説明

インクジェットプリントヘッド用通気口

【課題】プリンタの姿勢にかかわらずプリントヘッドからのインク漏れを防止する。
【解決手段】選択的にインクを画像受容表面に噴出するインクジェットプリントヘッドは、供給インク124と供給インク124の上の空気空間148とを含み側壁128,130、上壁136及び下壁140によって規定されるタンク104と、1つの壁に形成されたインク注入口108と、1つの壁に形成された通気開口116と、通気開口116から伸張する通気口部材であって、タンク104の外側の空気空間に配置された上方開口152と、空気空間148に配置された下方開口156と、上方開口152を下方開口156へ流体的に連結するように構成された通気口路160とを有して下方開口156がタンク104の姿勢に関係無く供給インク124の上の空気空間148内に常に位置することを可能にするようにタンク104内に配置される通気口部材116とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記述する装置及び方法はインクジェット画像装置に関し、より詳細には、インクジェット画像装置におけるプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、例えば中間転写表面または媒体基板といった画像受容表面上に液体インクの小さな液滴を排出する、すなわち「噴出する」ことによって印刷画像を形成する。インクジェット印刷の利点には、印刷ノイズが小さい、印刷ページあたりのコストが小さい、そして「フルカラー」画像を印刷できることが含まれる。インクジェットプリンタは、他の構成要素とともに、プリントヘッドと、プリントヘッド制御部とを含んでいる。プリントヘッド制御部は、プリントヘッド内のエジェクタに液体インクの液滴を画像受容表面上に噴射させる噴射信号をプリントヘッドに対して選択的に送出し、少なくとも印刷画像の一部を形成させる。
【0003】
通常、インクジェットプリントヘッドは複数のインクエジェクタと少なくとも一つの多量のインクを貯蔵するためのタンクを含む。単色のインクジェットプリントヘッドは、単色のインクを収容する単一のタンクを含むことができる。フルカラーインクジェットプリントヘッドは、それぞれが異なる色のインクを収容するように構成された複数のタンクを含むことができる。例えば、フルカラーインクジェットプリントヘッドは4つのタンクを含み、各タンクは一般的なフルカラー画像を生成するために用いられる四色、すなわち、シアン、マゼンタ、黄色、黒のインクのうちの一つを収容することができる。インクエジェクタは画像受容表面状に極小のインク液滴を噴出する。しばしば、100〜600個の個別のインクエジェクタがマニホルドによって単一のインクタンクと連結される。具体的には、単色のプリントヘッドは単一のタンクと流体的に連結された一つのグループのインクエジェクタを含み、一方で、フルカラープリントヘッドは各タンクのために異なるグループのインクエジェクタを含むことができる。従って、四つのタンクを有するフルカラープリントヘッドは、各インクエジェクタが異なるインクタンクに流体的に連結された四つのグループのインクエジェクタを有することができる。
【0004】
インクジェットプリントヘッドのインクタンクは、該インクタンクに空気が出入りするためのインクタンク通気口を有していてもよい。この通気口があることで、タンクがインクによって満たされる際にそのタンクから空気を放出することができる。加えて、この通気口は、インクエジェクタによってインクが排出される際に空気がタンクに入ることを可能にする。したがって、インクタンク通気口は、このインクタンク内の空気圧を均一にするために機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4869390号明細書
【特許文献2】米国特許第5289212号明細書
【特許文献3】米国特許第5486855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
典型的には、タンクの通気口は最大インクレベルより上に設けられたインクタンクのある部位に配置された通気開口を含む。とはいえ、時折、プリンタは移動されたり、別の場所に移されたりするかもしれない。これらの動作によって、タンク内のインクが通気開口へ移動し、タンクからこぼれ出てしまう可能性がある。その結果、こぼれ出たインクは印刷には使用することができず、インクと接するようには設計されていないプリンタの部品に接触してしまうかもしれない。従って、インクジェットタンクの通気口に関するさらなる問題解決が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インクタンク通気口を含むインクジェットプリントヘッドであって、インクがその通気口を通ってタンクから出てしまうことを防止するインクジェットプリントヘッドが開発された。このインクジェットプリントヘッドは、タンク、インク注入口、通気開口、及び通気口部材を含む。タンクは供給インクと、その供給インクの上の空気空間とを含む。複数の側壁、上壁、下壁によってタンクが規定される。インク注入口と通気開口は前記複数の側壁、上壁、下壁のうちの一つに形成される。通気口部材は前記通気開口から伸張しており、タンクの外側の空気空間に配置された第1通気口部材開口と、供給インクの上の前記空気空間に配置された第2通気口部材開口と、前記第1通気口部材開口を前記第2通気口部材開口へ流体的に連結するように構成された通気口路とを有する。第2通気口部材開口は、第2通気口部材開口がプリントヘッドの姿勢と関係無く前記供給インクの上の空気空間内に常に位置することを可能にするように前記タンク内に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書に記載されるような通気口を有するインクジェットプリントヘッドの断面図である。
【図2】本明細書に記載されるような通気口を有するインクジェットプリントヘッドのインクタンクの斜視断面図である。
【図3】本明細書に記載されるような通気口を有する図1のインクジェットプリントヘッドの断面図である。
【図4】図1のインクジェットプリントヘッドと通気口を逆転した状態で示した断面図である。
【図5】図1のプリントヘッドを有する相変化インク印刷システムの側面図を描いたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において説明される通気口はプリンタにおける使用に適している。この「プリンタ」なる用語は一般に、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、コピー機、関連する多機能製品などの複製装置のことを表す。本明細書はインクジェットプリンタに焦点を合わせるが、ここで記述される通気口は供給インクを含むいかなるプリンタまたは印刷機においても用いることができる。さらに、ここに記載される通気口は、水性インクか相変化インクかのいずれかで印刷画像を形成するプリンタにおいて使用することができる。
【0010】
図1には、インクジェットプリンタのプリントヘッド100が示されている。プリントヘッド100は画像受容表面上に液体インクの液滴を排出することによって印刷画像を形成する。本明細書において「液体インク」なる用語は水性インク、液体インクエマルジョン、顔料インク、液相にある相変化インクを含むが、これらに限定されるものではない。プリントヘッド100は、他の構成要素もあるが、特に、タンク104、インク注入口108、多数のインクエジェクタ112、通気開口116、及び、ここでは通気口管120として設けられた通気口部材を含んでいる。タンク104はインクエジェクタ112によって画像受容表面上に噴出する供給インク124を含んでいる。インクエジェクタ112は、当該技術分野において知られているように、サーマルインクエジェクタ及び/又は圧電インクエジェクタとして設けられている。インクエジェクタ112からの供給インク124が最小インクレベルになると、タンク104は、主タンク262(図5)との間で流体的に接続されたインク注入口108からの追加のインクによって充填可能である。タンク104のインクレベルが変動すると、通気開口116を通ってタンク104へ伸びる通気口管120によって空気がタンク104に出入りすることができる。以下、上記のインクジェットプリントヘッド100の各構成要素について詳細に説明する。
【0011】
インクタンク104は、供給インク124を収容するための空間を規定する、第1組対向側壁128、130、第2組対向側壁132(図2には片方の側壁しか示されていない)、上壁136、下壁140を含むことができる。図2の長さAによって示されるように、タンクの高さは上壁136と下壁140の間の距離によって規定することができる。また、図2の長さBによって示されるように、タンクの幅は側壁128と側壁130の間の距離によって規定することができる。図1〜3において描かれているタンク104は長方形断面を有しているものの、タンク104の断面は供給インク124を収容するのに適したいかなる形状であってもよく、それには正方形、円形、楕円形状などが含まれるが、これらに限定されるものではない。従って、ある実施形態においては、上壁136、下壁140、側壁128、130、132の輪郭は鋭くなくてもよい。加えて、図1に示されるように、インクタンク104には容積中心142を定めることができる。容積中心142から広がる平面によって、タンク104を略同一の容積を有する二つの領域に分ける。
【0012】
インク注入口108はタンクの1つ又は複数の壁に設けられる。上述したように、インク注入口108は主タンク262と流体的に接続されている。タンク104の供給インク124が最小値以下に下がった場合、タンク104は図1の線Cによって示される所定の最大インクレベルまでインクが満たされるまで、インクタンク262よりインク注入口108を通してインクを受け取る。インク注入口108は、不純物がインクタンク104に入ることを防止するためにフィルタまたは遮壁144を含んでもよい。
【0013】
タンクの壁128、130、132、136、140と供給インク124の上面とが、供給インク124上の空気空間148を規定する。上述したように、タンク104は所定の最大インクレベルまで充填することができる。タンク104が最大インクレベルまで充填された時点で、ある容積の空気が供給インク124の上面より上に存在する。この容積の空気が空気空間148である。図1に示されるように、空気空間148の下方境界は供給インク124の上面によって規定され、空気空間148の上方境界は上壁136によって規定される。とはいえ、タンク104の形状及びプリントヘッド100の向きによって、空気空間148の上方境界はタンクの壁128、130、132、136、140のいずれかによって規定される可能性がある。例えば、プリントヘッド100が傾斜面上に配置されたとすると、空気空間148の上方領域は一部が側壁128によって、そして一部が上壁136によって規定されるかもしれない。さらに、もしプリントヘッドが極端な姿勢を取っている場合、空気空間148の上方境界の全体が、例えば、側壁128によって、または下壁140によってさえも規定されるかもしれない。従って、空気空間148の上方境界を規定するタンクの部分は、プリントヘッド100の向きに依存する。
【0014】
インクタンク104の通気開口116は、タンク壁128、130、132、136、140のうちの1つ又は複数の壁に設けられた、通気口管120の一部をインクタンク104へ伸張させる開口である。図1及び図3に示されているように、通気開口116は上壁136に形成されていた。しかし、開口116はタンク壁128、130、132、136、140のうちの一又は複数の壁に設けることもできる。通気開口116は、通気口管120と係合して、空気及び液体を通過させない封またはシールを形成する。この封は、通気口管120と通気開口116の連結点を介してタンク104からインクが漏れ出てしまうことを防止する。例えば、通気開口116は、略円形の外周を有する通気口管120と係合する略円形の開口を有することができる。又は、通気開口116は、適切に成形された外周を有する通気口管120と係合するための長方形、正方形、又は楕円形の開口を有することもできる。
【0015】
通気口管120は空気をタンク104に出入りさせるが、インクがタンク104から流出することは防止する。図1、図3に示されているように、通気口管120は通気開口116からタンク104へ伸びている。通気口管120は上方開口152、下方開口156、流路160を含んでおり、流路160によって上方開口152と下方開口156とが流体的に接続される。図1及び図3に示されるように、流路160は略円筒状を有するが、流路160は直線状ではない断面を有する不均一な形状を含む、いかなる形状を有していてもよい。上方開口152は、図1〜3に示されるように、流路160の頂部にある大気に触れる開口である。ある実施形態では、上部開口152は流路の延長(図示されていない)又は他のプリンタの部品と上部開口152とを流体的に連結することによって、離れた箇所に設けられる。
【0016】
下方開口156は、流路160の底部における開口である。図1に示されているように、下方開口156は、空気空間148内において、インクタンク104のおおよそ容量中心142に位置する。特に、下方開口156は下壁140からタンク高さAの約半分の位置、かつ、側壁128、130からタンク幅Bの約半分の位置に設けることができる。この位置だと、プリントヘッド100の向きに関係なく、下方開口156が空気空間148内に存在することになる。
【0017】
下方開口156をこの位置とすることによって、供給インク124が流路160を通ってタンク104から出てしまうことが防止される。図1に示されるように、最大インクレベルは、プリントヘッド100の姿勢に関わりなく下方開口156が空気空間148内に位置できるような量に限定される。具体的には、最大インクレベルは、下方開口156が容量中心142に又はその付近に位置した際にプリントヘッド100がどのような向きであっても供給インク124に接することがないように、タンク104の空間のわずかに半分以下とすることができる。図においては、図1の線C、D、E、Fは、プリントヘッド100が各種の極端な姿勢をとった時の最大インクレベルを示している。特に、線Cは、プリントヘッド100が直立した状態であるときの供給インク124の上面を示している。線E、線Fはプリントヘッド100が横向きとなっているときの供給インク124の上面を示している。線Dはプリントヘッド100が、図4に示されるように、逆向きとなっているときの供給インク124の上面を示している。プリントヘッド100が逆向きになっていると、供給インク124が通気口管120の一部を囲むことがある。しかし、供給インク124の上面は下方開口156よりも下に位置し、供給インク124が流路160から流れ出ることは防止される。
【0018】
結果として、プリントヘッド100の姿勢がいかなるものであっても、供給インク124の上面と下方開口156の間に緩衝空気が存在し、供給インク124が通気口管120を通って流路160へ入ること、またタンク104から出ることが防止される。具体的には、下方開口156はプリントヘッド100がいかなる回転軸の周りを回転したとしても空気空間148内に位置する。例えば、プリントヘッド100が図1の直立姿勢と図4の逆向き姿勢との間で変化しても、下方開口156は常に空気空間148内に位置する。
【0019】
通気口管120は、供給インク124が下方開口156に接してもインクが流路160を通る気流を妨げることがないようにする。上述したように、プリントヘッド100の姿勢に関係無く、下方開口156は常に空気空間148内に位置する。しかし、プリントヘッド100が激しく動かされたり極端な振動にさらされたりすると、供給インク124は一時的に下方開口156に接するかもしれない。空気が流路160を通って流れないようにする、下方開口156を横切るメニスカスをインクが形成しないようにするためには、下方開口156が所定値を超えた幅または直径を有するようにする。この所定値はインクの表面張力によって少なくとも部分的に決定される。具体的には、表面張力が大きいインクは、表面張力が小さいインクと比較すると、所定値が大きくなる。
【0020】
図1に示されるように、通気口管120は上壁136の上の通気開口116から伸張する上方延長部168を含む。上方延長部168は上部開口152を離れた位置に設けるために第2管(図示せず)と連結していてもよい。
【0021】
通気口管120は通気開口116と着脱可能に接続されたセンサプローブ172内に組み込まれていてもよい。図2に示されるように、通気口管120を有するセンサプローブ172には、少なくとも一つのセンサ176をタンク104の空気空間内に配置することができる。センサ176はタンク104のインクレベルを示す1つ又は複数の信号を生成する。例えば、センサプローブ172には、供給インク124が最初又は最大レベルに達したことを検知するためにセンサ176を設けることができる。さらに、センサプローブ172には、タンク104内でインクのレベルが連続的な範囲を超えていることを検知するためにセンサ176を設けることができる。または、センサプローブ172には空気空間148の温度を検知するために、インクの最大レベルより上方にセンサ176を設けることもできる。
【0022】
センサプローブ172には、タンク内に複数部品センサ(検出素子と呼ぶ)の構成要素を配置してもよい。この検出素子はタンク104内のインクのレベルを示す1つ又は複数の信号を生成することができる。例えば、1つ又は複数の検出素子がインク124と接すると「満またはフル」信号を生成し、一又は複数の検出素子がインク124と接していないときには「少またはロー」信号を生成する一組の検出素子をタンク104内に配置することができる。さらに、検出素子を、連続的な範囲を超えたタンク104内のインクのレベルを検出するように配置してもよい。
【0023】
センサプローブ172は(図3に示すように)少なくとも1つの流路180、上部184、下部188、そしてある実施形態では(図3に示すように)交差流路192を含む。少なくとも1つの流路180により、1つ又は複数の検出素子またはセンサ176をセンサプローブ172内に配置することが可能になる。図3に示されているように、流路180は上部184から始まり、センサプローブ172の周辺部において又はその付近で終了する。流路180によって、センサ176と電気的に接続されたワイヤ又はリードが、供給インク124又は空気空間148に触れることなくインクタンク104から伸張することが可能となる。流路180は流路160及び交差流路192から分離している。
【0024】
交差流路192は、センサプローブ172の上部184と下部188の界面に形成されている。交差流路192は、下方開口156を空気空間148へ、流体的に連結する。図3に示されるように、交差流路192は流路160に対して略垂直である。交差流路192を有するセンサプローブ172の実施形態では、通気口管120の周囲付近の交差流路192の端部にある有効下方開口196、200を含む。1つ又は複数の有効下方開口192、200及び下方開口156は、プリントヘッド100の姿勢に関わりなく、空気空間148内に常に位置する。例えば、たとえプリントヘッド100が供給インク124と接触する姿勢に向けられたとしても、有効下方開口200及び下方開口156は空気空間148内の供給インク124の上面よりも上に常に位置し、これにより、インクが流路160を通ってタンクからこぼれ出ることが防止される。
【0025】
ある実施形態では、通気口管120はタンク104を大気へ流体的に接続する。他の実施形態では、通気口管120は、空気空間148を大気、大気圧よりも高い空気圧源、空気圧よりも低い空気圧源、のうちの1つと選択的に接続する空気圧装置(不図示)に対して、空気空間148を流体的に接続する。プリントヘッド100は空気圧装置を上部開口152に接続する接続管(不図示)を含んでもよい。空気圧装置はタンク内で正圧または負圧のいずれかを維持する。空気圧装置がタンク104に接続されていたとしても、通気口管120はタンク104内の空気圧レベルが、インクが充填されたりタンクから排出されたりする際に変動することを可能にする。
【0026】
通気口管120は、相変化インクによって印刷画像を形成するプリントヘッド100と接続されていてもよい。図5に示されるように、相変化インクプリンタ250は、インクローダ254、溶融器258、主タンク262、媒体経路270を含む。プリンタ250は媒体経路270上を移送される基材266の画像受容表面上に位相変化インクを排出する。「位相変化インク」なる語は、第1の相又は状態でプリンタ250に設定され、第2の相又は状態に変化した後に基材266上に排出されるインクを含む。第2の相又は状態への変化は、固体から液体への変化、ゲルから液体への変化、高粘度から低粘度への変化を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書では「固体」相変化インクなる語は、周囲温度において固体相を保ち、溶融温度を超えるまで熱せられた際に溶融して液相になるインクのことを意味する。この周囲温度はプリンタ250を囲む空気の温度である。従って、周囲温度はプリンタ250が規定の場所に設置された場合には室温であるかもしれない。しかし、例えば媒体経路270のような、プリンタ250の一部が例えばカバーによって包まれる場合には周囲温度は室温よりも高くなる可能性がある。溶融温度の典型的な範囲は約70〜140℃である。しかし、いくつかの種類の固体相変化インクはこの典型的な温度範囲よりも上または下であるかもしれない。同様に、本明細書における「ゲル性の」相変化インクまたは「ゲルインク」なる語は、周囲温度にてゲル状の相又は状態を保ち、ゲル化又は溶融温度を超えるまで熱せられた際に溶融して液相になるインクを意味する。ゲル化温度の典型的な範囲は約30〜50℃である。しかし、ある種のゲル性の相変化インクのゲル化温度はこの典型的な温度範囲よりも上または下であるかもしれない。
【0027】
ゲルインクを含む幾つかのインクは印刷工程中に硬化される。放射線硬化インクは放射源に曝された後に硬化する。適切な放射線には、赤外線、可視線、紫外線が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的には、紫外線硬化ゲル性相変化インク(以下、UVゲルインクと称する)は紫外線に照射された後に硬化する。
【0028】
インクローダ254は固体またはゲル相の相変化インクを多量に収容している。相変化インクは、各種形態のうちとりわけ、固体インク粒、固体インク棒、多量のゲル状インクとしてインクローダ254に供給される。インクローダ254は相変化インクを、インクの一部を液相へと溶融する溶融器258へ移動させる。液体インクは、インクを液相に保つ温度へ主タンク262を加熱するように構成されたヒータ274に熱的に接続された主タンク262に移送される。主タンク262からの液体インクはプリントヘッド100へ移送される。詳細には、図1、3、4に示されるように、インクはインク注入口108を通ってインクタンク104に送られる。プリントヘッド100はインクタンク104に収容されたインクを液相に保つヒータ278を含んでも構わない。
【0029】
主タンク262とインクタンク104は、プリンタ250の通常使用時や修理時にプリンタ250と接続された状態となるように構成することができる。具体的に言うと、インクタンク104においてインクレベルが所定のレベルを下回った場合、プリンタ250はインクタンク104に主タンク262からの液体インクを補充する。同様に、主タンク262のインクレベルが所定のレベルを下回った場合、プリンタ250は主タンク262にインクローダ254から追加のインクを充填するように構成される。従って、一実施形態では、主タンク262も、またインクタンク104も、プリンタ250がインク供給を使い果たすと取り替えられるように構成された使い捨ての部品ではない。
【0030】
プリンタ250はUVゲルインクによって印刷画像を形成するように構成することができる。UVゲルインクは周囲温度ではゲル状態又は比較的高い粘性を有する相のままである。しかし、溶融温度以上に熱せられると、UVゲルインクの粘性は減少し、インクはプリントヘッド112による噴出に適した液相となる。図5に示されているように、UVゲルインクを噴出するように構成されたプリンタ250はレベリング器282及び紫外線照射源286を含むことができる。レベリング器282はUVゲルインク及び他の種類のインクの液滴を実質的に連続した領域へ混ぜ込む。具体的には、レベリング器282は基材266上に排出されたインクをある温度に熱し、インクのインク液滴を混ぜ合わせる熱リフロー器とすることができる。これに加えて、又はこれに替えて、基材266上に噴出されたUVゲルインクはインクを硬化させる紫外線照射源286に曝される。
【0031】
相変化インクプリンタ250と接続されると、通気口管120は、空気または他の気体が、インク124の温度変化に伴って空気空間148に出入することを可能にする。具体的には、通気口管120はタンク104のインクが熱せられると空気空間148から空気を抜けさせる。さらに、通気口管120はタンク104を冷却した際に空気が空気空間148に入ることを可能にする。
【符号の説明】
【0032】
100 プリントヘッド、104 タンク、108 インク注入口、112 インクエジェクタ、116 通気開口部材、120 通気口管、124 供給インク、262 主タンク、128、130 第1対向側壁、132 第2組対向側壁、136 上壁、140 下壁、142 容積中心、144 遮壁、148 空気空間、152 上方開口、156 下方開口、160 流路、168 上方延長部、172 センサプローブ、176 センサ、180 流路、184 上部、188 下部、192 交差流路、196、200 有効下方開口、250 プリンタ、254 インクローダ、258 溶融器、262 主タンク、266 基材、270 媒体経路、272、278 ヒータ、282 レベリング器、286 紫外線照射源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的にインクを画像受容表面に噴出するインクジェットプリントヘッドであって、
供給インクと供給インクの上の空気空間とを含み、複数の側壁、上壁、及び下壁によって規定されるタンクと、
前記複数の側壁、上壁、及び下壁のうち1つに形成されたインク注入口と、
前記複数の側壁、上壁、及び下壁のうち1つに形成された通気開口と、
前記通気開口から伸張する通気口部材であって、タンクの外側の空気空間に配置された第1通気口部材開口と、前記供給インクの上の前記空気空間に配置された第2通気口部材開口と、前記第1通気口部材開口を前記第2通気口部材開口へ流体的に連結するように構成された通気口路とを有し、前記第2通気口部材開口が前記タンクの姿勢に関係無く前記供給インクの上の空気空間内に常に位置することを可能にするように前記タンク内に配置される通気口部材と、
を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
前記第2通気口部材開口は、インクのメニスカスが該第2通気口部材開口を横切らないように構成された、前記供給インクの表面張力によって少なくとも部分的に決定される幅を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項3】
前記第2通気口部材開口は、前記タンクの容積中心に位置していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項4】
前記上壁と下壁との距離によって規定され、前記下壁から少なくとも前記タンクの半分に位置するタンク高さと、
第1側壁と第2側壁との距離によって規定され、該第1側壁から前記タンクの幅の略半分の箇所に位置するタンク幅と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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