説明

インクジェットプリンタ

【課題】プリント部と乾燥ユニットとを備えたインクジェットプリンタにおいて、ウォームアップ動作時に乾燥ユニットで生じる熱が、プリント部の空間に伝わったとしても、簡単な構成で、その空間内で温度ムラが生じるのを防止する。
【解決手段】ウォームアップ動作時に、プリント部2の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を設ける。この撹拌手段は、ペーパーP1,P2をプラテン34の支持面上に吸着保持させる吸引装置35で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパーに対してインクを吐出して印刷を行うプリントヘッドを有するプリント部と、該プリントヘッドによる印刷後のペーパーに付着したインクを乾燥させるためのヒータを有する乾燥部とを備えたインクジェットプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタは、ペーパーに対してインクを吐出して印刷を行うプリントヘッドを有するプリント部を備えている。このプリントヘッドは、搬送機構によってプリント部に搬送されてくるペーパーに対して、該ペーパーの搬送方向(副走査方向)と垂直な方向(主走査方向)に沿って往復動しながらインクを吐出して、ペーパー上に画像(文字等も含む。以下、同じ。)を印刷する。この印刷後のペーパーは、排出トレイ上に排出される。
【0003】
ここで、印刷速度が遅いプリンタでは、印刷後のペーパーが排出トレイ上に排出される前に、該ペーパー上に付着しているインクが乾燥するので、そのインクを熱により乾燥させる必要はない。ところが、印刷速度が速いプリンタでは、印刷後のペーパーが、インクが自然乾燥しないうちに排出トレイ上に排出されることになり、これを防止すべく、印刷後のペーパーに付着しているインクを熱により乾燥させることが行われる。すなわち、ペーパー上に付着しているインクが乾燥していない状態で、その上側に新たなペーパーが積載されると、その新たなペーパーとその下側のペーパー上に付着しているインクとが擦れ合って、その下側のペーパーのプリント品質が低下するとともに、上側のペーパーの裏面にインクが付着して汚れるという問題が生じる。また、新たなペーパーが積載されることにより、下側のペーパー上に付着しているインクの乾燥ムラが生じ、この乾燥ムラによってもプリント品質の低下を招く。このため、印刷速度が速いプリンタでは、印刷後のペーパーに付着しているインクを熱により乾燥させる必要がある。
【0004】
例えば特許文献1では、印刷後のペーパーに付着しているインクを乾燥させるための加熱ローラ、赤外ヒータ及び空気ノズルを有する乾燥部を設けて、加熱ローラ及び赤外ヒータによりペーパー表面を加熱するとともに、空気ノズルによりペーパー表面に空気を吹き付けてインクの乾燥を促すようにしている。また、特許文献1では、乾燥部から発する熱エネルギーが、プリント部に直接に伝達されることを阻止する伝熱阻止手段が設けられている。
【特許文献1】特開2001−270089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のように乾燥部を設けて、印刷後のペーパーに付着しているインクを乾燥させる場合には、乾燥部で生じる熱がプリント部の空間に伝わり、該空間内で温度ムラが生じてしまう。特に、プリンタへの電源投入時や、ヒータを低温状態にした待機モードから、高温状態にした使用モードに変更したとき等のように、ヒータの昇温動作を含むウォームアップ動作時に前記温度ムラが生じ易くなる。
【0006】
前記のようにウォームアップ動作時に温度ムラが生じると、その温度ムラは、ウォームアップ動作後においてもしばらくの間解消されず、以下のような問題が生じる。すなわち、プリントヘッドから吐出されたインクのペーパーに対する着弾位置は、そのインクの飛翔空間の温度によって変化するため、通常、その温度に応じてインク吐出タイミングを補正するが、コスト等の観点から、1つの温度センサにより、プリント部の空間内の温度を検出し、この検出した温度をインク飛翔空間の温度としている。このため、前記のような温度ムラがあると、温度センサにより検出された温度と実際のインク飛翔空間の温度とに差が生じてしまう。また、プリントヘッドにおいて複数のヘッドユニットをペーパー搬送方向に並べて配置した場合、前記温度ムラによって、乾燥部に近い側のヘッドユニットのインク飛翔空間と、遠い側のヘッドユニットのインク飛翔空間との間で温度差が生じ、この結果、複数のヘッドユニット間でインク着弾位置がずれて、プリント品質が低下してしまう。
【0007】
ここで、特許文献1では、伝熱阻止手段を設けているが、このような伝熱阻止手段によりプリント部への伝熱を完全に阻止することは困難であり、たとえ可能であったとしても、コストアップやスペースの増大を招いてしまう。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記のようにプリント部と乾燥部とを備えたインクジェットプリンタにおいて、ウォームアップ動作時に乾燥部で生じる熱が、プリント部の空間に伝わったとしても、簡単な構成で、その空間内で温度ムラが生じるのを防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、この発明では、乾燥部のヒータの昇温動作を含むウォームアップ動作時に、プリント部の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を設けるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、ペーパーに対してインクを吐出して印刷を行うプリントヘッドを有するプリント部と、該プリントヘッドによる印刷後のペーパーに付着しているインクを乾燥させるためのヒータを有する乾燥部とを備えたインクジェットプリンタを対象とする。
【0011】
そして、前記ヒータの昇温動作を含むウォームアップ動作時に、前記プリント部の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を備えているものとする。
【0012】
前記の構成により、ウォームアップ動作時に、撹拌手段により、プリント部の空間内の空気を撹拌するので、その空間内の温度を均一化することができ、簡単な構成で、その空間内で温度ムラが生じるのを防止することができる。この結果、ウォームアップ動作が終了して印刷する際にも、温度ムラが生じず、プリントヘッド等に設けた温度センサにより検出された温度をインク飛翔空間の実温度と略等しくすることができる。また、プリントヘッドにおいて複数のヘッドユニットをペーパー搬送方向に並べて配置したとしても、これら複数のヘッドユニットのインク飛翔空間の間で温度差が生じるのを防止することができる。よって、プリント品質を良好に維持することが可能になる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記プリント部は、前記プリントヘッドにより印刷されるペーパーを支持する支持面と該支持面に開口する吸引用孔とを有するプラテンと、前記プリントヘッドによる印刷時に該プラテンの支持面上のペーパーを、前記吸引用孔を介して吸引することで該支持面上に吸着保持させる吸引装置とを更に有し、前記撹拌手段は、前記吸引装置で構成されていて、前記ウォームアップ動作時に作動して、前記空間内の空気を、前記吸引用孔より吸引することで撹拌するように構成されているものとする。
【0014】
このことにより、印刷時にペーパーをプラテンの支持面上に吸着保持させる吸引装置を、ウォームアップ動作時にも作動させて、撹拌手段として機能させることができる。この吸引装置は、印刷時のペーパーの平面性を確保してプリント品質を向上させるために用いられているので、このような吸引装置を備えたインクジェットプリンタでは、吸引装置を撹拌手段に用いることができるので、低コストで且つ簡単な構成で、プリント部の空間内で温度ムラが生じるのを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記撹拌手段は、前記プリント部の空間内に配設されたファンで構成されているものとする。
【0016】
このことで、ファンを、プリント部の空間内の温度をより均一化できる箇所に配設することができ、プリント品質を良好に維持することが確実にできるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタによると、乾燥部のヒータの昇温動作を含むウォームアップ動作時に、プリント部の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を設けたことにより、簡単な構成で、プリント部の空間内で温度ムラが生じるのを防止することができ、プリント品質を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタAの外観を示し、図2〜図7は、インクジェットプリンタAの内部構成を示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロックから通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいてプリントペーパーP1,P2に印刷を行うものであって、ロール状に巻かれた長尺のプリントペーパーP2の一端を引き出して当該プリントペーパーP2(以下、ロールペーパーP2と呼ぶ)のプリント面に印刷を行う自動印刷と、予め所定のサイズに切断されたシート状のプリントペーパーP1(以下、シートペーパーP1と呼ぶ)のプリント面に印刷を行う手差印刷とを実行可能に構成されている。
【0020】
なお、以下の説明において特にロールペーパーP2とシートペーパーP1を区別する必要がないときは、該ロールペーパーP2及びシートペーパーP1のことをプリントペーパーP1,P2と言う。また、プリント面とは、印刷が行われる面を意味し、シートペーパーP1のプリント面は、該シートペーパーP1を手差トレイ81(図7参照)にセットしたときに決まるものである。具体的には、シートペーパーP1を手差トレイ81にセットしたときに、上側を向く面がプリント面とされている。また、ロールペーパーP2のプリント面は、該ロールペーパーP2がロール状に巻かれた状態にあるときに、径方向外側を向く面がプリント面とされている。
【0021】
−全体構成−
図7に示すように、前記インクジェットプリンタAは、プリンタ本体部90と、前記シートペーパーP1を手差しによりセットしてプリンタ本体部90内に供給するための手差トレイ81とを備えており、前記プリンタ本体部90は、筐体6と、この筐体6内の下部に設けられ、プリント面を外側にしてロール状に巻かれたロールペーパーP2が収容されるロールペーパー収容部1と、筐体6の上部(ロールペーパー収容部1の上側)に設けられ、前記手差トレイ81から供給されたシートペーパーP1のプリント面又は該ロールペーパー収容部1から引き出されたロールペーパーP2のプリント面に対して、画像データに基づいて印刷を行うプリント部2(図2、図7参照)と、筐体6の下部においてロールペーパー収容部1の両側側方に位置し、前記プリント部2に供給されるインクを貯留しておくためのインク貯留部3と、筐体6に開閉自在に取り付けられた扉部材95の上部に設けられ、該扉部材95が閉状態にあるときに前記手差トレイ81にセットされたシートペーパーP1をプリント部2に向かって搬送供給するローラユニット200とを備えている。
【0022】
前記筐体6の上部で、前記プリント部2のペーパー搬送方向下流側には、プリント後のプリントペーパーP1,P2の不要な部分を切断するためのローラカッター41と、該プリントペーパーP1,P2の裏面に整理番号を印字するための裏面印字ユニット4と、プリント部2で印刷されたプリントペーパーP1,P2に付着しているインクを乾燥させる乾燥ユニットU6(乾燥部に相当)と、プリント部2で印刷されたプリントペーパーP1,P2をさらに下流側に搬送して排出するための排出ローラ46とが配設されている。この排出ローラ46のペーパー搬送方向下流側には、筐体6の排出口47(図8参照)から外側へ突出するように設けられ且つ排出ローラ46により排出されるプリントペーパーP1,P2を受け止めるための排出トレイ5が配設されている。
【0023】
本実施形態では、筐体6において排出トレイ5の側(図3に記載した排出側)を筐体前側といい、排出トレイ5と反対側(図3に記載した供給側)を筐体後側といい、筐体前側から見て左側を筐体左側といい、右側を筐体右側と言う。従って、図7の左右方向が筐体前後方向となり、図7の紙面と垂直な方向が筐体左右方向となる。この筐体左右方向は、前記手差トレイ81にセットされ且つ搬送されるシートペーパーP1の幅方向、及びロールペーパー収容部1に収容され且つ搬送されるロールペーパーP2の幅方向と一致する。
【0024】
前記プリント部2は、プリントペーパーP1,P2に対してインクを吐出して画像を形成するプリントヘッドH(図2〜図4及び図7参照)を備えている。このプリントヘッドHは、プリントペーパーP1,P2の幅方向(筐体左右方向)と一致する主走査方向X(図3参照)に延びるレール30に沿って移動可能に構成されている。具体的には、駆動モータ32の回転力がプーリを介して駆動ベルト31に伝達され、駆動ベルト31の回転量に応じてプリントヘッドHが主走査方向Xに移動するようになっている。
【0025】
また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であってプリントペーパーP1,P2の移動方向(筐体前後方向)と一致する副走査方向Y(図3参照)に並ぶ2つのヘッドユニット38(図7参照)を有しており、これら2つのヘッドユニット38に設けられているインク吐出ノズル(図示省略)からインクを吐出することで、プリントペーパーP1,P2に対して所定の画像を印刷できるようになっている。
【0026】
前記インク貯留部3は、それぞれ、インクジェットプリンタAの左右両側に配置された箱状のケース61(図4参照)を備えており、該ケース61内には、互いに色相の異なるインクが封入された7つのインクカートリッジ62が着脱可能に収容されている(図4では、左側に3つ右側に4つのカートリッジが収容されている)。従って、これらのインクカートリッジ62をケース61から着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。なお、これらのインクカートリッジ62にはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、バイオレット(V)及びクリア(CL:透明)の各インクが封入されている。
【0027】
また、前記インクジェットプリンタAの排出側から見て左側で、前記インク貯留部3とプリント部2との間の高さ位置には、インクカートリッジ62から供給されるインクを一時的に貯留するためのサブタンク52(図4及び図5参照)が設けられている。そして、これらのサブタンク52は、前記プリント部2のプリントヘッドHに繋がっていて、該プリントヘッドHのノズルからインクを吐出する際の負圧によってサブタンク52内のインクがプリントヘッドHへ供給されるようになっている。
【0028】
−ペーパー搬送機構−
図7に示すように、インクジェットプリンタAには、前記ロールペーパー収容部1からロールペーパーP2を引き出して所定のペーパー搬送経路に沿って搬送するペーパー搬送機構が設けられている。このペーパー搬送機構は、前記ペーパー搬送経路を構成すべく、ロールペーパーP2を供給する供給ユニットU1から順に、供給ユニットU1、プリントユニットU2、カッターユニットU3、乾燥ユニットU6及び排出ユニットU4を備えており、プリント部2に配設されたプリントユニットU2のペーパー搬送経路上に位置するプリントペーパーP1,P2のプリント面に対して画像データの印刷が行われるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、プリントユニットU2に対して、供給ユニットU1からロールペーパーP2を供給する以外にも、手差トレイ81からシートペーパーP1を引き込んでプリント部2へと搬送供給できるように構成された手差し供給ユニットU5も備えている。
【0030】
前記ペーパー搬送機構は、ロールペーパーP2への印刷時には、ロールペーパー収容部1にセットされたロールペーパーP2を、供給ユニットU1によってプリントユニットU2に搬送供給し、それから、その供給されたロールペーパーP2をプリントユニットU2によって搬送しながらプリントヘッドHにより画像データの印刷を行う。そして、印刷されたロールペーパーP2をカッターユニットU3に搬送して該カッターユニットU3で所定のプリントサイズに切断した後、乾燥ユニットU6でロールペーパーP2を乾燥させ、排出ユニットU4で排出トレイ5へ送り出す。
【0031】
また、前記ペーパー搬送機構は、シートペーパーP1への印刷時には、手差トレイ81にセットされたシートペーパーP1を、手差し供給ユニットU5によってプリントユニットU2に搬送供給し、その後は、前記ロールペーパーP2と同様である。但し、シートペーパーP1の場合には、通常、カッターユニットU3で切断しない。
【0032】
前記手差し供給ユニットU5は、シートペーパーP1をプリント部2に導くためのローラユニット200を備えている。このローラユニット200は、駆動ローラ202と従動ローラ201とを備えている。そして、手差し供給ユニットU5は、前記駆動ローラ202を回転駆動させることにより、シートペーパーP1を手差トレイ81からプリンタ本体部90内へと導く。
【0033】
前記供給ユニットU1は、ロールペーパー収容部1内にロールペーパーP2をロール状に巻いて収容するための巻芯ローラ21と、該巻芯ローラ21から引き出されたロールペーパーP2の幅方向の位置決めを行うための幅規制ローラ22と、後述する閉塞ローラ23と、図示しない電動モータによって、ロールペーパーP2を搬送するように回転駆動される搬送駆動ローラ24と、該搬送駆動ローラ24に対向配置され、搬送駆動ローラ24との間にロールペーパーP2を挟持するように搬送駆動ローラ24に圧着される2つの圧着ローラ25とを備えている。
【0034】
そして、供給ユニットU1は、搬送駆動ローラ24の回転駆動によって、ロールペーパーP2をロールペーパー収容部1から引き出してプリント部2側へ搬送するように構成されている。なお、本実施形態では、幅規制ローラ22を設けているが、この代わりに幅規制用のガイドを設けるようにしてもよい。
【0035】
前記閉塞ローラ23は、ロールペーパー収容部1の気密性を確保してロールペーパー収容部1内が低湿度状態にならないようにするために設けられたものである。すなわち、ロールペーパー収容部1を区画形成する壁の一部には、ロールペーパーP2を筐体6内部におけるロールペーパー収容部1の外側(つまりプリント部2側)に導出するためのペーパー導出開口部9を形成する必要がある。このペーパー導出開口部9が開放されたままでは、ロールペーパー収容部1の気密性を確保することができない。そこで、ペーパー導出開口部9に、該ペーパー導出開口部9をロールペーパーP2が通過可能に閉塞する閉塞ローラ23を設けている。
【0036】
そして、前記閉塞ローラ23は、少なくとも外周部がスポンジ材等の発泡材料やゴム材等のような弾性変形可能な材料で構成されたものであって、ペーパー導出開口部9を通過するロールペーパーP2に対して、径方向内側に弾性変形した状態で接触して従動回転するようになっている。このとき、ロールペーパーP2は、閉塞ローラ23と反対側に設けた案内部材10に押し付けられる(この押付力はかなり小さい)。このことで、ロールペーパー収容部1の気密性を確保しつつ、ロールペーパーP2が閉塞ローラ23から抵抗をほとんど受けることなくペーパー導出開口部9を通過することができる。
【0037】
一方、ロールペーパーP2がペーパー導出開口部9に存在しない状態では、閉塞ローラ23が前記案内部材10と接触しており、このときも、ロールペーパー収容部1の気密性が確保される。このように気密性が確保されたロールペーパー収容部1には、内部に水を収容し且つ上部が開口した容器13が設置され、この容器13内の水が水蒸気に気化することによってロールペーパー収容部1内が効率良く加湿される。
【0038】
これにより、インクジェットプリンタA自体が長時間低湿度下に置かれた状態であっても、ロールペーパー収容部1内は適度の湿度(相対湿度30〜75%の範囲で使用可能。好ましくは40〜60%)に維持されて、ロールペーパーP2の幅方向中央部が幅方向両端部に対してプリント面側へ突出するようなカールの発生を防止することができる。
【0039】
前記搬送駆動ローラ24は、図示しない電動モータによって、ロールペーパーP2をロールペーパー収容部1から引き出してプリント部2側へ搬送する正方向の回転と、該ロールペーパーP2をロールペーパー収容部1内へ戻す逆方向の回転とが可能なように構成されている。
【0040】
これにより、プリント部2よりもペーパー搬送方向下流側のカッターユニットU3でロールペーパーP2の印刷済みの部分を所定サイズに切断した後、該切断後の長尺のロールペーパーP2を上流側に戻して該ロールペーパーP2の先頭から印刷を行ったり、切断後のロールペーパーP2をロールペーパー収容部1内に戻しておいて、手差し供給ユニットU5により単票状のシートペーパーP1をプリント部2に供給して印刷を行ったりすることができるようにしている。また、ロールペーパーP2を新たなものに交換する際にも、ロールペーパー収容部1の外側に引き出されているロールペーパーP2をロールペーパー収容部1内に戻すことができる。
【0041】
前記プリントユニットU2は、プリントペーパーP1,P2を前記プリントヘッドHにより印刷を行うことが可能な位置に吸着保持するペーパー保持部D(図3及び図7参照)と、このペーパー保持部Dのペーパー搬送方向下流側に配設された圧着型のプリント搬送ローラ33とを備えている。なお、供給ユニットU1の搬送駆動ローラ24及び圧着ローラ25は、プリントユニットU2にも兼用されており、プリントペーパーP1,P2をプリントユニットU2において搬送する役割を果たす。
【0042】
前記ペーパー保持部Dは、プリントペーパーP1,P2を支持する支持面34c(図3参照)と該支持面34cに開口する吸引用孔34a(図3参照)とを有するプラテン34と、前記プリントヘッドHによる印刷時に該支持面34c上のプリントペーパーP1,P2を、前記吸引用孔34aを介して吸引することで支持面34c上に吸着保持させる、ファンで構成された吸引装置35とを備えている。前記プリントヘッドHの2つのヘッドユニット38は、プラテン34の支持面34cの上側において、該支持面34cに対して僅かな隙間をあけて対向していて、その隙間を維持した状態で主走査方向Xに移動するようになっている。
【0043】
前記プラテン34は、板状の部材からなり、該プラテン34の裏面(下面)側には、該プラテン34と共に空間を形成するケース体36が配設され、このケース体36の下側に前記吸引装置35が配設されている。そして、前記吸引用孔34aは、プラテン34の厚み方向に貫通してケース体36内の空間と連通し、この空間は、ケース体36の下部に設けた開口を介して吸引装置35の吸込み口と連通しており、吸引装置35の作動により吸引用孔34aを介してプラテン34の支持面34c側に負圧が生じ、このことでプリントペーパーP1,P2がプラテン34の支持面34c上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時のプリントペーパーP1,P2の平面性を確保してプリント品質を向上させることが可能になる。
【0044】
また、図3に示すように、プラテン34の支持面34cには、印刷時にインクの増粘を防止するためにプリントヘッドHにおけるヘッドユニット38のインク吐出ノズルから吐出される少量のインクを受け止めるフラッシング部37と、非印刷時のプリントヘッドHの待機位置に設けられて、インクの増粘防止のために該プリントヘッドHにおけるヘッドユニット38のインク吐出ノズルを覆うように構成されたキャップ部(図示省略)と、凹部34bとが設けられている。
【0045】
前記フラッシング部37は、プラテン34に形成された開口部37a(図3参照)と、該プラテン34におけるフラッシング部37の下側に設けられ、該開口部37aに連通するような空間を形成するケース体(図示省略)とを備えており、該ケース体はインクジェットプリンタAの筐体前側下部に設けられた廃液タンク7(図2及び図7参照)に連通している。また、前記開口部37aには、インクを吸収可能なスポンジ状のインク吸収材37bが配設されていて、このインク吸収材37bに染み込んだインクも、フラッシング部37の下側に位置する前記ケース体内部の空間内に溜まるようになっている。これにより、フラッシング部37の開口部37aに向かって吐出されたインクは、前記ケース体内部の空間内に溜まった後に廃液タンク7へと導かれることになる。
【0046】
なお、前記キャップ部については、特に図示しないが、キャップ部がプリントヘッドHの下面を覆っているときに、内部が負圧にされる空間が形成され、この空間内に前記インク吐出ノズルから微量のインクを吸い出すように構成されている。これにより、該インク吐出ノズルでインクが増粘することで吐出し難くなるのを防止することができる。
【0047】
前記凹部34bは、プリントペーパーP1,P2の幅方向の端縁まで画像を印刷した縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット38)より吐出したインクの一部が前記支持面34c上のプリントペーパーP1,P2の幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン34の支持面34cが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部34bは、支持面34cにおいて該支持面34c上のプリントペーパーP1,P2の幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向Yにおける各ヘッドユニット38に対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。プリントペーパーP1,P2の幅方向の端縁は、左右両側にあり、本実施形態では、4種類の幅のプリントペーパーP1,P2に対応可能になっているため、1つのヘッドユニット38について、片側4つずつの合計8つの凹部34bが設けられている。
【0048】
前記各凹部34b内には、前記プリントヘッドH(ヘッドユニット38)から吐出されるインクのうち支持面34c上のプリントペーパーP1,P2の幅方向の端縁から外側に外れたインクを吸収するスポンジ状のインク吸収材(図示せず)が、該端縁に沿って延びるように嵌め込まれており、このインク吸収材に吸収されたインクは、廃液タンク7に回収されるようになっている。
【0049】
前記プリントヘッドHは、前述の如く、その下面(プラテン34と対向する面)に、多数のインク吐出ノズルが設けられたヘッドユニット38が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット38は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0050】
前記両ヘッドユニット38は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された前記各色のインクを吐出するための7つのノズルアレイから構成されている。各ノズルアレイにおいて、前記インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット38は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、プリントペーパーP1,P2は、前記搬送駆動ローラ24により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時におけるプリントペーパーP1,P2の各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット38の各色のインク吐出ノズルからインクがプリントペーパーP1,P2のプリント面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、プリントペーパーP1,P2が単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0051】
前記各ヘッドユニット38のインク吐出ノズルから吐出されたインクのプリントペーパーP1,P2に対する着弾位置は、そのインクの飛翔空間の温度によって変化するため、本実施形態では、プリントヘッドHに、プリント部2の空間内の温度を検出する1つの温度センサ101(図7参照)を配設して、この温度センサ101により検出される温度を各ヘッドユニット38のインク飛翔空間の温度として、該温度に応じてインク吐出タイミングを補正するようにしている。
【0052】
なお、この温度センサ101の配設位置は、プリントヘッドHには限られず、プリント部2の空間内の温度を検出できれば、どこであってもよい。特に、本実施形態では、後述の如くプリント部2の空間内の温度を均一化するので、温度センサ101の配設位置の自由度が高くなる。但し、プリント部2の空間のうち、特にプリントヘッドHが移動する空間内の温度を均一化するのが好ましいので、この観点から温度センサ101をプリントヘッドHに配設するのがよい。また、温度センサ101は1つである必要はないが、プリント部2の空間内の温度を均一化するので、1つで十分である。
【0053】
前記カッターユニットU3は、ローラカッター41を備えていて、該ローラカッター41を回転させながらプリントペーパーP1,P2の長さ方向の所定位置で幅方向に移動させることで、該プリントペーパーP1,P2を所定のサイズ(長さ)に切断するように構成されている。前記ローラカッター41の下方には、切断によるプリントペーパーP1,P2の切り屑を回収するためのカッター屑回収箱65が配設されている。このカッター屑回収箱65は、作業者が取っ手66を持って筐体前側へスライドさせて筐体6の外部へ取り出すことができるようになっており、カッター屑回収箱65内に収容された切り屑を廃棄できるようになっている。なお、カッター屑回収箱65の筐体前側面は、透明なプラスチック材料で形成され、切り屑の収容状態が目視確認できるようになっている。
【0054】
また、カッターユニットU3は、圧着型の搬送ローラ43により、プリントペーパーP1,P2を排出ユニットU4へと搬送するようになっている。なお、カッターユニットU3と排出ユニットU4との間には、裏面印字ユニット4が配設されており、この裏面印字ユニット4において、この部分を通過するプリントペーパーP1,P2の裏面(下面)に整理番号等が印字される。
【0055】
前記排出ユニットU4は、プリントペーパーP1,P2を搬送して排出トレイ5へ排出するための2組の圧着型の排出ローラ46,46を有している。
【0056】
前記乾燥ユニットU6は、図8に示すように、前記排出ユニットU4の2組の圧着型の排出ローラ46,46の間に設けられていて、プリントヘッドHによる印刷後のプリントペーパーP1,P2に乾燥風Wを吹き付けて、該プリントペーパーP1,P2に付着しているインク(プリントヘッドHから吐出されたインク)を乾燥させるものである。この乾燥ユニットU6は、筐体6の排出口47の上方近傍に形成された吸入口48から筐体6内に空気を吸入し、該吸入した空気を加熱して乾燥風Wとして送風するものである。この吸入口48には集塵フィルタ49が取り付けられ、空気中の塵埃が乾燥ユニットU6内に吸入されるのを阻止している。
【0057】
前記乾燥ユニットU6は、プリントペーパーP1,P2の搬送経路上に設けられた乾燥室71と、この乾燥室71に乾燥風Wを送風する乾燥装置72とを備えている。この乾燥室71は、プリントペーパーP1,P2を挟んで対向する上側区画壁71aと下側区画壁71bとで区画され、乾燥装置72からプリントペーパーP1,P2に吹き付けられた乾燥風Wを滞留させる滞留空間を構成している。
【0058】
前記乾燥装置72は、筐体6の吸入口48を介して外部から乾燥装置72内に空気を取り込むために筐体6の左右方向に間隔をあけて複数配置された吸入ファン73と、吸入ファン73で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ74と、乾燥装置72の下端部に設けられペーパー搬送方向下流側に向かって開口して加熱ヒータ74で加熱された乾燥風Wをペーパー搬送方向下流側に吹き付ける排気ノズル部75と、乾燥装置72内の温度を検出して加熱ヒータ74を緊急停止させる安全サーモ76とを備えている。このように乾燥風Wがペーパー搬送方向下流側に向かって吹き付ける構成とすることで、プリントペーパーP1,P2に乾燥風Wが当たっている時間を長くすることができる。すなわち、乾燥風WをプリントペーパーP1,P2に対して垂直に吹き付けた場合には、乾燥装置72の排気ノズル部75の吹き出し口に対向する面にしか乾燥風Wが直接当たらないが、ペーパー搬送方向下流側に向かって乾燥風Wを吹き付けるようにすれば、ペーパー搬送方向下流側に移動中のプリントペーパーP1,P2に対しても乾燥風Wを直接吹き付けることができ、プリントペーパーP1,P2の乾燥時間を長く確保することができて効率的に乾燥することができる。
【0059】
−インク供給系−
図5に示すように、前記インクジェットプリンタAのインク供給系は、インクジェットプリンタAの左右両側に位置するインク貯留部3のインクカートリッジ62内のインクを電磁弁50及び供給管路51を介してサブタンク52に供給し、このサブタンク52のインクをフレキシブル管路53を介してプリントヘッドHに送り出すように構成されている。
【0060】
そして、前記インクカートリッジ62からサブタンク52までは、加圧ポンプ(図示省略)によってインクカートリッジ62内に供給される加圧空気によってインクが送り出される一方、該サブタンク52からプリントヘッドHまでは、プリントヘッドHのノズルからインクを吐出した際に圧力室内に生じる負圧によって、インクが流れることになる。
【0061】
前記サブタンク52は、樹脂シート等の柔軟な素材を用いて袋状に形成されていて、色相が互いに異なる7種類のインクに対応して7つ備えられている。その7つのサブタンク52は、前記プリントヘッドHに対して適切な圧力でインクが供給されるように、該プリントヘッドHに対して所定の高さ位置に取り付けられている。
【0062】
前述したように、インクカートリッジ62のインクは一旦サブタンク52内に貯留され、その後、サブタンク52からプリントヘッドHに供給されることになる。このため、印刷を中断することなくインクカートリッジ62を交換することができる。しかも、前記サブタンク52は、圧力ダンパとしての役割も果たすため、前記インクカートリッジ62で生じた圧力変動が直接、前記プリントヘッドHに伝わることを防止することができ、該プリントヘッドHに過大な圧力が作用してインク漏れ等が生じるのを防止することができる。
【0063】
−ウォームアップ動作−
オペレータがインクジェットプリンタAの電源スイッチをONすると、インクジェットプリンタAは、所定時間の間、ウォームアップ動作を行う。このウォームアップ動作時に、前記加熱ヒータ74の温度を昇温させる。この昇温後、加熱ヒータ74の温度は第1所定温度(例えば80℃〜90℃)に維持される。また、本実施形態では、加熱ヒータ74の温度を前記第1所定温度よりも低い第2所定温度(例えば40℃〜45℃)に維持しておく待機モードに設定可能とされており、オペレータが待機モードから使用モードに変更したときにも、所定時間の間、ウォームアップ動作を行う。このときも、加熱ヒータ74の温度を昇温させる。前記所定時間は、乾燥風W及び乾燥室71の温度が所望の値になるような時間(例えば2分〜3分)に設定される。さらに、前記ウォームアップ動作時には、ペーパー搬送機構におけるローラ(プリントペーパP1,P2と係合していないローラ)を空駆動しておき、該ローラがペーパー搬送時に滑らかに回転するようにする。
【0064】
前記ウォームアップ動作時には、加熱ヒータ74の熱が乾燥装置72の本体外壁を介して、プリント部2の空間に伝わってくる。また、乾燥室71の熱が、ペーパー搬送経路に沿ってプリント部2の空間に伝わってくる。このため、ウォームアップ動作時や該動作終了後からしばらくの時間が経過するまでの間、プリント部2の空間内で温度ムラが生じる。しかし、本実施形態では、このような温度ムラが生じないように、ウォームアップ動作時に、プリント部2の空間、特にプラテン34の支持面34cに対してプリントヘッドH側(上側)の空間内の空気を撹拌するようにしている。
【0065】
具体的には、印刷時にプリントペーパーP1,P2をプラテン34の支持面34c上に吸着保持させる吸引装置35を、ウォームアップ動作時にも作動させる。ウォームアップ動作時には、通常、支持面34c上にプリントペーパーP1,P2は存在しない(インクジェットプリンタAの電源スイッチがOFFされる際や、待機モードに設定される際に、カッターユニットU3による切断後のロールペーパーP2はロールペーパー収容部1内へ戻される)ので、プリント部2の空間内の空気を、前記吸引用孔34aより吸引することで撹拌することが可能になる。このことで、前記吸引装置35は、本発明の撹拌手段を構成することになる。
【0066】
従って、本実施形態では、ウォームアップ動作時に、吸引装置35を作動させることでプリント部2の空間内の空気を撹拌するようにしたので、その空間内の温度を均一化することができ、簡単な構成で、その空間内で温度ムラが生じるのを防止することができる。この結果、ウォームアップ動作が終了して印刷する際にも、温度ムラが生じず、プリントヘッドHに設けた温度センサ101により検出された温度を、各ヘッドユニット38のインク飛翔空間の実温度と略等しくすることができる。よって、プリント品質を良好に維持することが可能になる。
【0067】
また、本実施形態では、従来よりインクジェットプリンタAに設けられている吸引装置35を、ウォームアップ動作時における前記撹拌に利用したので、低コストで且つ簡単な構成で、プリント部2の空間内で温度ムラが生じるのを防止することができる。
【0068】
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0069】
例えば、前記実施形態では、プリント部2の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を、吸引装置35で構成したが、例えば図9に示すように、プリント部2の空間内に配設された、吸引装置35とは別のファン40で構成することも可能である。図例では、ファン40は、プリントヘッドHに対してペーパー搬送方向下流側に配設されているが、プリント部2の空間内の空気を撹拌して該空間内の温度を均一化できれば、プリント部2の空間内のどこに配置してもよい。但し、プリント部2の空間のうち、プラテン34の支持面34cに対してプリントヘッドH側(上側)の空間の空気を撹拌するようにファン40を配置することが好ましく、特に、プリントヘッドHが移動する空間内の空気を撹拌するようにファン40を配置することが好ましい。そして、前記ファン40がウォームアップ動作時に作動することで、プリント部2の空間内の空気を撹拌する一方、ウォームアップ動作が終了すると、ファン40の作動が停止する。このようなファン40は、プリント部2の空間のうち、特に温度を均一化させたい空間内の空気を撹拌するように配設することができ、プリント品質を良好に維持することが確実にできるようになる。
【0070】
また、前記実施形態では、プリントヘッドHに温度センサ101を設け、この温度センサ101により検出される温度に応じてインク吐出タイミングを補正するようにしたが、本発明は、このような補正を行わないインクジェットプリンタにも適用することができる。すなわち、ウォームアップ動作時に、プリント部2の空間内の空気を撹拌することで、該空間内の温度が均一になり、プリントヘッドHが主走査方向Xに移動する間に、プリントヘッドHから吐出されたインクのプリントペーパーP1,P2に対する着弾位置が変化するようなことはなく、また、プリントヘッドHにおける2つのヘッドユニット38のインク飛翔空間の間で温度差が生じることもないので、プリント品質を良好に維持することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ペーパーに対してインクを吐出して印刷を行うプリントヘッドを有するプリント部と、該プリントヘッドによる印刷後のペーパーに付着したインクを乾燥させるためのヒータを有する乾燥部とを備えたインクジェットプリンタに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの筐体内部の構成を示す斜視図である。
【図3】インクジェットプリンタの筐体内部の構成を示す平面図である。
【図4】インクジェットプリンタの筐体内部の構成を示す正面図である。
【図5】インクジェットプリンタの筐体内部の構成を示す左側面図である。
【図6】インクジェットプリンタの筐体内部の構成を示す背面図である。
【図7】プリントペーパーの搬送経路を示す、筐体左側から見た概略図である。
【図8】乾燥ユニットの構成を示す、筐体左側から見た断面図である。
【図9】撹拌手段の他の形態を示す図7相当図である。
【符号の説明】
【0073】
A インクジェットプリンタ
H プリントヘッド
P1 シートペーパー
P2 ロールペーパー
U6 乾燥部
2 プリント部
34 プラテン
34a 吸引用孔
34c 支持面
35 吸引装置(撹拌手段)
40 ファン(撹拌手段)
74 加熱ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパーに対してインクを吐出して印刷を行うプリントヘッドを有するプリント部と、該プリントヘッドによる印刷後のペーパーに付着しているインクを乾燥させるためのヒータを有する乾燥部とを備えたインクジェットプリンタであって、
前記ヒータの昇温動作を含むウォームアップ動作時に、前記プリント部の空間内の空気を撹拌する撹拌手段を備えていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記プリント部は、前記プリントヘッドにより印刷されるペーパーを支持する支持面と該支持面に開口する吸引用孔とを有するプラテンと、前記プリントヘッドによる印刷時に該プラテンの支持面上のペーパーを、前記吸引用孔を介して吸引することで該支持面上に吸着保持させる吸引装置とを更に有し、
前記撹拌手段は、前記吸引装置で構成されていて、前記ウォームアップ動作時に作動して、前記空間内の空気を、前記吸引用孔より吸引することで撹拌するように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記撹拌手段は、前記プリント部の空間内に配設されたファンで構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−233876(P2009−233876A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79593(P2008−79593)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】