック領域が互いに離れて形成される場合であっても、最大濃度チェック領域を精度よく特定することが可能となる。また、濃度測定部5ではチェック領域の濃度が特定可能であればよいため、読み取り解像度の低い安価なものが利用可能である。さらに、濃度測定部5は、インクジェットプリンタ1の組み立て時や、故障したヘッドの取り替え時のみにインクジェットプリンタ1に設けられてもよい。換言すると、濃度測定部5がインクジェットプリンタ1から取り外し可能とされ、吐出タイミング修正処理を行う際のみにインクジェットプリンタ1に取り付けられてもよい。また、印刷結果を独立したスキャナで読み込み、該スキャナに接続されたコンピュータで調整データを作成し、インクジェットプリンタに送信してもよい。
【0050】
図12は、ヘッドの他の例を示す平面図である。図12のヘッド31aは、移動方向(Y方向)に配列される複数の(図12では、8個の)吐出口列311〜318を有する。8個の吐出口列311〜318のそれぞれでは一定の吐出口ピッチxにて複数の吐出口300が幅方向(X方向)に一列に配列され、幅方向に関して、各吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口300の間に、他の7個の吐出口列にそれぞれ含まれる7個の吐出口300が吐出口ピッチxの1/8倍の間隔にて順に配置される。
【0051】
図12のヘッド31aを有するインクジェットプリンタ1において、吐出タイミング修正処理を行う際には、上記実施の形態と同様にして、最も(−Y)側の吐出口列311(以下、「基準吐出口列311」という。)に対して、残りの吐出口列311〜318のそれぞれの吐出タイミングが修正される。
【0052】
具体的には、基準吐出口列311と、他の各吐出口列312〜318とにより複数のチェック領域に均一画像が記録される(図6:ステップS11〜S13)。すなわち、2つの吐出口列により形成される複数のチェック領域をチェック領域群として、7個のチェック領域群が形成される。なお、上記動作例と同様に、各チェック領域に隣接して当該チェック領域を識別するための識別コードが記録されるとともに、各チェック領域群に対応する吐出口列の組合せを示す情報も当該チェック領域群の近傍に記録される。
【0053】
続いて、基準吐出口列311と他の各吐出口列312〜318とにより記録された複数のチェック領域から、操作者により最大濃度チェック領域が特定され(ステップS14)、最大濃度チェック領域に基づいて(正確には、最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて)基準吐出口列311に対する吐出口列312〜318の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。なお、最大濃度チェック領域は、濃度測定部5の測定結果に基づいて領域特定部43により特定されてもよい。
【0054】
ところで、幅方向に関して吐出口列315の各吐出口300と基準吐出口列311の吐出口300との間の最短距離が、およそドットの平均直径以上である場合、複数のチェック領域の均一画像において、基準吐出口列311により形成されるドット列と吐出口列315により形成されるドット列とがほとんど重ならなくなる。この場合、図13に示すように、基準吐出口列311によるドット列911と吐出口列315によるドット列915との間の移動方向の距離が基準距離(y/2)(すなわち、繰返しピッチyの半分)でないにもかかわらず、ドット列911とドット列915との重なり面積がほぼ0となる。よって、ドット列911とドット列915との重なり面積が、ドット列911とドット列915との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化せず、1つの最大濃度チェック領域を特定することができなくなる。
【0055】
このような場合には、吐出口列315(以下、「対象吐出口列315」という。)の吐出口300よりも、基準吐出口列311の吐出口300との間における幅方向の最短距離が小さくなる吐出口300を有する吐出口列が中間吐出口列として決定される。本実施の形態では、例えば、吐出口列313が中間吐出口列として決定される。そして、中間吐出口列313と対象吐出口列315とにより複数のチェック領域に均一画像が記録される(ステップS11〜S13)。
【0056】
幅方向に関して中間吐出口列313の各吐出口300と対象吐出口列315の吐出口300との間の最短距離はドットの平均直径未満となり、図14に示すように、中間吐出口列313により形成されるドット列913と、対象吐出口列315により形成されるドット列915との間の移動方向の距離が基準距離(y/2)でない場合において、ドット列913とドット列915とが部分的に重なる。これにより、ドット列913とドット列915との重なり面積が、ドット列913とドット列915との間の距離の基準距離からのずれ量に依存して変化し、1つの最大濃度チェック領域を特定することが可能となる(ステップS14)。
【0057】
そして、中間吐出口列313および対象吐出口列315における最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量、および、基準吐出口列311および中間吐出口列313における最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量の和が、対象吐出口列315に対するディレイ量の初期値に加算され、ディレイ量の値が変更される。このように、基準吐出口列311に対する中間吐出口列313の吐出タイミングのずれ、および、中間吐出口列313に対する対象吐出口列315の吐出タイミングのずれに基づいて、基準吐出口列311に対する対象吐出口列315の吐出タイミングが修正される(ステップS15)。変更後のディレイ量を用いた画像記録動作では、基準吐出口列311が形成するドットと対象吐出口列315が形成するドットとを移動方向の同じ位置に配置することが可能となる。
【0058】
基準吐出口列311を第1吐出口列、中間吐出口列313を第2吐出口列、対象吐出口列315を第3吐出口列と呼ぶと、第1ないし第3吐出口列が移動方向に並ぶ図12のヘッド31aでは、幅方向に関して、第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、第2吐出口列および第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置される。また、第3吐出口列の吐出口と第1吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離が第2吐出口列の吐出口と第1吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離よりも大きくなる。
【0059】
そして、吐出タイミング修正処理では、第1吐出口列および第2吐出口列により記録される複数のチェック領域と同様にして、第2吐出口列および第3吐出口列により他の複数のチェック領域に均一画像が記録され、当該複数のチェック領域から最大濃度チェック領域が特定されるとともに、当該他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定される。入力受付部41では、当該最大濃度チェック領域を特定するための識別コード、および、当該他の最大濃度チェック領域を特定するための識別コードのそれぞれが入力信号として受け付けられ、吐出タイミング修正部42により、当該最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および当該他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングが修正される。これにより、3以上の吐出口列が設けられたインクジェットプリンタ1において、幅方向に関して第1吐出口列の吐出口と第3吐出口列の吐出口とが大きく離れている場合でも、第1吐出口列に対する第3吐出口列の吐出タイミングの修正を精度よく行うことができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
図7ないし図11の左側では、繰返しピッチyは要素ピッチPの6倍に等しいため、繰返しピッチyの半分である基準距離が要素ピッチPの3倍となるが、繰返しピッチyが要素ピッチPの奇数倍、例えば、7倍である場合に、基準距離が要素ピッチPの3倍または4倍として取り扱われてもよい。
【0062】
図12のヘッド31aでは、対象吐出口列の吐出口と基準吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離が中間吐出口列の吐出口と基準吐出口列の吐出口との間における幅方向の最短距離よりも大きくなるのであるならば、対象吐出口列は吐出口列315以外であってよく、中間吐出口列も吐出口列313以外であってよい。
【0063】
ヘッド31,31aでは、移動方向に垂直なX方向に一列に配列された複数の吐出口が1つの吐出口列とされるが、Z方向に垂直かつX方向に対して僅かに傾斜した方向に並ぶ複数の吐出口が1つの吐出口列とされてもよい。この場合、各吐出口列に含まれる複数の吐出口に対するディレイ量を相違させることにより、幅方向に一列に並ぶ複数のドット(ドット列)を形成することが可能となる。なお、吐出タイミング修正処理では、各吐出口に対するディレイ量に、最大濃度チェック領域から導かれる同一の設定シフト量が加算される。以上のように、各吐出口列では、移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて複数の吐出口が配列されていればよい。
【0064】
ヘッドユニットにおける複数のヘッドは、必ずしも幅方向に沿って千鳥状に配置される必要はなく、インクジェットプリンタの設計によっては、例えば、(−X)方向に向かうに従って(+Y)方向に順にずれるように、複数のヘッドが配列されてもよい。
【0065】
インクジェットプリンタ1では、移動方向へと基材9をヘッドユニット3に対して相対的に移動する移動機構が第1モータ部21および第2モータ部22により実現されるが、インクジェットプリンタの設計によっては、ヘッドユニットをY方向に移動する移動機構が設けられてもよい。
【0066】
また、ヘッドユニットにおいて1つのヘッドのみが設けられ、ヘッドユニットがX方向およびY方向に基材に対して相対的に移動することにより、当該基材の全体に画像が記録されてもよい。ただし、基材の全体に画像を高速に記録するには、ヘッドユニットにおいて、基材の幅の全体に亘って複数のヘッドが配列され、基材がヘッドユニットの下方を一回通過するのみで印刷が完了する、いわゆるワンパス印刷が実現されることが好ましい。
【0067】
インクジェットプリンタ1において画像が記録される基材は帯状のものには限定されず、例えば、カット紙、あるいは、ガラス板や金属板等の板状のものであってもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェットプリンタ
4 制御部
5 濃度測定部
9 基材
21,22 モータ部
31,31a ヘッド
41 入力受付部
42 吐出タイミング修正部
43 領域特定部
91 チェック領域
300 吐出口
311〜318 吐出口列
910 ドット
911〜913,915 ドット列
S11〜S15 ステップ
dy 設定シフト量
x 吐出口ピッチ
y 繰返しピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、
所定の移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、
前記ヘッドからのインクの吐出を制御する制御部と、
を備え、
前記ヘッドが、第1吐出口列および第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、
前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、
前記制御部の制御により、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に均一画像が記録され、
各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、
前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記制御部において、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、
前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、
前記制御部が、
前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付ける入力受付部と、
前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記複数のチェック領域の濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記最大濃度チェック領域を特定する領域特定部と、
をさらに備え、
前記入力受付部が、前記最大濃度チェック領域を示す信号を前記領域特定部から前記入力信号として受け付けることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、
前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、
前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、
前記制御部が、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像を前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録し、
前記入力受付部が、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付け、
前記吐出タイミング修正部が、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングを修正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、
前記入力受付部が、各ヘッドに関する前記入力信号を受け付け、
前記吐出タイミング修正部が、前記各ヘッドに関して前記吐出タイミングを修正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正方法であって、
前記インクジェットプリンタが、
インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、
前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、
を備え、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、
前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、
前記吐出タイミング修正方法が、
a)前記移動機構により前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する工程と、
b)前記a)工程に並行して、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に、前記ヘッドにより所定の規則にて均一画像を記録する工程と、
c)前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定する工程と、
d)前記最大濃度チェック領域に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する工程と、
を備え、
前記所定の規則により、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、
前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、
前記d)工程において、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【請求項6】
請求項5に記載の吐出タイミング修正方法であって、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、
前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、
前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、
前記b)工程において、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像が前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録され、
前記c)工程において、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定され、
前記d)工程においてが、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の吐出タイミング修正方法であって、
前記インクジェットプリンタが、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、
前記d)工程において、各ヘッドに関して前記吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、
所定の移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、
前記ヘッドからのインクの吐出を制御する制御部と、
を備え、
前記ヘッドが、第1吐出口列および第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、
前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、
前記制御部の制御により、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に均一画像が記録され、
各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、
前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記制御部において、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、
前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、
前記制御部が、
前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付ける入力受付部と、
前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記複数のチェック領域の濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部による測定結果に基づいて前記最大濃度チェック領域を特定する領域特定部と、
をさらに備え、
前記入力受付部が、前記最大濃度チェック領域を示す信号を前記領域特定部から前記入力信号として受け付けることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、
前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、
前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、
前記制御部が、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像を前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録し、
前記入力受付部が、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域を特定するための入力信号を受け付け、
前記吐出タイミング修正部が、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングを修正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、
前記入力受付部が、各ヘッドに関する前記入力信号を受け付け、
前記吐出タイミング修正部が、前記各ヘッドに関して前記吐出タイミングを修正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
所定の移動方向に並ぶ第1吐出口列および第2吐出口列を有するインクジェットプリンタにおいて、前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する吐出タイミング修正方法であって、
前記インクジェットプリンタが、
インクの微小液滴を基材に向けて吐出するヘッドと、
前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する移動機構と、
を備え、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列を有し、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列のそれぞれが、前記移動方向に交差する方向に関して一定の吐出口ピッチにて並ぶ複数の吐出口であり、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列が、前記移動方向に並び、
前記移動方向に垂直な幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列における1つの吐出口が配置され、
前記吐出タイミング修正方法が、
a)前記移動機構により前記移動方向へと前記基材を前記ヘッドに対して相対的に移動する工程と、
b)前記a)工程に並行して、それぞれが前記基材上における所定サイズの領域である複数のチェック領域に、前記ヘッドにより所定の規則にて均一画像を記録する工程と、
c)前記複数のチェック領域のうち、均一画像におけるドットの面積率が最大となる最大濃度チェック領域を特定する工程と、
d)前記最大濃度チェック領域に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第2吐出口列の吐出タイミングを修正する工程と、
を備え、
前記所定の規則により、各チェック領域の均一画像において、前記幅方向に並ぶ複数のドットをドット列として、前記第1吐出口列により形成される第1ドット列と、前記第1ドット列から前記移動方向にずれて前記第2吐出口列により形成される第2ドット列との組合せが前記移動方向に一定のピッチにて繰り返され、前記各チェック領域に均一画像が記録される際に、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離として、前記ピッチの半分である基準距離を設定シフト量だけ変更した距離が指定され、前記複数のチェック領域に対し前記設定シフト量が漸次変更され、
前記複数のチェック領域において前記第1ドット列と前記第2ドット列との重なり面積が、前記第1ドット列と前記第2ドット列との間の距離の前記基準距離からのずれ量に依存して変化し、
前記d)工程において、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【請求項6】
請求項5に記載の吐出タイミング修正方法であって、
前記ヘッドが、前記第1吐出口列および前記第2吐出口列と共に前記移動方向に並ぶ第3吐出口列をさらに有し、
前記幅方向に関して、前記第1吐出口列において互いに隣接する2つの吐出口の間に、前記第2吐出口列および前記第3吐出口列のそれぞれにおける1つの吐出口が配置され、
前記第3吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離が前記第2吐出口列の吐出口と前記第1吐出口列の吐出口との間における前記幅方向の最短距離よりも大きく、
前記b)工程において、前記複数のチェック領域と同様にして他の複数のチェック領域に均一画像が前記第2吐出口列および前記第3吐出口列により記録され、
前記c)工程において、前記他の複数のチェック領域から他の最大濃度チェック領域が特定され、
前記d)工程においてが、前記最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量および前記他の最大濃度チェック領域に対応する設定シフト量に基づいて前記第1吐出口列に対する前記第3吐出口列の吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の吐出タイミング修正方法であって、
前記インクジェットプリンタが、前記ヘッドを含むとともに、前記幅方向に関して前記基材の全体に亘って配列される複数のヘッドを備え、
前記複数のヘッドのそれぞれが、前記ヘッドと同様の構成であり、
前記d)工程において、各ヘッドに関して前記吐出タイミングが修正されることを特徴とする吐出タイミング修正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−201094(P2012−201094A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70616(P2011−70616)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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