説明

インクジェットプリンタ

【課題】印刷の状態を目視しながら操作パネルを操作することが容易なインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、メディアが載置されるプラテン4と、プラテン4の上方において左右方向に移動可能に構成され、前記メディアに対してインクを吐出するインクヘッド3と、プラテン4よりも右側に配置され、複数の操作子11が設けられると共に前傾した操作パネル10と、操作パネル10を取り囲むように設けられたカバー体20と、を備えている。カバー体20は、少なくとも操作パネル10の前方斜め下側に位置する前側部分21aを有し且つ操作パネル10よりも表側に突出した突出部21と、突出部21の前方斜め下側において突出部21と隣り合うように形成され、突出部21よりも低く且つ操作パネル10と略同じ傾きで前傾した前カバー部22とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラテンの左側または右側に配置された操作パネルと、この操作パネルを取り囲むように設けられたカバー体とを備えたインクジェットプリンタが知られている。特許文献1には、プラテンの右側に配置された操作パネルを有する大型のインクジェットプリンタが開示されている。上記インクジェットプリンタにおいて、操作パネルとカバー体とは略面一に連続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−152606号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリンタでは、ユーザが操作パネルを操作しながら、プラテン上におけるメディアの印刷の状態を確認する場合がある。特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、そのような場合、ユーザは、操作のために右手を操作パネルまたはカバー体の上に適宜載せながら、プラテン上のメディアの状態を目視するという動作を行うことになる。しかし、上記インクジェットプリンタでは、メディアの状態を目視しながら操作パネルを操作する動作が、必ずしも容易とは言い難かった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、印刷の状態を目視しながら操作パネルを操作することが容易なインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、メディアが載置されるプラテンと、前記プラテンの上方において左右方向に移動可能に構成され、前記メディアに対してインクを吐出するインクヘッドと、前記プラテンよりも左側または右側に配置され、複数の操作子が設けられると共に前傾した操作パネルと、前記操作パネルを取り囲むように設けられたカバー体と、を備え、前記カバー体は、少なくとも前記操作パネルの前方斜め下側に位置する前側部分を有し且つ前記操作パネルよりも表側に突出した突出部と、前記突出部の前方斜め下側において前記突出部と隣り合うように形成され、前記突出部よりも低く且つ前記操作パネルと略同じ傾きで前傾した前カバー部とを有しているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷の状態を目視しながら操作パネルを操作することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インクジェットプリンタの正面図である。
【図2】インクジェットプリンタの操作パネル付近の拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、左右方向に延びるガイドレール2と、インクを吐出するインクヘッド3とを備えている。なお、以下に説明するインクジェットプリンタ1は印刷のみを行うものであるが、本発明に係るインクジェットプリンタは、印刷の他に他の機能、例えばメディアを切断する機能を有していてもよい。例えば図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクヘッド3と着脱自在に連結するカッティングヘッド3Aを備えていてもよい。本発明に係るインクジェットプリンタには、いわゆるカッティングプリンタ等も含まれる。
【0010】
インクジェットプリンタ1は、更に、メディアである記録紙9が載置されるプラテン4を備えている。本インクジェットプリンタ1はいわゆる大型のプリンタである。プラテン4は左右方向に延びている。図示は省略するが、プラテン4の左方および右方には、それぞれローラが設けられている。一方のローラにはモータが接続されている。両ローラには、左右方向に延びる無端状のベルトが巻き掛けられている。インクヘッド3はガイドレール2に摺動可能に係合すると共に、上記ベルトに固定されている。そのため、上記モータが上記ローラを駆動すると、上記ベルトが走行する。インクヘッド3は、上記ベルトの走行に伴って、プラテン4の上方において左右方向に移動する。
【0011】
プラテン4の後方には、記録紙9が巻かれたロール5が配置されている。記録紙9は、ロール5からプラテン4上に送り出され、図示しないピンチローラおよびガイドローラによって前方向または後方向に適宜搬送されながらインクヘッド3によって画像等が印刷された後、前方に排出される。プラテン4の左方且つ後方には、複数のインクカートリッジ6が鉛直方向に立設するように取り付けられている。インクヘッド3は、図示しないチューブを介してインクカートリッジ6に接続されている。プラテン4の下方には、脚7が設けられている。この脚7によって、プラテン4は、床面から所定の高さに配置されている。
【0012】
プラテン4の右方には、操作パネル10が配置されている。操作パネル10の周囲には、カバー体20が着脱自在に設けられている。操作パネル10およびカバー体20は、下側に行くほど前方に位置するように傾斜している。すなわち、操作パネル10およびカバー体20は、前傾している。
【0013】
図2に示すように、操作パネル10には、押しボタン等からなる複数の操作子11と、表示画面12とが設けられている。なお、操作子11は、ユーザが手で操作するものであればよく、その種類は何ら限定されない。本実施形態では、操作パネル10は円形に形成されている。一部の操作子11は、操作パネル10の中心10cよりも前方斜め下側に配置されている。
【0014】
カバー体20は、操作パネル10を取り囲むように配置されている。カバー体20は、突出部21と前カバー部22とを有している。図3に示すように、突出部21は、操作パネル10よりも表側に突出している。操作パネル10と前カバー部22とは、略同一平面上に位置していることが好ましい。本実施形態では、操作パネル10と前カバー部22とは、同一の仮想平面P1上に位置している。ただし、操作パネル10と前カバー部22とは、必ずしも同一平面上に位置していなくてもよい。
【0015】
図2に示すように、突出部21は、操作パネル10の前方斜め下側に位置する前側部分21aを有している。前側部分21aの寸法および範囲は、操作パネル10の形状に応じて適宜に設定することができるが、本実施形態では、操作パネル10の中心10cを通る鉛直線から左右45度以内にある範囲が前側部分21aとなる。なお、本実施形態では操作パネル10は円形に形成されているが、操作パネル10の形状は円形以外の形状であってもよい。この場合、操作パネル10の中心10cの位置は、操作パネル10の形状が同一の面積を有する円形であると仮定した場合の中心位置とすればよい。図3は、操作パネル10およびカバー体20について、操作パネル10の中心10cを通り且つ前後方向に延びる鉛直断面を示した図である。なお、ここで「鉛直断面」とは、鉛直線を含む断面である。符号13は、操作パネル10の中心線を表している。符号L1は、前側部分21aにおける操作パネル10と平行な方向(以下、表面方向という)の長さを表している。符号L2は、前カバー部22の表面方向の長さを表している。前カバー部22の表面方向の長さL2は、前側部分21aの表面方向の長さL1よりも長くなっている。
【0016】
図2に示すように、前側部分21aは、操作パネル10の中心10cを中心とした円弧を形成する後端縁24と、後端縁24と略同心の円弧を形成する前端縁23とを備えている。このように後端縁24と前端縁23とが同心の円弧を形成することから、前側部分21aにおける中心10cを中心とした半径方向の長さは一定となっている。その結果、前側部分21aは、左側から右側にわたって、鉛直断面における表面方向の長さが略均一となるように形成されている。例えば、図2における長さL1とL12とL13とは、略等しくなっている。
【0017】
前述したように、操作パネル10の外形、すなわち突出部21の内周縁は、正円形状に形成されている。しかし、操作パネル10の外形は他の形状、例えば、四角形状、六角形状、楕円形状等であってもよい。操作パネル10の外形形状は特に限定されない。なお、例えば、操作パネル10の外形が四角形状である場合、突出部21の前側部分21aの鉛直断面における表面方向の長さが略均一となるように、前側部分21aの前端縁を直線状に形成してもよい。
【0018】
図2における符号L4は、カバー体20の左右方向の中央線を表している。カバー体20の左端25Lと中央線L4との距離と、カバー体20の右端25Rと中央線L4との距離とは、等しくなっている。図2に示すように、インクヘッド3が待機位置すなわちホームポジションにあるときには、インクヘッド3の少なくとも一部は、中央線L4よりも右側に位置する。なお、インクヘッド3がホームポジションに位置しているときには、インクヘッド3のノズル面は、乾燥を防止するためにキャッピング装置35によって覆われる。
【0019】
前カバー部22は、操作パネル10よりもプラテン4側に位置する前傾面22aを有している。言い換えると、前カバー部22は、操作パネル10よりも左側に位置し、操作パネル10と略同じ傾きで傾斜する前傾面22aを有している。ここでは、中央線L4の右側に操作パネル10が配置され、中央線L4の左側に前傾面22aが配置されている。前傾面22aは、操作パネル10の前方斜め下の端部10bよりも後方斜め上側に位置している。突出部21は表側に突出しているので、突出部21と前カバー部22との間には、段差30が形成されている(図3参照)。前述したように、突出部21は円弧状の前端縁23を備え、前カバー部22は操作パネル10よりもプラテン4側に位置する前傾面22aを有している。そのため、段差30は、操作パネル10の前方斜め下側では操作パネル10の形状に沿った形状を有し、操作パネル10よりもプラテン4側では、後方斜め上側に延びるような形状を有している。なお、本実施形態では、段差30の左端部分は左右方向に延びている。
【0020】
以上のように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、カバー体20は、前側部分21aを有する表側に突出した突出部21と、突出部21の前方斜め下側において突出部21と隣り合うように形成され、突出部21よりも低い前カバー部22とを有している。これにより、少なくとも操作パネル10の前方斜め下側に、段差30が形成される。したがって、図2に示すようにユーザは、段差30に手40を当てがいながら、操作パネル10を容易に操作することができる。また、手40で段差30の位置を探ることによって、手40を操作位置に容易に移動させることができる。したがって、印刷の状態を目視しながら操作パネル10を操作することが容易となる。なお、本実施形態では前側部分21aにおける突出部21の高さ、すなわち段差30は1cmとしたが、突出部21の高さは適宜変更することができる。
【0021】
図3に示すように、操作パネル10と前カバー部22とは、同一の仮想平面P1上に位置している。そのため、操作パネル10の操作が更に容易となる。
【0022】
図3に示すように、前カバー部22の表面方向の長さL2は、突出部21の前側部分21aの表面方向の長さL1よりも長くなっている。これにより、段差30に手40を当てがうことが更に容易となり、操作パネル10の操作が更に行いやすくなる。
【0023】
図2に示すように、突出部21の前側部分21aは、左側から右側にわたって、表面方向の長さが略均一となるように形成されている。これにより、操作パネル10の操作が更に容易になる。
【0024】
図2に示すように、突出部21の前側部分21aは、後端縁24が操作パネル10の中心10cを中心とした円弧を形成すると共に、前端縁23が後端縁24と略同心の円弧を形成するように構成されている。これにより、操作パネル10の操作が更に容易になる。
【0025】
ところで、操作パネル10を操作しているユーザが記録紙9の印刷状態を目視するためにプラテン4側に移動する際には、カバー体20から手40を離すか、あるいはカバー体20の上で手40をプラテン4側にずらさなければならない。本実施形態によれば、前カバー部22は前傾面22aを有しており、段差30は操作パネル10の前方斜め下側だけでなく、プラテン4側にも延びている。そのため、印刷状態を目視する際には、段差30に沿って手40をプラテン4側に移動させるだけで足り、また、操作のために再び操作パネル10側に戻る際には、段差30に沿って手40を戻すだけで、操作パネル10上に手40を復帰させることができる。したがって、操作パネル10の操作と印刷状態の目視とを容易に繰り返すことができる。
【0026】
また、本実施形態では、中央線L4の右側に操作パネル10を配置し、中央線L4の左側に前傾面22aを配置することとした。更に、前傾面22aを、操作パネル10の前方斜め下の端部10bよりも後方斜め上側に配置することとした。これにより、カバー体20の左側部分に、広い傾斜面が形成される。そのため、段差30に沿って手40を移動しやすくなる。
【0027】
なお、カバー体20の突出部21と前カバー部22とは別体に形成され、互いに組み立てられていてもよい。ただし、本実施形態では、突出部21と前カバー部22とは一体成型されている。そのため、インクジェットプリンタ1の部品点数の削減および組み立て工数の削減を図ることができる。
【0028】
前記実施形態では、操作パネル10およびカバー体20は、プラテン4の右側に配置されていた。しかし、操作パネル10およびカバー体20は、プラテン4の左側に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 インクジェットプリンタ
3 インクヘッド
4 プラテン
9 記録紙(メディア)
10 操作パネル
11 操作子
20 カバー体
21 突出部
21a 前側部分
22 前カバー部
22a 前傾面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアが載置されるプラテンと、
前記プラテンの上方において左右方向に移動可能に構成され、前記メディアに対してインクを吐出するインクヘッドと、
前記プラテンよりも左側または右側に配置され、複数の操作子が設けられると共に前傾した操作パネルと、
前記操作パネルを取り囲むように設けられたカバー体と、を備え、
前記カバー体は、少なくとも前記操作パネルの前方斜め下側に位置する前側部分を有し且つ前記操作パネルよりも表側に突出した突出部と、前記突出部の前方斜め下側において前記突出部と隣り合うように形成され、前記突出部よりも低く且つ前記操作パネルと略同じ傾きで前傾した前カバー部とを有している、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記操作パネルと前記前カバー部とは、略同一平面上に位置している、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記操作パネルの中心を通り且つ前後方向に延びる鉛直断面において、前記前カバー部における前記操作パネルと平行な方向の長さは、前記突出部の前記前側部分における当該方向の長さよりも長い、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記突出部の前記前側部分は、左側から右側にわたって、前後方向に延びる鉛直断面における前記操作パネルと平行な方向の長さが略均一となるように形成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記突出部の前記前側部分は、後端縁が前記操作パネルの中心を中心とした円弧を形成すると共に、前端縁が前記後端縁と略同心の円弧を形成するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記前カバー部は、前記操作パネルよりも前記プラテン側に位置すると共に、前記操作パネルの前方斜め下の端部よりも後方斜め上側に位置する前傾面を有している、請求項1〜5のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記突出部と前記前カバー部とは一体成型されている、請求項1〜6のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−161802(P2011−161802A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27459(P2010−27459)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】