説明

インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの印刷媒体徐電方法

【課題】搬送ベルト帯電のための印加電圧の極性変化の周期や電位を変化させた場合でも印刷媒体表面の電荷を効果的に除去する。
【解決手段】印刷媒体帯電ローラ16への印加電圧がゼロのとき、当該印刷媒体帯電ローラ16に当接している印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位を当該印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧の分圧から検出し、検出された印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位が抑制されるように印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(印加電圧)を制御することにより、搬送ベルト帯電のための搬送ベルトAC帯電パターン信号(印加電圧)の極性変化の周期Ltや電位Vbpを変化させた場合でも印刷媒体2の表面の電荷を効果的に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙やOHPシート等の印刷媒体を搬送し、例えば複数色の液体インクの微粒子(ドット)をそれらの印刷媒体上に吐出して所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタに関するものであり、特に搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジとインク吐出ヘッド(一般にインクジェットヘッドという)とが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらアクチュエータを駆動することにより、そのインクジェットヘッドに形成されているノズルから液体インクの微粒子(インク滴)を吐出することで、印刷媒体上に微小なインクドットを形成して所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎のインクジェットヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
【0003】
また、このようにキャリッジ上のインクジェットヘッドを印刷媒体搬送方向と交差する方向(印刷媒体の幅方向)に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するためにインクジェットヘッドを数十回から100回以上も往復運動させる必要がある。これに対し、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺のインクジェットヘッド(一体である必要はない)を配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを印刷用紙の幅方向に移動させる必要がなく、所謂1パスでの印刷が可能となるため、高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス型プリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型プリンタ」と呼んでいる。
【0004】
ところで、この種のラインヘッド型インクジェットプリンタでは、搬送用の搬送ベルトに印刷媒体を吸着して搬送する構成がよく用いられている。搬送ベルトに印刷媒体を効率よく吸着するためには、搬送ベルトの表面を交互に逆の極性の電位に帯電し、搬送ベルトの隣り合う逆極性の電位と印刷媒体との間で静電気力の等価回路を構成して印刷媒体を吸着するのが望ましく、一般的には搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接し、この帯電ローラへの印加電圧を交互に逆の極性にする、所謂交番電圧とすることで、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電する。
【0005】
このような印刷媒体の搬送ベルトへの静電気力吸着では、印刷媒体内で誘電分極が発生し、印刷媒体の搬送ベルト側の裏面側には搬送ベルトの帯電電位の逆極性の電荷が集まり、搬送ベルトと反対側の表面側には、その逆の極性の電荷が集まる。つまり、印刷媒体の表面も帯電状態となる。しかしながら、印刷媒体の表面が帯電状態となると、インクジェットヘッドから吐出されるインク滴が電界の影響を受けて目標位置に吐出できない恐れがある。そこで、下記特許文献1に挙げるインクジェットプリンタでは、印刷媒体表面の電荷を除去するための徐電手段として、一定の周期で帯電された搬送ベルトの帯電電位と逆極性の電圧を印加する加圧ローラや導電ブラシを設けている。具体的には、徐電手段である加圧ローラや導電ブラシを搬送ベルト帯電周期の1.5倍に相当する搬送ベルト移動距離だけ離して搬送ベルト帯電ローラの下流側に配設し、両者に同じ交番電圧信号(徐電手段には分圧を供給して電位を小さくしてある)を供給する。即ち、加圧ローラや導電ブラシによる印刷媒体への印加電圧も一定の周期で逆極性になっている。
【特許文献1】特開2005−324877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、印刷媒体の抵抗値は、印刷媒体の種類は勿論、温度や湿度によっても異なる。印刷媒体の抵抗値が異なると、搬送ベルトの帯電状態が同じであっても、印刷媒体の吸着力が異なる。具体的には、印刷媒体の抵抗値が大きいと印刷媒体と搬送ベルトとの間(隙間)に蓄積される単位時間当たりの電荷量が小さいので吸着力が弱く、印刷媒体の抵抗値が小さいと吸着力が強くなる。従って、印刷媒体の搬送ベルトへの静電気力による吸着力を安定させるためには、印加電圧の極性変化の周期や電位を、印刷媒体の種類、温度、湿度などに応じて変化させなければならない。しかしながら、前記特許文献1に記載される従来技術では、加圧ローラや導電ブラシからなる徐電手段を特定の位置に固定し、搬送ベルト帯電ローラへの印加電圧(の分圧)を徐電手段に印加しているだけなので、印加電圧の極性変化の周期や電位を変更すると印刷媒体表面の電荷を効果的に除去できない。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、搬送ベルト帯電のための印加電圧の極性変化の周期や電位を変化させた場合でも印刷媒体表面の電荷を効果的に除去することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタは、搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出する表面電位検出手段と、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接する印刷媒体帯電ローラと、前記表面電位検出手段で検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御する印刷媒体表面電位制御手段とを備え、前記表面電位検出手段は、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの前記印刷媒体帯電ローラの発生電圧から当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出することを特徴とするものである。
【0009】
この発明1に係るインクジェットプリンタによれば、搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うにあたり、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出し、検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御する構成としたため、搬送ベルト帯電のための印加電圧の極性変化の周期や電位を変化させた場合でも印刷媒体表面の電荷を効果的に除去することができる。また、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラの発生電圧から当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出する構成としたため、個別の表面電位センサが不要となり、その分だけ構成を簡素化、装置の小型化、コストの低廉化が可能となる。
【0010】
[発明2]また、発明2のインクジェットプリンタは、前記発明1のインクジェットプリンタにおいて、前記印刷媒体表面電位制御手段の出力と印刷媒体帯電ローラとの間に抵抗を介装すると共に、前記印刷媒体帯電ローラと接地との間に直列抵抗を介装して分圧回路を構成し、前記表面電位検出手段は、前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧がゼロで且つ印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラの発生電圧の分圧回路の出力から当該印刷媒体帯電ローラに当接している印刷媒体の表面電位を検出するものであることを特徴とするものである。
【0011】
この発明2に係るインクジェットプリンタによれば、印刷媒体帯電ローラへの印加電圧がゼロで且つ印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラの発生電圧の分圧回路の出力から当該印刷媒体帯電ローラに当接している印刷媒体の表面電位を検出する構成としたため、印刷媒体の表面電位を適切に検出することが可能となり、搬送ベルト帯電のための印加電圧の電位を変化させた場合でも、印刷媒体帯電ローラへの印加電圧の電位を容易且つ適切に設定することができる。
【0012】
[発明3]また、発明3のインクジェットプリンタは、前記発明1又は2のインクジェットプリンタにおいて、前記表面電位検出手段による印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位の検出は、少なくとも印刷媒体の種類が変更されたときに行われることを特徴とするものである。
この発明3に係るインクジェットプリンタによれば、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位の検出は、少なくとも印刷媒体の種類が変更されたときに行われる構成としたため、印刷媒体の種類に応じて搬送ベルト帯電のための印加電圧の電位を変化させた場合でも、印刷媒体の表面電位を適切に検出することが可能となり、印刷媒体帯電ローラへの印加電圧の電位を容易且つ適切に設定することができる。
【0013】
[発明4]また、発明4のインクジェットプリンタの印刷媒体徐電方法は、搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を、当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接する印刷媒体帯電ローラの発生電圧から検出し、その検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御することを特徴とするものである。
【0014】
この発明4に係るインクジェットプリンタの印刷媒体徐電方法によれば、搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うにあたり、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出し、検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御する構成としたため、搬送ベルト帯電のための印加電圧の極性変化の周期や電位を変化させた場合でも印刷媒体表面の電荷を効果的に除去することができる。また、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラの発生電圧から当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出する構成としたため、個別の表面電位センサが不要となり、その分だけ構成を簡素化、装置の小型化、コストの低廉化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明のインクジェットプリンタの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図である。図中の符号1は、印刷用紙等の印刷媒体2を搬送するための無端搬送ベルトである。印刷媒体2は、前述したように印刷用紙やOHPシートのような中・高抵抗のシート状部材である。また、搬送ベルト1は、表面(外周面)がPETやポリイミド、フッ素系樹脂などの絶縁性樹脂で構成され、裏面(内周面)が低〜中抵抗(1×1010Ω/□以下)の樹脂で構成される、所謂二層ベルトである。この搬送ベルト1は、図の左端部に配設された駆動ローラ3と、図の右端部に配設された従動ローラ4と、それらの中央部下方に配設されたテンションローラ5とに巻回されている。駆動ローラ3は、図示しない駆動源によって図の矢印方向に回転駆動され、後述する帯電ローラで帯電された搬送ベルト1に印刷媒体2を吸着した状態で、当該印刷媒体2を図の右方から左方に、つまり矢印方向に搬送する。従動ローラ4は、後述する帯電ローラの当接部分との間に搬送ベルト1を挟持して電圧を印加するために接地されている。テンションローラ5は、図示しないバネによって下方に付勢されており、これにより搬送ベルト1に張力を付与している。
【0016】
搬送ベルト1には、従動ローラ4に対向するようにして、帯電手段としての搬送ベルト帯電ローラ7が当接されており、後述するように、搬送ベルト帯電ローラ7には搬送ベルト帯電制御部8から所定の周期、電位の交番電圧信号(以下、搬送ベルトAC帯電パターン信号とも記す)が印加される。搬送ベルト帯電制御部8はシステム制御部6からの指令に応じて搬送ベルト帯電ローラ7への搬送ベルトAC帯電パターン信号の周期、電位を設定する。この搬送ベルト帯電ローラ7の配置は、印刷媒体2の給紙位置の直前に相当する。従って、この搬送ベルト帯電ローラ7に所定の周期で逆極性に反転する電位の電圧信号、つまり交番電圧信号を付与すると、搬送ベルト1の表面が搬送方向に沿って交互に逆の電位に帯電(縞状帯電)され、夫々の電荷によって印刷媒体2に誘電分極を発生させ、その誘電分極による印刷媒体2の電荷と搬送ベルト1の表面の電荷及び隣り合う搬送ベルト1の表面の逆極性の電荷と印刷媒体2の電荷とを含む閉回路を構成して静電気力が発生し、印刷媒体2を搬送ベルト1の表面に吸着する。
【0017】
従動ローラ4の上方には、紙押えローラ9が配設されている。この紙押えローラ9は、図示しないバネによって下方に付勢されており、印刷媒体2を従動ローラ4上の搬送ベルト1に押付ける機能を有する。前述したように、帯電した搬送ベルト1の外周面に印刷媒体2を搭載し、紙押えローラ9で印刷媒体2を搬送ベルト1に押付けると静電気力によって印刷媒体2は搬送ベルト1の外周面に吸着される。紙押えローラ9の印刷媒体2搬送方向上流側には、給紙部の印刷媒体2を給紙するためのフィードローラ13及び給紙された印刷媒体を支持するガイド15が配設されている。
また、紙押えローラ9の印刷媒体2搬送方向下流側には搬送ベルト1に貼り付けられたリニアスケールから搬送ベルト1及び印刷媒体2の位置を検出するエンコーダセンサ12が設けられ、その印刷媒体2搬送方向下流側には印刷媒体2の搬送方向先端位置を検出する印刷媒体検出センサ10が設けられている。
【0018】
印刷媒体検出センサ10の印刷媒体2搬送方向下流側にはインクジェットヘッド11が設けられている。このインクジェットヘッド11は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の各色毎に、印刷媒体2の搬送方向にずらして配設されている。各インクジェットヘッド11には、図示しない各色のインクタンクからインク供給チューブを介してインクが供給される。各インクジェットヘッド11には、印刷媒体2の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量のインク滴を吐出することにより、印刷媒体2上に微小なインクドットを形成出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送ベルト1に吸着された印刷媒体2を一度通過させるだけで、所謂ワンパスによる印刷を行うことができる。即ち、このインクジェットヘッド11の配設領域が印字領域に相当する。
【0019】
インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出出力する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されてインクが膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。本発明は、何れのインク出力方法も適用可能である。
【0020】
本実施形態のインクジェットヘッドの具体的な構成について図2を参照して説明する。このインクジェットヘッド11は圧電式アクチュエータを用いたものであり、振動板21と、この振動板21を変位させる圧電式アクチュエータ22と、内部に液体であるインクが充填され且つ振動板21の変位により内部の圧力が増減されるキャビティ(圧力室)23と、このキャビティ23に連通し且つ当該キャビティ23内の圧力の増減によりインクを液滴として吐出するノズル24とを備えている。
【0021】
更に詳述すると、インクジェットヘッド11は、ノズル24が形成されたノズル基板25と、キャビティ基板26と、振動板21と、複数の圧電素子27を積層した積層型の圧電式アクチュエータ22とを備えている。キャビティ基板26は、図示のように所定形状に形成され、これにより、キャビティ23と、これに連通するリザーバ28とが形成されている。また、リザーバ28は、インク供給チューブ29を介してインク貯留部であるインクカートリッジ33に接続されている。圧電式アクチュエータ22は、対向して配置される櫛歯状の電極31、32と、その電極31、32の各櫛歯と交互に配置される圧電素子27とからなる。また、圧電式アクチュエータ22は、その一端側が中間層30を介して振動板21と接合されている。
【0022】
このような構成からなる圧電式アクチュエータ22では、第1電極31と第2電極32との間に印加される駆動パルス源からの駆動パルスにより、図2に矢印で示すように上下方向に伸び縮みするモードを利用している。従って、圧電式アクチュエータ22では、例えば図2に示すような駆動パルスが印加されると、振動板21に変位が生じてキャビティ23内の圧力が変化し、ノズル24からインク滴が吐出されるようになっている。具体的には、キャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ23の容積を縮小してインク滴を吐出する。
【0023】
図1に戻って、印刷媒体検出センサ10とエンコーダセンサ12との間には、搬送ベルト1に吸着された印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面に当接する印刷媒体帯電ローラ16が設けられ、この印刷媒体帯電ローラ16の搬送ベルト1を挟んだ反対側には接地ローラ17が設けられている。印刷媒体帯電ローラ16には、後述するように、印刷媒体帯電制御部18から所定の周期、電位の交番電圧信号(以下、印刷媒体AC帯電パターン信号とも記す)が印加される。印刷媒体帯電制御部18はシステム制御部6からの指令に応じて印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号の周期、電位を設定する。なお、本実施形態では、この印刷媒体帯電ローラ16が印刷媒体2の表面に当接し且つ印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号の電位がゼロであるときの当該印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧から印刷媒体2の表面電位を検出する。つまり、印刷媒体帯電ローラ16が印刷媒体表面電位センサの役割をなす。
【0024】
システム制御部6は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース部61と、この入力インタフェース部61から入力された印刷データに基づいて印刷処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、フィードローラモータ41を駆動制御するキャリッジモータドライバ63と、搬送ベルト1の駆動ローラモータ51を駆動制御する駆動ローラモータドライバ64と、インクジェットヘッド11を駆動制御するヘッドドライバ65と、各ドライバ63、64、65の出力信号を外部のフィードローラモータ41、駆動ローラモータ51、インクジェットヘッド11で使用する制御信号に変換して出力したり、制御部62からの指令信号を搬送ベルト帯電制御部8や印刷媒体帯電制御部18への制御信号に変化して出力したり、印刷媒体帯電制御部18で検出された印刷媒体2の表面電位やエンコーダセンサ12、印刷媒体検出センサ10、表面電位センサ14の出力信号を制御部62への入力信号に変換したりするインタフェース67とを備えて構成される。
【0025】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dとを備えている。この制御部62は、インタフェース部61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインク滴を吐出するか或いはどの程度のインク滴を吐出するかという印字データを出力し、この印字データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65に制御信号を出力する。各ドライバ63〜65から制御信号が出力されると、これらがインタフェース部67で駆動信号に変換されてインクジェットヘッド11の複数のノズル24に対応するアクチュエータ22、フィードローラモータ41、駆動ローラモータ51、搬送ベルト帯電制御部8、印刷媒体帯電制御部18が夫々作動して、印刷媒体に印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0026】
次に、搬送ベルト帯電制御部8内に構築されている搬送ベルト帯電波形生成回路34について図4を用いて説明する。この搬送ベルト帯電波形生成回路34は、搬送ベルト1を帯電する搬送ベルト帯電ローラ7に対し、交互に逆極性の電位となる交番電圧信号の搬送ベルトAC帯電パターン信号を生成するものであり、前述したシステム制御部6から搬送ベルトAC帯電パターン信号の振幅値を指示する搬送ベルトAC帯電パターン信号振幅指示値Vbpがデジタルデータとして入力されると、D/A変換器によってアナログ値に変換され、バッファB1より直流電圧値として抵抗R11に出力される。一方、搬送ベルトAC帯電パターン信号の帯電周期長をパルス幅によって決定する搬送ベルトAC帯電パターン信号周期指示パルスLbp(周期をLtとする)がトランジスタTr1のベースに入力されると、所定の振幅電圧値に応じたパルスがトランジスタTr1のコレクタから出力される。コンデンサC1は、このパルスの交流成分を抽出して抵抗R12を介して接地するため、グラウンドGND(=0V)を中心とするプラスマイナスの電圧変化として増幅器AMP1に入力され、増幅された搬送ベルトAC帯電パターン信号Sbpが搬送ベルト帯電ローラ7に印加される。
【0027】
次に、印刷媒体帯電制御部18内に構築されている印刷媒体帯電波形生成回路36及び印刷媒体表面電位検出回路35及び印刷媒体帯電波形出力回路37について図5を用いて説明する。まず、印刷媒体帯電波形生成回路36は、印刷媒体1を帯電する印刷媒体帯電ローラ16に対し、交互に逆極性の電位となる交番電圧信号の印刷媒体AC帯電パターン信号を生成するものであり、前述したシステム制御部6から印刷媒体AC帯電パターン信号の振幅値を指示する印刷媒体AC帯電パターン信号振幅指示値Vppがデジタルデータとして入力されると、D/A変換器によってアナログ値に変換され、バッファB2より直流電圧値として抵抗R21に出力される。一方、印刷媒体AC帯電パターン信号の帯電周期長をパルス幅によって決定する印刷媒体AC帯電パターン信号周期指示パルスLpp(周期は搬送ベルトAC帯電パターン信号と同じLt)がトランジスタTr2のベースに入力されると、所定の振幅電圧値に応じたパルスがトランジスタTr2のコレクタから出力される。コンデンサC2は、このパルスの交流成分を抽出して抵抗Rs2を介して接地するため、グラウンドGND(=0V)を中心とするプラスマイナスの電圧変化として増幅器AMP2に入力され、増幅された印刷媒体AC帯電パターン信号Sppが印刷媒体帯電ローラ16に印加される。
【0028】
また、印刷媒体帯電波形出力回路37は、前記印刷媒体帯電波形生成回路36と並列に設けられている。この印刷媒体帯電波形出力回路37は、印刷媒体AC帯電パターン信号の出力開始タイミング検出手段として機能する。前述した印刷媒体帯電波形生成回路36の出力は抵抗Rs3を介して印刷媒体帯電ローラ16に出力されるが、この印刷媒体帯電波形生成回路36の出力がない(印加電圧がゼロである)ときには、帯電している印刷媒体2の表面電位が印刷媒体帯電ローラ16にも作用する。そこで、印刷媒体2の表面電位を、二つの直列抵抗Rs1+Rs2を介して接地し、印刷媒体2の表面電位側の抵抗Rs1の分圧を反転増幅器AMPs1で反転増幅し、それを比較器CMPs1で比較してパルスPcompを出力する。この出力パルスPcompの立上がり又は立下がりをラッチ回路でラッチしてラッチ信号Lchを出力する。ラッチ信号Lchの出力タイミングが印刷媒体AC帯電パターン信号の出力開始タイミング、即ち印刷媒体AC帯電パターン信号周期指示パルスLppの出力開始タイミングとなる。ラッチ回路はリセット信号rstでリセットされる。なお、直列抵抗Rs1+Rs2の抵抗値は、印刷媒体2を経て搬送ベルト1の帯電電位までが消費されてしまわないように、例えば数十MΩ以上の大きな値にする必要がある。また、印刷媒体帯電波形生成回路36からの印刷媒体AC帯電パターン信号は、直列抵抗Rs1+Rs2と抵抗Rs3で分圧された値が印刷媒体帯電ローラ16に印加されることになるが、直列抵抗Rs1+Rs2の抵抗値を抵抗Rs3の抵抗値の10倍以上の大きな値にしておけば、それほど大きな電圧低下にならない。勿論、印刷媒体AC帯電パターン信号振幅指示値Vbp自体を、直列抵抗Rs1+Rs2による電圧低下を見込んだ値としてもよい。
【0029】
また、印刷媒体表面電位検出回路35は、前記印刷媒体帯電波形出力回路37と並列に設けられている。この印刷媒体表面電位検出回路35は、前述したように印刷媒体帯電ローラ16に作用している印刷媒体2の表面電位をデジタルデータ化してシステム制御部6に出力するものであり、前述したように印刷媒体帯電波形生成回路36からの出力がない(印加電圧がゼロである)とき、前記印刷媒体帯電波形出力回路37の直列抵抗Rs1+Rs2で分圧化され且つ反転増幅器AMPs1で反転増幅された印刷媒体2の表面電位は整流部で整流された後、フィルタで平滑化され、バッファB3で直流値に変換された後、A/D変換器でデジタル化され、これが印刷媒体AC帯電パターン信号振幅指示値Vppとしてシステム制御部6に出力される。なお、システム制御部6は、この印刷媒体表面電位検出回路35で帯電パターン信号振幅指示値Vpp、即ち印刷媒体2の表面電位が検出されるまでは印刷媒体AC帯電パターン信号(印刷媒体AC帯電パターン信号振幅指示値Vpp及び印刷媒体AC帯電パターン信号周期指示パルスLpp)を出力しないが、内部では、前述した印刷媒体帯電波形出力回路37でラッチ信号Lchが出力された時点で印刷媒体AC帯電パターン信号の振幅指示値を搬送ベルトAC帯電パターン信号振幅指示値Vbpとし、帯電パターン信号振幅指示値Vppが検出された時点で補正する。
【0030】
次に、印刷媒体2を搬送ベルト1に吸着するための静電気力の等価回路について説明する。まず、搬送ベルト1の表面側の絶縁層はコンデンサと見なされ、搬送ベルト帯電ローラ7から接地している従動ローラ4までの回路において、搬送ベルト帯電ローラ7の電荷は搬送ベルト1の表面の絶縁層のコンデンサCbに充電される。この電荷が充電された搬送ベルト1上に印刷媒体2が搭載されると、印刷媒体2の裏面には、搬送ベルト1の表面の電荷によってそれと逆電位の電荷が誘電分離で生じる。搬送ベルト1の表面と印刷媒体2の裏面との微小な隙間が静電気力による吸着力を発現するコンデンサCgと仮定して、搬送ベルト1の隣り合う逆極性の充電済コンデンサCb間には、印刷媒体2の抵抗Rp、隙間のコンデンサCg、搬送ベルト1の裏面側の低〜中抵抗層の抵抗Raによる等価回路が形成され、搬送ベルト1と印刷媒体2との間に電位差Vgが生じる。この電位差Vgが印刷媒体2を搬送ベルト1に吸着する静電気力となる。この静電気力=吸着力F(t)は下記1式で与えられる。なお、Qは隙間のコンデンサCgに充電される電荷、Eは隙間のコンデンサCgの電極間の電界、dは隙間の距離である。
【0031】
【数1】

【0032】
この電位差Vgが生じる過程は、印刷媒体2の抵抗Rpを介して、搬送ベルト1の表面と印刷媒体2の裏面を電極として、それらの隙間を誘電層として構成されるコンデンサCgを充電する過渡現象により行われ、最終的には搬送ベルト1の帯電電位Vb相当に達する。充電中の過渡電位差Vg(t)は下記2式で表れる。なお、Vbは搬送ベルトの帯電電位、Cは等価回路の合成容量、Rは等価回路の合成抵抗である。
【0033】
【数2】

【0034】
この時間経過と共に変化する過渡電位差Vg(t)による吸着力F(t)を図6に示す。この過渡電位差Vg(t)の等価回路の合成容量Cや合成抵抗Rには、印刷媒体2の抵抗Rpや隙間のコンデンサ(容量)Cgが関与しており、それらは、例えば印刷媒体2の種類、温度や湿度に応じて変化する。従って、安定した印刷媒体2の搬送ベルト1への吸着力、即ち過渡電位差Vg(t)を得るためには、印刷媒体2の種類、温度、湿度に応じて搬送ベルト1の帯電状態、具体的には印加電圧の極性変化の周期や電位を変更する必要がある。
【0035】
また、このように所定の周期Ltで搬送ベルト1を縞状に帯電した場合の印刷媒体の表面電荷qは下記3式で表れる。式中のEyは印刷媒体2の厚さ方向に働く電界、Exは印刷媒体2の横方向に働く電界、ρvは印刷媒体の体積抵抗率、ρsは印刷媒体の表面抵抗率、λは縞状帯電の周期長である。
【0036】
【数3】

【0037】
この3式によれば、印刷媒体2の抵抗値が大きい場合は、前述した等価回路を移動する単位時間当たりの電荷が小さくなるため、印刷媒体2の表面電位は大きくなる。一方、印刷媒体2の抵抗値が小さい場合は、等価回路を移動する単位時間当たりの電荷が多くなるため、印刷媒体2の表面電位は小さくなる。図7aには、湿度が20%のときの搬送ベルト1及び印刷媒体2の表面電位を、図7bには湿度が60%のときの搬送ベルト1及び印刷媒体2の表面電位を示す。湿度が高いときには印刷媒体2の抵抗値が小さくなるので、印刷媒体2の表面電位が小さくなっており、3式の評価に適合している。
【0038】
次に、このような原理に基づいて搬送ベルトAC帯電パターン信号の周期Lt及び電位Vbp及び印刷媒体AC帯電パターン信号の出力開始タイミング及び周期を設定し、出力するための演算処理を図8、図9に示す。この演算処理は、実際の印刷動作の直前から連続印刷中に行われ、まずステップS1で、印圧媒体帯電ローラ16への印加電圧を0Vとすると共にリセット信号rstをLowレベルとする。
【0039】
次にステップS2に移行して、印刷媒体の種類、温度、湿度といった搬送ベルト帯電条件を読込む。
次にステップS3に移行して、ステップS2で読込まれた搬送ベルト帯電条件に基づき、搬送ベルト帯電ローラ7への搬送ベルトAC帯電パターン信号(周期Lt、電位Vbp)を設定する。
【0040】
次にステップS4に移行して、ステップS3で設定された搬送ベルトAC帯電パターン信号を出力する。
次にステップS5に移行して、タイマカウントを開始する。このタイマカウントは、搬送ベルト帯電ローラ7から印刷媒体帯電ローラ16までの搬送ベルト1の移動時間でカウントアップする。
【0041】
次にステップS6に移行して、タイマカウントアップしたか否かを判定し、タイマカウントアップした場合にはステップS37に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS7では、印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧を印刷媒体帯電波形出力回路37に取り込み、当該印刷媒体帯電波形出力回路37の比較器COMPs1の出力パルスPcompから帯電極性を検出する。
【0042】
次にステップS8に移行して、リセット信号rstをHiレベルとして印刷媒体帯電波形出力回路37のラッチ回路をリセットする。
次にステップS9に移行して、印刷媒体帯電波形出力回路37の比較器COMPs1の出力パルスPcomp(帯電極性)の立下がりエッジを検出したか否かを判定し、出力パルスPcompの立下がりエッジを検出した場合にはステップS10に移行し、そうでない場合には待機する。
【0043】
ステップS10では、ラッチ信号Lchを出力する。
次にステップS11に移行して、印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(周期はLt)の出力開始タイミングを設定する。具体的には搬送ベルトAC帯電パターン信号との位相差調整を行う。
次にステップS12に移行して、印刷媒体の搬送を開始する。
【0044】
次にステップS13に移行して、印刷媒体検出センサ10により印刷媒体2の先端部の通過を検出する。
次にステップS14に移行して、印刷媒体帯電ローラ16及び印刷媒体表面電位検出回路35により当該印刷媒体帯電ローラ16への印加電圧がゼロであるときの表面電位デジタルデータVppのサンプリングを行う。
【0045】
次にステップS15に移行して、例えば印刷媒体2の帯電極性の立下がりを2回検出したか否かなどを用いて印刷媒体2の表面電位デジタルデータVppのサンプリングが終了したか否かを判定し、印刷媒体2の表面電位デジタルデータVppのサンプリングが終了した場合にはステップS16に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS15では、表面電位デジタルデータVppを記憶すると共に、印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号の電位を表面電位デジタルデータVppに変更設定する。
【0046】
次にステップS17に移行して、印刷媒体帯電ローラ16へ印刷媒体AC帯電パターン信号を出力する。
次にステップS18に移行して、印刷媒体2の種類が変更されたか否かを判定し、印刷媒体2の種類が変更された場合にはステップS21に移行し、そうでない場合にはステップS19に移行する。
【0047】
ステップS19では、例えば10枚といったように、予め設定された設定枚数分だけ印刷が終了したか否かを判定し、設定枚数分だけ印刷が終了した場合にはステップS21に移行し、そうでない場合にはステップS20に移行する。
ステップS20では、印刷が終了したか否かを判定し、印刷が終了した場合にはメインプログラムに復帰し、そうでない場合にはステップS18に移行する。
ステップS21では、印刷媒体帯電ローラ16への印加電圧をゼロとしてからステップS1に移行する。
【0048】
この演算処理によれば、印刷媒体2の先端部が通過するたびに、その表面電位を印刷媒体帯電ローラ16及び印刷媒体表面電位検出回路35で検出し、その表面電位と大きさが同じで逆極性の電位からなる印刷媒体AC帯電パターン信号を搬送ベルトAC帯電パターン信号の周期Ltと同じ周期Ltで出力することにより、印刷媒体2の表面電位を確実に抑制することができる。なお、出力パルスPcompの立下がりエッジでラッチ信号Lchが出力されるようにしたのは、反転増幅器AMPs1で印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧の極性が反転されており、この反転された極性は印刷媒体2の実際の帯電極性であるため、これに対して逆極性の電位の印刷媒体AC帯電パターン信号を出力するためには、出力パルスPcompの立下がりエッジ、即ち負極への変化位置で正極の電位を印加する必要があるからである。
【0049】
次に、この演算処理及び搬送ベルト帯電波形生成回路34、印刷媒体帯電波形生成回路36、印刷媒体帯電波形出力回路35、印刷媒体表面電位検出回路37の作用について、図10のタイミングチャートを用いて説明する。
このタイミングチャートは、周期Lt、電位Vbpの搬送ベルトAC帯電パターン信号が出力されて搬送ベルト1が縞状帯電され、その縞状帯電された搬送ベルト1には、印加電圧ゼロの印刷媒体帯電ローラ16が当接しているものの、印刷媒体2は、未だ印刷媒体帯電ローラ16の位置まで搬送されていない状態から始まる。従って、印刷媒体帯電波形出力回路35の比較器の出力パルスPcompや印刷媒体表面電位検出回路37の反転増幅器AMPs1の出力及びバッファB3の出力は、何れも搬送ベルト1の表面の帯電極性及び帯電電位を検出しており、印刷媒体表面電位検出回路37のバッファB3の出力は搬送ベルトAC帯電パターン信号の電位Vbpに比例した値となっている。また、印刷媒体検出センサ10の出力もLowレベルのままである。
【0050】
この状態から、時刻t01でリセット信号rstがHiレベルにされると、次に印刷媒体帯電波形出力回路35の比較器の出力パルスPcompが立下がる時刻t02でラッチ信号Lchが出力され、この時刻t02以後、システム制御部6内では、搬送ベルトAC帯電パターン信号の電位Vbp、周期Ltの印刷媒体AC帯電パターン信号が処理されるが、未だ印刷媒体2の表面電位デジタルデータVppが検出されていないので、印刷媒体帯電ローラ16には印刷媒体AC帯電パターン信号は出力されない。
【0051】
次いで時刻t03で、印刷媒体2の搬送方向先端部が印刷媒体帯電ローラ16を通過するが、印刷媒体検出センサ10の方が印刷媒体帯電ローラ16より下流側なので、この時点では印刷媒体2の表面電位デジタルデータVppはサンプリングされない。次いで時刻t04で、印刷媒体2の搬送方向先端部が印刷媒体検出センサ10を通過するため、この時刻t04から印刷媒体2の表面電位デジタルデータVppのサンプリングが開始される。そして、印刷媒体帯電波形出力回路35の比較器の出力パルスPcompの帯電極性の立下がりが2回検出される時刻t05で表面電位デジタルデータVppのサンプリングが終了し、これと同時に、印刷媒体帯電ローラ16に向けて、電位Vpp、周期Ltの印刷媒体AC帯電パターン信号が出力される。
【0052】
このように本実施形態のインクジェットプリンタによれば、搬送ベルト1の表面に搬送ベルト帯電ローラ7を当接して、当該搬送ベルト1の表面を当該搬送ベルト1の移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルト1の表面に印刷媒体2を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体2にインクジェットヘッド11からインク滴を出して印刷を行うにあたり、少なくとも印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位を検出し、検出された印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位が抑制されるように印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(印加電圧)を制御することとしたため、搬送ベルト帯電のための搬送ベルトAC帯電パターン信号(印加電圧)の極性変化の周期Ltや電位Vbpを変化させた場合でも印刷媒体2の表面の電荷を効果的に除去することができる。また、印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧から当該印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位を検出することとしたため、個別の表面電位センサが不要となり、その分だけ構成を簡素化、装置の小型化、コストの低廉化が可能となる。
【0053】
また、印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(印加電圧)がゼロで且つ印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラ16の発生電圧の分圧回路の出力から当該印刷媒体帯電ローラ16に当接している印刷媒体2の表面電位Vppを検出することとしたため、印刷媒体2の表面電位Vppを適切に検出することが可能となり、搬送ベルト帯電のための搬送ベルトAC帯電パターン信号(印加電圧)の電位Vbpを変化させた場合でも、印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(印加電圧)の電位Vppを容易且つ適切に設定することができる。
【0054】
また、印刷媒体2の搬送ベルト1と反対側の表面の電位Vppの検出は、少なくとも印刷媒体2の種類が変更されたときに行われることとしたため、印刷媒体2の種類に応じて搬送ベルト帯電のための搬送ベルトAC帯電パターン信号(印加電圧)の電位Vbpを変化させた場合でも、印刷媒体2の表面電位Vppを適切に検出することが可能となり、印刷媒体帯電ローラ16への印刷媒体AC帯電パターン信号(印加電圧)の電位Vppを容易且つ適切に設定することができる。
【0055】
なお、前記実施形態では、所謂ラインヘッド型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタを適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタは、マルチパス型を始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のインクジェットプリンタの一実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図3】図1のシステム制御部のブロック図である。
【図4】図1の搬送ベルト帯電制御部内に構築されている搬送ベルト帯電波形生成回路のブロック図である。
【図5】図1の印刷媒体帯電制御部内に構築されている印刷媒体帯電波形生成回路及び印刷媒体表面電位検出回路及び印刷媒体帯電波形出力回路のブロック図である。
【図6】印刷媒体の搬送ベルトへの静電吸着力の説明図である。
【図7】湿度が異なる場合の印刷媒体の表面電位の説明図である。
【図8】図1の制御部内で行われる搬送ベルトへの印加電圧及び印刷媒体への印加電圧の設定及び出力のための演算処理を示すフローチャートである。
【図9】図1の制御部内で行われる搬送ベルトへの印加電圧及び印刷媒体への印加電圧の設定及び出力のための演算処理を示すフローチャートである。
【図10】図8及び図9の演算処理の作用を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1は搬送ベルト、2は印刷媒体、3は駆動ローラ、4は従動ローラ、5はテンションローラ、6はシステム制御部、7は搬送ベルト帯電ローラ、8は搬送ベルト帯電制御部、9は紙押えローラ、10は印刷媒体検出センサ、11はインクジェットヘッド、12はエンコーダセンサ、13はフィードローラ、15はガイド、16は印刷媒体帯電ローラ、17は接地ローラ、18は印刷媒体帯電制御部、34は搬送ベルト帯電波形生成回路、35は印刷媒体表面電位検出回路、36は印刷媒体帯電波形生成回路、37は印刷媒体帯電波形出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出する表面電位検出手段と、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接する印刷媒体帯電ローラと、前記表面電位検出手段で検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御する印刷媒体表面電位制御手段とを備え、前記表面電位検出手段は、印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの前記印刷媒体帯電ローラの発生電圧から当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を検出することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記印刷媒体表面電位制御手段の出力と印刷媒体帯電ローラとの間に抵抗を介装すると共に、前記印刷媒体帯電ローラと接地との間に直列抵抗を介装して分圧回路を構成し、前記表面電位検出手段は、前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧がゼロで且つ印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接しているときの印刷媒体帯電ローラの発生電圧の分圧回路の出力から当該印刷媒体帯電ローラに当接している印刷媒体の表面電位を検出するものであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記表面電位検出手段による印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位の検出は、少なくとも印刷媒体の種類が変更されたときに行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
搬送ベルトの表面に帯電ローラを当接して、当該搬送ベルトの表面を当該搬送ベルトの移動方向に交互に逆の極性の電位に帯電し、その帯電された搬送ベルトの表面に印刷媒体を静電気力で吸着して搬送し、その印刷媒体にインクジェットヘッドからインク滴を出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、少なくとも印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位を、当該印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面に当接する印刷媒体帯電ローラの発生電圧から検出し、その検出された印刷媒体の搬送ベルトと反対側の表面の電位が抑制されるように前記印刷媒体帯電ローラへの印加電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタの印刷媒体徐電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−44742(P2008−44742A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223093(P2006−223093)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】