説明

インクジェットプリンタ

【課題】コロナ放電ユニットをインクジェットプリンタに内蔵しようとすると、装置が複雑で大きくなる課題があった。
【解決手段】印字用紙に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェトヘッドを搭載して主走査方向に往復移動するキャリッジと、該キャリッジと同方向に移動して印字用紙の表面にコロナ放電処理を施すための小型の放電電極を備える電極ユニットと、放電電極のコロナ放電の放電先となる対向電極と該電極ユニットに高電圧を印加するための小型の高圧電源から構成されるインクジェットプリンタとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系インクを使用したインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PVCフィルムやPETフィルム等のプラスチック系の印字用紙に、水系のインクを用いてインクジェットプリンタで直接印字しようとすると、印字用紙に吸収層をもたないために、吐出したインクが印字用紙上ではじけ、ドットサイズが小さくなり、ベタ画像を印字しようとするとインクが埋まらない課題があった。またインクがはじいて印字用紙上で広がらないために、インクの厚さが増して乾燥しにくくなる課題もあった。この課題を解決するために、例えばコロナ放電や、プラズマ処理により印字用紙の表面に改質を施し、親水性を良くすることで、インクの濡れ広がり性を良くしてドットサイズを大きくすることや、また乾燥性を向上させる方法が知られている。最近ではプラズマ処理ユニットを、プリンタに内蔵させた例が特許文献1に記載されている。例えば特許文献1には、インクジェットヘッドの前段に印字用紙の幅に応じた放電電極を設置して、親水化処理を施す構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の方法では、印字用紙の幅よりも長い放電電極が必要となるため、電極を駆動してコロナ放電を発生させるには、電力容量の大きな高圧電源が必要となった。例えばA4サイズの印字用紙に対する電極を搭載する場合でも、210ミリメートル以上の電極が必要となり、これを駆動するには100ワット〜300ワットの高圧電源が必要とされる。このためコロナ放電ユニットをインクジェットプリンタに内蔵しようとすると、装置が複雑で大きくなり、また装置コストが高価になる課題があった。またコロナ放電によるオゾンが大量に発生し、オゾン排出用の換気装置も必要となり、さらに装置が複雑で大きくなり、また装置コストが高価になる課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、印字用紙に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェトヘッドを搭載して主走査方向に往復移動するキャリッジと、該キャリッジと同方向に移動して印字用紙の表面にコロナ放電処理を施すための電極ユニットと、コロナ放電の放電先となる対向電極と、該電極ユニットに高電圧を印加するための高圧電源とを有する構成のインクジェットプリンタとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印字用紙幅以上の長い放電電極を用いることなく、短い電極を用いることができるため、小型の安価な電源によるコロナ放電処理ユニットを構成することが可能となり、高画質印字が可能でかつオゾン発生量が少ない水系インクを使用するジェットプリンタを安価に提供することができる。またコロナ処理からインクの吐出までの間隔を非常に短くできるために、コロナ処理による親水化効果の減衰を抑えた状態でインクを印字用紙上に吐出することが可能となり、コロナ処理によりインク滴が広がる割合を一様にできる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明のインクジェットプリンタを上面からみた概略図である。
【図2】図2は、本発明のインクジェットプリンタを側面からみた概略図である。
【図3】図3は、本発明の制御ブロック図である
【図4】図4は、本発明の放電電極とインクジェットヘッドの比較図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施する形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の形態のインクジェットプリンタを上面から見た概略の図である。図2は本発明の形態のインクジェットプリンタを側面から見た概略の図である。インクジェットヘッド1〜4は、インクを印字用紙8に向けて吐出させるヘッドで、インクジェットヘッド1はマゼンタ、インクジェットヘッド2はシアン、インクジェットヘッド3はブラック、インクジェットヘッド4はイエローのインクをそれぞれ吐出する。キャリッジ5はインクジェットヘッド1〜4を搭載して主走査方向に往復移動するものである。主走査方向は印字用紙8の搬送方向に対して交差する方向であり、本形態では垂直方向である。印字用紙8は紙、樹脂フィルムなどの記録媒体である。放電電極ユニット6は、コロナ放電用の電極を搭載するユニットで、電極に高電圧を印加することで対向電極7に対してコロナ放電を発生させる。対向電極7はコロナ放電の放電先となるもので、アースに接続されている。放電電極ユニット6と対向電極7の間でコロナ放電を発生させている際に、印字用紙8を間に通すことで、印字用紙上がコロナ放電により表面改質され、親水性が向上する。放電電極ユニット6は主走査方向に移動可能なユニットで、キャリッジ5と同期して移動することで印字直前に印字用紙8に対してコロナ処理をすることが可能となる。印字用紙8は、例えば、紙、樹脂フィルムなどの記録媒体である。用紙駆動ローラー9は印字用紙8を搬送させるローラーである。高圧電源10は、放電電極ユニット6に交流の高電圧を印加するための電源である。
【0009】
図4に本形態で使用した放電電極の例を示す。鋸歯電極11の長さはインクジェットヘッド1〜4のノズル配列の幅と同等にした。鋸歯電極11の長さ方向を、記録紙8の搬送方向に沿って配置して用いている。従ってインクジェットヘッドのノズル配列の幅分のコロナ放電処理を主走査方向に走査しながら処理することで、1バンド分のコロナ放電処理が実施可能である。ここで1バンド分とは、インクジェットヘッドが1走査で印字可能な領域ことである。鋸歯電極11の形状は鋸歯型となっており、鋭利な歯先から効率よく放電し、放電効率が高い安定した放電が可能である。このため本実施例で使用した高圧電源10は、10ワット程度の小電力の電源でコロナ放電が可能となっている。高圧電源10の出力仕様は、電圧の実効値として10キロボルトとし、出力波形は1キロヘルツの正弦波とした。
【0010】
図3は本実施例を実施するための制御ブロック図である。印字制御部21は、インクジェットヘッド1〜4とキャリッジ5を制御するブロックで、画像データに応じたインクの吐出タイミングを制御し、吐出タイミングにあわせて主走査方向にキャリッジ5を移動させ、印字用紙8に画像を形成する。放電ユニット制御部22は、放電電極ユニット6を主走査方向に移動させて、高圧電源10の印加タイミングを制御する。高圧電源10は放電電極25に交流の高電圧を印加する。シーケンス制御部23は、印字制御部21、放電ユニット制御部22に動作の指令を与えて、プリンタ全体のシーケンスを制御する。プリントヘッド部24はインクジェットヘッド1〜4を含み構成される。
【0011】
次に図1、図2、図3を参照して印字動作を説明する。印字制御部21の制御により、用紙駆動ローラー9は印字用紙8をヘッド幅分の距離毎に順次間欠送りし、印字用紙8が停止した状態で印字動作を実施する。印字用紙8の搬送幅は、複数パス印字の場合にはそのパス数に応じて搬送幅が異なるが、ここでは説明を簡単にするため1パス印字を行い、搬送幅をヘッド幅分、すなわち印字幅分として説明する。まず印字用紙8が停止した状態で、放電ユニット制御部22の制御により、放電電極ユニット6に高圧電源10から高圧が印加され、コロナ放電を施しながら、印字用紙8の上を主走査方向に移動し、ヘッド幅分のコロナ放電処理を施す。その後、印字用紙8は用紙駆動ローラー9によりヘッド幅分送られて停止する。インクジェットヘッドは主走査方向に移動しながらインクを吐出し、1バンドの印字がされるのと同時に、その印字用紙8の上流では放電電極ユニット6も同時に、印字用紙8上を主走査方向に移動しながらコロナ放電を施す。以上のようにシーケンス制御部23と、印字制御部21と、放電ユニット制御部22のそれぞれの制御により、印字動作とコロナ放電処理を同時に動作させながら、1面に必要なバンド数に応じた回数だけ繰り返すことで、1面の印字物を得ることができる。
【0012】
本実施例ではキャリッジ2と放電電極ユニット6は別々に移動できる構造としたため、必ずしもキャリッジ5と放電電極ユニット6の速度をあわせる必要がないメリットがあるが、キャリッジ5と放電電極ユニット6を一体にすることにより、さらに安価な構造が可能となる。
【0013】
また本実施例では4色のインクジェットプリンタに関して説明したが、4色以上の色数を持つインクジェットプリンタや、単色のモノクロプリンタに関しても同様に適用が可能である。
【0014】
また、放電電極25をインクジェットヘッド1〜4のノズル配列幅として説明したが、印字用紙8の搬送幅に等しくすることができる。またこのとき、放電電極25とインクジェットヘッド1〜4のノズルまでの間隔は搬送幅の整数倍の間隔に等しくすることで、コロナ放電処理から印字までの時間間隔を一定にすることができ、印字品質の一定化ができる。また、搬送幅を複数種から選択できる場合は、その搬送幅に応じて、放電電極25を分割配置し、小さな電極を複数個用いるようにしてもよい。そうすれば、より小さな電極を用いることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 マゼンタ色のインクを吐出するインクジェットヘッド
2 シアン色のインクを吐出するインクジェットヘッド
3 ブラック色のインクを吐出するインクジェットヘッド
4 イエロー色のインクを吐出するインクジェットヘッド
5 キャリッジ
6 放電電極ユニット
7 対向電極
8 印字用紙
9 用紙駆動ローラー
10 高圧電源
11 鋸歯電極
21 印字制御部
22 放電ユニット制御部
23 シーケンス制御部
24 プリントヘッド部
25 放電電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字用紙に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェトヘッドを搭載して主走査方向に往復移動するキャリッジと、該キャリッジと同方向に移動して前記印字用紙の表面にコロナ放電を施すための放電電極を備える放電電極ユニットと、該放電電極のコロナ放電の放電先となる対向電極と、該放電電極ユニットに高電圧を印加するための高圧電源と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記放電電極の電極形状を鋸歯形状とすることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記放電電極の長さは、前記インクジェットヘッドのノズル配列長さ以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記高圧電源の電力は20ワット以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記放電電極の長さは、前記印字用紙の搬送幅の整数倍に等しいことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記放電電極は前記キャリッジに固定されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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