説明

インクジェットプリンタ

【課題】 バンドメモリの節約。
【解決手段】 偶数列と奇数列のノズルがある所定の画素数離れて配置されるヘッドを使用する場合、有効領域(偶数ノズルで打たれるドットと、奇数ノズルで打たれるドットが隙間無く埋まることで画像を形成する領域)の画像データのみバンドメモリに格納し、オフセット領域(片方のノズル列でしか打たれない領域)の画像データはデータアクセス時には意図的にデータをマスクする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、特に偶数列と奇数列のノズルがある所定の画素数離れて配置されるヘッドを使用し、前記ヘッドをシリアルスキャンすることでプリントを行なうインクジェットプリンタに適用する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジの走査方向にXドットの印字データを、偶数列と奇数列のノズルがP画素離れて(以下オフセットと記す)配置されるヘッドを使用し、前記ヘッドをシリアルスキャンすることで印字する記録装置がある(特許文献1)。このような記録装置において、従来のバンドメモリのアクセス方法の一例として、ある偶数ノズル列データが格納されているアドレスをNとした場合、アドレスNに対し、奇数ノズル列データはアドレスN+Pをアクセスする。バンドメモリの領域において、オフセット領域に相当するアドレス0〜P間の偶数データには「0」を、アドレスX+P〜X+2P間の奇数データには「0」をあらかじめ入れておき、アドレスカウンタ(Nを0〜X+Pまで)を回すことで、結果、それぞれのノズル列データXドットを取得できる。即ち、バンドメモリのサイズとしてはX+2Pが必要であった。
【特許文献1】特開2002−301839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これら従来手法においては、バンドメモリに無効領域のデータを格納する為、本来の有効データサイズと比べて、無効領域データ分だけサイズが大きくなってしまう。オフセットが小さければそれほどのサイズアップにはならないが、昨今、オフセットも大きく、複数色インクを搭載した高精彩なプリンタが主流になってきており、その分、無効領域のデータ数も増大してきている為、決して無視できないものとなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのために、本発明は、偶数列と奇数列のノズルがある所定の画素数離れて配置されるヘッドを使用し、前記ヘッドをシリアルスキャンしてプリントを行なうインクジェットプリンタにおいては、有効領域(偶数ノズルで打たれるドットと、奇数ノズルで打たれるドットが隙間無く埋まることで画像を形成する領域)の画像データのみバンドメモリに格納し、オフセット領域(片方のノズル列でしか打たれない領域)の画像データはデータアクセス時には意図的にデータをマスクすることで、バンドメモリのサイズを節約すること特徴とするインクジェットプリンタ、及びデータアクセス方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
以上のように、バンドメモリにアクセスするアドレスの判定をし、領域外へのアクセスの場合は、意図的にデータをマスク(「0」に置き換える)ことで、あたかもバンドメモリからデータ「0」を読み込んできたように見せかけることにより、バンドメモリ内にオフセット領域を持つことなく、必要最小限のバンドメモリサイズに節約することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明のインクジェットプリンタに係る実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0007】
図1は、インクジェットプリンタのヘッドをフェイス面から見た図である。
【0008】
11は偶数列ノズル、12は奇数列ノズルであり、11と12はある所定の画素数Pだけ離れて(以下オフセットと記す)配置されている。このヘッドをシリアルスキャンしながら、11、12のそれぞれのノズル列からインクを吐出し、画像を形成する。
【0009】
図2は従来のバンドメモリの図である。
【0010】
21はバンドメモリのアドレス「0」を表す。
【0011】
22はバンドメモリのアドレス「P」(オフセットと同じ画素数)を表す。
【0012】
23はバンドメモリのアドレス「X+P」を表す。
【0013】
24はバンドメモリのアドレス「X+2P」を表す。
【0014】
従来のバンドメモリのアクセス方法としては、ある偶数ノズル列データが格納されているアドレスをNとした場合、アドレスNに対し、奇数ノズル列データを取得するのにはアドレスN+Pをアクセスする。
【0015】
このアクセス方法によると、21から22までのデータは偶数ノズル列だけでインクを吐出し、逆に23から24までのデータは奇数ノズル列だけでインクを吐出する結果となる。この印字結果を図4に示す。
【0016】
即ち、図5の様にヘッドの走査方向にXの領域の画像を形成する為に、前記アクセス方法で行なう場合は、オフセット領域で余計なデータを打つことなく、且つ、Xの領域は偶数ノズルデータと奇数ノズルデータが隙間無く埋まるようにする為に、バンドメモリの領域において、オフセット領域に相当するアドレス21〜22間の偶数データには「0」を、アドレス23〜24の奇数データには「0」をあらかじめ入れておく必要がある。
【0017】
以上のことから分かるように、ヘッドの走査方向にXの画像を形成する場合、従来までのバンドメモリ及びバンドメモリアクセス方法ではバンドメモリサイズがオフセットを含めた領域、即ちX+2P必要であった。
【0018】
そこで本発明では、ヘッドの走査方向にXの領域の画像を形成する場合においても、図3の様に、バンドメモリのサイズをXだけ持てばよい方法を提供する。
【0019】
31はバンドメモリのアドレス「0」を表す。
【0020】
32はバンドメモリのアドレス「X」を表す。
【0021】
図6に本発明の処理に関わるフローを示す。
【0022】
S1はバンドメモリをアクセスするアドレスが0以上X以下かの判定を表す。
【0023】
S2はアクセスしたデータをスルーで出力する処理を表す。
【0024】
S3はアクセスしたデータをマスク(「0」に置き換える)する処理を表す。
【0025】
順を追って説明する。
【0026】
図1のヘッドをシリアルスキャンしながら、図5の画像を形成する場合に、バンドメモリには図3のように、Xのデータのみ格納する。
【0027】
バンドメモリのアクセス方法としては、ある偶数ノズル列データが格納されているアドレスをNとした場合、アドレスNに対し、奇数ノズル列データを取得するのにはアドレスN+Pをアクセスする。これは従来通り。
【0028】
奇数ノズル列が偶数ノズル列よりも先に印字開始位置に到達し、そこが画像の開始点、即ち、バンドメモリのアドレス開始点となる為、奇数ノズル列データはバンドメモリのアドレス「0」の位置からデータを取得する。するとこの時の偶数ノズル列データは、バンドメモリのアドレス「−P」の位置からデータを取得する。
【0029】
S1により、バンドメモリへアクセスするアドレスの判別を行なう。
【0030】
この場合、奇数ノズル列データはアドレス「0」で 0≦アドレス≦X の条件に適合するので、バンドメモリから読み込んだデータをS2でそのまま出力する。
【0031】
偶数ノズル列データはアドレス「−P」で、0≦アドレス≦X の条件から外れる為、S3でバンドメモリから読み込んだデータをマスク(「0」に置き換える)することで、あたかもバンドメモリからデータ「0」を読み込んできたかのように見せかける。
【0032】
バンドメモリのアドレスカウンタが進み、奇数ノズル列データがバンドメモリのアドレス「P」の位置からデータを取得する時、偶数ノズル列データはバンドメモリのアドレス「0」の位置からデータを取得し、この場合は、奇数ノズル列データと偶数ノズル列データはともに0≦アドレス≦Xの条件に適合するので、S2でバンドメモリから読み込んだデータをそのまま出力する。
【0033】
さらにバンドメモリのアドレスカウンタが進み、奇数ノズル列データがバンドメモリのアドレス「X」の位置からデータを取得する時、偶数ノズル列データはバンドメモリのアドレス「X−P」の位置からデータを取得し、この場合も、S1により、アクセスするアドレスが奇数ノズル列データと偶数ノズル列データはともに0≦アドレス≦Xに適合する為、S2でバンドメモリから読み込んだデータをそのまま出力する。
【0034】
さらにバンドメモリのアドレスカウンタが進み、奇数ノズル列データがバンドメモリのアドレス「X+P」の位置からデータを取得する時、偶数ノズル列データはバンドメモリのアドレス「X」の位置からデータを取得する。
【0035】
S1の判定により、奇数ノズル列データはアドレス「X+P」で0≦アドレス≦Xの条件から外れる為、S3でバンドメモリから読み込んだデータをマスク(「0」に置き換える)することで、あたかもバンドメモリからデータ「0」を読み込んできたかのように見せかける。また偶数ノズル列データはアドレス「X」で0≦アドレス≦Xの条件に適合するのでバンドメモリから読み込んだデータをS2でそのまま出力する。
【0036】
以上のように、バンドメモリにアクセスするアドレスの判定をし、バンドメモリの有効領域外へのアクセスの場合は、意図的にデータをマスク(「0」に置き換える)ことで、あたかもバンドメモリからデータ「0」を読み込んできたように見せかける。
【0037】
これにより、偶数列ノズルと奇数列ノズルがある所定の画素数Pだけ離れて配置されるヘッドをシリアルスキャンしながら、ヘッドの走査方向にXの画像を形成する場合において、バンドメモリ内にオフセット領域を持つことなく、必要最小限のバンドメモリサイズに節約することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ヘッドをフェイス面から見た図である。
【図2】従来のバンドメモリの図である。
【図3】本発明のバンドメモリの図である。
【図4】印字結果例の図である。
【図5】印字結果例の図である。
【図6】本発明の処理に関わるフローである。
【符号の説明】
【0039】
11 偶数列ノズル
12 奇数列ノズル
P オフセット
X ヘッドデータ有効領域
21 バンドメモリのアドレス「0」
22 バンドメモリのアドレス「P」
23 バンドメモリのアドレス「X+P」
24 バンドメモリのアドレス「X+2P」
31 バンドメモリのアドレス「0」
32 バンドメモリのアドレス「X」
S1 アドレス判別処理
S2 データスルー処理
S3 データマスク処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数列と奇数列のノズルがある所定の画素数離れて配置されるヘッドを使用し、前記ヘッドをシリアルスキャンすることでプリントを行なうインクジェットプリンタにおいて、
有効領域(偶数ノズルで打たれるドットと、奇数ノズルで打たれるドットが隙間無く埋まることで画像を形成する領域)の画像データのみバンドメモリに格納し、
オフセット領域(片方のノズル列でしか打たれない領域)の画像データはバンドメモリには格納しないことを特徴とする。
【請求項2】
前記無効領域へのデータアクセス時に意図的にデータをマスクすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ、及びデータアクセス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−7582(P2006−7582A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187858(P2004−187858)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】