説明

インクジェットプリンタ

【課題】各種素材の記録媒体に定着性良く印字を行い得るインクジェットプリンタを提案すること。
【解決手段】インクジェットプリンタ1のヘッドキャリッジ10に加熱ランプユニット40が搭載されている。加熱ランプユニット40はインクジェットヘッド11から吐出されて記録媒体30に着弾するインク液滴の直近に位置し、インク液滴を直接に加熱硬化させることができるので、効率良くインク液滴を定着させることができる。インクジェットヘッド11の直近に加熱ランプユニット40を配置すると、加熱ランプユニット40の放熱によってインクジェットヘッド11のノズルの目詰まり、インクジェットヘッド自体の熱破損が発生するおそれがあるが、冷媒循環ポンプ52によって冷媒循環パイプ51に冷媒を循環させる冷却機構50によって効率良く加熱ランプユニット40を冷却できるので、インクジェットヘッドの加熱を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、布、フィルム、ガラス板、金属板、樹脂板、木質板などの各種素材の記録媒体の表面に印字を行うのに適したインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタを用いて、厚さ、大きさの異なる各種の記録媒体に印字を行うことのできるインクジェットプリンタが提案されている。本件出願人は、特許文献1において、木製の板材、丸材などのような厚い記録媒体の表面に印字を行うのに適したインクジェット式の大型プリンタを提案している。この大型プリンタでは、記録媒体を担持した媒体搬送トレーを印字ヘッドによる印字位置を経由して搬送することにより印字を行うように構成されている。また、媒体搬送トレーの搬送機構を昇降することにより、印字ヘッドと記録媒体のギャップ調整を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2000−190467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インクジェット式のプリンタでは、インクジェットヘッドから吐出したインク液滴が記録媒体の表面に着弾し、そこに吸収されると共に硬化して、当該表面に定着する。効率良く着弾したインク液滴を定着させるためには記録媒体表面を加熱すればよい。特に、水性インクあるいはソルベントインクなどが定着し難い素材からなる記録媒体に印字を行う場合には加熱することが有効である。また、レジンインクなどのような熱硬化性インクを用いて印字を行う場合には記録媒体に着弾したインク液滴を加熱して硬化させる必要があるので、加熱は必須である。
【0004】
一般的な加熱方法は、インクジェットヘッドの印字位置を規定しているプラテンを加熱しておき、インク液滴が着弾した記録媒体の部分を加熱するというものである。しかしながら、この加熱方法は、紙のような薄い記録媒体には有効であるが、厚い記録媒体の場合にはインクの硬化に適した温度に記録媒体を加熱するために要する時間が長くなるので、有効な方法ではない。
【0005】
また、インクジェットヘッドはプラテンに対して僅かのギャップで対峙した状態に配置されており、プラテンに沿って移動しながら印字を行う。したがって、プラテンを加熱する方法では、ここに対峙しているインクジェットヘッドも加熱され、そのインクノズル内のインクが増粘・凝固してインクの目詰まりが発生してしまう。場合によっては、インクジェットヘッドが熱破壊する可能性もある。
【0006】
さらに、プラテンを通過する記録媒体の部分を均一な加熱状態とすることが困難である。このため、印字品質にバラツキができ、印字品質が劣化するおそれもある。
【0007】
これに加えて、従来では加熱手段としてニクロム線などが使用されているが、従来の加熱手段は常時通電しておく必要があり、電力消費が多く、ランニングコストが高いという問題点もある。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ガラス板、金属板、樹脂板、木質板などの各種素材の記録媒体に、定着性良く印字を行うことのできるインクジェットプリンタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンタは、
インクジェットヘッドと、
このインクジェットヘッドによる印字位置を規定しているプラテンと、
このインクジェットヘッドを担持しているヘッドキャリッジと、
前記インクジェットヘッドから吐出されて前記プラテン上の記録媒体に着弾したインク液滴を加熱する加熱器と、
前記インクジェットヘッドおよび前記加熱器を担持しているヘッドキャリッジと、
前記加熱器における放熱用開口以外の外周面部分を冷却するための冷却機構とを有し、
この冷却機構は、
前記加熱器の外側および/または内側において当該加熱器の構成部品に接触状態で配置された冷媒循環パイプと、
前記ヘッドキャリッジに干渉しない定まった位置に配置されている冷媒循環ポンプと、
前記冷媒循環ポンプおよび前記冷媒循環ポンプの間を連通している可撓性の冷媒循環チューブと、
この冷媒循環チューブを流れる冷媒を冷却するための冷却装置とを備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明のインクジェットプリンタでは、ヘッドキャリッジに加熱器が搭載され、インクジェットヘッドと共に移動する。加熱器が、インクジェットヘッドから吐出されて記録媒体に着弾するインク液滴の直近に位置しており、インク液滴を直接に加熱硬化させることができる。よって、効率良くインク液滴を記録媒体に定着させることができる。
【0011】
また、インクジェットヘッドの直近に加熱器を配置した場合には、加熱器からの放熱によってインクジェットヘッドのノズルの目詰まり、インクジェットヘッド自体の熱破損が発生するおそれがある。しかし、本発明では、冷却機構によって、加熱器を冷却するようにしているのでインクジェットヘッドの加熱を抑制あるいは防止できる。
【0012】
ここで、前記加熱器は、一般的に、一方の開口端が前記放熱用開口となっている筒状の筐体を備えている。この場合には、前記冷媒循環パイプは、この筐体の外周面および/または内周面に接触した状態に配置される。例えば、前記冷媒循環パイプは、前記筐体の外周面および/または内周面に沿って螺旋状に配置される。
【0013】
次に、本発明では、前記筐体の内周面に沿って断熱材が配置されており、前記冷媒循環パイプは、前記内周面と前記断熱材の間に配置されていることを特徴としている。このように、加熱器に断熱対策および放熱対策の双方を施すことにより、周囲への放熱を防止あるいは抑制できる。よって、隣接配置されているインクジェットヘッドが加熱されることを確実に防止できる。
【0014】
加熱器としてはハロゲンランプなどの放電ランプを用いることができる。この場合には、加熱器は、ハロゲンランプなどの放電ランプと、この放電ランプからの射出光を放熱用開口に向けて反射する反射鏡と、この反射鏡の射出用開口から同軸状態で射出方向に延びている筒状の鏡筒とを備えた構成とすることができる。
【0015】
この場合には、冷媒循環パイプは、鏡筒の外周面および/または内周面に接触した状態に配置される。冷媒循環パイプを、反射鏡の外周面に接触した状態で配置してもよい。これらの場合、冷媒循環パイプを螺旋状に配置することができる。
【0016】
なお、鏡筒の内周面に沿って断熱材を配置し、冷媒循環パイプを、この内周面と断熱材の間に配置してもよい。
【0017】
次に、本発明は、加熱器を冷却するための冷媒循環パイプに加えて、インクジェットヘッドおよび/またはヘッドキャリッジを冷却するための冷媒循環パイプを備えていることを特徴としている。
【0018】
本発明の冷却機構は、レジンインクなどの熱硬化性インクにより印字を行うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに用いるのに適している。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクジェットプリンタでは、ヘッドキャリッジに加熱器を搭載し、インクジェットヘッドから吐出して記録媒体に着弾したインク液滴を直接に加熱できるようにすると共に、インクジェットヘッドが隣接配置されている加熱器によって加熱されないように冷却機構を配置してある。したがって、本発明によれば、インクジェットヘッドが加熱されることに起因するノズルの目詰まり、インクジェットヘッド自体の熱破壊などの弊害を防止でき、しかも、インク液滴を効率良く加熱硬化させて記録媒体上に定着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明を適用したインクジェットプリンタを説明する。
【0021】
図1は本例のインクジェットプリンタを示す概略斜視図であり、図2はその制御系も含めて示す概略構成図である。本例のインクジェットプリンタ1は、縦長の矩形枠状の架台2と、この架台2に搭載されている門型の支持ユニット3と、架台2の内側に設置された水平な長方形の媒体載置面4を備えたテーブル5(プラテン)とを有している。
【0022】
支持ユニット3は、左右の垂直枠6、7と、これらの間に架け渡した水平枠8とを備えている。水平枠8は左右の垂直枠6、7の間に水平に架け渡したキャリッジガイド9を備えており、このキャリッジガイド9に沿って、ヘッドキャリッジ10がプリンタ幅方向に往復移動可能である。ヘッドキャリッジ10にはインクジェットヘッド11が下向きに担持されている。ヘッドキャリッジ10はキャリッジモータ14を含むキャリッジ駆動機構によってプリンタ幅方向Xに往復移動する。
【0023】
ヘッドキャリッジ10における移動方向の一方の側面にはハロゲンランプ41を備えた加熱ランプユニット40(加熱器)が取り付けられている。加熱ランプユニット40からの照射光は放熱用開口42から下向きに照射される。なお、ハロゲンランプ以外の加熱ランプを用いることもできる。また、加熱ランプ以外の加熱手段を用いることもできる。さらに、ヘッドキャリッジ10の両側に加熱ランプユニットを取り付けても良い。
【0024】
インクジェットヘッド11には不図示のインクタンクからレジンインクが供給され、レジンインクを用いて、媒体載置面4に載せた記録媒体30の印字面30aに印字が行われる。レジンインク以外の熱硬化性インクを用いることもできる。
【0025】
次に、ヘッドキャリッジ10などが搭載されている支持ユニット3は、架台2の左右のガイド枠15、16に沿ってプリンタ前後方向Yに移動可能な状態で支持されている。支持ユニット3は、送りモータ17を含む送り機構によってプリンタ前後方向Yに移動する。
【0026】
テーブル5には媒体載置面4を加熱するための加熱機構18が備わっている。媒体載置面4に載せた記録媒体30は、加熱機構18によって裏面側から加熱される。また、ヘッドキャリッジ10と一緒に移動する加熱ランプユニット40によって、上側からインク液滴が着弾した部分がスポット的に加熱される。本例では、加熱機構18には温度制御機能が組み込まれており、加熱ランプユニット40にはトランスなどからなる電圧制御回路19を介して駆動電流が供給され、加熱温度を制御可能となっている。
【0027】
なお、テーブル5は、例えば油圧式の昇降式テーブルであり、油圧駆動機構21によって高さ調整を行うことが可能となっている。また、各部の制御はマイクロコンピュータなどを中心に構成されているプリンタ制御盤22によって行われるようになっている。
【0028】
図3はヘッドキャリッジ10に搭載されている加熱ランプユニット40を示す概略斜視図、およびその概略断面図である。加熱ランプユニット40は、ハロゲンランプ41と、このハロゲンランプ41が取り付けられている反射鏡43と、この反射鏡43の射出開口部の側に同軸状態で取り付けられている矩形断面の鏡筒44とを備えており、鏡筒44の下端開口が放熱用開口42となっている。鏡筒44は矩形断面以外の形状でもよく、例えば円筒状のものであってもよい。ハロゲンランプ41の発光部からの出射光は、反射鏡43によって反射されて、媒体載置面4上の記録媒体30の印字面30aに所定の径の光スポット45を形成し、当該印字面30aの部位を加熱する。
【0029】
この構造の加熱ランプユニット40には冷却機構50が取り付けられている。図1、図2および図3を参照して説明すると、冷却機構50は、加熱ランプユニット40の外側および/または内側において当該加熱ランプユニット40の構成部品に接触状態で配置された冷媒循環パイプ51と、ヘッドキャリッジ10に干渉しない定まった位置に配置されている冷媒循環ポンプ52と、冷媒循環パイプ51および冷媒循環ポンプ52の間を連通している可撓性の冷媒循環チューブ53、54と、一方の冷媒循環チューブ53を流れる冷媒を冷却するための冷却装置55とを備えている。
【0030】
冷媒循環パイプ51は、加熱ランプユニット40の鏡筒44の内周面に接触した状態で当該内周面に沿ってらせん状に配置されている。冷媒循環パイプ51は、熱伝導率の良い銅管などを用いることができる。冷媒循環パイプ51の両端部分51a、51bは、鏡筒44の上端面から上方に突出している。これらの両端部分51a、51bは、それぞれ冷媒循環チューブ53、54の一端に接続されている。冷媒循環チューブ53の他端は冷却装置55を介して冷媒循環ポンプ52の吸引口に接続され、冷媒循環チューブ54の他端は冷媒循環ポンプ52の吐出口に接続されている。冷媒循環ポンプ52は、ヘッドキャリッジ10の移動範囲から横方に外れた位置に配置されている。
【0031】
この構成のインクジェットプリンタ1の動作を説明する。テーブル5の媒体載置面4に記録媒体30を載せ、油圧駆動機構21によって記録媒体30の印字面30aとインクジェットヘッド11のギャップ調整を行う。これに先立って、あるいは、このギャップ調整の後に、加熱機構18を駆動して媒体載置面4を加熱する。
【0032】
しかる後に、キャリッジモータ14および送りモータ17を駆動して、支持ユニット3を図示のホームポジションからプリンタ前後方向Yに移動させると共に、そこに搭載されているヘッドキャリッジ10をプリンタ幅方向Xに移動させる。これに同期させて、ヘッドドライバ23を介してインクジェットヘッド11を駆動して、レジンインク液滴を記録媒体30の印字面30aに吐出しながら所望の印字を行う。
【0033】
インクジェットヘッド11の印字動作に先立って加熱ランプユニット40が点灯する。したがって、インクジェットヘッド11から記録媒体30の印字面30aに吐出されてそこに付着したレジンインク液滴31には直ちに熱線が照射され、熱硬化を開始する。本例では、媒体載置面4も加熱されているので、記録媒体30の印字面30aを、レジンインクが熱硬化するのに適した最適な加熱状態に保持できる。よって、印字動作と同時にレジンインク液滴が印字面30aに定着していく。このようにして印字および熱硬化が同時に行われながら、記録媒体30の印字面30aに印字が行われる。
【0034】
また、加熱ランプユニット40は、そこに配置されている冷却機構50によって冷却される。すなわち、加熱ランプユニット40で発生した熱は、冷媒循環パイプ51を循環する冷媒によって放出される。印字動作が終了すると、支持ユニット3は再び図示のホームポジションに復帰する。
【0035】
以上説明したように、本例のインクジェットプリンタ1では、レジンインクを用いて記録媒体30の印字面に印字を行うようにしている。したがって、各種素材の記録媒体に対してインク受像面を形成するための下地処理を前もって行うことなく、印字を行うことができる。
【0036】
また、印字動作と同時に加熱ランプユニット40によってレジンインクの熱硬化も行われるので、印字動作の終了と同時にインクが定着した状態の印字後の記録媒体が得られる。これに加えて、加熱機構18によって媒体載置面4も加熱されているので、効率良くレジンインクを熱硬化させることができ、したがって、レジンインクを用いて効率の良い印字動作を実現できる。
【0037】
さらに、加熱ランプユニット40には冷却機構50が取り付けられており、加熱ランプユニット40で発生した熱が冷却機構50によって効率良く放出される。よって、隣接した位置に配置されているインクジェットヘッド11が加熱ランプユニット40からの熱によって加熱されて、ノズルの目詰まり、インクジェットヘッド自体の熱破壊などが引き起こされることを防止できる。
【0038】
これに加えて、本例では、テーブル5を昇降させることにより、プラテンギャップを調整できるので、薄い布、フィルムなどから、厚い樹脂板、金属板、あるいは木製板などまで、各種の厚さの記録媒体に対して、印字品位を低下させることなく印字を行うことができる。
【0039】
次に、本例の架台2は矩形枠状のものであるが、その左右のガイド枠15、16の間に架け渡されている前枠25を取り外した構成のものを用いることもできる。この場合には、左右のガイド枠15、16の間に配置されているテーブル5に車輪などを取り付けておくことにより、左右のガイド枠15、16の間に位置する設置位置から引き出すことができる。テーブル5を引き出して、別の場所において記録媒体を載せ、記録媒体が載ったテーブルを左右のガイド枠15、16の間に入れて位置決めすれば、記録媒体が設置された状態を形成できる。これにより記録媒体の交換作業を簡単かつ効率良く行うことができる。特に、重量のある大型の記録媒体に印字を行う場合に有利である。
【0040】
なお、上記の例は大型のインクジェットプリンタに本発明を適用した例である。本発明は、紙、フィルム、布などに印字を行う小型のプリンタに対しても同様に適用できることは勿論である。
【0041】
(その他の実施の形態)
図4は冷却機構50における冷媒循環パイプの配置例を示す説明図である。図4(a)の例では、加熱ランプユニット40の鏡筒44の外周面を螺旋状に取り囲む状態で冷媒循環パイプ51が取り付けられている。図4(b)の例では、加熱ランプユニット40の反射鏡43(ランプカバー)の背面に沿って円錐台状に冷媒循環パイプ51が取り付けられている。
【0042】
次に、冷却機構50と断熱材を組み合わせて、インクジェットヘッド11が加熱されないようにすることもできる。例えば、図5に示すように、加熱ランプユニット40の鏡筒44Aとして円筒状のものを用い、その内周面に等角度間隔で、例えば冷媒循環パイプ51を鏡筒軸線方向に一定のピッチでらせん状に配置する。冷媒循環パイプ51の内側に、鏡筒内周面および冷媒循環パイプ51を覆うように円筒状の断熱材59を配置する。このようにすれば、放熱および断熱作用を利用して、インクジェットヘッド11の加熱を防止できる。
【0043】
次に、加熱ランプユニット40に冷却機構50を取り付けると共に、冷却機構をインクジェットヘッド11あるいはヘッドキャリッジ10に取り付けて、これらを直接に冷却することもできる。例えば、図6に示すように、ヘッドキャリッジ10に搭載されているインクジェットヘッド11の外周を取り囲む状態でヘッド側冷媒循環パイプ71を配置し、この両端にそれぞれ可撓性冷媒循環チューブ71a、71bを接続し、これらを、ヘッドキャリッジ10の外側に引き出して、冷媒循環パイプ51と並列状態となるように、冷媒循環チューブ53、54に接続する。この構成によれば、インクジェットヘッド11が加熱状態に陥ることを確実に防止できる。
【0044】
一方、インクジェットヘッド11の両側に加熱ランプユニット40を配置した構成を採用することもできる。
【0045】
(加熱器の制御方法)
なお、印字対象の記録媒体の材質が異なる場合などにおいては、各記録媒体の比熱が異なり、そこに着弾したインク液滴を硬化させるために適した照射温度を変える必要がある。照射温度を変える方法としては、加熱手段、例えば加熱ランプの駆動電圧、駆動電流を制御すればよい。また、照射光の照射経路上に遮光フィルタを出し入れして、照射光量を増減して照射温度を変えることができる。
【0046】
照射温度の切替制御は、例えば、手動式の選択スイッチを配置しておき、これを操作することにより多段階に切り替えるようにすることができる。また、プリンタドライバ内に照射温度制御用のプログラムを搭載しておき、周囲温度、選択された記録媒体の素材の種類などに応じて自動的に照射温度を制御するようにしてもよい。
【0047】
また、加熱器による加熱を必要なときにのみ行うように制御することが望ましい。すなわち、インクジェットヘッド11によって実際に印字が行われるときにのみ、加熱器をオンにして記録媒体の表面を加熱すれば、インクジェットヘッド11が加熱されることを抑制でき、また、加熱器による消費電力も削減できる。
【0048】
ここで、加熱ランプユニットのランプとしてハロゲンランプなどの放電ランプを用いる場合には、次のようにハロゲンランプを駆動制御することが望ましい。まず、ハロゲンランプのスイッチがオンになったところで、瞬時に点灯して目標温度まで上げる。また、温度の立ち上がり速度を上げるために、ハロゲンランプの駆動電圧を制御することにより、半点灯状態を形成可能とする。
【0049】
そして、インクジェットヘッドが印字を行うときにのみ、全点灯状態に切り替え、それ以外の状態では消灯あるいは半点灯状態に保持する。例えば、インクジェットヘッドがそのホームポジションに待機している状態、インクジェットヘッドのクリーニング時には、そのような状態に保持する。さらに、極端な温度上昇を招くことのないように、ランプ駆動制御回路には、サーミスタ、熱電対を使い、温度管理を行う。また、非常時には緊急停止回路を設けて、ランプを強制的にオフに切り替えるようにする。
【0050】
なお、記録媒体によって照射温度を変更する必要があるので、照射温度制御回路を設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンタの概略斜視図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図3】図1の加熱器および冷却機構を示す概略斜視図および概略断面図である。
【図4】冷媒循環パイプの配置例を示す説明図である。
【図5】断熱材を備えた加熱器を示す説明図である。
【図6】インクジェットヘッドの冷却機構の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンタ
2 架台
3 支持ユニット
4 媒体載置面
5 テーブル
6、7 垂直枠
8 水平枠
9 キャリッジガイド
10 ヘッドキャリッジ
11 インクジェットヘッド
14 キャリッジモータ
15、16 ガイド枠
17 送りモータ
18 加熱機構
19 電圧制御回路
21 油圧駆動機構
22 プリンタ制御盤
23 ヘッドドライバ
25 前枠
30 記録媒体
30a 印字面
40 加熱ランプユニット
41 ハロゲンランプ
42 放熱用開口
43 反射鏡
44、44A 鏡筒
45 光スポット
50 冷却機構
51 冷媒循環パイプ
52 冷媒循環ポンプ
53、54 冷媒循環チューブ
71 ヘッド側冷媒循環パイプ
59 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、
このインクジェットヘッドによる印字位置を規定しているプラテンと、
前記インクジェットヘッドから吐出されて前記プラテン上の記録媒体に着弾したインク液滴を加熱する加熱器と、
前記インクジェットヘッドおよび前記加熱器を担持しているヘッドキャリッジと、
前記加熱器における放熱用開口以外の外周面部分を冷却するための冷却機構とを有し、
この冷却機構は、
前記加熱器の外側および/または内側において当該加熱器の構成部品に接触状態で配置された冷媒循環パイプと、
前記ヘッドキャリッジに干渉しない定まった位置に配置されている冷媒循環ポンプと、
前記冷媒循環ポンプおよび前記冷媒循環ポンプの間を連通している可撓性の冷媒循環チューブと、
この冷媒循環チューブを流れる冷媒を冷却するための冷却装置とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記加熱器は、一方の開口端が前記放熱用開口となっている筒状の筐体を備えており、
前記冷媒循環パイプは、この筐体の外周面および/または内周面に接触した状態に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記冷媒循環パイプは、前記筐体の外周面および/または内周面に沿って螺旋状に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記筐体の内周面に沿って断熱材が配置されており、
前記冷媒循環パイプは、前記内周面と前記断熱材の間に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記加熱器は、ハロゲンランプなどの放電ランプと、この放電ランプからの射出光を前記放熱用開口に向けて反射する反射鏡と、この反射鏡の射出用開口から同軸状態で射出方向に延びている筒状の鏡筒とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記冷媒循環パイプは、前記鏡筒の外周面および/または内周面に接触した状態に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記冷媒循環パイプは、前記反射鏡の外周面に接触した状態で配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記冷媒循環パイプは螺旋状に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記冷却機構は、前記インクジェットヘッドおよび/または前記ヘッドキャリッジの構成部品に接触状態で配置されたヘッド側冷媒循環パイプを備え、
前記冷媒循環ポンプから前記冷媒循環チューブおよび前記ヘッド側冷媒循環パイプを経由して冷媒が循環することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記インクジェットヘッドは、レジンインクなどの熱硬化性インクにより印字を行うものであることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−279727(P2008−279727A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128093(P2007−128093)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(594106911)株式会社マスターマインド (12)
【Fターム(参考)】