説明

インクジェットヘッド

【課題】配線パターンのショート個所の焼き切りが容易なインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、駆動素子と、複数の電極と、複数の第1の配線パターンと、複数の第2の配線パターンと、複数の導電パターンとを備える。前記基材は実装面を有する。前記駆動素子は、前記基材の実装面に取り付けられ、複数の溝が設けられる。前記電極は、前記駆動素子の複数の溝にそれぞれ設けられる。前記第1の配線パターンは、前記基材の実装面の一つの側端部から延び、幾つかの前記電極にそれぞれ接続される。前記第2の配線パターンは、前記複数の第1の配線パターンから離間して前記基材の実装面の一つの側端部から延び、他の幾つかの前記電極にそれぞれ接続される。前記導電パターンは、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとの間に位置して前記基材の実装面の一つの側端部に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのベースプレートに、インクを吐出するための駆動素子が取り付けられる。前記ベースプレートには、前記駆動素子の電極にそれぞれ接続された複数の配線パターンが設けられる。
【0003】
このような配線パターンは、製造工程においてショートまたはオープンのような不具合が生じていないか検査される。配線パターンにショートが生じている場合、プローバによって配線パターンに電流を流すことで、ショートが生じている個所を焼き切ることが行なわれる。ショート個所を焼き切ることで、配線パターンは正常な状態に回復し、使用可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−269985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、複数の配線パターンに複数の部品が接続される場合、配線パターンはこれらの部品に対応して複数のグループに分けられることがある。配線パターンの各グループは、部品の取り付けのため互いに離間して配置される。このため、通常のプローバでは、二つのグループに跨るショート個所を焼き切ることが難しい。
【0006】
本発明の目的は、配線パターンのショート個所の焼き切りが容易なインクジェットヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、基材と、駆動素子と、複数の電極と、複数の第1の配線パターンと、複数の第2の配線パターンと、複数の導電パターンとを備える。前記基材は実装面を有する。前記駆動素子は、前記基材の実装面に取り付けられ、複数の溝が設けられる。前記電極は、前記駆動素子の複数の溝にそれぞれ設けられる。前記第1の配線パターンは、前記基材の実装面の一つの側端部から延び、前記複数の電極のうち幾つかの前記電極にそれぞれ接続される。前記第2の配線パターンは、前記複数の第1の配線パターンから離間して前記基材の実装面の一つの側端部から延び、前記複数の電極のうち他の幾つかの前記電極にそれぞれ接続される。前記導電パターンは、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとの間に位置して前記基材の実装面の一つの側端部に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図2】図1のF2−F2線に沿って一つの実施形態のインクジェットヘッドを示す断面図。
【図3】一つの実施形態のヘッド本体を分解して示す斜視図。
【図4】一つの実施形態のベースプレートを示す平面図。
【図5】図4のF5部分の一つの実施形態のベースプレートを拡大して示す平面図。
【図6】一つの実施形態のベースプレートの製造工程の一部を例示するフローチャート。
【図7】一つの実施形態のリペア工程におけるベースプレートを概略的に示す斜視図。
【図8】一つの実施形態のリペア工程におけるベースプレートの一部を示す平面図。
【図9】インクジェットヘッドの変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一つの実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。図1は、一つの実施の形態に係るインクジェットヘッド10を示す斜視図である。図2は、図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッド10の一部を示す断面図である。図3は、インクジェットヘッド10のヘッド本体11を分解して示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、インクジェットヘッド10は、いわゆるサイドシュータ型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド10は、インクジェットプリンタに搭載され、チューブのような部品を介してインクタンクに接続されている。このようなインクジェットヘッド10は、ヘッド本体11と、ユニット部12と、一対の回路基板13とを備えている。
【0011】
ヘッド本体11は、インクを吐出するための装置である。ヘッド本体11は、ユニット部12に取り付けられている。ユニット部12は、ヘッド本体11と前記インクタンクとの間の経路の一部を形成するマニホールドや、前記インクジェットプリンタの内部に取り付けるための部材を含んでいる。一対の回路基板13は、ヘッド本体11にそれぞれ取り付けられている。
【0012】
図2に示すように、ヘッド本体11は、ベースプレート15と、オリフィスプレート16と、枠部材17と、一対の駆動素子18(図2には一つのみ示す)とを備えている。ベースプレート15は、基材の一例である。ヘッド本体11の内部には、インクが供給されるインク室19が形成されている。
【0013】
図3に示すように、ベースプレート15は、例えばアルミナのようなセラミックスによって矩形の板状に形成されている。ベースプレート15は、平坦な実装面21を有している。実装面21に、複数の供給孔22と、複数の排出孔23とが開口している。
【0014】
供給孔22は、ベースプレート15の中央部において、ベースプレート15の長手方向に並んで設けられている。図2に示すように、供給孔22は、ユニット部12の前記マニホールドのインク供給部12aに連通している。供給孔22は、インク供給部12aを介して前記インクタンクに接続されている。前記インクタンクのインクは、供給孔22からインク室19に供給される。
【0015】
図3に示すように、排出孔23は、供給孔22を挟むように二列に並んで設けられている。図2に示すように、排出孔23は、ユニット部12の前記マニホールドのインク排出部12bに連通している。排出孔23は、インク排出部12bを介して前記インクタンクに接続されている。インク室19のインクは、排出孔23から前記インクタンクに回収される。このように、インクは前記インクタンクとインク室19との間で循環する。
【0016】
図3に示すように、オリフィスプレート16は、例えばポリイミド製の矩形状のフィルムによって形成されている。オリフィスプレート16は、ベースプレート15の実装面21に対向している。オリフィスプレート16に、複数のオリフィス25が設けられている。複数のオリフィス25は、オリフィスプレート16の長手方向に沿って二列に並んでいる。
【0017】
枠部材17は、例えばニッケル合金によって矩形の枠状に形成されている。枠部材17は、ベースプレート15の実装面21とオリフィスプレート16との間に介在している。枠部材17は、実装面21とオリフィスプレート16とにそれぞれ接着されている。すなわち、オリフィスプレート16は、枠部材17を介してベースプレート15に取り付けられている。インク室19は、ベースプレート15と、オリフィスプレート16と、枠部材17とに囲まれて形成されている。
【0018】
駆動素子18は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成された板状の二つの圧電体によって形成されている。前記二つの圧電体は、分極方向がその厚さ方向に互いに逆向きになるように貼り合わされている。
【0019】
一対の駆動素子18は、ベースプレート15の実装面21に接着されている。一対の駆動素子18は、二列に並ぶオリフィス25に対応して、インク室19の中に平行に配置されている。図2に示すように、駆動素子18は、断面台形状に形成されている。駆動素子18の頂部は、オリフィスプレート16に接着されている。
【0020】
駆動素子18に、複数の溝27が設けられている。溝27は、駆動素子18の長手方向と交差する方向にそれぞれ延びており、駆動素子18の長手方向に並んでいる。複数の溝27は、オリフィスプレート16の複数のオリフィス25に対向している。
【0021】
複数の溝27に、それぞれ電極28が設けられている。電極28は、例えばニッケル薄膜をレーザーパターニングすることによって形成されている。電極28は、溝27の内面を覆っている。
【0022】
一つの駆動素子18において、複数の電極28のうち幾つかの電極28は、第1の電極群31を構成する。複数の電極28のうち他の幾つかの電極28は、第2の電極群32を構成する。
【0023】
第1の電極群31と第2の電極群32とは、駆動素子18の長手方向の中央部を境に分かれている。第2の電極群32は、第1の電極群31と隣り合っている。第1および第2の電極群31,32は、例えば159個の電極28をそれぞれ含んでいる。
【0024】
図4は、ベースプレート15を示す平面図である。図5は、図4の円F5で示す部分を拡大して示す平面図である。図4に示すように、ベースプレート15の実装面21から駆動素子18に亘って、複数の第1の配線パターン35と、複数の第2の配線パターン36とが設けられている。第1および第2の配線パターン35,36は、例えばニッケル薄膜をレーザーパターニングすることによって形成されている。
【0025】
第1および第2の配線パターン35,36は共に、実装面21の一つの側端部21aおよび他方の側端部21bからそれぞれ延びている。また、実装面21の一つの側端部21aおよび他方の側端部21bに、複数の導電パターン37が設けられている。なお、側端部21a,21bは、実装面21の縁のみならずその周辺の領域を含む。このため、第1および第2の配線パターン35,36および導電パターン37は、実装面21の縁よりも内側に設けられても良い。
【0026】
以下、一つの側端部21aから延びる第1および第2の配線パターン35,36と、一つの側端部21aに設けられた導電パターン37について代表して説明する。なお、他方の側端部21bのこれらのパターン35,36,37の基本的な構成は、一つの側端部21aのこれらのパターン35,36,37と同じである。
【0027】
第1の配線パターン35は、第1の電極群31に対応して設けられている。第1の配線パターン35の本数は、第1の電極群31の電極28の個数と同じく159本である。第1の配線パターン35は、第1の部分35aと、第2の部分35bとを有している。
【0028】
図5に示すように、第1の配線パターン35の第1の部分35aは、実装面21の側端部21aから駆動素子18に向かって直線状に延びている部分である。第1の部分35aは、互いに平行に延びている。
【0029】
第1の配線パターン35の第2の部分35bは、第1の部分35aの端部と、第1の電極群31の電極28とに跨る部分である。第2の部分35bは、例えば第1の部分35aの端部から広がるように延びている。駆動素子18の近傍における複数の第2の部分35bどうしの間隔は、複数の第1の部分35aどうしの間隔よりも広い。第2の部分35bは、第1の電極群31に含まれる電極28にそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
第2の配線パターン36は、第2の電極群32に対応して設けられている。第2の配線パターン36の本数は、第2の電極群32の電極28の個数と同じく159本である。第2の配線パターン36は、第1の部分36aと、第2の部分36bとを有している。
【0031】
第2の配線パターン36の第1の部分36aは、実装面21の側端部21aから駆動素子18に向かって直線状に延びている部分である。第1の部分36aは、互いに平行に延びている。
【0032】
第2の配線パターン36の第1の部分36aは、第1の配線パターン35の第1の部分35aから離間している。言い換えると、第1の配線パターン35の第1の部分35aと第2の配線パターン36の第1の部分36aとの間の距離は、複数の第1の配線パターン35の第1の部分35aどうしの間隔よりも大きく、複数の第2の配線パターン36の第1の部分36aどうしの間隔よりも大きい。
【0033】
第2の配線パターン36の第2の部分36bは、第1の部分36aの端部と、第2の電極群32の電極28とに跨る部分である。第2の部分36bは、例えば第1の部分36aの端部から広がるように延びている。駆動素子18の近傍における複数の第2の部分36bどうしの間隔は、複数の第1の部分36aどうしの間隔よりも広い。第2の部分36bは、第2の電極群32に含まれる電極28にそれぞれ電気的に接続されている。
【0034】
導電パターン37は、第1の配線パターン35の第1の部分35aと、第2の配線パターン36の第1の部分36aとの間にそれぞれ位置している。導電パターン37は、例えばニッケル薄膜をレーザーパターニングすることによって形成されている。
【0035】
導電パターン37は、実装面21の側端部21aから、第1および第2の配線パターン35,36の第1の部分35a,36aと平行に延びている。導電パターン37は、第1および第2の配線パターン35,36や電極28に接続されず、それぞれ独立している。
【0036】
図5に示すように、導電パターン37の本数は、例えば偶数である4本である。導電パターン37は、第1および第2の配線パターン35,36の第1の部分35a,36aと等間隔に配置されている。
【0037】
導電パターン37は、一方の端部37aと、他方の端部37bとをそれぞれ有している。一方の端部37aは、実装面21の側端部21aに位置する。他方の端部37bは、一方の端部37aの反対側に位置する。
【0038】
導電パターン37の一方の端部37aと他方の端部37bとの間に、三つの切れ目部分41が設けられている。切れ目部分41は、例えばレーザーパターニングにより形成される。切れ目部分41によって、導電パターン37は四つの部分に分割されている。複数の導電パターン37に設けられた三つの切れ目部分41は、それぞれ平行な直線状に並んでいる。
【0039】
図1に示すように、一対の回路基板13は、基板本体44と、一対のフィルムキャリアパッケージ(FCP)45とをそれぞれ有している。なお、FCPは、テープキャリアパッケージ(TCP)とも称される。
【0040】
基板本体44は、矩形状に形成された剛性を有するプリント配線板である。基板本体44に、種々の電子部品やコネクタが実装される。また、基板本体44に、一対のFCP45がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
一対のFCP45は、複数の配線が形成されるとともに柔軟性を有する樹脂製のフィルム46と、前記複数の配線に接続されたIC47とをそれぞれ有している。フィルム46は、テープオートメーテッドボンディング(TAB)である。IC47は、電極28に電圧を印加するための部品である。IC47は、樹脂によってフィルム46に固定されている。
【0042】
図2に示すように、一方のFCP45の端部は、異方性導電性フィルム(ACF)48によって、第1の配線パターン35の第1の部分35aに、熱圧着接続されている。他方のFCP45の端部は、ACF48によって、第2の配線パターン36の第1の部分36aに、熱圧着接続されている。これにより、FCP45の前記複数の配線は、第1および第2の配線パターン35,36に電気的に接続される。
【0043】
FCP45が第1および第2の配線パターン35,36に接続されることで、IC47が、FCP45の前記配線を介して電極28に電気的に接続される。IC47は、フィルム46の前記配線を介して電極28に電圧を印加する。
【0044】
IC47が電極28に電圧を印加すると、駆動素子18がシェアモード変形することにより、当該電極28が設けられた溝27の容積が増減させられる。これにより、溝27の中のインクの圧力が変化し、当該インクがオリフィス25から吐出される。
【0045】
次に、上記構成のインクジェットヘッド10の製造方法の一部である、ベースプレート15の製造方法の一例について、図6ないし図8を参照して説明する。図6は、ベースプレート15の製造工程の一部を例示するフローチャートである。図7は、リペア工程におけるベースプレート15を概略的に示す斜視図である。
【0046】
まず、焼成前のセラミックスシート(セラミックスグリーンシート)で構成されるベースプレート15に、プレス成形によって供給孔22と排出孔23を形成する。続いて、ベースプレート15を焼成する。図7に示すように、製造工程におけるベースプレート15は、例えば図4に示すベースプレート15よりも大きい。ベースプレート15は、後の工程で図7に二点鎖線で示すような大きさに切断される。
【0047】
次に、ベースプレート15の実装面21に一対の駆動素子18を接着する。このとき、一対の駆動素子18は、治具によって互いの距離が一定に維持される。これらの駆動素子18は、当該治具を介してベースプレート15に位置決めされ、ベースプレート15に接着される。
【0048】
続いて、ベースプレート15に接着された駆動素子18のそれぞれの角部に、いわゆるテーパ加工を行う。これによって、駆動素子18のそれぞれの断面は、図2に示すような台形状になる。
【0049】
次に、駆動素子18に、複数の溝27を形成する。複数の溝27は、例えば、ICウェハーの切断等に用いられるダイシングソーのマルチカッターによって形成される。
【0050】
次に、例えば無電解メッキによって、ベースプレート15の実装面21と、駆動素子18とに、ニッケル薄膜を形成する。このニッケル薄膜を、レーザ照射によりパターニングする。これにより、電極28と、第1および第2の配線パターン35,36と、導電パターン37とが形成される。
【0051】
次に、図6に示すように、第1および第2の配線パターン35,36のキャパシティ(静電容量)の検査を行なう。当該検査において正常と判断されたベースプレート15は、回路基板13を実装する工程に送られる。一方、当該検査においてショートしている個所が発見されたベースプレート15は、リペア工程に送られる。
【0052】
図7に示すように、リペア工程において、プローバ51が用いられる。プローバ51は、例えば数十本の検針52を有している。これらの検針52において、プラスの電流を流す検針52と、マイナスの電流を流す検針52とが交互に配置されている。
【0053】
まず、プローバ51を第1の配線パターン35の上に配置し、検針52を第1の配線パターン35の第1の部分35aにそれぞれ当接させる。プローバ51は、検針52が当接した第1の配線パターン35に、例えば数ボルトの電圧を印加する。これにより、検針52が当接した第1の配線パターン35に、ショートしている個所があるかを判定する(判定工程)。
【0054】
ショートしている個所がある場合、プローバ51は、検針52が当接した第1の配線パターン35に、例えば数十ボルトの電圧を印加する。これにより、第1の配線パターン35のショートしている個所が焼き切られる(焼き切り工程)。
【0055】
上記の判定工程および焼き切り工程を、第1の配線パターン35の端から第2の配線パターン36の端まで、例えば連続的に数回行う。ベースプレート15の長手方向の中央部において、検針52は、第1の配線パターン35、第2の配線パターン36、および導電パターン37にそれぞれ当接させられる。
【0056】
図8は、リペア工程におけるベースプレート15の長手方向の中央部を拡大して示す平面図である。図8の下部に示される「+」「−」のそれぞれの記号は、図8における当該記号の上に位置する第1および第2の配線パターン35,36および、導電パターン37に印加される電圧の正負を示している。
【0057】
図8に示すように、複数の第1の配線パターン35のうち最も中央側に位置する第1の配線パターン35Iと、複数の第2の配線パターン36のうち最も中央側に位置する第2の配線パターン36Iとに亘って、ショート部54が生じていると仮定する。第1の配線パターン35、第2の配線パターン36、および導電パターン37にプローバ51が電圧を印加すると、第1の配線パターン35Iには正の電圧が印加され、第2の配線パターン36Iには負の電圧が印加される。これにより、第1の配線パターン35Iと第2の配線パターン36Iとに電流が流れ、ショート部54が焼き切られる。
【0058】
ショート部54のようなショートしている個所が焼き切られることで、ベースプレート15は正常な状態に回復する。回復したベースプレート15は、回路基板13を実装する工程に送られる。回路基板13がベースプレートに実装されると、波形検査工程を経て、ベースプレート15の製造工程が終了する。
【0059】
上記構成のインクジェットヘッド10によれば、リペア工程において、プローバ51の検針52を、第1の配線パターン35、第2の配線パターン36、および導電パターン37にそれぞれ当接させた状態で、判定工程および焼き切り工程を行なうことができる。したがって、最も中央側に位置する第1の配線パターン35Iと、最も中央側に位置する第2の配線パターン36Iとに亘ってショート部54が生じた場合であっても、ショートしている個所を容易に焼き切ることができる。このため、第1の配線パターン35Iと第2の配線パターン36Iとのショート個所を焼き切るための専用プローバ等が不要となり、インクジェットヘッド10の製造コストを低減できる。
【0060】
さらに、判定工程および焼き切り工程を、第1の配線パターン35の端から第2の配線パターン36の端まで連続的に行なうことができる。言い換えると、第1の配線パターン35と第2の配線パターン36とで工程を分ける必要がなく、第1および第2の配線パターン35,36と導電パターン37とを一連のパターンとして扱うことができる。したがって、工数が低減し、インクジェットヘッド10の製造コストを低減できる。
【0061】
第1および第2の配線パターン35,36と導電パターン37とは、それぞれ等間隔に配置される。これにより、第1および第2の配線パターン35,36と導電パターン37とにプローバ51の検針52を当接させる作業が容易になる。
【0062】
導電パターン37の個数は偶数である。これにより、最も中央側に位置する第1の配線パターン35Iと、最も中央側に位置する第2の配線パターン36Iとに印加される電圧が対応し、第1の配線パターン35Iと第2の配線パターン36Iとのショート個所を焼き切ることができる。なお、導電パターン37の個数は奇数でも良い。この場合、例えば、プローバ51の検針52が印加する電圧の正負を全て交互に配置せず、導電パターン37に当接される検針52のうち所定の隣り合う検針52が印加する電圧の正負を同じくすることで第1の配線パターン35Iと第2の配線パターン36Iとのショート個所を焼き切ることができる。
【0063】
導電パターン37は、切れ目部分41によって分割される。これにより、導電パターン37が短くなり、導電パターン37どうしでショートする可能性を低減できる。また、切れ目部分41は、直線状にレーザーパターニングすることで形成されるため、容易に設けることができる。さらに、直線状に並ぶ切れ目部分41は、例えば回路基板13を第1および第2の配線パターン35,36に取り付ける際の目印として用いることができる。
【0064】
図9は、インクジェットヘッド10の変形例を示す平面図である。図9において、一つの実施形態のインクジェットヘッド10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付す。さらに、当該構成部分については、その説明を一部または全て省略することがある。
【0065】
図9に示すように、導電パターン37は、第1の配線パターン35の第1の部分35aより短くとも良い。また、導電パターン37は、第2の配線パターン36の第1の部分36aより短くとも良い。
【0066】
このような構成によれば、導電パターン37が短くなり、導電パターン37どうしでショートする可能性を低減できる。さらに、実装面21の側端部21aに位置する一方の端部37aは、第1および第2の配線パターン35,36と揃えられている。このため、導電パターン37が短いとしても、第1および第2の配線パターン35,36と導電パターン37とにプローバ51の検針52を当接させる作業は容易である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
例えば、上記実施の形態においては、電極28は二つの電極群31,32を構成していたが、電極が三つ以上の電極群を構成しても良い。この場合、導電パターンは、各電極群に接続された配線パターンの各グループの間に配置される。
【符号の説明】
【0069】
10…インクジェットヘッド、15…ベースプレート、18…駆動素子、21…実装面、21a,21b…側端部、25…オリフィス、27…溝、28…電極、35…第1の配線パターン、36…第2の配線パターン、37…導電パターン、37a…一方の端部、37b…他方の端部、41…切れ目部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有した基材と、
前記基材の実装面に取り付けられ、複数の溝が設けられた駆動素子と、
前記駆動素子の複数の溝にそれぞれ設けられた複数の電極と、
前記基材の実装面の一つの側端部から延び、前記複数の電極のうち幾つかの前記電極にそれぞれ接続された複数の第1の配線パターンと、
前記複数の第1の配線パターンから離間して前記基材の実装面の一つの側端部から延び、前記複数の電極のうち他の幾つかの前記電極にそれぞれ接続された複数の第2の配線パターンと、
前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとの間に位置して前記基材の実装面の一つの側端部に設けられた複数の導電パターンと、
を具備したことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第1の配線パターン、前記第2の配線パターン、および前記導電パターンは、それぞれ等間隔に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記導電パターンの個数は偶数であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記導電パターンは、前記基板の実装面の一つの側端部に位置した一方の端部と、前記一方の端部の反対側に位置する他方の端部とを有し、前記一方の端部と前記他方の端部との間に前記導電パターンを分割する切れ目部分がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記複数の導電パターンに設けられた前記切れ目部分が直線状に並んだことを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59916(P2013−59916A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199924(P2011−199924)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】