説明

インクジェットプリンタ装置

【課題】 剛性を容易に確保することができるキャリアフレームを備えたインクジェットプリンタ装置を提供する。
【解決手段】 インクジェットプリンタ装置では、搬送用ローラ6の軸部8、ギア10およびモータ12を保持するキャリアフレーム2は、主板部3、曲げ側板部4および曲げ上板部5を備えて構成される。曲げ側板部4および曲げ上板部5は主板部3に対して搬送用ローラ6の側に向かって曲げられている。曲げ上板部5は上板本体部5a、嵌め込み部5cおよび幅広部5bを備え、嵌め込み部5cが曲げ側板部45の上端に形成された溝部4aに嵌め込まれることによって、曲げ側板部4の上端部分が上板本体部5aと幅広部5bとの間に挟み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタ装置に関し、特に、キャリアフレームを有するインクジェットプリンタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ装置には、用紙の搬送方向と交差する方向に走査しながら所定のインクをヘッドから用紙に向けて吐出して画像の記録を行なうインクジェットプリンタ装置がある。ヘッドを走査するために、ヘッドは用紙の搬送方向と交差する方向に往復動するキャリアに搭載される。そのキャリアはキャリアフレームに支持されている。そのキャリアフレームには、プリンタ装置の小型化と部品点数の削減を図るために、用紙を搬送するための駆動力を与えるモータやその駆動力を伝達するギアも搭載されるようになってきた。
【0003】
そのようなキャリアフレームの一例として、特許文献1に記載されたインクジェットプリンタ装置に適用されているキャリアフレームについて説明する。図6に示すように、キャリアフレーム102では、主板部103と、主板部103に対してそれぞれ曲げられた曲げ上面部105および曲げ側面部104とが設けられている。このキャリアフレーム102に、モータやギア(いずれも図示せず)等が保持されることになる。
【0004】
曲げ上面部105と曲げ側面部104とはカシメにより互いに固定されている。すなわち、図7に示すように、曲げ上面部105の端部には突出部105aが設けられ、一方、曲げ側面部104には、この突出部105aを挿通する開口部104aが設けられている。突出部105aを開口部104aに挿通させた後に、突出部105aがかしめられている。
【0005】
このようにして主板部103に対してそれぞれ曲げられた曲げ上面部105と曲げ側面部104とを固定することによって、キャリアフレーム102の剛性を確保している。
【特許文献1】特開2002−192788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインクジェットプリンタ装置では次のような問題点があった。上述したように、曲げ上面部105と曲げ側面部104とをカシメにより固定するために、カシメのための工程が別途必要になる。また、曲げ上面部105に設けた突出部105aを曲げ側面部104に設けた開口部104aに挿通させるために、位置精度が要求されて組立作業性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、剛性を容易に確保することができるキャリアフレームを備えたインクジェットプリンタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタ装置は、紙送りのための搬送用ローラとギアとモータとキャリアフレームとを有している。搬送用ローラは所定の軸部に装着されている。ギアは搬送用ローラに回転駆動力を伝達する。モータは搬送用ローラに回転駆動力を与える。キャリアフレームは搬送用ローラ、ギアおよびモータを保持している。そのキャリアフレームは、主板部と曲げ側板部と曲げ上板部とを有している。主板部は搬送用ローラの軸部に沿って延在している。曲げ側板部は主板部における軸方向両端部からそれぞれ搬送用ローラの側に向かって曲げられて、搬送用ローラの軸部、ギアおよびモータを支持している。曲げ上板部は、主板部の上端部から搬送用ローラの側に向かって、曲げ側板部の上端部分に接触するように曲げられている。その曲げ側板部は、上端に沿って設けられた所定の長さの溝部を備えている。曲げ上板部は軸方向に沿って延在する上板本体部と、上板本体部の軸方向両端部に設けられ溝部に嵌め込まれる嵌め込み部と、嵌め込み部に設けられ、嵌め込み部が溝部に嵌め込まれた状態で上板本体部とで曲げ側板部の上端部分を挟み込んで曲げ側板部の軸方向の撓みを阻止するための所定の長さよりも長い幅を有する幅広部とを備えている。
【0009】
この構成によれば、曲げ上板部を曲げることで、曲げ上板部の嵌め込み部が曲げ側板部の上端に設けられた溝部に嵌め込まれることになる。これにより、曲げ側板部の上端部分が曲げ上板部の上板本体部と幅広部との間に挟み込まれることになる。その結果、曲げ側板部の軸方向の撓みが阻止されて、キャリアフレームの剛性を容易に高めることができる。しかも、曲げ上板部を曲げることで嵌め込み部が溝部に嵌め込まれるため、従来に比べて組立を比較的容易に行なうことできる。
【0010】
本発明に係る他のインクジェットプリンタ装置は、紙送りのための搬送部を保持するキャリアフレームを有するインクジェットプリンタ装置である。そのキャリアフレームは、一方向に延在する主板部と第1曲げ側板部および第2曲げ側板部とを有している。第1曲げ側板部および第2曲げ側板部は、主板部に対してそれぞれ一方の側に曲げられて互いに接触する第1端部と第2端部をそれぞれ有している。また、第1曲げ側板部は、第2曲げ側板部と接触する第1端部において第2曲げ側板部の第2端部を嵌め込むための溝部を備えている。そして、第2曲げ側板部は、第2曲げ側板部の第2端部が溝部に嵌め込まれた状態で第1曲げ側板部の第1端部を挟み込む挟持部を備えている。
【0011】
この構成によれば、第2曲げ側板部を曲げることで、第2曲げ側板部の第2端部に形成された挟持部が第1曲げ側板部の第1端部を挟持することができる。その結果、第1曲げ側板部の撓みが阻止されて、キャリアフレームの剛性を容易に高めることができる。しかも、第2曲げ側板部を曲げることで第1曲げ側板部が挟持されるため、従来に比べて組立を比較的容易に行なうことできる。
【0012】
第2曲げ側板部により第1曲げ側板部を挟持するために、第2曲げ側板部は、側板本体部と、所定の幅を有して前記溝部に嵌め込まれる嵌め込み部と、所定の前記幅よりも広い幅を有する幅広部とを含み、挟持部は、嵌め込み部が溝部に嵌め込まれた状態で側板本体部と幅広部とで第1曲げ側板部の第1端部を厚み方向から挟み込むよう構成されていることが好ましい。
【0013】
より強固にキャリアフレームの剛性を高めるためには、挟持部は主板部の一方向両端側にそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0014】
また、第1曲げ側板部の第1端部が第2側板部より突出しないようにするために、溝部は、第2曲げ側板部の厚さに相当する深さに形成されていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ装置について説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ装置には、所定の軸部8に紙送りのための搬送用ローラ6が装着されている。その軸部8には、搬送用ローラ6に回転駆動力を伝達するためのギア10が取付けられている。軸部8およびギア10はキャリアフレーム2に保持されている。そのキャリアフレーム2には、搬送用ローラ6に回転駆動力を与えるモータ12も保持されている。
【0016】
キャリアフレーム2は、主板部3、曲げ側板部4および曲げ上板部5とを有して構成される。主板部3は軸部8に沿って一方向に延在している。曲げ側板部4は、主板部3に対して搬送用ローラ6の側に向かって曲げられて、搬送用ローラ6の軸部8、ギア10、およびモータ12を支持している。曲げ上板部5は、主板部3に対して曲げ側板部と同様に搬送用ローラ6の側に向かって、曲げ側板部4の上端部分に接触するように曲げられている。
【0017】
図2に示すように、曲げ側板部45には、上端に沿って所定の長さL1と深さDの溝部4aが形成されている。一方、曲げ上板部5は軸部に沿って一方向に延在する上板本体部5aを有する。その上板本体部5aの軸方向端部には、溝部4aに嵌め込まれる幅L2の嵌め込み部5cが設けられている。この幅L2は、溝の幅L1とほぼ同じ長さとされる。さらに、嵌め込み部5cの軸方向端部には、溝部4aの長さ幅L1よりも長い幅を有する幅広部5bが設けられている。嵌め込み部5cが溝部4aに嵌め込まれることによって、曲げ側板部4の上端部分が上板本体部5aと幅広部5bとの間に挟み込まれることになる。
【0018】
次に、そのようなキャリアフレーム2の組立て手順について簡単に説明する。まず、主板部3、曲げ側板部4および曲げ上板部5に対応する部分がカットされた板状のフレーム部材が作製される。曲げ側板部に対応する部分が主板部に対応する部分に対して略垂直に曲げられて、軸部8およびモータ12等が取付けられる。次に、図3に示すように、曲げ上板部に対応する部分が矢印に示すように曲げ側板部4の上端部分に接触するように曲げられる。
【0019】
つまり、主板部に対応する部分に対して、曲げ上板部に対応する部分と曲げ側板部に対応する部分とが同じ側に曲げられて、曲げ側板部の上端部分と曲げ上板部の軸方向と直交する方向に位置する端部とが接触することになる。曲げ上板部に対応する部分が曲げられることで、図4に示すように、曲げ上板部に対応するする部分の嵌め込み部5cが溝部4aに嵌め込まれる。以上のようにしてキャリアフレーム2が組立てられる。
【0020】
上述したキャリアフレームを備えたインクジェットプリンタ装置では、曲げ上板部5の嵌め込み部5cが曲げ側板部4の上端に設けられた溝部4aに嵌め込まれることになる。これにより、図5に示すように、曲げ側板部4の上端部分が曲げ上板部5の上板本体部5aと幅広部5bとの間に挟み込まれることになる。その結果、曲げ側板部4の軸方向(矢印21)の撓みが阻止されて、キャリアフレームの剛性を容易に高めることができる。
【0021】
しかも、曲げ上板部5を曲げることで嵌め込み部5cが溝部4aに嵌め込まれるため、従来のインクジェットプリンタ装置におけるカシメほど高い位置精度が要求されず、組立を比較的容易に行なうことできる。
【0022】
また、曲げ側面部4に形成される溝部4aの深さDを、曲げ上面部5の厚さに相当する深さに形成してもよい。そうすることで、曲げ側板部4の上端部分が曲げ上面部5の上板本体部5a上に突出せずに上板本体部5aとほぼ同じ位置にすることができる。
【0023】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ装置の要部を示す部分斜視図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す曲げ上板部と曲げ側板部の構造を示す部分分解斜視図である。
【図3】同実施の形態において、キャリアフレームの組立て手順の一工程を示す部分斜視図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行われる工程を示す部分斜視図である。
【図5】同実施の形態において、曲げ上板部が曲げ側板部を挟み込む様子を示す部分平面図である。
【図6】従来のインクジェットプリンタ装置におけるキャリアフレームを示す斜視図である。
【図7】図6に示すキャリアフレームにおけるカシメ部分を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
2 キャリアフレーム、3 主板部、4 曲げ側板部、5 曲げ上板部、5a 上板本体部、5b 幅広部、5c 嵌め込み部、6 搬送用ローラ、8 軸部、10 ギア、12 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸部に装着された紙送りのための搬送用ローラと、
前記搬送用ローラに回転駆動力を伝達するためのギアと、
前記搬送用ローラに回転駆動力を与えるモータと、
前記搬送用ローラ、前記ギアおよび前記モータを保持するキャリアフレームと
を有し、
前記キャリアフレームは、
前記搬送用ローラの前記軸部に沿って延在する主板部と、
前記主板部における軸方向両端部からそれぞれ前記搬送用ローラの側に向かって曲げられて、前記搬送用ローラの軸部、前記ギア、および前記モータを支持する曲げ側板部と、
前記主板部の上端部から前記搬送用ローラの側に向かって、前記曲げ側板部の上端部分に接触するように曲げられた曲げ上板部と、
を有し、
前記曲げ側板部は、上端に沿って設けられた所定の長さの溝部を備え、
前記曲げ上板部は、
軸方向に沿って延在する上板本体部と、
前記上板本体部の軸方向両端部に設けられ、前記溝部に嵌め込まれる嵌め込み部と、
前記嵌め込み部に設けられ、前記嵌め込み部が前記溝部に嵌め込まれた状態で前記上板本体部とで前記曲げ側板部の上端部分を挟み込んで前記曲げ側板部の軸方向の撓みを阻止するための、前記所定の長さよりも長い幅を有する幅広部と
を備えた、インクジェットプリンタ装置。
【請求項2】
紙送りのための搬送部を保持するキャリアフレームを有するインクジェットプリンタ装置であって、
前記キャリアフレームは、
一方向に延在する主板部と、
前記主板部に対して一方の側にそれぞれ曲げられて、互いに接触する第1端部と第2端部をそれぞれ有する第1曲げ側板部および第2曲げ側板部と、
を有し、
前記第1曲げ側板部は、前記第2曲げ側板部と接触する前記第1端部において前記第2曲げ側板部の前記第2端部を嵌め込むための溝部を備え、
前記第2曲げ側板部は、前記第2曲げ側板部の前記第2端部が前記溝部に嵌め込まれた状態で前記第1曲げ側板部の前記第1端部を挟み込む挟持部を備えた、インクジェットプリンタ装置。
【請求項3】
前記第2曲げ側板部は、
側板本体部と、
所定の幅を有して前記溝部に嵌め込まれる嵌め込み部と、
所定の前記幅よりも広い幅を有する幅広部と
を含み、
前記挟持部は、前記嵌め込み部が前記溝部に嵌め込まれた状態で前記側板本体部と前記幅広部とで前記第1曲げ側板部の前記第1端部を厚み方向から挟み込むよう構成された、請求項2記載のインクジェットプリンタ装置。
【請求項4】
前記挟持部は前記主板部の一方向両端側にそれぞれ形成された、請求項2または3に記載のインクジェットプリンタ装置。
【請求項5】
前記溝部は、前記第2曲げ側板部の厚さに相当する深さに形成された、請求項2〜4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−7647(P2006−7647A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189706(P2004−189706)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】